(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対をなす上記分岐アンテナパターンに属する上記給電線路間の距離が、上記給電線路の側辺から上記放射素子の先端に至る素子形成用の領域幅と略一致することを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の周辺環境を監視するための車載レーダとして、ミリ波レーダが実用化されつつある。ミリ波レーダは、レーダ信号として波長1〜10mmのミリ波を用いることにより、比較的分解能の高いレーダ装置を実現することができる。また、誘電体基板上にアンテナパターンを形成した平面アンテナを用いて実現することができるため、装置の小型軽量化が容易であり、量産化によるコスト低減効果も期待できる。
【0003】
このような平面アンテナの一例として、導波管・平面線路用の変換器を備えた誘電体基板上に、マイクロストリップ線路からなるアンテナパターンを形成し、導波管を介してアンテナパターンへ給電を行う導波管励振アンテナが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
図10は、従来の平面アンテナの構成を示した平面図である。この平面アンテナ200は、誘電体基板2上において、給電点となる変換器1を挟んで逆方向に延びる一対のアンテナパターン205a,205bが形成されている。各アンテナパターン205a,205bは、それぞれ直線状に延びる給電線路250と、当該給電線路250の一方の側辺に沿って形成された複数の放射素子251とによって直線アレーを形成している。ここでは、アンテナパターン205a,205bが、略同一の形状からなり、他方を180°回転させた状態で配置されている。
【0005】
一対の給電線路250は、変換器1を通る共通の直線L上にそれぞれ形成され、異なるアンテナパターン205a,205bに属する放射素子251は、給電線路250を挟んで互いに反対側に形成される。つまり、誘電体基板2上に形成された放射素子251は、顕著な位置ずれをもって配置され、給電線路250に平行な共通の曲線を通るように全ての放射素子251を整列させることができない。その結果、給電線路250と交差する方向に意図しない指向性が生じ、良好な指向特性を得ることができないという問題があった。また、所望の指向特性を有する平面アンテナ200を設計することが容易ではないという問題があった。
【0006】
一般に、給電線路の一端に給電点を配置したアンテナは先端給電型と呼ばれるのに対し、給電点を挟んで一対の給電線路が反対方向に向けて延びるアンテナは、中央給電型と呼ばれている。また、アンテナは、使用目的に応じて所望の指向特性を有するようにパターンを設計する必要がある。
【0007】
先端給電型の場合、シミュレーションを行うことにより、所望の指向特性を有するようにアンテナパターンを設計することは比較的容易にできる。しかしながら、アンテナパターン205a,205bの指向特性が既知であったとしても、これらのアンテナパターン205a,205bによって構成され、その放射素子251が整列していない中央給電型の平面アンテナ200の指向特性を正確に求めることはできない。
【0008】
例えば、一対のアンテナパターン205a及び205bが同一形状からなり、その指向特性が既知であったとしても、平面アンテナ200の指向特性は、上記アンテナパターン205aにおいてアレー数、つまり、放射素子251の数を増大させたような特性にはならない。その結果、中央給電型の場合、使用目的に応じた所望の指向特性を有するようにアンテナパターンを設計することは容易ではないという問題があった。
【0009】
図11は、中央給電型の平面アンテナについての改良案の一例を示した平面図である。
図11の平面アンテナ201では、給電線路250が
図10の場合と同様に配置されているが、放射素子251の配置は
図10の場合と異なっている。すなわち、異なるアンテナパターン205a,205bに属する給電線路250を共通の直線L上に形成し、さらに、異なるアンテナパターン205a,205bに属する各放射素子251をこれらの給電線路250の同じ一方の側辺に形成することにより、全ての放射素子251を整列配置させている。また、各放射素子251の素子方向を平行にすることにより、放射波の偏波面を揃えている。
【0010】
しかしながら、各アンテナパターン205a,205bを給電点側から見た場合、給電線路250に対する放射素子251の方向及び角度が互いに異なっている。このため、アンテナパターン205a,205bの指向特性は大きく相違する。従って、
図11に示した平面アンテナ201の場合も、良好な指向特性を実現することができず、また、所望の指向特性を有するようにパターンを設計することは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、良好な指向特性を有する中央給電型の平面アンテナを提供することを目的とする。また、中央給電型の平面アンテナについて、所望の指向特性を実現するためのパターン設計を容易化することを目的とする。
【0013】
また、変換器を挟んで反対方向に延びる一対の複合アンテナパターンが形成され、各複合アンテナパターンが、分配器により分岐させた2以上の分岐アンテナパターンからなる平面アンテナにおいて、良好な指向特性を実現することができる。また、所望の指向特性を実現するためのパターン設計を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の本発明による平面アンテナは、導波管及び平面線路用の変換器を有する誘電体基板にマイクロストリップ線路からなる一対の複合アンテナパターンが形成された平面アンテナにおいて、上記複合アンテナパターンは、分配器を介して上記変換器にそれぞれ接続された2以上の分岐アンテナパターンからなり、上記分岐アンテナパターンは、一端が上記分配器に接続された給電線路と、上記給電線路の側辺であって、同じ上記複合アンテナパターン内における共通の一方の側辺に形成された複数の放射素子とをそれぞれ備え、
上記一対の複合アンテナパターンは、それぞれ同数の上記分岐アンテナパターンを有し、全ての上記分岐アンテナパターンは、異なる上記複合アンテナパターンに属する上記分岐アンテナパターンと対をなし、対をなす上記分岐アンテナパターンに属する上記給電線路は、距離を隔てて互いに平行となるように配置され、上記放射素子は、対をなす上記分岐アンテナパターンに属する上記給電線路の互いに対向する側辺に形成され、対をなす上記分岐アンテナパターンに属する各放射素子を整列させて構成される。
【0020】
このような構成により、変換器を挟んで一対の複合アンテナパターンが形成された平面アンテナにおいて、異なる複合アンテナパターンに属する一対の分岐アンテナパターンの各放射素子を整列配置することができる。例えば、各放射素子の放射特性を顕著に異ならせることなく、これらの放射素子を整列させることができる。このため、良好な指向特性を有する中央給電型の平面アンテナを実現することができる。また、平面アンテナの指向特性を容易に予測することができる。このため、使用目的に応じた所望の指向特性を実現するためのパターン設計を容易化することができる。
なお、異なる分岐アンテナパターンに属する各放射素子は、一連の放射素子として良好に機能する程度に整列して配置されていればよい。また、放射素子は、給電線路と電磁的に結合されるように給電線路の側辺の近傍に形成されていればよく、形状として給電線路に接続されているか否かは問わない。さらに、変換器は、中央給電型の平面アンテナに適用可能なものであればよく、その具体的構成は本明細書において例示したものに限定されないことは言うまでもない。
【0021】
第2の本発明による平面アンテナは、上記構成に加えて、対をなす上記分岐アンテナパターンに属する上記給電線路間の距離が、上記給電線路の側辺から上記放射素子の先端に至る素子形成用の領域幅と略一致するように構成される。この様な構成により、一対の分岐アンテナパターンに属する各放射素子を一連の放射素子として整列させることができる。
【0022】
第3の本発明による平面アンテナは、上記構成に加えて、対をなす上記分岐アンテナパターンの一方は、他方を180度回転させた同一の形状からなる。一対の分岐アンテナパターンが同一形状であれば、アンテナパターンのアレー数を2倍に増大させたアンテナの指向特性を求めることにより、一対の分岐アンテナパターンの指向特性を正確に予測することができる。このため、より良好な指向特性を有する中央給電型の平面アンテナを実現することができるとともに、平面アンテナの設計を更に容易化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、中央給電型の平面アンテナにおいて、良好な指向特性を実現することができる。また、所望の指向特性を実現するためのパターン設計を容易化することができる。
【0024】
また、変換器を挟んで反対方向に延びる一対の複合アンテナパターンが形成され、各複合アンテナパターンが、分配器を介して変換器にそれぞれ接続された2以上の分岐アンテナパターンからなる平面アンテナにおいて、良好な指向特性を実現することができる。また、所望の指向特性を実現するためのパターン設計を容易化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
図1〜
図4は、本発明の実施の形態1による平面アンテナの一構成例を示した図である。
図1には展開斜視図、
図2には平面図、
図3には
図2のA−A切断線による断面図、
図4には
図2のB−B切断線による断面図がそれぞれ示されている。
【0027】
平面アンテナ100は、導波管・平面線路用の変換器1と、給電点としての変換器1を挟んで逆方向に延びる一対のアンテナパターン5a,5bとを有する誘電体基板2からなる。このような中央給電型のアレイアンテナにおいて、一対のアンテナパターン5a,5bを所定距離を隔てて互いに平行となるようにシフト配置させ、異なるアンテナパターン5a,5bの放射素子を整列させることにより、平面アンテナ100の指向特性を向上させるとともに、所望の指向特性を有する平面アンテナを設計する際におけるアンテナパターン5a,5bの設計効率を向上させることができる。
【0028】
このような平面アンテナ100について、
図1〜
図4を用いて詳細に説明する。誘電体基板2は、開口部41が形成された導波管4の上面に密着固定され、アンテナパターン5a,5bへの給電は、導波管4を介して行われる。つまり、平面アンテナ100は、導波管励振アンテナである。
【0029】
<導波管4>
導波管4は、導電性材料からなるブロック体、例えば、アルミダイキャスト法により成形された直方体ブロックからなり、管壁に囲まれた中空部40を有し、この中空部40内を電波が伝搬する。この導波管4は、管壁が2つの狭壁及び2つの広壁からなる方形導波管であり、伝搬方向に直交する中空部40の断面は、広壁に相当する長辺と、狭壁に相当する短辺とからなる長方形である。この導波管4の一端には、中空部40の断面と同一形状からなる開口部41が形成されている。
【0030】
<誘電体基板2>
誘電体基板2は、その下面が導波管4の開口部41を閉鎖するように配置されている。誘電体基板2の下面は、開口部41よりも広く、開口部41に対応する閉鎖領域21の周辺に導波管4の端面が密着固定されている。また、誘電体基板2の上面には、短絡板10、給電端子11a,11b及びアンテナパターン5a,5b、下面には接地板31及び整合素子32が、導電性金属の薄膜パターンとしてそれぞれ形成されている。これらの薄膜パターンは、熱圧着法により貼り付けられた銅箔などの導電性金属箔を誘電体基板2の全面に形成した後、フォトエッチング法でパターニングすることによって形成される。
【0031】
<変換器1>
変換器1は、導波管及び平面線路における電送電力を相互に変換することができる導波管及び平面線路用の変換器である。本実施の形態では、誘電体基板2に形成された短絡板10、給電端子11a,11b、接地板31、整合素子32及びスルーホール22からなる変換器1を用いて、導波管4と、平面線路としての給電端子11a,11bとの間で電力変換を行っている。
【0032】
短絡板10は、閉鎖領域21を覆うように誘電体基板2の上面に形成され、導波管4を終端させる短絡面を構成している。図中の短絡板10は矩形からなり、その対向する2辺から内側に向けてストリップ状の切り込み12がそれぞれ形成されている。この切り込み12は、閉鎖領域21の短辺と平行に延び、閉鎖領域21の長辺を横切って、整合素子32に達するように形成されている。
【0033】
給電端子11a,11bは、一端が、短絡板10の切り込み12内に形成され、他端が、閉鎖領域21の長辺及び短絡板10の長辺を横切って、短絡板10の外側へ引き出されている。これらの給電端子11a,11bは、切り込み12内では、短絡板10から一定の距離を隔てて配置され、短絡板10とともにコプレーナ線路を形成している。また、閉鎖領域21よりも外側では、誘電体基板2を介して接地板31と対向するように配置され、接地板31とともにマイクロストリップ線路を形成している。
【0034】
接地板31は、閉鎖領域21を取り囲むように形成され、接地板31に導波管4の端面を密着させることによって、接地板31及び導波管4を導通させている。図中では、誘電体基板2が導波管4の端面と同一の形状からなり、接地板31が、閉鎖領域21と一致する内縁を有し、閉鎖領域21を除く誘電体基板2の下面全体に形成されている。
【0035】
整合素子32は、接地板31と導通しないように閉鎖領域21内に形成された素子であり、その一部が誘電体基板2を挟んで給電端子11a,11bの先端と重複するように配置され、給電端子11a,11bと電磁的に結合されている。一般に、導波管4内では、短手方向の電界しか存在せず、この電界分布は長手中央において最大となることが知られている。このため、整合素子32は、開口部41の長辺の垂直二等分線を通り、開口部41の短手方向の長さが導波管4の管内波長λgの1/2となる形状であることが望ましい。なお、給電端子11a,11bの閉鎖領域21への挿入量と、導波管4の短手中央からの距離とを調整することにより、インピーダンス整合を図ることができる。
【0036】
スルーホール22は、誘電体基板2の貫通孔に導電性材料を充填して形成され、短絡板10及び接地板31を導通させる遮蔽手段である。多数のスルーホール22で閉鎖領域21を取り囲むことによって、閉鎖領域21外の誘電体基板2内へ電磁波が漏出するのを防止している。
【0037】
<アンテナパターン>
一対のアンテナパターン5a,5bは、それぞれ直線状に延びる給電線路50と、当該給電線路50から分岐し、同位相で励振される複数の放射素子51とによって直線アレーを形成している。このようなアンテナはコムラインアンテナ(comb-line antenna)と呼ばれている。コムラインアンテナは、放射素子51の数を増やすことによって、その指向性を向上させ、また、アンテナ利得を増大させることができる。
【0038】
各給電線路50は、その一端が変換器1の給電端子11a,11bに接続されたマイクロストリップ線路であり、他端には反射抑制用の終端素子52が形成されている。これらの給電線路50は、変換器1を挟んで、互いに反対方向へ延びるように配置されている。つまり、平面アンテナ100は、2つのアンテナパターン5a,5bが給電点を挟んで配置された中央給電型のアンテナである。
【0039】
一方、放射素子51は、給電線路50上を伝搬する進行波を自由空間へ放射するためのマイクロストリップ素子であり、給電線路50に対し一定角度をもって交差する方向に延びる線状又は短冊状の形状からなる。各放射素子51は、その一端が給電線路50の側辺に接続され、他端が開放されている。また、1つのアンテナパターン5a,5bには複数の放射素子51が属しており、これらの放射素子51が、給電線路50の一方の側辺に沿って整列配置されている。また、同位相で励振されるように、波長に応じた一定間隔で配置され、かつ、偏波面を揃えるように互いに平行に配置されている。
【0040】
図中のアンテナパターン5a,5bは、略同一の形状からなり、他方を180°回転させた状態で配置されている。このため、アンテナパターン5a,5bは、略同一の放射特性を有している。ここでは、いずれのアンテナパターン5a,5bも、給電点から見た場合に、給電線路50を左へ45°傾斜させた方向へ延びるように放射素子51が形成されている。なお、アンテナパターン5a,5bは、給電線路50が給電点を挟んで互いに逆方向に延び、給電点から見た場合の給電線路50に対する放射素子51の方向及び角度が互いに一致していれば、その形状が略同一でなくてもよい。
【0041】
<アンテナパターンの相対的配置>
次に、アンテナパターン5a,5bの相対的配置について説明する。一対のアンテナパターン5a,5bは、それぞれの給電線路50をシフト配置させることによって、異なるアンテナパターン5a,5bに属する各放射素子51を整列させている。つまり、一定距離を隔てて互いに平行となるように一対の給電線路50を配置し、これらの給電線路50の互いに対向する側辺に放射素子51をそれぞれ形成することにより、顕著な位置ずれを生じさせることなく全ての放射素子51を整列させ、一連の放射素子として機能させている。その結果、良好な指向特性を有する平面アンテナ100を実現することができる。
【0042】
図2には、給電線路50の延伸方向をX軸とするXY直交座標系が示されている。素子形成幅Dは、放射素子51が形成される領域の幅であり、給電線路50の側辺から放射素子51の最遠端までのY軸方向の距離によって示される。一対の給電線路50は、その間隔が上記素子形成幅Dに一致するようにシフト配置されている。つまり、一対の給電線路50は、Y軸方向に距離Dだけ離れて平行に配置されている。このため、給電端子11a,11bも閉鎖領域21の長辺方向に距離Dだけ離してシフト配置され、給電端子11a,11bと重複させる整合素子32は、Y軸方向の長さが距離Dよりも長い形状からなる。
【0043】
シフト配置された給電線路50間に各放射素子51を配置すれば、異なるアンテナパターン5a,5bに属する放射素子51を一連の放射素子として整列配置させることができる。図中では、2つのアンテナパターン5a,5bに属する放射素子51の全てを一列に整列させ、各放射素子51が、給電線路50に平行な共通の直線を通るように配置している。この様にして全ての放射素子51をY軸方向に顕著な位置ずれを生じさせることなく整列させることができれば、良好な指向特性を実現することができる。
【0044】
例えば、
図10に示した従来の平面アンテナ200の場合、放射素子のY軸方向の位置に顕著なずれが生じているため、各アンテナパターン250a、250bが本来有してないY軸方向の指向特性が現れ、アンテナ利得が低下する。これに対し、本実施の形態による平面アンテナ100は、Y軸方向に顕著な位置ずれを生じさせることなく全ての放射素子51を整列させているため、Y軸方向に意図しない放射特性が現れるのを抑制することができる。従って、良好な指向特性を実現することができる。
【0045】
また、放射素子51を整列させることにより、平面アンテナ100のパターン設計を効率化することができる。アンテナパターン5a,5bは、それぞれ先端給電型のアンテナであり、その指向特性をシミュレーション等により求めることは比較的容易である。従って、アンテナパターン5a,5bに属する各放射素子51を整列させれば、各アンテナパターン5a,5bの指向特性から平面アンテナ100の指向特性を求めることができる。その結果、使用目的に応じた所望の指向特性を有する平面アンテナ100を提供しようとする場合におけるパターン設計の効率を向上させることができる。
【0046】
特に、アンテナパターン5a、5bが同一形状からなる場合には、更に良好な指向特性を有する平面アンテナ100を実現することができる。また、平面アンテナ100の指向特性は、アンテナパターン5a,5bの放射素子を2倍にした場合の指向特性として正確に与えられ、所望の指向特性を有する平面アンテナ100を提供しようとする場合におけるパターン設計の効率を更に向上させることができる。
【0047】
図5は、
図1の平面アンテナ100の透過量及び反射量の周波数特性を示した図である。透過量及び反射量は、散乱パラメータS
21,S
11として求められる値であり、横軸に周波数をとって示されている。図中の実線T1及びR1は、
図1の平面アンテナ100の透過量及び反射量をそれぞれ示す特性曲線である。一方、破線T2及びR2は、
図10に示した従来の平面アンテナ200の透過量及び反射量をそれぞれ示す特性曲線である。
【0048】
一般に、導波管及び平面線路用の変換器1の周波数特性は、整合素子32の共振周波数において透過量が最大となり、反射量が最小となることが知られている。
図4では、共振周波数が約76.5GHzであり、この共振周波数における透過量T1は、従来装置の透過量T2とほぼ同様であることがわかる。また、上記共振周波数における反射量R1は、従来装置の透過量R2よりも小さいことがわかる。つまり、
図1の平面アンテナ100は、従来装置とほぼ同等の透過特性と、従来装置よりも優れた反射特性とを実現している。
【0049】
図6は、
図1の平面アンテナ100の指向特性を示した図である。横軸には、放射方向が誘電体基板2の正面方向に対する角度として示され、縦軸には、正面方向の利得に対する相対利得が示されている。図中の指向特性D1は、本実施の形態による平面アンテナ100の特性であり、指向特性D2は、
図10に示した従来の平面アンテナ200の特性である。指向特性D3は、シミュレーションにより求められた指向特性であり、アンテナパターン5aの放射素子51の数を2倍にしてシミュレーションを行って得られた特性である。つまり、特性D3は、放射素子51のY方向への位置ずれを考慮することなくシミュレーションを行って求められた計算値である。
【0050】
本実施の形態による指向特性D1は、計算で求めた指向特性D3とほぼ一致しているのに対し、従来の指向特性D2は、計算で求められた指向特性D3と一致してない。特性D2及びD3の差は、異なるアンテナパターン5a,5bに属する放射素子51が整列していないために生ずる誤差であり、シミュレーション結果から容易に予測することができない。このため、本実施の形態による平面アンテナ100であれば、所望の指向特性を実現するパターンを容易に設計することができる。
【0051】
図7は、
図1の平面アンテナ100の具体的な構成例を示した平面図であり、
図2において模式的に示したアンテナパターン5a,5bの一例が具体的に示されている。図中のアンテナパターン5a,5bは、直線状に延びる給電線路50の一端が変換器1に接続され、屈曲させた他端に終端素子52が接続されている。つまり、給電線路50は、放射素子51が形成されている部分が略直線状であれば、その他の部分は屈曲していてもよい。
【0052】
また、図中のアンテナパターン5a,5bは、変換器1から遠くなるほど、放射素子51の素子幅が太くなっている。このため、放射素子51の形状は、変換器1に最も近い素子は線形状であるが、変換器1から離れると短冊形状に変化し、最も遠い素子は矩形形状になっている。
【0053】
一般に、放射素子51の放射効率は、その素子幅によって異なるため、給電点からの距離に応じて放射素子51の形状を変化させる場合があり、同じアンテナパターン5a,5b内であっても各放射素子51の形状は同一であるとは限らない。アンテナパターン5a,5bに属する放射素子51の大きさが均一でない場合、素子形成幅Dは、放射素子51のY軸方向の長さの最大値にすればよい。つまり、一対の給電線路50間の距離は、最大の放射素子51によって決まる。
【0054】
本実施の形態によれば、変換器1を挟んで反対方向へ延びる一対のアンテナパターン5a,5bが形成された平面アンテナ100において、異なるアンテナパターン5a,5bに属する給電線路50が、距離を隔てて互いに平行となるように配置され、各給電線路50の互いに対向する側辺に放射素子51を形成することにより、異なるアンテナパターン5a,5bに属する各放射素子51を整列させている。つまり、中央給電型の平面アンテナ100において、一対の給電線路50をシフト配置させ、給電線路50間のスペースに放射素子51を整列させている。このため、異なるアンテナパターン5a,5bに属する放射素子51を一連の放射素子として機能させ、良好な放射特性を得ることができる。また、中央給電型の平面アンテナ100の放射特性を予測することが容易になり、アンテナパターンの設計効率を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、一対の給電線路50の距離が、放射素子51の素子形成幅Dに一致するようにシフト配置され、また、全ての放射素子51が、給電線路50に平行な共通の直線Lを通るように形成される場合の例について説明したが、本発明は、この様な場合のみに限定されない。
【0056】
つまり、本発明による平面アンテナ100では、一対のアンテナパターン5a,5bに属する放射素子51をY軸方向に顕著な位置ずれを生じることなく整列させることができればよい。そのためには、一対の給電線路50をシフト配置させる必要があるが、給電線路50間の距離が素子形成幅Dに略一致していればよい。例えば、素子形成幅Dの半分以上かつ2倍以下であればよい。また、アンテナパターン5a,5bに属する放射素子51の少なくとも一部が、給電線路50に平行な共通の直線Lをそれぞれ通っていればよい。つまり、アンテナパターン5a,5bに属する1以上の放射素子51、望ましくは過半数の放射素子51が、給電線路50に略平行な共通の直線Lを通るように配置されていればよい。
【0057】
実施の形態2.
実施の形態1では、変換器1の整合素子32の形状が長方形からなる平面アンテナの例について説明した。これに対し、本実施の形態では、整合素子32が、その他の形状からなる平面アンテナについて説明する。
【0058】
図8は、本発明の実施の形態2による平面アンテナの要部について一例を示した図であり、変換器1の平面図が示されている。
図2の場合と比較すれば、整合素子32の形状が異なっている。図中の(a)では、整合素子32が楕円形からなり、(b)では整合素子32が菱形からなる。上述した通り、整合素子32は、開口部41の長辺の垂直二等分線を通り、開口部41の短手方向の長さが導波管4の管内波長λgの1/2となる形状であることが望ましい。整合素子32の形状は、このような条件に適合するものであれば、長方形には限定されず、任意の形状とすることができる。
【0059】
なお、本発明による平面アンテナ100に適用される変換器1は、一対のアンテナパターン5a,5bに対する給電点として機能するものであればよく、整合素子32の形状以外についても、本明細書に例示された構成だけに限定されない。
【0060】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、1本の給電線路50をそれぞれ有する一対のアンテナパターン5a,5bが、変換器1を挟んで配置された平面アンテナ100の例について説明した。これに対し、互いに平行な2以上の給電線路50をそれぞれ有する一対の複合アンテナパターン6a,6bが、変換器1を挟んで形成された平面アンテナ101について説明する。
【0061】
図9は、本発明の実施の形態2による平面アンテナの一構成例を示した平面図である。図中の平面アンテナ101は、
図2の平面アンテナ100と比較すれば、誘電体基板2上に形成されているアンテナパターンが異なる。この平面アンテナ101は、変換器1を挟んで、逆方向に延びる一対の複合アンテナパターン60a,60bが配置された中央給電型の平面アンテナである。
【0062】
複合アンテナパターン60aは、変換器1に接続された分配器61aと、分配器61aから分岐させた2以上の分岐アンテナパターン62aとからなる。同様にして、複合アンテナパターン60bは、変換器1に接続された分配器61bと、分配器61bから分岐させた2以上の分岐アンテナパターン62bとからなる。
【0063】
分配器61a,61bは、その分岐形状に応じて、各分岐アンテナパターン62a,62bへ電力を分配している。分岐アンテナパターン62a,62bは、それぞれ直線状に延びる給電線路50と、当該給電線路50から分岐させた複数の放射素子51とによって直線アレーを形成し、その終端には終端素子52が配置されている。
【0064】
同じ分岐アンテナパターン62a,62bに属する放射素子51は、同じ給電線路50の一方の側辺に沿って整列配置され、同位相で励振されるように、波長に応じた一定間隔で配置されている。つまり、本実施の形態における分岐アンテナパターン62a,62bは、実施の形態1におけるアンテナパターン5a,5bに相当している。
【0065】
各給電線路50は、互いに平行となるように形成されている。また、同じ複合アンテナパターン60a,60bに属する放射素子51は、いずれも給電線路50の同じ一方の側辺に形成されている。更に、全ての放射素子51が、偏波面を揃えるように互いに平行に配置されている。この様な配置により、特性の揃った放射素子50を高い密度で配置することができる。
【0066】
このような平面アンテナ101において、一方の複合アンテナパターン60aに属する分岐アンテナパターン62aが、他方の複合アンテナパターン60bに属する分岐アンテナパターン62bと対をなしている。そして、対をなすアンテナパターン62a,62bをシフト配置させ、これらの分岐アンテナパターン62a,62bに属する各放射素子51を整列させている。すなわち、対をなす分岐アンテナパターン62a,62bに属する給電線路50は、素子形成幅Dを隔てて互いに平行に配置され、これらの給電線路50の互いに対向する側辺に放射素子51が形成されている。その結果、対をなす両分岐アンテナパターン62a,62bに属する各放射素子51は、給電線路50に平行な共通の直線Lを通るように形成されている。ここでは、全ての分岐アンテナパターン62a,62bが、このようにして対をなしている。
【0067】
また、図中では、対をなす分岐アンテナパターン62a,62bが、略同一の形状からなり、一方は他方を180°回転させた状態で配置されている。このため、分岐アンテナパターン62a,62bは、略同一の放射特性を有している。なお、分岐アンテナパターン62a,62bが略同一の形状でなくても、給電線路50が給電点を挟んで互いに逆方向に延び、給電点から見た場合の給電線路50に対する放射素子51の方向及び角度が互いに一致していれば、アンテナパターン62a,62bの偏波面を揃えることができる。
【0068】
本実施の形態によれば、互いに異なる複合アンテナパターン60a,60bに属する対をなす分岐アンテナパターン62a,62bに関し、顕著な位置ずれを生じさせることなく全ての放射素子51を整列させ、一連の放射素子として機能させている。その結果、変換器1を挟んで、一対の複合アンテナパターン60a,60bを配置した中央給電型の平面アンテナ101においても、良好な指向特性を実現することができる。また、このような平面アンテナ101のパターン設計を効率化することができる。
【0069】
なお、本実施の形態における対をなす分岐アンテナパターン62a,62bは、実施の形態1におけるアンテナパターン5a,5bに相当することは上述した通りであり、分岐アンテナパターン62a,62bについて、相違点として言及していない構成及び作用は、アンテナパターン5a,5bと同様である。