特許第5748455号(P5748455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748455管内面の洗浄方法および緊急時回収用治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748455
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】管内面の洗浄方法および緊急時回収用治具
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/055 20060101AFI20150625BHJP
   B08B 9/053 20060101ALI20150625BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B08B9/055 552
   B08B9/055 551
   B08B9/053 535
   E03B7/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-257371(P2010-257371)
(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公開番号】特開2012-106187(P2012-106187A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100100000
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】西槙 伸充
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 新平
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−168261(JP,A)
【文献】 特開2005−270765(JP,A)
【文献】 実開平05−042357(JP,U)
【文献】 特開2004−305810(JP,A)
【文献】 特開昭60−110386(JP,A)
【文献】 特開平02−056289(JP,A)
【文献】 実開昭60−017288(JP,U)
【文献】 特開2002−200465(JP,A)
【文献】 実開平01−179790(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/055
B08B 9/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時回収用索体を接続し且つ中空部を有する拡縮自在な弾性材からなる洗浄用部材を、上流の発進側分岐管内から本管内へ挿入し、
本管内に流体を流すことにより、洗浄用部材を移送するとともに緊急時回収用索体を外部から発進側分岐管内に送り出しながら、本管内面を洗浄用部材で洗浄し、
本管内において洗浄用部材が下流の到達側分岐管に到達する前に、緊急時回収用索体の送出速度の低下によって洗浄用部材が破裂したことを検知した場合、緊急時回収用索体を発進側分岐管内から外部へ引き戻すことにより、洗浄用部材を本管内から発進側分岐管内に引き戻して回収することを特徴とする管内面の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄用部材が破裂した場合、流体を本管内から発進側分岐管内に流して発進側分岐管内から外部へ排出することにより、本管内の流体圧を利用して、発進側分岐管内の洗浄用部材を抜出方向へ押すことを特徴とする請求項1記載の管内面の洗浄方法。
【請求項3】
上記請求項1又は請求項2に記載の管内面の洗浄方法に使用される緊急時回収用治具であって、
緊急時回収用索体を巻き取る巻取機能と送り出す送出機能とを有する巻取り送出し装置と、発進側分岐管に着脱自在な治具本体とが具備されており、
治具本体は発進側分岐管内に挿入可能な管部材を有し、
緊急時回収用索体が巻取り送出し装置から管部材内を通って洗浄用部材に接続され、
本管内の洗浄用部材を発進側から到達側に移送する場合、緊急時回収用索体を巻取り送出し装置から送り出し、
本管内の洗浄用部材を発進側分岐管に引き戻す場合、緊急時回収用索体を巻取り送出し装置で巻き取ることを特徴とする緊急時回収用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管等の管内面の洗浄方法および緊急時回収用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管内面の洗浄方法については、例えば、図24に示すように、水道管101の上流側の開閉弁102と下流側の開閉弁103とを閉じて、水道管101の所定領域104の流れを遮断し、この状態で、拡縮自在な洗浄用ピグ105を上流の発進側分岐管106内から水道管101内へ挿入し、その後、上流側の開閉弁102を開いて水道管101内に通水し、洗浄用ピグ105を水道管101内の下流側へ移送しながら、水道管101の内面を洗浄用ピグ105で洗浄し、洗浄後、洗浄用ピグ105を下流の到達側分岐管107内から回収する洗浄方法が知られている(下記特許文献1参照)。また、拡縮自在な洗浄用ピグ105としては、内部に中空部を有する圧縮変形自在なゴム製の球形状のものが知られている(下記特許文献2参照)。
【0003】
発進側および到達側分岐管106,107の各内径は水道管101の内径よりも小径であり、上記のような洗浄方法では、洗浄用ピグ105は、発進側分岐管106内において縮径し、発進側分岐管106内から水道管101内に挿入されると拡径し、水道管101内から到達側分岐管107内に取り込まれると縮径される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66522
【特許文献2】特開2001−87727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の従来形式において、洗浄用ピグ105を発進側分岐管106から水道管101内に挿入した後、水道管101内において洗浄用ピグ105が到達側分岐管107に到達する前に、洗浄用ピグ105が破裂する等の異常事態が発生した場合、洗浄用ピグ105(洗浄用部材)を水道管101内から回収することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、洗浄時に洗浄用部材が破裂した場合、洗浄用部材を容易に回収することが可能な管内面の洗浄方法および緊急時回収用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明における管内面の洗浄方法は、緊急時回収用索体を接続し且つ中空部を有する拡縮自在な弾性材からなる洗浄用部材を、上流の発進側分岐管内から本管内へ挿入し、
本管内に流体を流すことにより、洗浄用部材を移送するとともに緊急時回収用索体を外部から発進側分岐管内に送り出しながら、本管内面を洗浄用部材で洗浄し、
本管内において洗浄用部材が下流の到達側分岐管に到達する前に、緊急時回収用索体の送出速度の低下によって洗浄用部材が破裂したことを検知した場合、緊急時回収用索体を発進側分岐管内から外部へ引き戻すことにより、洗浄用部材を本管内から発進側分岐管内に引き戻して回収するものである。
【0008】
これによると、洗浄用部材が本管内面を洗浄している際、洗浄用部材が破裂した場合、緊急時回収用索体を発進側分岐管内から外部へ引き戻すことにより、洗浄用部材が本管内から発進側分岐管内に引き戻されて回収される。これにより、洗浄用部材を容易に回収することができる。
【0011】
本第発明における管内面の洗浄方法は、洗浄用部材が破裂した場合、流体を本管内から発進側分岐管内に流して発進側分岐管内から外部へ排出することにより、本管内の流体圧を利用して、発進側分岐管内の洗浄用部材を抜出方向へ押すものである。
【0012】
これによると、緊急時回収用索体を発進側分岐管内から外部へ引き戻す際、発進側分岐管内の洗浄用部材が流体圧によって抜出方向へ押されるため、洗浄用部材を発進側分岐管から容易に抜き出すことが可能である。
【0013】
本第発明は、上記第1発明又は第2発明に記載の管内面の洗浄方法に使用される緊急時回収用治具であって、
緊急時回収用索体を巻き取る巻取機能と送り出す送出機能とを有する巻取り送出し装置と、発進側分岐管に着脱自在な治具本体とが具備されており、
治具本体は発進側分岐管内に挿入可能な管部材を有し、
緊急時回収用索体が巻取り送出し装置から管部材内を通って洗浄用部材に接続され、
本管内の洗浄用部材を発進側から到達側に移送する場合、緊急時回収用索体を巻取り送出し装置から送り出し、
本管内の洗浄用部材を発進側分岐管に引き戻す場合、緊急時回収用索体を巻取り送出し装置で巻き取るものである。
【0014】
これによると、本管内に流体を流すことにより、洗浄用部材が本管内を移送しながら本管内面を洗浄する。この際、洗浄用部材の移送と共に、巻取り送出し装置によって緊急時回収用索体を送り出す。また、洗浄用部材が本管内面を洗浄している際、洗浄用部材が破裂した場合、巻取り送出し装置によって緊急時回収用索体を巻き取る。これにより、洗浄用部材が本管内から発進側分岐管内に引き戻されて回収される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によると、洗浄時に洗浄用部材が破裂した場合、洗浄用部材を容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における水道管およびその付帯設備の図である。
図2】同、洗浄装置を用いて水道管を洗浄している状態を示す図である。
図3】同、水道管内の洗浄に用いる洗浄用ボールの断面図である。
図4】同、水道管内の洗浄に用いる緊急時回収用治具の側面図である。
図5】同、水道管内の洗浄に用いる緊急時回収用治具の平面図である。
図6】同、水道管内の洗浄に用いる緊急時回収用治具と発進側分岐管との連結部分の拡大断面図である。
図7】同、水道管内の洗浄に用いる緊急時回収用排水手段に取り付けられるフランジ蓋の断面図である。
図8】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを水道管内に挿入する行程を示す。
図9】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを膨らます行程を示す。
図10】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを所定距離だけ下流側へ移動させる行程を示す。
図11】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、水道管から発進側の接続短管の上端までの高さを測定する行程を示す。
図12】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用紐の第二の紐を滑車に掛けてセットする行程を示す。
図13】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用紐の第一の紐と第二の紐を連結する行程を示す。
図14】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用治具の第一治具本体を発進側分岐管内に挿入する行程を示す。
図15】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用治具の第一治具本体に第二治具本体を取り付ける行程を示す。
図16】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用治具の固定台を設置する行程を示す。
図17】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールが捕捉用治具で捕捉された状態を示す。
図18】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、銛で洗浄用ボールを破裂させる行程を示す。
図19】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、銛を用いて洗浄用ボールを引上げて回収する行程を示す。
図20】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、異常事態が発生して、緊急時回収用治具を用いて洗浄用ボールを発進側の縦管まで引き戻す行程を示す。
図21】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用治具を撤去する行程を示す。
図22】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、緊急時回収用排水手段を取り付ける行程を示す。
図23】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを引上げて回収する行程を示す。
図24】従来の水道管内の洗浄方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、1は地中に埋設された水道管(本管の一例)であり、水道管1には上流側の開閉弁2と下流側の開閉弁3とが設けられている。尚、図面において、各開閉弁2,3が閉じている場合は黒塗りで表示し、開いている場合は白抜きで表示する。
【0018】
両開閉弁2,3間は、水道管1内を洗浄する際に断水する断水区間4である。断水区間4には上流の発進側消火栓部5と下流の到達側消火栓部6とが設けられている。両消火栓部5,6は、水道管1の管頂部から上向きに分岐した縦管7,8と、縦管7,8の上端に接続されたボール式等の補修弁9,10と、補修弁9,10の上端に接続された消火栓11,12とを有している。
【0019】
消火栓部5,6はそれぞれ、地中に掘られた消火栓部収納用空間13,14内に収納されている。尚、縦管7,8の内径は水道管1の内径よりも小さい。また、消火栓部収納用空間13,14の上面開口部は着脱自在な蓋15,16で閉じられている。また、両消火栓部5,6間は、水道管1内を洗浄する際の洗浄対象区間17である。
【0020】
図2に示すように、21は水道管1の洗浄対象区間17を洗浄する洗浄装置である。この洗浄装置21は、拡縮自在な洗浄用ボール22(洗浄用部材の一例)と、接続短管23,24と、通常時排水手段26と、水道管1内で洗浄用ボール22を捕捉する捕捉用治具27と、捕捉された洗浄用ボール22を破裂させる銛28(図18参照)と、緊急時に洗浄用ボール22を回収する緊急時回収用治具29と、緊急時に洗浄用ボール22を回収する際に使用される緊急時回収用排水手段30(図22参照)を有している。
【0021】
図3に示すように、洗浄用ボール22は、ゴム等の弾性材製で且つ内部に中空部32を有する球体部33と、球体部33の外面を覆うスポンジ部34と、外部から中空部32に連通した注水口35とを備えている。注水口35には、中空部32に水37(流体の一例)を注入するための注水用ホース36が着脱自在に接続される。尚、注水口35には、注水口35から中空部32に注入された水37が外部へ流出することを防止するバルブ等の逆流防止機構(図示省略)が備えられている。
【0022】
また、洗浄用ボール22には回収用誘導紐38と緊急時回収用紐39(緊急時回収用索体の一例)とが接続されている。回収用誘導紐38は、水道管1内を流れる水W(流体の一例)の比重よりも小さな比重を有する材質(例えばビニールやナイロン等)でできている。
【0023】
図2に示すように、発進側の接続短管23は、上端開口部にフランジ23aを有しており、発進側の補修弁9の上端に着脱自在である。尚、発進側の縦管7と補修弁9と接続短管23とによって発進側分岐管41が構成される。また、到達側の接続短管24は到達側の補修弁10の上端に着脱自在である。
【0024】
通常時排水手段26は、到達側の接続短管24の上端に着脱自在な排水用接続管43と、排水用接続管43に接続された排水用配管44と、排水用配管44を開閉する排水用弁45とを有している。尚、排水用接続管43は縦に接続したT字管であり、到達側の縦管8と補修弁10と接続短管24と排水用接続管43とによって到達側分岐管46が構成される。
【0025】
図4図5に示すように、緊急時回収用治具29は、下側の第一治具本体51と、上側の第二治具本体52と、緊急時回収用紐39を巻き取る巻取機能および送り出す送出機能を有する電動式リール装置53(巻取り送出し装置の一例)と、電動式リール装置53を支持固定する固定台54とを有している。
【0026】
第一治具本体51は、発進側の接続短管23の上部のフランジ23aに上方から着脱自在な取付用フランジ56と、取付用フランジ56から下向きに設けられた管部材57とを有している。管部材57は、取付用フランジ56に設けられた上管部57aと、上管部57aの下方に設けられた下管部57bと、上管部57aと下管部57bとの間に接続された中継ぎ管部57cとを有している。下管部57bの下端には、緊急時回収用紐39を案内する回転自在な下部滑車58が設けられている。尚、中継ぎ管部57cは、上管部57aおよび下管部57bにそれぞれ着脱自在であり、全長の異なる複数種類のものが用意されている。これにより、中継ぎ管部57cを交換することで、第一治具本体51の長さLを調節することが可能である。
【0027】
図6に示すように、取付用フランジ56は中央部に貫通孔59を有しており、緊急時回収用紐39は貫通孔59から管部材57内に導入される。尚、貫通孔59の内部には、緊急時回収用紐39と貫通孔59の内周との間をシールするシール部材60が設けられている。シール部材60は取付用フランジ56に螺合したねじ込み式のシール押え61により上方から下向きに押圧されて圧縮されている。尚、緊急時回収用紐39は取付用フランジ56に対して長さ方向(上下方向)に移動自在である。
【0028】
図4図6図12に示すように、第二治具本体52は、上下一対のフランジ63,64と、両フランジ63,64間に設けられた複数の支柱65とを有している。このうち、下部のフランジ63は、貫通孔63aを有しており、第一治具本体51の取付用フランジ56に上方から着脱自在である。また、上部のフランジ64には、貫通孔64aと緊急時回収用紐39を案内する回転自在な上部滑車66とが設けられている。
【0029】
電動式リール装置53は、モータで作動するものであり、手動で作動するためのハンドル67も備えられており、電動と手動とに切換え可能である。また、電動式リール装置53には、緊急時回収用紐39を送り出した際の送出距離を表示する表示部68が設けられている。
【0030】
固定台54は、地面に設置されるベース体70と、ベース体70に昇降自在に設けられた支持フレーム71と、支持フレーム71に設けられた水平方向の複数の軸72と、支持フレーム71上に設けられた取付部材73とを有している。
【0031】
各軸72は、支持フレーム71に設けられた複数の円筒状の保持部材74に挿通され、軸心方向A(水平方向)に移動自在に保持されている。また、保持部材74には、軸72の軸心方向Aへの移動を固定する固定用ねじ75が設けられている。軸72の先端には、第二治具本体52の支柱65を把持(クランプ)することにより支柱65に接続可能な接続手段76が設けられている。図5に示すように、接続手段76は、軸72の先端に取り付けられた一方の接続部材76aと、一方の接続部材76aに対して回動して開閉自在に設けられた他方の接続部材76bと、他方の接続部材76bを閉状態で固定するロック部材77とを有している。図5の実線で示すように、他方の接続部材76bを閉じて、支柱65を両接続部材76a,76b間に挟むことにより、図4に示すように、軸72が接続手段76を介して支柱65に接続される。また、電動式リール装置53は取付部材73に着脱自在に取り付けられている。
【0032】
図4図13に示すように、緊急時回収用紐39は、洗浄用ボール22に接続された第一の紐39aと、電動式リール装置53に巻き取られる第二の紐39bとに分離されており、水道管1を洗浄する際、第一の紐39aと第二の紐39bとが結び付けられて連結され、一本の緊急時回収用紐39となる。
【0033】
図22に示すように、緊急時回収用排水手段30は、発進側の接続短管23の上部のフランジ23aに着脱自在な排水用接続管78と、排水用接続管78に接続された排水用ホース79と、排水用ホース79を開閉する排水用弁80と、排水用接続管78の上端開口部を閉じるフランジ蓋81とを有している。尚、排水用接続管78は、縦に接続したT字管であり、上下両端部にフランジ78a,78bを有している。
【0034】
図7図22に示すように、フランジ蓋81は、排水用接続管78の上部フランジ78aに着脱自在であり、中央部に貫通孔82を有している。貫通孔82には緊急時回収用紐39が挿通可能であり、貫通孔82の内部には、貫通孔82の内周と緊急時回収用紐39との間をシールするパッキン等のシール材83が設けられている。シール材83はフランジ蓋81に螺合したねじ込み式の押え部材84により押圧されて圧縮されている。尚、緊急時回収用紐39はフランジ蓋81に対して長さ方向(上下方向)に移動自在である。
【0035】
以下、上記洗浄装置21を用いて水道管1の内面を洗浄する洗浄方法について説明する。
(1)先ず、図8に示すように、両開閉弁2,3を閉じ、洗浄対象区間17を断水状態(流れを遮断した状態)にする。その後、蓋15,16を取り外し、補修弁9,10から消火栓11,12を取り外し、発進側の補修弁9の上端に接続短管23を接続し、到達側の補修弁10の上端に接続短管24を接続する。この際、両補修弁9,10を開にしておく。
【0036】
(2)洗浄用ボール22の注水口35に注水用ホース36の先端を接続し、回収用誘導紐38と緊急時回収用紐39の第一の紐39aとを洗浄用ボール22に接続し、洗浄用ボール22を、縮径(縮小)した状態で、発進側分岐管41から水道管1内に挿入する。この際、第一の紐39aの末端部分を発進側分岐管41内から上部外方へ抜き出しておく。
【0037】
(3)図3に示すように、水37を注水用ホース36から洗浄用ボール22の注水口35を通じて中空部32に所定量注入することにより、洗浄用ボール22を膨らませて球形状に拡径(拡張)させる。これにより、図9に示すように、洗浄用ボール22の外面(すなわちスポンジ部34)が水道管1の内面に確実に接触した状態になる。
【0038】
(4)注水用ホース36を上方向に引っ張って、注水用ホース36の先端を洗浄用ボール22の注水口35から取り外した後、注水用ホース36を回収する。
(5)図7に示したフランジ蓋81と同じ構成を有するフランジ蓋85を発進側の接続短管23の上部のフランジ23aに取り付けて接続短管23の上端開口部を閉じる。この際、第一の紐39aの末端部分を、フランジ蓋85の貫通孔82に挿通して、発進側分岐管41内から上部外方へ抜き出しておく。
【0039】
(6)図10に示すように、到達側の接続短管24の上端に排水用接続管43を接続し、排水用弁45を開く。
(7)上流側の開閉弁2を開いて通水する。これにより、水道管1内の水Wが、洗浄対象区間17を流れ、到達側分岐管46を経て、排出用接続管43から排出用配管44に流出し外部へ排出される。このような水Wの流れによって、洗浄用ボール22を発進側の縦管7の真下から下流側へ所定距離B(例えば約50cm〜1m程度)だけ移動させる。尚、上記所定距離Bは、緊急時回収用紐39の第一の紐39aが発進側分岐管41内に入り込んでいく長さで判断する。この際、図7に示すように、緊急時回収用紐39の第一の紐39aとフランジ蓋85との間はシール材83によりシールされているため、発進側分岐管41内の水Wがフランジ蓋85の外部に漏出するのを防止することができる。
【0040】
(8)図11に示すように、水道管1内において洗浄用ボール22を所定距離Bだけ移動させた後、上流側の開閉弁2を閉じ、洗浄対象区間17を断水状態にし、フランジ蓋85を発進側の接続短管23のフランジ23aから取り外す。
【0041】
(9)スケール等を用いて、水道管1内の底部から接続短管23のフランジ23aの上面までの高さHを測定する。水道管1の呼び径(口径)をDとすると、第一治具本体51の長さL(図4参照)が概ね下記式のような関係に保たれるように、複数種類の長さの中継ぎ管部57cから最適な長さの中継ぎ管部57cを選んで取り付ける。
L=H−D/2
これにより、緊急時回収用治具29を発進側分岐管41に取り付けた際、下部滑車58を水道管1の中心部付近に位置させることができる。
【0042】
(10)図12に示すように、緊急時回収用紐39の第二の紐39bを、緊急時回収用治具29の第二治具本体52の両フランジ63,64の貫通孔63a,64aと第一治具本体51の取付用フランジ56と管部材57内とに挿通するとともに、下部および上部滑車58,66に掛ける。
【0043】
(11)図13に示すように、緊急時回収用紐39の第一の紐39aの末端部と第二の紐39bの先端部とを結んで連結する。
(12)図14に示すように、第一治具本体51の管部材57を上方から発進側分岐管41内に挿入する。この際、第一治具本体51の取付用フランジ56と発進側の接続短管23の上部のフランジ23aとの間にガスケット等のシール材86を設けておく。
【0044】
(13)図6図15に示すように、第一治具本体51の取付用フランジ56上に第二治具本体52を設置し、接続短管23のフランジ23aと第一治具本体51の取付用フランジ56と第二治具本体52の下部のフランジ63とを複数のボルト87およびナット88で連結する。
【0045】
(14)図16に示すように、固定台54を地面に設置し、電動式リール装置53を取付部材73に取り付ける。また、図5の実線で示すように、接続手段76の他方の接続部材76bを回動して閉じると共にロック部材77で固定することにより、支柱65が両接続部材76a,76b間に挟まれ、図16に示すように、軸72が接続手段76を介して支柱65に接続される。この際、支持フレーム71を昇降することにより、接続手段76の高さを調節することができ、軸72を軸心方向Aに移動することで、接続手段76の位置を支柱65の位置に正確に合わせることができる。
【0046】
以上のような行程により、緊急時回収用治具29を発進側分岐管41に取り付けることができる。
(15)図2に示すように、捕捉用治具27を上方から到達側分岐管46内に挿入して取り付ける。
【0047】
(16)図2に示すように、下流側の開閉弁3を引き続き閉じた状態のままで、上流側の開閉弁2を開く。これにより、水道管1内の水W(流体の一例)が、開閉弁2から水道管1の洗浄対象区間17を流れ、到達側分岐管46を通って排水用配管44から外部へ排水される。このため、拡径状態の洗浄用ボール22が水圧によって水道管1内の洗浄対象区間17を発進側から到達側へ移送され、この際、洗浄用ボール22のスポンジ部34が水道管1の内面を摺動することにより、水道管1の内面が洗浄される。また、このとき、洗浄用ボール22の移送に伴って、緊急時回収用紐39がリール装置53から発進側分岐管41内に送り出される。
【0048】
(17)図17に示すように、洗浄用ボール22は、到達側の縦管8の下方に達すると、捕捉用治具27によって受け止められ捕捉される。
(18)上流側の開閉弁2を閉じて、洗浄対象区間17を断水させる。その後、捕捉用治具27を到達側分岐管46内から上方へ脱抜して取り外す。
【0049】
(19)図18に示すように、銛28を上方から到達側分岐管46内に挿入し、銛28の先端で洗浄用ボール22を突き刺し破裂させて縮小させる。
(20)図19に示すように、破裂した洗浄用ボール22を、銛28の先端部に引っ掛けて、水道管1内から排水用接続管43の上端部まで引上げ、上端開口部から取り出して回収する。これにより、水道管1の通常の洗浄作業が完了する。
【0050】
上記のようにして通常の洗浄作業が完了した後、緊急時回収用治具29と通常時排水手段26と両接続短管23,24とを取り外し、図1に示すように、両消火栓11,12と両蓋15,16とを取り付ける。
【0051】
(21)また、図2に示した洗浄作業中に、万一、水道管1内の洗浄対象区間17内で、洗浄用ボール22が破裂するという異常事態が発生した場合、図20に示すように、上流側の開閉弁2を閉じて洗浄対象区間17を断水させ、リール装置53を巻取方向へ作動させて緊急時回収用紐39を巻き取り、水道管1内の洗浄用ボール22を発進側の縦管7の下方まで引き戻す。尚、上記のような洗浄対象区間17内における洗浄用ボール22の破裂は、例えば、緊急時回収用紐39がリール装置53から送り出される際の送出速度が低下することで、検知される。
【0052】
(22)図21に示すように、緊急時回収用紐39を切断して第一の紐39aと第二の紐39bとに切離し、図5の仮想線で示すように、接続手段76の他方の接続部材76bを開いて、軸72を支柱65から分離し、図21に示すように固定台54を撤去する。さらに、図6に示すように、ボルト87およびナット88を取り外して、緊急時回収用治具29の第二治具本体52を第一治具本体51から取り外し、第一治具本体51の管部材57を発進側分岐管41内から上方へ脱抜して取り外すことにより、緊急時回収用治具29一式を撤去する。この際、図21に示すように、第一の紐39aの末端部分を発進側の接続短管23の上端開口部から外方に抜き出しておく。
【0053】
(23)その後、図22に示すように、緊急時回収用排水手段30の排水用接続管78を発進側の接続短管23の上部のフランジ23aに取り付け、フランジ蓋81を排水用接続管78の上部フランジ78aに取り付ける。この際、第一の紐39aの末端部分をフランジ蓋81の貫通孔82(図7参照)に挿通して外方に抜き出しておく。
【0054】
(24)第一の紐39aの末端部分を上方に引っ張って、洗浄用ボール22を発進側の縦管7の下端開口部に密着させる。
(25)図23に示すように、下流側の開閉弁3と到達側の通常時排水手段26の排水用弁45とを閉じた状態で、緊急時回収用排水手段30の排水用弁80と上流側の開閉弁2とを開く。これにより、水Wが、水道管1内から発進側分岐管41内に流れ、排水用接続管78内から排水用ホース79を通って外部に排出される。
【0055】
(26)この状態で第一の紐39aを引き上げることにより、洗浄用ボール22を排水用接続管78内の上端部まで引き上げる。この際、発進側分岐管41内の洗浄用ボール22は、水道管1内の水圧P(流体圧の一例)により上方向C(抜出方向の一例)へ押されて、排水用接続管78内の上端部まで上昇する。これにより、容易に、洗浄用ボール22を排水用接続管78内の上端部まで引き上げることができる。
【0056】
(27)その後、上流側の開閉弁2を閉じて洗浄対象区間17を断水させ、フランジ蓋81を排水用接続管78の上部フランジ78aから取り外し、洗浄用ボール22を排水用接続管78の上端開口部から外部へ取り出して回収する。これにより、水道管1内の洗浄対象区間17内で洗浄用ボール22が破裂するという異常事態が発生した場合であっても、洗浄用ボール22を容易且つ迅速に回収することができる。
【0057】
尚、上記のようにして洗浄用ボール22を回収した後、緊急時回収用排水手段30と通常時排水手段26と両接続短管23,24と捕捉用治具27とを取り外し、図1に示すように、両消火栓11,12と両蓋15,16とを取り付ける。
【0058】
上記実施の形態では、通常の洗浄作業において、図18図19に示すように、銛28で洗浄用ボール22を破裂させるとともに、銛28を用いて洗浄用ボール22を引き上げているが、銛28の代わりに、回収用誘導紐38を到達側分岐管46内から引き上げることで、洗浄用ボール22を引き上げてもよい。
【0059】
上記実施の形態では、通常の洗浄作業において、図17に示すように、水道管1の洗浄用ボール22が捕捉用治具27により捕捉されることで、洗浄用ボール22が到達側の縦管8の下方に達したことを認識できるが、捕捉用治具27を用いず、電動式リール装置53の表示部68に表示される送出距離に基いて、洗浄用ボール22が到達側の縦管8の下方に達したことを認識してもよい。
【0060】
上記実施の形態では、異常事態が発生した場合、図20に示すように、モータの稼動によりリール装置53を巻取方向へ作動させて緊急時回収用紐39を巻き取っているが、電動から手動に切換えて、ハンドル67(図4参照)を手動で回すことにより、緊急時回収用紐39を巻き取ってもよい。
【0061】
上記実施の形態では、本管の一例として水道管1を挙げたが、水道管1に限定されるものではなく、例えば下水道管等であってもよい。また、流体の一例として水Wを挙げたが、水Wに限定されるものではない。
【0062】
上記実施の形態では、消火栓用の縦管7,8を利用して水道管1を洗浄しているが、消火栓用に限定されるものではなく、例えば、空気管用の分岐管や各種補修用の分岐管等を利用して洗浄してもよい。
【0063】
上記実施の形態では、緊急時回収用索体の一例として緊急時回収用紐39を用いたが、紐39に限定されるものではなく、ロープやワイヤー等を用いてもよい。
上記実施の形態では、巻取り送出し装置の一例として電動式のリール装置53を用いたが、手動式のリール装置を用いてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、図5に示すように、支柱65を三本設けたが、三本以外の複数本又は一本であってもよい。また、軸72を二本設けたが、二本以外の複数本又は一本であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 水道管(本管)
22 洗浄用ボール(洗浄用部材)
29 緊急時回収用治具
32 中空部
39 緊急時回収用紐(緊急時回収用索体)
41 発進側分岐管
46 到達側分岐管
53 リール装置(巻取り送出し装置)
C 上方向(抜出方向)
P 水圧(流体圧)
W 水(流体)
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