(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記整流部材は、前記ラックの吸気面が向かい合う一対のラック列の間に形成される通路を覆うことにより、該通路の外側が前記第一の領域となり該通路の内側が前記第二の領域となるように前記情報処理機器室内を仕切る、
請求項1または2に記載の空調システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データセンタ等の大規模な情報処理設備においては、情報処理機器を収容したラックが室内に多数並べられている。各情報処理機器へ冷気を過不足なく行き渡らせるためには、ラック列に沿って流れる冷気の流速が適切に調整される必要がある。流速が遅い場合には冷却に必要な量の冷気が確保できない虞があり、流速が速い場合には静圧の低い部位が部分的に生じたり渦や乱流が生じたりし、場合によっては暖排気が部分的に冷気供給側に流出する虞があるためである。また、ラック列に沿って流れる冷気の流速は、冷気が吹出る吹出口とラック列との位置関係によっても左右されるため、建物の構造等の様々な制約によって十分な空調風量を確保できない場合がある。
【0006】
そこで、本願は、室内に設置した冷気の吹出口の位置や吹出風量の如何に関わらず、また冷気の風速が速くても情報処理機器を収容した各ラックへ冷気を過不足なく行き渡らせることができる空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の内部が、冷気が吹出す吹出口がある領域とラックの吸気面がある領域とに分かれるように整流部材で仕切る。
【0008】
詳細には、情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調を行う空調システムであって、前記情報処理機器室内に設置される、前記情報処理機器を冷却するための冷気を該情報処理機器室内に吹出す吹出口と、前記情報処理機器室内を、冷気が吹出す前記吹出口がある第一の領域と、前記情報処理機器を冷却する冷気を吸い込む前記ラックの吸気面がある第二の領域とに仕切る整流部材と、を備える。
【0009】
ここで、上記整流部材は、第一の領域と第二の領域との間に通気抵抗を与えて冷気の流れを整えるものであり、各ラックの吸気面に冷気が概ね均等に吸い込まれるように、ラック列の吸気面側を流れる冷気の流れを整える。この整流部材は、例えば、前記ラックの吸気面が向かい合う一対のラック列の間に形成される通路を覆うことにより、該通路の外側が前記第一の領域となり該通路の内側が第二の領域となるように情報処理機器室内を仕切る。各ラックに収容されている情報処理機器を冷却するための冷気が吹出る吹出口と、この冷気を吸い込むラックの吸気面との間に、このような整流部材を設けることにより、吹出口がある第一の領域がプレナムチャンバーとして機能し、第二の領域にあるラック列の吸気面側を流れる冷気の流れが整う。これにより、吹出口の位置や吹出風量の如何に関わらず、流速の影響を緩和し、各ラックへ冷気が過不足なく行き渡ることになる。
【0010】
また、前記空調システムは、前記吹出口から吹出た前記ラックの吸気面に吸い込まれる冷気が流れる経路と、該ラックから排出された排気が流れる経路とを仕切る仕切部材を備えるものであってもよい。吹出口から吹出たラックの吸気面に吸い込まれる冷気が流れる経路が、ラックから排出された排気が流れる経路と仕切られていれば、排気が流れる経路に吹出口から吹出る冷気が流れ込まないので、ラックに吸込まれずにそのままホットアイルに流出するバイパス流れがなくなって送風動力の無駄がなくなり、第一の領域と第二の領域との間の圧力差が大きくなりやすくなる。この結果、整流部材の通気抵抗が増し、ラック列の吸気面側を流れる冷気の流れがより整うようになる。
【0011】
また、前記冷気が流れる経路は、前記情報処理機器室内と該情報処理機器室の床下に形成される空間内とに形成され、前記整流部材は、前記ラックの吸気面が向かい合う一対のラック列の間の床面に形成された、前記床下から前記情報処理機器室内への冷気の通気路を覆うものであってもよい。情報処理機器室内のみならず、床下の空間も冷気が通過する経路とすることにより、吹出口から吹出る冷気を溜める空間を十分に確保することが可能であり、また、床からラックの吸気面へ向かって流れる冷気も整流部材によって整流されるため、ラック列の吸気面側を流れる冷気の流れがより整うようになる。
【0012】
また、前記冷気が流れる経路は、前記情報処理機器室内に形成され、前記排気が流れる経路は、排気面が向かい合う一対のラック列の間に形成される通路と、前記情報処理機器室の天井裏に形成される空間内とに形成されるものであってもよい。このような空調システムであれば、情報処理機器室内の空間の多くを前記第一の領域に割り当てることができるため、吹出口から吹出る冷気が溜まる空間が増える。このため、冷気の風量が増大してもラック列の吸気面側を流れる冷気の流れを十分に整えることができる。
【0013】
また、前記整流部材は、通気抵抗が前記吹出口の動圧の5〜30倍であれば、吹出口がある第一の領域がプレナムチャンバーとして十分に機能し、第二の領域にあるラック列の吸気面側を流れる冷気の流れが整い、各ラックへ冷気が過不足なく行き渡る。
【0014】
また、前記情報処理機器室に整列するラック列は、ラックが間隔を空けて整列しており、前記整流部材のうち少なくとも一部は、間隔を空けて配置されたラック間を覆うものであってもよい。間隔を空けて配置されたラック間を覆うように整流部材を設ければ、間隔を詰めてラックを配置した場合に比べて、第一の領域から第二の領域への冷気の流通路が大きい。よって、気流の高速化を防止して、各ラックに必要な冷気を低速で供給することができる。冷気が低速になると、渦流や低圧域の発生が防止されるので、ホットアイルの高温空気がラック内を逆流して情報処理機器が冷却されなくなる虞がない。
【0015】
また、前記整流部材は、前記情報処理機器室に整列するラック列の吸気面を覆うことにより、該整流部材で覆われた該ラック列の周囲が前記第一の領域となり、該整流部材と該
ラック列の吸気面との間が前記第二の領域となるように、該情報処理機器室を仕切るものであってもよい。ラック列の吸気面を覆うように整流部材が配置されていれば、整流部材を例えばラック列間の通路を覆うように配置した場合に比べて、第一の領域から第二の領域への冷気の流通路が大きい。よって、気流の高速化を防止して、各ラックに必要な冷気を低速で供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
室内に設置した冷気の吹出口の位置や吹出風量の如何に関わらず、また冷気の風速が速くても情報処理機器を収容した各ラックへ冷気を過不足なく行き渡らせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、第一実施形態に係る空調システム100を配置したデータセンタ101の構成図である。データセンタ101には、
図1に示すように、各種の演算処理やデータベースの管理を行なうサーバや通信機等の情報処理機器が収容されたラック102がサーバールーム103に多数並んでいる。また、サーバールーム103には、各ラック102へ供給する冷気を生成する空調ユニット104が多数設けられている。
【0019】
各ラック102には、情報処理機器を冷却する冷却ファンが設けられており、ラックの正面あるいは背面の何れかが吸気面となり、他方が排気面となるように構成されている。各ラック102の中の情報処理機器の冷却ファンは、ラック内に収容されている情報処理機器の負荷状態や吸込み温度に応じて時々刻々と変化するように回転数が制御されるものであってもよいし、一定の回転数で動くものであってもよい。なお、情報処理機器が据え付けられていない等の理由により、ラック102内や隣接するラック102間に隙間があるような場合は、暖気の回り込みを防ぐようなパネル等で隙間を防ぐことが好ましい。
【0020】
空調ユニット104は、クーリングコイルと電動ファンとを内蔵し、サーバールーム103の空気を冷やす。ここで、本実施形態に係るデータセンタ101では、各ラック102がコンクリートスラブ105Bによって形成される床面106に据え付けられている。
よって、床面106の下にはいわゆる床下空間が無い。一方、コンクリートスラブ105Uとサーバールーム103との間には、天井ボード107が設けられており、二重天井構造になっている。そこで、空調ユニット104は、
図2に示すように、上面に設けられた開口より、天井ボード107とコンクリートスラブ105Uとの間に形成される天井裏の空間108Uから各ラック102の排気を吸引して冷却する。そして、各ラック102が整列したラック列109の端部側壁から見て正面(例えば、サーバールーム103の内壁近傍)に設けられた吹出口より、冷却した空気をサーバールーム103内へ送る。なお、空調ユニット104は、コイルとファンがそれぞれ別のケーシングに納まり、両者がダクトで接続されたものであってもよい。また、空調ユニット104は、天井吊り下げ式あるいは天井埋め込み式であってもよいし、別室に据え付けて吹出口だけダクトでサーバールーム103まで延長してもよい。この場合、空調ユニット104の吹出口は、天井ボード107に設けられ、天井から吹出すようになっていてもよい。
【0021】
データセンタ101は、各ラック102へ冷気が効率的に供給されるよう、一つのラック列109を構成する各ラック102の吸気面と排気面の向きが揃えられている。そして、対峙する2つのラック列109が、共に吸気面あるいは排気面で向き合うように配置される。各ラック102がこのように設置されていることにより、各ラック列109の間には、冷気が流れる通路と暖気が流れる通路とが交互に形成されることになる。以下、吸気面が向かい合う一対のラック列109に囲まれた、冷気が流れる通路をコールドアイルCといい、排気面が向かい合う一対のラック列109によって囲まれた、暖気が流れる通路をホットアイルHという。
【0022】
一つのホットアイルHを挟む2つのラック列109の両端間や、ラック列109と天井ボード107との間には、ホットアイルHとコールドアイルCとを隔離する仕切板110が設けられている。この仕切板110は、空気の流れを遮蔽する。なお、各ラック102の高さが天井ボード107と同じ高さである場合、ラック列109と天井ボード107との間に配置される仕切板110は不要である。天井ボード107のうちホットアイルHの上側の部分は開口しているため、仕切板110によって囲まれたホットアイルH内の暖気は、コールドアイルC側へ回り込むことなく天井裏の空間108Uへ流れることになる。
【0023】
また、一つのコールドアイルCを挟む2つのラック列109の両端間や上端間には、空調ユニット104から吹出る冷気の流れを調整する整流板111が設けられている。ここでは、2つのラック列109の間のコールドアイルCは、床面は床材で閉塞され、他の3面は対向するラック列109の揃えられた側端面と天面を跨ぐ形で整流体としてのメッシュが配設されている。整流板111は、空調ユニット104から吹出る空気の流速が速い事により、ラック102の吸気面側で静圧が低下したり乱流が形成されたりしてラック102内への冷気の吸込み不良が生じるのを防ぐ目的で設置されるものであり、
図3に示すように、コールドアイルCへ略均一の流量の冷気が流れるようにするものである。整流板111は、空調ユニット104からコールドアイルCへ流れる冷気の通路に通気抵抗を生じさせ得るものであればよく、例えば、フィルタやパンチング板、金網、布、或いはこれらの積層体、並びに空調の吹出し口等に用いられるレジスタなどを適用できる。コールドアイルCが整流板111に覆われていることにより、サーバールーム103がコールドアイルC内へ冷気を略均等に供給するためのプレナムチャンバーとして機能する。
【0024】
なお、整流板111は、通気抵抗が動圧(空調ユニットの吹出口)の10〜30倍程度になるようなものを選定することが好ましい。その理由は次の通りである。
【0025】
整流板を通過する冷気の速度分布の形状は、実用的範囲の場合、静圧と動圧の比が一定であれば流速に関わらず概ね相似であり、換言すると、整流板を通過する冷気の速度分布の形状は、静圧と動圧との比により定まる。ここで、プレナムチャンバーを管路の連続分
岐管と考え、プレナム内の摩擦等の損失を無視すると次式が成り立つ。
【数1】
【0026】
上記数式(1),(2)から逐次計算することにより、任意の位置における吹出速度と静圧の分布を求めることができる。これに整流板の抵抗係数を加味し、寸法を任意に設定した仮想のプレナムチャンバーについて冷気の速度と静圧との関係を、動圧に対する静圧の割合(Pr)毎に算出し、計算結果をプロットしたグラフを
図4に示す。ここで、
図4のグラフにおいて、縦軸として示す速度比とは冷気の平均速度に対する特定位置における速度の割合(速度比=位置の速度/平均速度)であり、横軸として示す距離比とは全長に対する特定位置の割合(距離比=位置/全長)である。従って、距離比0〜1の範囲の何れにおいても速度比が1に近ければ速度のばらつきが小さいということになる。
図4に示されるように、動圧に対する静圧の割合が小さい場合(すなわち、Prの値が小さい場合)は冷気の吹出し速度のばらつきが大きく、動圧に対する静圧の割合が大きい場合(すなわち、Prの値が大きい場合)は冷気の吹出し速度のばらつきが小さくなることが判る。このことから、動圧に対する静圧の割合を高めれば高めるほど、整流板を通過する冷気の速度分布が均一に近づき、コールドアイルCの冷気の流れが整うことが判る。
【0027】
ここで、本実施形態に係る空調システム1において実用上妥当な、整流板に必要な通気抵抗を決定するため、横軸を動圧に対する静圧の割合(Pr)とし、縦軸に最小速度比をプロットしたグラフを
図5に示す。ここで、最小速度比とは、距離比0〜1の範囲において最も小さい速度比の値である。
図5に示されるように、最小速度比は、動圧に対する静圧の割合(Pr)が10未満においては割合が増えるにつれて急上昇し、10から30の間で徐々に緩やかになり、30よりも大きくなると緩やかに上昇していくことが判る。この結果から、動圧に対する静圧の割合(Pr)が10未満においては通気抵抗が小さすぎ、30より大きい場合には通気抵抗を大きすぎることが判る。よって、整流板は、通気抵抗が動圧(空調ユニットの吹出口)の10〜30倍程度になるようなものを選定することが好ましいことが判る。なお、通気抵抗による差圧で整流板等に異常が生じないよう、空調ユニットのファンの回転数等を差圧に応じて制御してもよい。もっとも、最小速度比は、0.9以上あれば十分であるため、動圧に対する静圧の割合(Pr)が5以上もあれば実用上差し支えない。
【0028】
本実施形態に係る空調システム100であれば、空調ユニット104から吹出た冷気の
流れが整流板111による通気抵抗によって調整され、各ラック102内に冷気が略均一に流れる。このため、空調ユニット104の吹出し口を任意の位置に配置できる。また、吹出し口の面積を拡大させることも可能であり、給気速度を均一且つ低速に維持したまま、冷気の吹出風量を増加させることができる。
【0029】
図6は、第二実施形態に係る空調システム200を配置したデータセンタ201の構成図である。データセンタ201には、第一実施形態に係るデータセンタ101と同様、ラック202がサーバールーム203に多数並んでおり、サーバールーム203には空調ユニット204が設けられている。
【0030】
空調ユニット204は、第一実施形態に係る空調ユニット104とほぼ同様であるが、吸込み側が一部異なる。本実施形態に係るデータセンタ201は、天井ボード207によって二重天井構造になっている他、ラック102が据え付けられている床面206とコンクリートスラブ205Bとの間に空間208Bが形成され、二重床構造になっている。そこで、本実施形態では、
図7に示すように、空調ユニット204の上面に設けられた開口より天井裏の空間208Uから各ラック202の排気を吸引して冷却し、第一実施形態に係る空調システム100に加えて、床面206を構成する網目状のグレーチングより床下の空間208BからコールドアイルCへ冷気が流れる構成を採っている。床面206を構成するグレーチングのうち、コールドアイルCの床面部分には、整流板211が取り付けられている。従って、床下の空間208BからコールドアイルCへ流入する冷気についても整流される。
【0031】
本実施形態に係る空調システム200は、天井裏の空間208Uのみならず床下の空間208Bも利用している点以外、第一実施形態に係る空調システム100と同様である。この空調システム200であれば、空調ユニット204から吹出た冷気の流れが整流板211で調整され、
図8に示すように各ラック202に冷気が略均一に流れる。このため、空調ユニット204の吹出し口を任意の位置に配置できる。よって、吹出し口の面積を拡大させることも可能であり、給気速度を均一且つ低速に維持したまま、冷気の吹出風量を増加させることができる。
【0032】
図9は、第三実施形態に係る空調システム300を配置したデータセンタ301の構成図である。データセンタ201には、第一実施形態に係るデータセンタ101や第二実施形態に係るデータセンタ201と同様、ラック302がサーバールーム303に多数並んでおり、サーバールーム303には空調ユニット304が設けられている。
【0033】
空調ユニット304は、第一実施形態に係る空調ユニット104とほぼ同様であるが、吸込み側が一部異なる。本実施形態に係るデータセンタ301は、ラック302が据え付けられている床面306とコンクリートスラブ305Bとの間に空間308Bが形成されて二重床構造になっているが、天井ボードが設けられていないため二重天井構造にはなっていない。そこで、本実施形態では、
図10に示すように空調ユニット304が下面に設けられた開口より床下の空間308から各ラック302の排気を吸引して冷却する構成を採っている。
【0034】
ホットアイルHの床面306には、人等の通行を可能にしつつホットアイルHの空気が床下の空間308Bへ流れるように網目状のグレーチング312が各ラック302の排気面が対向する空間の床に設置されている。また、一つのホットアイルHを挟む2つのラック列309の両端間や上端間には、ホットアイルHとコールドアイルCとを隔離する仕切板310が設けられている。この仕切板310は、ホットアイルHの暖気がコールドアイルCへ流れないよう、空気の流れを遮蔽する。ホットアイルHの床はグレーチング312によって床下の空間308Bと連通しているため、仕切板310によって囲まれたホット
アイルH内の暖気は、コールドアイルC側へ回り込むことなく床下の空間308Bへ流れることになる。
【0035】
本実施形態に係る空調システム300は、天井裏の空間の代わりに床下の空間308Bを利用している点以外、第一実施形態に係る空調システム100と同様である。この空調システム300であれば、空調ユニット304から吹出た冷気の流れが整流板311で調整され、
図11に示すように各ラック302に冷気が略均一に流れる。このため、空調ユニット304の吹出し口を任意の位置に配置できる。よって、吹出し口の面積を拡大させることも可能であり、給気速度を均一且つ低速に維持したまま、冷気の吹出風量を増加させることができる。なお、空調ユニット304を床下に設け、床面306に設けた吹出口から冷気が吹出るようにしてもよい。
【0036】
なお、各実施形態について、整流板はラック列の上端や側端に揃えずに、通路の長手方向や高さ方向に張り出していてもよい。その場合、張り出し部分は通気性の無い板材で構成することもできる。また、上記各実施形態では、コールドアイルCに出入りするための通用口を設けることについて触れていないが、整流板に通用扉を設けてもよい。この場合、扉についても整流板で構成することが望ましく、扉はラック列の端部に沿って枠を作れば冷気の流れが乱れにくい。また、板を支える支柱や枠材、ドアノブ等についても冷気の流れの均一性を妨げないように配慮して設計することが望ましい。なお、整流板として布あるいはこれに類するものを用いるような場合は、ファスナーによって開閉部分を形成し、これを通用口としてもよい。
【0037】
また、上記各実施形態では、ラックを隙間無く並べたラック列がサーバールームに整列していたが、各実施形態は一部のラックが間引かれていてもよい。第一実施形態のラック102を一部間引いた変形例を
図12に示す。ラック102を間引くにあたっては、将来の増設を見込んで転倒防止金具や搬入据付のためのレール、位置決めの目印などを、例えば列に沿って形成していてもよい。
【0038】
本変形例では、サーバールーム103に配置されたラック列109の一部のラック102(ここでは、
図12の右側にある空調ユニット104から見て長手方向に延びたラック列109の3つ目のラック102)が間引かれており、間引かれた部分に空間Sが形成されている。空間Sの後ろ側(ホットアイルH側)には、ホットアイルHとコールドアイルCとを隔離する仕切板110と同様の目的で、空間SからホットアイルHへの空気の流れを遮蔽する仕切板110xが設けられている。また、空間Sの上側には、整流板111と同様、空調ユニット104から吹出る冷気の流れを調整する整流板111xが設けられている。
【0039】
ラック102を間引いた部分の拡大図を
図13に示す。本変形例では、ラック102を間引いた空間Sの上側に整流板111xを設けているため、
図13に示すように、ラック102を間引かない場合に比べて冷気の流通路が大きい。よって、気流の高速化を防止して、各ラック102に必要な冷気を低速で供給することができる。冷気が低速になると、渦流や低圧域の発生が防止されるので、ホットアイルHの高温空気がラック102内を逆流して情報処理機器が冷却されなくなる虞が無い。このような態様は、二重床構造にした第二実施形態や、二重床構造とし且つ一重天井構造とした第三実施形態についても同様に適用できる。
【0040】
なお、ラック列109は、例えば
図14に示すように、ラック102が互いに間隔を空けて整列することにより、空間Sが多数設けられていてもよい。空間Sがこのように多数設けられていれば、空間Sが不規則に設けられた上記変形例に比べて冷気の流通路が更に大きくなり、各ラック102に必要な冷気を低速で供給することができる。
【0041】
また、上記各実施形態では、整流板がコールドアイルCを挟む2つのラック列の両端間や上端間に設けられていたが、サーバールーム内を空調ユニットの吹出口がある領域とラックの吸気面がある領域とに仕切るものであれば、各実施形態の整流板は、例えば、ラックの前面(吸気面)を覆うように配置されていてもよい。第一実施形態の整流板111を各ラック102の前面に配置した変形例を
図15に示す。
【0042】
本変形例では、サーバールーム103に配置されたラック列109の吸気面である前面を覆うように整流板111が設置されている。この整流板111は、ラック102の吸気面からやや離間するように設置されていることにより、サーバールーム103内を空調ユニット104の吹出口がある領域とラック102の吸気面がある領域とに仕切っている。これにより、気流の高速化を防止して、各ラック102に必要な冷気を低速で供給することができる。なお、整流板111とラック102の吸気面との間隔は、ラック102に流入する冷気が略均等になるように適宜決定する。このような態様は、二重床構造にした第二実施形態や、二重床構造とし且つ一重天井構造とした第三実施形態についても同様に適用できる。
【0043】
なお、一部のラック102が間引かれており、空間Sが設けられていても、整流板111をラック102の前面に配置することは可能である。この場合の構成を
図16に示す。
【0044】
本変形例では、
図16に示すように、一部のラック102が間引かれており、間引かれた部分に空間Sが形成されている。空間Sの後ろ側(ホットアイルH側)には仕切板110xが設けられており、空間Sの上側には整流板111xが設けられている。ラック列109がこのように構成されていても、空間Sを含むラック列109の前面側を整流板111で覆うことにより、気流の高速化を防止して、各ラック102に必要な冷気を低速で供給することができる。また、ラック列109は、
図14に示したように、ラック102が互いに間隔を空けて整列することにより、空間Sが多数設けられていてもよい。
【0045】
また、
図15や
図16に示したように、ラック列109の吸気面である前面を覆うように整流板111を設置する場合は、例えば、
図17に示すように整流板111を方形状にしてもよいし、
図18に示すように整流板111をアーチ状にしてもよい。すなわち、整流板111は、ラック列109の吸気面を覆うものであれば如何なる形状であってもよい。
【0046】
なお、ラック102の吸気面と整流板111との間の空間は、例えば、省略してもよいし、或いは、ラック筐体が吸気面よりも張り出した構造の場合には該筐体の張り出しに沿って整流材を架け渡してもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、整流部材の一例として整流板を挙げているが、整流部材としては、例えば、ルームエアコンなどで用いられているフィレドンフィルタやサランネットといった網状の整流材であれば、軟質なので施工性にも優れる。整流部材として如何なる材質のものを適用するかは、要求される強度や空調ユニットの風量、冷気の流速などに応じて適宜決定する。
【0048】
なお、ラック102を間引いた部分については、
図13に示したように、ラック102を間引いた空間Sの上側に整流板111xを設けてもよいが、例えば、
図19に示すように、上側は開放して冷気の供給を受けるようにし、空間SのコールドアイルC側、例えばラックの吸気面に沿って整流板111xを張設してもよい。この場合でも、整流板111xを空間Sの上側に設けた場合と同様、気流の高速化を防止して、各ラック102に必要な冷気を低速で供給することができる。このような態様は、二重床構造にした第二実施形
態や、二重床構造とし且つ一重天井構造とした第三実施形態についても同様に適用できる。