(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748486
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】筆記具用キャップ及び筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 23/08 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
B43K9/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-11337(P2011-11337)
(22)【出願日】2011年1月21日
(65)【公開番号】特開2012-152910(P2012-152910A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
【審査官】
宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−133491(JP,U)
【文献】
特開平09−263089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08 − 23/12
B43K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天冠外筒部と天冠内筒部とを備え、前記天冠外筒部の内周面は前記天冠内筒部の外周面から離間して配置されて前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に環状空間を形成する天冠と、
筒体と、前記筒体内に形成されるとともに前記筒体に連結された筒状の取付体と、を備え、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に天冠を収容する収容空間を形成する本体と、を備え、
前記天冠は前記本体の前記収容空間に挿入され、前記天冠外筒部の外周面と前記筒体の内周面とが嵌合し前記天冠内筒部の内周面と前記取付体の外周面とが嵌合することにより前記天冠が前記本体に固定されるとともに、前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に形成された前記環状空間を通じて前記本体の内部と前記天冠の外部との間で空気の流通を可能にすることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記取付体は前記天冠内筒部の外端よりも外側に突き出ることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記天冠外筒部の内端に形成されて、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に空気流通路を形成する切り欠きをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記本体は、前記筒体及び前記取付体を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に装着される筆記具本体と、を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項5】
天冠外筒部と天冠内筒部とを備え、前記天冠外筒部の内周面は前記天冠内筒部の外周面から離間して配置されて前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に環状空間を形成する天冠と、
筒体と、前記筒体内に形成されるとともに前記筒体に連結された筒状の取付体と、を備え、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に天冠を収容する収容空間を形成するキャップ本体と、を備え、
前記天冠は前記キャップ本体の前記収容空間に挿入され、前記天冠外筒部の外周面と前記筒体の内周面とが嵌合し前記天冠内筒部の内周面と前記取付体の外周面とが嵌合することにより前記天冠が前記本体に固定されるとともに、前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に形成された前記環状空間を通じて前記本体の内部と前記天冠の外部との間で空気の流通を可能にすることを特徴とする筆記具用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用キャップ及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばキャップ本体の先端や筆記具本体の後端には、筆記具の装飾としての役割やクリップの台座としての役割を有する天冠が装着される。例えば特許文献1には、筒体の上端に形成される規制壁部内に配置される突起に天冠が装着される。装着にあたって、天冠の取付孔の内周面は突起の外周面に嵌合する。こうして、天冠は所定の取付強度で筒体に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214515号公報
【特許文献2】特開2010−247405号公報
【特許文献3】特開平11−221997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に筆記具の全長は所定の大きさに決められている。キャップ内には筆記具本体の先端が進入することから、筆記具本体との干渉を避けるため天冠のキャップ本体内への進入長さをそれほど大きく設定することはできない。しかも、前述の天冠は取付孔の内周面のみで突起に装着されている。また、筆記具の外径も所定の大きさに決められていることから、キャップ本体と天冠との接触面積の増大を目的としてキャップ本体及び天冠の外径を大きくすることはできない。その結果、前述の天冠では十分な取付強度を確保することができない。加えて、特許文献1では、例えばキャップの誤飲時の窒息を防止する目的で形成されるべき空気流通路が一切考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、天冠の十分な取付強度を確保するとともに空気を流通させる空気流通路を確保することができる筆記具用キャップ及び筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
天冠外筒部と天冠内筒部とを備え、前記天冠外筒部の内周面は前記天冠内筒部の外周面から離間して配置されて前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に環状空間を形成する天冠と、
筒体と、前記筒体内に形成されるとともに前記筒体に連結された筒状の取付体と、を備え、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に天冠を収容する収容空間を形成する本体と、を備え、
前記天冠は前記本体の前記収容空間に挿入され、前記天冠外筒部の外周面と前記筒体の内周面とが嵌合し前記天冠内筒部の内周面と前記取付体の外周面とが嵌合することにより前記天冠が前記本体に固定されるとともに、前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に形成された前記環状空間を通じて前記本体の内部と前記天冠の外部との間で空気の流通を可能にする筆記具が提供される。
【0007】
こうした筆記具によれば、天冠は、天冠外筒部の外周面と天冠内筒部の内周面とで筒体の内周面と取付体の外周面とにそれぞれ嵌合されることによって本体に固定される。その結果、筆記具の全長や外径を大きく設定しなくても、例えば天冠内筒部の内周面のみで本体に固定される場合に比べて天冠は十分な取付強度で本体に固定されることが可能である。しかも、天冠外筒部の内周面と天冠内筒部の外周面との間に形成された環状空間が空気流通路を確立する。その結果、この空気流通路を介して本体の内部と天冠の外部との間で空気を流通させることが可能である。窒息事故の発生は確実に防止される。
【0008】
本発明に係る筆記具では、前記取付体は前記天冠内筒部の外端よりも外側に突き出る。こうした構成によれば、外側への取付体の露出によって筆記具に装飾上の特徴を持たせることができる。しかも、ユーザは外側から取付体を視認することができる。例えば取付体の色を筆記具の色種と同一に設定することによってユーザは簡単に筆記具の色種を確認することができる。また、天冠に筆記具の色種と同一の色種のクリップが一体的に形成されている場合には、ユーザはクリップによっても筆記具の色種を確認することができる。
【0009】
また、本発明に係る筆記具は、前記天冠外筒部の内端に形成されて、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に空気流通路を形成する切り欠きをさらに備える。こうした構成によれば、天冠外筒部の内端は切り欠きの外側で筒体内に大きく進入することが可能である。筆記具の全長及び外径は所定の大きさに制限されることから、筒体内の空間を有効に使用することができる。しかも、天冠外筒部の外周面は大きな面積で筒体の内周面に接触することができる。天冠ではさらに大きな取付強度が確保される。
【0010】
また、本発明に係る筆記具では、前記本体は、前記筒体及び前記取付体を有するキャップ本体を備え、前記筒体には筆記具本体が装着される。
【0011】
また、本発明によれば、
天冠外筒部と天冠内筒部とを備え、前記天冠外筒部の内周面は前記天冠内筒部の外周面から離間して配置されて前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に環状空間を形成する天冠と、
筒体と、前記筒体内に形成されるとともに前記筒体に連結された筒状の取付体と、を備え、前記筒体の内周面と前記取付体の外周面との間に天冠を収容する収容空間を形成するキャップ本体と、を備え、
前記天冠は前記キャップ本体の前記収容空間に挿入され、前記天冠外筒部の外周面と前記筒体の内周面とが嵌合し前記天冠内筒部の内周面と前記取付体の外周面とが嵌合することにより前記天冠が前記本体に固定されるとともに、前記天冠外筒部の内周面と前記天冠内筒部の外周面との間に形成された前記環状空間を通じて前記本体の内部と前記天冠の外部との間で空気の流通を可能にする筆記具用キャップが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筆記具の全長や外径を大きく設定しなくても天冠の十分な取付強度を確保することができるとともに空気を流通させる空気流通路を確保することができる筆記具用キャップ及び筆記具を提供することができる。しかも、天冠を装着する取付体が外側に露出するので、筆記具に装飾上の特徴を持たせることができるとともにユーザは外側から簡単に筆記具の色種を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る筆記具の構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る筆記具の構成を概略的に示す垂直断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る筆記具用キャップの構成を概略的に示す垂直断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る筆記具用キャップの構成を概略的に示す部分拡大垂直断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る筆記具用天冠の構成を概略的に示す側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る筆記具用キャップの構成を概略的に示す別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る筆記具1の構成を概略的に示す側面図である。筆記具1は例えば水性ボールペンである。筆記具1は、キャップ2と、キャップ2の後端から挿入されてキャップ2に装着される筆記具本体3と、を備える。キャップ2は、後端で筆記具本体3の先端部分を受け入れるキャップ本体4と、キャップ本体4の前端に挿入されて固定される天冠5と、天冠5に一体的に連結されるクリップ6と、を備える。クリップ6は、キャップ本体4の前端に形成された切り欠き7を通ってキャップ本体4の外側に突出する。天冠5は、筆記具1の装飾としての役割及びクリップ6の台座としての役割を有する。なお、クリップ6は天冠5と別体で形成されてもよい。なお、本明細書において、筆記具本体3の先端すなわちペン先側を筆記具本体3の「前」側と定義し、筆記具本体3の軸心に沿って筆記具本体3のペン先とは反対側を筆記具本体3の「後」側と定義する。
【0015】
図2は、筆記具1の軸心を含む仮想平面に沿った垂直断面図である。
図2を併せて参照すると、筆記具本体3は、インクを保持するとともに先端にチップを有するリフィル8と、リフィル8の後端部分を受け入れてリフィル8に装着される後軸9と、を備える。リフィル8には水性インクが充填される。その一方で、キャップ2のキャップ本体4は、円筒状の筒体11と、筒体11内に配置されて筒体11に連結される取付体12と、を備える。筒体11と取付体12とは相互に同軸に配置される。筒体11は、後端でリフィル8の先端部分を受け入れるとともに前端で天冠5を受け入れる。なお、本明細書において、天冠5が装着される側をキャップ本体4の「前」側と定義し、筆記具本体3が挿入される側をキャップ本体4の「後」側と定義する。
【0016】
筆記具本体3を構成するリフィル8及び後軸9と、キャップ本体4を構成する筒体11及び取付体12と、天冠5及びクリップ6とはそれぞれ、例えばポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレン(PE)等の樹脂材料から形成される。また、筒体11及び取付体12は一体成形により形成される。同様に、天冠5及びクリップ6は一体成形により形成される。
【0017】
図3はキャップ2の部分拡大垂直断面図である。
図3に示されるように、筒体11は、両端で開放された円筒状の中空体から形成される。取付体12は、筒体11内で筒体11の前端寄りに配置される。取付体12の外周面は筒体11の内周面から離間して配置される。取付体12は、筒体11の後端側に配置される円柱状の大径部13と、大径部13よりも小径に形成されて筒体11の前端側に配置される円柱状の小径部14と、大径部13の前端及び小径部14の後端の間に配置されて大径部13及び小径部14を連結するテーパ部15と、を有する。テーパ部15の径は大径部13から小径部14に向かうにつれて減少する。大径部13、小径部14及びテーパ部15は一体的に形成される。大径部13の後端には、リフィル8のチップを気密状態で収容する収容空間16が形成される。収容空間16は有底孔から形成される。
【0018】
図4は
図3の4−4線に沿った端面図である。
図4を併せて参照すると、取付体12は例えば4つのリブ17で筒体11の内周面に連結される。リブ17は筒体11の内周面及び取付体12の大径部13の外周面に一体的に形成される。ここでは、リブ17は、筆記具1の軸心回りに90°の角度間隔で相互に等間隔に配置される。こうしてリブ17の外側で、筒体11の内周面と大径部13の外周面との間には環状空間すなわち内側空気流通路18が形成される。内側空気流通路18は筒体11の前端と後端との間で空気の流通を可能にする。同時に、内側空気流通路18は、後述の天冠5内に形成される外側空気流通路に接続される。
【0019】
その一方で、
図3から明らかなように、取付体12の大径部13、小径部14及びテーパ部15のそれぞれの外周面と筒体11の内周面との間には天冠5を収容する収容空間19が形成される。天冠5は、収容空間19内に配置される例えば円筒状の天冠外筒部21と、天冠外筒部21内に配置される例えば円筒状の天冠内筒部22と、を備える。天冠内筒部22の外周面は天冠外筒部21の内周面から離間して配置される。天冠5はキャップ本体4と同軸に配置される。天冠内筒部22は天冠外筒部21の外端寄りに配置される。キャップ本体4の前端で外側に露出する天冠内筒部22の外端はキャップ本体4の軸心に沿って天冠外筒部21の外端よりも外側に配置される。天冠外筒部21は外周面で筒体11の内周面に嵌合する。天冠内筒部22は内周面で取付体12の小径部14の外周面に嵌合する。すなわち、天冠5は2箇所でキャップ本体4に嵌合する。天冠外筒部21の内端は前述のリブ17の手前まで延びる。こうして外筒部21の内端は前述の内側空気流通路18内に進入する。
【0020】
図5はキャップ2の前端の部分拡大垂直断面図である。天冠外筒部21の外周面には、天冠外筒部21の軸心回りに途切れなく延びる環状の天冠側嵌合部23が形成される。天冠側嵌合部23は天冠外筒部21の外周面から突出する。天冠側嵌合部23は、筒体11の内周面に形成されて筒体11の軸心回りに途切れなく延びる環状のキャップ側嵌合部24を乗り越えてキャップ側嵌合部24に嵌合する。キャップ側嵌合部24は筒体11の内周面から突出する。こうして筒体11の前端から天冠5の抜けが規制される。加えて、天冠外筒部21の外端には天冠外筒部21の軸心回りに途切れなく延びる外側フランジ25が形成される。外側フランジ25は筒体11の前端の端面に接触する。天冠外筒部21の外周面には前述のクリップ6が一体的に連結される。
【0021】
取付体12の小径部14の前端すなわち外端は天冠内筒部22の外端よりも外側に突き出る。天冠内筒部22は小径部14のみに装着される。天冠外筒部21と天冠内筒部22とは例えば4つのリブ26で相互に連結される。リブ26は天冠外筒部21の内周面と天冠内筒部22の外周面とに一体的に形成される。
図6は
図5の6−6線に沿った端面図である。
図6を併せて参照すると、リブ26は、筆記具1の軸心回りに90°の角度間隔で相互に等間隔に配置される。こうしてリブ26の外側で、天冠外筒部21の内周面と天冠内筒部22の外周面との間に環状空間すなわち外側空気流通路27が形成される。外側空気流通路27は、キャップ本体4の内部と天冠5の外部との間で空気の流通を可能にする。なお、リブ26の角度位置は例えばキャップ本体4の軸心回りでリブ17の角度位置と同一に設定される。ただし、リブ26の角度位置はリブ17の角度位置とずれていてもよい。
【0022】
図5から明らかなように、リブ26は、天冠外筒部21の内周面に沿って天冠外筒部21の内端に向かって延びる延在部26aを備える。すなわち、延在部26aは、天冠内筒部22の内端よりも内側に向かってさらに延びる。延在部26aの内端は、天冠外筒部21の内端よりも天冠外筒部21の外端側に後退した位置で途切れる。延在部26aの一部は大径部13の外周面に受け止められる。すなわち、リブ26の延在部26aは大径部13に接触する。こうした延在部26aは、後述するように、天冠5の取付強度の向上に寄与する。
【0023】
図7は
図5の7−7線に沿った断面図である。
図7に示されるように、天冠外筒部21の内端には、天冠外筒部21の軸心回りに所定の角度範囲に切り欠き28が形成される。
図8及び
図9を併せて参照し、天冠外筒部21の内端には、天冠外筒部21の軸心に対して軸対称に2つの切り欠き28が形成される。切り欠き28内には内側空気流通路18が確保される。切り欠き28の内端は大径部13の前端よりも天冠外筒部21の外端寄りに配置される。その結果、切り欠き28の働きで、内側空気流通路18と、天冠外筒部21と小径部14及びテーパ部15との間に形成される接続路29とが相互に接続される。接続路29は外側空気流通路27と相互に接続される。その結果、接続路29を介して外側空気流通路27及び内側空気流通路18が相互に接続される。
【0024】
以上のような筆記具1では、天冠外筒部21の外周面が筒体11の内周面に嵌合するとともに天冠内筒部22の内周面が取付体12の外周面に嵌合する。従って、例えば天冠5の軸心が筒体11の軸心に対して傾く方向に天冠5に応力が作用すると、例えば筒体11の前端を支点に天冠外筒部21の外周面及び天冠内筒部22の内周面が筒体11の内周面及び取付体12の外周面にそれぞれ押し当てられる。その結果、天冠5の傾きは規制される。従って、天冠5は、筆記具1の全長や外径を大きく設定しなくても、例えば天冠内筒部22の内周面のみで取付体12に受け止められる場合に比べて十分な取付強度でキャップ本体4に装着されることが可能である。
【0025】
加えて、キャップ本体4内では天冠外筒部21の内端に形成される切り欠き28によって内側空気流通路18が確保される。同時に、天冠外筒部21の内端は切り欠き28の外側で筒体11内に大きく進入することが可能である。このため、筆記具1の全長及び外径が所定の大きさに制限される場合でも、筒体11内の空間を有効に使用することができる。しかも、天冠外筒部21の外周面は大きな面積で筒体11の内周面に接触する。例えば
図5から明らかなように、リブ26の延在部26aが大径部13の外周面に受け止められる。すなわち、延在部26aの部分で天冠外筒部21の厚みが筒体11の内周面と大径部13の外周面との間の間隔に一致することから、天冠5ではさらに大きな取付強度が確保される。
【0026】
さらに、天冠5では、天冠外筒部21の内周面と天冠内筒部22の外周面との間に外側空気流通路27が形成される。その結果、例えば幼児の誤飲によってキャップ2が幼児の気管支内に詰まったとしても、例えば
図10に示されるように、キャップ2の先端すなわち外側空気流通路27から接続路28、内側空気流通路18を通ってキャップ2の後端すなわち筒体11の後端まで空気が流通することができる。反対に、キャップ2の後端すなわち筒体11の後端から内側空気流通路18、接続路29を通ってキャップ2の前端すなわち外側空気流通路27まで空気が流通することができる。従って、窒息事故の発生は確実に防止される。
【0027】
また、取付体12は筒体11と一体成形されることから、取付体12は筒体11と簡単に同色で形成されることが可能である。取付体12の小径部14は天冠内筒部22の外端よりも外側に突き出ていることから、筆記具1にデザイン上の特徴を持たせることができる。しかも、ユーザはキャップ2の前端で取付体12を視認することができる。従って、例えばリフィル8内に充填されるインクと筒体11及び取付体12が同色から形成される場合、ユーザは、キャップ2の前端のみから筆記具1を見た場合であっても筆記具1の色種を確認することができる。しかも、筆記具1の色種と同一の色種のクリップ6が一体的に形成されれば、ユーザはクリップ6によっても筆記具の色種を確認することができる。また、取付体12は筒体11に一体的に形成されていることから、筆記具1では部品点数の増大を回避することが可能である。
【0028】
本発明は、以上のような筆記具1に代えて、キャップ2を有しない筆記具1にも適用されることが可能である。この場合、後軸9には前述の筒体11及び取付体12と同様の構造が形成される。天冠5は、後軸9すなわち筒体11の後端に形成される開放端に装着される。天冠5には前述のクリップ6が一体的に形成されてもよい。その他、本発明に係る筆記具1には、前述の水性ボールペンに代えて、例えばゲルインクボールペン、油性ボールペン、サインペンなどの他の筆記具が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 筆記具
2 キャップ
3 筆記具本体
4 本体(キャップ本体)
5 天冠
11 筒体
12 取付体
18 空気流通路(内側空気流通路)
19 収容空間
21 天冠外筒部
22 天冠内筒部
27 環状空間(外側空気流通路)
28 切り欠き