特許第5748499号(P5748499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748499
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20150625BHJP
   G01B 7/02 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   E04G21/02 103Z
   G01B7/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-34755(P2011-34755)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172375(P2012-172375A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】茶園 裕二
(72)【発明者】
【氏名】蔵重 昌直
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−287045(JP,A)
【文献】 実開昭56−163145(JP,U)
【文献】 特開平10−196113(JP,A)
【文献】 特開2005−234664(JP,A)
【文献】 特開昭62−215769(JP,A)
【文献】 特開2011−202383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延在する空所に打設されるコンクリートの打設管理方法であって、
水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線を絶縁材で被覆してなるレベルセンサーを前記空所内に設置し、
前記空所にコンクリートが打設されるに伴い当該コンクリートの比誘電率に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて前記空所に打設されたコンクリートの打ち上がり高さを算出し、
前記打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出し、かつ前記打ち上がり高さから残りの空所へのコンクリートの打設に要する残量を算出し、
前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、
最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測し、
前記打設コンクリートの打ち上がり高さをモニタ表示するとともに前記経過時間をコンクリートが打設される毎に色分けしてモニタ表示する、
ことを特徴とするコンクリートの打設管理方法。
【請求項2】
前記レベルセンサーは、前記空所内で周方向に間隔をおいて複数個分散して設置され、前記各レベルセンサーの設置箇所毎にコンクリートの打ち上がり高さを算出することを特徴とする請求項1記載のコンクリートの打設管理方法。
【請求項3】
前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、
前記コンクリートが打設される毎に該コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの時間を計測し、前記計測した時間からコールドジョイントの発生の有無を判断することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートの打設管理方法。
【請求項4】
前記空所へのコンクリートの打設の終了後に締め固めが行われ、
前記締め固め前後の前記電極線間に生じる静電容量の変化から打設コンクリートの含水率を求めることを特徴とする請求項1乃至に何れか1項記載のコンクリートの打設管理方法。
【請求項5】
上下に延在する空所に打設されるコンクリートの打設管理装置であって、
前記空所内に設置され、水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線を絶縁材で被覆してなるレベルセンサーと、
前記空所にコンクリートが打設されるに伴い当該コンクリートの比誘電率に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて前記空所に打設されたコンクリートの打ち上がり高さを算出する打ち上がり高さ算出手段と、
前記打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出する打設速度算出手段と、
前記打ち上がり高さから残りの空所へのコンクリートの打設に要する残量を算出する残量算出手段とを備え、
前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、
最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測する経過時間計測手段と、
前記打設コンクリートの打ち上がり高さをモニタ表示するとともに前記計測された経過時間を打設コンクリート毎に色分けしてモニタ表示するグラフイック表示制御手段とを更に備える、
ことを特徴とするコンクリートの打設管理装置。
【請求項6】
前記レベルセンサーは、前記空所内で周方向に間隔をおいて複数個分散して設置され、
前記打ち上がり高さ算出手段は、各レベルセンサーの設置箇所毎にコンクリートの打ち上がり高さを算出することを特徴とする請求項記載のコンクリートの打設管理装置。
【請求項7】
前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、
前記コンクリートが打設される毎に該コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの時間を計測する時間計測手段と、
前記計測された時間からコールドジョイントの発生の有無を判断するコールドジョイント有無判断手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項または記載のコンクリートの打設管理装置。
【請求項8】
前記空所へのコンクリートの打設の終了後に締め固めが行われ、
前記締め固め前後の前記電極線間に生じる静電容量の変化から打設コンクリートの含水率を求める含水率算出手段、
を更に備えることを特徴とする請求項乃至に何れか1項記載のコンクリートの打設管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理方法及び装置に関し、さらに詳しくは、時間依存硬化型液状物質であるコンクリートの型枠などの空所への打設状況を連続的に検知・確認し、かつ打設されるコンクリートの品質管理を可能にしたコンクリート打設管理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状充填物の充填状況を検知・確認する事例としては、例えば、燃料や油、水などの一般的な液体を容器やタンクに充填する場合がある。また、時間依存硬化型液状充填物の事例としては、例えば、土木・建築工事における構造物施工時のコンクリート、モルタル、セメントペーストの型枠への打ち込み、あるいは補強工事における既設構造物と補強用鋼板との間への液状エポキシ樹脂のような充填物質などを充填する場合が挙げられる。
【0003】
従来、例えば、型枠へのコンクリートの充填状況を検知する充填物検知方法として、特許文献1乃至4に示す技術が知られている。
これら特許文献に開示された充填物検知方法には、電圧式のセンサー素子を用いた方式のもの、カメラや目視確認による方式のもの、あるいは実際に容器内の充填状況を定規やスケールで計測する方式のもの、または実際の充填量を把握して容器内の充填割合を求める方式のものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8707号公報
【特許文献2】特開2004−301616号公報
【特許文献3】特開2003−202328号公報
【特許文献4】特開2002−47800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1などに示す検知方法のように容器内に設置したセンサーにより充填状況を検知する方法では、センサーを設置した箇所における点での充填状況しか得られず、充填状況を連続的してリアルタイムに把握することができるわけではない。また、コンクリートやモルタルのように自己平坦性を有せず、かつ粘性を有する時間依存硬化型液状物質の場合では、その充填量を把握できても、時間依存硬化型液状物質がどのような形態で充填されているかを把握することは困難である。しかも、時間依存硬化型液状物質の充填状況や充填形状が液状物質の品質に関わるような場合では、時間依存硬化型液状物質の充填状況を立体的に把握することも必要になる。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みなされたもので、時間依存硬化型液状物質であるコンクリートの打設状況を連続的してリアルタイム把握できるとともに、打設されたコンクリートの品質管理を可能にしたコンクリート打設管理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明は、上下に延在する空所に打設されるコンクリートの打設管理方法であって、水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線を絶縁材で被覆してなるレベルセンサーを前記空所内に設置し、前記空所にコンクリートが打設されるに伴い当該コンクリートの比誘電率に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて前記空所に打設されたコンクリートの打ち上がり高さを算出し、前記打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出し、かつ前記打ち上がり高さから残りの空所へのコンクリートの打設に要する残量を算出し、前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測し、前記打設コンクリートの打ち上がり高さをモニタ表示するとともに前記経過時間をコンクリートが打設される毎に色分けしてモニタ表示することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上下に延在する空所に打設されるコンクリートの打設管理装置であって、前記空所内に設置され、水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線を絶縁材で被覆してなるレベルセンサーと、前記空所にコンクリートが打設されるに伴い当該コンクリートの比誘電率に応じて前記一対の電極線間に生じる静電容量の変化に基づいて前記空所に打設されたコンクリートの打ち上がり高さを算出する打ち上がり高さを算出手段と、前記打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出する打設速度算出手段と、前記打ち上がり高さから残りの空所へのコンクリートの打設に要する残量を算出する残量算出手段とを備え、前記空所へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われ、最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測する経過時間計測手段と、前記打設コンクリートの打ち上がり高さをモニタ表示するとともに前記計測された経過時間を打設コンクリート毎に色分けしてモニタ表示するグラフイック表示制御手段とを更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような本発明のコンクリートの打設管理方法及び装置によれば、レベルセンサーの測定値に基づいて、コンクリートの打設速度、空所の容積に対するコンクリートの打設に要する残量を連続してリアルタイムに把握し確認することができる。これにより、空所内へのコンクリートの打設不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかるコンクリート打設管理方法及び装置を既設コンクリート橋脚の外巻コンクリートの打設に適用した場合の装置全体の説明用配置図である。
図2】本発明のコンクリート打設管理方法及び装置に使用されるレベルセンサー及び測定回路の構成図である。
図3】本発明のコンクリート打設管理方法及び装置に使用されるパソコンの機能ブロック図である。
図4】本発明のレベルセンサーを用いたコンクリートの打ち上げ高さと静電容量との関係を示すグラフである。
図5】本発明のレベルセンサーを用いたコンクリートの打ち上げ高さと計測時刻との関係を示すグラフである。
図6】本発明のコンクリート打設管理方法における打設コンクリートの打ち上がり高さ及び打設コンクリートの経過時間を色分けしてモニタ表示した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるコンクリート打設管理方法及び装置を既設コンクリート橋脚の外巻コンクリートの打設に適用した場合の実施の形態について図1乃至図6を参照して説明する。
直径が4mの既設コンクリート橋脚12の外周に打設される外巻コンクリート14は、図1に示すように、高さが3.6m、厚さが200mmの円筒形であり、1回の打設コンクリートの打ち込み高さは50mm程度である。また、この外巻コンクリート14を打設するための型枠10が既設コンクリート橋脚12の外周囲に200mmの間隔を離して設置されている。
【0012】
本実施の形態に示すコンクリート打設管理方法及び装置では、コンクリートが打設される型枠10の内側に、既設コンクリート橋脚12の外周に沿い、少なくとも4本のレベルセンサー16が一定の間隔をおいて鉛直に配設されている。このレベルセンサー16の設置に際しては、既設コンクリート橋脚12の外周と型枠10との間に鉛直に配列された図示省略の上下方向に延在する主筋に沿って配置される。また、各レベルセンサー16の上端には、打設されるコンクリートの比誘電率に応じて発生する静電容量の変化を測定する測定回路18が接続されている。
【0013】
レベルセンサー16は、図2に示すように、既設コンクリート橋脚12の外周と型枠10との間に形成される、上下方向に延在する空所32に設置され、水平方向に一定の間隔をおいて互いに平行して上下方向に延在する一対の電極線1602と、この一対の電極線1602を被覆する絶縁材1604とから構成されている。
測定回路18は、図2に示すように、一対の電極線1602の上端に接続された入力端子1802に接続され、両電極線1602間に一定の直流電圧Vinを印加する直流電源1804と、一対の電極線1602の上端に並列に接続され、打設されるコンクリートの比誘電率と打設コンクリートの打ち上がり高さに比例して一対の電極線1602間に生じる静電容量の変化に応じた充電電圧Etを取り出す固定抵抗1806と、この固定抵抗1806の両端に接続して設けられた出力端子1808とから構成されている。
【0014】
各レベルセンサー16に対応する各測定回路18の出力端子1808は、図1に示すように、ケーブル20を介して切換回路22に接続されている。さらに、切換回路22はパソコン24に接続されている。切換回路22は、各測定回路18の出力端子1808に出力される、充電電圧Etに比例した出力電圧Voutを取り出してパソコン24に供給する。
【0015】
パソコン24は、これに取り込まれた出力電圧Voutに必要な演算処理を施すことにより、打設コンクリートの打ち上がり高さ、コンクリートの打設速度、型枠16へのコンクリートの打設に要する残量、コールドジョイントの発生の有無判定、打設コンクリートの打ち上がり高さのモニタ表示や打設コンクリートの経過時間の色分けモニタ表示、打設コンクリートの含水率算出などの処理を実行する。
【0016】
このためにパソコン24は、図3に示すように、空所に打設されたコンクリートの打ち上がり高さを算出する打ち上がり高さ算出手段2402と、算出された打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出する打設速度算出手段2404と、打ち上がり高さから残りの空所へのコンクリートの打設に要する残量を算出する残量算出手段2406と、空所へのコンクリートの打設が複数回に分けて行われ、コンクリートが打設される毎に該コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの時間を計測する時間計測手段2408と、この計測された時間からコールドジョイントの発生の有無を判断するコールドジョイント有無判断手段2410と、空所へのコンクリートの打設が複数回に分けて行われ、最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測する経過時間計測手段2412と、打ち上がり高さ算出手段2402で算出された打ち上がり高さをモニタ表示するとともに経過時間計測手段2412で計測された経過時間をコンクリートが打設される毎に色分けしてモニタ表示するグラフイック表示制御手段2414と、型枠10へのコンクリートの打設の終了後に締め固めが行われ、該締め固め前後の一対の電極線1602間に生じる静電容量の変化から打設コンクリートの含水率を求める含水率算出手段2416と、これら各手段の結果を表示するモニタ用の表示部2418とを備える。
【0017】
次に、上記のように構成された本実施の形態に示すコンクリート打設管理方法及び装置の動作について説明する。
型枠10に打設されたコンクリート、すなわちフレッシュコンクリート(モルタル)中には多数のイオンが存在しているため、絶縁被覆された一対の電極線1602の間及びその周囲にコンクリートが介在されると、コンクリートを電解質とし、かつその比誘電率に応じたコンデンサC1が形成される。このコンデンサC1は打設コンクリートの打ち上がり高さhに沿って並列に接続されたものとなる。そして、コンクリートの打ち上がり高さhが高くなるにしたがい、並列接続されるコンデンサC1の数が増加し、静電容量が大きくなる。ここで、空気中に晒されている電極線1602間にも空気の誘電率に応じた静電容量のコンデンサC2が並列に形成される。したがって、一対の電極線1602の間に生じる静電容量は、並列接続されるコンデンサC1と並列接続されるコンデンサC2とを加算した値となる。この静電容量は、コンクリートの打つ上がり高さhが変わるにしたがって変化する。
なお、コンクリートを電解質とする電極線1602間の静電容量は、空気の場合の静電容量の約10倍程度である。
【0018】
そこで、入力端子1802から両電極線1602間に一定の直流電圧Vinを印加し、両電極線1602に電荷を与え、両電極線1602間の電圧を測定回路18で測定する。この場合、測定回路18では、出力電圧Vout=Et/(R+2r)の関係が成立することになる。ただし、Rは固定抵抗1806の抵抗値、rは電極線1602の固有抵抗である。
【0019】
測定回路18による出力電圧Voutの測定結果を図4に示す。この図4に示した結果から明らかなように、コンクリートの比誘電率に応じて両電極線1602間に生じる静電容量に比例した出力電圧Voutとコンクリートの打つ上がり高さhとが、ほぼ比例関係近い三次曲線となる。そして、各レベルセンサー16の測定回路18で測定された出力電圧Voutは、切換回路22を通してパソコン24に順次取り込まれる。
【0020】
パソコン24の打ち上がり高さ算出手段2402では、型枠10に打設されたコンクリートの打ち上がり高さhを算出する。その算出結果は、図4に示すように表示部2418にグラフイック表示される。
パソコン24の打設速度算出手段2404では、算出された打ち上がり高さの変化からコンクリートの打設速度を算出する。
また、パソコン24の残量算出手段2406では、算出された打ち上がり高さから型枠10へのコンクリートの打設に要する残量を算出する。
【0021】
さらに、パソコン24の時間計測手段2408では、型枠10へのコンクリートの打設が複数回に分けて行われるに際し、コンクリートが打設される毎に、該コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの時間を計測する。この時、時間計測手段2408で計測された打設毎の時間とコンクリートの打ち上がり高さhの結果を図5に示す。この図5に示した結果は、表示部2418にグラフイック表示される。
また、パソコン24のコールドジョイント有無判断手段2410では、上記計測された時間からコールドジョイントの発生の有無を判断する。その判定結果は、表示部2418に表示される。
【0022】
パソコン24の経過時間計測手段2412では、型枠10へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われるに際し、最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測する。
パソコン24のグラフイック表示制御手段2414では、各レベルセンサー16の設置箇所に対応させた打設コンクリート30の打ち上がり高さhを、図6に示すように横長に展開させた型枠10及びこれに打設したコンクリートを横長に展開してなる画像に重合させて表示部2418にモニタ表示する。
これと同時に、経過時間計測手段2412で計測された経過時間、例えば図6に示す2時間経過、1時間経過、30分経過というように、経過時間の長い打設コンクリートの表示濃度を濃くし、経過時間の短い打設コンクリートに行くに従い表示濃度を順に薄くなる状態に色分けする。そして、この色分け状態のデータを、コンクリートが打設される毎に、型枠10及び打設コンクリートを横長に展開してなる画像に重ねて表示部2418にモニタ表示する。
【0023】
また、パソコン24の含水率算出手段2416では、打設されたコンクリートの締め固め前後の一対の前記電極線1602間に生じる静電容量の変化から打設コンクリートの含水率を算出する。算出された含水率は表示部2418に表示される。
【0024】
このような本実施の形態におけるコンクリート打設管理方法及び装置によれば、一対の電極線1602を有するレベルセンサー16を、円筒状型枠10内の周方向に間隔をおいて、かつ打設されるコンクリートの打ち上がり高さ方向である上下方向に延在して配設し、このレベルセンサー16の一対の電極線1602間に、コンクリートの比誘電率に応じて発生する静電容量の変化を測定回路18で測定し、この測定値に基づいて、コンクリートの打設速度、型枠へのコンクリートの打設に要する残量を算出するようにしたので、コンクリートの打設速度や型枠へのコンクリートの打設に要する残量を連続してリアルタイムに把握し確認することができる。これにより、型枠へのコンクリートの打設不良を防ぐことができる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、一対の電極線1602間に発生する総静電容量はコンクリートの打設量に比例して増減するため、その静電容量を計測することにより、打設コンクリートの打ち上がり高さを測ることができるから、このようなレベルセンサー16を型枠10の形状や把握した状況に合わせて複数設置することにより、その打設状況を把握することができる。さらに、打設コンクリートの打ち上がり高さを、図6に示すように2次元的にあるいは3次元的に図化することにより、打設状況を連続的にリアルタイムで把握することが可能になる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、型枠に複数回に分けてコンクリートが打設される毎に該コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの時間を計測し、この計測された時間からコールドジョイントの発生の有無を判断するように構成したので、コンクリートの打設終了時点から次のコンクリートの打設開始までの間に計測された時間からコールドジョイントの発生の有無を確認することができる。
【0027】
また、本実施の形態によれば、打設されたコンクリートの締め固め前後の一対の電極線1602間に生じる静電容量の変化から打設コンクリートの含水率を求めるようにしたので、打設コンクリートの硬化過程に伴い硬化していく過程において変化する内部含水率を把握することができ、打設コンクリートの硬化強度を推定することができる。これにより、強度管理や品質管理に役立つ。
このような管理により安定した品質の硬化体を形成することが可能となる。また、薄い壁状構造物でコンクリートの打ち込み高さが高く、鉄筋の配置状況も過密な場合やコンクリートを上方に充填するような逆打ちを行う場合など、コンクリートの打設状況の目視確認が困難な場合において、そのだせつ状況を確認することが可能となる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、型枠へのコンクリートの打設は複数回に分けて行われるに際し、最初に打設される打設コンクリートの打設開始初期からの経過時間を計測し、そして、計測された打設コンクリートの打ち上がり高さをモニタ表示するとともに、計測された経過時間をコンクリートが打設される毎に色分けしてモニタ表示するように構成したので、打設コンクリートの打ち上がり状況を視覚的に把握し確認することができる。
【0029】
なお、打設コンクリートの品質管理において、コンクリートの打ちこみ時には、単にコンクリートが打設されることを確認できれば良いというわけではなく、色々な規定がある。これを遵守しているかどうかについても、本発明のコンクリート打設管理方法及び装置を適用することによって担保できるという意味を含んでいる。
例えば、コンクリートの打ち込み速度(打設速さ)について、40〜50cm/時間という標準的な規定がある。これは、あまり早く打ち上げすぎると、コンクリートの沈下によって、鉄筋下の空間に空隙ができ、後にひび割れが生じることを防ぐためである。
また、コンクリートが打ち込まれた時の時間管理も重要になる。次のコンクリートがある所定時間以上経過した後に打ち込まれると一体化とはならず、いわゆるコールドジョイントといった不具合が発生する。これを防ぐために、次のコンクリートが打ち込まれるまでの間隔を1.5時間ですとか、2時間と規定している。
さらに、コンクリートがどれだけ打ち込まれているか、所定数量についてどれだけ残りがあるか、といいた数量を把握することも大切である。また、打設コンクリートの材料が足りなくても駄目であるし、あまり多く余らせてもコストに影響するので、このあたりを精度よく把握したいというのも現場の課題である。
【0030】
また、含水率の測定について、まだ軟らかいコンクリートを打設している状況を把握し、そのデータに基づいて図化したり、品質管理に応用することができる。例えば、コンクリートの流動が低下し、硬化の初期(打ち込み後6〜10時間)には固さの指標である凝結の始発、終結とう用語で表現される物性がある。これは、コンクリートの仕上げやブリーディング(浮いてくる水)水の収束する時間と関係し、重要な要素となる。さらに、固まったあとは圧縮強度という指標があり、型枠の脱型時期や所定の強度が出ているかの目安となります。これらは全てセメントと水の化学反応によって支配されており、水の反応への使われ方、減り方(すなわち、固まりつつあるときは固体中の含水率、飽和度)を計測することでそれらの物性の予測ができる。
このような管理により安定した品質の硬化体を形成することが可能となる。また、薄い壁状構造物でコンクリートの打ち込み高さが高く、鉄筋の配置状況も過密な場合やコンクリートを上方に充填するような逆打ちを行う場合など、充填物の充填状況の目視確認が困難な場合において、その充填状況を確認することが可能となる。
【0031】
また、本発明の対象としては、土木・建築工事におけるコンクリート工事全般に適用するものとして位置づけられる。コンクリート工事としては、コンクリート部材の打ち込み高さの上下差を比較的有する柱部材や壁部材における充填状況、トンネルの覆工コンクリート天端部の打設状況、あるいはコンクリートを上方に打ち上げるような逆打ち部の打設状況の把握において特に効果が大きい。
【符号の説明】
【0032】
10……型枠、16……レベルセンサー、1602……電極線、1604……絶縁材、18……測定回路、22……切換回路、24……パソコン、2402……打ち上がり高さ算出手段、2404……打設速度算出手段、2406……残量算出手段、2408……時間計測手段、2410……コールドジョイント有無判断手段、2412……経過時間計測手段、2414……グラフイック表示制御手段、2416……含水率算出手段、2418……表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6