(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油圧ジャッキと、上記油圧ジャッキによって上下動されるそらせ車と、上記そらせ車に巻き掛けられ、かごに取り付けられたかご吊り梁を介して上記かごを吊り下げる駆動用ロープとを含む油圧式エレベータ用駆動部によって上記かごが昇降される油圧式エレベータを、巻上機の駆動力によって上記かごが昇降されるエレベータにするエレベータの改修方法であって、
上記油圧式エレベータ用駆動部を撤去して、既設の上記かごの昇降経路と昇降路の壁との間に機器設置スペースを設ける駆動部撤去工程、
上記かご吊り梁を上記かごから取り外すかご吊り梁撤去工程、
上記機器設置スペースに上記巻上機を設置する巻上機設置工程、
上記かご吊り梁撤去工程後、水平方向について互いに離して配置された一対のかご吊り車を含むかご吊り車装置を上記かごの下部に設けるかご吊り車装置設置工程、及び
上記かごの下方を通るように主索を各上記かご吊り車に巻き掛けるとともに、上記主索を上記巻上機の綱車に巻き掛け、上記かごを上記主索で吊り下げる主索巻き掛け工程
を備え、
上記かごの下部には、上記かごの両側に配置された一対のかごガイドレールを把持することにより上記かごに制動力を与える既設の非常止め装置が設けられており、
上記かご吊り車装置は、上記非常止め装置の枠に取り付けられることを特徴とするエレベータの改修方法。
上記かご吊り車装置は、上記非常止め装置の枠に取り付けられるブラケット装置と、上記ブラケット装置に取り付けられ、各上記かご吊り車を支持するかご吊り車枠とをさらに有し、
上記ブラケット装置は、上記昇降路の垂直投影面内において、かご緩衝器と重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のエレベータの改修方法。
上記かご吊り車装置設置工程では、上記かご吊り車枠と上記ブラケットとの間に調整板を挿入することにより、上記かご吊り車枠が上記保持位置にあるときの上記かご吊り車の回転軸を水平に調整することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のエレベータの改修方法。
上記かご吊り車枠は、上記かご及び上記かご吊り車枠に着脱可能な連結部材が上記かご及び上記かご吊り車枠間に連結されることにより、上記保持位置に保持されていることを特徴とする請求項8に記載のエレベータ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による改修前の油圧式エレベータを示す構成図である。また、
図2は、
図1の油圧式エレベータを示す平面図である。さらに、
図3は、
図1の油圧式エレベータのかごを示す拡大図である。図において、昇降路1内には、かご2と、油圧ジャッキ4を含む油圧式エレベータ用駆動部3とが設けられている。かご2は、油圧式エレベータ用駆動部3の駆動力により昇降路1内を昇降される。実施の形態1の油圧式エレベータは、昇降路1の垂直投影面(即ち、昇降路1を上下方向に沿って投影したときの投影面)内において、油圧式エレベータ用駆動部3がかご2の後方(かご2からみて乗場と反対側)に配置されたバックプランジャ方式のエレベータとされている。
【0013】
油圧ジャッキ4は、
図1に示すように、オイルが充填された状態で昇降路1内に固定されたシリンダ4aと、シリンダ4aに対して上下動可能なプランジャ4bとを有している。油圧ジャッキ4には、シリンダ4a内に油圧を発生させる油圧パワーユニット(図示せず)が油圧配管(図示せず)を介して接続されている。油圧パワーユニットは、油圧制御盤(図示せず)によって制御される。プランジャ4bは、油圧パワーユニットからの油圧の制御によりシリンダ4aに対して上下動される。
【0014】
プランジャ4bの上部には、そらせ車5が支持枠(図示せず)を介して取り付けられている。そらせ車5は、油圧ジャッキ4の駆動力により上下動される。油圧ジャッキ4の両側には、
図2に示すように、支持枠を介してそらせ車5を案内する一対のそらせ車ガイドレール6が設置されている。
【0015】
かご2の上部及び下部には、ガイドシュー(図示せず)が設けられている。かご2の両側には、
図2及び
図3に示すように、ガイドシューを介してかご2の昇降を案内する一対のかごガイドレール8が設置されている。
【0016】
かご2の下部には、各かごガイドレール8を把持することによりかご2に制動力を与える非常止め装置9が設けられている。非常止め装置9は、
図2に示すように、各かごガイドレール8を個別に把持する一対の把持部10と、各把持部10の動作を連動させる連動機構部11と、かご2の下部に取り付けられ、各把持部10及び連動機構部11を支持する共通の枠である非常止め枠12とを有している。
【0017】
非常止め枠12は、その長手方向を各かごガイドレール8が互いに対向する方向(この例では、かご2の幅方向)と一致させて水平に配置されている。把持部10は、非常止め枠12の両端部に配置されている。非常止め装置9は、
図2に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線A上に配置されている。
【0018】
また、かご2の下部には、非常止め枠12に取り付けられたかご吊り梁13が設けられている。非常止め枠12の中間部には、
図2に示すように、かご吊り梁13を取り付けるための複数の取付用穴(ボルト用穴)14が設けられている。かご吊り梁13は、各取付用穴14に通されたボルトにより非常止め枠12に固定されている。
【0019】
かご吊り梁13は、かご2の後部からかご2の後方へ突出するかご吊り部13aを有している。かご吊り梁13上には、
図2及び
図3に示すように、かご2を受ける防振装置15が固定されている。これにより、かご2は、防振装置15を介してかご吊り梁13に支持されている。
【0020】
かご吊り部13aには、かご2を吊り下げる複数本の駆動用ロープ16の一端部が接続されている。駆動用ロープ16の他端部は、昇降路1の下部に固定されている。駆動用ロープ16は、かご吊り部13aに接続された一端部から、そらせ車5に巻き掛けられた後、昇降路1の下部に固定された他端部に達している。これにより、駆動用ロープ16は、かご吊り梁13を介してかご2を吊り下げている。駆動用ロープ16によるかご2の吊り点Pの位置は、
図2に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、かご2の領域から外れた位置となっている。かご2は、そらせ車5の上下動に連動して昇降路1内を昇降される。なお、油圧式エレベータ用駆動部3は、油圧ジャッキ4、油圧パワーユニット、油圧配管、油圧制御盤、そらせ車5、そらせ車ガイドレール6及び駆動用ロープ16を含んでいる。
【0021】
かご2は、かご室17と、かご室17の幅方向両側に配置された一対の縦柱18aを含むかご枠18とを有している。かご室17は、防振装置15に載せられたかご床枠により支持されている。縦柱18aは、かごガイドレール8に対向して配置されている。
【0022】
かご2には、かご室17のかご出入口を開閉する一対のかごドア19が設けられている。乗場には、乗場出入口を開閉する一対の乗場ドア20が設けられている。かごドア19は、かご2が乗場階に着床することにより、図示しない係合装置により乗場ドア20に係合される。かごドア19は、図示しないドア駆動装置の駆動力により開閉動作を行う。乗場ドア20は、かごドア19に連動して開閉動作を行う。昇降路1の下部には、
図1に示すように、昇降路1の底部へのかご2の衝突による衝撃を緩和するかご緩衝器21が設置されている。
【0023】
次に、エレベータの改修方法について説明する。
図4は、
図1の油圧式エレベータの改修により得られる機械室レスエレベータを示す構成図であり、
図4(a)はかご2が最上階に着床している状態を示す図、
図4(b)はかご2が最下階に着床している状態を示す図である。また、
図5は、
図4の機械室レスエレベータを示す平面図である。さらに、
図6は、
図4の機械室レスエレベータの一部の機器を示す平面図である。
【0024】
図1の油圧式エレベータを
図4の機械室レスエレベータに改修するときには、まず、油圧式エレベータ用駆動部3を昇降路1内から撤去する。これにより、既設のかご2の昇降経路と昇降路1の壁との間には、
図5及び
図6に示すように、油圧式エレベータ用駆動部3が撤去された空間を含む機器設置スペース31が設けられる。油圧式エレベータ用駆動部3を撤去するときには、かご2が落下しないように、既設の非常止め装置9でかご2に制動力を与えてかご2を保持しておく(駆動部撤去工程)。
【0025】
この後、ボルトを外すことによりかご吊り梁13を非常止め枠12から取り外す(かご吊り梁撤去工程)。
【0026】
この後、巻上機32を含む昇降路内機器を機器設置スペース31の所定の位置に新規に設置する。巻上機32は、軸方向寸法よりも径方向寸法が大きな薄型巻上機とされている(巻上機設置工程)。
【0027】
かご吊り梁13を非常止め枠12から取り外した後(かご吊り梁撤去工程後)、水平方向について互いに離して配置された一対のかご吊り車33を含むかご吊り車装置34をかご2の下部に設ける。このとき、かご吊り車装置34は、かご吊り梁13の取付用穴14(
図6)を利用してボルトにより非常止め枠12に取り付けられる(かご吊り車装置設置工程)。
【0028】
この後、かご2の下方を通るように主索35を各かご吊り車33に巻き掛けるとともに、主索35を巻上機32の綱車32aに巻き掛け、かご2を主索35で吊り下げる(主索巻き掛け工程)。主索35としては、例えばロープやベルト等が用いられる。このようにして、油圧式エレベータを機械室レスエレベータに改修する。
【0029】
即ち、昇降路1、かご2、かごガイドレール8、非常止め装置9、かごドア19、乗場ドア20及びかご緩衝器21は、既設のものが流用されている。
【0030】
以下、改修後の機械室レスエレベータの構成について説明する。巻上機32は、
図4に示すように、巻上機固定用基台36を介して昇降路1の下部に設置されている。巻上機32の設置位置の高さは、最下階の床面の位置の高さに合わせて設定されている。
【0031】
昇降路1内には、釣合おもり37がかご2の昇降経路を避けて昇降可能に設けられている。釣合おもり37の両側には、
図5及び
図6に示すように、釣合おもり37を案内する一対の釣合おもりガイドレール38が設置されている。釣合おもり37の上部には、釣合おもり吊り車39が設けられている。
【0032】
かご2の下部に設けられた各かご吊り車33は、
図6に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、非常止め装置9の領域から外れた位置に配置されている。また、各かご吊り車33の一部は、昇降路1の垂直投影面内において、かご2の領域から幅方向両側へ突出している。各かご吊り車33は、
図6に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線Aと平行でかつかご2の領域内を通る直線B上に互いに離して配置されている。
【0033】
昇降路1の上部には、
図4に示すように、水平に配置された支持梁40が設置されている。支持梁40には、かご側返し車41、釣合おもり側返し車42、かご側綱止め部43及び釣合おもり側綱止め部44が設けられている。
【0034】
かご2及び釣合おもり37は、複数本の主索(例えばロープやベルト等)35により昇降路1内に吊り下げられている。主索35は、かご側綱止め部43に接続された一端部35aから、各かご吊り車33、かご側返し車41、巻上機32の綱車32a、釣合おもり側返し車42及び釣合おもり吊り車39の順に巻き掛けられ、釣合おもり綱止め部44に接続された他端部35bに達している。
【0035】
具体的には、主索35は、かご側綱止め部43から下方へ向かった後、一方のかご吊り車33に巻き掛けられて水平方向へ向きを変え、さらに他方のかご吊り車33に巻き掛けられて上方へ向きを変える。他方のかご吊り車33から上方へ向かう主索35は、かご側返し車41に巻き掛けられて反転し、下方へ向かった後、巻上機32の綱車32aに巻き掛けられて反転し、上方へ向かう。この後、巻上機32の綱車32aから上方へ向かう主索35は、釣合おもり側返し車42に巻き掛けられて反転し、再び下方へ向かった後、釣合おもり吊り車39に巻き掛けられて反転し、再び上方へ向かい、釣合おもり側綱止め部44に達している。各かご吊り車33、かご側返し車41、巻上機32の綱車32a、釣合おもり側返し車42及び釣合おもり吊り車39に対する主索35の巻き掛けは、主索巻き掛け工程で行われる。
【0036】
釣合おもり37の下方には、
図4に示すように、釣合おもり37の昇降路1の底部への衝突の衝撃を緩和する釣合おもり緩衝器45が配置されている。釣合おもり緩衝器45は、昇降路1の下部に設置されている。
【0037】
昇降路1内には、エレベータの運転を制御する制御盤(図示せず)が設置されている。巻上機32は、かご2及び釣合おもり37を昇降させる駆動力を発生する。かご2及び釣合おもり37は、制御盤の制御で巻上機32が駆動されて巻上機32の綱車32aが回転されることにより昇降路1内を昇降される。
【0038】
巻上機32、巻上機固定用基台36、釣合おもり37、釣合おもりガイドレール38、釣合おもり吊り車39、支持梁40、かご側返し車41、釣合おもり側返し車42、かご側綱止め部43、釣合おもり側綱止め部44、釣合おもり緩衝器45及び制御盤は、機器設置スペース31の所定の位置に昇降路内機器として新規に設置されている。この例では、
図5に示すように、巻上機固定用基台36、釣合おもり37、釣合おもりガイドレール38、釣合おもり吊り車39、釣合おもり側返し車42及び釣合おもり側綱止め部44が、昇降路1の後壁1aとかご2との間の機器設置スペース31に配置され、かご側返し車41が、昇降路1の一方の側壁1bとかご2との間の機器設置スペース31に配置され、かご側綱止め部43が、昇降路1の他方の側壁1cとかご2との間の機器設置スペース31に配置されている。また、支持梁40は、昇降路1の後壁1a及び各側壁1b、1cのそれぞれとかご2との間の機器設置スペース31に配置されている。
【0039】
ここで、
図7は、
図2の油圧式エレベータのかご2を吊り下げる吊り点の位置と、
図5のロープ式機械室レスエレベータのかご2を吊り下げる吊り点の位置とを比較する平面図であり、
図7(a)は油圧式エレベータのかご2の吊り点の位置を示す図、
図7(b)は機械室レスエレベータのかご2の吊り点の位置を示す図である。
図7に示すように、改修前の油圧式エレベータのかご2の吊り点Pの位置は、
図7(a)に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、かご2の領域外の位置となっている。これに対して、改修後の機械室レスエレベータのかご2の吊り点Qの位置は、主索35がかご2の下方を通されるので、
図7(b)に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、かご2の領域内の位置となっている。即ち、改修後のロープ式機械室レスエレベータのかご2の吊り点Qの位置は、昇降路1の垂直投影面内において、改修前の油圧式エレベータのかご2の吊り点Pの位置よりも距離Lだけかご2の重心Gに近い位置となっている。
【0040】
次に、エレベータの改修時にかご2の下部に新規に設けられるかご吊り車装置34について具体的に説明する。
図8は、
図6のかご2、非常止め装置9及びかご吊り車装置34を示す側面図である。また、
図9は、
図8のかご2、非常止め装置9及びかご吊り車装置34を示す平面図である。さらに、
図10は、
図9のX-X線に沿った断面図である。図において、かご吊り車装置34は、各かご吊り車33と、非常止め枠12に取り付けられたブラケット装置46と、ブラケット装置46に取り付けられ、各かご吊り車33を支持するかご吊り車枠47とを有している。
【0041】
ブラケット装置46は、非常止め枠12の中間部に取り付けられた取付台48と、取付台48に水平に設けられたピン(水平軸)49を中心として回動自在で、かご吊り車枠47が取り付けられたブラケット50とを有している。
【0042】
取付台48は、
図10に示すように、取付用穴14に挿入されたボルト51により非常止め枠12の中間部に下方から固定されている。また、取付台48は、昇降路1の垂直投影面内において、かご緩衝器21と重なる位置に配置されている。従って、かご2が最下階よりもさらに下降したときには、取付台48がかご緩衝器21に衝突する。従って、取付台48は、かご吊り車装置34を非常止め枠12に取り付けるための取付部と、かご緩衝器21の衝突を受ける受け台とを兼用している。
【0043】
ピン49は、非常止め枠12の長手方向に沿って配置されている。ブラケット50は、
図9に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、非常止め枠12の長手方向に対して垂直な方向に沿って配置されている。ピン49には、ブラケット50の一端部が取り付けられている。かご吊り車枠47は、
図10に示すように、ブラケット50の他端部の上面にボルト52により固定されている。
【0044】
かご吊り車枠47は、非常止め枠12の長手方向に沿って配置されている。かご吊り車枠47は、
図9に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線Aと平行でかつかご2の領域内を通る直線B上に配置されている。また、かご吊り車枠47は、昇降路1の垂直投影面内において、両端部を除いて大部分がかご2の領域に重なっている。
【0045】
かご吊り車枠47のブラケット50に固定されている部分は、かご吊り車枠47の中間部である。一方のかご吊り車33はかご吊り車枠47の一端部に支持され、他方のかご吊り車33はかご吊り車枠47の他端部に支持されている。各かご吊り車33は、かご吊り車枠47により上方から覆われている。各かご吊り車33及びかご吊り車枠47は、ピン49を中心とするブラケット50の回動に応じて上下方向へ変位される。
【0046】
ここで、
図11に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線Aに交差する直線C上に各かご吊り車33を配置した場合には、かご吊り車枠47が非常止め装置9の下方に重なる位置に配置される。従って、かご2に対するかご吊り車装置34の下方への突出量が大きくなってしまう。
【0047】
これに対して、本実施の形態では、
図12に示すように、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線Aと平行な直線B上に各かご吊り車33を配置しているので、非常止め装置9とかご吊り車装置34とを水平方向について並べて配置することができる。これにより、かご2に対するかご吊り車装置34の下方への突出量が小さくなり、かご2を含む昇降体全体の高さ寸法の縮小化が図られる。
【0048】
図13は、
図10のブラケット50がピン49を中心に回動するときのかご吊り車装置34を示す断面図である。また、
図14は、
図13のかご吊り車装置34を示す正面図である。かご吊り車枠47は、ブラケット50の取付台48に対する回動により、かご2のかご床枠(かご2の下部)の下面に接触する保持位置と、保持位置よりも下方に位置する外れ位置との間で変位される。
【0049】
主索35が各かご吊り車33に巻き掛けられてかご2が主索35で吊り下げられている状態では、かご吊り車枠47はかご2の荷重により上方への力を受け、かご2のかご床枠に接触する保持位置へ変位されている。これにより、かご2は、かご2の荷重をかご吊り車枠47からかご床枠で受けた状態で主索35により安定的に吊り下げられる。
【0050】
かご2の縦柱18a及びかご吊り車枠47間には、
図9及び
図10に示すように、断面L字状の一対の連結金具(連結部材)53が連結されている。一方の連結金具53はかご吊り車枠47の一端部及び一方の縦柱18a間に連結され、他方の連結金具53はかご吊り車枠47の他端部及び他方の縦柱18a間に連結されている(
図9)。かご吊り車枠47は、連結金具53による縦柱18a及びかご吊り車枠47間の連結により、保持位置に保持されている。これにより、かご吊り車装置34がかご2に対して水平方向(かご2の幅方向)へずれることが防止される。
【0051】
連結金具53は、ボルト54で縦柱18aに固定され、ボルト55でかご吊り車枠47に固定されている。これにより、連結金具53は、かご2の縦柱18a及びかご吊り車枠47のそれぞれに対して着脱可能になっている。連結金具53は、かご吊り車装置設置工程で縦柱18a及びかご吊り車枠47間に取り付けられる。
【0052】
このようなエレベータの改修方法では、油圧式エレベータ用駆動部3を撤去して、既設のかご2の昇降経路と昇降路1の壁との間に機器設置スペース31を設けるとともに、かご2からかご吊り梁13を取り外し、機器設置スペース31に巻上機32を設置するとともに、かご吊り車装置34をかご2の下部に設けるので、既設のかご2等を改修後のエレベータに流用することができる。また、既設の昇降路1内に機器設置スペース31が確保されるので、追加の機器設置スペースを確保する必要がなくなる。従って、エレベータの改修工事の期間の短縮化、廃棄品の削減、及び費用の低減化を図ることができる。また、かご吊り車装置34の各かご吊り車33に主索35を巻き掛けることにより、主索35をかご2の下方に通すことができ、主索35によるかご2の吊り点の位置をかご2の重心に近づけることができる。これにより、主索35によりかご2を安定して吊り下げることができ、かごガイドレール8等の機器に作用するかご2からの負荷を軽減することができる。これにより、改修後のエレベータの長寿命化を図ることができる。
【0053】
また、かご吊り車装置34は、非常止め枠12に取り付けられるので、かご2を加工せずに、かご吊り車装置34をかご2の下部に設けることができる。これにより、エレベータの改修工事の手間をさらに軽減することができ、エレベータの改修工事の期間の短縮化をさらに図ることができる。
【0054】
また、各かご吊り車33は、昇降路1の垂直投影面内において、各かごガイドレール8間を結ぶ直線Aと平行な直線B上に配置されるので、かご吊り車装置34を非常止め装置9に対して水平方向へ並べて配置することができ、かご2の下方へのかご吊り車装置34の突出量を小さくすることができる。これにより、かご2を含む昇降体全体の高さ寸法の縮小化を図ることができる。
【0055】
また、かご吊り車装置34は、非常止め枠12に設けられたかご吊り梁13の取付用穴14を利用して非常止め枠12に取り付けられるので、既設のかご2及び非常止め枠12を加工せずに、かご吊り車装置34をかご2の下部に設けることができる。これにより、エレベータの改修工事の手間をさらに軽減することができ、エレベータの改修工事の期間の短縮化をさらに図ることができる。
【0056】
また、かご吊り車装置34では、非常止め枠12に取り付けられる取付台48に対して回動自在なブラケット50にかご吊り車枠47が取り付けられており、かご吊り車枠47が、ブラケット50の取付台48に対する回動により、かご2の下部に接触する保持位置と、保持位置よりも下方に位置する外れ位置との間で変位されるようになっているので、各かご吊り車33に巻き掛けられた主索35でかご2が吊り下げられることにより、かご吊り車枠47をかご2の下部に下方から接触させることができ、主索35によりかご2を吊り下げたときの荷重をかご2の下部で受けることができる。これにより、かご2を吊り下げたときの荷重を、非常止め枠12だけでなく、かご2の下部にも負担させることができる。従って、非常止め枠12に大きな荷重が作用することを防止することができ、非常止め枠12の破損を防止することができる。これにより、改修後のエレベータの長寿命化をさらに図ることができる。
【0057】
また、かご2の縦柱18a及びかご吊り車枠47間に連結金具53が連結されることにより、かご吊り車枠47が保持位置に保持されるようになっているので、かご吊り車枠47が保持位置からずれることを防止することができ、主索35によるかご2の吊り下げ状態をさらに安定化することができる。
【0058】
また、取付台48は、昇降路1の垂直投影面内において、かご緩衝器21と重なる位置に配置されるので、取付台48にかご緩衝器21の受け台を兼用させることができ、新規に設置される機器の部品点数を削減することができる。
【0059】
なお、上記の例では、かご2の縦柱18a及びかご吊り車枠47間が連結金具53により連結されることにより、かご吊り車枠47が保持位置に保持されるようになっているが、連結金具53はなくてもよい。このようにしても、主索35によりかご2を吊り下げたときの荷重をかご2の下部で受けることができ、非常止め枠12に大きな荷重が作用することを防止することができる。
【0060】
また、上記の例では、かご吊り車枠47がブラケット50に直接取り付けられているが、かご吊り車枠47とブラケット50との間に調整板(はさみ金)を挿入して、かご吊り車枠47とブラケット50との間の隙間寸法を調整するようにしてもよい。
【0061】
即ち、かご吊り車枠47とブラケット50との間に調整板が挿入されていない状態では、かご吊り車枠47のサイズが
図10に示すかご吊り車枠47のサイズよりも大きかったり小さかったりすると、かご吊り車枠47が水平面に対して傾いた状態でかご床枠の下面に接触する。この場合、かご吊り車33の回転軸も水平面に対して傾いてしまう。
【0062】
そこで、かご吊り車装置設置工程では、かご吊り車枠47を水平にした状態でかご床枠の下面に接触させ、水平面に対して傾いたブラケット50とかご吊り車枠47との間に生じた隙間に調整板を挿入し、かご吊り車枠47をブラケット50にボルト52で固定することにより、かご吊り車枠47がかご床枠の下面に接触しているとき(かご吊り車枠47が保持位置にあるとき)のかご吊り車33の回転軸を水平に調整することができる。かご吊り車枠47が保持位置にあるときのかご吊り車33の回転軸が水平に調整されるので、かご吊り車33に主索35をより確実に巻き掛けることができる。
【0063】
また、上記の例では、ブラケット50が取付台48に対して回動自在になっているが、例えばボルトや溶接等によってブラケット50を取付台48に固定してもよい。また、取付台48を介さずにブラケット50を非常止め枠12に例えばボルトや溶接等により直接固定してもよい。ブラケット50を非常止め枠12に直接固定する場合、ブラケット50がかご緩衝器21の受け台を兼ねることとなる。
【0064】
また、上記の例では、機械室レスエレベータが、油圧式エレベータの改修により得られるエレベータとされているが、上記の機械室レスエレベータは新設のエレベータであってもよい。