特許第5748546号(P5748546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748546
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】金属加工装置及び金属部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/16 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B21D7/16
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-98411(P2011-98411)
(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公開番号】特開2012-228714(P2012-228714A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【弁理士】
【氏名又は名称】剱物 英貴
(74)【代理人】
【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
(72)【発明者】
【氏名】富澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】森 弘志
(72)【発明者】
【氏名】岡久 学
(72)【発明者】
【氏名】木下 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】巣山 崇
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−000641(JP,A)
【文献】 特開昭63−308607(JP,A)
【文献】 特開2005−316937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/00− 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の素材に、該素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成しながら、該高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持する産業用ロボットのマニピュレータを、予め設定した移動軌跡の目標値に基づいて移動させて前記高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えることによって、曲げ部材を製造する際に、移動時におけるマニピュレータに作用する荷重及び/又は加速度の測定値と、前記予め設定した荷重及び/又は加速度の目標値との偏差を求め、該偏差と予め定めた荷重及び/又は加速度とから前記マニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた該軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における前記移動軌跡の目標値を修正して設定することを特徴とする金属部材の製造方法。
【請求項2】
長尺の素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成するための高温部形成機構と、該高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時の該マニピュレータに生じる荷重を測定する荷重測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する荷重の測定値と、前記予め設定した荷重の目標値との偏差を求め、該偏差と予め定めた荷重とから前記マニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた該軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における前記移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備えることを特徴とする金属加工装置。
【請求項3】
長尺の素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成するための高温部形成機構と、該高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のマニピュレータに生じる加速度を測定する加速度測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する加速度の測定値と、前記予め設定した加速度の目標値との偏差を求め、該偏差と予め定めた加速度とから前記マニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた該軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における前記移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備えることを特徴とする金属加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工装置及び金属部材の製造方法に関し、具体的には、閉断面を有する長尺の金属製の素材に金属曲げ加工を行って金属曲げ部材を製造する方法と、そのための金属加工装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車や各種機械に用いられる、屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材又は構造部材には、高強度、軽量かつ小型であること等が求められる。従来から、この種の曲げ部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される曲げ部材の軽量化及び小型化には限界があり、その実現は容易なことではない。
【0003】
近年では、例えば非特許文献1に開示されるように、いわゆるチューブハイドロフォーミングによりこの種の曲げ部材を製造することも積極的に検討されている。非特許文献1の28頁にも記載されているように、チューブハイドロフォーミング工法は、素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった様々な問題があり、今後より一層の開発が必要である。
【0004】
一方、これまでにも金属管に曲げ加工を行って、所望の形状を有する曲げ部材を製造するための発明が多数提案されている。
特許文献1には、金属管等を熱処理しながら曲げ加工する発明が開示され、特許文献2には、湾曲した異形断面らせん条材を製造する発明が開示され、特許文献3には、押し曲げ方式の高周波加熱ベンダーに係る発明が開示され、特許文献4には、金属部材の金属加工装置に係る発明が開示されている。
【0005】
本出願人も、先に、特許文献5により、金属加工方法及び金属加工装置を開示した。図6は、この金属加工装置0の概略を示す説明図である。
図6に示すように、金属加工装置0は、基本的に、支持手段2によりその軸方向へ移動自在に支持された鋼管1を上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り装置3により送りながら、支持手段2の下流で曲げ加工を行う曲げ加工方法を用いて曲げ部材8を製造する。すなわち、支持手段2の下流で誘導加熱コイル5により鋼管1を急速に加熱するとともに誘導加熱コイル5の下流に配置される水冷装置6により鋼管1を急冷することによって、鋼管1に部分的に、鋼管1の軸方向へ相対的に移動する高温部1aを形成する。そして、鋼管1を送りながら支持可能であるロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4を例えば産業用ロボットのマニピュレータにより支持し、可動ローラーダイス4の位置を二次元又は三次元で変更することにより高温部1aに曲げモーメントを付与することによって、曲げ加工を行う。このため、この発明によれば、十分な曲げ加工精度を確保しながら高い作業能率で曲げ部材を製造することができる。
【0006】
さらに、本出願人は、特許文献6により、閉じた断面を有する中空の金属材の一端側を固定するクランプと、金属材を加熱する加熱手段と、加熱手段により加熱された部分を冷却する冷却手段とを有する加熱冷却ユニットと、金属材の他端側を保持し、金属材の高温部に曲げモーメントを与える第1マニピュレータとを備える金属加工装置を開示した。この金属加工装置によれば、曲げ部材の製造にかかる装置全体の設置スペースの小型化を図りながら、特に把持手段の動作範囲を可及的抑制することによって装置のコンパクト化及び設備コストの抑制と、把持手段の動作速度を可及的抑制することによる動作速度の変化及び動作時の振動の抑制とを図ることができる。
【0007】
なお、以降の説明では、特許文献5、6により開示された金属加工を「熱間三次元曲げ加工」ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−59263号公報
【特許文献2】特許第2816000号明細書
【特許文献3】特開2000−158048号公報
【特許文献4】特許第3195083号明細書
【特許文献5】特開2007−83304号公報
【特許文献6】国際公開第2010/050460号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】自動車技術 Vol・57,No・6,2003 23〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上説明した加工装置や加工方法は、自動車部品の製造に広く用いられているプレス成形とは異なり、被成形材と接触し成形するための金型を用いるものではないため、一般にダイレス成形と呼ばれる。
【0011】
ダイレス成形は、形状が異なる製品を製造する場合であっても、それに応じた専用の金型を製作する必要がなく、例えば特許文献6により開示された熱間三次元曲げによる金属加工装置の場合には、第1のマニュピュレ一タや第1のマニピュレータに支持される可動ローラーダイスの移動の軌道を変更するだけで、異なる形状の複数種の製品の製造が可能であることから、多種の金型を準備する必要がないという利点を有する。
【0012】
しかしながら、ダイレス成形は、一般的に、被成形材が金型によって拘束される成形に比較すると、被成形材の拘束面積が少ないために生産される製品の加工精度のばらつきが大きいという課題を有する。
【0013】
特に、可動ローラーダイスを支持するマニピュレータが、三次元で複雑な動きを伴い、さらに大きな可搬重量と加工力とが要求されるとともに、1mm以下の加工精度を要求されるような熱間三次元曲げによる金属加工装置においては、特殊な計測手段と制御手段によるマニピュレータの軌跡修正が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明は、長尺の素材に、この素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成しながら、この高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持する産業用ロボットのマニピュレータを、予め設定した移動軌跡の目標値に基づいて移動させて高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えることによって、曲げ部材を製造する際に、移動時におけるマニピュレータに作用する荷重及び/又は加速度の測定値と、予め設定した荷重及び/又は加速度の目標値との偏差を求め、この偏差と予め定めた荷重及び/又は加速度とからマニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における移動軌跡の目標値を修正して設定することを特徴とする金属部材の製造方法である。
【0018】
別の観点からは、本発明は、長尺の素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成するための高温部形成機構と、この高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のこのマニピュレータに生じる荷重を測定する荷重測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する荷重の測定値と、予め設定した荷重の目標値との偏差を求め、この偏差と予め定めた荷重とからマニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備えることを特徴とする金属加工装置である。
【0019】
さらに、本発明は、長尺の素材の軸方向へ移動する高温部を部分的に形成するための高温部形成機構と、この高温部を境として素材の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のマニピュレータに生じる加速度を測定する加速度測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部に曲げモーメント又は剪断力を与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する加速度の測定値と、予め設定した加速度の目標値との偏差を求め、この偏差と予め定めた加速度とからマニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、素材の次以降の素材の加工における前記移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備えることを特徴とする金属加工装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ダイレス成形であっても、製造される曲げ部材の加工精度のばらつきをきわめて小さく抑制することが可能になる。さらに、加工機のメンテナンスも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の加工方法の概略を示すフロー図である。
図2図2は、本発明の加工方法の概略を示すフロー図である。
図3図3は、本発明の金属加工装置の構成の一部を簡略化及び省略して概念的に示す斜視図である。
図4図4は、第1の産業用ロボット、第2の産業用ロボットおよび第3の産業用ロボットの構成例を示す説明図である。
図5図5は、産業用ロボットの関節部の動作を模式的に示す説明図である。
図6図6は、特許文献5により開示された金属加工装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例えば特許文献5、6により開示されるように、長尺の素材1に、この素材1の軸方向へ移動する高温部1aを部分的に形成しながら、高温部1aを境として素材1の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持する産業用ロボットのマニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部1aに曲げモーメントを与えることによって、金属部材を製造するダイレス成形において、製造される金属部材の加工精度のばらつきの原因は、主として、可動ローラーダイス4あるいは、可動ローラーダイス4を支持する産業用ロボット(図示しない)の軌道のばらつきである。
【0023】
ここで、可動ローラーダイス4あるいは産業用ロボットの軌道ずれの要因としては、
(a)各種加工機あるいは産業用ロボットの熱変形
(b)産業用ロボットの各軸の減速機の磨耗
(c)素材1の寸法(外径寸法、肉厚)のばらつき、素材1の材料成分(変形抵抗)のばらつき、素材1の加熱条件(加熱温度)のばらつき、さらには素材1の冷却条件(冷却温度)のばらつきに起因した加工時の荷重の変化
などが考えられる。
【0024】
そのなかでも(c)項の曲げ荷重の変化は、操業条件や素材の条件により発生するため、加工精度に与える影響が大きい。すなわち、曲げ荷重が変化するとロボットの弾性たわみが変化するために軌道が変化することになり、たわみ量は、ロボットの姿勢により変化する。さらに、曲げ荷重の変化に応じて、加速度が変化することになり、この加速度の変化によっても軌道のずれが発生してしまう。すなわち、ロボットの軌道ずれを抑制するためには、曲げ荷重の変化を抑制することが有効である。
【0025】
このように、例えば特許文献6により開示されるダイレス成形により金属部材を量産する際には、これらの要因に起因して、製造される金属部材の加工精度がばらつくおそれがある。
【0026】
そこで、本発明では、産業用ロボットのマニピュレータに作用する荷重(ロボットの弾性変形)及び/又は加速度を計測してこれを監視し、この測定値に基づいて、可動ローラーダイスあるいはロボットの軌道のずれを、正常な軌道データに補正するか、もしくは、金属部材の製造の中止又は警告の出力を行うことによって、金属部材の量産時の加工精度のばらつきを最小化する。
【0027】
以降の説明では、産業用ロボットのマニュピュレ一タにより素材を把持する場合を例にとるが、基本的には特許文献6により開示されるように可動ローラーダイスのような支持装置により素材を移動自在に支持する場合であっても、サーボモータと減速機とを組み合わせた機構となるので、同様である。
【0028】
従来のダイレス成形では、金属部材の形状が与えられると、幾何学的な関係に基づいて、塑性加工的な補正や弾性力学的な補正を加えた制御ロジックをベースとして、また、必要であれば何回かの確認試験を行うことによって、製造された金属部材の形状が目標形状に一致するまで、産業用ロボットのマニュピュレ一タ(素材先端のクランプ位置)の移動軌跡の補正を行い、マニュピュレ一タ(素材先端のクランプ位置)の初期の軌道(基準値、目標値)を決定する。この初期の軌道のデータを用いて曲げ部材の生産が開始される。
【0029】
図1、2は、いずれも、本発明の加工方法の概略を示すフロー図である。
本発明では、図1に示すように、
(i)産業用ロボットのマニュピュレ一タに荷重計及び/又は加速度計を取り付け、動作時のマニピュレータに生じる荷重及び/又は加速度を測定する。
(ii)荷重計により測定した荷重、及び/又は、加速度計により測定した加速度の測定値と、初期の軌道とおりにマニピュレータが動作した際に生じる荷重及び/又は加速度の基準値(初期値、目標値)との偏差を算出して求める。
(iii)求めた偏差が予め定めた閾値を超える場合には、生産の中止あるいは警告の出力を発信する。
【0030】
また本発明では、図2に示すように、
(i)産業用ロボットのマニュピュレ一タに荷重計及び/又は加速度計を取り付け、動作時のマニピュレータに生じる荷重及び/又は加速度を測定する。
(ii)荷重計により測定した荷重、及び/又は、加速度計により測定した加速度の測定値と、初期の軌道とおりにマニピュレータが動作した際に生じる荷重及び/又は加速度の基準値(初期値、目標値)との偏差を算出して求める。
(iii)求めた偏差と、予め定めた荷重計の値及び/又は加速度計の値とより、ロボットの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、前記素材の次以降の素材の加工における移動軌跡の目標値を修正して設定する。なお、軌道のずれの推定値は、1回のデータにより求めてもよいし、あるいは複数回の平均値を用いてもよい。
【0031】
なお、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、三次元で複雑な動きを伴い大きな可搬重量と加工力が要求される金属加工装置において正確な荷重及び/又は加速度を常時計測するには、高感度なセンサー(測定器)に予期せぬ外乱が生じても影響を受け難い位置、具体的には産業用ロボットの本体の下部(架台や床等に取り付けられるユニット部分)又はその近傍に取り付けることが極めて好ましく、最良の設置態様であることが判明した。
【0032】
また、荷重及び/又は加速度の測定器は、取り付け位置で三次元方向に測定できるように、荷重及び/又は加速度の1軸方向の値を測定できる測定器をx、y、z方向に1個ずつ合計3個用いてx、y、z方向成分の値を測定できるようにすることも効果的である。
【0033】
次に、属加工装置の構成を説明する。属加工装置は、以下に列記する4種に大別される。
【0034】
(I)長尺の素材1の軸方向へ移動する高温部1aを部分的に形成するための高温部形成機構と、高温部1aを境として素材1の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のマニピュレータに生じる荷重を測定する荷重測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部1aに曲げモーメントを与えるとともに、荷重測定装置による荷重の測定値と目標値との偏差を求め、この偏差が閾値を超える場合には、金属部材8の製造の中止、又は警告の出力を行う制御装置とを備える金属加工装置。
【0035】
(II)長尺の素材1の軸方向へ移動する高温部1aを部分的に形成するための高温部形成機構と、高温部1aを境として素材1の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のマニピュレータに生じる加速度を測定する加速度測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部1aに曲げモーメントを与えるとともに、加速度測定装置による加速度の測定値と目標値との偏差を求め、この偏差が閾値を超える場合には、金属部材の製造の中止、又は警告の出力を行う制御装置とを備える金属加工装置。
【0036】
(III)長尺の素材1の軸方向へ移動する高温部1aを部分的に形成するための高温部形成機構と、高温部1aを境として素材1の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のこのマニピュレータに生じる荷重を測定する荷重測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部1aに曲げモーメントを与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する荷重の測定値と、予め設定した荷重の目標値との偏差を求め、この偏差と予め定めた荷重とからマニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、素材1の次以降の素材の加工における移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備える金属加工装置。
【0037】
(IV)長尺の素材1の軸方向へ移動する高温部1aを部分的に形成するための高温部形成機構と、高温部1aを境として素材1の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動する産業用ロボットのマニピュレータと、移動時のマニピュレータに生じる加速度を測定する加速度測定装置と、マニピュレータを、予め設定した目標移動軌跡に基づいて移動させて高温部1aに曲げモーメントを与えるとともに、移動時におけるマニピュレータに作用する加速度の測定値と、予め設定した加速度の目標値との偏差を求め、この偏差と予め定めた加速度とからマニピュレータの軌道のずれを推定して求め、求めた軌道のずれに基づいて、素材1の次以降の素材の加工における前記移動軌跡の目標値を修正して設定する制御装置とを備える金属加工装置。
【0038】
図3は、本発明の金属加工装置10の構成の一部を簡略化及び省略して概念的に示す斜視図である。なお、図3に示す、第1の産業用ロボット18〜第3の産業用ロボット28を含む合計6基の産業用ロボットは、いずれも、マニピュレーター等を概念化および簡略化して示す。
【0039】
金属加工装置10は、送り機構11、第1の支持機構12、加熱機構13、及び冷却機構14からなる高温部形成機構40と、第2の産業用ロボット27のマニピュレータを備える第2の支持機構15と、第3の産業用ロボットを備える変形防止機構16とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。
【0040】
[送り機構11]
送り機構11は、鋼管17をその長手方向へ送る。送り機構11は、第1の産業用ロボット18により構成される。
【0041】
以降の説明では、第1の産業用ロボット18や第3の産業用ロボット28にも、第2の産業用ロボット27と同様のロボットを用いた場合を例にとる。
図4は、第1の産業用ロボット18、第2の産業用ロボット27および第3の産業用ロボット28(以下、「各産業用ロボット18、27、28」と略記する)の構成例を示す説明図である。
【0042】
各産業用ロボット18、27、28は、いずれも、いわゆる垂直多関節ロボットである。各産業用ロボット18、27、28は、いずれも、第1軸〜第6軸を有する。
第1軸は、上腕19を水平面内で旋回させる。第2軸は、上腕19を前後に旋回させる。第3軸は、前腕20を上下に旋回させる。第4軸は、前腕20を回転させる。第5軸は、手首20aを上下に旋回させる。さらに、第6軸は、手首20aを回転させる。
【0043】
各産業用ロボット18、27、28は、必要に応じて、第1軸〜第6軸に加えて、上腕19を旋回させる第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸は、いずれも、ACサーボモーターにより駆動される。
【0044】
各産業用ロボット18、27、28それぞれの軸数は、6または7である必要はなく、5であってもよい。これらの産業用ロボットの軸数は、加工に必要な動作を行うことができる軸数であればよい。
【0045】
各産業用ロボット18、27、28は、他の汎用の産業用ロボットと同様に、いずれも、各軸の動作を総合的に制御するコントローラー21と、動作を教示するための入力装置22とを備える。
【0046】
効果器(エンドエフェクタ)24が、第1の産業用ロボット18の手首20aの先端に設けられる。効果器24は、第1の産業用ロボット18の側方近傍に配置されたパレットに収容された鋼管17を把持すること、および、把持した鋼管17を第1の支持機構12および加熱機構13にそれぞれ設けられた貫通孔に貫通させることを行うために用いられる。
【0047】
効果器24は、鋼管17の後部外面を掴む方式でもよいし、あるいは、鋼管17の後部内部に挿入する方式でもよい。図3に示す効果器24は、鋼管17の後部内部に挿入される凸部を先端に有する方式の効果器である。
【0048】
効果器24は、曲げ加工の素材の後部の形状や寸法に応じて適宜変更されて、用いられる。金属加工装置10は、第1の産業用ロボット18の近傍に配置された段替え用ツール置き台30を備える。自動交換機能を有する交換用効果器24−1が段替え用ツール置き台30に載置される。加工素材が鋼管17以外の他の素材17−1(図示例は四角形の横断面を有する角管)に変更される場合、第1の産業用ロボット18が旋回し、効果器24を交換用効果器24−1に交換する。これにより、効果器24の交換が極めて迅速に行われる。
【0049】
図3に破線で示すように、もう1基の第1の産業用ロボット18−1が、第1の産業用ロボット18とともに配置されていてもよい。第1の産業用ロボット18による鋼管17の送り作業中に、第1の産業用ロボット18−1が、他の素材17−1をパレット23から拾い上げ、他の素材17−1を後述する第1の支持機構13に形成された貫通孔に通す。第1の産業用ロボット18−1は、適当な効果器を他の素材17−1の後端に配置されて、待機する。第1の産業用ロボット18による鋼管17の送り作業が終了すると、他の素材17−1のパスラインに合わせて、後述する加熱コイル支持ロボット32による加熱コイル13aの設置位置、および第2の支持機構15による可動ローラーダイス25の設置位置がいずれも変更される。これにより、第1の産業用ロボット18−1が他の素材17−1の送り作業を直ちに開始することができる。このため、金属加工装置10の生産タクトが短縮される。
【0050】
第1の産業用ロボット18−1は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0051】
第1の産業用ロボット18が、パレット23からの鋼管17の移載およびセットを行うので、金属加工装置10のサイクルタイムが短縮され、これにより、金属加工装置10の生産性が高められる。
【0052】
なお、送り機構11として、例えばボールネジを用いた周知慣用の送り装置を用いてもよい。
【0053】
[第1の支持機構12]
第1の支持機構12は、支持台31に搭載される。第1の支持機構12は、第1の位置Aに固定して配置される。第1の支持機構12は、鋼管17を送りながら支持する。第1の支持機構12は、曲げ加工装置0と同様に、ダイスにより構成される。ダイスは、送り機構11により送られる素材を送りながら支持可能である複数のロール12a〜12fを有する。
【0054】
鋼管17は、ロール12a,12bとロール12d,12eとにより送られる。他の素材17−1は、ロール12b,12cとロール12e,12fとにより送られる。すなわち、鋼管17のパスラインがロール12a,12bとロール12d,12eとにより形成されるとともに、他の素材17−1のパスラインがロール12b,12cとロール12e,12fとにより形成される。
【0055】
複数のロール12a〜12fの設置数や形状、さらにはダイス内での配置は、搬送される素材17、17−1の形状や寸法等に応じて、適宜設定される。
このようなダイスは当業者にとっては周知慣用であるので、第1の支持機構12に関する説明は省略する。
【0056】
[加熱機構13]
加熱機構13は、鋼管17の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置される。加熱機構13は、加熱コイル支持ロボット32により支持されて、配置される。加熱機構13は、送られる鋼管17の一部または全部を加熱する。
【0057】
加熱機構13は、誘導加熱装置により構成される。誘導加熱装置は、鋼管17の周囲に離れて配置される加熱コイル13aを有する。この加熱コイル13aは、当業者にとっては周知慣用である。
【0058】
加熱コイル支持ロボット32は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0059】
他の素材17−1を加熱する場合、段替え用加熱コイル置き台33が加熱コイル支持ロボット32の近傍に配置される。自動交換機能付きの交換用加熱コイル13bが、置き台33に載置される。素材が鋼管17以外の他の素材17−1に変更される場合、加熱支持ロボット32が旋回し、加熱コイル13aを加熱コイル13bに交換する。これにより、加熱コイル13bは極めて迅速に交換される。
加熱機構13に関するこれ以上の説明は省略する。
【0060】
[冷却機構14]
冷却機構14は、鋼管17の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに固定して配置される。冷却機構14は、送られる鋼管17における加熱機構13により加熱された部分を冷却する。これにより、冷却機構14は、鋼管17の長手方向の一部に鋼管17の長手方向へ移動する高温部17bを形成する。高温部17bの変形抵抗は大幅に低下する。
【0061】
冷却機構14は、例えば、鋼管17の外面に離れて配置される冷却媒体噴射ノズル14a、14bを有する。冷却水が冷却媒体として例示される。この冷却媒体噴射ノズル14a、14bは、当業者にとっては周知慣用であるので、冷却機構14に関する説明は省略する。
【0062】
[第2の支持機構15]
第2の支持機構15は、鋼管17の送り方向について第3の位置Cよりも下流の第4の位置Dに配置される。第2の支持機構15は、送られる鋼管17の少なくとも一箇所を支持しながら二次元または三次元の方向へ移動する。これにより、第2の支持機構15は、鋼管17の高温部17b(位置B〜C間に存在する部分)に曲げモーメント又は剪断モーメントを与え、鋼管17を所望の形状に曲げ加工又は剪断加工する。
【0063】
第2の支持機構15は、曲げ加工装置0と同様に、可動ローラーダイス25により構成される。可動ローラーダイス25は、鋼管17を送りながら支持可能であるロール対25a、25bを少なくとも一組有する。
【0064】
可動ローラーダイス25は、第2の産業用ロボット27により支持される。第2の産業用ロボット27はCP型のプレイバックロボットである。CP型のプレイバックロボットは、隣接する教示点の間の多数に細分化された軌跡と、これらの多数に細分化された軌跡の通過時刻とを連続的に記憶可能である。
【0065】
第2の産業用ロボット27は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸は、ACサーボモーターにより駆動される。
【0066】
グリッパー27aが、可動ローラーダイス25を保持するための効果器(エンドエフェクタ)として、第2の産業用ロボット27の手首20aの先端に設けられる。効果器は、グリッパー27a以外の型式のものでもよい。
【0067】
可動ローラーダイス25は、第2の産業用ロボット27を含む複数基の産業用ロボットにより、支持されていてもよい。これにより、各産業用ロボットの負荷が軽減されるので、可動ローラーダイス25の移動軌跡の精度が向上する。
【0068】
[変形防止機構16]
変形防止機構16は、鋼管17の送り方向について第4の位置Dよりも下流の第5の位置Eに配置される。変形防止機構16は、送られる鋼管17が自重や冷却により発生する応力によって変形することを防止する。
【0069】
第3の産業用ロボット28が変形防止機構16として用いられる。
第3の産業用ロボット28は、上述した第1の産業用ロボット18や第2の産業用ロボット27と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0070】
鋼管17の外面を掴むグリッパー29が、鋼管17の先端部17aを保持するための効果器(エンドエフェクタ)として、第3の産業用ロボット28の手首20aの先端に設けられる。
【0071】
効果器は、グリッパー29以外の型式の効果器(例えば、鋼管17の開口に挿入するもの)を用いてもよいことはいうまでもない。例えば、段替え用ツール置き台34が第3の産業用ロボット28の近傍に配置される。鋼管17の内部に挿入する型式の交換用グリッパー29−1がこの置き台34に載置される。素材が鋼管17以外の他の素材17−1に変更される場合、第3の産業用ロボット28が旋回してグリッパー29をグリッパー29−1に交換する。これにより、グリッパー29−1が極めて迅速に交換される。
【0072】
ハンドリングロボット37が第3の産業用ロボット28の下流に配置される。ハンドリングロボット37は、手首20aの先端に把持部36を有する。把持部36は、曲げ加工を終了した曲げ加工品35を保持する。ハンドリングロボット37はCP型のプレイバックロボットである。
【0073】
ハンドリングロボット37は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0074】
ハンドリングロボット37は、曲げ加工を終了した曲げ加工品35を保持する。ハンドリングロボット37は、保持した曲げ加工品35を製品置き台38に移載する。
金属加工装置10は、曲げ加工又は剪断加工を、温間または熱間で行うことが望ましい。温間とは、常温に比べて金属材料の変形抵抗が低下する温度域であり、例えば、ある金属材料ではおよそ500℃から800℃の温度域である。熱間とは、常温に比べて金属材料の変形抵抗が低下し、かつ、金属材料の焼入れ可能な温度域であり、例えば、ある鉄鋼材料では870℃以上の温度域である。
【0075】
曲げ加工又は剪断加工が熱間で行われる場合、鋼管17は、鋼管17が焼入れ可能な温度域に加熱された後に所定の冷却速度で冷却することによって、焼入れ処理される。また、曲げ加工又は剪断加工が温間で行われる場合、熱歪み等の加工に伴う鋼管17の歪みの発生が、防止される。
【0076】
金属加工装置10が、鋼管17を二次元または三次元に曲げる曲げ加工又は剪断加工を行うと、送り機構11が第1の産業用ロボット18を有するために、以下に列記する効果が得られる。
【0077】
(a)鋼管17の種類に応じて不可避的に行われる段取替えが、簡単かつ迅速に行われる。このため、金属加工装置10のサイクルタイムの増加が防止され、金属加工装置10の生産性が高まる。また、鋼管17のパスラインが変更される場合に不可避的に行われる段取替えが簡単かつ迅速に行われる。このため、金属加工装置10の生産の自由度および生産性がいずれも高まる。さらに、鋼管17を収容するパレット23が、第1の産業用ロボット18の動作範囲内に設置される。
【0078】
(b)送り機構11を構成する第1の産業用ロボット18が、ハンドリングロボットとしても用いられる。このため、この第1の産業用ロボット18が、素材17を所定の位置にセットした後に直ちに素材17をその軸方向へ送ることができるため、金属加工装置10のサイクルタイムが短縮される。
【0079】
(c)第1の産業用ロボット18の動作タイミングと、例えば、第2の産業用ロボット27、加熱コイル支持ロボット32、第3の産業用ロボット28等の他の装置の動作タイミングとを、一致させることが容易になる。このため、曲げ加工又は剪断加工部品35の寸法精度の向上を図ることが、鋼管17の送り速度を自在に変更すること(例えば、曲げ部材における曲げ部分の送り速度を低下すること等)によって可能になるとともに、第1の産業用ロボット18の起動の際のスタートタイミングと、例えば、第2の産業用ロボット27、加熱コイル支持ロボット32、第3の産業用ロボット28等の他の装置の起動の際のスタートタイミングとを、一致させることが容易になる。
【0080】
(d)第1の産業用ロボット18が送り機構11に用いられるので、金属加工装置10全体の設置スペースが、第1の産業用ロボット18が例えば第1の支持機構12にできるだけ近接して配置されることによって抑制され、これにより、金属加工装置10の設置場所の制限が抑制される。
【0081】
(e)第1の産業用ロボット18が送り機構11の構成要素として用いられるので、例えば、(1)鋼管17が溶接鋼管である場合に、鋼管17に存在する溶接ビード位置が曲げ加工に不具合を生じない位置になるように鋼管17を軸回りに回転させてから、鋼管17を金属加工装置10にセットする動作、(2)鋼管17のセット時の芯ずれを調整する動作、(3)鋼管17の送り経路を調整する動作、(4)鋼管17に微小な繰り返し振動を与えることによって第1の支持機構12や第2の支持機構15の摩擦係数を低下する動作、さらには(5)鋼管17の芯ずれを修正してスティックスリップ現象の発生を未然に防止する動作といった、送り動作以外の動作も行うことができる。このため、金属加工装置10の生産の自由度が高まる。
なお、第1の産業用ロボット18が溶接ビード位置を変更する動作が行う場合、周知慣用の溶接ビード位置検出装置が第1の産業用ロボット18に設けられる。鋼管17の回転角度は溶接ビード位置検出装置の検出値により演算により設定されるようにしてもよい。
【0082】
(f)第1の産業用ロボット18は、生産実績が高い汎用の産業用ロボットにより構成可能であるので、良好なメンテナンス性が得られるとともに、補修や清掃に要する時間や工数が抑制される。
【0083】
(g)第1の産業用ロボット18は、第1の支持機構12の取付け向きに応じて、鋼管17の送り軌道を微修正できるので、曲げ加工又は剪断加工部品35の寸法精度が向上する。
【0084】
以上説明したように、金属加工装置10は、送り機構11、第1の支持機構12、加熱機構13、及び冷却機構14からなる高温部形成機構40と、第2の産業用ロボット27を備える第2の支持機構15と、軌跡測定装置と、制御装置とを備える。
【0085】
略述すると、高温部形成機構40は、略述すると、長尺の素材である鋼管17の軸方向へ移動する高温部17bを部分的に形成する。例えば第1の産業用ロボット18を用いた送り機構11が、第1の支持機構12によりその軸方向へ移動自在に支持される鋼管17を、上流側から下流側へ向けて送る。そして、第1の支持機構12の下流で加熱機構(誘導加熱コイル)13が鋼管17を部分的に例えば焼入れが可能な温度域(Ac点以上)に急速に加熱するとともに、加熱機構13の下流に配置される冷却機構14が鋼管17に冷却水を吹き付けて鋼管17を急冷することによって、加熱機構(誘導加熱コイル)13による鋼管17の加熱位置と冷却水の鋼管17への吹き付け位置との間に、鋼管17の軸方向へ移動するAc点以上の温度の高温部17bを形成する。このように、高温部形成機構40は、長尺の素材である鋼管17の軸方向へ移動する高温部17bを部分的に形成するための、送り機構11、第1の支持機構12、加熱機構13、及び冷却機構14からなる。
【0086】
第2の産業用ロボット27は、高温部17bを境として鋼管17の一方の端部側及び/又は他方の端部側を支持しながら移動するマニピュレータを備える。これらマニピュレータは、鋼管17を送りながら支持可能であるロール対25a、25bを少なくとも一組有する可動ローラーダイス25を把持しながら、可動ローラーダイス25の位置を二次元又は三次元で変更することによって鋼管17の高温部17bに曲げモーメント又は剪断モーメントを付与する。このようにして、第2の産業用ロボット27は、曲げ加工又は剪断加工部品35を製造する。
【0087】
図3中に部分的に拡大して示すように、素材である鋼管17をクランプするマニピュレータ(前腕)20の手首位置に6軸の荷重計及び/又は加速度計39を設置することが好適である。すなわち、垂直荷重FX,FY,FZ及びX軸、Y軸、Z軸それぞれの軸まわりのモーメントMx、My、Mzを測定する。
【0088】
これらの荷重やモーメント、あるいは加速度の測定値から、荷重、モーメント、加速度の基準値と測定値の差を監視することにより、第2の産業用ロボット27のマニピュレータ(前腕)20の軌道を監視することができる。
【0089】
図5は、第2の産業用ロボット27の関節部の動作を模式的に示す説明図である。
図5に示すように、第2の産業用ロボット27の関節の減速機入り側を基準に取り(0点)、モータ出側の変位を考える。加工時に、加速度や加工力などの外力が作用すると、図5に示すように、第2の産業用ロボット27の関節には、X軸周りの回転Vx、y軸周りの回転Vy、Z軸周りの回転Vzが発生する。
【0090】
例えば6軸の多関節型の第2の産業用ロボット27であれば、6軸の各関節とアームの空間位置を考慮して、各減速機やアームのたわみの影響係数を予め求めておき、測定した荷重から、第2の産業用ロボット27のマニピュレータ(前腕)20の先端の軌道を推定することができるため、前腕20の軌道データを補正することが可能になる。
【0091】
この中で、第2の産業用ロボット27の関節の減速機のz軸周りの回転Vzが最も大きく変化するため、第2の産業用ロボット27のマニピュレータ(前腕)20の先端の軌道の推定には、Vzのみを使用しても、実用上十分な精度で第2の産業用ロボット27のマニピュレータ(前腕)20の軌道を推定することができる。
【0092】
なお、モニタリングだけであれば、鋼管17をクランプする手首位置に荷重計及び/又は、加速度計を設置する必要はなく、第2の産業用ロボット27の任意の位置に設定してもよく、直接の計測値の変化のしきい値を決定してもよい。
【符号の説明】
【0093】
0 曲げ加工装置
1 鋼管
1a 高温部
2 支持手段
3 送り装置
4 可動ローラーダイス
4a ロール対
5 誘導加熱コイル
6 水冷装置
8 曲げ部材
10 本発明に係る金属加工装置
11 送り機構
12 第1の支持機構
12a〜12f ロール
13 加熱機構
13a,13b 加熱コイル
14 冷却機構
14a、14b 冷却媒体噴射ノズル
15 第2の支持機構
16 変形防止機構
17 鋼管
17−1 他の素材
17a 先端部
17b 高温部
18、18−1 第1の産業用ロボット
19 上腕
20 前腕
20a 手首
21 コントローラー
22 入力装置
23 パレット
24、24−1 効果器(エンドエフェクタ)
25 可動ローラーダイス
25a、25b ロール対
27 第2の産業用ロボット
27a グリッパー
28 第3の産業用ロボット
29 グリッパー
29−1 交換用グリッパー
30 段替え用ツール置き台
31 支持台
32 加熱コイル支持ロボット
33 段替え用加熱コイル置き台
34 段替え用ツール置き台
35 加工品
36 把持部
37 ハンドリングロボット
38 製品置き台
39 荷重計及び/又は加速度計
40 高温部形成機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6