前記第1状態と前記第2状態は、前記駆動電圧と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングされることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
前記自動チューニング補助回路は、前記第1状態と前記第2状態を、前記駆動電圧に対してある位相差で切りかえる制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電装置。
前記制御部は、前記第1状態と前記第2状態を、前記駆動電圧と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングすることを特徴とする請求項9に記載のワイヤレス給電装置。
前記自動チューニング補助回路は、前記送信アンテナとトランスを介してカップリングされることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のワイヤレス給電装置。
前記自動チューニング補助回路は、前記第1状態と前記第2状態を、前記ワイヤレス給電装置において送信アンテナに印加される駆動電圧と同じ周波数で、かつ前記駆動電圧に対して所定の位相差で切りかえることを特徴とする請求項20に記載のワイヤレス受電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、比較技術に係るワイヤレス送電システムを示す図である。ワイヤレス送電システム1rは、ワイヤレス給電装置2rおよびワイヤレス受電装置4rを備える。ワイヤレス給電装置2rは、送信コイルL
TX、共振用キャパシタC
TX、交流電源10rを備える。ワイヤレス受電装置4rは、受信コイルL
RX、共振用キャパシタC
RX、負荷70を備える。
【0006】
磁場(電場)共鳴型の電力伝送において重要となるのが共振周波数である。送信側のLC共振回路の共振周波数は、f
TX=1/(2π√(L
TX・C
TX))、受信側の共振周波数は、f
RX=1/(2π√(L
RX・C
RX))であり、送受信双方の共振周波数と、交流電源10rの周波数を適切に調節しなければ、効率よく電力伝送が行えない。ところが現実的には、さまざまな要因によって共振周波数は変動する。この変動した共振周波数を、受電装置側において、給電装置から伝送されてくる磁界(電界)そのものにもとづいてチューニングすることは難しい。なぜなら、受電装置側で検出される共振周波数は、受電装置側の共振周波数や位相の状態に応じてさらに変動する可能性があるからである。
【0007】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、共振周波数を自動的にチューニング可能なワイヤレス給電装置、受電装置および給電システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、ワイヤレス受電装置に対して、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を送信するワイヤレス給電装置に関する。ワイヤレス給電装置は、送信コイルを含む送信アンテナと、送信アンテナの両端間に交流の駆動電圧を印加する電源と、送信アンテナとカップリングされ、送信アンテナに第1補正電流を注入し、または送信アンテナから第1補正電流を引き抜く自動チューニング補助回路と、を備える。自動チューニング補助回路は、第1補助コイルを含み、(1)第1補助コイルが送信アンテナにカップリングされて、第1補助コイルに流れる電流に応じた第1補正電流を、送信アンテナに注入しもしくは送信アンテナから引き抜く第1状態と、(2)第1補助コイルが送信アンテナから切り離され、第1補助コイルに流れる電流が、送信アンテナとは独立した電流経路に流れる第2状態と、を交互に繰り返す。
第1状態と第2状態は、駆動電圧と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングされてもよい。
【0009】
送信アンテナの共振周波数が駆動電圧の周波数と一致する場合、第1補助コイルに流れる電流はゼロとなり、第1補正電流もゼロとなる。
送信アンテナの共振周波数が駆動電圧の周波数と一致しない場合、送信アンテナを含む共振回路のインピーダンスは容量性または誘導性となるため、送信アンテナには、駆動電圧に対して遅れたあるいは進んだ位相の電流が発生する。このとき、第1状態と第2状態をスイッチングすると、第1補助コイルに電流が流れ、その大きさ(および向き)は、送信アンテナに流れる電流と駆動電圧が同位相となるように調節される。その結果生成される第1補助電流によって、共振状態において送信アンテナに流れるべき電流と、自動チューニング補助回路が存在しないときに送信アンテナに流れる電流の差分が補正され、給電装置において擬似的な共振状態を実現できる。
この態様によれば、共振用キャパシタの容量値の調節などを行わなくても、送信アンテナを駆動電圧に対して自動的にチューニングすることができる。
【0010】
本発明の別の態様もまた、ワイヤレス給電装置である。このワイヤレス給電装置は、送信コイルを含む送信アンテナと、送信アンテナの両端間に交流の駆動電圧を印加する電源と、送信アンテナとカップリングされ、送信アンテナに補正電流を注入し、または送信アンテナから補正電流を引き抜く自動チューニング補助回路と、を備える。自動チューニング補助回路は、送信アンテナとカップリングされる第1端子および第2端子と、第1端子と第2端子の間に設けられるHブリッジ回路と、Hブリッジ回路の出力端子間に設けられた第3補助コイルと、を含む。
Hブリッジ回路は、駆動電圧と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングされてもよい。
【0011】
この態様によると、駆動電圧のある位相から半周期の間において、Hブリッジ回路の4つのスイッチのうち、対角に位置する第1のペアがオンとなり、続く半周期の間、第2のペアがオンとなる。第1のペアがオンする半周期、第3補助コイルに流れる電流が第1の向きで送信アンテナに供給され、第2のペアがオンする半周期、第3補助コイルに流れる電流が第2の向きで送信アンテナに供給される。
送信アンテナの共振周波数が駆動電圧の周波数と一致する場合、第3補助コイルに流れる電流はゼロとなる。
送信アンテナの共振周波数が駆動電圧の周波数と一致しない場合、送信アンテナを含む共振回路のインピーダンスは容量性または誘導性となるため、送信アンテナには、駆動電圧に対して遅れたあるいは進んだ位相の電流が発生する。このとき、Hブリッジ回路をスイッチングすると、第3補助コイルに電流が流れ、その大きさ(および向き)は、送信アンテナに流れる電流と駆動電圧が同位相となるように調節される。その結果生成される第3補助電流によって、共振状態において送信アンテナに流れるべき電流と、自動チューニング補助回路が存在しないときに送信アンテナに流れる電流の差分が補正され、給電装置において擬似的な共振状態を実現できる。
この態様によれば、共振用キャパシタの容量値の調節などを行わなくても、送信アンテナを駆動電圧に対して自動的にチューニングすることができる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、ワイヤレス給電装置から送信される電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を受信するワイヤレス受電装置に関する。ワイヤレス受電装置は、受信コイルを含む受信アンテナと、受信アンテナとカップリングされ、受信アンテナに第1補正電流を注入し、または受信アンテナから第1補正電流を引き抜く自動チューニング補助回路と、を備える。自動チューニング補助回路は、第1補助コイルを含み、(1)第1補助コイルが受信アンテナにカップリングされて、第1補助コイルに流れる電流に応じた第1補正電流を、受信アンテナに注入しもしくは受信アンテナから引き抜く第1状態と、(2)第1補助コイルが受信アンテナから切り離され、第1補助コイルに流れる電流が、受信アンテナとは独立した電流経路に流れる第2状態と、を交互に繰り返す。
第1状態と第2状態は、電力信号と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングされてもよい。
【0013】
受信アンテナの共振周波数が電力信号の周波数と一致する場合、第1補助コイルに流れる電流はゼロとなり、第1補正電流もゼロとなる。
受信アンテナの共振周波数が電力信号の周波数と一致しない場合、受信アンテナを含む共振回路のインピーダンスは容量性または誘導性となるため、受信アンテナには、電力信号に対して遅れたあるいは進んだ位相の電流が発生する。このとき、第1状態と第2状態をスイッチングすると、第1補助コイルに電流が流れ、その大きさ(および向き)は、受信アンテナに流れる電流と電力信号が同位相となるように調節される。その結果生成される第1補助電流によって、共振状態において受信アンテナに流れるべき電流と、自動チューニング補助回路が存在しないときに受信アンテナに流れる電流の差分が補正され、受電装置において擬似的な共振状態を実現できる。
この態様によれば、共振用キャパシタの容量値の調節などを行わなくても、受電アンテナを電力信号に対して自動的にチューニングすることができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様もまた、ワイヤレス受電装置である。ワイヤレス受電装置は、受信コイルを含む受信アンテナと、受信アンテナとカップリングされ、受信アンテナに補正電流を注入し、または受信アンテナから補正電流を引き抜く自動チューニング補助回路と、を備える。自動チューニング補助回路は、受信アンテナとカップリングされる第1端子および第2端子と、第1端子と第2端子の間に設けられるHブリッジ回路と、Hブリッジ回路の出力端子間に設けられた第3補助コイルと、を含む。
Hブリッジ回路は、電力信号と同じ周波数、もしくはその奇数倍または奇数分の1倍の周波数でスイッチングされてもよい。
【0015】
この態様によると、電力信号のある位相から半周期の間において、Hブリッジ回路の4つのスイッチのうち、対角に位置する第1のペアがオンとなり、続く半周期の間、第2のペアがオンとなる。第1のペアがオンする半周期、第3補助コイルに流れる電流が第1の向きで受信アンテナに供給され、第2のペアがオンする半周期、第3補助コイルに流れる電流が第2の向きで受信アンテナに供給される。
受信アンテナの共振周波数が電力信号の周波数と一致する場合、第3補助コイルに流れる電流はゼロとなる。
受信アンテナの共振周波数が電力信号の周波数と一致しない場合、受信アンテナを含む共振回路のインピーダンスは容量性または誘導性となるため、受信アンテナには、電力信号に対して遅れたあるいは進んだ位相の電流が発生する。このとき、Hブリッジ回路をスイッチングすると、第3補助コイルに電流が流れ、その大きさ(および向き)は、受信アンテナに流れる電流と電力信号が同位相となるように調節される。その結果生成される第3補助電流によって、共振状態において受信アンテナに流れるべき電流と、自動チューニング補助回路が存在しないときに受信アンテナに流れる電流の差分が補正され、受電装置において擬似的な共振状態を実現できる。
この態様によれば、共振用キャパシタの容量値の調節などを行わなくても、受信アンテナを電力信号に対して自動的にチューニングすることができる。
【0016】
本発明の別の態様は、ワイヤレス給電システムに関する。ワイヤレス給電システムは、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を送信する上述のワイヤレス給電装置と、電力信号を受信する上述のワイヤレス受電装置と、を備えてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のある態様によれば、共振周波数を自動的にチューニングできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」、あるいは「部材Aが、部材Bとカップリングされた状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
(ワイヤレス給電装置)
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係るワイヤレス給電装置2の構成を示す回路図である。ワイヤレス給電装置2は、ワイヤレス受電装置(不図示)に対して電力信号S1を送出する。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0023】
ワイヤレス給電装置2は、電源10、送信アンテナ20、自動チューニング補助回路(ATAC:Auto Tuning Assist Circuit)30、制御部40を備える。
【0024】
送信アンテナ20は、その第1端21とその第2端22の間に設けられた送信コイルL
TXを含む。共振用キャパシタC
TXは、送信コイルL
TXと直列に設けられる。共振用キャパシタC
TXと送信コイルL
TXは入れかえてもよい。
【0025】
電源10は、送信アンテナ20の両端間に、所定の送信周波数f
TXを有する交流の駆動電圧V
DRVを印加する。駆動電圧V
DRVは、矩形波、台形波、正弦波をはじめとする任意の交流波形であって構わない。本実施の形態では、駆動電圧V
DRVは、第1電圧レベル(電源電圧V
DD)と第2電圧レベル(接地電圧V
GND=0V)でスイングする矩形波であるものとする。
【0026】
電源10は、直流電源12、第1ハイサイドスイッチSWH1、第1ローサイドスイッチSWL1を含む。直流電源12は、直流の電源電圧V
DDを生成する。第1ハイサイドスイッチSWH1および第1ローサイドスイッチSWL1は、直流電源12の出力端子と固定電圧端子(接地端子)の間に順に直列に設けられる。制御部40は、第1ハイサイドスイッチSWH1および第1ローサイドスイッチSWL1を、送信周波数f
TXで相補的にスイッチングする。電源10は、Hブリッジ回路で構成してもよい。
【0027】
自動チューニング補助回路30は、送信アンテナ20と直接的、あるいは間接的にカップリングされ、送信アンテナ20に第1補正電流I
Aを注入(ソース)し、または送信アンテナ20から第1補正電流I
Aを引き抜く(シンク)。
図2では、自動チューニング補助回路30は、送信アンテナ20に直接カップリングされる。本実施の形態では、送信アンテナ20から自動チューニング補助回路30に向かう向き(シンク)を、第1補正電流I
Aの正とする。
【0028】
自動チューニング補助回路30は、第1補助コイルL
A1を含む。自動チューニング補助回路30は、第1状態φ1と第2状態φ2を、駆動電圧V
DRVと同じ周波数f
TXで交互に繰り返す。
第1状態φ1では、第1補助コイルL
A1が送信アンテナ20にカップリングされて、第1補助コイルL
A1に流れる電流に応じた第1補正電流I
Aが、送信アンテナ20に注入され、もしくは送信アンテナ20から引き抜かれる。
第2状態φ2では、第1補助コイルL
A1が送信アンテナ20から切り離され、第1補助コイルL
A1に流れる電流I
LA1が、送信アンテナ20とは独立した電流経路に流れる。
【0029】
具体的には、自動チューニング補助回路30は、第1補助コイルL
A1に加えて、第1端子31、第2端子32、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2、制御部40を備える。第1端子31、第2端子32は、送信アンテナ20とカップリングされる。第1スイッチSW1および第1補助コイルL
A1は、第1端子31と第2端子32の間に直列に設けられる。第2スイッチSW2は、第1補助コイルL
A1に対して並列に設けられる。
【0030】
制御部40は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を、駆動電圧V
DRVと同じ周波数f
TXで、かつ駆動電圧V
DRVに対してある位相差θ
TXで相補的にスイッチングする。具体的には、第1状態φ1において第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフし、第2状態φ2において第1スイッチSW1をオフ、第2スイッチSW2をオンする。好ましくは位相差θ
TXは、+0°もしくは180°付近であってもよい。すなわち制御部40の一部は、自動チューニング補助回路30を構成する。
【0031】
第1状態φ1において、第1スイッチSW1がオンすることで第1補助コイルL
A1が送信アンテナ20とカップリングされる。第2状態φ2においては第2スイッチSW2がオンすることで、第1補助コイルL
A1に流れる電流I
ALが、第2スイッチSW2を含むループ経路に流れる。
【0032】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ等を用いて構成できる。
図3(a)、(b)は、MOSFETを用いたスイッチの構成例を示す図である。
【0033】
図3(a)は、Nチャンネル、
図3(b)は、PチャンネルのMOSFETを用いた構成を示す。MOSFETのバックゲートをソースと接続すると、バックゲートとドレイン間のボディダイオードがゲート電圧によらずに導通状態となる。したがって、MOSFETを単体で用いたスイッチでは、片方向に対する電流を阻止することができない。本明細書においてこのようなスイッチを片方向スイッチという。
【0034】
図3(c)〜(f)のスイッチは、2つのNチャンネルMOSFET、もしくは2つのPチャンネルMOSFETが、それらのボディダイオードが逆向きとなるように接続される(バックトゥバック接続)。
図3(c)〜(f)では、オフ状態において、いずれの方向にも電流が流れない。本明細書においてこのようなスイッチを、双方向スイッチという。
【0035】
本実施の形態において、各スイッチSW1、SW2は、片方向スイッチ、双方向スイッチを用いて構成することができる。なお、片方向スイッチを用いる場合、各スイッチSW1、SW2と直列に整流用のダイオードを設ける必要がある。この変形例については後述する。
【0036】
以上がワイヤレス給電装置2の構成である。続いてその動作を説明する。
【0037】
スイッチSW1、SW2はそれぞれ、オフ状態においていずれの方向にも電流を流さない双方向スイッチであるものとする。
【0038】
図4は、
図2のワイヤレス給電装置2の動作を示す波形図である。本明細書における波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。
【0039】
図4は、上から順に、駆動電圧V
DRV、送信コイルL
TXと共振用キャパシタC
TXの両端間の共振電圧V
TX、送信アンテナ20に流れる共振電流I
TX、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第1補正電流I
A、第1補助コイルL
A1に流れる電流I
LA1、を示す。スイッチを示す波形は、ハイレベルがオン状態を、ローレベルがオフ状態を示す。また共振電流I
TXおよび共振電圧V
TXは、自動チューニング補助回路30を動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態における波形を示す。
【0040】
図4に示すように、矩形波の駆動電圧V
DRVが送信アンテナ20に印加される。制御部40は、駆動電圧V
DRVと同じ周波数で、かつ駆動電圧V
DRVと同相θ
TX(=0°)で、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を相補的にスイッチングする。
【0041】
第1状態φ1と第2状態φ2を繰り返すことにより、第1補助コイルL
A1の電流I
LA1の大きさおよび向きは、駆動電圧V
DRVと共振電流I
TXの位相差がゼロとなるように、すなわち共振状態が成り立つポイントに収束する。
【0042】
第2状態φ2では、電流I
LA1は第2スイッチSW2を含むループに流れ、そのレベルは一定に保たれる。そして第1状態φ1では、電流I
LA1が、第1補正電流I
Aとして送信アンテナ20に供給される。自動チューニング補助回路30は、第1補正電流I
Aを送信アンテナ20に供給する補正電流源と把握することができる。
図5は、
図2のワイヤレス給電装置2の等価回路図である。
【0043】
図6(a)は、自動チューニング補助回路30を動作させない状態、
図6(b)は、自動チューニング補助回路30を動作させたときの波形図である。
はじめに
図6(a)を参照し、自動チューニング補助回路30を動作させない状態、すなわち第1スイッチSW1をオフで固定し、第2スイッチSW2をオンで固定した状態について説明する。これは、補正電流I
Aがゼロの状態を示す。
送信アンテナ20のインピーダンスZは式(1)で与えられ、その共振周波数f
cは式(2)で与えられる。なお、ここでは抵抗成分を無視しているが、実際の回路には直列抵抗が寄与することは言うまでもない。
Z=jωL
TX+1/(jωC
TX) …(1)
f
C=1/(2π√(L
TX・C
TX)) …(2)
【0044】
送信アンテナ20は、駆動電圧V
DRVの周波数f
TXが共振周波数f
cより高い(f
TX>f
c)とき誘導性となり、送信アンテナ20に流れる共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVの位相に対して遅れる。反対に、周波数f
TXが共振周波数f
cより低い(f
TX<f
c)とき容量性となり、共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVに対して進む。
【0045】
図6(a)は、f
c>f
TXの状態を示しており、共振電流I
TXの位相は、駆動電圧V
DRVに対して位相差φ進んでいる。φが90°でないのは、共振回路に直列の抵抗成分(不図示)が存在するためである。非共振状態ではインピーダンスZが高くなるため、共振電流I
TXの振幅が小さくなる。この状態では大きな電力を伝送することはできない。
【0046】
続いて、
図6(b)を参照し、自動チューニング補助回路30を動作させたときの動作を説明する。
【0047】
自動チューニング補助回路30を動作させると、送信アンテナ20には、駆動電圧V
DRVに対してある位相差を有する補正電流I
Aが供給される。その結果、共振電流I
TXの位相が駆動電圧V
DRVの位相と一致し、擬似的な共振状態となる。これにより、共振電流I
TXの振幅は、非共振状態よりも大きくなる。
【0048】
図7は、f
c<f
TXの場合の、自動チューニング補助回路30による疑似共振状態を説明するフェーザ図(ベクトル図)である。
補正電流I
A(f
TX)は、
図4の補正電流I
Aの基本波成分(f
TX)を意味する。この補正電流I
A(f
TX)は、駆動電圧V
DRVに対して位相差θを有する。
【0049】
「重ねの理」によって、共振電流I
TXは、駆動電圧V
DRVによって誘起される電流成分I
DRVと、補正電流I
A(f
TX)の和で与えられる。補正電流I
Aの振幅が最適化されることにより、2つの電流成分I
DRVとI
A(f
TX)の合成電流、すなわち共振電流I
TXの位相を、駆動電圧V
DRVの位相(0°)と一致させることができ、疑似共振状態が実現できることが分かる。
【0050】
以上がワイヤレス給電装置2の原理および動作である。
このようにワイヤレス給電装置2によれば、送信アンテナ20の共振周波数f
cを調節することなく、疑似共振状態を実現するように回路の状態を自動的にチューニングすることができる。ワイヤレス送電では、ワイヤレス給電装置2とワイヤレス受電装置4の位置関係によって、共振周波数が時々刻々と変化するが、ワイヤレス給電装置2によれば、その変化に高速に追従することができ、高効率な電力伝送が可能となる。
【0051】
またワイヤレス給電で大電力を伝送しようとすると、共振用キャパシタC
TXの両端間の電圧は非常に大きくなるため、バリコン(バリキャップ)の利用は制約される。ワイヤレス給電装置2によれば共振用キャパシタC
TXの容量値を調節する必要がないため、バリコン等を使用する必要がないという利点もある。
【0052】
ここでは、第1スイッチSW1を、第1ハイサイドスイッチSWH1(駆動電圧V
DRV)の位相に対してθ
TX=0°の位相でスイッチングさせる場合を説明したが、位相差θ
TXは0°である必要はなく、180°であってもよい。この場合、キャパシタ電流I
Aの向きが逆となるように自動的に調節される。
【0053】
すなわち、f
c<f
TXの場合、θ
TX=0°または180°とすることにより、疑似共振状態を実現できる。
位相差θ
TXは、0°もしくは180°から外れていてもよい。この場合、
図7に示すベクトル図において、電流成分I
DRVとI
Aの位相差θ
TXが90°ではなくなるが、この場合でも、それらを合成した共振電流I
TXの位相が0°となるように、補正電流I
Aが自動的に調節される。ただし、位相差θ
TXが0°もしくは180°に近いほど、補正電流I
Aの振幅を小さくできるという利点がある。
【0054】
ワイヤレス給電装置2は、f
c<f
TXの場合のみでなく、f
c>f
TXの場合においても、自動的に疑似共振状態を実現できる。この場合、θ
TX=180°とすることが好ましい。
【0055】
図8は、f
c>f
TXの場合の、自動チューニング補助回路30による疑似共振状態を説明するフェーザ図である。駆動電圧V
DRVの位相を0°、補正電流I
Aの位相をθとしている。f
c>f
TXにおいて、電流の位相は電圧に対して進むが、この場合であっても、疑似共振状態が実現できる。
【0056】
なおf
c>f
TXにおいて、位相差θ
TXを0°付近としてもよい。この場合、疑似共振状態が得られるように、自動的に補正電流I
Aの向きが逆になる。
【0057】
続いて、ワイヤレス給電装置2の変形例を説明する。各変形例は、任意の他の変形例と組み合わせることができ、このような組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
【0058】
(第1の変形例)
図9は、第1の変形例に係る自動チューニング補助回路30aの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路30aは、
図2の自動チューニング補助回路30に加えて、第2補助コイルL
A2を備える。
第1状態φ1において、第2補助コイルL
A2が送信アンテナ20から切り離され、第2補助コイルL
A2に流れる電流I
LA2が、送信アンテナ20とは独立した電流経路に流れる。第2状態φ2において、第2補助コイルL
A2が送信アンテナ20にカップリングされて、第2補助コイルL
A2に流れる電流I
LA2に応じた第2補正電流I
A2が、送信アンテナ20に注入され、もしくは送信アンテナ20から引き抜かれる。
【0059】
第3スイッチSW3および第2補助コイルL
A2は、第1端子31と第2端子32の間に直列に設けられる。第4スイッチSW4は、第2補助コイルL
A2と並列に設けられる。制御部40aは、第1状態φ1において第4スイッチSW4をオンし、第2状態φ2において第3スイッチSW3をオンする。
【0060】
図10は、
図9の自動チューニング補助回路30aの動作を示す波形図である。共振電流I
TXおよび共振電圧V
TXは、自動チューニング補助回路30aを動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態における波形を示す。
【0061】
図9の自動チューニング補助回路30aは、
図2の自動チューニング補助回路30を2個備え、それらが逆相で動作するものと理解できる。そして、第1補助コイルLA1による補正電流I
A1と、第2補助コイル
LA2による補正電流I
A2は逆極性となる。送信アンテナ20に供給される補正電流I
Aは、2つの補正電流I
A1、I
A2の合計となる。
【0062】
図9の自動チューニング補助回路30aによっても、擬似的な共振状態を実現できる。
【0063】
(第2の変形例)
第2の変形例では、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2は、片方向スイッチを用いて構成される。
図11(a)、(b)は、第2の変形例に係る自動チューニング補助回路の構成を示す回路図である。
【0064】
図11(a)、(b)において、第1スイッチSW1は、片方向スイッチSW1aと、それと直列に設けられた整流ダイオードD1bを含む。整流ダイオードD1bは、片方向スイッチSW1aの逆導通素子である寄生ダイオード(ボディダイオード)D1aと逆向きに配置される。スイッチSW1aと整流ダイオードD1bの順序は入れ替えてもよい。
【0065】
第2スイッチSW2も第1スイッチSW1と同様に構成され、片方向スイッチSW2aと、それと直列に設けられた整流ダイオードD2bを含む。整流ダイオードD2bは、片方向スイッチSW2aの寄生ダイオード(ボディダイオード)D2aと逆向きに配置される。スイッチSW2aと整流ダイオードD2bの順序は入れ替えてもよい。
【0066】
整流ダイオードD1b、D2bを、寄生ダイオードD1a、D2aと逆向きに設けることにより、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2が意図せずにオンするのを防止することができる。
【0067】
なお、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を双方向スイッチで構成する場合、自動チューニング補助回路30は、正、負両方の補正電流I
Aを生成可能であった。これに対して、
図11(a)の自動チューニング補助回路30は、正の補正電流I
Aを生成できるが、負の補正電流I
Aは生成できない。反対に
図11(b)の自動チューニング補助回路30は、負の補正電流I
Aを生成できるが、正の補正電流I
Aは生成できない。したがって、
図11(a)、(b)の自動チューニング補助回路30では、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2のスイッチングの位相が制約される。
【0068】
(第3の変形例)
図9の自動チューニング補助回路30aも、片方向スイッチを用いて構成できる。
図12は、第3の変形例に係る自動チューニング補助回路の構成を示す回路図である。
図12の自動チューニング補助回路30aにおいて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2は、
図11(a)と同様に構成され、第3スイッチSW3および第4スイッチSW4は、
図11(b)と同様に構成される。
図12の自動チューニング補助回路30aによっても、
図9の自動チューニング補助回路30aと同様の効果を得ることができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
図13は、第2の実施の形態に係る自動チューニング補助回路30bを備えるワイヤレス給電装置2bの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路30bは、送信アンテナ20とカップリングされ、送信アンテナ20に補正電流I
Aを注入し、または送信アンテナ20から補正電流I
Aを引き抜く。
【0070】
自動チューニング補助回路30bは、送信アンテナ20とカップリングされる第1端子31および第2端子32と、Hブリッジ回路36と、第3補助コイルL
A3と、制御部40bと、を備える。Hブリッジ回路36は、第1端子31と第2端子32の間に設けられ、駆動電圧V
DRVと同じ周波数でスイッチングされる。第3補助コイルL
A3は、Hブリッジ回路36の出力端子P1、P2間に設けられる。制御部40bは、Hブリッジ回路36を駆動電圧V
DRVに対してある位相差θ
TXでスイッチングする。
【0071】
図14は、
図13のワイヤレス給電装置2の動作を示す波形図である。
図14において、Hブリッジ回路36は、駆動電圧V
DRVと同相(θ
TX=0°)でスイッチングする。
駆動電圧V
DRVのある位相から半周期の間において、Hブリッジ回路36の4つのスイッチSW11〜SW14のうち、対角に位置する第1のペアSW11、SW14がオンとなり、続く半周期の間、第2のペアSW12、SW13がオンとなる。第1のペアSW11、SW14がオンする半周期、第3補助コイルL
A3に流れる電流I
LA3が第1の向きで送信アンテナ20に供給され、第2のペアSW12、SW13がオンする半周期、第3補助コイルL
A3に流れる電流I
LA3が第2の向きで送信アンテナ20に供給される。
【0072】
スイッチSW11〜SW14は、片方向スイッチ、あるいは双方向スイッチを用いて構成することができるが、一旦、双方向スイッチを用いた構成および動作を説明する。なお、片方向スイッチを用いる場合、各スイッチSW11〜SW14と直列に整流用のダイオードを設ける必要がある。この変形例については後述する。
【0073】
図13の自動チューニング補助回路30bの動作原理は、
図2あるいは
図9の自動チューニング補助回路と同様である。自動チューニング補助回路30bが生成する補正電流I
Aの波形は、
図10の補正電流I
Aと同様となる。
図13のワイヤレス給電装置2bによっても、これまで説明したワイヤレス給電装置と同様の効果を得ることができる。
【0074】
さらに
図13の自動チューニング補助回路30bによれば、
図9の自動チューニング補助回路30aと同一の機能を、ひとつのコイルで実現することができる。
【0075】
続いて、第2の実施の形態に係る自動チューニング補助回路30bの変形例を説明する。
図15は、
図13の自動チューニング補助回路30bの変形例を示す回路図である。この変形例では、スイッチSW11〜SW14は、片方向スイッチを用いて構成される。
【0076】
各スイッチSW11〜SW14の構成は、
図11(a)、(b)あるいは
図12に関して説明した通りである。スイッチSW11、SW12は、
図11(a)のスイッチSW1、SW2と同様に構成され、スイッチSW13、SW14は、
図11(b)のスイッチSW1、SW2と同様に構成される。
図15の変形例によれば、
図13の自動チューニング補助回路30bと同様の効果を得ることができる。
【0077】
自動チューニング補助回路30、30a、30b(以下、単に自動チューニング補助回路30という)と送信アンテナ20のカップリングの形態には、さまざまな変形例がある。
図16(a)〜(g)は、自動チューニング補助回路30と送信アンテナ20のカップリングの続形態を示す回路図である。
【0078】
図16(a)〜(d)では、自動チューニング補助回路30が送信アンテナ20と直接カップリングされる。
図16(e)、(f)では、自動チューニング補助回路30が送信アンテナ20と磁気的に結合される。
【0079】
図16(a)は、
図2や
図9と同様である。
図16(b)では、自動チューニング補助回路30は、共振用キャパシタC
TXとカップリングされる。具体的には、自動チューニング補助回路30の第1端子31は、共振用キャパシタC
TXの一端に接続され、第2端子32は、共振用キャパシタC
TXの他端に接続される。
【0080】
図16(c)の送信コイルL
TXにはタップ33が設けられる。自動チューニング補助回路30の第1端子31は、タップ33と接続され、第2端子32は、送信コイルL
TXの一端と接続される。
【0081】
図16(d)の送信アンテナ20は、送信コイルL
TXと直列に設けられた2つの共振用キャパシタC
TX1、C
TX2含む。自動チューニング補助回路30の第1端子31は、一方の共振用キャパシタC
TX2の一端に接続され、第2端子32は、共振用キャパシタC
TX2の他端と接続される。
【0082】
図16(e)のワイヤレス給電装置は、送信コイルL
TXと磁気的に結合された第1コイルL1をさらに備える。自動チューニング補助回路30の第1端子31は、第1コイルL1の一端と接続され、第2端子32は、第1コイルL1の他端と接続される。
【0083】
図16(f)のワイヤレス給電装置は、トランスT1をさらに備える。トランスT1の1次巻線W1は、送信アンテナL
TXと直列に設けられる。自動チューニング補助回路30の第1端子31は、トランスT1の2次巻線W2の一端と接続され、第2端子32は、2次巻線W2の他端と接続される。
【0084】
図16(g)のワイヤレス給電装置2では、電源10と送信アンテナ20が、トランスT2により結合される。別の観点から見れば、電源10とトランスT2が、送信アンテナ20の両端間に駆動電圧V
DRVを印加する電源10aを構成する。
図16(g)において自動チューニング補助回路は図示していないが、
図16(a)〜(f)のいずれの態様で、送信アンテナ20とカップリングすればよい。
【0085】
図16(a)〜(g)の変形例、あるいはこれらに類似する回路においても、擬似的な共振状態を実現できる。
また、
図16(c)〜(f)の構成では、
図16(a)、(b)に比べて、自動チューニング補助回路30の端子31−32間の電圧を下げることができる。したがって、自動チューニング補助回路30を構成するスイッチに低耐圧素子を利用することができ、設計が容易となり、あるいは低コスト化できる。
【0086】
第1、第2の実施の形態に係るワイヤレス給電装置において、自動チューニング補助回路のスイッチングの周波数は、駆動電圧V
DRVの周波数と同じ場合を説明したが、それらの周波数が異なる場合であっても、疑似共振状態を実現できる。たとえば、自動チューニング補助回路30のスイッチング周波数が、駆動電圧V
DRVの周波数の奇数倍である場合、あるいは、駆動電圧V
DRVの周波数の奇数分の1倍である場合にも、疑似共振状態を実現できる。スイッチング周波数と駆動電圧の周波数の関係は、システム全体の効率等を考慮して決めればよい。
【0087】
(ワイヤレス受電装置)
上述した自動チューニング補助回路は、ワイヤレス受電装置にも利用することができる。以下では、ワイヤレス受電装置について説明する。
【0088】
(第1の実施の形態)
図17は、第1の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4の構成を示す回路図である。ワイヤレス受電装置4は、上述の、あるいは全く別構成のワイヤレス給電装置から送信される電力信号S1を受ける。電力信号S1は、電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0089】
ワイヤレス受電装置4は、受信アンテナ50、自動チューニング補助回路60および電力を供給すべき負荷70を備える。負荷70には、図示しない整流回路、検波回路などが内蔵されてもよい。
【0090】
受信アンテナ50は、第1端51と第2端52の間に直列に設けられた受信コイルL
RXおよび共振用キャパシタC
RXを含む。
【0091】
自動チューニング補助回路60は、受信アンテナ50とカップリングされ、受信アンテナ50に第1補正電流I
Aを注入し、または受信アンテナ50から第1補正電流I
Aを引き抜く。
【0092】
自動チューニング補助回路60は、第1端子61、第2端子62、第1補助コイルL
A1、第5スイッチSW5、第6スイッチSW6、制御部64を備え、上述の自動チューニング補助回路30と同様に構成される。
【0093】
自動チューニング補助回路60は、第1状態φ1と第2状態φ2を、電力信号S1と同じ周波数で交互に繰り返す。第1状態φ1では、第5スイッチSW5がオンし、第1補助コイルL
A1が受信アンテナ50にカップリングされて、第1補助コイルL
A1に流れる電流I
LA1に応じた第1補正電流I
Aが、受信アンテナ50に注入され、もしくは受信アンテナ50から引き抜かれる。
第2状態φ2では、第6スイッチSW6がオンし、第1補助コイルL
A1が受信アンテナ50から切り離され、第1補助コイルL
A1に流れる電流I
LA1が、受信アンテナ50とは独立した電流経路(SW6)に流れる。
【0094】
制御部64は、第1状態φ1と第2状態φ2を、ワイヤレス給電装置(不図示)において送信アンテナに印加される駆動電圧と同じ周波数で、かつ駆動電圧に対して所定の位相差で切りかえてもよい。
【0095】
第5スイッチSW5、第6スイッチSW6は、片方向スイッチ、あるいは双方向スイッチで構成される。片方向スイッチで構成する場合、制御部64は、各スイッチを、それぞれの逆導通素子に電流が流れない位相でスイッチングする。
【0096】
負荷70は、受信アンテナ50にカップリングされる。負荷70と受信アンテナ50の接続形態は特に限定されない。
【0097】
以上がワイヤレス受電装置4の構成である。続いてその動作を説明する。
図18は、
図17のワイヤレス受電装置4の等価回路図である。ワイヤレス給電装置2における自動チューニング補助回路30と同様に、自動チューニング補助回路60は、補正電流I
Aを受信アンテナ50に供給する補正電流源と把握することができる。
【0098】
図19は、
図17のワイヤレス受電装置4の動作を示す波形図である。上から順に、受信コイルL
RXと共振用キャパシタC
RXの両端間の共振電圧V
RX、受信アンテナ50に流れる共振電流I
RX、第5スイッチSW5、第6スイッチSW6、補正電流I
A、第1補助コイルL
A1の電流I
LA1を示す。共振電流I
RXおよび共振電圧V
RXは、実線が自動チューニング補助回路60を動作させてから十分な時間が経過した後の定常状態(疑似共振状態)における波形を、破線が自動チューニング補助回路60を動作させない非共振状態における波形を示す。
【0099】
疑似共振状態を実現するためには、第5スイッチSW5および第6スイッチSW6を適切な周波数f
TXおよび位相θ
RXでスイッチングさせる必要がある。そこでワイヤレス給電装置2からワイヤレス受電装置4に対して、周波数f
TXおよび位相θ
RXを示すデータを送信してもよい。あるいはワイヤレス受電装置4は、位相θ
RXをスイープし、最適な位相θ
RXを検出してもよい。
【0100】
以上がワイヤレス受電装置4の動作である。
このように
図17のワイヤレス受電装置4によれば、共振用キャパシタC
RXの容量値を調節することなく、自動的に共振状態を実現することができる。
【0101】
続いてワイヤレス受電装置4の変形例を説明する。
【0102】
(第1の変形例)
図20は、第1の変形例に係る自動チューニング補助回路60aの構成を示す回路図である。自動チューニング補助回路60aは、
図9の自動チューニング補助回路30aと同様に構成され、
図17の自動チューニング補助回路60に加えて、第7スイッチSW7、第8スイッチSW8、第2補助コイルL
A2を備える。この変形例によれば、
図17のワイヤレス受電装置4と同様に、疑似共振状態を実現できる。
【0103】
(第2の変形例)
ワイヤレス給電装置2と同様に、ワイヤレス受電装置4のスイッチを片方向スイッチを用いて構成することができる。第2の変形例に係るワイヤレス受電装置4aでは、自動チューニング補助回路60は片方向スイッチを用いて構成され、具体的には
図11(a)、(b)の自動チューニング補助回路30と同様に構成される。
【0104】
(第3の変形例)
ワイヤレス受電装置4において、第1の変形例と第2の変形例の組み合わせも有効である。第3の変形例に係る自動チューニング補助回路60は、
図12の自動チューニング補助回路30と同様に構成される。
【0105】
(第2の実施の形態)
図21は、第2の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4bの構成を示す回路図である。ワイヤレス受電装置4bは、自動チューニング補助回路60bを備える。自動チューニング補助回路60bは、
図13の自動チューニング補助回路30bと同様に、Hブリッジ回路66と第2制御部64bを含む。第2制御部64bは、Hブリッジ回路66の第1のペアSW11、SW14がオンとなる第1状態と、第2のペアSW12、SW13がオンとなる第2状態と、を電力信号S1と同じ周波数でスイッチングする。
【0106】
図21の自動チューニング補助回路60bによれば、第1の実施の形態の第1あるいは第3の変形例に係るワイヤレス受電装置4aと同等の機能が、単一の補正コイルで実現できる。
【0107】
第2の実施の形態に係るワイヤレス受電装置4においても、片方向スイッチを用いることができる。この変形例では、自動チューニング補助回路60bを、
図15の自動チューニング補助回路30bと同様に構成すればよい。
【0108】
図22(a)〜(f)は、自動チューニング補助回路60と受信アンテナ50のカップリングの形態を示す回路図である。
図22(a)〜(f)は、
図16(a)〜(f)に対応する。
図22(a)〜(d)では、自動チューニング補助回路60が受信アンテナ50と直接カップリングされる。
図22(e)、(f)では、自動チューニング補助回路60が受信アンテナ50と磁気的に結合される。
【0109】
図22(a)は、
図17と同様である。
図22(b)では、自動チューニング補助回路60は、共振用キャパシタC
RXとカップリングされる。
図22(c)の受信コイルL
RXにはタップ63が設けられる。自動チューニング補助回路60の第1端子61は、タップ63と接続され、第2端子62は、受信コイルL
RXの一端と接続される。
【0110】
図22(d)の受信アンテナ50は、受信コイルL
RXと直列に設けられた2つの共振用キャパシタC
RX1、C
RX2含む。自動チューニング補助回路60の第1端子61は、一方の共振用キャパシタC
TX2の一端に接続され、第2端子62は、共振用キャパシタC
TX2の他端と接続される。
【0111】
図22(e)のワイヤレス受電装置は、受信コイルL
RXと磁気的に結合された第2コイルL2をさらに備える。自動チューニング補助回路60の第1端子61は、第2コイルL2の一端と接続され、第2端子62は、第2コイルL2の他端と接続される。
【0112】
図22(f)のワイヤレス受電装置は、トランスT2をさらに備える。トランスT2の1次巻線W1は、受信アンテナL
RXと直列に設けられる。自動チューニング補助回路60の第1端子61は、トランスT2の2次巻線W2の一端と接続され、第2端子62は、2次巻線W2の他端と接続される。
【0113】
図22(a)〜(f)の変形例、あるいはこれらに類似する回路においても、擬似的な共振状態を実現できる。
また、
図22(c)〜(f)の構成では、
図22(a)、(b)に比べて、自動チューニング補助回路60の端子61−62間の電圧を下げることができる。したがって、自動チューニング補助回路60を構成するスイッチに低耐圧素子を利用することができ、設計が容易となり、あるいは低コスト化できる。
【0114】
第1、第2の実施の形態に係るワイヤレス受電装置において、自動チューニング補助回路のスイッチングの周波数は、電力信号の周波数と同じ場合を説明したが、それらの周波数が異なる場合であっても、疑似共振状態を実現できる。たとえば、自動チューニング補助回路60のスイッチング周波数が、電力信号S2の周波数の奇数倍である場合、あるいは、電力信号S2の周波数の奇数分の1倍である場合にも、疑似共振状態を実現できる。スイッチング周波数と
電力信号の周波数の関係は、システム全体の効率等を考慮して決めればよい。
【0115】
(ワイヤレス送電システム)
上述のワイヤレス給電装置とワイヤレス受電装置を組み合わせることにより、ワイヤレス送電システムを実現できる。
【0116】
ワイヤレス給電装置2、ワイヤレス受電装置4それぞれに自動チューニング補助回路30、60を設けることにより、負荷70に対して最大電力を送信することが可能となる。当然ながら、変形例を含めた任意のワイヤレス給電装置2と、任意のワイヤレス受電装置4が組み合わせ可能であることは言うまでもない。
【0117】
なお必ずしもワイヤレス給電装置2、ワイヤレス受電装置4の両方に自動チューニング補助回路を実装する必要はない。ワイヤレス給電装置2にのみ自動チューニング補助回路30を設け、ワイヤレス受電装置4は、従来のように共振用キャパシタC
RXの調節を行ってもよい。
反対にワイヤレス受電装置4にのみ自動チューニング補助回路60を設け、ワイヤレス給電装置2は、従来のように共振用キャパシタC
TXの調節を行ってもよい。
【0118】
さらには、ワイヤレス給電装置2にのみ自動チューニング補助回路30を設け、ワイヤレス受電装置4は、一切の調節機構を有さなくてもよい。あるいはワイヤレス受電装置4にのみ自動チューニング補助回路60を設け、ワイヤレス給電装置2は、一切の調節機構を有さなくてもよい。
これらの場合、単一の自動チューニング補助回路によって、電源10と負荷70の間のインピーダンスマッチングがとれるようにチューニングされ、高効率な電力伝送が可能となる。
【0119】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0120】
自動チューニング補助回路30を備えるワイヤレス給電装置2においては、共振用キャパシタC
TXを省略しても疑似共振状態が実現できる場合がある。この場合、共振用キャパシタC
TXを省略してもよい。同様に自動チューニング補助回路60を備えるワイヤレス受電装置4において、共振用キャパシタC
RXを省略してもよい。
【0121】
ワイヤレス給電装置2は、所定の規則(暗号コード)に従い、駆動電圧V
DRVの周波数f
TXおよび位相の少なくとも一方を変化させ、電力信号S1を暗号化する。暗号コードを知っているワイヤレス受電装置4は、その暗号コードにもとづき、自動チューニング補助回路60のスイッチング周波数、位相を制御する。その結果、電力信号S1が暗号化されている場合でも、それを復号して電力供給を受けることができる。暗号コードを知らないワイヤレス受電装置は、自動チューニング補助回路60のスイッチを適切に制御できないため、電力を受信することができなくなる。ワイヤレス電力伝送では、悪意の利用者による盗電が問題となりうるが、自動チューニング補助回路を利用することにより、この問題を解決することができる。
あるいは、単一のワイヤレス給電装置2が複数のワイヤレス受電装置4に給電する際に、自動チューニング補助回路を利用することにより端末毎の給電量を制御できる。
【0122】
自動チューニング補助回路30の用途は、ワイヤレス電力電送には限定されず、チューニングが必要なさまざまな用途に利用できる。
【0123】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。