(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属部材の光軸方向の長さは前記円柱側面の光軸方向の長さ以下で、かつ、前記金属部材は前記第1光学面及び前記第2光学面の外周部に挟まれた前記円柱側面に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学部品。
【背景技術】
【0002】
光通信等の光学モジュールとして、光学部品の取付台にV溝(V−GROOVE)を設けたものが知られている。取付台のV溝は、光ファイバやレンズを載置し固定するための位置決め機構であり、たとえばレーザダイオードとの光軸合わせを容易にすることができる。これにより、光学モジュールの小型化が促進された。
【0003】
取付台への固定方法として、接着剤を用いる方法と、はんだを用いる方法が知られているが、接着剤を用いる方法では接着剤から蒸発する成分がレンズにとって好ましくなかった。このため、接着剤を用いて固定されていた従来のレンズ構造に対して、はんだで固定できるようにレンズの側面をメタライズ処理することが検討された。
【0004】
たとえば、特許文献1に開示されているように、球状のレンズにメタライズを形成しておいて、基板メタライズとの間にはんだを充填して固定する光学モジュールの実装構造が知られている。しかしながら、球状のレンズは載置時に回転自由度をもっているので、球状の小型レンズにおいて部分メタライズ面が基板メタライズと対向するように載置することが極めて困難であり、この実装構造は実用的でなかった。
【0005】
球状レンズの替わりに、円柱側面と光学レンズ面とを形成したレンズを用いて、円柱側面でレンズの取付台にあるV溝への位置決めをおこなう光学モジュールがある。この場合は、レンズの円柱側面をはんだで固定できるように、円柱側面のみにメタライズをおこなうことができればよい。しかし、光学レンズ面にメタライズがされてしまうと光学特性を損なうので、光学レンズ面を保護して円柱側面のみにメタライズを形成しなければならなかった。そのためには、光学レンズ面に保護材料を形成する工程や特殊な製造装置が必要であり、小型レンズの量産に適用することは困難である。
【0006】
そこで、小型レンズを部分メタライズする替わりに、特許文献2に開示されているように、薄肉環状の金属環にガラスを充填してプレス成形によってレンズを形成した光学部品の製造方法が提案された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、環状の金属環にガラスを充填する光学部品の製造方法では、金属環として内径2mm程度よりも小径化する機械加工が難しかった。さらに、実用的に製作が可能な環状の金属加工は、肉厚が少なくとも0.4mm程度必要である。そのため、レンズ径を小さくする場合に、それに比例して金属環を薄肉化することができない。したがって、所定の焦点距離と開口数(NA)のレンズを得るために必要な金属環外径は大きくなってしまうので、実用上は比較的大きな外形サイズの光学部品に限られる。この方法では、ガラスだけの小型レンズを置き換えられる外形サイズには小型化できなかった。
【0009】
さらに、レンズの側面に環状の金属環を設ける構造では、レンズ材料の熱膨張係数よりも金属環の熱膨張係数が大きい。このため、レンズの小型化に伴い相対的に金属環の肉厚が厚くなって、極端な場合はレンズのガラスが割れたり、複屈折が生じたりする副作用を生じた。また、レンズ側面の金属環を光学モジュールに固定する際のはんだ加熱によって、金属環とレンズとの接合面に剥離が生じる場合があった。
【0010】
このような光学部品は、金属環についての外形寸法精度を保っておけば、光学モジュールの取付台のV溝に載置し固定するだけで、レーザダイオードとの光軸合わせの調整は不要にできる。しかしながら、金属環を用いた構造の外形サイズの限界から、小型レンズをはんだで固定したいという光学モジュールの小型化の要望に、十分に対応できていなかった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、特に、はんだ固定が可能な光学部品及び光軸合わせが容易な光学モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光が通過する第1光学面及び第2光学面と、円柱側面と、を備える光学部品において、前記円柱側面は、金属部材と、前記第1光学面及び前記第2光学面を形成しているガラス部材と、からなり、前記金属部材は前記ガラス部材に固着して前記円柱側面の円周方向に卷回されて
おり、前記ガラス部材の前記第1光学面及び前記第2光学面はプレス成形によって形成され、前記金属部材が前記プレス成形によって前記円柱側面に一体化されたことを特徴とする。
【0013】
これにより、ガラス部材で形成された第1光学面及び第2光学面をもつ光学部品に金属部材が固着して円柱側面を構成するので、小型の光学部品に対しても位置精度を高く保ったまま、はんだや熱圧着による取付台への固定が容易である。さらに、はんだや熱圧着によって取付台に固定する際に、ガラス部材と金属部材との熱膨張係数の差に起因する応力が環状の金属環の場合とは異なる。具体的には、ガラス部材とその外周の金属環との膨張収縮では、ガラス部材を締め付けたり、ガラス部材と金属環との間に隙間を作るような応力が働く。しかし、卷回された金属部材では、卷回方向すなわち円柱側面の周方向に応力を分散できる。これによって、はんだ等の加熱時における金属部材の剥れを防止することができる。
【0014】
したがって、はんだ固定が可能な小型レンズの光学部品を実現できる。
また、プレス成形であれば、レンズの光学面を高精度に形成することができ、金属部材を一体成形することによりガラス部材と金属部材とを密着させることができる。そして、このとき金属部材とガラス部材とは、強力に密着して一体となるので、ガラス部材の固化後において金属部材の外径寸法はあらかじめ定めた寸法にすることができる。
【0015】
さらに、前記金属部材は前記円周方向に不連続であって、前記不連続となる前記円柱側面において、前記ガラス部材が露出するとともに、前記ガラス部材と前記金属部材とは同一円周上につらなることが好適である。これにより、光学部品の光軸と円柱側面の円柱中心軸とが一致し、円周方向の段差をもたないので、固定時の取り付け高さが安定し、光軸ズレを抑制できる。
【0016】
前記金属部材の光軸方向の長さは前記円柱側面の光軸方向の長さ以下で、かつ、前記金属部材は前記第1光学面及び前記第2光学面の外周部に挟まれた前記円柱側面に位置していることが好ましい。薄く形成された金属部材がいずれかの光学面から突出していると、光学部品の取り扱い時に突出部分が変形したり、突出部分が破損してしまうことがあった。金属部材の光軸方向の長さを円柱側面の光軸方向の長さ以下にして、前記第1光学面及び前記第2光学面の外周部に挟まれた円柱側面からはみ出さないようにすれば、金属部材の突出部分を生じない。したがって、金属部材の変形による光学性能への悪影響や突出部分の破損による異物の発生が防止できる。
【0018】
前記金属部材はAuを含むことが好ましい。こうすれば、はんだ材料との接続性がよいので、はんだによる固定が容易である。
【0019】
前記金属部材はめっき膜を有することが好ましい。はんだ材料との密着性がよいめっき膜を用いることによって、はんだ材料との剥れ不良を防止できる。
【0020】
本発明は、光を出射する半導体素子と前記半導体素子を設置する取付台とを有する光学モジュールにおいて、前記取付台は、上記の光学部品を載置する溝部を備え、前記光学部品が前記溝部に固定されて前記半導体素子と光学的に結合されていることを特徴とする。上述した金属部材が卷回されている小型の光学部品では、取付台の溝部に載置して固定することができるので、光学モジュールの光軸合わせが容易にできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学部品によれば、ガラス部材で形成された光学部品に金属部材が固着して円柱側面を構成するので、小型の光学部品に対しても位置精度を高く保ったまま、はんだや熱圧着による取付台の固定が容易である。さらに、取付台に固定する際に、ガラス部材に卷回された金属部材では、熱膨張の差によって生じる応力を円柱側面の周方向に分散できる。これによって、はんだ等の加熱時における金属部材の剥れを防止することができる。したがって、はんだ固定が可能な小型レンズを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0024】
図1は本実施形態の光学部品1を示す斜視図であり、
図2は側面図、
図3は正面図である。光学部品1の略円柱形状の両端は第1光学面10aと第2光学面10bであり、これらの光学面には、光が入射または出射される。
【0025】
光学部品1の円柱側面は、第1光学面10a及び第2光学面10bを形成しているガラス部材10と、金属部材20とからなる。金属部材20は円柱側面を環状に取り囲んで周方向に卷回され、不連続部30によって分断されている。
【0026】
金属部材20の不連続部30においては、不連続部30に露出しているガラス部材10が、金属部材20と同一円周上につらなっている。また、金属部材20の内面20aはガラス部材10と固着している。
【0027】
図4に、光学部品1を備えた光学モジュール2の側面図を示す。また、
図5は、
図4のV−V線に沿って切断した光学モジュール2の断面図である。取付台50にはレーザダイオード等の半導体素子60が設置されて、光学部品1の光軸方向に光が出射される。光学部品1の光学面に入射した光は屈折作用を受けて、所望の光学的状態に調整されて通過する。
【0028】
取付台50はSi基板を加工したものであり、V溝(V−GROOVE)51が設けられている。なお、
図5に示すような台形状の溝についても、V溝の総称を用いている。V溝51に載置された光学部品1はAu−Snはんだ等の固定材55によって、固定されている。光学部品1の光軸61と円柱側面の軸とが一致し、円周方向の段差をもたないので、固定時の取り付け高さが安定し、光軸ズレを抑制できる。
【0029】
このように、ガラス部材10で形成された第1光学面10a及び第2光学面10bをもつ光学部品1に金属部材20が固着して円柱側面を構成するので、小型の光学部品1に対しても位置精度を高く保ったまま、はんだや熱圧着による取付台50への固定が容易である。これにより、V溝51に光学部品1を載置するだけで半導体素子60との光軸合わせをおこなうことができる。したがって、光学部品1を小型化しても光学モジュール2の光軸合わせが容易であり、光学モジュール2を小型化することができる。また、はんだや熱圧着によって取付台50に固定する際に、ガラス部材10と金属部材20との熱膨張係数の差に起因する応力を、卷回方向すなわち円柱側面の周方向に分散できる。これによって、はんだ等の加熱時における金属部材20の剥れを防止することができる。
【0030】
図6及び
図7は、本実施形態の光学部品1を製造する工程を示す説明図である。ここでは、ガラスの非球面レンズをプレス成形する製造方法によって、光学部品1を一体成形する工程について説明する。
【0031】
図6に示すように、胴型71に下型73が配置され、帯状の金属部材20を胴型71の内周面に沿うように挿入する。金属部材20は、たとえばTiを圧延して薄肉形成し、Pt膜、Au膜を成膜して積層構造とし、一枚板状に切断した金属薄板をAu膜を外周面とするように丸めたもので可撓性がある。ここで、金属部材20の円周方向の長さは、胴型71の内周面の長さより短く形成されていて、容易に挿入することが可能である。このようにして、金属部材20が下型73と接する位置に載置される。
【0032】
次に、成形後にレンズを構成することとなるガラス母材15を配置する。このガラス母材15は、たとえばオハラ(株)製のL−BAL35の球状ガラスであり、所望の屈折率等の光学特性を有している。
【0033】
その後、胴型71の周囲に配置されたヒーター(図示せず)により、胴型71が加熱される。胴型71の加熱に伴って、胴型71内部に配置されたガラス母材15が軟化し、この状態で上型72が接近して、所定の圧力でガラス母材15を上下から押圧し、
図7のように成形される。
【0034】
このとき、軟化しているガラス母材15は胴型71の内周面方向にも拡径して金属部材20の内面側を押圧し、金属部材20はその圧力で胴型71の内周面に押し付けられる。なお、胴型71の内径寸法は、ガラス母材15の冷却による寸法の収縮を考慮して定められている。
【0035】
上型72及び下型73は所望の光学機能面を形成するように設計されていて、ガラス母材15をプレス成形すると、
図7に示すように第1光学面10a及び第2光学面10bが転写される。プレス成形であれば、非球面レンズ面を高精度に形成することができ、金属部材20を一体成形することによりガラス部材10と金属部材20とを密着させることができる。この状態のまま冷却されて、ガラス母材15が成形されたガラス部材10と金属部材20とは強力に密着して一体となって、第1光学面10a及び第2光学面10bを有するガラス部材10と金属部材20とが一体化した光学部品1を得る。ガラス部材10の固化後において金属部材20の外径寸法は予め定めた寸法にすることができる。
【0036】
第1光学面10a及び第2光学面10bには、必要に応じて反射防止膜が形成される。たとえば、SiO
2/TiO
2多層膜を蒸着によって成膜する。
【0037】
環状の金属環に非球面レンズを充填する場合、金属環の加工は、肉厚が少なくとも0.4mm程度必要であった。ガラス部材10に金属部材20を卷回して形成する場合は、延伸加工を採用できるので金属部材20を薄くできる。したがって、光学部品1の小型化に適している。光学部品1の大きさは、たとえば、光学面間の寸法が0.645mm、円柱側面の外形寸法が1.0mmである。金属部材20のTiの厚みは0.1μm〜10μm、Pt膜、Au膜は0.01μm〜1μm程度である。また、金属部材20の光軸方向の幅は0.3mm〜0.6mmであり、より好ましくは0.4mm〜0.5mmである。
【0038】
Au膜とPt膜はめっきで成膜することが好ましい。Au膜は、はんだ材料との接続性がよいので、はんだによる固定が容易である。また、はんだ材料との密着性がよいめっき膜を用いることによって、はんだ材料との剥れ不良を防止できる。TiとAuとの密着性を向上させるためにPt膜を成膜したが、Pt膜を省略することも可能である。
【0039】
金属部材20は、ガラス部材10との密着性が良好な材料であることが好ましい。金属部材20として、Auを用いてもよいが高価であるので、Tiやステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0040】
一方、光学面10aと金属部材20との間の円柱側面、及び、光学面10bの外周部と金属部材20との間の円柱側面は、金属部材20と不連続部30とからなる円柱側面と同じか、わずかに小さい径の円柱形状である。金属部材20の厚みが10μmのときに、光学面10b側では、50μm程度小さい内径の円柱形状となるように下型73を設計しておくことで、プレス成形時の金属部材20の載置位置が安定する。
【0041】
図4に示すように、このようにして形成された光学部品1を取付台50の所定の位置に固定することによって、光学モジュール2を製造する。
【0042】
半導体素子60と光学部品1との光軸61が一致するように、取付台50に設けられたV溝51は所定の寸法に製作されている。光学部品1の外形が1mmのときに、台形状のV溝51の寸法は、Si表面での溝幅が1.2mm、深さが0.6mm程度である。
【0043】
このようなV溝51は、たとえば以下の方法によって形成される。最初にSi基板にあらかじめ形成されているSiO
2膜をフォトリソグラフィーとエッチングによってパターニングする。続いて、SiO
2膜をマスクとしてKOH水溶液を用いた異方性エッチングによって、Si基板の結晶方位を利用したV溝51が形成される。また、V溝51の内面には、Au膜を厚さ0.1μm程度に成膜しておくことが好ましい。
【0044】
取付台50のV溝51に光学部品1を載置して、半導体素子60に対向する光学面(10aまたは10b)との距離を調整して固定される。固定には、固定材55が光学部品1を載置する前、もしくは、光学部品1を載置した後に充填され、金属部材20とV溝51とを接合する。
【0045】
固定材55として接着剤を用いてもよい。接着剤を用いて固定する場合は、固定強度を保持するのに最適な厚さに塗布されることが好ましい。なお、接着工程における接着剤の経時的な安定性や取り扱いの難しさと、接着剤から揮発する成分が光学面に影響する問題等に注意しなければならない。このような接着剤の問題から、接着剤を使わずに、はんだで固定できることが好ましい。はんだは光学面に影響する揮発成分の心配がない。
【0046】
はんだを固定材55に用いる場合、はんだペーストを充填して加熱することによって、光学部品1の高さが安定し、冷却すればそのままの状態に固定することができる。長期信頼性の要求から、Au−Snはんだ等が用いられる。
【0047】
小型の光学モジュール2において、光軸ズレは大きな影響を及ぼす。たとえば、光学部品1の位置が光軸方向に垂直な高さ方向に10μmずれると、結合効率は10%程度低下してしまう。これは光ファイバー伝送にとっては、通信距離が短くなることを意味する。すなわち、長距離伝送には、より多くの中継器が必要になる。この問題に対して、はんだで固定することによって、光学部品1の高さを安定にすることができるので、高い結合効率が安定して得られる。したがって、はんだで固定できる光学部品1と、それを用いて光軸合わせが容易にできる光学モジュール2とが、長距離伝送用の製品として適している。
【0048】
ガラス部材10に金属部材20を卷回することによって生じた不連続部30は全周の長さに対して十分に短いことが好ましい。すなわち、全周に亘る円筒形状のうち、わずかな切れ目を設けた程度の長さに形成された。より具体的には、全周の1/10〜1/1000の間隔に設けられていることが好ましい。こうすれば、金属部材20がガラス部材10に固着していない場合であっても、加熱による熱膨張で金属部材20が周方向の全周を覆ってしまうことがない。したがって、熱膨張による応力を緩和できる。金属部材20の無い不連続部30ははんだ接合の場合に固定されないので、取付台50に載置される面方向に位置しないほうが好ましいが、不連続部30が全周の1/10以下の間隔に設けられていれば、取付台50の方向にあっても不具合を生じることはない。
【0049】
なお、不連続部30を有することで、光学部品1は中心軸に回転対称でないが、上記の間隔であれば、実用上無視できる。また、不連続部30にはガラス部材10が露出しているが、もし金属部材20の厚さによる段差を不連続部30に生じても、上記の間隔であれば実用上の外形寸法は保たれて、光学モジュール2に適用しても光軸ズレへの影響はない。
【0050】
また、非球面レンズを成形した後に帯状の金属部材20を卷回する製造方法も可能である。この場合は、金属部材20を卷回して状態での外形寸法を所望の寸法にするように、非球面レンズの外径を金属部材20の厚み分だけ小さくしておく必要がある。
【0051】
一方、
図6及び
図7に示した製造方法では、金属部材20の卷回されていない領域のレンズ外形は、不連続部30の領域とともに所定の外形寸法に形成できる。金属部材20の外形寸法も所望の寸法に形成されるので、金属部材20の厚みにばらつきがあっても影響されない。したがって、他の製造方法に比べて、プレス成形によって一体化された光学部品1は外形寸法精度に優れている。
【0052】
薄く形成された金属部材20がいずれかの光学面から突出していると、光学部品1の取り扱い時に突出部分が変形したり、突出部分が破損してしまうことがあった。金属部材20の光軸方向の長さを円柱側面の光軸方向の長さ以下にして、第1光学面10a及び第2光学面10bの外周部に挟まれた円柱側面からはみ出さないようにすれば、突出部がないので取り扱いにおける不具合の発生が防止できる。プレス成形の場合、金属部材20は胴型71と下型73とによって位置決めされているので、第1光学面10aと第2光学面10bとのそれぞれの外周部から(
図7の上下方向に)はみ出すことがない。したがって、変形や破損がおきやすい突出部分がないので、薄い金属部材20であっても、変形による光学性能への悪影響や破損による異物の発生が防止できる。
【0053】
比較例として、帯状の金属部材20ではなく、従来技術のように環状の金属環を用いる場合は、
図6において胴型71よりも一回り小さい外形の金属環でなければ挿入することができない。また、そのような金属環を製作するためには、ある程度の肉厚が必要である。したがって、肉厚があって胴型71よりも一回り小さい外形寸法の金属環を、軟化したガラス母材15の押圧で拡径して所望の形状に成形しなければならないので、弾性変形と熱収縮との複合した応力が残留することになる。その結果、レンズ中心に向かう収縮応力が大きくなってしまうと、本来のレンズの特性から光学特性が変化して、たとえば複屈折が発生してしまうので、好ましくない。また、外径を同じにしようとすると、金属環の肉厚の分だけガラスレンズの有効径が小さくなってしまうので、所望の焦点距離における開口数を得ることが不可能になる。
【0054】
他の比較例として、金属部材20をスパッタやめっき等の薄膜で形成する方法が考えられる。しかしながら、円柱側面にそれらの金属薄膜を形成する際は、第1光学面10aと第2光学面10bとを同時に保護しておく必要がある。小型の円柱形状に非球面レンズを成形した後に、その光学面を保護するように保護材料を設けて、円柱側面のみにスパッタやめっきをおこなうことは量産性が悪く、高コストになってしまう。
【0055】
図8は、本実施形態の光学部品1の第1の変形例を示す側面図である。第2光学面10bが非球面レンズ形状でなく、光学的に平坦な面になっている。このような形状についても、同様の方法によって形成が可能である。なお、第1光学面10aが平坦な面で、第2光学面10bが非球面レンズ形状であってもよい。
【0056】
図9は、本実施形態の光学部品1の第2の変形例を示す側面図である。第2光学面10bの外周部が金属部材20の端部と同一面内に位置するように形成されている。第2光学面10bの非球面レンズ形状は外周部で平坦面に連接することから、この平坦面と、金属部材20の端部を光軸方向の同一面にするように位置させて形成が可能である。
【0057】
図10は、本実施形態の光学部品1の第3の変形例を示す側面図である。第1光学面10aと第2光学面10bとを第2の変形例である
図9と入れ替えて形成されている。この場合は、金属部材20の端部と第1光学面10aの外周部が光軸方向の同一面にするように位置させて形成している。
【0058】
図9及び
図10において、所定のレンズ厚に対しては、円柱側面の光軸方向の長さを長くできるので、金属部材20の光軸方向の幅を拡げれば、取付台50への固定がより安定する。また、同じ取り付けサイズでよい場合は、光学部品1を薄型にできるので、光学モジュール2の小型化に好適である。
【0059】
図11は、本実施形態の光学部品1の第4の変形例を示す側面図である。不連続部30は光軸方向に沿って形成されなくてもよいので、側面から見て斜めに形成された場合を示す。このような態様であっても、本実施形態に記載された効果を奏する。
【0060】
不連続部30が光軸方向に平行でない本変形例は、
図11に限定されず、また、他の変形例との組み合わせも可能である。
【0061】
さらに、プレス成形における金属部材20の取り付けを工夫して、不連続部30を周方向に数箇所設けてもよい。こうすれば、応力を分散する効果が増大する。