(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、溶液を遠心分離するために遠心分離器に装着される細胞分離装置であって、
前記第1容器と前記第2容器とは、相対回転可能に取り付けられており、
前記第1容器と前記第2容器とを相対回転させることにより、前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構を備えることを特徴とする細胞分離装置。
第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構と、を備えた細胞分離装置を用いた遠心分離方法であって、
前記切替機構を遮断状態として、前記第1液体収容部に溶液を注入し、前記第2液体収容部に分離液を注入する第1工程と、
前記第1工程後、前記切替機構を遮断状態から連通状態に切り替える第2工程と、
前記第2工程後、前記切替機構を連通状態としたまま遠心分離を行う第3工程と、を備えることを特徴とする遠心分離方法。
前記第1容器と前記第2容器とを相対回転させることにより、前記切替機構の連通状態と遮断状態とを切り替えることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の遠心分離方法。
第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、溶液を遠心分離するために遠心分離器に装着される細胞分離装置であって、
前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構を備え、
前記切替機構は、前記第1容器と前記第2容器の少なくとも一方に対してスライド可能なスライド部材を含むことを特徴とする細胞分離装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3、4によると、細胞分離後の搬送時や、容器の転倒などにより、分離された溶液が混合してしまう問題点があった。また、特許文献5によると、細胞の分離工程の途中で、成層用インサートの複数の毛細管孔や円辺の凹みが詰まってしまい、分離が十分になされなくなる虞がある。さらに、特許文献3、4、5に記載の方法では、依然として対象物の分離、回収が純度よく行えない問題点があった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、成層時に溶液の境界面に乱れを生じさせることなく容易に成層することができ、且つ分離した対象物の混合を防止して、目的とする成分を純度よく回収することができる細胞分離装置及び遠心分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、溶液を遠心分離するために遠心分離器に装着される細胞分離装置であって、
前記第1容器と前記第2容器とは、相対回転可能に取り付けられており、
前記第1容器と前記第2容器とを相対回転させることにより、前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と、前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構を備えることを特徴とする細胞分離装置。
(2) 前記第1容器には、第1導入孔と開閉制御可能なフィルター付ベントが設けられており、
前記第2容器には、第2導入孔が設けられており、
前記第1及び第2導入孔は、それぞれシリンジの挿入により開口するニードルレスポートであることを特徴とする上記(1)に記載の細胞分離装置。
(3) 前記第1容器の底面には、少なくとも2以上の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、それぞれ前記貫通孔に向かって下方に傾斜するテーパ面に囲繞されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の細胞分離装置。
(4) 前記テーパ面は、水平面に対する傾斜角度が30°以上であることを特徴とする上記(3)に記載の細胞分離装置。
(5) 第3液体収容部を有し、前記第1容器の上方に設けられる第3容器が前記第1容器に相対回転可能に取り付けられており、
前記第1容器と前記第3容器とを相対回転させることにより、前記第1液体収容部と前記第3液体収容部とを連通させる連通状態と、前記第1液体収容部と前記第3液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な他の切替機構を備えることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞分離装置。
(6) 前記第3容器には、導出孔が設けられており、
前記導出孔は、シリンジの挿入により開口するニードルレスポートであることを特徴とする上記(5)に記載の細胞分離装置。
(7) 前記第1容器の天面には、少なくとも2以上の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、それぞれ前記貫通孔に向かって上方に傾斜するテーパ面に囲繞されていることを特徴とする上記(5)または(6)に記載の細胞分離装置。
(8) 前記テーパ面は、水平面に対する傾斜角度が30°以上であることを特徴とする上記(7)に記載の細胞分離装置。
(9) 前記第3容器は、エアベントが設けられており、
前記第3液体収容部は、天面が弾性材で形成されており、容積が可変であることを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれかに記載の細胞分離装置。
(10) 第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構と、を備えた細胞分離装置を用いた遠心分離方法であって、
前記切替機構を遮断状態として、前記第1液体収容部に溶液を注入し、前記第2液体収容部に分離液を注入する第1工程と、
前記第1工程後、前記切替機構を遮断状態から連通状態に切り替える第2工程と、
前記第2工程後、前記切替機構を連通状態としたまま遠心分離を行う第3工程と、を備えることを特徴とする遠心分離方法。
(11) 前記第3工程後、前記切替機構を連通状態から遮断状態に切り替える第4工程と、を備えることを特徴とする(10)に記載の遠心分離方法。
(12) 前記細胞分離装置には、第3液体収容部を有し、前記第1容器の上方に設けられる第3容器が前記第1容器に相対回転可能に取り付けられており、
前記細胞分離装置は、前記第1液体収容部と前記第3液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第3液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な他の切替機構をさらに備え、
前記第4工程後、前記他の切替機構を連通状態とし、且つ、前記細胞分離装置を前記第3容器が下側となる状態で、2回目の遠心分離を行う第5工程と、を備えることを特徴とする(11)に記載の遠心分離方法。
(13) 前記第1容器と前記第2容器とを相対回転させることにより、前記切替機構の連通状態と遮断状態とを切り替えることを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載の遠心分離方法。
(14)第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有し前記第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、溶液を遠心分離するために遠心分離器に装着される細胞分離装置であって、
前記第1液体収容部と前記第2液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第2液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な切替機構を備え、
前記切替機構は、前記第1容器と前記第2容器の少なくとも一方に対してスライド可能なスライド部材を含むことを特徴とする細胞分離装置。
(15)第3液体収容部を有し、前記第1容器の上方に設けられる第3容器が前記第1容器に相対回転可能に取り付けられており、
前記第1液体収容部と前記第3液体収容部とを連通させる連通状態と前記第1液体収容部と前記第3液体収容部との連通を遮断する遮断状態とを切替可能な他の切替機構を備えることを特徴とする(14)に記載の細胞分離装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)に記載の細胞分離装置によれば、第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有して相対回転可能に第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、第1容器と第2容器とを相対回転させることにより、第1液体収容部と第2液体収容部とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な切替機構を備えるので、第1液体収容部と第2液体収容部とを遮断状態として第1液体収容部に試料溶液を注入し、第2液体収容部に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、容易に成層することができる。また、第1液体収容部と第2液体収容部とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態として、分離液を混合させることなく対象物を純度よく回収することができる。また、細胞分離装置は、全分離工程において外部と遮断した状態で実施されるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での分離操作が可能となる。
【0009】
上記(2)に記載の細胞分離装置によれば、より無菌性を高めることができる。
【0010】
上記(3)及び(4)に記載の細胞分離装置によれば、遠心分離時の残留物を低減することができ、純度を高めることができる。
【0011】
上記(5)に記載の細胞分離装置によれば、第3液体収容部を有して相対回転可能に第1容器の上方に設けられる第3容器をさらに備え、第1容器と第3容器とを相対回転させることにより、第1液体収容部と第3液体収容部とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な他の切替機構を備えるので、第1液体収容部と第2液体収容部とを用いて1回目の分離作業を行った後、第1液体収容部と第3液体収容部とを用いて2回目の分離作業を連続して行うことができ、対象物を更に高純度で回収することができる。
【0012】
上記(6)に記載の細胞分離装置によれば、より無菌性を高めることができる。
【0013】
上記(7)及び(8)に記載の細胞分離装置によれば、遠心分離時の残留物を低減することができ、純度を高めることができる。
【0014】
上記(9)に記載の細胞分離装置によれば、導出孔からの出し入れに伴って容積を変化することから、容易に細胞を採取することができる。
【0015】
上記(10)に記載の遠心分離方法によれば、切替機構を遮断状態として、第1液体収容部に試料溶液を注入し、第2液体収容部に分離液を注入するので、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、容易に成層することができる。従って、成層時に溶液の境界面に乱れを生じさせることなく容易に成層することができ、目的とする成分を純度よく回収することができる
【0016】
上記(11)に記載の遠心分離方法によれば、第1液体収容部と第2液体収容部とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態とすることで、分離液を混合させることなく対象物を純度よく回収することができる。
【0017】
上記(12)に記載の遠心分離方法によれば、第1液体収容部と第2液体収容部とを用いて1回目の分離作業を行った後、第1液体収容部と第3液体収容部とを用いて2回目の分離作業を連続して行うことができ、対象物を更に高純度で回収することができる。
【0018】
上記(13)に記載の遠心分離方法によれば、切替機構の連通状態と遮断状態とを確実に切り替えることができる。
【0019】
上記(14)に記載の細胞分離装置によれば、第1液体収容部を有する第1容器と、第2液体収容部を有して相対回転可能に第1容器の下方に設けられる第2容器と、を備え、スライド部材をスライドさせることにより、第1液体収容部と第2液体収容部とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な切替機構を備えるので、第1液体収容部と第2液体収容部とを遮断状態として第1液体収容部に試料溶液を注入し、第2液体収容部に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、容易に成層することができる。また、第1液体収容部と第2液体収容部とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態として、分離液を混合させることなく対象物を純度よく回収することができる。また、細胞分離装置は、全分離工程において外部と遮断した状態で実施されるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での分離操作が可能となる。
【0020】
上記(15)に記載の細胞分離装置によれば、第3液体収容部を有し、第1容器の上方に設けられる第3容器をさらに備え、第1液体収容部と第3液体収容部とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な他の切替機構を備えるので、第1液体収容部と第2液体収容部とを用いて1回目の分離作業を行った後、第1液体収容部と第3液体収容部とを用いて2回目の分離作業を連続して行うことができ、対象物を更に高純度で回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る細胞分離装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
<細胞分離装置>
図1は本発明に係る第1実施形態の細胞分離装置の全体外観図、
図2は分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、細胞分離装置10は、第1容器11と、第2容器12と、第3容器13と、を備える。
【0023】
<第1容器>
図3も参照して、第1容器11は、中央容器14と、下部収縮リング15Aと、上部収縮リング15Bと、から構成される。中央容器14は、上下方向に貫通する略円筒状に形成された部材であり、その上端縁及び下端縁には、それぞれ上部収縮リング15B、下部収縮リング15Aに嵌合し、熱溶着、超音波溶着、または接着によって液密に接合する環状突起17、18が形成されている(18は
図9参照)。中央容器14の上部には、ヘパリン溶液及び骨髄液などの溶液の導入孔であるニードルレスポート19と、外部と通気可能なフィルター付きベント20とが、周方向の異なる位置に設けられている。
【0024】
ニードルレスポート19は、不図示のシリンジの挿入により開口して連結される従来公知のコネクタであり、通常は閉じている開口部が注射針を用いなくてもシリンジを挿入することで内部と連通が可能となるものである。なお、ニードルレスポートについては、特表2001‐505087、特表2005‐523782、特開2009‐6164などに詳述されているので参照されたい。
【0025】
フィルター付きベント20は、中央容器14の内外を連通させる開口部であり、連通部には、外部から侵入する細菌などを除去可能なフィルターが配置されている。フィルター付きベント20は、ニードルレスポート19と同様の機構か、若しくは三方活栓の機構が組み込まれており、外部との連通、また遮断を制御可能となっている。
【0026】
中央容器14を形成する素材は、剛性及び透明性を備える素材であれば特に限定されず、例えば、PP、PE、ポリカーボネイト、ポリアクリル性樹脂等が例示できる。透明性の要件からは、ポリカーボネイトが好適に例示される。
【0027】
下部収縮リング15A、及び上部収縮リング15Bは同一の収縮リング15であり、上下方向が逆方向に向けられて中央容器14の環状突起17、18に液密に接合されている(18は
図9参照)。
図6に示す収縮リング15は、隔壁21によって上下方向に分割されている。隔壁21には、90°間隔で設けられた4つの貫通孔22が形成されている。隔壁21は、それぞれの貫通孔22に向かって下方に傾斜する(上部収縮リング15Bにおいては、上方に傾斜する)4つのテーパ面21aを有する。換言すれば、貫通孔22は、それぞれ貫通孔22に向かって下方に傾斜する(上部収縮リング15Bにおいては、上方に傾斜する)独立したテーパ面21aに囲繞されている。
【0028】
各テーパ面21aの水平面に対する傾斜角度は、30°以上に設定されている。傾斜角度が30°以上に設定されている理由については、後に詳述する。なお、テーパ面は、平面で構成される場合のみならず湾曲面で構成される場合も含むものである。また、テーパ面21aの裏面側となる隔壁21の下面21b(上部収縮リング15Bにおいては、上面)(
図7(a)参照)は、平滑な平面となっている。収縮リング15の上端縁(上部収縮リング15Bにおいては下端縁)には、中央容器14の環状突起18(17)と嵌合して液密に接合する円環溝23が形成されている。
【0029】
収縮リング15を形成する素材は、剛性があればいずれの素材でも用いることができ、例えばPP、PE、ポリカーボネイト、ポリアクリル性樹脂等が例示できる。
【0030】
図9に示すように、中央容器14の環状突起17、18に、それぞれ下部及び上部収縮リング15A、15Bの円環溝23を嵌合させて熱溶着、超音波溶着、または接着によって液密に接合することで、中央容器14、下部収縮リング15A、及び上部収縮リング15Bによって画成される第1液体収容部51が形成される。
【0031】
<第2容器>
図4は第2容器の分解斜視図であり、第2容器12は、下部容器25、キャップ26、及び下部切替リング27Aと、から構成される。下部容器25は、上下方向に貫通する略円筒状に形成された部材であり、その上端縁には、下部切替リング27Aと嵌合して液密に接合する環状溝28が形成されている。また、下部容器25の下端縁には、雄ねじ29が形成されており、キャップ26の雌ねじ30と螺合してキャップ26が下部容器25の下部に液密に取り付けられる。
【0032】
下部容器25を形成する素材は、剛性及び透明性があれば特に限定されず、例えば、PP、PE、ポリカーボネイト、ポリアクリル性樹脂等が例示できるが、透明性の要件からポリカーボネイトが好適に使用可能である。また、キャップ26を形成する素材は、剛性を有する材料であれがよく、例えば、PP、PE、ポリカーボネイトが例示できる。下部容器25とキャップ26は、螺合により液密に組み付けられるので、素材の好適な組み合わせとしては、剛性の高いポリカーボネイト又はポリアクリル性樹脂からなる下部容器25と、下部容器25の素材(ポリカーボネイト又はポリアクリル性樹脂)と比較して柔軟なPE又はPPからなるキャップ26と、の組み合わせとするのが望ましい。
【0033】
下部切替リング27Aは、円盤状の天面板31と、天面板31の外周縁から図中下方に延設されるリング状壁部32と、を有し、リング状壁部32の内側に凹部34が設けられた略有底円筒状に形成されている(
図7(a)参照)。天面板31は、リング状壁部32と反対側の面31aが平面に形成されると共に、4つの貫通孔33が90°間隔で形成されている。下部切替リング27Aの中心から貫通孔33までの半径は、下部及び上部収縮リング15A、15Bの中心から貫通孔22までの半径と同じ距離に設定されている。
【0034】
リング状壁部32の下端縁には、下部容器25の環状溝28に係合する環状突部35(
図7参照)が形成されている。またリング状壁部32には、後述する第2液体収容部52(
図9参照)に分離液を注入するため、中央容器14のニードルレスポート19と同様の構造を有するが設けられている。
【0035】
天面板31の直径は、下部収縮リング15Aの内径と略同等の直径を有し、2つの突部37が径方向に突出して形成されている。この突部37は、下部切替リング27Aが下部収縮リング15Aに組み付けられて第1切替機構55を構成する際、下部収縮リング15Aの内溝24(
図7(a)参照)に係合して、下部切替リング27Aと下部収縮リング15Aとは、離間が防止され且つ相対回転可能に組み付けられる。なお、突部37と内溝24との係合は、後述するようにゴム素材からなる下部切替リング27Aを弾性変形させることで組み付け可能である。
【0036】
下部切替リング27Aを形成する素材は、柔軟性を持つゴム素材が好適であり、シリコンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、及び熱可塑性エラストマー(TPE)等が例示される。
【0037】
そして、下部切替リング27Aのリング状壁部32を、ゴム素材の持つ弾性により下部容器25の環状溝28に液密に嵌合し、キャップ26を下部容器25の下端縁の雄ねじ29に螺合することで、
図9に示すように、下部容器25、下部切替リング27A、及びキャップ26によって画成される第2液体収容部52が形成される。
【0038】
<第3容器>
図5に示すように、第3容器13は、上部容器41と、隔壁フィルム42と、上部切替リング27Bと、から構成される。上部容器41は、半球状凹部が形成された略椀状の部材であり、下端縁の外周には、上部切替リング27Bと液密に嵌合するための溝43が設けられている。また、上部容器41の頭頂部には、エアベントである貫通孔44が形成されており、後述する上部切替リング27Bのニードルレスポート36からの溶液の出し入れに伴って半球状凹部内の空気を貫通孔44から排出または吸入する。上部容器41を形成する素材は、比較的剛性のある一般的な素材であればよく、PP、PE、ポリカーボネイト等が例示できる。
【0039】
隔壁フィルム42は、熱溶着性を有する柔軟なPP又はPEのフィルム素材からなり、鍔部45を有する中空半球状に形成されている。隔壁フィルム42は、鍔部45が上部容器41の下端面に全周に亘って液密に熱溶着されている。
【0040】
上部切替リング27Bは、下部切替リング27Aと同一部材であり、組付け方向が上下逆方向に配置され、上端縁に形成された環状突部35が上部容器41の溝43に嵌合して組み付けられる。これにより、隔壁フィルム42と上部切替リング27Bとによって画成される第3液体収容部53が形成される(
図9参照)。
【0041】
このように構成された第1容器11、第2容器12、及び第3容器13は、第1容器11の下方に第2容器12が組み付けられると共に、第1容器11の上方に第3容器13が組み付けられて細胞分離装置10が形成される。具体的には、下部収縮リング15Aの下部に下部切替リング27Aが組み付けられ、上部収縮リング15Bの上部に上部切替リング27Bが組み付けられる。
【0042】
<切替機構>
図1に示すように、下部収縮リング15Aと下部切替リング27Aとにより第1切替機構55が形成され、上部収縮リング15Bと上部切替リング27Bとにより他の切替機構である第2切替機構56が形成される。第1切替機構55と第2切替機構56とは、上下方向が逆であるだけで同一部材であるので、以後の説明においては、
図7及び
図8に示す第2切替機構56について説明する。従って、第1切替機構55としての説明は、第2切替機構56を第1切替機構55に、上部切替リング27Bを下部切替リング27Aに、上部収縮リング15Bを下部収縮リング15Aに、第3液体収容部53を第2液体収容部52に読み替えるものとする。
【0043】
図7及び
図8に示すように、第2切替機構56は、上部切替リング27Bの突部37が、上部収縮リング15Bの内溝24に係合し、略45°相対回転可能(上部切替リング27Bを上部収縮リング15Bに対して回転することが可能であることの意)に組み付けられている。このとき、上部切替リング27Bのリング状壁部32と反対側の面31aは、上部収縮リング15Bの隔壁21の上面21bに摺接する。
図7に示すように、上部切替リング27Bの貫通孔33と、上部切替リング27Bの貫通孔22とが一致した位相にあるとき、第2切替機構56は連通状態であり、この連通状態から略45°相対回転させると、
図8に示すように、上部切替リング27Bの貫通孔33と、上部収縮リング15Bの貫通孔22との位相が異なる位置となって第2切替機構56が遮断状態となる。このように、上部収縮リング15B(第1容器11)と上部切替リング27B(第3容器13)とを相対回転させることで、第1液体収容部51と第3液体収容部53とが連通し、また連通が遮断される。
【0044】
第1切替機構55も同様の構成を有し、下部収縮リング15A(第1容器11)と下部切替リング27A(第2容器12)とを相対回転させることで、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通し、また連通が遮断される。
図9(a)は、第1及び第2切替機構55、56がいずれも連通状態とされて、第1、第2、及び第3液体収容部51、52、53が連通した状態を示し、
図9(b)は、第1切替機構55が遮断されると共に第2切替機構56が連通状態とされて、第1、及び第3液体収容部51、53が連通した状態を示す。
【0045】
<収縮リングのテーパ面>
次に、収縮リングのテーパ面の傾斜角度について説明する。細胞分離装置10による細胞の分離効率は、収縮リング15のテーパ面21aの傾斜角度によって異なる。
図10はテーパ面21aの最適な傾斜角度を求めるために行ったラットの末梢血から単核球層を分離する実験の概略工程を示している。
【0046】
実験に用いた分離装置100は、シリコンでリング状に作製した収縮部材102を、ポリプロピレン製の容器101の中央に水平に設置した。収縮部材102は、開口部より低く、容器101の断面積よりも小さい円形の縁領域103を有する下方向傾斜表面102aを備える。収縮部材102は、下方向傾斜表面102aと水平面とのなす傾斜角度を0°から50°まで、10°刻みで変えて合計6種類を作製して用いた。
【0047】
図10に示すように、容器101の底部から縁領域103の高さまで、遠心分離媒体105で満たした。遠心分離媒体105は、造影剤(オムニパーク140:第一三共株式会社)を93.2mL、生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬株式会社)を103.6mL、及び蒸留水(大塚蒸留水:大塚製薬株式会社)を3.2mL混和して作成した。作成された遠心分離媒体105の比重は1.077、浸透圧(生理食塩液に対する比)は1.0、pHは7.4であった。
【0048】
次いで、ラットの末梢血を用いて上記分離装置100での遠心分離を行った。ラット末梢血は、LEW系統ラット110の腹部大動脈から採血を行い、得られた血液量の10%相当のヘパリン(ノボ・ヘパリン注:持田製薬株式会社)、及び血液量と等量の生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬株式会社)を加え、サンプル106を調製した。
【0049】
このサンプル106を遠心分離媒体105に重層し、次いで400Gで40分間遠心分離を行った。遠心分離により、容器101の底部には赤血球層が堆積し、容器101の上部には単核球層が堆積し、赤血球層と単核球層との間に遠心分離媒体105が介在している。遠心分離後、収縮部材102の下方向傾斜表面102aから容器101の開口部までの液体を除去し、容器101の開口部から下方向傾斜表面102aに残留する赤血球を観察した。
【0050】
図11は、収縮部材102上に残る赤血球の状態を下方向傾斜表面102aの傾斜角度ごとに示す図であり、傾斜角度が20°以下では、下方向傾斜表面102aに赤血球が残留している様子が観察されるが、傾斜角度が30°以上では、下方向傾斜表面102aに赤血球は観察されなかった。従って、効率よく細胞を分離するためには、下方向傾斜表面102aの傾斜角度が30°以上が好ましいことが分かる。この実験に基づいて、収縮リング15のテーパ面21aの傾斜角度を30°以上に設定した。
【0051】
<細胞分離装置の分離操作手順(遠心分離方法)>
上記のように構成された細胞分離装置10を用いた溶液の遠心分離は、
図1及び
図9を参照して概略下記の手順で行われる。
(a)第1容器11のフィルター付きベント20を開く。
(b)第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を開き、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通する連通状態とする。
(c)第2容器12のニードルレスポート36からシリンジで分離液を第2液体収容部52内に注入する。分離液の注入により上昇する第2液体収容部52内の圧力は、開かれているフィルター付きベント20から逃がされるので、容易に注入することができる。
(d)第2液体収容部52を分離液で満たしたのち、第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を閉じ、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが遮断された遮断状態とする。分離液は、第2容器の上面すなわち天面板31と等しい液位まで、ないし、天面板31を超えた液位まで充填することが好ましい。
(e)第1容器11と第3容器13とを相対回転させて第2切替機構56が遮断状態であることを確認する。
(f)骨髄液(赤血球等の細胞及び血液凝固阻止目的のヘパリン溶液等を含む)をシリンジに採取する。
(g)第1容器11のニードルレスポート19から採取した骨髄液を第1液体収容部51に注入する。骨髄液を注入後、生理食塩水、リンゲル液等の低比重等張液(以下、これらを総称して希釈液とも呼ぶ。)を注入して2倍以上に適宜希釈する。骨髄液及び希釈液の注入により上昇する第1液体収容部51内の圧力は、開かれているフィルター付きベント20から逃がされるので、容易に注入することができる。希釈液の注入は、骨髄液の粘性を下げる効果がある。
(h)第1容器11のフィルター付きベント20を閉じる。
(i)細胞分離装置10を転倒させたり、左右に振って骨髄液及び希釈液を十分に混和する。溶液の混和時、及び連続して行われる遠心分離時には、フィルター付きベント20が閉じているので、エアフィルターの濡れを防止することができる。
図12(a)は、1回目の遠心分離前の状態を示す図である。第1液体収容部51内には混和した骨髄液及び希釈液が収容されており、第2液体収容部52内には分離液が収容されている。
(j)第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を開き、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通する連通状態とする。
(k)所定の条件で遠心分離操作を行う。
図12(b)は、1回目の遠心分離後の状態を示す図である。第1液体収容部51と第2液体収容部52には、上から血清、単核球、分離液、及び赤血球、血小板等の血球成分が、この順に分離して成層される。
【0052】
(l)遠心分離操作終了後、第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を閉じ、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが遮断された遮断状態とする。また、必要であれば第2容器12のキャップ26を外し、第2液体収容部52に沈降した赤血球等の内溶液を廃棄する。以上の操作により1回目の遠心分離が完了する。
(m)続いて2回目の遠心分離を実施すべく、第1容器11内にある溶液を目視して、単核球の細胞のバンドがあることを確認した後、再び第1容器11のフィルター付きベント20を開けた状態で第1容器11のニードルレスポート19から生理食塩水又はリンゲル液等の希釈液を注入し、フィルター付きベント20を閉じて細胞分離装置10を転倒させたり、左右に振って内溶液を十分に混和する。一度分離された血清及び単核球を濃縮する際に希釈液を加えることで、血清及び分離液の密度をより小さくし、2回目の遠心分離後に細胞である単核球を確実に沈めることができる。
(n)第1容器11と第3容器13とを相対回転させて第2切替機構56を開き、第1液体収容部51と第3液体収容部53とが連通する連通状態とする。
(o)第3液体収容部53を下側(上下逆)にして、所定の条件で遠心分離操作を行う。
図12(c)は、2回目の遠心分離後の状態を示す図である。第1液体収容部51と第3液体収容部53には、下部(隔壁フィルム42上)に単核球が堆積し、その上に混和した血清、分離液、及び希釈液が成層される。
(p)遠心分離操作終了後、第1容器11と第3容器13とを相対回転させて第2切替機構56を閉じ、第1液体収容部51と第3液体収容部53とを遮断状態とする。
(q)第3容器13のニードルレスポート36から第3液体収容部53内の溶液をシリンジで採取する。必要によりピペッティングを行い、細胞を均一に分散させる。
(r)必要により、輸液バッグ等に採取した細胞を懸濁させる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の細胞分離装置10によれば、第1液体収容部51を有する第1容器11と、第2液体収容部52を有して相対回転可能に第1容器11の下方に設けられる第2容器12と、を備え、第1容器11と第2容器12とを相対回転させることにより、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な第1切替機構55を備えるので、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを遮断状態として第1液体収容部51に試料溶液を注入し、第2液体収容部52に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、境界面を乱さない成層が可能となる。
【0054】
また、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態とすることで、細胞分離装置10を傾けた場合でも血球成分と分離液の混合を防止することができ、対象物を純度よく回収することができる。また、搬送・輸送を容易に行うことができる。更に、細胞分離装置10は、全遠心分離工程において外部と遮断された状態で行われるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での遠心分離が可能であり、操作性が向上する。
【0055】
第1容器11には、シリンジの挿入により開口するニードルレスポート19とフィルター付きベント20とが配設され、第2容器12には、ニードルレスポート36が配設さているので、外部と遮断した状態で溶液を注入することができ、無菌性を高めることができる。
【0056】
また、第1容器11の隔壁(底面)21には、少なくとも1つ以上の貫通孔22が形成されており、貫通孔22は、それぞれ貫通孔22に向かって30°以上の傾斜角度で下方に傾斜するテーパ面21aに囲繞されているので、赤血球などの比重の重い媒体を第2液体収容部52に確実に導くことができ、分離後の溶液の純度をより高めることができる。貫通孔22は、1つだけ形成するよりも複数形成した方が、収縮リングの高さを低くすることができ、デッドスペースの削減できるため、2つ以上設けることが好ましい。
【0057】
また、細胞分離装置10は、第3液体収容部53を有して相対回転可能に第1容器11の上方に設けられる第3容器13をさらに備え、第1容器11と第3容器13とを相対回転させることにより、第1液体収容部51と第3液体収容部53とを連通させる連通状態と、該連通を遮断する遮断状態とに切替可能な第2切替機構56を備えるので、1回目の遠心分離後、細胞分離装置10を反転させて再度遠心分離を行うことで、容器の移し替えを行うことなく分離溶液の濃縮を行うことができる。即ち、2度の遠心分離操作を閉鎖系で実施することができ、無菌室等の特別な施設以外でも行うことができる。
【0058】
第3容器13は、シリンジの挿入により開口するニードルレスポート36を備えるので、外部から遮断した状態で溶液を回収することができ、無菌性を高めることができる。
【0059】
第1容器11の天面には、少なくとも2以上の貫通孔22が形成されており、貫通孔22は、それぞれ貫通孔22に向かって30°以上の傾斜角度で上方に傾斜するテーパ面21aに囲繞されているので、細胞を第3液体収容部53に確実に導くことができ、細胞の純度をより高めることができる。
【0060】
第3容器13は、エアベントである貫通孔44が形成され、第3液体収容部53は、天面が弾性材である隔壁フィルム42で形成されており、容積が可変であるので、ニードルレスポート36からの出し入れに伴って容積を変化させることができる。
【0061】
また、1回目の遠心分離後、2回目の遠心分離前に、生理食塩水又はリンゲル液の希釈液を注入することで、一度分離された血清及び単核球を濃縮する際に、血清及び分離液の密度をより小さくし、2回目の遠心分離後に細胞である単核球を確実に沈めることができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の細胞分離装置について説明する。
図13は第2実施形態の細胞分離装置の全体斜視図であり、
図14は第3容器の分解斜視図であり、
図15は第1及び第2容器間に配置された切替機構、及び第1及び第3容器間に配置された他の切替機構が、共に連通状態とされた第2実施形態の細胞分離装置の断面図である。
【0063】
第2実施形態の細胞分離装置10Aは、第3容器の形態が第1実施形態の細胞分離装置と異なる。その他の構成、および効果は、第1実施形態の細胞分離装置10と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
<第3容器>
図13〜
図15に示すように、細胞分離装置10Aの第3容器13Aは、上部容器41Aと、上部切替リング27Cと、から構成される。上部容器41Aは、図中下面側に半球状凹部が形成された略椀状の部材であり、下端縁の外周には、上部切替リング27Cと液密に嵌合するための溝43が設けられている。また、上部容器41Aの上部には、半球状凹部に連通するニードルレスポート19が設けられている。上部容器41Aを形成する素材は、比較的剛性のある一般的な素材であればよく、PP、PE、ポリカーボネイト等が例示できる。
【0065】
上部切替リング27Cは、円盤状の天面板31と、天面板31の外周縁から図中上方に延設されるリング状壁部32と、を有し、リング状壁部32の内側に凹部34が設けられた略有底円筒状に形成されている。天面板31は、リング状壁部32と反対側の面31a(図中下面)が平面に形成されると共に、4つの貫通孔33が90°間隔で形成されている。上部切替リング27Cの中心から貫通孔33までの半径は、上部収縮リング15Bの中心から貫通孔22までの半径と同じ距離に設定されている。
【0066】
リング状壁部32の上端縁には、上部容器41Aの溝43に係合する環状突部35が形成されている。またリング状壁部32には、第1容器11のフィルター付きベント20と同様の機構を有し、凹部34に連通可能なフィルター付きベント65が設けられている。
【0067】
天面板31の直径は、上部収縮リング15Bの内径と略同等の直径を有し、2つの突部37が径方向に突出して形成されている。この突部37は、上部切替リング27Cが上部収縮リング15Bに組み付けられて他の切替機構である第2切替機構56を構成する際、上部収縮リング15Bの内溝24に係合する。これにより、上部切替リング27Cと上部収縮リング15Bとは、離間が防止され且つ相対回転可能(上部切替リング27Cを上部収縮リング15Bに対して回転することが可能であることの意)に組み付けられる。なお、突部37と内溝24との係合は、後述するようにゴム素材からなる上部切替リング27Cを弾性変形させることで組み付け可能である。
【0068】
上部切替リング27Cを形成する素材は、柔軟性を持つゴム素材が好適であり、シリコンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、及び熱可塑性エラストマー(TPE)等が例示される。
【0069】
そして、上部切替リング27Cのリング状壁部32を、ゴム素材の持つ弾性により上部容器41Aの溝43に液密に嵌合することで、上部容器41A、上部切替リング27Cによって画成される第3液体収容部53が形成される。
【0070】
<細胞分離装置の分離操作手順>
上記のように構成された細胞分離装置10Aを用いた溶液の遠心分離は、第1実施形態の細胞分離装置10における手順と基本的に同様に行われ、(a)〜(q)で二回目の遠心分離操作を行った後、以下の手順で行われる。
(q)′第3容器13のフィルター付きベント65を開いた後、第3容器13Aのニードルレスポート19から第3液体収容部53内の溶液をシリンジで採取する。必要によりピペッティングを行い、細胞を均一に分散させる。
(r)必要により、輸液バッグ等に採取した細胞を懸濁させる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の細胞分離装置10Aによっても、第1実施形態の細胞分離装置10と同様に、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを遮断状態として第1液体収容部51に試料溶液を注入し、第2液体収容部52に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、境界面を乱さない成層が可能となる。また、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態とすることで、細胞分離装置10Aを傾けた場合でも分離液の混合を防止することができ、対象物を純度よく回収することができる。また、搬送・輸送を容易に行うことができる。更に、細胞分離装置10Aは、全遠心分離工程において外部と遮断された状態で行われるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での遠心分離が可能であり、操作性が向上する。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の細胞分離装置について説明する。
図16は本発明に係る第3実施形態の細胞分離装置の全体斜視図であり、
図17は第1及び第2容器間に配置された切替機構が、連通状態とされた第3実施形態の細胞分離装置の断面図である。
【0073】
第3実施形態の細胞分離装置10Bは、1回の遠心分離により所望の成分を分離可能な溶液、即ち、1回の遠心分離により所望の成分をそのまま使用する場合に適用される。本実施形態の細胞分離装置10Bは、
図16及び
図17に示すように、第3容器13を備えず、上部収縮リング15Bに代えて略半球状のキャップ61が第1容器11の上部に配設されている。その他の構成、および効果は、第1実施形態の細胞分離装置10と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
<細胞分離装置の分離操作手順>
上記のように構成された細胞分離装置10Bを用いた溶液の遠心分離は、
図16及び
図17を参照して概略下記の手順で行われる。
(a)第1容器11のフィルター付きベント20を開く。
(b)第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を開き、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通する連通状態とする。
(c)第2容器12のニードルレスポート36からシリンジで分離液を第2液体収容部52内に注入する。分離液の注入により上昇する第2液体収容部52内の圧力は、開かれているフィルター付きベント20から逃がされるので、容易に注入することができる。
(d)第2液体収容部52を分離液で満たしたのち、第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を閉じ、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが遮断された遮断状態とする。分離液は、第2容器の上面すなわち天面板31と等しい液位まで、ないし、天面板31を超えた液位まで充填することが好ましい。
(f)骨髄液(赤血球等の細胞及び血液凝固阻止目的のヘパリン溶液等を含む)をシリンジに採取する。
(g)第1容器11のニードルレスポート19から採取した骨髄液を第1液体収容部51に注入する。骨髄液を注入後、生理食塩水、リンゲル液等の低比重等張液(以下、これらを総称して希釈液とも呼ぶ。)を注入して2倍以上に適宜希釈する。骨髄液及び希釈液の注入により上昇する第1液体収容部51内の圧力は、開かれているフィルター付きベント20から逃がされるので、容易に注入することができる。希釈液の注入は、骨髄液の粘性を下げる効果がある。
(h)第1容器11のフィルター付きベント20を閉じる。
(i)細胞分離装置10Bを転倒させたり、左右に振って骨髄液及び希釈液を十分に混和する。溶液の混和時、及び連続して行われる遠心分離時には、フィルター付きベント20が閉じているので、エアフィルターの濡れを防止することができる。
(j)第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を開き、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通する連通状態とする。
(k)所定の条件で遠心分離操作を行う。
(l)′遠心分離操作終了後、第1容器11と第2容器12とを相対回転させて第1切替機構55を閉じ、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが遮断された遮断状態とする。第2容器12のニードルレスポート36から第2液体収容部52内の溶液をシリンジで採取する。必要によりピペッティングを行い、細胞を均一に分散させる。
(r)必要により、輸液バッグ等に採取した細胞を懸濁させる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の細胞分離装置10Bによっても、第1実施形態の細胞分離装置10と同様に、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを遮断状態として第1液体収容部51に試料溶液を注入し、第2液体収容部52に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、境界面を乱さない成層が可能となる。また、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態とすることで、細胞分離装置10を傾けた場合でも分離液の混合を防止することができ、対象物を純度よく回収することができる。また、搬送・輸送を容易に行うことができる。更に、細胞分離装置10は、全遠心分離工程において外部と遮断された状態で行われるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での遠心分離が可能であり、操作性が向上する。
【0076】
さらに、1回の遠心分離により所望の成分を分離可能な溶液の場合、本実施形態の細胞分離装置10Bを用いることで、部品点数を削減して構造を簡素化することができる。
【0077】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の細胞分離装置について説明する。
図18及び
図19は本発明に係る第4実施形態の細胞分離装置の断面図である。
【0078】
第4実施形態の細胞分離装置10Cは、第1切替機構の構成が、第1実施形態の細胞分離装置10の第1切替機構55と異なるため、第1切替機構の構成についてのみ詳細に説明する。
細胞分離装置10Cの第1切替機構55Aは、下部収縮リング15Cと下部切替リング27Dとスライド部材60とにより構成され、下部切替リング27Dの突部37が下部収縮リング15Cの内溝24に係合し、相対回転不能(下部切替リング27Dを下部収縮リング15Cに対して回転することが不可能であることの意)に組み付けられている。
【0079】
下部切替リング27Dには、中央に1つの貫通孔33が形成されるとともに、下部収縮リング15Cの隔壁21にも中央に1つの貫通孔22が形成されており、隔壁21が貫通孔22に向かって下方に傾斜するテーパ面21aに囲繞されている。
【0080】
下部切替リング27Dには、貫通孔33の垂直方向軸線と直交する水平方向を長手方向とする直方体状のスライド部材収容空間75が貫通孔33を含むように形成される。スライド部材収容空間75には、スライド部材収容空間75内を長手方向にスライド可能に配置されたスライド部材60が収容される。スライド部材60には、水平面内において長手方向と直交する短手方向側(
図18(b)及び
図19(b)の紙面手前側)に棒状の操作部62が延びており、操作部62の先端に矩形状の把持部63が形成される。
【0081】
スライド部材収容空間75は、短手方向側で、操作部62が摺動する窓部76と連通しており、さらに窓部76の短手方向側に、把持部63を収容する把持部収容空間77が形成される。
【0082】
スライド部材60は、その中央部から長手方向一方側(
図18及び
図19の右側)にオフセットした位置に貫通孔33と同一径を有する貫通孔66が穿設され、
図18(b)及び(c)に示すように、把持部63を把持部収容空間77の長手方向他端側(図中、左側)に位置させたときに、
図18(a)に示すように、下部切替リング27Dの貫通孔33とスライド部材60の貫通孔66が連通し、第1切替機構55Aは連通状態となる。一方、
図19(b)及び(c)に示すように、把持部63を把持部収容空間77の長手方向一端側(図中、右側)に位置させたときに、
図19(a)に示すように、下部切替リング27Dの貫通孔33とスライド部材60の貫通孔66が連通せず、第1切替機構55Aは遮断状態となる(
図19参照)。
【0083】
スライド部材60は、第1切替機構55Aが連通状態においても遮断状態においても、窓部76を覆うようにその長手方向長さが決められており、これにより常に内部が無菌状態に維持される。
【0084】
スライド部材60の素材は、比較的剛性のある一般的な素材であればよく、PP、PE、ポリカーボネイト等から形成され、ゴム素材からなる下部切替リング27Dとの間で密閉性が確保される。
【0085】
このように構成された本実施形態では、スライド部材60の把持部63を把持部収容空間77の長手方向他端側に位置させたとき、
図18(a)〜(c)に示すように、第1切替機構55Aは連通状態となって、第1液体収容部51と第2液体収容部52とが連通し、この連通状態から把持部63を把持部収容空間77の長手方向一端側に位置させたとき、
図19(a)〜(c)に示すように、第1切替機構55Aは遮断状態となって、第1液体収容部51と第2液体収容部52との連通が遮断される。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の細胞分離装置10Cによっても、第1実施形態の細胞分離装置10と同様に、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを遮断状態として第1液体収容部51に試料溶液を注入し、第2液体収容部52に分離液を注入することで、試料溶液と分離液とが混合することなく分離して注入され、境界面を乱さない成層が可能となる。また、第1液体収容部51と第2液体収容部52とを連通状態として遠心分離した後、再び遮断状態とすることで、細胞分離装置10Cを傾けた場合でも分離液の混合を防止することができ、対象物を純度よく回収することができる。また、搬送・輸送を容易に行うことができる。更に、細胞分離装置10Cは、全遠心分離工程において外部と遮断された状態で行われるので、無菌室などの特殊な環境を準備することなく、通常の環境下での遠心分離が可能であり、操作性が向上する。
【0087】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。