特許第5748665号(P5748665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748665ジケトピロロピロール顔料分散剤、それを用いた顔料組成物、着色組成物およびカラーフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748665
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ジケトピロロピロール顔料分散剤、それを用いた顔料組成物、着色組成物およびカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20150625BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20150625BHJP
   C09B 57/00 20060101ALN20150625BHJP
   C09B 21/00 20060101ALN20150625BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   C09B67/20 L
   C09B67/20 F
   G02B5/20 101
   !C09B57/00 Z
   !C09B21/00
   !B41M5/00 E
【請求項の数】12
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2011-538448(P2011-538448)
(86)(22)【出願日】2010年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2010069024
(87)【国際公開番号】WO2011052617
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-247151(P2009-247151)
(32)【優先日】2009年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】藤木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−026767(JP,A)
【文献】 特開2007−169607(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081930(WO,A1)
【文献】 特開2007−009096(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/107073(WO,A1)
【文献】 特開2009−029886(JP,A)
【文献】 特開2007−266285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
G02B 5/20
B41M 5/00
C09B 21/00
C09B 57/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含むジケトピロロピロール顔料分散剤。
【化1】
式(1)において、Eは下記式(2)または(3)で表される塩基性基を表し、n及びmは1である
【化2】
式(2)中、Xは、直接結合、−S−、−O−、−SO−、−CO−、−SONR−、−NRSO−、−CONR−、−CHNRCOCHNR−、または−(CHNH−を表す。ただし、kは、1以上10以下の整数を表す。Rは、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。Yは、直接結合、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基、窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環、または−Y−Y−Y−を表す。YおよびYは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基、または、窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。Yは、直接結合、−NR−、−O−、−SO−、または−CO−を表し、Rは上記定義のとおりであるが、YとYが同じ基である場合には直接結合となることはない。RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が30以下の飽和または不飽和のアルキル基を表し、RおよびRで窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
式(3)中、Zは、直接結合、−CHNR’COCHNR’−、−CHNR’COCHNR’−G−、−NR’−、−NR’−G−CO−、−NR’−G−CONR’−、−NR’−G−SO−、−NR’−G−SONR’−、−O−G−CO−、−O−G−CONR’−、−SO−、−O−G−SO−、または−O−G−SONR’−を表す。ここで、Gは、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、または置換基を有していてもよく炭素数20以下のアリーレン基を表し、R’は、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。Rは、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基を表す。
【請求項2】
下記式(4)で表される化合物を含む、請求項1に記載のジケトピロロピロール顔料分散剤。
【化3】
式(4)において、n及びmは1である。pは2以上5以下の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が10以下の飽和または不飽和のアルキル基を表し、RおよびRで窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
【請求項3】
さらに、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載のジケトピロロピロール顔料分散剤。
【化4】
式(1)において、Eは上記式(2)または(3)で表される塩基性基を表し、nは2であり、mは0である
【請求項4】
さらに、下記式(4)で表される化合物を含む請求項1又は2に記載のジケトピロロピロール顔料分散剤。
【化5】
式(4)において、nは2であり、mは0である。pは2以上5以下の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が10以下の飽和または不飽和のアルキル基を表し、RおよびRで窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
【請求項5】
下記式(6)で表されるジケトピロロピロール顔料をスルホン化し、次いで塩素化剤と反応させることでクロロスルホニル化し、さらにアミン成分と反応させることで製造される、請求項1〜4のいずれかに記載のジケトピロロピロール顔料分散剤の製造方法。
【化6】
【請求項6】
顔料および請求項1〜4のいずれかに記載のジケトピロロピロール顔料分散剤を含有する、顔料組成物。
【請求項7】
さらに、顔料誘導体を含むことを特徴とする、請求項6に記載の顔料組成物。
【請求項8】
顔料誘導体が、ジケトピロロピロール、キナクリドン、チアジンインジゴ、ベンゾイソインドール、またはアントラキノンからなる顔料残基に、塩基性基、酸性基、またはフタルイミドメチル基が導入された顔料誘導体から選ばれる少なくとも1種の顔料誘導体を含むことを特徴とする、請求項7に記載の顔料組成物。
【請求項9】
顔料が、ジケトピロロピロール系赤色顔料、キナクリドン系赤色顔料、チアジンインジゴ系赤色顔料、またはアントラキノン系赤色顔料を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の顔料組成物。
【請求項10】
顔料が、さらに黄色顔料を含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の顔料組成物。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の顔料組成物と顔料担体とを含有する、着色組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の着色組成物から形成されるフィルタセグメントを具備する、カラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ、塗料、樹脂着色剤、インクジェットインキやカラーフィルタ用インキなどに好適に用いられる顔料分散剤、顔料組成物および着色組成物に関する。また本発明はカラー液晶表示装置、カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ、塗料等においては、顔料を微細な状態で分散させることにより、高い着色力を発揮させ、印刷物または塗加工物の鮮明な色調、光沢等の適性を持たせている。また、顔料を安定な状態で分散させることにより印刷インキや塗料を製造する際の労力やエネルギーを大きく削減することができる。さらに安定な状態の分散体は一般的に貯蔵安定性にも優れる。
【0003】
しかし、印刷インキや塗料に用いられる顔料は、より鮮明な色調を実現するために微細な粒子であることが多く、そのために顔料粒子間の凝集力が強くなり上記のような適性を持たせることが困難であることが多い。
【0004】
このような問題を解決するためには、顔料分散剤を使用し、顔料とビヒクル間の親和性を良くし、分散体の安定化を図ることが知られており、これまでに様々な顔料分散剤が開示されている。
【0005】
例えば、有機顔料に、酸性基、塩基性基、フタルイミドメチル基等の官能基を導入した顔料誘導体が開発され、効果が得られている。しかし、顔料誘導体は、有機顔料を母体骨格とするため固有の強い着色を有し、異なる色相の顔料に使用する場合は著しい制約を受ける場合がある。
【0006】
例えば、印刷インキ、塗料、とりわけインクジェットインキ、カラーフィルタ用インキ等の高度に微細化されたジケトピロロピロール顔料粒子を分散する系では、顔料粒子の強い凝集力をほぐし、経時安定性を得るために、特許文献1に記載のジケトピロロピロール顔料分散剤を使用している。しかしながら、この顔料分散剤は分散性に優れるが、その分散体は鮮明性(明度)が低下するといった問題を抱えている。
【0007】
一方、カラーフィルタは、ガラス等の透明な基盤の表面に、二種類以上の異なった色相を有する微細な帯(ストライプ)状のフィルタセグメントを平行または交差して配置したもの、あるいは微細なフィルタセグメントを縦横一定の配列で配置したものからなっている。フィルタセグメントは数ミクロン〜数100ミクロンと微細であり、しかも色相毎に所定の配列で整然と配置されている。一般にカラー液晶表示装置においては、カラーフィルタの上に液晶を駆動させるための透明電極が蒸着あるいはスパッタリングにより形成され、さらにその上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。これらの透明電極および配向膜の形成工程は、一般に200℃以上、場合によっては230℃以上の高温で行われる。このため、現在、カラーフィルタの製造方法としては、着色剤として耐光性、耐熱性に優れる顔料を使用した、顔料分散法と呼ばれる方法が主流となっている。
【0008】
しかし、一般に顔料分散法で製造されたカラーフィルタは、顔料による光の散乱等により、液晶が制御した偏光度合いを乱してしまうという問題がある。そのため、光を遮断しなければならないときに光が漏れたり、光を透過しなければならないときに透過光が減衰したりするため、遮断時と透過時における表示装置上の輝度の比(コントラスト)が低いという点が課題となっている。
【0009】
カラーフィルタ用に使用される顔料のうち、赤色フィルターの製造には、従来、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が用いられていた。これらのうち、特にジケトピロロピロール系顔料は、塗膜にした際の色特性が良好であり、この用途に多く使用されている。
【0010】
近年、カラーフィルタ用に使用される顔料にさらなるコントラストの向上が求められており、従来使用されていたジケトピロロピロール系顔料では目的を達成するのが困難となっている。
【0011】
一般に、高い着色力や鮮明な色調を有する顔料には一次粒子が微細であるものが多い。特にカラーフィルタ用として使用される顔料は、塗膜のコントラストを向上するために、従来の顔料よりもさらなる微細化が施されている場合が多い。
【0012】
微細な顔料粒子を調製するための顔料化法として現在広く用いられている方法には、ソルベントソルトミリング法等が挙げられる。しかし、顔料と無機塩や溶剤など一般的に用いられる粉砕助剤等と共に仕込んだだけでは、粉砕時に起こる発熱や、分散助剤として添加した溶剤等により、顔料粒子の成長も同時に起こってしまったり、長時間機械的に力が加わることで、顔料粒子の状態が不安定になるため、結晶転移を起こすなどの変化を起こしたりして、時間とエネルギーをかけても、安定的に十分な微細化顔料が得られない場合がある。
【0013】
一方、顔料をより微細化していくと、顔料粒子間の凝集力が強くなり、インキや塗料が高粘度を示す場合が多い。しかも、この分散体を製造する際に、製品の分散機からの取り出し、分散機からタンク等への移送が困難となるばかりでなく、さらに悪い場合は貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。
【0014】
このような問題を解決するためには、顔料分散剤を使用し、顔料とビヒクル間の親和性を良くし、分散体の安定化を図ることが知られており、これまでに様々な顔料分散剤が開示されている。例えば、有機顔料に酸性基、塩基性基、フタルイミドメチル基等の官能基を導入した顔料誘導体や、アクリルポリマーやポリエステル樹脂の一部に酸性基や塩基性基を導入した樹脂型分散剤が開発され、単独または併用にて使用されており、効果が得られている。また、これらの一部には顔料の結晶成長防止効果を持つものもある。
【0015】
しかし、従来の顔料分散剤の顔料結晶成長防止の効果は、印刷インキ、塗料、とりわけインクジェットインキ、カラーフィルタ用インキ等、高い鮮明性を達成するのに十分な高度に微細化された顔料粒子を安定的に得るのには、必ずしも十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平3−26767号公報
【特許文献2】特開平6−316676号公報
【特許文献3】特開平5−331398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、これまで顔料分散剤に要求されてきた高い分散性能に加え、高い鮮明性(明度)とジケトピロロピロール系顔料に対し強い顔料結晶成長防止効果を発揮する顔料分散剤の提供を目的とする。また、本発明は、顔料の鮮明性(明度)が損なわれておらず、顔料担体に対し優れた分散性能を発揮する顔料組成物の提供を目的とする。さらに、本発明は、高い鮮明性(明度)を有し、流動性、貯蔵安定性および乾燥皮膜にした場合の光沢性にも優れ、印刷インキ、塗料、インクジェットインキ、カラーフィルタ用インキ等として好適に用いられる着色組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤は、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
【0019】
【化5】
【0020】
式(1)において、Eは、下記式(2)または(3)で表される塩基性基を表す。nは1または2であり、mは0または1であり、n+m=2である。
【0021】
【化6】
【0022】
式(2)中、Xは、直接結合、−S−、−O−、−SO−、−CO−、−SONR−、−NRSO−、−CONR−、−CHNRCOCHNR−、または−(CHNH−を表す。ただし、kは、1以上10以下の整数を表す。Rは、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。
式(2)中、Yは、直接結合、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基、窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環、または−Y−Y−Y−を表す。YおよびYは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基、または、窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を表す。Yは、直接結合、−NR−、−O−、−SO−、または−CO−を表し、Rは上記定義のとおりであるが、YとYが同じ基である場合には直接結合となることはない。
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が30以下の飽和または不飽和のアルキル基を表し、RおよびRで窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
式(3)中、Zは、直接結合、−CHNR’COCHNR’−、−CHNR’COCHNR’−G−、−NR’−、−NR’−G−CO−、−NR’−G−CONR’−、−NR’−G−SO−、−NR’−G−SONR’−、−O−G−CO−、−O−G−CONR’−、−SO−、−O−G−SO−、または−O−G−SONR’−を表す。ここで、Gは、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニレン基、または置換基を有していてもよく炭素数20以下のアリーレン基を表し、R’は、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。
式(3)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルキル基、置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基を表す。
式(3)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基、または置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基を表す。
【0023】
また、本発明の顔料組成物は、顔料および本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を含有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の着色組成物は、本発明の顔料組成物と顔料担体とを含有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のカラーフィルタは、本発明の着色組成物から形成されるフィルタセグメントを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を用いることにより、広範な樹脂に対して、顔料を微細に分散することができ、非集合性、非結晶性、流動性、塗膜光沢、鮮明性、貯蔵安定性に優れた良好なインキおよび塗料を容易に得ることができる。
【0027】
とりわけ、本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤は、ジケトピロロピロール系赤色顔料、キナクリドン系赤色顔料、アントラキノン系赤色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料といった赤色系統の顔料群に対して、高い鮮明性(明度)、および優れた分散性を発揮する。
【0028】
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤は、ジケトピロロピロール系顔料のソルトミリング法による顔料化方法において従来使用されてきた特許文献1に記載の顔料誘導体よりも微細化されたジケトピロロピロール系顔料を提供することが可能である。
【0029】
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を含有する着色組成物はグラビアインキ、自動車用、木材用、金属用等の各種一般塗料、磁気テープのバックコート塗料、ラジエーションキュアー型インキ、インクジェットプリンター用インキ、カラーフィルタ用インキ等の用途に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は顔料分散剤Aのクロマトグラムである。
図2図2は顔料分散剤Bのクロマトグラムである。
図3図3は顔料分散剤Cのクロマトグラムである。
図4図4は顔料分散剤Dのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<ジケトピロロピロール顔料分散剤>
まず、本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤について説明する。本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤は、式(1)で表される化合物である。
【0032】
ここで、式(1)のRにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0033】
式(1)のRにおける置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−メチルアリル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0034】
式(1)のRにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基等に置換されたものも挙げられる。
【0035】
式(1)のYにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレンが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0036】
式(1)のYにおける置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニレン基としては、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレンが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0037】
式(1)のYにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリーレン基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、フェナンスレン、インデン、アズレン、ペリレン、フルオレンといったものが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0038】
式(1)のYにおける置換されていてもよい複素環としては、炭素原子以外に、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子などの原子を構成原子とする環であり、芳香族性を有していても有していなくても良い。また、他の芳香族環、複素環と縮合していてもよい。
具体的には、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0039】
式(1)のRおよびRにおける置換基を有していてもよく炭素数が30以下の飽和または不飽和のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0040】
式(1)のRおよびRが形成してもよい複素環としては、窒素、酸素または硫黄原子を構成原子とする環であり、芳香族性を有していても有していなくても良い。
具体的には、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0041】
式(1)のGにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレンが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0042】
式(1)のGにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニレン基としては、ビニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレンが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0043】
式(1)のGにおける置換基を有していてもよく炭素数20以下のアリーレン基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、フェナンスレン、インデン、アズレン、ペリレン、フルオレンといったものが挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0044】
式(1)のR’における置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0045】
式(1)のR’における置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−メチルアリル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0046】
式(1)のR’における置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基等に置換されたものも挙げられる。
【0047】
式(1)のR、R、R、Rにおける置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0048】
式(1)のR、R、R、Rにおける置換基を有してもよく炭素数が20以下のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−メチルアリル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0049】
式(1)のR、R、R、Rにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基等に置換されたものも挙げられる。
【0050】
式(1)のRにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルケニル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0051】
式(1)のRにおける置換基を有していてもよく炭素数が20以下のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−メチルアリル基等が挙げられ、これらの基の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン、水酸基、シアノ基、メルカプト基、アルキル基、アリール基等に置換されたものも挙げられる。
【0052】
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤のうち、好ましい顔料分散剤は、下記式(4)で表されるジケトピロロピロール顔料分散剤である。
【0053】
【化7】
【0054】
式(4)において、nは1または2であり、mは0または1であり、n+m=2である。pは2以上5以下の整数を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が10以下の飽和または不飽和のアルキル基を表し、RおよびRで窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成していてもよい。
【0055】
また、特に好ましい顔料分散剤は、上記式(4)において、下記に示す条件を満たす構造の化合物である。
すなわち、nは1または2であり、mは0または1であり、n+m=2であり、pは2以上5以下の整数であり、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく炭素数が5以下の飽和もしくは不飽和のアルキル基である、式(4)で表されるジケトピロロピロール顔料分散剤である。
【0056】
<ジケトピロロピロール顔料分散剤の製造方法>
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を製造するには、数種の合成経路があるが、下記式(5)で表される顔料分散剤を例として、下記式(5)で表される顔料分散剤の代表的な製造方法の概略を以下に示す。
【0057】
【化8】
【0058】
まず、下記式(6)で表されるジケトピロロピロール顔料を発煙硫酸と反応させることでスルホン化し、下記式(7)で表される化合物を製造する。さらに下記式(7)で表される化合物と塩素化剤との反応により下記式(8)で表される化合物を製造する。次に、下記式(8)で表される化合物とジエチルアミノプロピルアミンを反応させ、加温することにより、上記式(5)で表される化合物を製造する。
【0059】
【化9】
【0060】
ジエチルアミノプロピルアミンに代えて、他のアミン成分を用いることにより、種々の塩基性基Eを形成することができる。
【0061】
他のアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−ブチルエチルアミン、N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジオクチルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、2−ヒドロキシメチルアミノエタノール、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジメチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチル−ラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチル−ヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピリジンメタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0062】
<ジケトピロロピロール顔料分散剤の具体例>
本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤の具体例としては、以下のようなものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化10】
【0064】
【化11】
【0065】
【化12】
【0066】
【化13】
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
<顔料組成物>
次に、本発明の顔料組成物について説明する。本発明の顔料組成物は、顔料および本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を含有する。
【0071】
顔料組成物に含まれる顔料としては、一般に市販されている種々の有機顔料または無機顔料を用いることができる。
【0072】
有機顔料としては、例えば、アゾ系、アンサンスロン系、アンスラピリミジン系、アントラキノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インダンスロン系、キナクリドン系、キノフタロン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、チアジンインジゴ系、チオインジゴ系、ピランスロン系、フタロシアニン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、ベンズイミダゾロン系などの有機顔料が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、弁柄、鉄黒、亜鉛華、紺青、群青等が挙げられる。これらの顔料は、併用してもかまわない。
【0073】
ジケトピロロピロール顔料分散剤は、これと同一または類似の化学構造を有する顔料に使用すると、非集合性、非結晶性、流動性等を効果的に向上させることができる。また、色相の面では、黄色〜赤色の顔料に使用するのが好ましく、橙色〜赤色の顔料に使用するのがより好ましい。
【0074】
特に、ジケトピロロピロール顔料分散剤は、ジケトピロロピロール系赤色顔料、キナクリドン系赤色顔料、チアジンインジゴ系赤色顔料、アントラキノン系赤色顔料に代表される赤色系統の顔料に使用することが好ましい。
【0075】
顔料組成物中に含まれるジケトピロロピロール顔料分散剤の量は、顔料100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。ジケトピロロピロール顔料分散剤の含有量が0.1重量部より少ない場合には、添加したジケトピロロピロール顔料分散剤の効果が得られ難く、30重量部より多い場合には、添加した分の効果が得られないばかりか、得られる顔料組成物の物性と顔料単独の物性との差異が大きくなり、インキや塗料に用いられたときに実用上の品質に問題が起きることがある。
【0076】
顔料組成物は、顔料粉末とジケトピロロピロール顔料分散剤の粉末を単に混合して調製しても充分な分散効果が得られるが、下記の方法により調製すれば、さらに良好な結果を得ることができる。粉末混合法以外の顔料組成物の調製方法としては、ディソルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、アトライター、サンドミル、各種粉砕機等を用いて顔料粉末と顔料分散剤の粉末を機械的に混合する方法、顔料の水または有機溶媒によるサスペンジョン系に顔料分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に顔料分散剤を沈着させる方法、硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に有機顔料と顔料分散剤を共溶解して水等の貧溶媒により共沈させる方法が挙げられる。
【0077】
<着色組成物>
次に、本発明の着色組成物について説明する。本発明の着色組成物は、本発明のジケトピロロピロール顔料組成物と顔料担体を含有する。
【0078】
顔料担体は、樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。着色組成物を用いてカラーフィルタを製造する場合には、樹脂として、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が80%以上、特に95%以上の透明樹脂を用いることが好ましい。
【0079】
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂等が挙げられる。樹脂の前駆体としては、放射線照射により硬化して樹脂を生成するモノマーまたはオリゴマーが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0080】
顔料担体は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、30〜700重量部、好ましくは60〜450重量部の量で用いることができる。また、樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、樹脂は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。また、樹脂の前駆体は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0082】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0083】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性の置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0084】
樹脂の前駆体であるモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0085】
着色組成物には、顔料の顔料担体への分散性を向上させるため、適宜、界面活性剤、樹脂型顔料分散剤等の分散助剤を含有させることができる。分散助剤は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部の量で用いることができる。
【0086】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0087】
樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有する樹脂であり、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の直鎖状または櫛状の樹脂からなるものが挙げられ、直鎖状樹脂の主鎖または末端、櫛状樹脂の主鎖または側鎖に、ブロックまたはランダムに塩基性基、酸性基、芳香族基等を有するものが好ましい。
【0088】
市販の樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ポリフローNO.75、NO.90、NO.95(共栄社油脂化学工業製)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム製)、ソルスパース13240、20000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(アビシア製)、ディスパービック111、160、161、162、163、164、170、182、2000、2001などの各種ディスパービック分散剤(ビックケミー製)、アジスパーPB711、PB411、PB111、PB814、PB821、PB822などの各種アジスパー分散剤(味の素ファインテクノ製)、エフカ46、47などのエフカ分散剤(エフカーケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0089】
着色組成物を紫外線等の光照射により硬化する場合には、光重合開始剤が添加される。
【0090】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0091】
上記光重合開始剤は、単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、増感剤として、α−アシロキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、着色組成物中の光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で用いることができる。
【0092】
着色組成物には、顔料を充分に顔料担体中に分散させ、均一な塗膜を形成することを容易にするために、溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、n−ブチルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブタノール、1,3−ブチレングリコール、トリアセチン、3,3,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、酢酸イソアミル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独でもしくは混合して用いることができる。
【0093】
溶剤は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、合計して800〜4000重量部、好ましくは1000〜2500重量部の量で用いることができる。
【0094】
着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0095】
また、着色組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱重合防止剤、可塑剤、表面保護剤、平滑剤、塗布助剤、密着向上剤、塗布性向上剤または現像改良剤などの添加剤を添加することができる。
【0096】
着色組成物は、本発明の顔料組成物を、必要に応じて上記分散助剤、上記光重合開始剤と共に、顔料担体および有機溶剤中に三本ロールミル、二本ロールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる。また、2種以上の顔料を含む着色組成物は、各顔料を本発明のジケトピロロピロール顔料分散剤を用いて別々に顔料担体および有機溶剤中に微細に分散したものを混合して製造することもできる。
【0097】
着色組成物は、着色組成物を構成する全ての成分を混合してから分散してもよいが、初めに顔料とジケトピロロピロール顔料分散剤を、樹脂および/または有機溶剤の一部で分散し、次いで、残りの成分を添加して分散することが好ましい。
【0098】
また、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散を行う前に、ニーダー、三本ロールミル等の錬肉混合機を使用した前分散、二本ロールミル等による固形分散、または顔料へのジケトピロロピロール顔料分散剤の処理を行ってもよい。また、ビーズミル等で分散した後、30〜80℃の加温状態にて数時間〜1週間保存するエージングといわれる後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いた後処理を行うと、着色組成物の安定性に対して有効である。このほか、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機等のあらゆる分散機や混合機が本発明の着色組成物を製造するために利用できる。
【0099】
着色組成物は、カラーフィルタの製造に用いられる場合には、遠心分離、焼結フィルター、メンブレンフィルター等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0100】
本発明の着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材は、顔料担体である熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または感光性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、溶剤とを含有する組成物中に、本発明の顔料組成物を分散させたものである。
【0101】
さらに、本発明の着色組成物は、幅広い印刷インキや塗料、インクジェットインキ、さらにはプラスチックの着色においても、分散効果と経時安定性に優れ、着色力のある着色物が得られる。
【0102】
その場合、モノマーや光重合開始剤を用いず、前記の樹脂および溶剤の他に、石油樹脂、カゼイン、セラック、乾性油、合成乾性油等の樹脂、およびエチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルベンゼン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド、ソルベッソ100(エクソン化学株式会社)、スワゾール1000、石油系溶剤等の溶剤を用い、必要に応じて界面活性剤および/または樹脂型顔料分散剤を用いて、前記の方法により着色組成物を製造することができる。
【0103】
<カラーフィルター>
次に、カラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、透明あるいは反射基板上に、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のフィルタセグメントが形成されたものや、Y(エロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の3色のフィルタセグメントが形成されたもの等である。各色のフィルタセグメントは、印刷法またはフォトリソグラフィー法により、本発明の着色組成物を用いて形成することができる。
【0104】
透明基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラスなどのガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。
【0105】
反射基板としては、シリコンや、前記の透明基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。
【0106】
印刷法による各色フィルタセグメントの形成は、上記各種の印刷インキとして調製した着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散剤や体質顔料によるインキ粘度の調整を行うこともできる。
【0107】
フォトリソグラフィー法により各色フィルタセグメントを形成する場合は、上記溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材として調製した着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してカラーフィルタを製造することができる。さらに、着色レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、上記印刷法より精度の高いカラーフィルタが製造できる。
【0108】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0109】
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0110】
本発明のカラーフィルタは、上記方法の他に電着法、転写法などにより製造することができ、また、本発明の着色組成物はいずれの方法にも用いることができる。なお、電着法は、透明基板上に形成した透明導電膜を利用して、コロイド粒子の電気泳動により各色フィルタセグメントを透明導電膜の上に電着形成することでカラーフィルタを製造する方法である。また、転写法は剥離性の転写ベースシートの表面に、あらかじめカラーフィルタ層を形成しておき、このカラーフィルタ層を所望の透明基板に転写させる方法である。
【0111】
透明基板あるいは反射基板上にフィルタセグメントを形成する前に、あらかじめブラックマトリクスを形成しておくと、液晶表示パネルのコントラスト比を一層高めることができる。ブラックマトリクスとしては、クロムやクロム/酸化クロムの多層膜、窒化チタニウムなどの無機膜や、遮光剤を分散した樹脂膜が用いられるが、これらに限定されない。
【0112】
また、前記の透明基板あるいは反射基板上に薄膜トランジスター(TFT)をあらかじめ形成しておき、その後にフィルタセグメントを形成することもできる。TFT基板上にフィルタセグメントを形成することにより、液晶表示パネルの開口率を高め、輝度を向上させることができる。
【0113】
カラーフィルタ上には、必要に応じてオーバーコート膜や柱状スペーサー、透明導電膜、液晶配向膜などが形成される。
【0114】
カラーフィルタは、シール剤を用いて対向基板と張り合わせ、シール部に設けられた注入口から液晶を注入したのち注入口を封止し、必要に応じて偏光膜や位相差膜を基板の外側に張り合わせることにより、液晶表示パネルが製造される。
【0115】
かかる液晶表示パネルは、ツイステッド・ネマティック(TN)、スーパー・ツイステッド・ネマティック(STN)、イン・プレーン・スイッチング(IPS)、ヴァーティカリー・アライメント(VA)、オプティカリー・コンベンセンド・ベンド(OCB)などのカラーフィルタを使用してカラー化を行う液晶表示モードに使用することができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、部とは重量部を表す。
【0117】
合成例1<顔料分散剤Aの合成>
102%発煙硫酸300部中に、C.I.ピグメントレッド272(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「Cromophtal DPP Flame Red FP」)30部を室温で仕込んだ。室温で3時間攪拌した後、1500部の冷メチルエチルケトン(MEK)に30分かけて滴下した。沈殿したジスルホン酸体をろ過し、3000部の氷MEKで洗浄し、80℃で乾燥させ上記式(7)で表される化合物に相当するジスルホン酸体を得た。DMF100部にジスルホン酸体10部を投入し、塩化チオニルを10部ゆっくりと滴下した。反応溶液を60度に加熱し、6時間攪拌させた。反応液を氷250部と水250部に注入させ、沈殿物をろ過、500部の氷水で3回洗浄し、クロロスルホニルジケトピロロピロールのプレスケーキを得た。500部の氷と500部の水、15部のジメチルアミノプロピルアミン中にこのプレスケーキを投入した。ついで、混合物を60℃に加温し、90分間攪拌した。生成物をろ過、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。これにより、下記式(9)で表される顔料分散剤A(6.7部)を得た。
【0118】
【化17】
【0119】
(n=2,m=0)に対応する分子量644.81をマススペクトルにて確認し、81.27%のLC純度であった。また、(n=1,m=1)に対応する分子量560.64をマススペクトルにて確認し、13.18%のLC純度であった。顔料分散剤Aのクロマトグラムを図1に示した。
【0120】
高速液体クロマトグラフィーの条件を以下に示す。
カラム:Symmetry C18 5micron(日本ウォーターズ株式会社)
溶離液:
(A)0.05mol/l CHCOONH水溶液/DMF=7/1(体積比)
(B)DMF/水=95/5(体積比)
勾配条件:
(A):(B)=80/20(体積比)で5分保持した後、20分かけて(A):(B)=80/20(体積比)から(A):(B)=0/100(体積比)へ変更し、その後(A):(B)=0/100(体積比)で15分保持する。
流速:0.300ml/分
注入量:5μl
カラム温度:35℃
【0121】
合成例2<顔料分散剤Bの合成>
500部の氷と500部の水、21.8部のジエチルアミノプロピルアミン中に合成例1に記載の処方で得られたクロロスルホニルジケトピロロピロールのプレスケーキを投入した。ついで、混合物を60℃に加温し、90分間攪拌した。生成物をろ過、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。これにより、下記式(5)で表される顔料分散剤B(7.3部)を得た。
【0122】
【化18】
【0123】
(n=2,m=0)に対応する分子量700.91をマススペクトルにて確認し、73.63%のLC純度であった。また、(n=1,m=1)に対応する分子量588.70をマススペクトルにて確認し、7.60%のLC純度であった。顔料分散剤Bのクロマトグラムを図2に示した。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、合成例1に記載の条件と同様である。
【0124】
合成例3<顔料分散剤Cの合成>
500部の氷と500部の水、15部のジエチルアミノプロピルアミン中に合成例1に記載の処方で得られたクロロスルホニルジケトピロロピロールのプレスケーキを投入した。ついで、混合物を60℃に加温し、90分間攪拌した。生成物をろ過、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。これにより、下記式(10)で表される顔料分散剤C(6.5部)を得た。
【0125】
【化19】
【0126】
(n=2,m=0)に対応する分子量616.75をマススペクトルにて確認し、70.08%のLC純度であった。また、(n=1,m=1)に対応する分子量546.62をマススペクトルにて確認し、15.62%のLC純度であった。顔料分散剤Cのクロマトグラムを図3に示した。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、合成例1に記載の条件と同様である。
【0127】
合成例4<顔料分散剤Dの合成>
500部の氷、500部の水および10.5部の下記式(11)で表される化合物の中に合成例1に記載の処方で得られたクロロスルホニルジケトピロロピロールのプレスケーキを投入した。ついで、混合物を60℃に加温し、90分間攪拌した。生成物をろ過、水で洗浄し、80℃で乾燥させた。これにより、下記式(12)で表される顔料分散剤D(6.8部)を得た。
【0128】
【化20】
【0129】
(n=2,m=0)に対応する分子量939.15をマススペクトルにて確認し、45.53%のLC純度であった。また、(n=1,m=1)に対応する分子量707.82をマススペクトルにて確認し、42.80%のLC純度であった。顔料分散剤Dのクロマトグラムを図4に示した。
高速液体クロマトグラフィーの条件は、合成例1に記載の条件と同様である。
【0130】
(アクリル樹脂溶液の調製)
温度計、冷却間、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブル4つ口フラスコに、シクロヘキサノン700部を添加し、80℃に加熱した。反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、N−ブチルメタクリレート133部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート46部、メタクリル酸43部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)74部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、3時間反応を継続し、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、2部の樹脂溶液を取り出し、180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定した。樹脂溶液の不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を得た。
【0131】
(赤色処理顔料1の調製)
ジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 254、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「IRGAPHOR RED B−CF」)300部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール150部の混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所)を使用し、60℃で6時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去後、乾燥、粉砕して290部の赤色処理顔料1を得た。
【0132】
(赤色処理顔料2の調製)
チアジンインジゴ系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 279、クラリアント株式会社製「NOVOPERM THI RED 4G70」)300部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール150部の混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所)を使用し、60℃で8時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去後、乾燥、粉砕して290部の赤色処理顔料2を得た。
【0133】
(赤黄混合処理顔料1の調製)
ジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 254、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「IRGAPHOR RED B−CF」)、アントラキノン系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 177、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「CHROMOPHTAL RED A2B」)およびアゾ系黄色顔料(C.I.PIGMENT YELLOW 150、ランクセス株式会社製「YELLOW PIGMENT E4GN−GT」)をそれぞれ3:5:2の重量比で混合させ混合物を300部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール150部の混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所)を使用し、60℃で10時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去後、乾燥、粉砕して290部の赤黄混合処理顔料1を得た。
【0134】
(赤黄混合処理顔料2の調製)
ジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 254、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「IRGAPHOR RED B−CF」)およびアゾ系黄色顔料(C.I.PIGMENT YELLOW 150、ランクセス株式会社製「YELLOW PIGMENT E4GN−GT」)を3:1の重量比で混合させ混合物を300部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール150部の混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所)を使用し、60℃で10時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去後、乾燥、粉砕して290部の赤黄混合処理顔料2を得た。
【0135】
(特許文献1に記載の顔料分散剤Eの合成)
下記式(13)で表される化合物を常法によりクロロスルホン化し、得られた化合物50部を水900部に分散した。次いで、N,N−ジエチルアミノエチルアミン240部を加えて60℃に昇温し、同温度で2時間攪拌を行った。沈殿物をろ過、水洗し、80℃で乾燥して、60部の顔料分散剤Eを得た。
【0136】
【化21】
【0137】
<実施例1>
ジケトピロロピロール系赤色顔料(C.I.PIGMENT RED 254、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「IRGAPHOR RED B−CF」)270部、合成例1で得られた顔料分散剤Aを30部、塩化ナトリウム1500部、およびジエチレングリコール150部の混合物を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所)を使用し、60℃で6時間混練した。次に、この混練物を5リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去後、80℃で一昼夜乾燥し、290部の赤色処理顔料Fを得た。
【0138】
<実施例2>
実施例1において顔料分散剤Aの代わりに顔料分散剤Bを使用し、それ以外は実施例1と同様にして290部の赤色処理顔料Gを得た。
【0139】
<実施例3>
実施例1において顔料分散剤Aの代わりに顔料分散剤Cを使用し、それ以外は実施例1と同様にして290部の赤色処理顔料Hを得た。
【0140】
<実施例4>
実施例1において顔料分散剤Aの代わりに顔料分散剤Dを使用し、それ以外は実施例1と同様にして290部の赤色処理顔料Iを得た。
【0141】
<比較例1>
実施例1において顔料分散剤Aの代わりに顔料分散剤Eを使用し、それ以外は実施例1と同様にして290部の赤色処理顔料Jを得た。
【0142】
(顔料粒子径の評価)
株式会社 日立ハイテクノロジーズ製のH−7650形透過電子顕微鏡を使用し、顔料の粒子径を観察した。
【0143】
表1に示したように本発明の顔料分散剤は、従来の顔料分散剤(E)以上の結晶成長防止効果を示した。
【0144】
【表1】
【0145】
<実施例5〜46および比較例2〜10>
各種顔料、顔料分散剤A〜E、アクリル樹脂溶液、および溶剤(シクロヘキサノン)を、それぞれ表2〜5の通りに配合し、均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で3時間分散した。これを5μmのフィルターで濾過し、着色組成物を調製した。
【0146】
(着色組成物の評価)
<粘度>
実施例5〜46および比較例2〜10で得られたカラーフィルタ用着色組成物の25℃における粘度を、コーンプレートタイプの粘度計(東機産業社製「TVE−20L型」)で測定した。
【0147】
<塗布基板の作製>
実施例5〜46および比較例2〜10で得られたカラーフィルタ用着色組成物を、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて300rpm、500rpm、1000rpm、1500rpmの回転数で塗布し、これを60℃で20分間乾燥して膜厚が異なる4種の塗布基板を得た。
【0148】
<明度(Y)、色度(x,y)>
上記で作製した塗布基板について、C光源での明度(Y)および色度(x,y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)で測定した。
【0149】
<コントラスト>
輝度計として株式会社トプコン製の色彩輝度計BM−5Aを、偏光板としてサンリツ社製の偏光フィルムLLC2−92−18を使用し、上記で作製した塗布基板の輝度を測定した。塗布基板を2枚の偏光板にはさみ、偏光板を平行にした場合と直交にした場合の輝度をそれぞれ測定し、平行にした場合の輝度と直交にした場合の輝度の比をコントラストとした。

コントラスト=(偏光板を平行にした場合の輝度)/(偏光板を直行にした場合の輝度)

なお、測定に際しては、不要光を遮断するために、測定部分に1cm角の孔を開けた黒色のマスクを当てて測定を行った。
異なる回転数で作製した4枚の塗布基板について測定したコントラストおよび色度から、コントラスト対xのプロットを作成した。各プロットを直線で結び、x=0.60におけるコントラストを近似した。
【0150】
表2〜5に示したように、本発明の顔料分散剤は良好な分散性を示し、従来の顔料分散剤Eに比べ明度(Y)の点で良好な結果を示した。また、塗布基板のコントラストも良好であった。
【0151】
なお、C.I.PIGMENT RED 279はNOVOPERM THI RED 4G70(クラリアント株式会社)を用いた。
【0152】
【表2A】
【0153】
【表2B】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
図1
図2
図3
図4