特許第5748669号(P5748669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000002
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000003
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000004
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000005
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000006
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000007
  • 特許5748669-薬物送達デバイス 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748669
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   A61M5/24
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-542797(P2011-542797)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公表番号】特表2012-513270(P2012-513270A)
(43)【公表日】2012年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2009067613
(87)【国際公開番号】WO2010072699
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年12月10日
(31)【優先権主張番号】08022328.2
(32)【優先日】2008年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・ボイド
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ビージー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・プランプトリ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・サンダーズ
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−513271(JP,A)
【文献】 特開2005−287676(JP,A)
【文献】 特表2004−528939(JP,A)
【文献】 特表平10−504474(JP,A)
【文献】 特開2000−079163(JP,A)
【文献】 特開平08−010326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスであって、
近位端(28)および遠位端を備えるハウジング(10);
カートリッジを保持するように適合されるカートリッジホルダ(14)で、ハウジング(10)に固着され、少なくとも部分的に透明な側壁を有する、カートリッジホルダ(14);および
薬物送達デバイスの遠位端(22)を覆うことができるキャップ(40)で、ハウジング(10)に対して回転しないように固定され、そしてカートリッジホルダ(14)によって可視化される情報を表示可能な窓開口部(44)を含んでなる、キャップ(40);を含んでなる、上記薬物送達デバイス。
【請求項2】
窓開口部(44)が、カートリッジホルダ(14)に取り付けられた情報を表示する、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
窓開口部(44)が、カートリッジホルダ(14)の少なくとも部分的に透明な側壁を通してカートリッジ(16)から伝達される情報を表示する、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
表示される情報が、カートリッジ(16)内に含まれる薬物のタイプを表わす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
表示される情報が、投与量スケール(60)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
投与量スケール(60)が、カートリッジホルダ(14)上に印刷される、請求項5に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
投与量スケールが、カートリッジホルダ(14)上に成形される、請求項5に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの記号が、投与量スケールに関連する更なる情報を提供するようにキャップ(40)上に印刷される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの記号が、投与量スケールに関連する更なる情報を提供するようにキャップ(40)上に成形される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
ピストン・ロッド(24)であって、カートリッジ(16)内にピストン(26)を係合させるためにピストン(26)を駆動するように適合されており、カートリッジ(16)内のピストン(26)の位置が窓開口部(44)を通して見える、ピストン・ロッド(24)を含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
窓開口部(44)が、複数の副窓(70)を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
副窓(70)が、前進移動するスケールとして投与量情報を示す、請求項11に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
キャップ(40)が、射出成形プラスチックで製作される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
キャップ(40)が、ハウジング(10)に対してキャップ(40)を回転しないよう固定するように、嵌め合い方向付け機能(52)に係合可能である少なくとも1つの方向付け機能(50)を含んでなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
キャップ(40)が方向付け機能として少なくとも1つの突起(50)を含んでなり、この少なくとも1つの突起(50)がキャップ(40)の端面上に配置される、請求項14に記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
キャップ(40)が、遠位端(22)、近位端間に配置される長手方向軸線(54)まわりの対称的な位置に位置する、2つの突起(50)を含んでなる、請求項15に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
キャップ(40)が、ハウジング(10)にキャップ(40)を係合させようとするとき誘導を提供可能な、キャップ(40)の内側壁上に少なくとも1つの方向付け機能を含んでなる、請求項14〜16のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
カートリッジ(16)が交換可能であり、方向付け機能は、カートリッジ(16)がカートリッジホルダ(14)に組み立てられ得る向きを定める、請求項3または請求項3に従属するいずれか1項の請求項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
近位端(28)および遠位端を有するハウジング(10)、カートリッジ(16)を保持するように適合されるカートリッジホルダ(14)を備え、カートリッジホルダ(14)がハウジング(10)に固着される薬物送達デバイス(5)の遠位端(22)を覆うためのキャップの使用であって、ここで、キャップ(40)は、窓開口部(44)を含んでなり、この窓開口部(44)が、カートリッジホルダ(14)によって可視化される情報を表示することが可能である、上記キャップ(40)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物送達デバイスに関する。さらにまた、本発明は、薬物送達デバイスの遠位端を覆うためのキャップの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスは、医薬製品(たとえばインスリン、成長ホルモンまたは他の薬剤)、特に患者による自己投与に適した医薬製品の投与用のものが一般的に知られている。
【0003】
或る種の薬物送達デバイスは、複数の薬剤を投与するように構成されている。このような薬物送達デバイスの特別な例の1つが、特許文献1に記載されている。そこには、使用者が操作できる薬物送達デバイスが示されている。この薬物送達デバイスは、ペン型注射器で使用するのに適した駆動機構を包含し、多数の予めセットした医薬製品が投与され得る。患者の皮膚内に医薬製品を投与するためのニードルユニットが薬物送達デバイスに取り付けられることが可能である。使用後、薬物送達デバイスの遠位端がキャップで蓋をすることができる。
【0004】
さらに、或る種の薬物送達デバイスは、投与されることになっている異なった投与分量を設定できるように構成されている。
【0005】
薬物送達デバイスが、使用後にキャップで蓋をされて注射針との接触や薬物送達デバイスの汚染を防ぐのが一般的に望ましい。
【0006】
特許文献2に、薬剤注射装置の投与分表示組立体が示されている。この投与分表示組立体は、軸線方向に延びる外側ハウジング胴と、ハウジング胴内に少なくとも部分的に配置されたダイヤルとを包含する。ダイヤルは、投与量設定時にハウジング胴に対して軸線方向に動かせるように螺合させてある。ダイヤルは、その上に与えられる複数の平行列の投与分量マークを設けた外側半径方向周面を包含し、複数の投与分量マーク列の各々は、周面上に螺旋状のパターンで設けられている。投与分表示組立体は、複数列の1つを選んでその投与分量マークを見るための手段も包含する。
【0007】
特許文献3には、注射可能な液体を満たすようになっている注射器本体を有し、そして、軸線を定めている環状ネック部を有し、そして、軸線方向外方に開いた出口を有する注射器組立体が示されている。ネック部は注射針を支えるようになっている。軸線方向内方でネック部と係合させられた弾性のあるプラグが出口を閉じ、そして、保持リングがプラグ下方でネック部に固定されている。ネック部まわりにある保持スリーブが保持リングに固定されており、そして、カップ型の安全キャップがプラグに固定されている。安全キャップには、少なくとも1つの半径方向に貫通する孔が形成してあり、この孔は、キャップにひびが入って壊れる前にプラグが正しく所定の位置にあるかどうかを点検する能力を最終使用者に与える。
【0008】
ハウジングにスケールを設けたさらなる注射装置が、特許文献4から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1923084A1号
【特許文献2】米国特許第2008/0269688A1号
【特許文献3】米国特許第6,491,665号
【特許文献4】DE29818721U1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
改良した薬物送達デバイスを提供することが本発明の一目的である。特に、操作の前後に使用者による効率的情報検索を可能にする薬物送達デバイスを提供できる。
【0011】
このために、薬物送達デバイスは、近位端および遠位端を有するハウジングと、カートリッジを保持するようになっているカートリッジホルダであって、ハウジングに固着されていて、少なくとも部分的に透明な側壁を有するカートリッジホルダと、薬物送達デバイスの遠位端を覆うことができ、ハウジングに対して回転しないように固定されるキャップとを包含し、そして、このキャップは窓開口部を包含し、この窓開口部は、カートリッジホルダによって可視化される情報を表示できる。
【0012】
このようにして、薬物送達デバイスは、少なく1つの窓開口部を包含できる。窓開口部は、カートリッジホルダによって可視化される情報を表示できるように構成されているとよい。
【0013】
カートリッジホルダは、ハウジングに恒久的にまたは取り外し自在に固定されるとよい。こうすることで、再使用可能または使い捨て可能な装置タイプも本開示に含めることができる。
【0014】
このような薬物送達デバイスでは、カートリッジホルダ、キャップの両方がハウジングに対して固定される。カートリッジホルダは、薬物送達デバイスの遠位端にあるキャップによって蓋をされる。キャップの係合後、キャップおよびカートリッジホルダは互いに対して固定された位置に位置決めされる。それ故、カートリッジホルダによって可視化される情報が窓開口部を通して表示され得、このとき、回転しているキャップによる妨げは何ら生じ得ない。カートリッジホルダに設けた情報は、少なくとも1つの窓開口部を通して選択的に表示され得る。特に、少なくとも1つの窓開口部から軸線方向や回転方向にオフセットしてカートリッジホルダに設けられた、使用者が関心を持たないかもしれない情報や使用者を困惑させるかもしれない情報(たとえばカートリッジホルダの製造番号)はキャップによって効果的に隠され得る。したがって、使用者にとって重要な情報(たとえば、カートリッジに入れられた医薬製品についての情報)が、よりはっきりとした方法、特に、視覚的に混乱を招くことの少ない方法で提供され得る。
【0015】
さらにまた、キャップ、カートリッジホルダおよびカートリッジは、カートリッジホルダによって可視化される情報が窓開口部を通して映し出され、使用者が薬物送達デバイスに関する情報を迅速に得ることができるように構成され得る。したがって、使用者は、薬物送達デバイスからキャップを取り外すことさえせずに充填状況、医薬製品のタイプ等に関する情報を受け取ることができる。このことは、使用者が異なった医薬製品での治療を求めているときに特に有用である。本発明によれば、一組の薬物送達デバイスが、いくつかもしくは全部からキャップを取り出すことなく容易に使用者により区別され得る。
【0016】
第1実施形態において、窓開口部は、カートリッジホルダに取り付けられた情報を表示する。
【0017】
この実施形態によれば、使用者は、カートリッジホルダに設けられている情報を見ることができる。この情報としては、カートリッジに入れられた医療製品のタイプを含み得るが、この情報は医薬製品の処方箋等と関連している。窓開口部を通して情報を表示することは、薬物送達デバイスを消耗品として使用するときに特に有用である。この場合、通常は、1つの特殊な医薬製品だけが分配される。この実施形態においては、カートリッジホルダに取り付けられたラベルによってカートリッジホルダに情報を付与することが可能である。
【0018】
別の実施形態においては、窓開口部は、カートリッジホルダの少なくとも部分的に透明な側壁を通してカートリッジから伝えられる情報を表示する。
【0019】
この実施形態によれば、カートリッジに直接取り付けられている情報が、窓開口部を通して特に選択的に表示され得る。通常、カートリッジは、その中味に応じてラベル付けされ得る。したがって、薬物送達デバイスの潜在的な誤用のリスクは、特に患者が異なった医薬製品を用いる必要があるときにかなり減らされる。この実施形態は、薬物送達デバイスが再使用可能であり、そして、使用者がカートリッジを交換できる場合に特に有用である。この場合、カートリッジが情報を持っている。
【0020】
好ましくは、関連情報が窓開口部を通して目に見えるようにカートリッジを1つの向きでのみカートリッジホルダに組み込むことができる方向付け機能があれば確実であろう。窓開口部の位置から回転方向や軸線方向にオフセットされた情報は効果的に隠され得る。
【0021】
一実施形態において、表示された情報は、カートリッジ内に入れられた薬剤のタイプを表す。
【0022】
薬剤のタイプが恒久的に表示される場合、キャップがハウジングに取り付けられているときにさえ、薬物送達デバイスを開くことなく使用者が常時関連情報を得ることができるので、薬物送達デバイスの操作が容易になる。それ故、たとえば、異なった薬物送達デバイスの時間のかかる選択はもはや必要ない。
【0023】
さらにまた、窓開口部は、窓開口部の下にあるカートリッジホルダの部分のみが使用者に見えるように、表示された情報を枠に入れることができる。
したがって、情報が、よりはっきりした方法で、すなわち、視覚的に混乱のより少ない方法で与えられる。
【0024】
一実施形態において、表示された情報は、投与量スケールを包含する。
【0025】
この実施形態によれば、使用者は、薬物送達デバイスの充填状況に関する情報を与えられる。この情報は、使用者が多数の使い捨て薬物送達デバイスが関係する投薬方針で治療を受ける必要があるときに特に有用である。その場合、異なった薬物送達デバイスは、通常、1キット内に含まれる。使用者は、同じ仕切られた部分、たとえば、箱等の中のキットの使用済み、未使用の薬物送達デバイスを保管することを望むかもしれない。この実施形態によれば、充填状況情報が投与量スケールを介して容易に見つけられるので、正しい薬物送達デバイスの選択が容易になる。
【0026】
別の実施形態においては、キャップは2つの窓開口部を包含する。窓開口部は、互いに対して斜めにオフセットされて配置され得る。これらの窓開口部は、互いに反対の側に配置してもよい。窓開口部のうちの1つは、たとえば、情報がカートリッジホルダによってあらわにされ得る医薬製品についての情報を与えるように配置するとよい。他方の窓開口部は、たとえば、投与量スケールについての情報を与えるように配置されるとよい。
【0027】
別の実施形態においては、投与量スケールは、カートリッジホルダに印刷される。
【0028】
この実施形態によれば、投与量スケールは、たとえば、カートリッジホルダに対して良好なコントラストを可能にするそれぞれの色を与えることによって視認性が良好になるように設計され得る印刷記号として設けられることが可能である。
【0029】
別の実施形態において、投与量スケールは、カートリッジホルダ上へ成形される。
【0030】
この実施形態においては、投与量スケールは、たとえば、射出成形によってカートリッジホルダの製造中に予め設けてもよい。このことは、必要な製造工程数を減らし、そうすれば、製造コストの低減にも寄与し得る。
【0031】
別の実施形態においては、少なくとも1つの記号が、キャップに印刷されており、投与量スケールに関する別の情報を与える。
【0032】
この実施形態によれば、投与量情報が別の情報、たとえば、薬物送達デバイスに入れられたカートリッジの空になるのが差し迫っているという情報と関連させることができるので、使用者の注意が喚起される。それ故、薬物送達デバイスの操作性が向上させられる。
【0033】
別の実施形態においては、少なくとも1つの記号がキャップ上へ成形され、投与量スケールに関する別の情報を与えるようになっている。
【0034】
この実施形態においては、別の情報は、たとえば、射出成形によって、キャップの製造中に予め与えられ得る。このことは、必要な製造工程数を減らし、そうすれば、製造コストの低減にも寄与し得る。
【0035】
別の実施形態においては、薬物送達デバイスはピストン・ロッドを包含し、このピストン・ロッドは、ピストンを駆動してカートリッジ内へピストンを前進させるようになっており、カートリッジ内のピストンの位置は窓開口部を通して見ることができる。
【0036】
薬剤が薬物送達デバイスから送り出されるとき、ピストンはカートリッジの遠位端に向って前方へ連続的に移動する。少なくとも部分的に透明な側壁を通してピストンの位置が使用者から見える。したがって、窓開口部を通してピストンを見ることによって薬物送達デバイスの充填状況が容易に認識され得る。
【0037】
このことは、使用者が一組の使い捨て薬物送達デバイスが関係する投薬方針で治療を受ける必要があるときに特に有用である。この実施形態によれば、使い捨て薬物送達デバイスセットの各薬物送達デバイスについての充填状況情報が窓開口部を通して容易に見つけられる。投与量スケールと組み合わせることで、ピストンの位置によって与えられる充填状況情報は、カートリッジ内に残っている多数の投与分にも反映させられ得る。
【0038】
別の実施形態においては、窓開口部は複数の副窓を包含する。
【0039】
窓開口部を複数の副窓に細分化することによって、表示されている情報を枠で囲み、薬物送達デバイスからの情報を見つけようとしている試みに使用者を導く。たとえば、第1の副窓が、カートリッジ内に入っている医薬製品のタイプに関する情報を表示してもよいし、そして、第2の副窓が、薬物送達デバイスの充填状況に関する情報を表示してもよい。したがって、カートリッジまたはカートリッジホルダ上に示されるかもしれない不必要な、または、混乱を招く情報は、適切な方法で副窓の位置を選択することにより隠され得る。したがって、窓開口部の副窓により行われる枠付けにより、表示されるべき情報の予選定が可能となり、そして、よりはっきりした方法、すなわち、使用者に視覚的に混乱を招くことの少ない方法で情報が与えられる。
【0040】
別の実施形態においては、副窓は、連続的なスケールとして投与量情報を表示する。
【0041】
この実施形態においては、薬物送達デバイスの充填状況に関する情報は、窓開口部の対応する副窓の下を連続的に移動、前進するピストンにより表示される。したがって、カートリッジ内のピストンの位置は、部分的に透明なカートリッジホルダを通して見ることができる。さらにまた、充填状況に関する情報は、使用者にとって馴染みのある形、たとえば、燃料計またはバッテリ充電レベル表示器と同様の形で与えられる。薬物送達デバイスから投与されることになっている残留投与分量についての情報は、薬物送達デバイスに関する他の情報と区別されることができ、したがって、はっきりした、混乱の少ない方法で与えられる。
【0042】
別の実施形態においては、キャップは、射出成形プラスチックから製作される。
【0043】
この実施形態によれば、キャップの設計が簡略化され、そして、キャップを製造するために従来の技術が使用され得る。たとえば、キャップは、熱可塑性材料、たとえば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン等から製造した単一射出成形品として提供され得る。
【0044】
別の実施形態によれば、キャップは、少なくとも1つの方向付け機能を包含し、この方向付け機能は対応する別の方向付け機能と係合してハウジングに関してキャップを回転しないように固定できる。方向付け機能は、対応する別の方向付け機能内に係合してハウジングに関してキャップを回転しないように固定できるように構成され得る。
【0045】
この実施形態においては、キャップはハウジングに関して回転しないように固定される。それ故、カートリッジホルダによって可視化される情報が窓開口部を通して表示され得、このとき、回転しているキャップによる妨げは何ら生じ得ない。
【0046】
別の実施形態によれば、キャップは、方向付け機能として役立ち、キャップの端面に配置されている少なくとも1つの突起を包含する。
【0047】
この実施形態においては、キャップは、突起がハウジングの対応する部分に嵌合するように設けることができる。それ故、ハウジングに関するキャップの回転しないための固定はこの突起で提供される。
【0048】
別の実施形態によれば、キャップは、遠位端と近位端の間に配置されている長手方向軸線まわりに対称的な位置に位置する2つの突起を包含する。
【0049】
この実施形態においては、ハウジングに関するキャップの可能性のある向きの数が減らされ、キャップとハウジングとの係合を容易にする。さらにまた、使用者は、2つの可能性のある向きだけにキャップを設置するように促される。したがって、ハウジングに対する随意勝手な位置での使用者によるキャップの係合が防がれる。
【0050】
別の実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ハウジング上へキャップを係合させようとするときに案内とすることができる、キャップの内側壁上に設けた少なくとも1つの方向付け機能を包含する。キャップのこの少なくとも1つの方向付け機能は、ハウジング上にキャップを係合させようとするときにハウジングに設けたそれぞれの溝に嵌合するように配置されるとよい。それ故、方向付け機能は、ハウジングに対して誤った向きにキャップを置くのを防ぐ。したがって、キャップをただ1つの向きに合わせるのが可能であり、さらに、キャップは、ハウジングに関して回転しないように固定される。
【0051】
上記目的のために、キャップは、近位端および遠位端を有するハウジングを有し、そして、カートリッジを保持するようになっているカートリッジホルダを有する薬物送達デバイスの遠位端を覆うために使用され、カートリッジホルダはハウジングに固着されており、キャップは窓開口部を包含し、窓開口部は、カートリッジホルダによって可視化される情報を表示できる。
【0052】
他の特徴は、添付図面と併せて考察すると、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】一実施形態による薬物送達デバイスを概略的に示す簡略透視図である。
図2】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
図3】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
図4A】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
図4B】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
図4C】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
図4D】一実施形態による薬物送達デバイスの一部を概略的に示す簡略側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
図1に薬物送達デバイス5の一実施形態が示してあり、これは液体薬剤のための注射器である。この薬物送達デバイスは、薬物の複数回分の固定された、または使用者設定可能な投与量を送達するように構成され得る。薬物送達デバイス5は、ペン型デバイスであってもよい。薬物送達デバイス5は、単一部材または複数の部材から形成され得るハウジング10を含んでなる。
【0055】
図1に示される実施形態においては、ハウジング10は、カートリッジホルダ14に取り付けられており、ここでは、医療製品または薬物を入れているカートリッジ16が設置され得る。カートリッジホルダ14は、ハウジング10に対して動かないように固着されているとよい。カートリッジ16の近位端は、図1において、一点鎖線で示されている。
【0056】
ニードルユニット(図1には示されていない)が、薬物送達デバイス5の遠位端22のところに設置されている。このニードルユニットを通して医療製品が患者に注射され得る。ニードルユニットは、螺合によってニードルホルダ20に固着され得る。ニードルホルダ20は、カートリッジホルダ14の一部をなす。
【0057】
医療製品の送達はピストン・ロッド24により行われ得る。ピストン・ロッド24は、カートリッジ16に対して遠位方向に移動し得る。カートリッジ16内に保持され、近位側28でカートリッジを密封しているピストン26は、ピストン・ロッド24によってカートリッジに対して遠位方向22に移動し得る。カートリッジホルダ14は、カートリッジ16内のピストン26の位置を見ることを可能にするために透明または半透明の材料で製作される。
【0058】
ここで、図1に示される薬物送達デバイス5の説明がほんの一例に過ぎないことに留意されたい。全機能を達成するためには他のエレメントも必要であり得る。たとえば、投与ボタン30および駆動機構(図1には示されていない)が存在し得る。これらのエレメントは、投与ボタン30を押圧した際に医療製品の調整量が投与され得るように、調整された投与量を投与したり、ピストン・ロッドおよびピストン24を遠位方向に動かすように構成される。
【0059】
薬物送達デバイス5の汚染を防ぐために、薬物送達デバイス5が使用されていないときにはキャップ40が薬物送達デバイス5に取り付けられる。キャップ40は、ニードルホルダ20およびカートリッジホルダ14を含め薬物送達デバイス5の遠位端22を覆う。キャップは単一部材であってもよい。たとえば、キャップ40は単一の射出成形部材であってもよい。
【0060】
キャップ40およびカートリッジホルダ14は、回転しないように固定されるためにキャップ40をカートリッジホルダ14に対して固着することのできる1組の保持部材を含んでなり得る。キャップ40の内面上に位置する保持部材(図1には示されていない)は、カートリッジホルダ14上の対応する嵌め合い保持部材42に係合できる。
【0061】
図1に示すように、嵌め合い保持部材42は、キャップ40上の対応するクランプに係合できるくぼみを含んでなる。しかしながら、たとえば、キャップ40上のくぼみおよびカートリッジホルダ14上の対応するクランプを含め、他の配置も同様に考えられる。
【0062】
図1に示すように、キャップ40は窓開口部44を含む。キャップは2つの窓開口部44を含んでいてもよい。2つの窓開口部44は、互いに対して反対側位置に配置してあってもよい(明示的に図示していないが)。少なくとも1つの窓開口部44を通してカートリッジホルダ14によって可視化される情報が表示され得る。カートリッジホルダ14およびキャップ40がハウジング10に対して固定されているので、キャップ40およびカートリッジホルダ14は、キャップ40の係合後、互いに対して固定位置に位置している。カートリッジホルダ14によって可視化される情報は、回転運動しているキャップに妨げられることなく窓開口部44を通して表示され得る。さらにまた、窓開口部44の位置から軸線方向に備えられたり、そして/または特に、回転方向にオフセットして備えられたりしている情報は、キャップ40によって隠され得る。キャップが薬物送達デバイスの遠位端を覆うと、隠される情報がキャップによって覆われるので、その隠された情報は、存在し得るけれども使用者には見えない。キャップが取り外されたとき、隠された情報が見えるようになり、そこに含まれる情報が検索され得る。
【0063】
次に図2に言及するに、ここには、キャップ40および薬物送達デバイス5の遠位端がより詳しく示されている。
【0064】
図2に示される実施形態においては、キャップ40およびカートリッジホルダ14は、カートリッジホルダによって可視化される情報が窓開口部44を通して見ることができる投与量スケール60を含むように構成される。窓開口部44は、図2に示される実施形態においては、細長いスリットとして形成される。しかしながら、他の形態の窓開口部、たとえば、矩形または他の任意の適した形態も同様に考えられる。さらにまた、キャップ40は、さらなる情報を表示するためのさらなる開口窓(図2には示されていない)を含んでいてもよい。
【0065】
図2において、キャップ40は、キャップ40の近位端に位置する突起50を含んでなる。突起50は、ハウジング10上の対応するくぼみ52内に嵌入できる。したがって、キャップ40は、突起50によってハウジング10に対して回転しないように固定される。これは、嵌め合い方向付け機能としての対応するくぼみ52と共に方向付け機能を形成する。こうして、窓開口部44の位置から回転方向にオフセットされて位置するカートリッジホルダ14上に備えられた情報が効果的に隠され得る。
【0066】
ここで、2つ以上、たとえば、2つの突起をキャップ40の端面に配置してもよいことに留意されたい。より詳しくは、2つの突起が、キャップ40上の遠位端22、近位端28間に配置される長手方向軸線54まわりの対称的な位置にあると見込むことができる。
【0067】
さらにまた、キャップ40は、その突起の代わりに、またはそれに加えて、キャップ40の内側壁上の少なくとも1つの方向付け機能(図2には示されていない)を含んでなり得る。方向付け機能は、カートリッジホルダ14にキャップ40を係合させようと試みるときの案内を与え得る。
【0068】
次に図3に言及するに、ここには、薬物送達デバイス5の遠位部分上にあるカートリッジホルダ14がより詳しく示されている。
【0069】
図3に示される実施形態おいて、カートリッジホルダ14は、投与量スケール60と、医薬製品のタイプに関する、または、医療製品の製造に関するさらなる情報記号62、たとえば、製造日またはバーコード製造情報とを含む。ここで、情報の一部をカートリッジ16に印刷してもよく、その場合は、カートリッジホルダ14の透明な側壁を通して伝達されることに留意されたい。
【0070】
図2および図3からわかるように、窓開口部44は、表示される情報の枠取りを窓開口部44の下にあるカートリッジホルダのこれらの部分のみが見えるように与える。図2および図3の実施形態において、投与量スケールだけが窓開口部44を通して見えており、使用者は、別の情報記号62によって惑わされることなく、明快な形で充填状態情報を検索することができる。また、2つの互いに反対側に配列された窓開口部44をキャップ40上に備えていてもよい(明示的に図示していない)。第1の窓開口部44が、カートリッジホルダ14上に備えた投与量スケールを表示するように配置されてもよい。さらにまた、第1の窓開口部44は、カートリッジ16の充填状態を表示するように備えてあってもよい。第2の窓開口部44が、たとえば医薬製品についての情報、たとえば医薬製品の名称を提供するように配置してあってもよい。
【0071】
ここで、本発明が充填状態情報を提供することにのみ限定されないことに留意されたい。さらにまた、キャップ40は、使用者に付加的な情報を与えるさらに別の記号を含み得る。たとえば、文字または数字をキャップ40に印刷または成形してもよい(図2には示されていない)。
【0072】
次に図4A〜4Dに言及するに、ここには、薬物送達デバイス5の別の実施形態が示されている。
【0073】
図4A〜4Dにおいて、カートリッジ16内のピストンの位置が窓開口部44を通して見えている。
【0074】
薬剤が薬物送達デバイス5から投与されるにつれて、ピストン26がカートリッジ16の遠位端22に向って前方へ前進移動する。少なくとも部分的に透過な側壁を通して、ピストン26の位置が見え、窓開口部44を通してピストン26を観察することによって薬物送達デバイス5の充填状態が検出され得る。
【0075】
投与量スケール60との組み合わせで、ピストン26の位置によって与えられる充填状態情報は、カートリッジ内に残っている多数回の投与量に変え得る。これは固定投与量式デバイスにとって特に有用である。
【0076】
図4A〜4Dに示されているように、窓開口部は複数の副窓70を含んでなる。副窓70は、前進するスケールとして投与量情報を指し示す。充填状態に関する情報は数字で与えられる。薬物送達デバイスから投与されることになっている残留投与分の回数についての情報は容易に検索され得る。
【0077】
図4Aの実施形態は、投与量がこれまで投与されていない新しい薬物送達デバイスに対応する。図4Bは、1回分の投与量が投与された、すなわち、6回の投与量が残っている同じ薬物送達デバイスを示している。図4Cは3回分を投与した薬物送達デバイスを示し、図4Dは4回分が投与された薬物送達デバイスを示している。
【0078】
他の実装は添付する特許請求の範囲内にある。異なった実装のエレメントを組み合わせてここに具体的に記載していない実装を形成できる。
【符号の説明】
【0079】
薬物送達デバイス 5
ハウジング 10
カートリッジホルダ 14
カートリッジ 16
ニードルホルダ 20
遠位端 22
ピストン・ロッド 24
ピストン 26
近位端 28
投与ボタン 30
キャップ 40
嵌め合い保持部材 42
窓開口部 44
突起 50
くぼみ 52
長手方向軸線 54
投与量スケール 60
記号 62
副窓 70
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D