特許第5748695号(P5748695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748695目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748695
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20150625BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20150625BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301G
   B01J35/04 301F
   B01D53/36 CZAB
   B01D53/36 103C
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-75528(P2012-75528)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202546(P2013-202546A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健太郎
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−148127(JP,A)
【文献】 特開2004−124723(JP,A)
【文献】 特開昭62−294446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86,53/94
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側端面と排出側端面とを結ぶ方向に延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁および最外周に位置する外壁を有する筒状のハニカム構造部と、
複数の前記セルの端部を封止する複数の目封止部と、
複数の前記セルのうちの一部の前記セルを前記流入側端面と前記排出側端面との間で遮断する遮断部と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の中心部分に存在する前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第1セル構造部と、前記第1セル構造部の外周を取り囲む前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第2セル構造部とを有し、
前記第1セル構造部は、前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルと、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルとが、前記隔壁を隔てて交互に並ぶように構成され、
前記第2セル構造部は、全ての前記セルにおいて前記目封止部が配置されていないとともに、前記流入側端面と前記排出側端面との間の一部領域において、前記外壁および前記隔壁に、前記ハニカム構造部の側面の周方向全域にわたりつつ前記第2セル構造部の全ての前記セルの開口部分を有する溝部が設けられ、全ての前記開口部分を少なくとも塞ぐように前記遮断部が配置されて、前記第2セル構造部の全ての前記セルが前記流入側端面と前記排出側端面との間で前記遮断部により遮断されている目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
前記遮断部は、前記溝部が設けられている領域において、前記ハニカム構造部の中心軸側に向けて凹む凹部を有する請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項3】
流入側端面と排出側端面とを結ぶ方向に延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、
複数の前記セルの端部を封止する複数の目封止部と、
前記ハニカム構造部の外周を取り囲む外周構造部と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の中心部分に存在する前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第1セル構造部と、前記第1セル構造部の外周を取り囲む前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第2セル構造部とを有し、
前記第1セル構造部は、前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルと、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルとが、前記隔壁を隔てて交互に並ぶように構成され、
前記第2セル構造部は、全ての前記セルにおいて前記目封止部が配置されていないとともに、前記流入側端面と前記排出側端面との間の一部領域において、前記隔壁に前記ハニカム構造部の側面の周方向全域にわたりつつ前記第2セル構造部の全ての前記セルの開口部分を有する溝部が設けられ、全ての前記開口部分を少なくとも塞ぐように前記ハニカム構造部の外周形状に沿って前記外周構造部が配置されて、前記第2セル構造部の全ての前記セルが前記流入側端面と前記排出側端面との間で前記外周構造部により遮断されている目封止ハニカム構造体。
【請求項4】
前記外周構造部は、前記溝部が設けられている領域において、前記ハニカム構造部の中心軸側に向けて凹む凹部を有する請求項3に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項5】
前記第2セル構造部の幅は、前記ハニカム構造部の最外周にある前記セルから数えた前記セルの個数において1〜4個分である請求項1〜4のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体と、
前記目封止ハニカム構造体の前記隔壁に担持される触媒と、を備えるハニカム触媒体。
【請求項7】
前記第1セル構造部を構成する前記隔壁のうちで、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルに面する前記隔壁の表面に前記触媒が担持される請求項6に記載のハニカム触媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体に関する。更に詳しくは、流入側端面および排出側端面におけるクラックの発生を有効に防止することが可能な目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関、または各種燃焼装置から排出される排ガスには煤を主体とする粒子状物質が多量に含まれている。この粒子状物質がそのまま大気中に放出されると環境汚染を引き起こすため、内燃機関等からの排ガス流路には、粒子状物質を捕集するためのフィルタが搭載されることが一般的である。
【0003】
こうした排ガス浄化用のフィルタとしては、例えば、セルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、セルの一方の端部を封止する複数の目封止部と、を備えた目封止ハニカム構造体を挙げることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
この目封止ハニカム構造体においては、排ガスは、まず、流入側の端部が開口しているセル内に流入し、当該セルでは反対側の端部が目封止部により塞がれているので、次に、細孔を通じて隔壁を通り抜けて、隣のセル内へと流れてゆき、そして最終的には、排出側の端部が開口しているセルから外部に排出される。このように、目封止ハニカム構造体では、目封止部を設けることにより、排ガスが隔壁を通り抜けていくように強制される。そして、排ガスが隔壁を通り抜ける際に、排ガスに含まれる粒子状物質を隔壁によって捕集するという仕組みになっている。そのため、目封止ハニカム構造体によれば、排ガスを粒子状物質を低減したクリーンな状態にすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−195805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の目封止ハニカム構造体では、目封止部により外周部の剛性が高められているので、熱応力が緩和されにくく、その結果、熱応力が生じてしまうと、クラックの発生へと導かれ易い。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、排ガス浄化時において、クラックの発生が抑制されるフィルタに関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す、目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体である。
【0009】
[1] 流入側端面と排出側端面とを結ぶ方向に延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁および最外周に位置する外壁を有する筒状のハニカム構造部と、複数の前記セルの端部を封止する複数の目封止部と、複数の前記セルのうちの一部の前記セルを前記流入側端面と前記排出側端面との間で遮断する遮断部と、を備え、前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の中心部分に存在する前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第1セル構造部と、前記第1セル構造部の外周を取り囲む前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第2セル構造部とを有し、前記第1セル構造部は、前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルと、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルとが、前記隔壁を隔てて交互に並ぶように構成され、前記第2セル構造部は、全ての前記セルにおいて前記目封止部が配置されていないとともに、前記流入側端面と前記排出側端面との間の一部領域において、前記外壁および前記隔壁に、前記ハニカム構造部の側面の周方向全域にわたりつつ前記第2セル構造部の全ての前記セルの開口部分を有する溝部が設けられ、全ての前記開口部分を少なくとも塞ぐように前記遮断部が配置されて、前記第2セル構造部の全ての前記セルが前記流入側端面と前記排出側端面との間で前記遮断部により遮断されている目封止ハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記遮断部は、前記溝部が設けられている領域において、前記ハニカム構造部の中心軸側に向けて凹む凹部を有する前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0011】
[3] 流入側端面と排出側端面とを結ぶ方向に延びて流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、複数の前記セルの端部を封止する複数の目封止部と、前記ハニカム構造部の外周を取り囲む外周構造部と、を備え、前記ハニカム構造部は、前記ハニカム構造部の中心部分に存在する前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第1セル構造部と、前記第1セル構造部の外周を取り囲む前記セルの集まりと該セルの集まりを区画形成する前記隔壁とから構成される第2セル構造部とを有し、前記第1セル構造部は、前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルと、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルとが、前記隔壁を隔てて交互に並ぶように構成され、前記第2セル構造部は、全ての前記セルにおいて前記目封止部が配置されていないとともに、前記流入側端面と前記排出側端面との間の一部領域において、前記隔壁に前記ハニカム構造部の側面の周方向全域にわたりつつ前記第2セル構造部の全ての前記セルの開口部分を有する溝部が設けられ、全ての前記開口部分を少なくとも塞ぐように前記ハニカム構造部の外周形状に沿って前記外周構造部が配置されて、前記第2セル構造部の全ての前記セルが前記流入側端面と前記排出側端面との間で前記外周構造部により遮断されている目封止ハニカム構造体。
【0012】
[4] 前記外周構造部は、前記溝部が設けられている領域において、前記ハニカム構造部の中心軸側に向けて凹む凹部を有する前記[3]に記載の目封止ハニカム構造体。
【0013】
[5] 前記第2セル構造部の幅は、前記ハニカム構造部の最外周にある前記セルから数えた前記セルの個数において1〜4個分である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
【0014】
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体と、前記目封止ハニカム構造体の前記隔壁に担持される触媒と、を備えるハニカム触媒体。
【0015】
[7] 前記第1セル構造部を構成する前記隔壁のうちで、前記排出側端面の側の端部に前記目封止部が配置され且つ前記流入側端面の側の端部に前記目封止部が配置されていない前記セルに面する前記隔壁の表面に前記触媒が担持される前記[6]に記載のハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の目封止ハニカム構造体は、流入側端面および排出側端面の外周部分に、目封止部が配置されていないため、目封止ハニカム構造体に生じる熱応力を、外周部分にて開放することができる。これにより、従来、クラックが発生し易いとされていた、目封止ハニカム構造体の外周部分におけるクラックの発生を良好に抑制することができる。さらに、本発明の目封止ハニカム構造体は、従来技術ではクラックが特に発生し易いとされていた、流入側端面の外周部分および排出側端面の外周部分においても、クラックの発生を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の目封止ハニカム構造体について流入側端面を上側にして示した斜視図である。
図2図1中のA−A’断面図である。
図3図1中のB−B’断面図である。
図4】ハニカム構造部の流入側端面の一部を拡大した平面図である。
図5】本発明の他の実施形態の目封止ハニカム構造体について流入側端面を上側にして示した斜視図である。
図6図5中のC−C’断面図である。
図7図5中のD−D’断面図である。
図8図5〜7に示された目封止ハニカム構造体を装着するガス浄化装置の斜視図である。
図9図8中のE−E’断面図である。
図10図8中のF−F’断面図である。
図11】本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
(1)目封止ハニカム構造体:
図1は、本発明の一実施形態の目封止ハニカム構造体100aについて流入側端面70を上側にして示した斜視図である。図2は、図1中のA−A’断面図である。また、図3は、図1中のB−B’断面図である。図示されているように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aは、流入側端面70と排出側端面90とを結ぶ方向Xに延びて流体(ガスG)の流路となる複数のセル10を区画形成する多孔質の隔壁30および最外周に位置する外壁40を有する筒状のハニカム構造部500と、複数のセル10の端部を封止する複数の目封止部50と、複数のセル10のうちの一部のセル10を流入側端面70と排出側端面90との間で遮断する遮断部170と、を備える。
【0020】
図1に示されているように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aのハニカム構造部500は、第1セル構造部200と、第2セル構造部300とを有する。第1セル構造部200は、ハニカム構造部500の中心部分に存在するセル10の集まりと該セル10の集まりを区画形成する隔壁30とから構成されている。また、第2セル構造部300は、第1セル構造部200の外周を取り囲むセル10の集まりと該セル10の集まりを区画形成する隔壁30とから構成されている。本明細書にいうハニカム構造部500の中心部分とは、ハニカム構造部500のセル10の延びる方向Xに垂直な断面における中心を基点とし、この中心から当該断面の径方向の所定の範囲を含む領域によって形成される部分のことである。このような領域に存在するセル10の集まりおよび隔壁30によって、第1セル構造部200が構成されている。
【0021】
さらに、図3に示されているように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、第1セル構造部200は、流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置され且つ排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置されていないセル10と、排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置され且つ流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置されていないセル10とが、隔壁30を隔てて交互に並ぶように構成されている。
【0022】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、第2セル構造部300は、全てのセル10において目封止部50が配置されていない。ただし、第2セル構造部300の全てのセル10については、流入側端面70と排出側端面90との間で遮断する遮断部170によって、流路が遮断されている。
【0023】
なお、本明細書では、これ以降において、説明の便宜上、「排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置され且つ流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置されていないセル10」のことを「流入側開口セル130」と称することもある。また、「流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置され且つ排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置されていないセル10」のことを「排出側開口セル135」と称することもある。
【0024】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100aにおいては、図1および図3に示されているように、目封止ハニカム構造体100aの流入側端面70の外周部分および排出側端面90の外周部分に、目封止部50が配置されていないため、熱応力を流入側端面70の外周部分および排出側端面90の外周部分にて開放することができる。これにより、従来の目封止ハニカム構造体ではクラックが発生し易いとされていた、外周部分におけるクラックの発生を良好に抑制することができる。
【0025】
また、一般に、目封止ハニカム構造体では、排ガス浄化用のフィルタとして用いる場合、目封止ハニカム構造体内に堆積したススを燃焼除去する際に、目封止ハニカム構造体内のススの堆積量が少ない時点でも、排出側端面の外周部分にクラックが発生する場合があるという問題があった。本実施形態の目封止ハニカム構造体100aにおいては、熱応力を排出側端面90の外周部分にて開放できるため、従来の目封止ハニカム構造体と比べて、ススの堆積量が多い場合でも、排出側端面の外周部分におけるクラックの発生を抑制することが可能である。
【0026】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、目封止ハニカム構造体100aの中心軸から半径方向外側に作用する応力が生じた場合、または中心軸に向けて半径方向内側に作用する応力が生じた場合、外周部分に存在する第2セル構造部300おいて全てのセル10が流入側端面70および排出側端面90で開口しているので、第2セル構造部300は流入側端面70の近傍および排出側端面90の近傍を主としてセル10の断面形状を変形させるように歪むことが可能である。すなわち、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、外周部分の構造がセル10の断面形状を変形させるように歪むことにより、応力を分散させることが可能である。
【0027】
さらに、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、図2および図3に示されているように、第2セル構造部300は、流入側端面70と排出側端面90との間の一部領域において、外壁40および隔壁30に、ハニカム構造部500の側面の周方向全域にわたりつつ第2セル構造部300の全てのセル10の開口部分15を有する溝部80が設けられ、これらの全ての開口部分15を少なくとも塞ぐように遮断部170が配置されている。これにより、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、第2セル構造部300の全てのセル10が流入側端面70と排出側端面90との間で遮断部170により遮断されている。
【0028】
特に、図2に示されているように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、ハニカム構造部500の外周部分のセル10(第2セル構造部300のセル10)が、ハニカム構造部500の周方向全域にわたって遮断部170により塞がれているので、目封止ハニカム構造体100aを側方から押しつぶす力に対しての構造的強度が高められている。
【0029】
なお、本明細書では、これ以降において、説明の便宜上、「流入側端面70と排出側端面90との間の一部領域で遮断部170などによって遮断させているセル10」のことを「中間部遮断セル150」と称することもある。
【0030】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、隔壁30が多孔質のもの、すなわち、無数の細孔を有したものである。本実施形態の目封止ハニカム構造体100aにおいては、ガスGが以下に述べる流れを経ていく過程で、ガスG中の粒子状物質が多孔質の隔壁30により捕捉されていくことになる。
【0031】
図3を参照し述べると、まず、ガスGは、流入側開口セル130内および中間部遮断セル150内に流入する。続いて、流入側開口セル130内に流入したガスGについては、流入側開口セル130の排出側端面90の側の端部が目封止部50によって塞がれているため、細孔を通じて隔壁30を通り抜け、隣のセル10(即ち、排出側開口セル135)へと流れてゆく。
【0032】
また、中間部遮断セル150内に流入したガスGについては、中間部遮断セル150が遮断部170により中間部分で塞がれているため、細孔を通じて隔壁30を通り抜け、隣のセル10へと流れてゆく。このとき、流入した隣のセル10も中間部遮断セル150の場合には、この中間部遮断セル150の近くに存在する排出側開口セル135に向けて、さらに、隣接する別のセル10へと、順次隔壁30を通り抜けながら流れてゆく。
【0033】
こうして、ガスGが隔壁30を通り抜けていく際には、ガスGに含まれる粒子状物質が隔壁30によって捕捉されていく。そして最終的に、ガスGは、粒子状物質を低減したクリーンな状態にて、排出側開口セル135の排出側端面90の側の端部から外部に排出される。すなわち、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aは、ガス浄化用のフィルタとして機能することが可能である。
【0034】
さらに、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aのように、遮断部170は、溝部80が設けられている領域において、ハニカム構造部500の中心軸側に向けて凹む凹部190を有することが好ましい。こうした凹部190は、セル10の延びる方向Xに沿って作用する応力を開放する役割を果たすことが可能である。少し詳しく述べると、凹部190は、流入側端面70の側の表面(排出側端面90の側に面している表面)と排出側端面90の側の表面(流入側端面70の側に面している表面)との間に存在する隙間の幅Wを拡げたり、狭めたりするように歪ませることにより、セル10の延びる方向Xに沿って作用する応力を開放することが可能である。
【0035】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aを他の部材と合わせて固定する場合に、目封止ハニカム構造体100aの凹部190に相手方の部材を嵌め合わせることにより、目封止ハニカム構造体100aを所望の位置に容易に固定することが可能になる。このように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100aでは、遮断部170に凹部190が設けられている場合、目封止ハニカム構造体100aの位置決めを容易にし、また、目封止ハニカム構造体100aの位置ずれを抑制することが可能になる。
【0036】
図5は、本発明の他の実施形態の目封止ハニカム構造体100bについて流入側端面70を上側にして示した斜視図である。図5では、流入側端面70近傍の外周構造部400の一部分を切除し、外周構造部400の内側にあるハニカム構造部500の一部を露出した状態として示している。図6は、図5中のC−C’断面図である。また、図7は、図5中のD−D’断面図である。本実施形態の目封止ハニカム構造体100bは、流入側端面70と排出側端面90とを結ぶ方向Xに延びて流体(ガスG)の流路となる複数のセル10を区画形成する多孔質の隔壁30を有する筒状のハニカム構造部500と、複数のセル10の端部を封止する複数の目封止部50と、ハニカム構造部500の外周を取り囲む外周構造部400と、を備える。
【0037】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bにおいても、上述の目封止ハニカム構造体100aと同様に、第1セル構造部200と第2セル構造部300とを有する。さらに、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bの第1セル構造部200でも、流入側開口セル130と排出側開口セル135とが隔壁30を隔てて交互に並ぶように構成されている。
【0038】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bの第2セル構造部300でも、全てのセル10において目封止部50が配置されていない。なお、第2セル構造部300の全てのセル10については、流入側端面70と排出側端面90との間で遮断する外周構造部400によって、流路が遮断されている。
【0039】
さらに、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、第2セル構造部300は、流入側端面70と排出側端面90との間の一部領域において、隔壁30にハニカム構造部500の側面の周方向全域にわたりつつ第2セル構造部300の全てのセル10の開口部分15を有する溝部80が設けられている。そして、これらの全ての開口部分15を少なくとも塞ぐようにハニカム構造部500の外周形状に沿って外周構造部400が配置されている。これにより、第2セル構造部300の全てのセル10が流入側端面70と排出側端面90との間で外周構造部400により遮断されている。こうして、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、上述の目封止ハニカム構造体100aの遮断部170に代わり、外周構造部400によって、第2セル構造部300の全てのセル10が中間部遮断セル150とされている。
【0040】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、流入側端面70および排出側端面90における、目封止部50の配置パターンが上述の目封止ハニカム構造体100aと同じである。また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、第2セル構造部300においてセル10が流入側端面70と排出側端面90との間で外周構造部400に遮断されている形態も上述の目封止ハニカム構造体100aと同様である。よって、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bにおいても、上述の目封止ハニカム構造体100aと同様に、セル10の形状を変形させるように外周部分の構造を歪ませて、応力を分散する作用を奏することが可能である。
【0041】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、ハニカム構造部500が外周構造部400に取り囲まれているので、ハニカム構造部500が薄い隔壁30を有する場合であっても、外力によるハニカム構造部500の破損を良好に抑制することが可能になる。特に、図6および図7に示されているように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bでは、ハニカム構造部500の外周部分のセル10(第2セル構造部300のセル10)が、ハニカム構造部500の周方向全域にわたって外周構造部400により塞がれているので、目封止ハニカム構造体100bを側方から押しつぶす力に対しての構造的強度がより一層確実に高められている。
【0042】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bにおいては、目封止部50、および外周構造部400[中でも、セル10(中間部遮断セル150)の開口部分15を塞いでいる部分]が所定の場所でガスGの流れを遮ることにより、上述の目封止ハニカム構造体100aと同様に、ガスGは、隔壁30を通り抜けた後、目封止ハニカム構造体100bの外部に排出される。このとき、勿論、ガスGに含まれる粒子状物質が隔壁30によって捕捉される。したがって、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bは、ガスG中に含まれる粒子状物質を低減するためのガス浄化用フィルタとして機能することが可能である。
【0043】
さらに、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bのように、外周構造部400は、溝部80が設けられている領域において、ハニカム構造部500の中心軸側に向けて凹む凹部を有することが好ましい。こうした凹部は、上述した図3に示されている遮断部170の凹部と同様に、セルの延びる方向Xに沿って作用する応力を開放する役割を果たすことが可能になる。また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100bが凹部を有する場合、例えば、目封止ハニカム構造体100bを保持剤(例えば、クッション材450)で包んで缶体内に固定するのであれば、目封止ハニカム構造体100bの凹部に保持材の所定の箇所を嵌め合わせることにより、目封止ハニカム構造体100bを所望の位置に容易に固定することが可能になり、また、目封止ハニカム構造体100bの使用時における目封止ハニカム構造体100bの位置ずれを抑制することが可能になる(詳しくは後述)。
【0044】
図8は、図5図7に示された目封止ハニカム構造体100bを装着するガス浄化装置700の斜視図である。図8では、缶体420の入口430周辺を半分切除して、クッション材450を露出し、さらに、この露出されたクッション材450も一部を切除して、クッション材の内側にある外周構造部400を露出し、その内側にあるハニカム構造部500の一部をも露出した状態として示している。図9は、図8中のE−E’断面図である。また、図10は、図8中のF−F’断面図である。
【0045】
図8〜10に示されているように、本実施形態のガス浄化装置700では、目封止ハニカム構造体100bが、外周構造部400の外周面410をクッション材450で包んだ状態で缶体420の内部に収められている。缶体420は、筒形状で、一方の端を入口430、その反対側の端を出口435として開口している。そして、本実施形態のガス浄化装置700では、目封止ハニカム構造体100bが、流入側端面70を缶体420の入口430に向け且つ排出側端面90を出口435に向けている状態にて、缶体420の内部に収められている。よって、本実施形態のガス浄化装置700においては、ガスGは、缶体420の入口430、流入側端面70、排出側端面90、そして、缶体の出口435を順に通過していく。そして、本実施形態のガス浄化装置700でも、ガスGが流入側端面70から排出側端面90までを流れてゆく過程で、ガスGに含まれる粒子状物質が隔壁30により補足されていく。
【0046】
本実施形態のガス浄化装置700では、目封止ハニカム構造体100bをクッション材450で覆っているので、振動や衝撃を受けた場合であっても、目封止ハニカム構造体100bに破損が生じにくくなる。また、本実施形態のガス浄化装置700では、缶体420の入口430および出口435をエンジン等の排気系に接続することにより、簡便に取り付けをすることが可能になる。
【0047】
また、図10に示されているように、本実施形態のガス浄化装置700では、目封止ハニカム構造体100bが、外周構造部400の凹部190にクッション材450が挿し込まれた状態で固定されている。よって、本実施形態のガス浄化装置700では、振動や衝撃を受けた場合であっても、目封止ハニカム構造体100bの位置ずれが生じにくい。
【0048】
なお、ここでは図示していないが、クッション材450の表面の所定の箇所に凸部を設けておき、この凸部を、目封止ハニカム構造体100bの凹部190に嵌め込むかたちにしてもよい。このようにすると、目封止ハニカム構造体100bの位置決めを容易に行うことができる。
【0049】
本実施形態のガス浄化装置700で用い得るクッション材450としては、例えば、セラミックス繊維製マット(例えば、特開平07−77036号公報)や、耐熱性を備えた樹脂製のクッション材などを挙げることができる。
【0050】
次に、上述の目封止ハニカム構造体100a,100bについて、さらに説明を行う。以降では、説明の便宜上、上述の目封止ハニカム構造体100a,100bのことを、本実施形態の目封止ハニカム構造体100と総称することもある。
【0051】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、熱応力に起因したクラックの発生の抑制という観点から、第2セル構造部300の幅は、ハニカム構造部500の最外周にあるセル10から数えたセルの個数において1〜4個分であることが好ましく、さらに、1〜3個分であることがより好ましい。
【0052】
図4は、ハニカム構造部500の流入側端面70の一部を拡大して示した平面図である。図4を参照し述べると、ハニカム構造部500の最外周にある任意のセル10a[丸印(●)で示す]を1個目とした場合に、このセル10aと隔壁30を隔てて隣接するセル10b[三角印で示す]を、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」において2個目のセルとする。これらの2個目のセル10bと隔壁30を隔てて隣接するセル10c[四角印で示す]を、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」において3個目のセルとする。さらに、4個目以降のセル10についても同様に、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」においてn個目のセル10に対し隔壁30を隔てて隣接するセル10を、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」においてn+1個目のセルとして規定していく[図4中では、4個目のセル10dを「*」を付して示し、5個目のセル10eを「+」を付して示す]。
【0053】
このとき、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」において1個目〜n個目までの全てのセル10においては、排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置され且つ流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置されておらず、これと同時に、「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」においてn+1個目のセル10のうちで1個でも、流入側端面70の側の端部に目封止部50が配置され且つ排出側端面90の側の端部に目封止部50が配置されていないものが存在している場合、第2セル構造部300の幅を「最外周にあるセル10から数えたセルの個数」においてn個分と規定する。
【0054】
特に、この第2セル構造部300の幅がハニカム構造部500の最外周にあるセル10から数えたセルの個数において1〜4個分である場合には、ハニカム構造部500のセル10の延びる方向Xに垂直な断面における第2セル構造部300の幅が、前記断面の中心から外周縁までの長さに対して、1〜40%であることが好ましく、さらに、1〜10%であることがより好ましい。すなわち、ハニカム構造部500のセルの延びる方向Xに垂直な断面が円の場合には、第2セル構造部300の幅が、上記円の半径の1〜40%であることが好ましく、さらに、1〜10%であることがより好ましい。
【0055】
セルの延びる方向Xにおける溝部80の幅については、この溝部80に配置された遮断部170(又は外周構造部400)によって、第2セル構造部300のセル10が遮断され得る長さであればよい。例えば、本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、セルの延びる方向Xにおける溝部80の幅は、セルの延びる方向Xにおけるハニカム構造部500の長さL(以下、簡略して「ハニカム構造部500の長さL」という)の0.05〜0.9倍であることが好ましく、さらに、ハニカム構造部500の長さLの0.1〜0.8倍であることがより好ましい。セルの延びる方向Xにおける溝部80の幅が、ハニカム構造部500の長さLの0.05倍未満であると、全長方向[ハニカム構造部500の長さLの方向(セルの延びる方向X)]に沿って発生した応力を有効に緩和できなくなる。一方、セルの延びる方向Xにおける溝部80の幅が、ハニカム構造部500の長さLの0.9倍を超えると、流入側端面70および排出側端面90に発生した応力を有効に緩和できなくなる。
【0056】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、セルの延びる方向Xにおける溝部80の位置が、流入側端面70からはハニカム構造部500の長さLの0.05倍よりも離れ且つ排出側端面90からはハニカム構造部500の長さLの0.05倍よりも離れていることが好ましく、さらに、流入側端面70からはハニカム構造部500の長さLの0.1倍よりも離れ且つ排出側端面90からはハニカム構造部500の長さLの0.1倍よりも離れていることがより好ましい。本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、セルの延びる方向Xにおける溝部80の位置が、流入側端面70からはハニカム構造部500の長さLの0.05倍以下である場合には、流入側端面70に発生した応力を有効に緩和できなくなる。セルの延びる方向Xにおける溝部80の位置が、排出側端面90からはハニカム構造部500の長さLの0.05倍以下である場合には、排出側端面90に発生した応力を有効に緩和できなくなる。
【0057】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100において、ハニカム構造部500の形状は、特に限定されないが、円筒形状、断面形状を楕円形とされた筒形状、あるいは、流入側端面70および排出側端面90を「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形とされた角柱状等が好ましい。
【0058】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、セル10の形状(セル10の延びる方向Xに垂直な断面における開口形状)は、特に制限はない。例えば、セル10の形状は、三角形、四角形、六角形、八角形等の多角形形状が好ましい。更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、全てのセル10の形状が同一形状に揃っていても、あるいは、一部のセル10の形状が残余のセル10の形状と異なっていたり、全てのセル10の形状が互いに異なっていたりしていてもよい。
【0059】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、隔壁30の厚さは、101.6〜406.4μmであることが好ましく、127.0〜355.6μmであることが更に好ましく、152.4〜304.8μmであることが特に好ましい。隔壁30が101.6μmより薄いと、目封止ハニカム構造体100の強度が低くなることがある。隔壁30が355.6μmより厚いと、目封止ハニカム構造体100の圧力損失が高くなることがある。
【0060】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、隔壁30の平均細孔径は、5〜40μmであることが好ましく、10〜30μmであることが更に好ましい。隔壁30の平均細孔径が5μmより小さいと、目封止ハニカム構造体100の圧力損失が高くなることがある。隔壁30の平均細孔径が40μmより大きいと、目封止ハニカム構造体100の強度が低くなることがある。隔壁30の平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0061】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、ハニカム構造部500のセル密度は、特に制限されないが、15〜62個/cmであることが好ましく、31〜47個/cmであることが更に好ましい。ハニカム構造部500のセル密度が、15個/cmより小さいと、目封止ハニカム構造体100の強度が低くなることがある。ハニカム構造部500のセル密度が、62個/cmより大きいと、セル10の断面積(セル10の延びる方向Xに直交する断面の面積)が小さくなるため、圧力損失が高くなる。
【0062】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、隔壁30や外壁40の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れるという観点から、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0063】
遮断部170の材質としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れるという観点から、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0064】
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、外周構造部400を備える場合、外周構造部400の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れるという観点から、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0065】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100では、目封止部50の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れるという理由から、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。なお、本実施形態の目封止ハニカム構造体100では隔壁30と目封止部50との間で熱膨張率を揃えることにより熱応力を抑制するという観点から、目封止部50の材料は隔壁30の材料と同じであることが好ましい。
【0066】
(2)目封止ハニカム構造体の製造方法:
本発明の目封止ハニカム構造体の製造方法の一実施形態について説明する。まず、ハニカム構造体を作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、ハニカム成形体を作製する(成形工程)。
【0067】
次に、ハニカム成形体の流入側端面および排出側端面における所定のセルの開口部に目封止を施す(目封止工程)。
【0068】
また、目封止工程前または目封止工程後に、ハニカム成形体に溝部を形成する(溝部形成工程)。さらに、溝部におけるセルの開口部分を遮断部または外周構造部によって塞ぐ(溝部閉塞工程)。
【0069】
例えば、以下に述べる各工程を行うことにより、上述した目封止ハニカム構造体を得ることができる。
【0070】
(2−1)成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカム成形体を形成する。
【0071】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましく、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが更に好ましく、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された1種であることが特に好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0072】
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0073】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。ここで用いる口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0074】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状(円柱状)、中心軸に直交する断面が楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の筒形状(柱状)等を挙げることができる。作製しようとするハニカム構造体が、複数のハニカムセグメントが接合されて形成されたものである場合には、ハニカム成形体の形状は、中心軸に直交する断面が三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の筒形状(柱状)であることが好ましい。
【0075】
外壁を有するハニカム構造部の場合ついては、ハニカム形状の成形体を作製する際に、外壁40も含めて押出成形することにより隔壁と外壁とを一体的に形成しても、あるいは、ハニカム形状の成形体を作製した後に、この成形体の外周にセラミックス材料を塗工することにより事後的に外壁を形成してもよい。
【0076】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0077】
(2−2)溝部形成工程:
続いて、ハニカム成形体における両端面の間の一部領域において、所望の深さまで隔壁を研削し、ハニカム成形体の側面の周方向全域にわたる溝部を形成する。なお、外壁を有するハニカム成形体の場合には、外壁も研削する。こうして隔壁を研削された部分が、最終的に第2セル構造部となる。
【0078】
なお、外周構造部を有するタイプの場合には、ハニカム形状の成形体を作製した後、成形体の外周を研削することにより、成形体のセルの延びる方向に垂直な断面の形状を所望の形状にする(なお、研削された成形体の外周では、図5に示されているように、隔壁がフィン状に突き出し、むき出しになる。)。このとき、成形体の外周の一部領域を他の領域よりも深く研削し、溝部を形成する。このように、外周構造部を有するタイプを作製する場合には、同じ口金から成形体を作製する場合であっても、成形体の外周を研削することにより、成形体の断面形状をL字形状、星形、楕円や、あるいは、ゆがみのない真円や正方形など、多種多様な形状にすることが可能である。
【0079】
(2−3)溝部閉塞工程:
遮断部をセラミックスで作り上げる場合には、ハニカム成形体の溝部にセラミックス材料を塗工することにより、溝部におけるセルの開口部分を塞ぐ。
【0080】
また、外周構造部をセラミックで作り上げる場合には、ハニカム成形体の溝部にセラミックス材料を塗工することにより、溝部におけるセルの開口部分を塞ぐとともに、ハニカム成形体の外周全体にもセラミックス材料を塗工する。
【0081】
(2−4)ハニカム構造体作製工程:
次に、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得ることが好ましい。なお、ハニカム成形体の焼成は、ハニカム成形体に目封止部を配設した後に行ってもよい[この場合には、「(2−4)ハニカム構造体作製工程」の前に、後述の「(2−5)目封止工程」(但し、目封止材料充填後の焼成は除く)を挿入することになる]。
【0082】
また、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前に、ハニカム成形体を予め仮焼しておくことが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法は、特に制限はなく、成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0083】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、成形原料の種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
【0084】
(2−5)目封止工程:
次に、未目封止のハニカム構造体に対して、流入側端面および排出側端面における所定のセルの開口部に目封止材料を充填することにより、所定のセルの開口部に目封止部を形成する。
【0085】
未目封止のハニカム構造体に目封止材料を充填する際には、従来の方法にて実施すればよい。例えば、次の方法により、未目封止のハニカム構造体に目封止材料を充填することが可能である。
【0086】
まず、未目封止のハニカム構造体の流入側端面および排出側端面にシートを貼り付ける。次いで、貼り付けたシート上で、目封止部を設ける予定のセルの開口部が存在する位置に孔を開ける(以上、マスキング工程)。本発明の目封止ハニカム構造体を製造する場合には、以下のような方法で、流入側端面および排出側端面に貼り付けたシートの、セルの開口部が存在する位置に孔を開ける。まず、第1セル構造部が形成される中心部分については、流入側端面および排出側端面に貼り付けたシートに対して、セルの開口部を1個おきに(1つ飛ばしに)孔を開けて、流入側開口セルと排出側開口セルとが交互に配置されるようにする。また、第2セル構造部が形成される外周部分については、シートに孔を開けないようにする。即ち、外周部分のセル(第2セル構造部の全てのセル)については、後述する目封止材料が、流入側端面および排出側端面から流入して来ないようにする。
【0087】
続いて、孔を開けたシートを張り付けた状態のまま、ハニカム構造体の端面を、容器内入れておいた目封止材料に押し付ける。こうすることにより、シートの孔からセル内に目封止材料を圧入する(以上、圧入工程)。この圧入工程では、シートの孔の開いた部分に重なったセルの開口部のみに目封止材料が流入し、シートの孔の開いた部分に重なっていないセルの開口部には封止材料が流入しない。こうして、所定のセルの開口部に、目封止材料を所望の深さまで充填することが可能である。
【0088】
次に、セルの開口部内に充填した目封止材料を乾燥させて目封止部を形成することにより、目封止ハニカム構造体を得る。なお、ハニカム構造体の両端面に目封止材料を充填した後に、目封止材料を乾燥させてもよいし、ハニカム構造体の一方の端面に充填して目封止材料を乾燥させた後に、残された他方の端面に目封止材料を充填して目封止材料を乾燥させてもよい。更に、目封止材料を、より確実に固定化する目的で、焼成してもよい。また、乾燥前のハニカム成形体または乾燥後のハニカム成形体に目封止材料を充填し、その後、ハニカム成形体と共に目封止材料を焼成してもよい。
【0089】
(3)ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体は、上述の目封止ハニカム構造体(本発明の目封止ハニカム構造体)を触媒担体として用いたものである。本発明のハニカム触媒体は、上述の本発明の目封止ハニカム構造体と、目封止ハニカム構造体の隔壁に担持された触媒と、を備える。
【0090】
図11は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示した断面図である。本実施形態のハニカム触媒体650では、一部の隔壁30の表面に触媒を担持させている。これにより、当該一部の隔壁30の表面上には、触媒層600が形成されている。
【0091】
本実施形態のハニカム触媒体650では、隔壁30の表面上に触媒層600が形成されている場合でも、当該隔壁30の細孔には、一方の表面から反対側の表面まで貫通したものが存在している。こうした細孔内をガスGが通り抜けていく際、隔壁30の表面上をコートする触媒層600によって、ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質が浄化されていく。
【0092】
本実施形態のハニカム触媒体650では、第1セル構造部200を構成するセル10を区画形成する隔壁30のうちで、流入側開口セル130に面する隔壁30の表面に限定して触媒を担持させている。
【0093】
このように、本実施形態のハニカム触媒体650では、全ての隔壁30にではなく、一部の流入側開口セル130に面した隔壁30の表面に限定して触媒を担持させることにより、1体のハニカム触媒体650あたりの触媒の担持量を抑え、一般に高価とされる触媒のコストを抑制することが可能である。
【0094】
本実施形態のハニカム触媒体650のように、第1セル構造部200の流入側開口セル130に面する隔壁30の表面に限定して触媒を担持する場合、ハニカム構造部500における第2セル構造部300の幅が小さいと、第1セル構造部200における流入側開口セル130の数が多くなるので、触媒によるガス浄化作用が高まる。その一方で、ハニカム構造部500における第2セル構造部300の幅が大きいと、熱応力に起因したクラックの発生を抑制する作用が高まる。
【0095】
よって、本実施形態のハニカム触媒体650では、第1セル構造部200を構成するセル10を区画形成する隔壁30のうちで、流入側開口セル130に面する隔壁30の表面に少なくとも触媒を担持させておけば、触媒による浄化作用を十分に発揮可能な程度で、第2セル構造部300の幅を定めておくことが望まれる。
【0096】
特に、本実施形態のハニカム触媒体650では、触媒のコストを抑えながら触媒による浄化作用を十分に保ち、かつ、熱応力に起因したクラックの発生を抑制するという観点から、第2セル構造部300の幅が最外周にあるセル10から数えたセルの個数において1〜4個分、かつ、ハニカム構造部500のセル10の延びる方向Xに垂直な断面における第2セル構造部300の幅が前記断面の中心から外周縁までの長さに対して1〜40%であり、さらに、第1セル構造部200の流入側開口セル130に面する隔壁30の表面に限定して触媒を担持させることが好ましい。
【0097】
特に、本実施形態のハニカム触媒体650は、排ガスの浄化に用いることが好適である。本明細書にいう排ガスとは、自動車用、建設機械用、および産業用定置エンジン、ならびに燃焼機器等から排出される排ガスのことである。こうした種々のエンジンや燃焼機器からの排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質が多く含まれていることがある。本実施形態のハニカム触媒体650によれば、こうした種々のエンジンや燃焼機器の排ガスに含まれている有害物質を効率良く浄化することが可能である。
【0098】
本実施形態のハニカム触媒体650では、上述した(本発明の)目封止ハニカム構造体100を用いたものであるので、高温のガスGを流した場合に、ハニカム触媒体650の中心部分と外周部分との温度差が拡がりにくくなり、ひいては、熱応力に起因したクラックの発生が抑制される。そのため、本実施形態のハニカム触媒体650では、より高温の排ガスに曝され易い場所、具体的には、エンジンや燃焼機器の近くといった、従来のハニカム触媒体では設置困難であった場所にも設置することが可能になる。その結果、本実施形態のハニカム触媒体650では、自動車や建設機械用などの小型化にも十分に対応することが可能になる。
【0099】
本発明のハニカム触媒体では、目的に応じて、触媒の種類を適宜選択することができる。例えば、三元触媒、酸化触媒、NO選択還元触媒、NO吸蔵還元触媒などを選択することができる。触媒の単位体積当りの担持量は、5〜300g/リットルであることが好ましく、10〜200g/リットルであることが更に好ましい。
【0100】
三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。
【0101】
酸化触媒としては、貴金属を含有するものを挙げることができる。具体的には、白金、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。
【0102】
NO選択還元触媒としては、金属置換ゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、およびアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。
【0103】
NO吸蔵還元触媒としては、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、カルシウムなどを挙げることができる。
【0104】
(4)ハニカム触媒体の製造方法:
本発明のハニカム触媒体は、例えば、以下のように製造することができる。
【0105】
まず、触媒担体として目封止ハニカム構造体を作製する。この目封止ハニカム構造体は、上述した目封止ハニカム構造体の製造方法に従って作製することができる。
【0106】
次に、触媒スラリーを調製する。触媒スラリーに含有される触媒の平均粒子径は、通常、0.5〜5μmである。更に、触媒スラリーの粘度(25℃)は、1〜10mPa・sである。上記触媒の平均粒子径および粘度のいずれもが下限値以上である場合には、触媒が細孔内に過度に充填されてしまうことを抑制することが可能であり、また、得られたハニカム触媒体における圧力損失の増加を抑制することが可能である。触媒の平均粒子径および粘度のいずれもが上限値以下である場合には、触媒を確実に細孔内に充填させることが可能になる。そのため、排ガスの浄化性能の高いハニカム触媒体を得やすくなる。
【0107】
次に、触媒スラリーを目封止ハニカム構造体に担持させる。触媒スラリーを目封止ハニカム構造体に担持させる方法は、ディッピングや吸引などの従来公知の方法を採用することができる。なお、ディッピングや吸引などを行った後に、余剰の触媒スラリーを圧縮空気で吹き飛ばしてもよい。
【0108】
なお、第1セル構造部の流入側開口セルに面する隔壁の表面に限定して触媒を担持させる場合には、例えば、触媒スラリーを目封止ハニカム構造体に担持させる前に、流入側端面における第2セル構造部の端部を予めマスクしておくとよい。これにより、流入側端面においては、第1セル構造部の流入側開口セルのみが開口した状態となるので、流入側端面から触媒スラリーを注ぐと、第1セル構造部の流入側開口セル内に限定して触媒スラリーを流入させることが可能になる。
【0109】
次に、触媒スラリーを担持した目封止ハニカム構造体を乾燥、次いで熱処理する。このようにして、ハニカム触媒体を作製することができる。乾燥条件は、120〜180℃、10〜30分とすることができる。熱処理の条件は、550〜650℃、1〜5時間とすることができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0111】
[目封止ハニカム構造体の作製]
(実施例1〜4)
セラミック原料として、コージェライト化原料(アルミナ、タルク、カオリン)を用いた。アルミナ、タルク、カオリンの質量比は、焼成後、コージェライトが得られる質量比とした。セラミック原料に、バインダ(メチルセルロース)、水を混合してセラミック成形原料を得た。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0112】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。なお、ここで得られたハニカム成形体は、その全体形状を押出成形によって一体的に成形したもの(一体構造)である。このハニカム成形体は、当該ハニカム成形体を焼成し、未目封止のハニカム構造体とした場合において、隔壁厚さが0.356mmとなり、セル密度が47個/cmとなり、セルピッチが1.47mmとなり、全体形状が円筒形(流入側端面および排出側端面の直径が143.8mm、セルの延びる方向における長さが203.2mm)となるものであった。
【0113】
次に、ハニカム成形体に存在する複数のセルを、中心部分にある第1セル構造部と、第1セル構造部の外周を取り囲む第2セル構造部とに区分けした。実施例1〜4における第2セル構造部の幅については表1に示す。
【0114】
実施例1〜4については、ハニカム成形体の片側の端面(流入側端面となる端面)から、セルの延びる方向に沿って91.6mm離れた位置から同端面から111.6mm離れた位置までを帯状(幅:111.6−91.6mm=20.0mm)に、ハニカム成形体の周方向全域に渡って形成した。なお、溝部の深さは、第2セル構造部の幅と同じにした。すなわち、第2セル構造部のセルを区画形成している隔壁を削るようにした(但し、第1セル構造部と第2セル構造部とを隔てている隔壁は研削しない)。
【0115】
次いで、コージェライト化原料を含むペーストで溝部におけるセルの開口部分を塞いだ。さらに、ハニカム成形体の外周全体もこのペーストを塗工することにより、外周壁(外周構造部)を形成した。
【0116】
続いて、ハニカム成形体の端面(流入側端面および排出側端面)における所定のセル開口部に、マスクを施した。
【0117】
このとき、第1セル構造部では、流入側端面および排出側端面において、セルの開口部にマスクを施したセルとセルの開口部にマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。なお、第1セル構造部では、流入側端面におけるセルの開口部にマスクを施したセルについては、排出側端面のセルの開口部にマスクを施さず、また、流入側端面におけるセルの開口部にマスクを施さなかったセルについては、排出側端面のセルの開口部にマスクを施した。
【0118】
続いて、ハニカム成形体の流入側端面および排出側端面のそれぞれを、コージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬することにより、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。こうして、流入側端面および排出側端面の所定のセルの開口部に目封止部が配設された目封止ハニカム成形体を得た。
【0119】
この目封止ハニカム成形体を450℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に1425℃で7時間加熱して焼成を行うことにより、目封止ハニカム構造体を得た。目封止ハニカム構造体における目封止部の「目封止長さ(目封止の深さ)」は平均5mmであった。
【0120】
(比較例1)
ハニカム成形体における全てのセルについて上述の第1セル構造部と同様に、流入側端面および排出側端面において、セルの開口部にマスクを施したセルとセルの開口部にマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした以外は、実施例1と同様の方法によって目封止ハニカム構造体を得た。すなわち、比較例1の目封止ハニカム構造体では、第2セル構造部が存在しないので、「第2セル構造部の幅」が「なし」となる。
【0121】
実施例1〜4および比較例1の目封止ハニカム構造体について、排出側端面の有効断面積(cm)およびガス接触表面積(cm)を表1に示す。なお、ここにいう「排出側端面の有効断面積(cm)」とは、排出側端面全体における排出側端面の側で開口するセルの端部の開口面積の総和を意味する。また、ここにいう「ガス接触表面積」とは、第1セル構造部の流入側開口セルに面している隔壁の総表面積のことをいう。
【0122】
得られた目封止ハニカム構造体について、以下に示す方法で、「最大スス堆積量/端面クラック限界(g/リットル)」、「最大スス堆積量/リングクラック限界(g/リットル)」、「圧力損失(kPa)」の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0123】
[最大スス堆積量(g/リットル)]
まず、目封止ハニカム構造体の外周に、保持材としてセラミック製非熱膨張性マットを巻き付けた。この状態で、目封止ハニカム構造体をステンレス鋼製のキャニング用缶体に押し込み、固定した。その後、ディーゼル燃料の燃焼により発生させた、ススを含む燃焼ガスを、ハニカムフィルタの流入側端面より流入させ、排出側端面より流出させた。これにより、排ガス中のススを、目封止ハニカム構造体内に堆積させた。そして、目封止ハニカム構造体を、一旦、25℃まで冷却した後、目封止ハニカム構造体の流入用端面より、680℃の燃焼ガスを流入させて、ススを燃焼させた。この燃焼の際、目封止ハニカム構造体の圧力損失の低下を認めた時点で、燃焼ガスの流量を減少させることにより、隔壁上に堆積したススを急燃焼させた。燃焼の完了後、目封止ハニカム構造体における排出側端面(端面クラック)、外周壁(リングクラック)へのクラックの発生の有無を確認した。各クラックの発生が認められるまで、ススの堆積量を増加して、繰り返し上記試験を行った。各クラック発生時におけるススの堆積量(g/リットル)を、最大スス堆積量の値とした。なお、端面クラック発生時におけるススの堆積量(g/リットル)のことを「端面クラック限界」、リングクラック発生時におけるススの堆積量(g/リットル)のことを「リングクラック限界」ともいう。
【0124】
[圧力損失(kPa)]
まず、目封止ハニカム構造体に、3g/リットルのススを捕集させた。続いて、特開2005−172652号公報に記載の「フィルタの圧力損失測定装置」を用いて、目封止ハニカム構造体の圧力損失を測定した。測定条件としては、流体の流量を6Nm/分とし、実験時の流体温度を200℃とした。
【0125】
[ハニカム触媒体の作製]
実施例1〜4、比較例1の目封止ハニカム構造体の流入側端面に対して、全ての排出側開口セルの端部、および全ての中間部遮断セルの端部(第2セル構造部の全てのセルの端部)にマスクを施した。続いて、ここに、目封止ハニカム構造体の流入側端面から触媒スラリー(白金を含む触媒スラリー)を注いだ。これにより、第1セル構造部の流入側開口セル内のみに触媒スラリーを注ぎ入れた。次いで、セル内に注ぎ込んだ触媒スラリーを排出し、目封止ハニカム構造体に20g/リットル担持されるように調整し、乾燥、熱処理(600℃、2時間)することにより、ハニカム触媒体を得た。
【0126】
実施例1〜4および比較例1のハニカム触媒体について、触媒貴金属の担持量(mg)を表1に示す。
【0127】
[一酸化炭素浄化性能(CO浄化性能)(g/km)]
2.0リットル排気量の直噴式ガソリンエンジンを搭載した車両の排気系、床下位置にハニカム触媒体を設置し、シャシダイナモ上で車両を欧州NEDCモード運転を行い、一酸化炭素のエミッションを計測した。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
[考察]
実施例1〜4と比較例1とを比較した結果、実施例1〜4では、ガス接触面積および圧力損失を適正値に保ちつつ、最大スス堆積量を向上させることが可能であることが判明した。また、実施例1〜4と比較例1とを比較した結果、実施例1〜4では、触媒担持量を抑えつつも、十分なCO浄化性能を発揮可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、排ガス浄化に使用可能な目封止ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体として利用できる。
【符号の説明】
【0131】
10:セル、10a:(最外周から1個目の)セル、10b:(最外周から2個目の)セル、10c:(最外周から3個目の)セル、10d:(最外周から4個目の)セル、10e:(最外周から5個目の)セル、15:(セルの)開口部分、30:隔壁、40:外壁、50:目封止部、60:(ハニカム構造部の)外周面、70:流入側端面、80:溝部、90:排出側端面、100,100a,100b:目封止ハニカム構造体、130:流入側開口セル、135:排出側開口セル、150:中間部遮断セル、170:遮断部、180:(遮断部材の)外周面、190:凹部、200:第1セル構造部、300:第2セル構造部、400:外周構造部、410:(外周構造部の)外周面、420:缶体、425:(缶体の)外周面、430:(缶体の)入口、435:(缶体の)出口、450:クッション材、500:ハニカム構造部、600:触媒層、650:ハニカム触媒体、700:ガス浄化装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11