【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成23年12月2日に、ヒルソン・デック株式会社が販売を目的として、加藤祐嗣、秦浩、橋本拓郎が発明した蒸気滅菌器のパンフレットを、販売元であるオカモト株式会社(東京都文京区本郷3丁目27番12号)と、顧客であるエムシーサービス株式会社(長野県千曲市小島3171−5)に発送。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る蒸気滅菌器の全体構成を示す配管系統の構造図である。
【
図2】外観斜視図であり、(a)が全体の斜視図、(b)が蓋を開けた状態の部分的な斜視図である。
【
図3】インターロック機構を拡大して示す部分的な縦断正面図である。
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る蒸気滅菌器Aは、
図1〜
図5に示すように、その本体キャビネット10の内部に、収納された被滅菌物(図示しない)を高温蒸気下で滅菌するためのチャンバ1と、チャンバ1内へ注入する高温蒸気を発生させるためのボイラ2と、チャンバ1からの高温蒸気やボイラ2から湯水を排出するための排水タンク3と、地震感知装置4と、ボイラ2などを作動制御するための制御手段5と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、本体キャビネット10の前面には、コントロールパネル11が設けられている。
【0010】
チャンバ1は、例えば医療用器具などの被滅菌物を載置する滅菌室1aと、滅菌室1aの入口開口部を覆う蓋1bを有し、後述するボイラー室2Bから高温蒸気が滅菌室1aに供給される。
チャンバ1の具体例としては、
図1及び
図2(b)に示されるように、有底円筒状に形成され、その開口部に対して円板状の蓋1bを開閉自在に取り付けることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、チャンバ1の開口部と蓋1bを矩形やそれ以外の形状に形成することも可能である。
【0011】
チャンバ1には、滅菌室1aの内外に連通して滅菌室1a内に外部の乾燥空気を導入するための電磁弁などからなる外気導入用の開閉弁1cなどが設けられる。滅菌室1aには、絶対圧力センサS1、三方弁1dなどが設けられる。
さらに、チャンバ1には、排気用の開閉弁1eと、滅菌室1aの内外に連通して滅菌室1aの高温蒸気などを緊急に排気するための電磁弁などからなる緊急排気用の開閉弁1fと、真空ポンプ3aなどが設けられる。緊急排気用の開閉弁1fは、チャンバ1と排水タンク3を結ぶ管路に配置することが好ましい。
さらに、少なくとも外気導入用の開閉弁1c及び緊急排気用の開閉弁1fとしては、電圧をかけていない時に開弁状態が保持されるノーマリーオープンの電磁弁を用いることが好ましい。
【0012】
蓋1bには、
図1〜
図3に示されるように、操作ハンドル12と、操作ハンドル12の誤った操作や機器の誤動作による事故を防止するためのインターロック機構13が設けられる。操作ハンドル12の具体例としては、操作ハンドル12の回転と連動して放射状に突出するロッド12aを設けることが好ましい。
インターロック機構13は、
図3に示されるように、操作ハンドル12と連動して回転するストッパー13aと、ストッパー13aと係合して回転不能にロックするロック部材13bと、ロック部材13bのロック位置及びロック解除位置を検出するためのロック位置検出部13cと、ロック部材13bをロック位置及びロック解除位置に亘って移動させるためのロック駆動部13dと、を備えることが好ましい。
ストッパー13aの具体例としては、操作ハンドル12の中心に連設される回転軸12bと連動するように設けられるラチェットなどを用い、ロック部材13bの具体例としては、ストッパー13aの係止爪に対して着脱自在に係合するように揺動可能なアームを用いることが好ましい。ロック位置検出部13cの具体例としては、マイクロスイッチなどを用いて、位置検出信号を後述する制御手段5へ出力させることが好ましい。ロック駆動部13dは、後述する制御手段5によって作動制御され、その具体例として、ロック部材13bとなるアームに連設した従動子13eを該アームがロック解除位置からロック位置に向け移動するように吸着するソレノイドを用いることが好ましい。特にロック保持部13dのソレノイドとしては、電圧をかけていない時に磁性体などからなる従動子13eをロック位置に吸着し続けるものを用いることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、ストッパー13a及びロック部材13bとして別構造のものを用いることも可能である。
【0013】
ボイラ2は、蒸気発生装置2Aとボイラー室2Bを有している。
蒸気発生装置2Aは、給水ポンプ2Cや貯水タンク(給水タンク)2Dを介して水道などの給水源2Eに連通し、給水ポンプ2Cの作動によって、給水源2Eや貯水タンク2Dから水道水などが蒸気発生装置2Aの内部に一定量供給される。
蒸気発生装置2Aの内部には、電気ヒータ2aが設けられる。電気ヒータ2aは、後述する制御手段5によって温度制御され、給水源2Eから供給された水道水などを加熱して高温蒸気を作成し、ボイラー室2Bからチャンバ1の滅菌室1aへ供給するように構成されている。
【0014】
ボイラー室2Bは、蒸気発生装置2Aの内部空間のみで構成するか、又は蒸気発生装置2Aの内部空間と、蒸気発生装置2Aの内部とは別個に設けられるジャケット2Fの内部空間で構成することが好ましい。
ジャケット2Fは、チャンバ1の周囲を覆うように形成され、その内部空間が蒸気発生装置2Aの内部空間と同圧となるように配管接続し、蒸気発生装置2Aの内部空間で作成された高温蒸気を滅菌室1aの周囲空間に供給させることにより、滅菌室1aが保温されて乾燥効果を高めるようになっている。
【0015】
さらに、ボイラー室2Bは、その内部の温度変化に伴ってボイラー室2Bの内部空気を排気するための空気抜き用開閉弁2bを有している。
空気抜き用開閉弁2bは、温度センサS2から出力される温度信号と、後述する制御手段5によって作動制御される電磁弁などから構成される。
温度センサS2は、ジャケット2Fの内部空間又はそれに接続する管路に設けられ、ジャケット2Fの内部又はそれに接続する管路中の温度を計測して後述する制御手段5へ出力する。
詳しく説明すると、空気抜き用開閉弁2bは、運転の開始時(後述する準備工程)において、温度センサS2が予め設定された閉弁温度(約90〜95℃)になるまで開弁を継続させるか、又は閉弁温度になってもそれから所定時間(約3分間程度)が経過するまで開弁を継続させることにより、主にジャケット2Fの内部空気が排水タンク3又は外部へ排気されて、ジャケット2Fの内部空間に温度ムラが発生しないようにしている。
【0016】
ジャケット2Fとチャンバ1を結ぶ管路には、ジャケット2Fから高温蒸気を供給するための電磁弁などからなる給蒸用の開閉弁2cが設けられる。
さらに、蒸気発生装置2Aには、排水タンク3と結ぶ管路が設けられ、この管路の途中には、蒸気発生装置2Aの内部などに溜まった湯水を排水タンク3へ排出するための電磁弁などからなる排水用の開閉弁2dが設けられている。
【0017】
地震感知装置4は、機械振動や交通振動などの揺れに対応する周波数の高い領域を感知しないが、地震特有の周波数(1.5〜3Hz)の揺れに対しては敏感に感知する感震器である。
地震感知装置4となる感震器は、予め設定された震度の揺れを感知した時に作動し、後述する制御手段5へ感震信号を出力するように構成されている。
地震感知装置4の具体例としては、震度5弱に相当する揺れを感知した時に作動するように設定された感震器を用いることが好ましい。震度5弱の状況とは、多くの人が恐怖を覚え、物に捉まりたいと感じて身の安全を図ろうとする。棚にある食器や本が落ちることがある。固定されていない家具が移動したり、不安定な家具が倒れたりすることがある。窓ガラスが割れて落ちることがある。耐震性の低い住宅では、壁や柱が破損するものがある。
さらに、地震感知装置4には、感知前の状況に戻すための復帰レバー4aが設けられている。
また、その他の例として、震度5弱よりも小さな震度の揺れを感知した時に作動する感震器を用いたり、震度5弱よりも大きな震度の揺れを感知した時に作動する感震器を用いたり、復帰レバー4aの操作以外で感知前の状況に戻る感震器を用いたりすることも可能である。
【0018】
制御手段5は、外気導入用の開閉弁1c、緊急排気用の開閉弁1f、ロック位置検出部13c、ロック駆動部13d、電気ヒータ2a、空気抜き用開閉弁2b、給蒸用の開閉弁2c、地震感知装置4などとそれぞれ電気的に接続した制御回路を有するコントローラーである。
制御手段5となるコントローラーは、マイクロコンピュータなどで構成され、主電源13及びコントロールパネル11の電源スイッチ11aの操作によって運転が開始され、制御回路に予め書き込まれたプログラムに従って制御を行う。
【0019】
制御手段5の制御回路には、準備工程、待機工程、真空工程、滅菌工程、乾燥工程、フェイルセーフ工程などのプログラムが予め設定されている。
準備工程とは、蒸気発生装置2A内に一定量給水して電気ヒータ2aにより高温蒸気を発生させ、ボイラー室2Bのジャケット2Fに所定温度の高温蒸気を充満させる工程をいう。
待機工程とは、電気ヒータ2aを温度制御して、ジャケット2F内の高温蒸気を保ち、滅菌室1aに被滅菌物を収納して蓋1bが閉じられるまでの工程をいう。
真空工程とは、コントロールパネル11のスタートキー11bが操作されてから、滅菌室1a内の空気を排出して被滅菌物内の残留空気を排除する工程をいう。
滅菌工程とは、滅菌室1a内に高温蒸気を供給して被滅菌物の滅菌を行い、滅菌の終了後には滅菌室1a内の高温蒸気を排気する工程をいう。
乾燥工程とは、設定時間に亘って滅菌室1aからの真空引きと、外気の導入を繰り返す工程をいう。
フェイルセーフ工程とは、地震などによる揺れ(震度5弱相当)を感知した際に緊急作動する工程をいう。
【0020】
制御手段5の制御回路に書き込まれているプログラムをタイムチャートで示すと、
図4と
図5のようになる。
図4のタイムチャートでは、フェイルセーフ工程を含まない通常作動時を示している。
図5のタイムチャートでは、地震発生によるフェイルセーフ工程の作動時を示している
。
【0021】
ここで、
図4に従って通常作動時の作動について説明する。
電源ONで準備工程のプログラムがスタートすると、給水ポンプ2Cの作動により蒸気発生装置2A内に一定量の水道水などが給水される。
給水ポンプ2Cの作動が完了する頃には、電気ヒータ2aがONになって高温蒸気を発生させ、ボイラー室2Bとなるジャケット2Fの内部空間に供給される。
この頃には、空気抜き用開閉弁2bを開弁して、ジャケット2Fの内部空気が排気され始める。空気抜き用開閉弁2bは、ジャケット2Fの温度センサS2が閉弁温度まで上がった後に閉弁してジャケット2Fからの排気が停止される。
その後、温度センサS2が設定温度になったところで、準備工程が完了し、待機工程に進行する。
【0022】
待機工程では、ジャケット2Fの温度は設定温度に維持されて、ジャケット2Fから滅菌室1a内に高温蒸気を供給可能な状態に保っている。
その後、滅菌室1aに被滅菌物を収納して蓋1bが閉じられ、コントロールパネル11のスタートキー11bを操作すると、真空工程が開始され、それ以降は真空工程、滅菌工程、乾燥工程が順次進行される。
【0023】
次に、
図5に従ってフェイルセーフ工程の作動について説明する。
地震感知装置4が揺れを感知して作動すると、フェイルセーフ工程のプログラムがスタートし、電源又は電源回路上になる接点などをOFFに切り替えて、上述したすべての器機への電気の供給を遮断する。
その後、復帰させる場合は、地震感知装置4の復帰レバー4aを操作することにより、すべての器機への電気の供給を再開して感知前の状況に戻すことが可能となる。
図示例では、滅菌工程の途中で地震による揺れ(震度5弱相当)が発生し、地震感知装置4となる感震器が揺れを感知した際に、電源SWがOFFになる場合を示している。
また、その他の例として図示しないが、滅菌工程の途中以外に上述した他の工程途中で地震による揺れが発生し、この揺れを地震感知装置4が感知した場合も、同様にすべての器機への電気の供給を遮断させることも可能である。さらに、地震の発生時には電源SWに代えて電源回路上になる接点などをOFFに切り替えることにより、すべての器機への電気の供給を遮断させることも可能である。
【0024】
このような本発明の実施形態に係る蒸気滅菌器Aによると、地震の発生に伴って例えば震度5弱相当以上の揺れが発生した際に、この揺れを地震感知装置4が感知して、自動的にボイラ2への電気供給が遮断される。
したがって、地震の発生時にボイラ2の作動を安全に停止させることができる。
その結果、チャンバ1内の高温蒸気が外に流出する危険性を低減することができ、安全性の向上が図れる。
特に、地震感知装置4からの感知信号に基づいてボイラ2を含む総ての器機と電源との回路を遮断させた場合には、地震の発生時には、自動的にすべての器機への電気の供給が遮断されるため、すべての作動を安全に停止させることができ、更なる安全性の向上が図れる。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。