(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体は、前記把持部に把持される該ゴム体の一端に段差部が設けられて前記車両の走行方向の幅寸法が、前記段差部よりも前記軌道の側方方向の前記ゴム体に対して小さく形成され、前記把持部と前記ゴム体とが、前記走行方向を向く表面で面一となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の接地シュー。
前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体は、前記車両における走行方向の幅寸法が、前記把持部に把持される該ゴム体の一端から他端に向かうに従って小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の接地シュー。
前記剛性補助部材は、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体の内部に、前記把持部に把持される該ゴム体の一端から他端に延在して設けられた金属ワイヤであることを特徴とする請求項11に記載の接地シュー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された集電装置は、全体が一体構造の単一品となっており、ゴムの部分のみに損傷が発生したとしても、交換に際しては全てを一括で交換しなければならず、コストアップが避けられなかった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、コストを抑制しながら、確実に車両の帯電防止が可能な接地シューを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る接地シューは、車両において、軌道側の接地レールに向けて設けられる接地シューであって、導電体を有する集電部と、該集電部を通電可能かつ着脱可能に前記導電体の一端を把持して固定するとともに、前記車両に取り付けられ、前記導電体と接触する把持部とを備え
、前記集電部は、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体をさらに有し、前記把持部は、前記導電体に加え、前記ゴム体の一端を把持することを特徴とする。
【0009】
このような接地シューによると、集電部と接地レールとの間での通電を可能とし、車両から軌道側へ帯電した電気を流すことができ、帯電を防止可能となるとともに、集電部を把持部から着脱することが可能である。このため、集電部が摩耗等によって損傷を受けた場合等には、接地シュー全てを一括で交換することなく集電部のみを交換することができるので、交換部品のコスト削減が可能である。
また、導電体がゴム体によって覆われていることで、ゴム体の弾性により、接地レールへの接触の際の追従性を向上でき、確実に軌道側へ接触して帯電した電気を流すことができる。さらに、把持部が導電体だけでなくゴム体も把持することで、把持部からの集電部の抜けを抑制できる。また、ゴム体は把持部によって把持されているのみで、例えばゴム体を貫通するようなボルト等によって固定されているわけではないため、ゴム体に応力集中による損傷が発生しにくく、耐久性を向上できるためゴム体の交換回数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
【0012】
さらに、前記ゴム体は、前記把持部からの引き抜きを規制する規制手段を有していてもよい。
【0013】
このような規制手段によって、把持部がゴム体を確実に把持でき、把持部からの集電部の抜けの抑制効果を向上できる。
【0014】
また、前記規制手段は、前記把持部に設けられた孔部と、前記ゴム体に設けられ、前記孔部に嵌合する突部とを有していてもよい。
【0015】
このような規制手段によって、把持部がゴム体をより確実に把持でき、把持部からの集電部の抜けの抑制効果をさらに向上できる。
【0016】
さらに、前記把持部は、前記導電体の前記一端に接触する接触部分に、前記導電体との接触抵抗を低減させる抵抗低減手段を有していてもよい。
【0017】
このような抵抗低減手段によって、把持部と導電体との間での接触抵抗を低減し、車両から軌道側へ帯電した電気を確実に流すことができる。
【0018】
また、前記抵抗低減手段は、前記把持部の前記接触部分に前記導電体の前記一端から他端に向かう方向とは異なる方向に溝が形成された溝部であってもよい。
【0019】
このような抵抗低減手段によって、把持部と導電体がしっかりと噛み合い、把持部と導電体との間での接触抵抗を低減し、車両から軌道側へ帯電した電気を確実に流すことができる。さらに、把持部からの導電体の抜けを抑制することができる。
【0020】
さらに、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体は、前記把持部に把持される該ゴム体の一端に段差部が設けられて前記車両の走行方向の寸法が、前記段差部よりも前記軌道の側方方向の前記ゴム体に対して小さく形成され、前記把持部と前記ゴム体とが、前記走行方向を向く表面で面一となっていてもよい。
【0021】
このようにすることで、把持部がゴム体をさらに確実に把持できるとともに、把持部からゴム体がはみ出さないようにすることができるため、車両へ把持部を取り付ける際にゴム体が干渉してしまうことがなく、取り付けの自由度を持たせることが可能となる。
【0022】
また、前記導電体は、前記把持部に把持される該導電体の前記一端が、他端に比べて細くなっていてもよい。
【0023】
導電体をこのような形状とすることによって、把持部によって確実に導電体を把持でき、把持部からの導電体の抜けを抑制し、車両から軌道側へ帯電した電気を確実に流すことができる。
【0024】
さらに、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体は、導電性を有するゴムよりなっていてもよい。
【0025】
ゴム体に導電性ゴムを適用したことによって、導電体が摩耗し、接地レールとの間で離間してしまったとしても、ゴム体のみによっても接地レールとの間で通電可能となるため、確実に接地レールへ電気を放出することが可能となる。
【0026】
また、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体は、前記車両における走行方向の幅寸法が、前記把持部に把持される該ゴム体の一端から他端に向かうに従って小さくなるように形成されていてもよい。
【0027】
このようにゴム体を形成することによって、接地レール側に位置する他端が自身の重みによって下方に撓んでしまうことを防止でき、接地レールとの接触を確実に図ることができる。また、このような形状によって、ゴム体が他端側で柔軟性を有することとなるため、ゴム体が接地レールに押し付けられた際にも、車両の走行方向の後方側に容易に曲げられ、一端側での応力集中を防止でき、耐久性の向上が可能となる。また接地レールへの接触性の向上を図ることができ、さらに接地レールとの接触面積を大きくすることができ、通電効率の向上が可能となる。また、接地レールの継ぎ目にゴム体の他端が位置した際の衝撃を吸収可能となるため、乗客の乗り心地向上にもつながる。
【0028】
さらに、前記把持部は、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体に接触する側の縁部が面取りされた面取り部が形成され、前記ゴム体は、前記面取り部に対向する位置で、該面取り部の形状に対応するような当接部が形成されていてもよい。
【0029】
このような面取り部、当接部によって、ゴム体が接地レールに押し付けられ、車両の走行方向の後方側に曲げられた際に、把持部の縁部がゴム体の表面に押し付けられて、ゴム体に亀裂や割れ等が発生してしまうことを防止でき、耐久性を向上可能となる。
【0030】
さらに、本発明に係る接地シューは、前記集電部に設けられ、該集電部の前記車両の走行方向への曲げに対する剛性を増大する剛性補助部材をさらに備えていてもよい。
【0031】
このような剛性補助部材によって、集電部の耐久性向上につながる。
【0032】
また、前記剛性補助部材は、前記集電部における前記車両の走行方向の少なくとも一方側を向く面に当接して設けられた金属板であってもよい。
【0033】
このような金属板を用いることで、集電部が車両の走行方向への曲げ剛性を増大でき、走行しながら接地レールに接触し、集電部が走行方向の後方側に曲げられる際にも、確実に集電部の耐久性を向上できる。
【0034】
さらに、前記剛性補助部材は、前記導電体の前記一端及び他端を露出させるようにして該導電体を覆うゴム体の内部に、前記把持部に把持される該ゴム体の一端から他端に延在して設けられた金属ワイヤであってもよい。
【0035】
このような金属ワイヤを用いることで、集電部が車両の走行方向の後方側に曲げられる際の剛性を増大でき、確実に集電部の耐久性を向上できる。
また、本発明に係る接地シューは、車両において、軌道側の接地レールに向けて設けられる接地シューであって、導電体を有する集電部と、該集電部を通電可能かつ着脱可能に前記導電体の一端を把持して固定するとともに、前記車両に取り付けられ、前記導電体と接触する把持部とを備え、前記把持部は、前記導電体の前記一端に接触する接触部分に、前記導電体との接触抵抗を低減させる抵抗低減手段を有し、前記抵抗低減手段は、前記把持部の前記接触部分に前記導電体の前記一端から他端に向かう方向とは異なる方向に溝が形成された溝部であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る車両は、上記の接地シューを備えることを特徴とする。
【0037】
このような車両によると、集電部と接地レールとの間での通電を可能として帯電が防止可能となるとともに、集電部を把持部から着脱することが可能である。このため、接地シューが損傷を受けた場合等には、接地シュー全てを一括で交換することなく集電部のみを交換することができ、コストを抑制できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の接地シュー及び車両によると、集電部を通電可能かつ着脱可能としたことで、コストを抑制しながら、確実に帯電防止が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の第一実施形態に係る軌道系車両1(以下、車両1と称する。)について説明する。
図1及び
図2に示すように、車両1は、軌道の両側部に設けられたガイドレール7によって案内されて軌道上を走行するサイドガイド方式の軌道系交通システムに適用される車両である。
そして、車両1は、乗客を収容可能な車体2と、車体2の下方に設けられたボギー台車3A、3Bと、ボギー台車3A、3Bに設けられた接地シュー18とを備えている。
【0041】
車体2は、例えば中空の直方体形状をなし、内部が乗客を収容可能な客室とされている。
【0042】
ボギー台車3A、3Bは、車体2の下部において、車両1の走行方向D1の前後に、間隔を空けて1つずつ設けられた走行装置である。そして、それぞれのボギー台車3A、3Bは、フレームである台車枠10と、台車枠10に回転可能に車軸12によって支持されたゴムタイヤである走行輪11とを有している。
【0043】
台車枠10は、車両1の走行方向D1に直交する軌道幅方向D2に延びて車軸12を中心として走行方向D1の前後に配置されている前後一対の横梁15と、走行方向D1に延びて前後一対の横梁15を連結する軌道幅方向D2の左右一対の縦梁16とを有し、各横梁15の軌道幅方向D2の両端には、案内輪4及び、案内輪4の下方に配置される分岐輪5が走行方向D1、軌道幅方向D2に直交する高さ方向D3を回転中心軸として回転可能に取り付けられている。
【0044】
接地シュー18は、ボギー台車3A、3Bにおいて各々の横梁15の両端に、案内輪4及び分岐輪5に干渉しないように取り付けられる部材である。
具体的には本実施形態では、走行方向D1の前側のボギー台車3Aにおいては、走行方向D1の前側の横梁15に走行方向D1の前側から取付ブラケット19を介して取り付けられ、走行方向D1の後側のボギー台車3Bにおいては、走行方向D1の後側の横梁15に走行方向D1の後側から取付ブラケット19を介して取り付けられている。即ち、各々のボギー台車3A、3Bに二個ずつ、即ち、車両1一両当りで四個が設けられているが、これに限定されず車両1内が電気的に結合された状態であれば、片側の台車(3A、又は3B)に一個でも、車両1全体に一個であってもよい。
【0045】
ここで、取付ブラケット19は金属よりなり、車両1との間で電気的に結合された状態となっている。
【0046】
またこの接地シュー18は、一端18aが取付ブラケット19に固定されるとともに、他端18bが軌道幅方向D2において近接する軌道側方方向に延びて、この他端18bで車両1の両側部に対向するように軌道上に設けられた接地レール6に接触可能とされている。なお、この接地レール6は駅内に設けられ、車両1が駅内に位置する際に接地レール6に接触することとなる。
【0047】
次に、
図3から
図6を参照して、各々の接地シュー18について詳しく説明する。
接地シュー18は、接地レール6に接触する集電部20と、集電部20の一端20aを把持するとともに、取付ブラケット19を介してボギー台車3A、3Bに取り付けられる把持部21とを備えている。
【0048】
集電部20は、金属よりなる導電体51と、導電体51の一端51aと接地レール6に対向する他端51bとで導電体51を露出させるようにして導電体51を覆うゴム体55とを有している。
【0049】
図4に示すように、導電体51は、複数の金属ワイヤを高さ方向D3に束ねたものであり、把持部21で把持される一端51aがゴム体55から突出して露出しているが、この露出部分のみが他の部分に比べて高さ方向D3に細くなって、一端側露出部52が形成されている。そしてこの一端側露出部52が把持部21によって把持されて固定される部分である。
【0050】
なお、図示はしないが、ゴム体55の内部では、金属ワイヤのほつれを防止するよう、高さ方向D3に束ねられた金属ワイヤを外周から囲うように、他の金属ワイヤによって締め付けている。
【0051】
ゴム体55は、導電体51を外周側から覆うように設けられた導電性を有するゴムよりなる部材である。なお、導電性のゴムとしては、例えばゴムにカーボン等を配合したもの等が例示される。そして、このゴム体55の把持部21に把持される一端55aでは、走行方向D1の前後を向く二つの面、即ちゴム体表面55aの両面が走行方向D1に窪むように、段差部56が設けられて走行方向D1の寸法が、段差部56よりも軌道側方方向のゴム体55に対して一部小さく形成されている。
【0052】
またこの段差部56は、ゴム体表面55aに連続する段差面56a及び、段差面56aに接続された底面56bによって構成されており、段差面56aと底面56bとの間の角部は、例えばR状とされた当接部57が形成され、この当接部57によって段差面56aと底面56bとが滑らかに接続されている。なお、当接部57はC状であってもよい。
【0053】
さらに、段差部56における底面56bには走行方向D1に、ゴム体表面55aと同じ位置まで突出する突起状の突部(規制手段)58が設けられている。本実施形態では、この突部58は高さ方向D3を長手方向とする直方体ブロック状に形成されている。
【0054】
さらに、ゴム体55は、一端55aから他端55bに向かうに従って、ゴム体表面55c同士が漸次近接するように、即ち、走行方向D1の幅寸法が漸次小さくなるように形成されている。
【0055】
図5及び
図6に示すように把持部21は、集電部20における導電体51の一端51a及びゴム体55の一端55aを走行方向D1前側及び後側から挟むようにして把持して、導電体51の一端51aを固定する前側把持部22及び後側把持部32とを有している。
【0056】
図5に示すように、前側把持部22は、導電体51の一端側露出部52及びゴム体55の一端55aに走行方向D1の前側から当接するように設けられた金属よりなる板状の部材である。
具体的には、ゴム体55を把持する側の端部22aでは、走行方向D1の後方を向く面である内面22bが走行方向D1に前側に向かって窪むように、前側把持部段差部23が設けられて走行方向D1の幅寸法が一部小さく形成されている。即ち前側把持部22は、前側把持部本体部24と、前側把持部本体部24から軌道幅方向D2に突出する前側把持部段差部23とによって構成されていることとなる。
【0057】
そして、前側把持部本体部24には、高さ方向D3の略中央位置となる一端側露出部52が当接する位置において、導電体51の一端51aから他端51bに向かう方向、即ち、導電体51を構成する上記金属ワイヤの延在方向となる軌道幅方向D2と直交するように、高さ方向D3に間隔をあけて複数の溝が形成された溝部(抵抗低減手段)26が設けられ、この溝部26に一端側露出部52が当接して噛み合うようにされている。
【0058】
さらに、この前側把持部本体部24には、溝部26を高さ方向D3両側から挟む位置に、軌道幅方向D2を延在して前側把持部22を走行方向D1に貫通する第一の長孔25が形成されている。
【0059】
また、この前側把持部段差部23は、内面22bに連続する前側把持部段差面23a、及び、前側把持部段差面23aに接続された前側把持部底面23bによって構成されている。さらに、前側把持部底面23bには、走行方向D1に前側把持部段差部23を貫通するとともに、高さ方向D3に延在する第二の長孔(孔部、規制手段)27が形成されている。
【0060】
そして、ゴム体55における底面56bと前側把持部底面23b、ゴム体55における段差面56aと前側把持部段差面23aとは略同一寸法に形成されており、即ち前側把持部段差部23へゴム体55における段差部56がちょうど嵌り込むようにされている。
【0061】
また、突部58の外形と第二の長孔27の内形とは略同一形状とされ、第二の長孔27には、ゴム体55における突部58がちょうど嵌合するようにされ、第二の長孔27に突部58が嵌合した際には、突部58が前側把持部22の走行方向D1の前側を向く外面22cから突出しないよう、面一となるようにされている。
【0062】
さらに、前側把持部22は、ゴム体55の底面56bに対向して当接する前側把持部底面23bにおいて、前側把持部段差部23の軌道幅方向D2の端部22aの先端の縁部が面取りされて、第一の面取り部28が形成されている。そしてこの第一の面取り部28は、ゴム体55を把持した際に、ゴム体55の当接部57にちょうど対向する。そして、この第一の面取り部28はR面取りであってもよいしC面取りであってもよいが、当接部57の形状に対応する形状が好ましく、即ち当接部57がR状ならR面取りを、C状ならC面取りであることが好ましい。
【0063】
また、前側把持部22は、前側把持部本体部24において、走行方向D1に形成された内周面に雌ネジ部が形成されたボルト孔29が設けられている。このボルト孔29は、本実施形態では第一の長孔25よりも高さ方向D3の外側位置に各一個、第一の長孔25同士の間であって溝部26よりも軌道幅方向D2の内側で、高さ方向D3の略中央に一個の計三個となっている。
【0064】
図6に示すように、後側把持部32は、前側把持部22と同様に、導電体51の一端側露出部52及びゴム体55の一端55aに走行方向D1の後側から当接するように設けられた金属よりなる板状の部材である。そして、一端側露出部52及びゴム体55の一端55aに当接した際に前側把持部22に対向し、即ち前側把持部22とで走行方向D1前側及び後側から導電体51及びゴム体55を挟むようにして把持するものである。
【0065】
また、この後側把持部32は、前側把持部22を走行方向D1にちょうど反転させたような外形となっており、即ち、ゴム体55を把持する側の端部32aでは、前側把持部段差部23に対向して、走行方向D1の前方を向く面である内面22bが走行方向D1に後側に向かって窪むように、後側把持部段差部33が設けられて走行方向D1の幅寸法が一部小さく形成されている。即ち後側把持部32は、後側把持部本体部34と、後側把持部本体部34から軌道幅方向D2に突出する後側把持部段差部33とによって構成されていることとなる。
【0066】
さらに、後側把持部本体部34には、第一の長孔25に対向し、後側把持部32を走行方向D1に貫通する第三の長孔35が形成されている。そして、この第三の長孔35に関しては、前側把持部22と後側把持部32とによって集電部20を挟み込んで把持した状態で、第一の長孔25及び第三の長孔35へ取付ボルト8(
図3参照)が挿通され、この取付ボルト8によって取付ブラケット19を介して接地シュー18がボギー台車3A、3Bに設置可能とされている。
【0067】
また、この後側把持部段差部33は、内面32bに連続する後側把持部段差面33a、及び、後側把持部段差面33aに接続された後側把持部底面33bによって構成されている。さらに、後側把持部底面33bには、前側把持部段差部23における第二の長孔27に対向して、走行方向D1に後側把持部段差部33を貫通するとともに、高さ方向D3に延在する第四の長孔(孔部、規制手段)37が形成されている。
【0068】
そして、ゴム体55における底面56bと後側把持部底面33b、ゴム体55における段差面56aと後側把持部段差面33aとはちょうど同じ寸法に形成されており、即ち後側把持部段差部33へゴム体55における段差部56がちょうど嵌り込むようにされている。
【0069】
また、突部58の外形と第四の長孔37の内形とは略同一形状とされ、第四の長孔37には、ゴム体55における突部58がちょうど嵌合するようにされ、第四の長孔37に突部58が嵌合した際には、突部58が後側把持部32の走行方向D1の後側を向く外面22cから突出しないよう、面一となるようにされている。
【0070】
さらに、後側把持部32は、ゴム体55の底面56bに対向して当接する後側把持部底面33bにおいて、第一の面取り部28に対向するように後側把持部段差部33の軌道幅方向D2の端部32aの先端の縁部が面取りされて、第二の面取り部38が形成されている。そしてこの第一の面取り部28は、ゴム体55を把持した際に、ゴム体55の当接部57にちょうど対向する。そして、この第二の面取り部38はR面取りであってもよいしC面取りであってもよいが、当接部57の形状に対応する形状が好ましく、即ち当接部57がR状ならR面取りを、C状ならC面取りであることが好ましい。
【0071】
また、後側把持部32は、後側把持部本体部34において、前側把持部22におけるボルト孔29に対向するように走行方向D1に貫通して形成された貫通孔39が設けられている。この貫通孔39へは、把持部固定ボルト41が挿通可能となるように、この把持部固定ボルト41の外径よりも大きく形成されている。さらに後側把持部32の外面22c側の開口は拡径しており、即ち、把持部固定ボルト41のボルト頭が外面22cから突出しないようになっており、ボギー台車3A、3Bの取付ブラケット19の表面に外面22cが面接触した状態で取り付け可能となっている。
なお、本実施形態では把持部固定ボルト41は皿ボルトとなっているが、ボルト頭が突出しなければ、他の形状のボルトであってもよい。
【0072】
さらに後側把持部32には、前側把持部22における溝部26に対向する位置に、後側把持部32を走行方向D1に貫通する押さえボルト孔36が形成されており、この押さえボルト孔36へ押さえボルト42が螺合可能となっている。またこの押さえボルト孔36の外面22c側の開口は拡径しており、押さえボルト42のボルト頭が外面22cから突出しないようにされ、ボギー台車3A、3Bの取付ブラケット19の表面に外面22cが面接触した状態で取り付け可能となっている。
【0073】
このような車両1においては、把持部21における前側把持部22と後側把持部32とが集電部20における導電体51の一端側露出部52に走行方向D1から当接するとともに、把持部固定ボルト41によって前側把持部22と後側把持部32とが締め付けられることで、把持部21と集電部20とを通電させることができる。また把持部21及び取付ブラケット19はともに金属よりなっているため、これらの間でも通電され、さらに、取付ブラケット19は車両1に電気的に結合されているため通電されている。
【0074】
従って、接地シュー18の集電部20が接地レール6に接触した際には、接地シュー18と接地レール6との間での通電が可能となり、車両1から軌道側へ車両1に静電気等によって帯電した電気を流すことができる。このようにして車両1の帯電が防止可能となる。
【0075】
さらに、集電部20を把持部21から把持部固定ボルト41を外すことよって、容易に着脱することが可能であるため、集電部20が摩耗等によって損傷を受けた場合等には、接地シュー18全てを一括で交換することなく集電部20のみを交換することができる。
【0076】
また、導電体51はゴム体55によって覆われていることで、ゴム体55の弾性により、接地レール6への接触の際の追従性を向上でき、確実に軌道側へ帯電した電気を流すことができる。
【0077】
さらに、把持部21が導電体51だけでなくゴム体55も把持し、ゴム体55に設けられた突部58と第二の長孔27、突部58と第四の長孔37とが嵌合し、把持部21がゴム体55をより確実に把持できるため、把持部21からの集電部20の引き抜きを抑制することが可能となる。
【0078】
また、ゴム体55は把持部21によって把持されているのみで、把持部固定ボルト41等によって固定されているわけではないため、ゴム体55に損傷が発生しにくい。従って耐久性を向上でき、コストを抑えることができる。さらに、金属の把持部21で車両1へ取り付けられるため、適正な締め付け力で取付ボルト8を締め付け可能となり、取付ボルト8が緩んで脱落してしまうことがない。
【0079】
さらに、前側把持部22には溝部26が設けられており、この溝部26に集電部20における一端側露出部52が当接して噛み合うため、把持部21と導電体51との間での接触抵抗を低減し、車両1から軌道側へ帯電した電気を確実に流すことができる。またこれに加え、後側把持部32に形成された押さえボルト孔36へ押さえボルト42を螺合させることで、一端側露出部52を溝部26に押さえつけることができる。このため、把持部21と導電体51とがよりしっかりと噛み合い、把持部21と導電体51との間での接触抵抗をさらに低減でき、把持部21からの導電体51の抜けの抑制も可能となる
【0080】
そして、ゴム体55を把持部21が把持する際には、ゴム体55の段差部56が前側把持部段差部23及び後側把持部段差部33にちょうど嵌り込むことで、ゴム体表面55cと、前側把持部段差部23及び後側把持部段差部33の外面22cとを面一とすることができる。従って、把持部21がゴム体55をさらに確実に把持できるとともに、把持部21からゴム体55がはみ出さないようにすることができるため、車両1へ把持部21を取り付ける際に、取付ブラケット19にゴム体55が干渉してしまうことがなく、取り付けの際の自由度を持たせることが可能となる。例えば、集電部20の軌道幅方向D2の寸法が長く、接地レール6への接触圧が大きい場合には、接地シュー18を軌道幅方向D2に車両1側に寄せて取り付ける等することとなるが、このようにしても取付ブラケット19にゴム体55が干渉してしまうことがなく、確実に取り付けることが可能となる。
【0081】
ここで、本実施形態では、把持部21に第一の長孔25及び第三の長孔35に取付ボルト8を挿通させて取付ブラケット19に接地シュー18を接続しているため、接地シュー18の設置は、軌道幅方向D2に自由度を持たせることが可能となっている。
【0082】
また、導電体51の一端側露出部52が導電体51の他の部分に比べて高さ方向D3に細くなっているが、このような形状によって、把持部21の内部に一端側露出部52を収容でき、把持部21からの導電体51の抜けの抑制効果を向上して、確実に導電体51を把持して通電させることができる。
【0083】
さらに、ゴム体55に導電性ゴムを適用したことによって、導電体51が摩耗し、接地レール6との間で離間してしまったとしても、ゴム体55のみによっても接地レール6との間で通電可能となるため、冗長性を確保でき、確実に帯電の防止が可能となる。これによって信頼性の向上につながる。
【0084】
また、
図7に示すように、車両1の走行時に集電部20が接地レール6に接触すると、集電部20が走行方向D1の後方側に曲げられることとなる。ここで、ゴム体55は、導電体51の一端51aから他端51bに向かうに従って、走行方向D1の幅寸法が漸次小さくなるように形成され、先細りの形状となっている。このため、ゴム体55が他端55b側で柔軟性を有することとなり、ゴム体55が接地レール6に押し付けられた際にも車両1の走行方向D1の後方側に容易に曲げられ、把持部21に把持された一端55a側での応力集中を防止でき、耐久性の向上を図ることができる。
【0085】
さらに、このような先細りの形状によって、ゴム体55の他端55bが自身の重みによって下方に撓んでしまうことを防止でき、接地レール6との接触を確実に図ることができ。またこのような形状によって接地レール6との接触面積を大きくすることができ、通電効率の向上が可能となる。また、接地レール6の継ぎ目にゴム体55の他端55bが位置した際の衝撃を吸収可能となるため、乗客の乗り心地向上にもつながる。
【0086】
さらに、前側把持部22における第一の面取り部28、後側把持部32における第二の面取り部38と、これらに当接するゴム体55の当接部57によって、ゴム体55が接地レール6に押し付けられ、車両1の走行方向D1の後側に曲げられた際に、前側把持部22の端部22a及び後側把持部32の端部32aにおける縁部がゴム体55の表面に押し付けられて、ゴム体55に亀裂や割れ等が発生してしまうことを防止できる。従って、接地シュー18の耐久性を向上できる。
【0087】
次に、本発明の第二実施形態に係る車両100について説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、接地シュー108が剛性補助部材110をさらに備えている点で、第一実施形態とは異なっている。
【0088】
図8に示すように、剛性補助部材110は、前記集電部20における車両100の走行方向D1前後両側から前側把持部22及び後側把持部32の外面22c、32c及びゴム体表面55cに当接して設けられた金属板である。
【0089】
このような設置シュー108においては、剛性補助部材110として金属板を用いることで、上述のように集電部20が車両100の走行方向D1の後方側に曲げられる際にも、走行方向D1への曲げ剛性を増大でき、確実に集電部20の耐久性を向上できる。
なお、剛性補助部材110は走行方向D1の前後両側に設けられていなくともよく、例えば、走行方向D1の前後のうちの一方側に設けられていてもよい。
【0090】
また、
図9のように剛性補助部材120は、ゴム体55の内部に前記一端51aから他端51bに軌道幅方向D2に延在して設けられた金属ワイヤであってもよい。ゴム体55の内部であればどの位置に配してもよいが、例えば、導電体51を走行方向D1の前後両側から挟むように、金属ワイヤを高さ方向D3に束ねたものを設けることができる。そしてこのような金属ワイヤを用いることによっても、上述のように集電部20が車両100の走行方向D1の後方側に曲げられる際に、走行方向D1への曲げ剛性を増大できる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、上述の実施形態では前側把持部22にのみ溝部26を設けていたが、後側把持部32にも設けてよいし、また逆に後側把持部32のみに設けることもできる。
【0092】
さらに溝部26における溝は、一端側露出部52の金属ワイヤの延在方向である軌道幅方向D2とは異なる方向に形成されていればよく、また軌道幅方向D2と直交するように形成されていてもよい。また、溝は同じ方向に複数形成されずに、例えば格子状であってもよいし、溝部26に代えて単なる粗面であってもよく、これらの溝により一端側露出部52が噛み込みされればよい。
【0093】
また、押さえボルト孔36は必ずしも設けられていなくともよい。
【0094】
さらに、ボルト孔29及び貫通孔39は、三個ずつ設けたが、把持部21が集電部20を固定可能であれば数量は限定されない。さらに設置位置についても、少なくとも前側把持部本体部24及び後側把持部本体部34に設置されていればよく、上述の実施形態に限定されない。
【0095】
また、ゴム体55における突部58、把持部21における第二の長孔27及び第四の長孔37に代えて、ゴム体55に孔部を設け、把持部21に突部を設け、これらが嵌合するようにしてもよく、また形状も上述の実施形態の場合に限定されない。
【0096】
さらに後側把持部32に形成された押さえボルト孔36は、溝部26に対向する範囲の略中心部で一箇所のみ設けられているが、溝部26に対向する範囲内であれば複数設けてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、集電部20は、導電体51とこれを覆うゴム体55とから構成されていたが、例えば、導電体51のみであってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態の車両1、100は、サイドガイド方式の軌道系交通システムに適用される車両1、100として説明したが、センターガイド方式の車両1、100であってもよい。
また、前側把持部22と後側把持部32は、把持部固定ボルト41で固定されていなくてもよく、例えば、爪と爪に係合する係合部により固定してもよい。