(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員等を座席に安全に保持するためのシートベルト用リトラクタとして、急な加速、衝突又は減速に反応する車体加速度感知手段によってウェビングの引き出しを物理的にロックする緊急ロック機構を備えて、乗員を効果的及び安全に拘束する緊急ロック式リトラクタが用いられている。また、チャイルドシート等を車両シートにシートベルトで固定するためのシートベルト用リトラクタとして、ウェビングを全量引き出したときに作動し、巻取り途中ではウェビングの引出しを阻止し、ウェビングの全量巻取りで作動解除する自動ロック機構を備えたものが用いられている。
【0003】
ところで、緊急ロック機構を備えたシートベルト用リトラクタでは、車両緊急時ではない不必要な時にも、スピンドル(巻取軸)のウェビング引き出し方向の回転がロックされることがある。即ち、車両取付け状態において、ウェビング引き出し状態から巻き取りバネのバネ力に従って急激にウェビングが全量巻き取られたとき、その衝撃で緊急ロック機構が作動して、スピンドルのウェビング引き出し方向の回転がロックされてしまうことがあり、この場合には、ウェビングの引き出しができなくなる。しかもこのとき、ウェビングは全量巻き取り状態にあるので、スピンドルはウェビング巻き取り方向にも回転できず、リトラクタは所謂エンドロック状態に陥るという問題があった。
【0004】
例えば、緊急ロック機構としては、次のようなものがある。一つは、ウェビングの急激な引き出しを感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(ウェビング加速度感知手段:WS)、もう一つは車両の急減速状態を感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(車体加速度感知手段:VSI)である。いずれの場合も、スピンドルと一体回転するロック部材の揺動により、ロック部材の爪を、スピンドルを支持するフレームの内歯に噛み合わせて、スピンドルをロックするようにしている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
このようなリトラクタにおいて、エンドロックが起きるケースとしては、次の3つの場合がある。
(1)ウェビング加速度感知手段(WS)の不用意な作動によるもの。
一般的に、ウェビング加速度感知手段は、急速にベルトを引き出すと、マスの慣性でマス側の回転がスピンドルより遅れることで、ロック部材が外に飛び出して、フレームの内歯に噛み込む、という原理を用いている。ところが、急激なウェビング巻き取り後にウェビングが突っ張ると、勢いでマスがスピンドルに対して相対移動してしまい、ロック部材がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
(2)車体加速度感知手段(VSI)の不用意な作動によるもの。
ウェビングの急速な巻き取り等に伴うリトラクタの振動により車体加速度感知手段に加速度が入力した際に、慣性部材であるボールが動き、レバーが揺動して、ラッチ部材に噛んでロックする場合である。
(3)ロック部材自体の不用意な作動によるもの。
ウェビングを巻き取った勢いで、ロック部材自体がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
【0006】
特許文献1に記載のシートベルトリトラクタは、スピンドルの回転に連動するカムプレートのカム溝に揺動阻止部材に設けられたカムフォロワを案内させ、揺動阻止部材のストッパ部を回動する。そして、このストッパ部が慣性体に当接して、慣性体を非作動位置に保持して慣性体の揺動を阻止する。これにより、ウェビングの巻取り完了時に、慣性体が作動してロックギヤ(ラチェットホイール)への係合を防止し、ウェビングの巻取り完了時のエンドロックを防止している。
【0007】
また、特許文献2に記載のシートベルトリトラクタは、遊星歯車機構によって回動するカム部材を有し、ロック手段としての一対のロックプレートが配設されたロック輪が全量巻き取り状態でスピンドルとの相対回転を阻止するエンドロック防止手段を備える。また、該シートベルトリトラクタは、遊星歯車機構の歯車及び他の歯車を介して他のカム部材を回動させることで自動ロック機構を構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エンドロックを防止する機構が作動する切換えタイミングは、通常、ベルト格納状態と、無着座でバックルをラッチさせた状態の範囲内で設定されている。上記範囲は車種によって異なり、例えば、小型車のリアセンター席に配設されるシートベルト用リトラクタは上記範囲が狭い場合が多く、切換えタイミングのばらつきが小さいロックキャンセラが要求される。特許文献1及び2に記載のシートベルト用リトラクタでは、このような切換えタイミングのばらつきについては記載されていない。
【0010】
また、特許文献1に記載のシートベルト用リトラクタでは、慣性体の揺動を阻止することでウェビング加速度感知手段の誤作動によるエンドロックを防止しているが、車体加速度感知手段(VSI)のエンドロックについては記載されていない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンドロックを防止する機構が作動する切換えタイミングのばらつきが小さく、エンドロックの発生を確実に防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。また、本発明の他の目的は、簡単な構成で、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段の両方のエンドロックを防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記スピンドルの回転に応じて前記スピンドルと異なる回転数で回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
前記スイッチレバーの突起部が前記コントロールプレートの前記カム溝の一方の側壁に沿って移動するように前記スイッチレバーを付勢する付勢部材と、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能な第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバーの作動によるエンドロックを防止することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサを更に備え、
前記スイッチレバーは、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部を備え、
前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記スイッチレバーが前記第2の位置に位置することで、前記爪部を前記加速度センサレバーに当接させて前記加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止することを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記スピンドルの回転に応じて前記スピンドルと異なる回転数で回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能であるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが離脱する第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除されるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバー及び前記加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、カム溝を有するコントロールプレートと、該カム溝内を移動可能に収容される突起部及びラッチリングの外歯と係脱可能な係合歯部が設けられたスイッチレバーと、備える。スイッチレバーは、コントロールプレートの回転によって突起部がカム溝内を移動することで、係合歯部とラッチリングの外歯とが係合可能な第1の位置と、係合歯部と外歯との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御され、ウェビングの巻き取り完了時、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバーの作動によるエンドロックを防止することができる。また、スイッチレバーは、突起部がコントロールプレートのカム溝の一方の側壁に沿って移動するように付勢部材によって付勢されているので、エンドロックを防止する機構が作動する切換えタイミングのばらつきを小さくすることができる。
【0015】
さらに、本発明のシートベルト用リトラクタによれば、スイッチレバーは、コントロールプレートのカム溝内を移動可能に収容される突起部と、ラッチリングの外歯と係脱可能な係合歯部と、加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部とを備える。スイッチレバーは、コントロールプレートの回転によって突起部がカム溝内を移動することで、係合歯部とラッチリングの外歯とが係合可能であるとともに、加速度センサレバーと爪部とが離脱する第1の位置と、係合歯部と外歯との係合が解除されるとともに、加速度センサレバーと爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバーは、ウェビングの巻き取り完了時、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー及び加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止することができる。これにより、簡単な構成で、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段の両方のエンドロックを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のシートベルト用リトラクタの分解斜視図である。
【
図2】ウェビングセンサレバーがステアリングホイールに組み付けられた状態を示す側面図である。
【
図3】一部を破断して示すベアリングプレートに回動自在に配設されたラッチリングの斜視図である。
【
図4】スピンドルに固定されたドライブギアによりギア列を介して回転駆動されるコントロールプレートの側面図である。
【
図5】(a)はリターンスプリングで付勢されたスイッチレバーの突起部がコントロールプレートのカム溝に嵌合する状態を示す側面図、(b)はスイッチレバーの突起部がカム溝の一方の側壁に沿って案内される状態を示す
図5(a)の拡大図である。
【
図6】(a)はスイッチレバーの側面図、(b)はスイッチレバーの斜視図である。
【
図7】車体加速度感知手段を構成する加速度センサレバーの斜視図である。
【
図8】(a)は、スイッチレバーの突起部がコントロールプレートの第1カム部内に位置する際の、車体加速度感知手段とウェビング加速度感知手段の状態を示す側面図であり、(b)は、スイッチレバーの係合歯部とラッチリングの外歯との係合状態を示す
図8(a)の要部拡大図である。
【
図9】(a)は、スイッチレバーの突起部がコントロールプレートの切換部内に位置する際の、車体加速度感知手段とウェビング加速度感知手段の状態を示す側面図であり、(b)は、スイッチレバーの係合歯部とラッチリングの外歯との係合が解除される途中の状態を示す
図9(a)の要部拡大図である。
【
図10】(a)は、スイッチレバーの突起部がコントロールプレートの第2カム部内に位置する際の、車体加速度感知手段とウェビング加速度感知手段の状態を示す側面図であり、(b)は、スイッチレバーの係合歯部とラッチリングの外歯との係合が解除された状態を示す
図10(a)の要部拡大図である。
【
図11】
図10(a)に示す、スイッチレバーの突起部がコントロールプレートの第2カム部内に位置して、スイッチレバーの係合歯部とラッチリングの外歯との係合が解除された状態で、ウェビングセンサレバー40が揺動した場合を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態のシートベルト用リトラクタは、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段とを有する緊急ロック機構と、自動ロック機構とを備える。
【0018】
図1に示すように、このシートベルト用リトラクタ1は、ウェビング(図示略)が巻装される金属製(例えば、アルミ合金製)のスピンドル10と、カバー12に収容されてスピンドル10を巻き取り方向に回転付勢するバネ式の巻取装置11と、スピンドル10を回転自在に支持する金属製のコ字状のフレーム13と、ロック部材としての金属製(例えば、鉄製)のロックドック20と、樹脂製のステアリングホイール30と、慣性体としての機能を併せ持つ樹脂製のウェビングセンサレバー40と、フレーム13に固定されるベアリングプレート60と、ベアリングプレート60に回動自在に配設されるラッチリング50と、自動ロック機構70と、スピンドル10の軸14に固定されるドライブギア81、第1アイドルギア82、第2アイドルギア83、及びコントロールプレート80とで構成されるギア列と、緊急ロック機構を作動状態と非作動状態とに切換えるスイッチレバー90と、スイッチレバー90を付勢する付勢手段としてのリターンスプリング98と、車体の加速度を感知する車体加速度感知手段としての加速度センサ100と、ベアリングプレート60を覆うように、フレーム13に固定されるカバー部材15と、を主に備えている。
【0019】
フレーム13は、スピンドル10の軸方向の中央部分を挟んで対向する左右側板13A、13Bを有し、一方の側板13Aの外側に緊急ロック機構及び自動ロック機構が配置され、他方の側板13Bの外側に巻取装置11が配置されている。スピンドル10の一端側の軸14は、ステアリングホイール30、ベアリングプレート60を貫通し、その先端にはドライブギア81が一体回転するように嵌着されている。
【0020】
フレーム13の側板13Aの円形開口の内周には、ロックドック20の爪22が係合可能な多数の内歯17が形成されている。ロックドック20は、スピンドル10の一方の端面と該端面に固着された金属製(例えば、鉄製)のセーフティプレート25との間に確保された空間に変位自在に収容され、オメガスプリング26によって爪22がフレーム13の内歯17から離れるロック解除方向に保持されている。また、ロックドック20は、ステアリングホイール30に形成されたカム孔31に挿入されるカムピン21を備える。
【0021】
ステアリングホイール30は、スピンドル10に相対回転可能に支持され、
図2に示すように、ロックドック20のカムピン21が係合するカム孔31と、ウェビングセンサレバー40の軸孔41に嵌合してウェビングセンサレバー40を揺動自在に支持する凸軸32と、外周面に形成された歯部34とを有している。
【0022】
カム孔31は、スピンドル10に対してステアリングホイール30が相対回転するときに、カムピン21を介してロックドック20の爪22を外方に押し出す。例えば、ウェビング引き出し時に、スピンドル10に対してステアリングホイール30が回転遅れを生じた場合に、スピンドル10とステアリングホイール30の相対回転により、ロックドック20をロック側へ作動させる。そして、外に飛び出させた爪22を、フレーム13の内歯17に噛み合わせることにより、スピンドル10をフレーム13の内歯17にロックさせ、ウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする。
【0023】
ウェビングセンサレバー40は、所定の慣性力を有するように従来のウェビングセンサレバーより比較的大きく形成されており、ラッチリング50の内歯52(
図3参照)に係合可能な爪42を備え、ステアリングホイール30の凸軸32に揺動自在に嵌合している。軸孔41に対して爪42と反対側の腕43とステアリングホイール30の突片33との間には、ウェビングセンサスプリング58が装着されて爪42を内方に引っ込める方向(ラッチリング50の内歯52から離間する方向)にウェビングセンサレバー40を回転付勢している。従って、通常時には、爪42がラッチリング50の内歯52と係合しない非作動位置に保持される。即ち、ステアリングホイール30、ウェビングセンサレバー40、ウェビングセンサスプリング58は、ウェビング加速度感知手段を構成する。
【0024】
これにより、乗員の急な移動によりウェビングが引き出され、ウェビングセンサレバー40が慣性力によって回動し、ウェビングセンサレバー40の爪42が外方に突き出されて、ラッチリング50の内歯52に噛合する。これにより、ウェビング加速度感知手段は、ステアリングホイール30のウェビング引き出し方向の回転を阻止する。
【0025】
図3に示すように、ラッチリング50は、外周面及び内周面にそれぞれ複数の外歯51及び内歯52が設けられたリング状に形成され、フレーム13に固定されるベアリングプレート60に回転自在に配設されている。
【0026】
図4に示すように、ベアリングプレート60には、軸部61、62、63、64及び65が突出して設けられている。軸部61には、第1アイドルギア82が回動自在に支持され、軸部62には、第2アイドルギア83が回動自在に支持され、軸部63には、コントロールプレート80が回動自在に支持されている。また、軸部64には、スイッチレバー90が揺動自在に支持されている。軸部65には、リターンスプリング98のコイル部98aが嵌合して位置決めされている。
【0027】
そして、ドライブギア81と第1アイドルギア82の大歯車が噛合し、第1アイドルギア82の小歯車と第2アイドルギア83の大歯車が噛合し、更に第2アイドルギア83の小歯車とコントロールプレート80とが噛合している。
【0028】
従って、スピンドル10の回転が、ドライブギア81から第1、第2アイドルギア82、83を介してコントロールプレート80に伝えられ、コントロールプレート80が、スピンドル10と連動して減速回転するようになっている。これらドライブギア81、アイドルギア82、83、コントロールプレート80よりなるギア列の減速比は、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にするときのスピンドル10の回転が、コントロールプレート80の1回転に変換されるように設定されている。
【0029】
自動ロック機構70は、所定のウェビング引き出し操作を行うことで作動して通常時下においてスピンドル10のウェビング引き出し方向への回転阻止を実現する。自動ロック機構70は、スピンドル10の回転が伝達されるドライブギア81と、ベアリングプレート60に揺動自在に支持されるALR用レバー71、及びALR用レバー71に回転可能に支持される2つのALR用ギア72,74を備える自動ロック機構組立体77と、ALR用レバー71の揺動に応じて、ステアリングホイール30と係脱するパウル76とを有する。
【0030】
ドライブギア81の側面には、扇状の第1のALR用突部81a(
図4参照)が設けられており、ALR用ギア72、74の側面には、第1のALR用突部81aと当接可能な第2のALR用突部73、第3のALR用突部75がそれぞれ設けられている。そして、所定のウェビング引き出し操作が行われると、第1のALR用突部81aと第2のALR用突部73が当接することで、ALR用レバー71が揺動し、パウル76をラチェットホイール30に係合させ、ロック状態とする。一方、所定のウェビング巻取り操作が行われると、第1のALR用突部81aと第3のALR用突部75が当接することで、ALR用レバー71が揺動し、パウル76がステアリングホイール30から離脱し、ロック解除となる。
【0031】
図5に示すように、コントロールプレート80の側面には、カム溝85が設けられている。カム溝85には、後述するスイッチレバー90の突起部92が収容され、スイッチレバー90を揺動制御する。カム溝85は、コントロールプレート80の軸孔87を中心とする円弧状に形成された第1カム部85aと、第1カム部85aより大きな半径で軸孔87を中心とする円弧状に形成された第2カム部85bと、第1カム部85aと第2カム部85bとを滑らかに接続する切換部85cと、を有する。
【0032】
第1カム部85aは、スイッチレバー90の突起部92が第1カム部85a内を移動するとき、スイッチレバー90の係合歯部93が、ラッチリング50の外歯51に係止する第1の位置となるように(
図5において時計方向回動位置)半径が設定されている。また、第2カム部85bは、スイッチレバー90の突起部92が第2カム部85b内を移動するとき、スイッチレバー90の係合歯部93が、ラッチリング50の外歯51から離間する第2の位置となるように半径が設定されている。切換部85cは、ウェビングがスピンドル10に巻き取られた格納状態と、無着座でバックルをラッチさせた状態との間で切換えが行われるように位相が設定されている。
【0033】
即ち、スイッチレバー90の突起部92が、切換部85cを通過して第1カム部85aから第2カム部85bに移動することにより、ウェビングが無着座でバックルをラッチされた状態からウェビング格納状態となる間に、スイッチレバー90は、係合歯部93と外歯51とが係止した状態(第1の位置)から、該係止が解除された状態(第2の位置)に移行する。また、その逆にも作動する。
【0034】
図5及び
図6に示すように、スイッチレバー90は、長手方向略中央部に設けられた孔部91と、孔部91に対して一方側において、コントロールプレート80側に突出する円柱状の突起部92と、コントロールプレート80と反対側に突出する略断面3角形状の係合歯部93と、先端部に設けられた爪部94とを備える。また、スイッチレバー90には、孔部91に対して他方側に、バネ受部95が形成されている。
【0035】
スイッチレバー90は、孔部91がベアリングプレート60の軸部64に嵌合して揺動自在に軸支されている。また、突起部92は、コントロールプレート80のカム溝85に収容され、コントロールプレート80の回転に伴ってカム溝85内を移動する。これにより、スイッチレバー90は、コントロールプレート80によって制御されて揺動する。
【0036】
図4及び
図5に示すように、リターンスプリング98は、コイル部98aと一対の脚部98b、98cとを備える捻りコイルバネであり、コイル部98aがベアリングプレート60の軸部65に嵌合して位置決めされ、一方の脚部98bがベアリングプレート60の突片66に支持され、他方の脚部98cがスイッチレバー90のバネ受部95に係止されている。これにより、スイッチレバー90は、リターンスプリング98の弾性力によって一方向に付勢されるので、突起部92はコントロールプレート80のカム溝85の一方の側壁86に当接しながら沿って摺接し(
図5(b)参照)、カム溝85と突起部92との隙間の有無と無関係に一方の側壁86により制御される。
【0037】
図1及び
図7に示すように、加速度センサ100は、ベアリングプレート60とカバー部材15との間に配置されるセンサホルダ101と、センサホルダ101内に格納され、水平方向の加速度に応じて変位する慣性体(ボール)102と、軸孔105に挿通される支持軸106により回動自在に配置され、ステアリングホイール30の外周面に形成された歯部34に対してその先端歯先104が接近離間する加速度センサレバー103と、を備える。
【0038】
加速度センサレバー103には、軸孔105と反対側に設けられた先端歯先104から横方向に延設された係止片107を有する。係止片107には、スイッチレバー90の爪部94が対向して配置されている。
【0039】
そして、車体加速度に応じてボール102が移動することにより、加速度センサレバー103が揺動して先端歯先104がステアリングホイール30の歯部34に係合して、ステアリングホイール30をロックする。
【0040】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクタの作用について説明する。
【0041】
図8(a)に示すように、シートベルト用リトラクタ1からウェビングが所定量引き出された状態では、スイッチレバー90は、突起部92がコントロールプレート80の第1カム部85aに収容された第1の位置にある。このとき、スイッチレバー90の係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係止して(
図8(b)参照)、ラッチリング50の回転が阻止されている。
また、スイッチレバー90の爪部94と加速度センサレバー103の係止片107は離間している。
【0042】
ここで車体に平行方向の加速度が作用すると、ボール102が移動することで加速度センサレバー103が支持軸106を中心として時計方向に回動し、先端歯先104がステアリングホイール30の歯部34に係合してステアリングホイール30の回転が停止する。スピンドル10が更に回転すると、スピンドル10とステアリングホイール30とが相対回転し、カムピン21がカム孔31に嵌合するロックドック20の爪22が外方に押し出され、フレーム13の内歯17に係合してウェビングの引き出しが阻止される。即ち、車体加速度感知手段が作動する。
【0043】
また、乗員の急な移動によりウェビングが引き出されてウェビングセンサレバー40が慣性力により揺動すると、爪42がラッチリング50の内歯52に係合してステアリングホイール30の回転が停止する。そして、スピンドル10が更に回転すると、スピンドル10とステアリングホイール30とが相対回転してロックドック20の爪22が外方に押し出され、フレーム13の内歯17に係合してウェビングの引き出しが阻止される。即ち、ウェビング加速度感知手段が作動する。
【0044】
また、
図8(a)の状態から、
図9(a)に示すように、ウェビングがスピンドル10に巻き取られると、スピンドル10の回転は第1、第2アイドルギア82、83を介してコントロールプレート80を反時計方向に回転させる。第1カム部85aに収容されている突起部92は、切換部85cを通り第2カム部85b方向に移動する。これにより、スイッチレバー90は、反時計方向に回動して爪部94が加速度センサレバー103の係止片107に接近するとともに、
図9(b)に示すように、係合歯部93がラッチリング50の外歯51から次第に離間する。係合歯部93が外歯51から離間するタイミングは、ウェビングが無着座でバックルをラッチされた状態からウェビング格納状態となる間に切り換わるように設定されている。
【0045】
ここで、
図5(b)に示すように、スイッチレバー90がコントロールプレート80のカム溝85に制御されて揺動する際、スイッチレバー90は、リターンスプリング98によって一方向に付勢されているので、突起部92がカム溝85の一方の側壁86に押圧されており、一方の側壁86に当接しながら沿って摺接する。従って、突起部92とカム溝85との間に隙間(ガタ)がある場合でも、スイッチレバー90は隙間の有無に関係なく一方の側壁86で案内される。従って、エンドロックを防止する機構が作動する切換のタイミングのばらつきが小さくなり、精度のよい切換えが行われる。
【0046】
そして、ウェビングの巻き取り完了時には、
図10(a)に示すように、スイッチレバー90の突起部92が、第2カム部85b内に収容され、スイッチレバー90は反時計方向に回動して第2の位置に移動する。爪部94が加速度センサレバー103の係止片107に当接して、スイッチレバー90が加速度センサレバー103の作動を阻止する。即ち、加速度センサ100に水平方向の加速度が作用しても加速度センサ100は作動せず、加速度センサレバー103の作動によるエンドロックを防止する。また、
図10(b)に示すように、スイッチレバー90の係合歯部93がラッチリング50の外歯51から完全に離間する。従って、ラッチリング50は、ベアリングプレート60に対して自由回転可能となる。
【0047】
そして、
図11に示すように、ウェビングセンサレバー40に慣性力が作用してウェビングセンサレバー40が時計方向に回転すると、ウェビングセンサレバー40の爪42がラッチリング50の内歯52に係止するが、ラッチリング50はベアリングプレート60に対して自由に回転可能となっているので、ステアリングホイール30の回転が阻止されることはない。従って、ウェビング加速度感知手段は作動せず、ウェビングの巻き取り完了時に、ウェビングセンサレバー40の作動によるエンドロックが防止される。
【0048】
このように、エンドロック防止機構の作動と非作動との切換えを、1つのスイッチレバー90を制御することで行うことができ、シートベルト用リトラクタ1の機構が簡素化される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、カム溝85を有するコントロールプレート80と、該カム溝85内を移動可能に収容される突起部92及びラッチリング50の外歯51と係脱可能な係合歯部93が設けられたスイッチレバー90と、を備える。スイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係合可能な第1の位置と、係合歯部93と外歯51との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御され、ウェビングの巻き取り完了時、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー40の作動によるエンドロックを防止することができる。また、スイッチレバー90は、リターンスプリング98によって付勢されているので、突起部92がコントロールプレート80のカム溝85の一方の側壁86に当接しながら沿って移動し、これにより、エンドロック防止機構が作動する切換えタイミングのばらつきを小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、コントロールプレート80のカム溝85内を移動可能に収容される突起部92及び加速度センサレバー103に当接離脱可能な爪部94を備えるスイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、加速度センサレバー103とスイッチレバー90の爪部94とが離脱する第1の位置と、加速度センサレバー103と爪部94とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバー90は、ウェビングの巻き取り完了時、第2の位置に位置するので、加速度センサレバー103と爪部94とが当接して加速度センサレバー103の作動によるエンドロックを防止することができる。また、スイッチレバー90は、突起部92がコントロールプレート80のカム溝85の一方の側壁86に当接しながら沿って移動するようにリターンスプリング98によって付勢されているので、エンドロック防止機構が作動する切換えタイミングのばらつきを小さくすることができる。
【0051】
また、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、スイッチレバー90は、コントロールプレート80のカム溝85内を移動可能に収容される突起部92と、ラッチリング50の外歯51と係脱可能な係合歯部93と、加速度センサレバー103に当接離脱可能な爪部94とを備える。スイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係合可能であるとともに、爪部94と加速度センサレバー103とが離脱する第1の位置と、係合歯部93と外歯51との係合が解除されるとともに、爪部94と加速度センサレバー103とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、ウェビングの巻き取り完了時、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー40及び加速度センサレバー103の作動によるエンドロックを確実に防止することができる。また、1つのスイッチレバー90を制御することにより、ウェビングセンサレバー40及び加速度センサレバー103の作動によるエンドロックを同時に防止することができる。これにより、簡単な構成で、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段の両方のエンドロックを防止することができる。
【0052】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。