(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三角形の各辺に相当する位置に設けられている3本のフレーム部材の端部同士を連結することにより構成される三角形構造体が、複数個、基礎から立体的に連設されることによりドーム状に形成されたドーム状構造部と、
前記ドーム状構造部の下部の連続する複数の前記三角形構造体から外方に向かって該三角形構造体の1個分を超える長さで延設される拡張構造部とを備えたドーム状建築物であって、
前記拡張構造部には、その上部を覆う天井と、前記基礎から立設する壁とが設けられ、
前記天井には、前記ドーム状構造部から延設される構造用面材が設けられ、
前記壁のうち少なくとも桁側壁には、前記三角形構造体が組み込まれていることを特徴とするドーム状建築物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係るドーム状建築物4は、ドーム状のドーム状構造部6と、このドーム状構造部6から外方に向かって延設される拡張構造部8とを有している。
図1、
図2及び
図3に示すように、第1の実施の形態に係るドーム状建築物4のドーム状構造部6には、周囲をドーム状(半球状)に覆うドーム壁520が設けられている。ドーム状構造部6の頂部には、ドーム壁520の頂上部分から立ち上がる五角筒状の立設壁420とこの立設壁420の頂部間を覆う屋根440とによりキューポラ400が設けられている。なお、本実施の形態に係るドーム状構造部6は、キューポラ400を有するものに限定されるものではなく、キューポラ400を有さないドーム状構造部6にも適用することができる。
前記ドーム壁520は、三角形の各辺に相当する位置にそれぞれ設けられている3本のフレーム部材50の端部同士を連結することにより構成される三角形構造体40が複数個、隙間なく立体的に連設されることによりドーム状に形成されている。
【0015】
キューポラ400の立設壁420は、五角形の縁から上方に向かって長方形状のものが5個、立設することにより全体として五角筒状に形成されている。なお、立設壁420が立ち上がる位置は、上述した位置に限定されるものではなく、その位置よりも又は下方側に変更してもよいものである。
キューポラ400の屋根440は、5個の三角形構造体40を隙間なく五角錐状に組み合わせたものである。
【0016】
前記ドーム状構造部6は、三角形構造体40を隙間なく連設することにより環状に形成された層構造部Lを5層、積み重ねた階層構造により形成されている。
前記層構造部Lは、最上部に位置する構造部であって同一の球に内接する5個の三角形構造体40を隙間なく五角錐状に組み合わせた形状の頂上部分としての第1構造部11を有している。この第1構造部11の頂上部分の上面には、五角筒状のキューポラ400が載置されたような状態で固定されている。
【0017】
なお、上述したものにドーム壁520の頂上部分は限定されるものではなく、キューポラ400の屋根440の下に何も設けず、ドーム壁520の頂上部分は、キューポラ400の部分だけ上方に向かって段差状に凹んだ状態としてもよい。またたとえば5個の三角形構造体40の構造部材であるフレーム部材50だけの骨組みだけが設けられてもよい。
そして、層構造部Lは、第1構造部11の下側に第1構造部11とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する15個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第2構造部12を有している。そして、層構造部Lは、第2構造部12の下側に第2構造部12とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する25個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第3構造部13を有している。そして、層構造部Lは第3構造部13の下側に第3構造部13とは隙間なく連設されるものであって同一の球に内接する30個の三角形構造体40を隙間なく環状に組み合わせた形状の第4構造部14を有している。そして、層構造部Lは、第4構造部14の下側に第4構造部14とは隙間なく連設されるものであって複数個の三角形構造体40を略環状に組み合わせた形状の第5構造部15を有している。この第5構造部15はコンクリートからなる基礎30(
図2参照)の上に固定されている。なお、三角形構造体40の個数は、限定されるものではない。第5構造部15に出入り口や大きな開口窓や当該三角形構造体40の室内を拡張するための拡張構造部8を設ける際、隣接する複数の三角形構造体40を設けずにそのような機能を有するものを形成している。本実施の形態では3個の三角形構造体40に相当する領域に拡張構造部8を設ける開口部330が形成されている(
図7(A)参照)。
【0018】
本実施の形態では、第2構造部12から第5構造部15までにおいて、同一階層の三角形構造体40は、下側に2つの頂点を有するとともに上側に1つの頂点が配置される順三角形構造体42と、下側に1つの頂点を有するとともに上側に2つの頂点が配置される逆三角形構造体41との2種類の三角形構造体40を有する。順三角形構造体42は、三角形の頂点のみで上層と接するものであり、逆三角形構造体41は、三角形の辺をもって上層と接するものである。すなわち、逆三角形構造体41は、いわゆる「逆三角形」となっている。そして、第2構造部12から第5構造部15までの同一階層の層構造部Lとして、順三角形構造体42と逆三角形構造体41とが円周上に交互に配置された交互層構造部20が形成されている(
図2参照)。そして、第1構造部11では、5個の順三角形構造体42によって形成され、その上に立設壁420及び屋根440からなるキューポラ400が載置されている。
【0019】
本実施の形態では、第1構造部11から第4構造部14までは半径Rの同一の球に内接する多数の三角形構造体40から構成されている。また、第5構造部15は同一の円柱に内接する多数の三角形構造体40から構成されている。なお、第5構造部15の順三角形構造体42は、
図1及び
図2に示すように、底辺の位置に相当するフレーム部材50は設けられてない。そこには、
図1及び
図2の一点鎖線で示される基礎30の上面が配置されている。
前記ドーム状構造部6は、フレーム部材50の端部同士を連結するとともに三角形構造体40の三角形の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けられている固定手段70としてのコネクタ71を備えている。
【0020】
そして、各三角形構造体40の各辺に相当する位置にそれぞれ設けたフレーム部材50と各三角形構造体40の各頂点に相当する位置にそれぞれ設けた固定手段70としてのコネクタ71とから、
図1に示すドーム状のトラス構造の骨格が構築されている。そして、このドーム状のトラス骨格がドーム状構造部6の構造躯体となる。
前記コネクタ71の材質は金属であり、フレーム部材50の材質は木質である。もちろん、コネクタ71及びフレーム部材50の材質はこれに限定されるものではなく、木質、金属、合成樹脂等の他の材質や、それらの組合せたものを採用することもできる。
前記第5構造部15の下端に設けられるコネクタ71をベースコネクタ72とする。このベースコネクタ72は、第5構造部15の下端の頂点に集まるフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。また、ベースコネクタ72は、2本のフレーム部材50の端部同士を連結するための部材として機能するとともに、トラス骨格を基礎30に接合するための部材としても機能する。
【0021】
前記第4構造部14と第5構造部15との境界線上に設けられるコネクタ71をビームコネクタ73とする。前記ビームコネクタ73は、第4構造部14と第5構造部15との境界線上の頂点に集まる6本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。
前記ベースコネクタ72及びビームコネクタ73以外のコネクタ71であって、5本のフレーム部材50の端部が集まる位置(5個の三角形構造体40の頂点が集まる位置)に設けられるコネクタ71を5アームコネクタ74とする。この5アームコネクタ74は、その位置に集まる5本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。
前記ベースコネクタ72及びビームコネクタ73以外のコネクタ71であって、6本のフレーム部材50の端部が集まる位置(6個の三角形構造体40の頂点が集まる位置)に設けられるコネクタ71を6アームコネクタ75とする。この6アームコネクタ75は、その位置に集まる6本のフレーム部材50の端部同士を連結するためのものである。また、屋根440の五角形の中心部分には、前記5アームコネクタ74が配置され、5個の三角形構造体40を形成する5本のフレーム部材50の端部が集まっている。
【0022】
図4に示すように、1つの三角形構造体40においては三角形の各辺に相当する位置にそれぞれフレーム部材50が配置されている。そして、そのフレーム部材50の端部同士がコネクタ71で固定されている(なお、
図4では、中央の三角形構造体40の上部のコネクタ71のみ記載し、他のコネクタ71の詳細図は省略している)。この
図4に示す三角形構造体40は、第3構造部13の三角形構造体40のうちの1つを示すものであって、三角形の頂点に相当する位置に配置されたコネクタ71には、6アームコネクタ75が形成されている。
前記6アームコネクタ75は、ハブ76と、補強平板部78と、アーム77とを有している。
前記ハブ76は、円筒状のものである。前記補強平板部78は、ハブ76の一方の開口を塞ぐように設けられた円板状のものである。前記アーム77は、フレーム部材50を接合するためのものであってハブ76の外周面から外方へ向けて突出する6枚の平板状のものからなる。
【0023】
前記アーム77は、6アームコネクタ75が配置される三角形の頂点に集まるフレーム部材50と同じ数だけ設けられている。6アームコネクタ75が配置される三角形の頂点には、6本のフレーム部材50が集まる。このため、アーム77は6枚設けられている。また、各アーム77は、各フレーム部材50と1対1に対応する。つまり、1枚のアーム77に1本のフレーム部材50が接合される。なお、本実施の形態では、1枚のアーム77に1本のフレーム部材50を接合しているが、後述するようにフレーム部材50を2枚組み合わせて使用するような場合には、1枚のアーム77に2本のフレーム部材50で1組となったものが接合される。
また、各アーム77は、その端部がハブ76の外周面と補強平板部78との双方に接合されている。これにより、フレーム部材50を1枚のアーム77で支持するのに十分な強度を発揮する。
【0024】
前記フレーム部材50は、三角形構造体40の各辺に相当する位置に配置されている。そして、このフレーム部材50は長尺方向に直角の断面形状が長方形状であって全体形状が直方体状の木質から形成されている。このフレーム部材50の端部は、前記コネクタ71のアーム77にボルト及びナット(図示せず)で固定されている。そして、三角形の各辺に相当する位置に設けられた3本のフレーム部材50が、コネクタ71により連結されることにより、三角形のトラス骨格となる三角形構造体40が形成されている。
【0025】
前記フレーム部材50は、本実施の形態では、1枚の長尺状のものをコネクタ71の1枚のアーム77に固定しているが、特に1枚のフレーム部材50に限定されるものではない。たとえば2枚の長尺状のフレーム部材50を1枚のアーム77に固定してもよい。かかる場合には、2枚の長尺状のフレーム部材50の端部で1枚のアーム77を挟み込むようにして、2枚のフレーム部材50の端部を1枚のアーム77の両面側に固定する。なお、固定方法はこれに限定されるものではない。
三角形構造体40の室外側に位置する面には、当該面を覆うシート状の室外側シート材95が貼付されている。この室外側シート材95は、湿気は透過するが水分は通さない透湿防水シートからなるものである。この室外側シート材95は、複数の三角形構造体40の室外側に跨るように貼付されている。
【0026】
前記三角形構造体40の室内側空間226には、フレーム部材50間に渡されるとともに室外側シート材95と後述する内装仕上げ材220との間に渡されて、フレーム部材50と室外側シート材95と内装仕上げ材220とを支持するブロッキング材140が形成されている。
前記ブロッキング材140は、三角形構造体40の3つのフレーム部材50のうち2つのフレーム部材50間に位置して、両者を連結するものである
前記ブロッキング材140は、具体的には、
図4の中央の三角形構造体40内部において、左右に渡されたコーナーブロッキング材162と、上下に渡された2本のスタッドブロッキング材170とがある。
【0027】
前記コーナーブロッキング材162は、
図4の中央の三角形構造体40の上部コーナー付近に位置して左右のフレーム部材50間に水平方向に渡されている。
前記スタッドブロッキング材170は、
図4の中央の三角形構造体40の左右に位置して上下のフレーム部材50間に鉛直方向に渡されている。
ブロッキング材140(コーナーブロッキング材162及びスタッドブロッキング材170)の端部と、フレーム部材50との接続は、所定間隔に配置した複数の木ねじにより強固に固定されている。
図4に示す三角形構造体40の中央には、底辺位置のフレーム部材50と、コーナーブロッキング材162とを連結するサブブロッキング材164が縦方向に設けられている。このサブブロッキング材164は、前記三角形構造体40の3つのフレーム部材50のうちコーナーブロッキング材162が連結されていない残りの1つのフレーム部材50(底辺位置のフレーム部材50)の中央と、コーナーブロッキング材162の中央との間を連結しているものである。
【0028】
各三角形構造体40には室外側シート材95の室外側に位置する面に下地材として固定される木質からなる胴縁(図示せず)が形成されている。この胴縁は、室外側シート材95の室外側に配置され、室外側シート材95を挟みこむようにして室内側のフレーム部材50や、ブロッキング材140や、サブブロッキング材164に固定されている。
各三角形構造体40には、その胴縁の室外側に位置する面に固定されるとともに室外側シート材95との間に胴縁を挟み込んだ状態で室外側シート材95を覆う屋外側面状体90が形成されている。この屋外側面状体90は木質からなる三角形の平板である。この三角形構造体40の内部には、胴縁を挟み込んだ状態で屋外側面状体90と室外側シート材95との間に内部空間100が形成されている。
【0029】
ここで、三角形構造体40には、フレーム部材50の屋外側を面として覆う外側層と、外側層の室内側を覆う内側層とが形成され、外側層と内側層との間には空気が自由に流れる通気層460が形成されている。本実施の形態では、外側層としての屋外側面状体90と、内側層としての室外側シート材95との間の内部空間100に通気層460が形成されているものである。
フレーム部材50を有する三角形構造体40の室内側には、防湿シート(図示せず)が貼付されることで防湿層が形成されている。防湿シートの室内側には、1つの三角形構造体40の室内側に位置する三角形の面を覆う内装仕上げ材(図示せず)が形成されている。この三角形構造体40の内部には、室外側シート材95と防湿シートとの間に室内側空間226が形成されている。この室内側空間226が、前記ブロッキング材140及びサブブロッキング材164により小空間に分割されている。なお、この小空間同士を連通させて小空間同士の通気を促すためにブロッキング材140及びサブブロッキング材164の表裏に貫通する複数の貫通孔を設けてもよい。
【0030】
図5に示すように、前記ブロッキング材140及びサブブロッキング材164は、縦方向、横方向又は斜め方向に配置されている。このブロッキング材140は、フレーム部材50間を連結するものである。ブロッキング材140には、コーナーブロッキング材162、スタッドブロッキング材170、横ブロッキング材150がある。サブブロッキング材164は、ブロッキング材140とフレーム部材50との間を連結するものである。このブロッキング材140及びサブブロッキング材164により三角形構造体40の室内側空間226は、複数個の空間に分割されている。
図5に示すように第1構造部11から第4構造部14までの三角形構造体40のブロッキング材140の配置と、第5構造部15の三角形構造体40のブロッキング材140の配置とは異なるように形成されている。
【0031】
第4構造部14から上の三角形構造体40のブロッキング材140は、所定の三角形構造体40の所定の頂点位置を中心として三角形構造体40を回転させたような配置となっている。
第5構造部15の三角形構造体40のブロッキング材140は、横方向に3本配置されている横ブロッキング材150からなる。さらに、第5構造部15の1つの三角形構造体40では、この横ブロッキング材150間の略中央で上下方向3箇所に配置された下地材としてのブロッキング補助材152が設けられている。なお、
図5及び
図6の三角形構造体40では、ブロッキング材140を記載していないものがあるが、これらはブロッキング材140の記載を省略しているものであって上述した記載と同様のブロッキング材140等が設けられているものである。
【0032】
なお、ブロッキング材140やサブブロッキング材164やブロッキング補助材152の個数や配置は上述したものに限定されるものではない。
図6に示すように、第5構造部15の三角形構造体40には、三角形構造体40の3つのフレーム部材50のうち左右2つのフレーム部材50を連結するブロッキング材140としての横ブロッキング材150が3個設けられている。
ここで、ブロッキング材140としての横ブロッキング材150の端部と、左右のフレーム部材50との接続は、所定間隔に配置した複数の木ねじにより強固に固定されている。なお、特に図示していないが、これらの木ねじは、横方向に渡した横ブロッキング材150の斜め上方向(順三角形構造体42のときは斜め下方向)からフレーム部材50の表面に垂直方向となるようにねじ込まれている。また、横ブロッキング材150の木ねじのねじ込み位置の表面には、段差状に加工して木ねじ頭部のすわりを安定させるため、フレーム部材50の固定面に平行となるように平らにする座繰り加工が施されている(図示せず)。なお、本実施の形態では、フレーム部材50は三角形構造体40の1辺に1枚のものを使用している。フレーム部材50を僅かな間隔を空けて1辺に2枚使用するような場合には、前記木ねじをねじ込む位置の前記間隔内に当該隙間を埋める木質からなる薄板を2枚のフレーム部材50間に挟ませると好適である。
この横ブロッキング材150も、第1構造部11から第4構造部14のブロッキング材140と同様に、フレーム部材50の構造計算上、座屈防止上有効な位置に配置されている。これにより、三角形構造体40を覆うために従来用いられた構造用面材を不要としている。
【0033】
ここで、フレーム部材50の構造計算上、座屈防止上有効な位置にブロッキング材140が配置されているとは、前記フレーム部材50が座屈するときの座屈長さを抑えることによってフレーム部材50に加わる荷重によって生じる座屈の発生を抑えることができるような位置にブロッキング材140が配置されていることを意味する。具体的には、たとえばフレーム部材50が弱軸回りに変形しようとするのを抑えて座屈を防止することができるような位置にブロッキング材140が配置されるものである。フレーム部材50がかかる方向に変形移動しようとするのをブロッキング材140が拘束することにより変形を抑えて座屈を防止することができるようにしているものである。
この左右のフレーム部材50の左右間にブロッキング材140が渡されていることにより、左右のフレーム部材50の間隔が一定に保たれる。さらに、この三角形構造体40の左右及び上下に隣接する三角形構造体40にも同様にブロッキング材140が設けられている(
図6中では隣接する三角形構造体40のブロッキング材140の記載は省略されているが同様のブロッキング材140が設けられている)。結果として、左右のフレーム部材50の長尺方向の中央付近において、断面形状が平板状(長方形状)のフレーム部材50がその弱軸回りに変形することが抑えられ、これらのフレーム部材50の座屈が防止されるものである。
【0034】
図7(A)に示すように、拡張構造部8を設ける前には、ドーム状構造部6の最下層の連続する複数個(具体的には3個)の三角形構造体40が無く、開口する開口部330が設けられている。
図7(B)に示すように、前記開口部330の縁から外方に向かって延設される拡張構造部8が設けられている。前記開口部330を介して、ドーム状構造部6の室内から拡張構造部8の室内に出入りすることができるように形成されているものである。なお、ドーム状構造部6は、三角形構造体40を通常通り隙間無く連続して設けて、1つの三角形構造体40の内部に開口部330を設けるようにしてもよい。また、ドーム状構造部6には、三角形構造体40を通常通り隙間なく連続して設けて、拡張構造部8に通じる開口部330を設けずに、拡張構造部8の壁に拡張構造部8の室内に室外から出入りする入り口を設けてもよい。これにより、拡張構造部8をドーム状構造部6とは独立した部屋(小屋等)として使用することもできる。
【0035】
図7(B)に示すように、拡張構造部8には、コンクリートの基礎30から立設する壁310が設けられている。この壁310には、桁側に設けた傾斜する2つの桁側壁312と、妻側に設けた台形状の1つの妻側壁314とがある。
前記桁側壁312には、ドーム状構造部6の三角形構造体40と略同様の構成を有する複数個の三角形構造体40が設けられている。桁側壁312の三角形構造体40の個数は特に限定されるものではない。
【0036】
前記妻側壁314には、ドーム状構造部6の三角形構造体40と略同様の構成を有する複数個の三角形構造体40が設けられている。妻側壁314の三角形構造体40の個数は特に限定されるものではない。なお、本実施の形態では、妻側壁314及び桁側壁312の両方に三角形構造体40を設けているが、特にこれに限定されるものではなく、両方に設けずに妻側壁314と桁側壁312とのうちのいずれか一方に三角形構造体40を設けてもよい。また、2つの桁側壁312のうちのいずれか一方にのみ三角形構造体40を設けるようにしてもよい。
前記拡張構造部8の上部には、2つの桁側壁312の上部間を覆う天井320が設けられている。この天井320は、ドーム状構造部6から延設される構造用面材である。この構造用面材としての天井320は、木質からなる合板により形成されているが、構造用面材としての機能を有するものであれば材質はこれに限定されるものではなく、他の材質、たとえば金属からなるようなものでもよい。
図7(C)に示すように、拡張構造部8の桁側壁312及び妻側壁314の内部に設ける三角形構造体40の個数を、
図7(B)と比較して少なくしてもよいものである。構造計算により、十分な強度を維持することができるような場合には、三角形構造体40の個数を減らすことができる。なお、特に図示していないが、ドーム状構造部6から延設された天井320としての構造用面材により拡張構造部8の剛性や強度が十分に確保することができるような場合には、桁側壁312及び妻側壁314に三角形構造体40を1個も設けないようにすることもできる。
図7(D)に示すように、拡張構造部8の妻側壁314には、天井660の角部から下方の基礎30に向かって鉛直方向に形成された補強用柱部材52を設けてもよい。この補強用柱部材52により、天井320の前端角部側が支持される。
ここで、妻側壁314及び桁側壁312の内部の三角形構造体40の配置パターンは、
図7に例示したものに限定されるものではなく、種々のものが可能である。さらに、上述した補強用柱部材52と三角形構造体40との両方を組み合わせて設けてもよい。
【0037】
図8(A)に示すように、本実施の形態に係る拡張構造部8の桁側壁312には、2個の順三角形構造体42と、1個の逆三角形構造体41とが設けられている。前記順三角形構造体42の左右のフレーム部材50間には、本数は異なるがドーム状構造部6の第5構造部15の三角形構造体40に設けられた横ブロッキング材150及びブロッキング補助材152が設けられている。
前記横ブロッキング材150は、左右のフレーム部材50間を連結するブロッキング材140としてドーム状構造部6の第5構造部15に設けられているものと同様の機能を有するものであり、合計5本設けられている。また、横ブロッキング材150の中央には縦方向に連結するブロッキング補助材152が設けられてあり、ドーム状構造部6の第5構造部15に設けられているものと同様の機能を有する。
なお、
図8(A)の拡張構造部8の向かって右側がドーム状構造部6に連結され、左側が外方に向かって延設されているものである。前記順三角形構造体42の頂点を結ぶ位置に桁側壁312の上部間を覆う天井320が設けられている。
【0038】
図8(B)に示すように、本実施の形態に係る拡張構造部8の妻側壁314には、2個の順三角形構造体42と、1個の逆三角形構造体41とが設けられている。前記順三角形構造体42の左右のフレーム部材50間には、両者を連結するブロッキング材140としての横ブロッキング材150が桁側壁312と同様に設けられている。また、ブロッキング補助材152も桁側壁312と同様に設けられている。前記逆三角形構造体41の略中央には、外方に向かって開口する窓340が設けられている。前記順三角形構造体42の頂点を結ぶ位置に天井320が設けられている。
【0039】
なお、本実施の形態では、桁側壁312及び妻側壁314の両方に三角形構造体40を設けているが、特にこれに限定されるものではなく、桁側壁312と妻側壁314とのいずれか一方の壁に設けるようにしてもよい。さらに、2つの桁側壁312のいずれか一方に設けるようにしてもよい。
(作用及び効果)
本実施の形態では、
図5及び
図8に示すように、ドーム状構造部6及び拡張構造部8の壁310において、前記フレーム部材50の構造計算上、座屈防止上有効な位置にブロッキング材140が配置されたことによって、前記フレーム部材50間に渡される構造用面材が不要となる。このブロッキング材140は下地材としても使用できる。これにより、ブロッキング材140に構造用面材と下地材との両方の機能を持たせることができ、部材数の減少や、部材の共通化を図ることができる。また、構造用面材が不要となることにより、構造用面材を取り付けるための手間も不要となり、組立作業も簡単にすることができる。結果として製造コストの低減化を図ることができる。
【0040】
サブブロッキング材164が、
図4に示すように、三角形構造体40の3つのフレーム部材50のうちコーナーブロッキング材162が連結されていない残りの1つのフレーム部材50と、コーナーブロッキング材162との間を連結していることにより、両者の間隔が変動することが抑えられて両者が拘束される。これにより、フレーム部材50のみならず、コーナーブロッキング材162の剛性も高めて、フレーム部材50とブロッキング材140とを組み合わせた状態で全体として三角形構造体40の剛性を高めることができる。
【0041】
拡張構造部8の天井320に、
図7(B)に示すように、ドーム状構造部6から延設される構造用面材が設けられている。この構造用面材は、壁310の頂部間に渡されている。これにより、拡張構造部8の一部を天井320の構造用面材を介してドーム状構造部6で支持することができる。また天井320に構造用面材を用いることで拡張構造部8の剛性をさらに高いものにすることができる。これにより、拡張構造部8も十分な剛性を有し、強度も十分なものとなる。
拡張構造部8の壁310の桁側壁312及び妻側壁314の一部には、
図8に示すように、三角形構造体40が組み込まれている。これにより、ドーム状構造部6と拡張構造部8との両方を三角形構造体40からなるトラス構造にすることができ、構造計算における構造的な力の流れを明確なものにすることができる。拡張構造部8を三角形構造体40からなるトラス構造にすることができるため、ドーム状構造部6に頼ることなく、拡張構造部8自体で地震等に対する耐震性を有するものにすることができる。これにより、拡張構造部8の外方に突出する長さも従来の耐力壁(構造用面材)を用いる場合よりも長くすることができる。
また、拡張構造部8の壁310にトラス構造を組み込んだことで、構造計算における解析が容易となり、拡張構造部8の長さの異なるものの設計を容易に行うことができる。これにより、拡張構造部8のバリエーションが豊富となり、ドーム状建築物4の間取りの自由度を向上させることができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図9(A)に示すように、本実施の形態では、拡張構造部8の桁側壁312を傾斜させずに鉛直方向に立設させたものである。これにより、拡張構造部8の上部の横幅を第1の実施の形態よりも幅広にすることができる。
なお、
図9(B)に示すように、桁側壁312の一方を傾斜させ、桁側壁312の他方を鉛直方向に立設させるようにしてもよい。
図9(C)に示すように、(A)と比較して、桁側壁312及び妻側壁314の内部の三角形構造体の個数を減らしてもよいものである。構造計算により、十分な強度を維持することができるような場合には、三角形構造体40の個数を減らすことができる。なお、特に図示していないが、ドーム状構造部6から延設された天井320としての構造用面材により拡張構造部8の剛性や強度が十分に確保することができるような場合には、本実施の形態でも桁側壁312及び妻側壁314に三角形構造体40を1個も設けないようにすることもできる。
図9(D)に示すように、拡張構造部8の妻側壁314には、(B)に示すような三角形構造体40を設けずに天井660の角部から下方の基礎30に向かって鉛直方向に形成された補強用柱部材52を設けてもよい。この補強用柱部材52により、天井320の前端角部側が支持される。
ここで、妻側壁314及び桁側壁312の内部の三角形構造体40の配置パターンは、
図9に例示したものに限定されるものではなく、種々のものが可能である。さらに、上述した補強用柱部材52と三角形構造体40との両方を設けてもよい。
【0043】
図10(A)(B)に示すように、拡張構造部8の桁側壁312を鉛直方向に立設させたことで、拡張構造部8の室内を直方体状の空間にすることができるとともに室内空間体積を第1の実施の形態よりも増加させることができる。これにより、拡張構造部8内において圧迫感の無い居住空間を設けることができる。その他の構成や作用及び効果は、第1の実施の形態と略同様のものである。