特許第5748758号(P5748758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748758
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】発光ダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20150625BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20150625BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L33/00 186
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-531358(P2012-531358)
(86)(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公表番号】特表2013-506980(P2013-506980A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2010064353
(87)【国際公開番号】WO2011039181
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年8月22日
(31)【優先権主張番号】102009047881.7
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】スタウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ドレクセル フィリップ
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−148348(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10151092(DE,A1)
【文献】 特表2009−527913(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/132204(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/042020(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205−21/31、21/365、21/469、
21/86、33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードの製造方法であって、
− シリコン表面(1a)を有するキャリア基板(1)を形成するステップと、
− 前記シリコン表面(1a)上に、成長方向(R)に積層体(100)を堆積させるステップと、
− 前記積層体(100)上に発光ダイオード構造(16)を堆積させるステップと、
を含んでおり、
− 前記積層体(100)が、窒化ガリウムを使用して形成されるGaN層(5)を含んでおり、
− 前記積層体(100)が、窒化珪素を使用して形成される第1のマスキング層(12)を含んでおり、
− 前記成長方向(R)において前記GaN層(5)の少なくとも一部分の後ろに、前記第1のマスキング層(12)が続いており、
前記第1のマスキング層(12)は、前記積層体(100)において少なくとも1つのGaN層を成長させた後に堆積され、
前記積層体(100)は、前記GaN層(5)と前記シリコン表面(1a)との間にマスキング層が存在せず
前記積層体(100)における前記GaN層(5)のうち前記シリコン表面(1a)に最も近い第1のGaN層(5a)は、擬似格子整合層でなる、
方法。
【請求項2】
− 前記第1のマスキング層(12)がGaN層の中に配置される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
− 前記第1のマスキング層(12)が2層のGaN層に直接隣接している、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
− 少なくとも2層のGaN層(5,8,11)が、前記成長方向(R)において前記第1のマスキング層(12)より上流に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
− 前記積層体(100)が少なくとも2層のGaN層(5,8,11)を含んでおり、
− 前記成長方向(R)においてGaN層(5,8,11)それぞれの後ろにAlN層(7,10,15)が続いている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
− 前記積層体(100)が少なくとも2層のGaN層(5,8,11)を含んでおり、
− 前記成長方向(R)においてGaN層(5,8,11)それぞれの後ろにAlGaN層(7,10,15)が続いている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
− 前記積層体(100)が少なくとも2層のGaN層(5,8,11)を含んでおり、
− 前記成長方向(R)においてGaN層(5,8,11)それぞれの後ろに、AlGaN層(7,10,15)もしくはAlN層(7,10,15)またはその両方が続いている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記AlGaN層(7,10,15)の少なくとも1層におけるGaの濃度が、少なくとも5%から最大で10%の範囲内である、
請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
− 前記積層体(100)が少なくとも2層のGaN層(5,8,11)を含んでおり、
− GaN層(5,8,11)それぞれの中にマスキング層が配置されている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
− 前記シリコン表面(1a)から、前記成長方向(R)における前記第1のマスキング層(12)までの間の前記積層体(100)に、AlGaN層が存在しない、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
− 前記積層体(100)にAlGaN層が存在しない、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のGaN層(5a)は、前記成長方向(R)においてバッファ層(3)のすぐ後ろに続いており、前記バッファ層(3)は、前記シリコン表面(1a)に設けられている、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記成長方向(R)における前記第1のGaN層(5a)のすぐ後ろには前記第1のマスキング層(12)が続いている、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
− 前記成長方向(R)において、前記第1のマスキング層(12)が、前記擬似格子整合GaN層(5a)とGaN層(8)との間に配置され、前記マスキング層(12)の厚さが、0.5nm〜2.5nmの範囲内である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
− 前記発光ダイオード構造(16)が前記積層体(100)から剥離される、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
核形成層(2)及びバッファ層(3)が前記シリコン表面(1a)と前記第1のGaN層(5a)との間に配置され、前記第1のGaN層(5a)の厚さが70nm〜130nmの範囲内である、
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光ダイオードの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、窒化ガリウムをベースとする層をシリコン基板上にエピタキシャル堆積させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/096405号
【特許文献2】米国特許第6,611,002号明細書
【特許文献3】米国特許第6,617,060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、大きな層厚および高い材料品質を有する、窒化ガリウムをベースとする層を、シリコン表面上にエピタキシャル堆積させる方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発光ダイオードの製造方法の少なくとも一実施形態によると、1つの方法ステップにおいて、シリコン表面を有するキャリア基板を形成する。この目的のために、キャリア基板は、例えばシリコンから構成すればよい。さらには、キャリア基板をSOI基板(シリコンオンインシュレータ基板)としてもよい。キャリア基板のシリコン表面は、例えば(111)シリコン表面である。
【0006】
キャリア基板は、例えば、少なくとも130W/mkの良好な熱伝導率であることを特徴とする。
【0007】
本方法の少なくとも一実施形態によると、1つの方法ステップにおいて、シリコン表面に積層体を堆積させる。一例として、シリコン表面に積層体をエピタキシャルに形成する。積層体は、シリコン表面の上に成長していくときに成長方向を有する。成長方向は、一例として、シリコン表面に垂直である、または、シリコン表面の垂線に対して7゜未満の小さい角度をなす。
【0008】
本方法の少なくとも一実施形態によると、1つの方法ステップにおいて、積層体の上に発光ダイオード構造を堆積させる、すなわち、成長方向に、例えば、シリコン表面、積層体、発光ダイオード構造が順に並ぶ。発光ダイオード構造は、例えば窒化ガリウムをベースとする。積層体は、例えば、少なくとも3μm(例:少なくとも5μm)の比較的大きい層厚と高い材料品質とを有する発光ダイオード構造を、シリコン表面上に成長させることを可能にする役割を果たす。
【0009】
本方法の少なくとも一実施形態によると、積層体は、窒化ガリウムを使用して形成されるGaN層を含んでいる。GaN層は、一例として、n型にドープされた窒化ガリウムからなる。
【0010】
この実施形態においては、積層体は、窒化珪素を使用して形成される(例えば窒化珪素からなる)マスキング層をさらに含んでいる。マスキング層の成長は、例えば、シリコン前駆体(例えばシランやジシラン)、または窒素前駆体(例えばアンモニアまたはジメチルヒドラジン)を含んだ有機シリコン化合物を、例えばエピタキシャル成長を行う成長室の中に同時に導入することによって行うことができる。成長面上で2種類の前駆体が反応して窒化珪素が形成される。
【0011】
この場合、マスキング層は、特許文献1に開示されているように具現化および形成することができる。記載されているマスキング層の具現化および形成に関して、この特許文献1は参照によって明示的に本出願に組み込まれている。
【0012】
この場合、マスキング層は、成長方向においてGaN層の少なくとも一部分の後ろに続いている。すなわち、本方法のこの実施形態によると、成長方向において最初のGaN層を成長させた後にマスキング層を堆積させる。この場合、マスキング層は、GaN層に直接隣接することができる。この場合、「GaN層の少なくとも一部分」とは、マスキング層をGaN層の中に配置することもできることを意味する。すなわち、GaN層の一部分を堆積させた後、マスキング層を堆積させ、次いでGaN層の残りを堆積させる。
【0013】
この場合、少なくとも最初のGaN層の堆積後にマスキング層を形成することは、その後の発光ダイオード構造の材料品質を改善するうえで特に有利であることが判明した。対照的に、最初のGaN層の堆積前にマスキング層を導入すると、積層体における圧縮歪みの蓄積が抑制されるものと考えられ、これによって発光ダイオード構造の材料品質が低下する。
【0014】
全体として、本明細書に記載した方法、すなわち積層体にマスキング層を遅い段階で導入することによって、その後に、比較的大きい層厚とともに特に高い材料品質を有する発光ダイオード構造を積層体上に形成することが可能になる。発光ダイオード構造の材料品質が改善される理由は、例えば、積層体にマスキング層を遅い段階で導入することが、積層体における圧縮歪みの蓄積にプラスに影響するためである。
【0015】
本方法の少なくとも一実施形態によると、マスキング層をGaN層の中に配置する。言い換えれば、この実施形態におけるマスキング層は、成長方向およびその反対方向の両方において、GaN層に直接隣接している。このGaN層は、発光ダイオード構造を成長させる前に堆積させるGaN層のうち、成長方向における最後のGaN層であることが好ましい。
【0016】
本方法の少なくとも一実施形態によると、成長方向においてマスキング層の上流に、少なくとも2層のGaN層を配置する。すなわち、マスキング層は、積層体の例えば3番目のGaN層の中に堆積させる。このようにすることでマスキング層が比較的遅い段階で積層体中に堆積され、したがって圧縮歪みの蓄積にマイナスに影響し得ないため、有利であることが判明した。
【0017】
本方法の少なくとも一実施形態によると、マスキング層は、完全に閉じていない(incompletely closed)層である。この場合、マスキング層に窓(windows)が形成されており、この窓において、マスキング層の両側に隣接しているGaN層は、マスキング層によって穿孔されていない。
【0018】
本方法の少なくとも一実施形態によると、積層体は、少なくとも2層のGaN層を含んでいる。GaN層それぞれには、成長方向にAlN層もしくはAlGaN層またはその両方が続いている。このことは、特に、積層体の中の、成長方向において最後のGaN層についてもあてはまり、したがって、発光ダイオード構造は、例えば、積層体の中の最後のAlN層または最後のAlGaN層のすぐ後ろに続けることができる。
【0019】
AlGaN層を使用する場合、この層のGaの割合は、例えば少なくとも5%から最大で10%の範囲内のように、小さいことが好ましい。
【0020】
本方法の少なくとも一実施形態によると、積層体は、少なくとも2層のGaN層を含んでおり、これら少なくとも2層のGaN層の各GaN層の中にマスキング層が配置されている。この場合、一例として、積層体の各GaN層の中にマスキング層を配置してもよい。
【0021】
マスキング層は、前述したマスキング層である。したがって、GaN層それぞれの中のマスキング層は、成長方向およびその反対方向においてGaN層(部分層)に隣接している。積層体の少なくとも2層のGaN層の間、または各GaN層の中にマスキング層を導入することは、積層体における圧縮歪みの蓄積に特にプラスに影響する。
【0022】
本方法の少なくとも一実施形態によると、シリコン表面から積層体の成長方向に見たとき、シリコン表面とそれより後の第1のマスキング層との間の積層体に、AlGaN層が存在しない。言い換えれば、積層体は、少なくとも最初のマスキング層より前の領域にAlGaN遷移層を含んでいない。
【0023】
例えば特許文献3に記載されている図とは異なり、積層体の少なくとも一部分についてAlGaN遷移層を省くことができることが判明した。AlGaN層は、特に、キャリア基板(特にシリコン表面)と、成長させるGaN層とで熱膨張係数が異なる結果として、積層体の冷却時に発生して蓄積する歪みを低減する目的で設けられる。しかしながら、積層体の冷却時、シリコン表面に対してGaN層が実質的に収縮する結果として、多数の同程度の転位が形成されるものと予測される。したがって、AlGaN層を省くことは有利であり得る。
【0024】
少なくとも一実施形態によると、積層体全体にわたり、AlGaN層が存在しない。すなわち、この実施形態においては、積層体全体においてAlGaN遷移層が配置されていない。
【0025】
本方法の少なくとも一実施形態によると、成長方向において、シリコン表面上に配置されるバッファ層のすぐ後ろにGaN層が続いており、このGaN層は、特に、擬似格子整合(pseudomorphic)GaN層である。擬似格子整合GaN層は、特に、下の層とは逆の歪みを発生させることを特徴とする。したがって、積層体の冷却時、擬似格子整合GaN層は、上に位置するさらなるGaN層の、シリコン表面に対する収縮を打ち消すことができる。
【0026】
この場合、擬似格子整合GaN層とは、特に、シリコン表面の結晶構造を維持しながら成長するGaN層であるものと理解されたい。この場合、特に、シリコン表面の格子定数を擬似格子整合GaN層に移すことも可能である。
【0027】
本方法の少なくとも一実施形態によると、成長方向において擬似格子整合GaN層とさらなるGaN層との間に、第1のマスキング層を配置する。マスキング層は、例えば、2層のGaN層に直接隣接させることができる。すなわち、マスキング層は、GaN層の中に配置され、この場合、GaN層のうち成長方向においてマスキング層の下に位置する部分が擬似格子整合層であり、GaN層のうち成長方向においてマスキング層の上に位置する部分が非擬似格子整合層である。
【0028】
この場合、有利に具現化されたマスキング層(好ましくはSiNマスキング層)と組み合わせて擬似格子整合GaN層を導入する効果として、マスキング層によって部分的に覆われている擬似格子整合GaN層の上に、次のGaN層が新たに成長し、この場合、下の層から伝搬する転位または新たに発生し得る転位を効果的に防止できることが判明した。
【0029】
この場合、マスキング層の厚さは、少なくとも0.5nmから最大で2.5nmの間、特に、少なくとも1nmから最大で2nmの範囲内であることが好ましい。この場合、マスキング層は、上述したように完全に閉じていない層として具現化されることが好ましい。マスキング層は例えば窓を有し、下の擬似格子整合GaN層を網状に覆っている。
【0030】
本方法の少なくとも一実施形態によると、発光ダイオード構造を形成した後、発光ダイオード構造を積層体から剥離する。この場合、発光ダイオード構造は、例えば基板レスのダイオードの形を使用できる。さらには、剥離する前に、発光ダイオード構造を、積層体とは反対側の面によってキャリアに貼り付けることが可能である。キャリアは、例えば、シリコンまたはゲルマニウムを含んでいる、またはこれらの材料の一方から構成できる。
【0031】
以下では、本明細書に記載した方法について、例示的な実施形態および関連する図面に基づいてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本明細書に記載した方法の説明に供するグラフ
図2】本明細書に記載した方法の説明に供する、エピタキシャルに形成される層構造の概略的な断面図
図3】本明細書に記載した方法の説明に供する、エピタキシャルに形成される層構造の概略的な断面図
図4】本明細書に記載した方法の説明に供する、エピタキシャルに形成される層構造の概略的な断面図
図5】本明細書に記載した方法の説明に供する、エピタキシャルに形成される層構造の概略的な断面図
図6】本明細書に記載した方法の説明に供するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面において、同じ要素、同じタイプの要素、または同じ機能の要素には、同じ参照符号を付してある。図面と、図面に示した要素のサイズの互いの関係は、正しい縮尺ではないものとみなされたい。むしろ、便宜上、または深く理解できるようにする目的で、個々の要素を誇張した大きさで示してある。
【0034】
図1は、(シリコン表面の上に堆積された)積層体の層および発光ダイオード構造の曲率Kを、成長時間T(単位:秒)に対してプロットしたグラフを示している。この場合、成長方向Rは時間プロファイルに対応する。図1は2本の曲線を示しており、曲線Aは、窒化珪素を使用して形成されるマスキング層を、積層体100の最初のGaN層より前に成長させる例示的な実施形態に関連する。
【0035】
図2における概略的な断面図は、そのような1つの層構造を示している。成長方向Rにおいて、シリコン表面1aを有するキャリア基板1より後ろにマスキング層12が続いており、マスキング層12の後ろには、積層体100の最初のGaN層5が続いている。積層体100は、全体として3層のGaN層(GaN層5,8,11)を備えている。
【0036】
曲線Bは、積層体100の第3のGaN層11にマスキング層を配置する例示的な実施形態に関連する。この実施形態は、例えば図3に概略的な断面図として図示してある。
【0037】
図1から明らかであるように、ケースBにおける曲率は、特に発光ダイオード構造16の領域において、ケースAの場合よりも大きい。したがって、マスキング層12を時間的に後から積層体100に導入することによって、成長させる層の圧縮歪みが大きくなる。
【0038】
ケースBの場合の一連の層は、例えば次のとおりである(図3の概略的な断面図を参照)。
【0039】
層構造100はキャリア基板1を備えており、このキャリア基板1は、例えばシリコンからなり、シリコン表面(例えば(111)面1a)を有する。
【0040】
シリコン表面の上に、積層体100の以下の層を、成長方向Rに(例えば直接的に)垂直に重ねて堆積させる。
− 窒化アルミニウムからなる核形成層(nucleation layer)2。
− 窒化アルミニウムからなるバッファ層3。この層は、核形成層2よりも高い成長温度(例えば少なくとも1000℃)で堆積させる。
− AlGaN層4。この層内では、アルミニウム濃度が成長方向Rに最大95%から少なくとも15%に段階的に減少する。
− 最初のGaN層5。
− AlN層またはAlGaN層7。この層は、約850℃の低い成長温度で成長させることができる。
− 第2のGaN層8。
− さらなるAlN層またはAlGaN層10。この層は約850℃で成長させることができる。
− 第3のGaN層11。この層の中にマスキング層12が配置される。
− AlN層またはAlGaN層15。
【0041】
キャリア基板1とは反対側の、AlN層またはAlGaN層15の面に、発光ダイオード構造16を配置する。この発光ダイオード構造は、例えば多重量子井戸構造を備えており、GaNをベースとする。
【0042】
図2は、曲線Aに対応する層構造を示している。
【0043】
本明細書に記載した方法のさらなる例示的な実施形態について、図4を参照しながらさらに詳しく説明する。図4に断面図として概略的に示した一連の層は、本方法によって製造される。
【0044】
図3に関連して説明した一連の層とは異なり、この例示的な実施形態における積層体100は、GaN層5,8,11それぞれの間にマスキング層12を備えており、これらのマスキング層は、窒化珪素を使用して形成されており、例えば窒化珪素からなる。この場合、マスキング層12それぞれは、成長方向Rに測定したときの厚さとして、少なくとも0.35nm、最大で0.65nmを有し得る。
【0045】
積層体100のGaN層それぞれにマスキング層12を導入することによって、キャリア基板1とは反対側の積層体100の面に特に大きい圧縮歪みが蓄積し、これによって、成長方向Rに測定したときの厚さとして最大で8μmを有する発光ダイオード構造16を、構造にクラックが発生することなく成長させることができる。
【0046】
本明細書に記載した方法のさらなる例示的な実施形態について、図5を参照しながらさらに詳しく説明する。この実施形態における積層体100には、例えば図2の例示的な実施形態とは異なり、AlGaN遷移層が存在しない。成長方向における積層体100の層構造は、例えば以下のようにすることができる。
− シリコン表面1aを有するキャリア基板1。
− 核形成層2およびバッファ層3。これらの層それぞれは、例えば窒化アルミニウムからなり、合わせて約200nmの厚さとする。
− GaN層。この層は擬似格子整合的に成長させ、約100nmの厚さを有する。
− 第1のマスキング層12。この層は例えば窒化珪素を使用して形成し、1nm〜2nmの範囲内の厚さを有する。
− さらなるGaN層8。この層は約700nmの厚さを有する。
− 第1のAlN層10。この層は例えば約850℃の温度で成長させることができる。
− 第3のGaN層11。この層は例えば約700nmの厚さを有する。
− さらなるAlN層。この層は約850℃の低い成長温度で成長させることができる。
【0047】
積層体100の後ろに、例えば4μm〜8μmの範囲内の厚さを有する発光ダイオード構造16が続いている。
【0048】
図5の例示的な実施形態は、特に、バッファ層3と第1のマスキング層12との間のAlGaN遷移層が省かれていることを特徴とする。
【0049】
図6は、このAlGaN遷移層4を省く効果をグラフとして示している。この点において、図6は、さまざまな反射面における、X線ロッキングカーブ(x-ray rocking curves)の半値全幅を示している。
【0050】
図6における値Aは、AlGaN層4を含んでいる基準構造(例えば図2に示した)に関連する。値Bは、AlGaN遷移層が省かれた積層体100(図5に示した)に関連する。
【0051】
図6では、特に、反射面102および201において、X線ロッキングカーブの半値全幅値が小さくなっている。このことは、縁部の転位欠陥密度が減少することを明らかに示している。これによって、発光ダイオード構造16の活性層(放射を生成するように設計されている)における、より高い内部量子効率を予測することができる。さらには、このような積層体100は、より簡単に、したがってより高いコスト効率で、製造することができる。
【0052】
図2図3図4においてと、図5に関する説明において、各層の例示的な厚さまたは厚さの範囲を示した。この場合、厚さ、または示した厚さ範囲の両端値は、示した値を中心として±30%の範囲内、好ましくは±20%の範囲内、特に好ましくは±10%の範囲内で異なる値をとることができる。
【0053】
本特許出願は、独国特許出願第102009047881.7号の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み込まれている。
【0054】
ここまで、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せを包含しており、特に、請求項における特徴の任意の組合せを含んでいる。これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合であっても、本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6