(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748780
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ストリップ及び/又はシートを連続的に溶接するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20150625BHJP
B23K 26/06 20140101ALI20150625BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20150625BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20150625BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/06
B23K26/00 N
B23K26/04
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-552338(P2012-552338)
(86)(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公表番号】特表2013-519526(P2013-519526A)
(43)【公表日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2011051426
(87)【国際公開番号】WO2011098377
(87)【国際公開日】20110818
【審査請求日】2013年11月26日
(31)【優先権主張番号】102010007573.6
(32)【優先日】2010年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512194330
【氏名又は名称】ウイスコ レーザーテクニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WISCO Lasertechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハイト アルベル
【審査官】
大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−057992(JP,A)
【文献】
特開昭62−104689(JP,A)
【文献】
特開昭63−090382(JP,A)
【文献】
特開昭57−160583(JP,A)
【文献】
特開昭61−052997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)と、溶接すべきストリップ又はシートの両側に、それらの進行方向に水平に対で配置され、かつ前記ストリップ又はシートの接合部(24)の領域に間隙(13)を形成するテンションローラ(5.1、5.2、6)とを含んでなる、当接部へ案内される前記ストリップ又はシート(3、4)をそれらの隣接縁で連続的に溶接するための装置であって、前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第1溶接ヘッド(19)から発するエネルギービーム(20)が前記間隙(13)を通って、溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突し、前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第2溶接ヘッド(25)は前記ストリップ又はシート(3、4)の反対側に配置され、この場所で、前記第2溶接ヘッド(25)のエネルギービーム(28)が前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突する装置において、
前記少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)は、前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のエネルギービーム(20、28)の衝突点(26、27)が、第1エネルギービーム(20)に面するテンションローラ(6)の外径の少なくとも半分の寸法だけ互いに離れて間隔が空くように前記ストリップ又はシート(3、4)の進行方向に互いにずらして配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)は、前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のそれらのエネルギービーム(20、28)の衝突点(26、27)が15cm〜200cmの範囲内の量だけ互いに離れて間隔が空くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ストリップ又はシート(3、4)の下側で係合するテンションローラ(6)は、スポーク車輪構造として構成され、かつ互いに軸方向に間隔を空けて配置されたローラマントル(14、15)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記溶接すべきストリップ又はシート(3、4)を運ぶためのドライブローラ(39)を備えたローラ支持体が、前記テンションローラ(5、6)の次に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ローラ支持体は可動に取り付けられ、かつ少なくとも1つのドライブを備え、このドライブによって前記テンションローラ(5、6)の回転軸に平行に前記ローラ支持体を動かせることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサが、前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁の位置を検出するための制御手段に連結され、この制御手段は、前記少なくとも1つのセンサによって検出されたストリップ縁又は縦縁の位置に応じて前記ローラ支持体の少なくとも1つのドライブを制御するか、又は前記制御手段は前記レーザビーム(28)を制御することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第1溶接ヘッド(19)は、前記ストリップ又はシート(3、4)の両側に配置された前記テンションローラの1つ(5)に設けられ、かつ前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第2溶接ヘッド(25)は、前記ストリップ又はシート(3、4)の進行方向の次に来るテンションローラ(30)に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)と、溶接すべきストリップ又はシートの両側に、それらの進行方向に水平に対で配置され、かつ前記ストリップ又はシートの接合部(24)の領域に間隙(13)を形成するテンションローラ(5.1、5.2、6)とを用いて、当接部へ案内される前記ストリップ又はシート(3、4)をそれらの隣接縁で連続的に溶接する方法であって、前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第1溶接ヘッド(19)から発するエネルギービーム(20)が前記間隙(13)を通って、溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突し、前記少なくとも2つの溶接ヘッドの第2溶接ヘッド(25)は前記ストリップ又はシート(3、4)の反対側に配置され、この場所で、前記第2溶接ヘッド(25)のエネルギービーム(28)が前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突する方法において、
前記少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)は、前記溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のエネルギービーム(20、28)の衝突点(26、27)が、第1エネルギービーム(20)に面するテンションローラ(6)の外径の少なくとも半分の寸法だけ互いに離れて間隔が空くように前記ストリップ又はシート(3、4)の進行方向に互いにずらして配置され、かつ前記少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)のエネルギービーム出力は、それぞれのエネルギービームによって生成される溶接プール侵入深さが、前記溶接すべきストリップ又はシート(3、4)の部分厚を超えて伸長しないか、或いは異なる厚さのストリップ又はシート(3、4)の場合は、前記溶接すべきストリップ又はシートの薄い方(4)の部分厚を超えて伸長しないように調整されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記溶接ヘッド(19、25)のエネルギービーム出力は、第2溶接ヘッド(25)によって生成される溶接プール領域(41)が、第1溶接ヘッド(19)によって生成される溶接シーム領域(40)中に侵入するように調整されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2つの溶接ヘッド(19、25)は、前記溶接すべきストリップ又はシート(3、4)の材料、厚さ及び/又は供給速度に応じて異なるエネルギービーム出力で操作され、その結果、前記溶接すべきストリップ又はシート(3、4)の両側に異なる侵入深さの溶接プール領域(40、41)が生成されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1溶接ヘッド(19)及び少なくとも1つの第2溶接ヘッド(25)を用いて、それぞれのエネルギービームによって生成される溶接プール侵入深さの少なくとも10%だけ重なる溶接プール侵入深さを生じさせることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1溶接ヘッド(19)及び少なくとも1つの第2溶接ヘッド(25)を用いて、重なる溶接プール侵入深さを生じさせ、前記エネルギービームの両衝突点(26、27)で同一パワーが入力されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの溶接ヘッド、特にレーザ溶接ヘッドと、溶接すべきストリップ又はシートの両側に、それらの進行方向に水平に対で配置され、かつストリップ又はシートの接合部の領域に間隙を形成するテンションローラとを用いて、当接部へ案内されるストリップ又はシートをそれらの隣接縁で連続的に溶接するための装置及び方法であって、少なくとも2つの溶接ヘッドの第1溶接ヘッドから発するエネルギービームが間隙を通って溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突し、少なくとも2つの溶接ヘッドの第2溶接ヘッドはストリップ又はシートの反対側に配置され、この場所で第2溶接ヘッドのエネルギービームが、溶接すべきストリップ縁又は縦縁に衝突する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの装置は特許文献1から知られている。この装置は少なくとも1つのレーザビームで作動する。そのテンションローラは、中空車軸と、その上に取り付けられ、互いに軸方向に距離を置いて配置されているローラマントルとから成り、各レーザビーム溶接ヘッドは、少なくとも1つのテンションローラの中空車軸内部に配置されている。ローラマントル間の間隙と中空車軸内の開口をレーザビームの通路として使用する。特許文献1には、通常2つの対向するテンションローラの1つに単一の溶接ヘッドを設ければ十分であると述べられている。しかし、特に厚いシート又はストリップの溶接については、この目的のために必要なエネルギーに関して、ストリップ又はシートの両側に配置された各テンションローラに少なくとも1つの溶接ヘッドを設けること並びに/或いはストリップの片側に配置された1つのテンションローラにストリップの進行方向に互いにずらして置かれた複数の溶接ヘッドを配置することもそこでは有利な構成として提案されている。
【0003】
さらに、特許文献2には、金属コンポーネントを溶接する方法が記載されており、この方法では、少なくとも1つのそれぞれの溶接ビーム、特に溶接シーム断面の実質的に全体にわたって熱伝導モードのレーザビームを用いて、溶接シーム領域において両側で金属コンポーネントを融合させ、金属コンポーネントと溶接ビームとの間で相対運動が起こり、金属コンポーネントの反対側に作用する溶接ビームの溶接プール領域は、それらが溶接シーム方向の溶接ビームの位置の対応する相対的配置によって少なくとも部分的に重なるように生成される。
【0004】
厚さが0.6mm〜3.0mmの範囲の塗装車体シートを、シートの上側に作用するレーザビームによって溶接すると、特にレーザ溶接ヘッドから遠いシートの側に相当量のほこりが生じる。このほこり粒子は高い原動力で下方へ吹き飛ばされる。特許文献1によれば現存する溶接設備では、このほこりは水冷ビームトラップ又は吸引手段で収集される。しかしながら、実際には、取り残されるほこりもあるので、蓄積したほこりを除去するために時々手動清浄作業が必要である。
【0005】
特許文献1による設備でのシートの連続溶接におけるさらなる問題は、溶接すべきシートが間隙を有することである。間隙幅は、例えば、約0.2mmまでである。間隙は非常に狭いが、溶接中に比較的大きい割合のレーザ放射線が間隙を通過する可能性がある。従って、溶接中に反対の第2溶接ヘッドは一定のレーザビーム照射にさらされるので、適切な方法で保護しなければならないだろう。この問題は、生産プラント内では、反応時間が制御されるためシートの最初と最後では正確にレーザ放射線を活性化及び不活化することができず、かつシート及び溶接機械では耐えられないという事実によって悪化する。これは、溶接手順の開始と終了のいずれの場合もおそらく、完全レーザパワーが、溶接すべきシートを通り越して下方へ放たれることを意味する。従って、特許文献1の連続溶接設備で2つの溶接点又はレーザ溶接ヘッドの対向配置を実現するのは技術的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第3723611(C2)号明細書(DE 37 23 611 C2)
【特許文献2】独国特許出願公告第10131883(B4)号明細書(DE 101 31 883 B4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、隣接するように案内されるストリップを連続的に溶接するための装置及び方法であって、薄いストリップ又はシートの場合でさえ、均一かつ比較的滑らかな溶接シームの生成を可能にし、かつこのタイプの従来の溶接設備で達成されるより有意に高い溶接速度でこれを可能にする装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する装置及び請求項8の特徴を有する方法によって達成される。
【0009】
本発明の装置は、溶接すべきストリップ又はシートの両側に、ストリップ又はシートの進行方向に互いにずらして配置されている少なくとも2つの溶接ヘッドを含み、その結果、溶接すべきストリップ縁又は縦縁上の溶接ビーム(エネルギービーム)の衝突点は、第1エネルギービームに面するテンションローラの外径の少なくとも半分の寸法だけ間隔が空いている。
【0010】
このように、両側の溶接部位の間隔は、少なくとも2つの溶接ヘッドの第2溶接ヘッドが第1溶接ヘッド周囲のテンションローラ又は上記テンションローラの反対のテンションローラに配置されないように十分大きいと計算される。
【0011】
従って、本発明の方法は、溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のエネルギービームの衝突点が、第1エネルギービームに面するテンションローラの外径の少なくとも半分の寸法だけ間隔が空くように、少なくとも2つの溶接ヘッドがストリップ又はシートの進行方向に互いにずらして配置されること、並びに少なくとも2つの溶接ヘッドのエネルギービーム出力は、それぞれのエネルギービームによって生成される溶接プールの侵入深さが、溶接すべきストリップ又はシートの部分厚を超えて伸長しないか、或いは異なる厚さのストリップ又はシートの場合は、溶接すべきストリップ又はシートの薄い方の部分厚を超えて伸長しないように調整されることを特徴とする。
【0012】
本発明の装置及び対応する逐次溶接方法は、接合部へ案内されるストリップ又はシートを隣接縁で高い溶接速度にて連続的に溶接することを可能にする。この点で、薄いストリップ又はシートの場合でさえ、均一かつ比較的滑らかな溶接シームを作り出すことができる。約0.8mm及び1.5mmの厚さを有するスチールストリップに関する対応溶接試験では、同一のレーザビーム出力を用いて、従来の片側だけの方法に比べて、これらの速度のほぼ2倍までさえレーザ速度を高め、15m/分を超える速度を達成することができた。このようにして作り出された溶接シームは均一かつ滑らかな表面を有した。
【0013】
第1エネルギービームに面するテンションローラの外径の少なくとも半分の寸法に相当する間隔の本発明の溶接部位の配置のさらなる利点は、この空間的分離のため、2つの別々の溶接プロセスが実際に起こり、かつ1つの点(1つの領域)で2つのプロセスが重ならないことである。結果として、これは実質的にプロセスパラメータの調整及び最適化を容易にする。
【0014】
本発明の装置のさらなる構成は、前記装置の溶接ヘッドが、溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のそれらのエネルギービームの衝突点が15cm〜200cmの範囲内、好ましくは50cm〜120cmの範囲内の量だけ互いに離れて間隔が空くように配置されることを条件とする。
【0015】
本発明の装置のさらなる有利な構成は、ストリップ又はシートの下側で係合するテンションローラが、例えば、スポーク車輪構造として構成され、かつ互いに軸方向に間隔を空けて配置されるローラマントルを有することを特徴とする。異なる材料特性及び/又は厚さを有する金属ストリップのテイラードブランク又は対応ストリップを溶接するときは、いわゆる垂直線形ミスアラインメントに関して非常に高度の正確さが望ましい。特許文献1の設備での連続溶接中には、特に下側ローラ(ベースローラ)はかなりの熱負荷を受ける。スポーク車輪としてテンションローラを構成すると、実質的にテンションローラの寸法安定性を改善するので、熱負荷はテンションローラの歪みをもたらさず、かつその結果として線形ミスアラインメントに関して容認することとはならない。テンションローラの他の構成も可能である。
【0016】
本発明の装置のさらなる有利な構成は、溶接すべきストリップ又はシートを運ぶためのドライバローラを有するローラ支持体がテンションローラの次に配置されることを条件とする。この構成は、溶接ヘッドに対するストリップ又はシートの供給の非常に正確な制御を可能にする。これに関連して、本発明はさらに、ローラ支持体は可動に取り付けられ、かつ少なくとも1つのドライブを備え、このドライブによってローラ支持体をテンションローラの回転軸に平行に動かせることを条件とする。これは、溶接すべきストリップ縁又は縦縁の位置をテンションローラ及びエネルギービームの軸に対して調整できるようにする。可動ローラ支持体と関連するドライブの対応する制御によって調整を行うことができる。この構成の有利な製品は、溶接すべきストリップ縁又は縦縁の位置を検出するための、制御手段に連結されたセンサを備える。この制御手段は、センサによって検出された、ストリップ縁又は縦縁の位置に応じてローラ支持体のドライブを制御する。この方策は、溶接すべきストリップ縁又は縦縁の位置をエネルギービームの軸に対して自動調整できるようにする。
【0017】
これとは別に、例えば、駆動ピンを有するチェーンを用いて、溶接すべきストリップ又はシートを運ぶこともできる。さらに、本発明の装置では、溶接すべきストリップ又はシートを、クランプ手段又はテンション手段によってエネルギービームの衝突点へ輸送するコンベヤを使用することもできる。
【0018】
本発明の溶接方法のさらなる有利な構成は、少なくとも2つの溶接ヘッドを、溶接すべきストリップ又はシートの材料、厚さ及び/又は供給速度に応じて異なるエネルギービーム出力で操作し、それによって、溶接すべきストリップ又はシートの両側に異なる侵入深さの溶接プール領域を生成することである。例えば、塗装金属シートを溶接するときは、溶接粒子(ほこりの粒子)が大部分吹き飛ばされるのを防ぐように、エネルギービーム出力又は溶接プール領域の侵入深さを選択することができる。この点において、少なくとも2つのエネルギービーム(レーザビーム)の第1エネルギービームによって十分に強い溶接が既に引き起こされ、引き続き、望ましくない垂直線形ミスアラインメントを防止するように、特にエネルギービーム出力又は溶接プール領域の侵入深さを選択することができる。
【0019】
これに関連して、本発明の方法は、特に、第1溶接ヘッド及び少なくとも1つの第2溶接ヘッドを用いて、
それぞれのエネルギービームによって生成される溶接プール侵入深さの少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも20%だけ重なる溶接プール侵入深さを生じさせ、好ましくはエネルギービームの両衝突点で同一エネルギーが入力されることを条件とする。溶接すべきストリップ若しくはシートの厚さ及び/又は材料品質によっては、本発明の方法のこの構成の結果として、溶接速度をほとんど2倍にすることができる。
【0020】
以下、複数の実施形態を示す図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1テンションローラステーションと、ストリップの進行方向の次に来る第2テンションローラステーションとを含んでなる本発明の溶接装置の側面図である。
【
図2】上側テンションローラがレーザ溶接手段を備えている場合の
図1の溶接装置の第1テンションローラステーションの縦断面図である。
【
図3】下側テンションローラが第2レーザ溶接手段を備えている場合の
図1の溶接装置の第2テンションローラステーションの縦断面図である。
【
図4】上から行なわれた第1溶接で2つのストリップ又はシートの隣接縁で合わせて溶接されたそれらの部分縦断面図である。
【
図5】下から行なわれた第2溶接によって溶接された
図4のストリップ又はシートの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す装置(設備)は、ローラコンベヤで形成された案内手段1、2を含み、これによって、合わせて溶接する予定の2つのシート又はストリップ3、4は、それらが2つのテンションローラ5、6の間の領域内でそれらの相互に面する縁と隣接するように一緒に鋭角に案内される。上側テンションローラ5は、機械構台8上にロッカ7によって枢動可能に取り付けられ、ひいては下側テンションローラ6に対して垂直方向に調整できるように取り付けられている。また機械構台8に取り付けられている油圧操作可能な駆動シリンダ9を用いてテンションローラ5の高さが調整される。
【0023】
上側テンションローラ5は、ロッカ7に自由に回転できるように取り付けられ、一方、ベアリングブロック10に取り付けらた下側テンションローラ6は、好ましくは、図示しないドライブによって駆動される。ロッカ7は、互いに独立して旋回できる2つのアームを有し、それぞれテンションローラ5の半分5.1、5.2を支持する(
図2参照)。これは、異なる厚さのシート又はストリップ3、4の調整を可能にする。
【0024】
上側テンションローラ5.1、5.2はそれぞれ中空車軸(図示せず)を有し、その上のボールベアリングにローラマントル11、12が取り付けられている。ローラマントル11、12は、互いに軸方向に間隔を空けて配置され、それらの間に間隙13を形成している。
【0025】
上側中空車軸は、間隙13の領域内で分割されて対応する間隙を形成し、一方、下側テンションローラ(ベースローラ)6は、スポーク車輪として構成され、互いに軸方向に間隔を空けて配置されたローラマントル14、15を有する。下側テンションローラ6のスポーク車輪構造(より詳細には図示せず)は、実質的に連続的な中空車軸(図示せず)に回転可能に取り付けられている。この上側領域で、中空車軸は、下側ローラマントル14、15の間の隙間16に面する開口を有し、その中には溶接煙及び/又は吹き飛ばされた溶接粒子(ほこり粒子)を除去するための除去装置(図示せず)が配置されている。さらに、スポーク車輪構造間の下側テンションローラ6には、不活性ガス用の供給装置(図示せず)が配置されている。供給装置と間隙16を介して不活性ガスを溶接部位に運ぶことができる。
【0026】
上側ローラマントル11、12の縁17、18は、全体的に面取りが施されている。この構成は、溶接ヘッド19を溶接部位に密接して動かすことを可能にする。上側テンションローラ5の軸方向に分割された中空車軸には、互いに水平方向に伸びる3つの軸内でレーザ溶接手段の溶接ヘッド19を動かせる調整手段が設けられている。レーザビーム20は、複数の偏向鏡21、22、23を有する光学システムを介して、集束要素、例えば集束レンズ(図示ぜす)を備える溶接ヘッド19に案内される。或いは、特に部品数を減らすため、Nd−YAGレーザに接続された光ファイバーケーブルを用いてエネルギー出力を連結することができる。調整ドライブを制御するため、溶接溝をモニタするための測定手段を設けることができ、この測定手段は、例えば、放射線源、特にレーザと、センサ、特にダイオードラインカメラとから成り得る。センサからの信号は、所望の位置及び/又は所望の幅に対する溶接間隙(接合部)のサイズ及び/又は位置を決定する評価手段に供給され、所望の値と実際の値の間に差があるときは、評価手段は調整ドライブに制御パルスを送り、制御ドライブはそれに応じて溶接ヘッド19を調整する。上側ローラマントル11、12の内周のそれらの相互に面する側面(これらが間隙13を画定する)の方へ円錐状に広がった縁17、18は、レーザビーム20がローラマントル11、12の1つによって妨害されることなく、接合部へのレーザビーム20の斜め配向を可能にする。異なる厚さのストリップを溶接するときは、レーザビーム20の斜め配向が普通である。しかしながら、同一厚さのシート又はストリップを溶接するときは、レーザビーム20は通常、接合部24の上へ垂直に向けられる。
【0027】
図1に示す溶接装置は、第1溶接ヘッド19に対してストリップ3、4の下側に、かつストリップ3、4の進行方向にずらして配置された第2溶接ヘッド25をも備える。2つの溶接ヘッド19、25は、互いに、溶接すべきストリップ縁又は縦縁上のそれらのレーザビーム20、28の衝突点26、27が、例えば約800mm〜1200mm、好ましくは900mm〜1000mmだけ離れて間隔が空くように配置されている。
【0028】
第2溶接ヘッド25は、ストリップ3、4の進行方向の次に来るテンションローラ30に設けられ、固定ベアリングブロック31に自由に回転できるように取り付けられている。テンションローラ30も中空車軸を有し、その上のボールベアリングにローラマントル32が取り付けられている。ローラマントル32の、レーザビーム28に面する側も円錐状に構成されており、その結果、溶接すべきストリップ3、4又はシートの下側に漸次的変化(可変厚さ)がある場合、ローラマントルによって妨害されることなくレーザビーム28を接合部24の方へ斜めに方向づけることがでる。しかし、
図3では、溶接すべきストリップ3、4の下側が一平面にあるので、レーザビーム28は接合部24の上又はストリップ3、4の上に垂直に方向づけられている。共振器(図示せず)によって発生したレーザビーム28は、偏向鏡33、34、35及び集束手段、例えば集束レンズ(より詳細には図示せず)によって接合部24の上に案内される。或いは、光ファイバーケーブルを用いて部品数を減らこともできる。
【0029】
上側テンションローラ36は下側テンションローラ30と関連し、下側テンションローラ30より有意に小さい外径を有し、かつ油圧操作可能な調整シリンダ37の上に自由に回転できるように取り付けられており、この調整シリンダ37は拡張アーム38に取り付けられ、これは機械構台8上に取り付けられている。従って、張力をかけるべきストリップ3の厚さに応じて上側テンションローラ36の高さを調整することができる。
【0030】
溶接すべきストリップ3、4を運ぶためのドライブローラ39がテンションローラ5、6の次に配置されている。ドライブローラ39は、少なくとも1つの橋様ローラ支持体(図示せず)に取り付けられている。このローラ支持体は可動に取り付けられ、かつドライブ(図示せず)を備え、このドライブによってローラ支持体をテンションローラ5、6、30、36の回転軸に平行に動かすことができる。溶接すべきストリップ縁又は縦縁の位置を検出するためのセンサ(シーム追跡センサ、図示せず)がローラ支持体に関連付けられている。このセンサ信号は、ストリップ縁又は縦縁の検出位置に応じてローラ支持体のドライブを制御する評価装置又は制御装置(図示せず)に送達される。本発明の装置が異なる厚さのストリップ3、4を溶接する予定がある場合、シーム追跡センサとして触覚センサを使用するのが好ましい。或いは、シーム追跡センサからの信号を用いてレーザビーム28を制御することができる。溶接ヘッド19、25の間又はエネルギービーム20、28の衝突点26、27の間の間隔が小さいときにこの構成を利用することができる。しかし、より大きい間隔がある場合に、対応する構成も考えられる。
【0031】
図4及び5は、本発明の逐次溶接方法の基本原理を示す。第1溶接プール領域又は溶接シーム領域40は、第1溶接ヘッド19によって接合部24の上方から作り出される。溶接プール領域40の侵入深さは、シート又はストリップ3、4の厚さの約60%であり、異なる厚さのシート又はストリップ3、4を溶接するときは、相応の侵入深さは薄い方のシート/ストリップの厚さに基づく。ストリップ/シート3、4の第1溶接手順に対して時間を遅らせて、次に第2溶接手順がストリップ/シート3、4の下側で行われる。第2又は下側溶接プール領域41の侵入深さは、それが第1溶接シーム領域40の中に侵入するように選択される。この両側溶接手順は、接合部24の貫通溶接がもはや必要ないことを意味する。結果として、レーザパワーの損失を減らすことができる。特に、本発明の時間遅延溶接はエネルギー入力を減らすことを可能にする。エネルギー入力の減少は、結果として、熱的影響ゾーンを制限できるので、溶接すべきストリップ又はシート3、4にプラス効果を及ぼす。同様に、これは、このやり方で溶接されたストリップ又はシート3、4の機械的特性に有利な効果を及ぼす。
【0032】
本発明を実施するために、例えば、特許文献1により構成されている既存の溶接設備を取付け部品と共に第2溶接ヘッド25(テンションローラ30、36、調整シリンダ37、拡張アーム38)によって、改造設備として補完することができる。
【符号の説明】
【0033】
3、4 ストリップ又はシート
5、5.1、5.2、6 テンションローラ
13 間隙
14、15 ローラマントル
19 第1溶接ヘッド
20 エネルギービーム
24 接合部
25 第2溶接ヘッド
26、27 衝突点
28 エネルギービーム
30 テンションローラ
39 ドライブローラ
40 溶接シーム領域、溶接プール領域
41 溶接プール領域