(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記器具(220)の前記連結部(223)は円錐台形状を有し、前記器具保持器(210)の前記連結受部(215)は前記連結部の形状に対して相補的な円錐台形状を有し、前記連結部および前記連結受部は、さらに軸方向当接機構を形成することを特徴とする、請求項1に記載の振動機器。
前記器具(620)の前記連結部(623)および前記器具保持器(610)の前記連結受部(615)は、円筒形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の振動機器。
前記器具(620)の前記連結部(623)は、該器具の前記作動部とつながる側の端部に軸方向当接部(624)を備え、前記軸方向当接部(624)は、前記器具保持器(610)の前記連結受部(615)の前記自由端(613)と協働することを特徴とする、請求項3に記載の振動機器。
前記器具(420)の前記連結部(423)は、円筒形状の第2の部分(4202)へと連なる円錐台形状の第1の部分(4201)を備え、前記器具保持器(410)の前記連結受部(415)は、前記連結部の形状に対して相補的な円錐台形状の第1の部分(4151)と、円筒形状の第2の部分(4152)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の振動機器。
前記器具(220)の前記取付部(222)は、前記連結部(223)の上流側に配置される保持部材(2223)を備え、前記器具保持器(210)の前記収容部(214)は、前記器具(220)の前記保持部材(2223)を受ける保持部(2142)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の振動機器。
前記器具(320、720)は、径方向当接部(3230)を備え、前記器具保持器(310、710)は、前記径方向当接部を受ける刳り抜き部(3150、7150)を備え、前記径方向当接部および前記刳り抜き部は、前記器具保持器(210)内での前記器具(220)の回転を制限するための回転制限機構を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の振動機器。
前記取付部(222)は、該取付部の実質的に中央に位置する少なくとも1つの縮径部(2222a)を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の振動機器。
【背景技術】
【0002】
図1は、コード111によってハンドピース120に接続された超音波発生器110を備える処置用超音波装置100を示す。「ソノトロード」、「インサート」、または「チップ」とも称され、音波振動数または超音波振動数で振動する振動機器130が、ハンドピース120の上部に装着される。周知の態様では、ハンドピース120は変換器(図示せず)を備え、この変換器は、例えば圧電材料によって構成され、超音波発生器110によって供給される動力に応じて決定される振幅で振動波がインサート130に伝達されるように、インサート130に機械的に連結される。
【0003】
図2に示すように、振動機器130は、主に2つの部分、すなわち、ハンドピース120の変換器(図示せず)に据え付けられた部材123に堅く固定される基部または近位部133と、ハンドピース120によって伝達された振動を再生する作動部または器具132とによって構成される。振動機器130は通常、ねじ立て(タッピング)133aを備える該器具の基部133を、変換器に据え付けられており、相補的なねじ山123aを有する固定部材123に螺合して固定することにより、ハンドピース120に嵌合される。
【0004】
作動部または器具132は、機器の「有用」部分、すなわち、処置を行うのに用いられる部分に相当する。機器の作動部の形状、特にその端部132aの形状は、行なわれる処置に応じて決定される。例えば、機器130は、その端部132aの形状が歯石除去処置に適合された作動部132を有する。
図3A〜
図3Cは、歯石および/または異物の除去(インサート140、
図3A)、人工装具を所定の位置に配置する前の準備処置(インサート150、
図3B)、および非外傷性抜歯・撤去処置(インサート160、
図3C)をそれぞれ行なうのに適した形状を作動部または器具が有している機器の例を示す。振動機器の他の例が、文献US6312256およびUS4283175に詳細に記載されている。
【0005】
新たな処置毎に、または単一の処置における特定の段階においてさえ、施術者はハンドピースに取り付ける機器を取り替える必要がある。すなわち、先に使用していた機器の基部を抜いて外し、新たな処置または処置の次の工程に適した別の機器を螺合する必要がある。単一の仕事日の間に、施術者はこの作業を何度も繰り返さなければならないことがある。しかし、この作業それ自体は困難ではないが、機器の適切な組み立てを確実に行うために、施術者はこの作業に対してその都度十分な注意を払わなければならない。良好に動作させるためには、振動機器をハンドピースに適切に螺合し、変換器との機械的連結が良好になされるよう十分に締め付ける必要があるが、この目的のために、施術者はとりわけ動力計型締め具を使用することがある。従って、機器を取り替える場合、特に作動部または器具を取り替える場合に、要する時間を短縮し、かつ作業を簡易化する必要がある。
【0006】
文献JP2002/065700は、超音波ハンドピースに据え付けられた器具保持器に取り外し可能に装着されたブラシを開示している。しかし、その文献では、器具保持器にブラシを取り付けるための方式が、ブラシ、すなわち、堅くなくて質量の大きい器具に振動を良好に伝達できるように適合されている。また、その文献に記載されている方式では、連結部と取付部とが同一である。このような取付方式は、上述したもののような、堅い器具または作動部に適切に超音波振動を伝達するのには適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ハンドピースから振動機器の作動部への(音波または超音波)振動の良好な伝達を確保する一方で、機器全体をハンドピースからその都度抜いて外す必要がないように、振動機器の作動部または器具を取り外し可能に装着できるようにする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、振動発生器に固定して機械的に連結される器具保持器に取り外し可能に装着される器具を備える振動機器であって、
上記器具は長手軸に沿って順に、上記振動発生器によって伝達される振動を再生するための自由端を有する作動部と、連結部と、該連結部の上流側に配置される弾性変形可能な取付部とを備え、
上記器具保持器は長手軸に沿って順に、上記器具の上記取付部を受ける収容部と、上記器具の上記連結部を少なくとも部分的に取り囲む連結受部とを備え、
上記器具の上記取付部は、上記器具の上記連結部が上記器具保持器の上記連結受部に接触した場合に上記取付部と上記収容部との接触が防止されるように、上記器具保持器の上記収容部の内形寸法に適合された外形寸法を有する振動機器、によって達成される。
【0009】
従って、軸方向および/または径方向の押力が器具の作動部に加えられた場合、すなわち、作動部が処置対象の物体、例えば歯と接触した場合、器具保持器と器具との間の接触が、器具の連結部と器具保持器の連結受部との間でのみ起こる。その結果、器具および器具保持器の対応する連結部材以外の部分同士の接触によって器具と器具保持器との間で生じ得る振動の減衰が防止され、それによって器具保持器から器具への振動の良好な伝達が確保される。
【0010】
器具の連結部がその取付部と作動部との間に配置されることによっても、器具保持器と器具との間の振動の良好な伝達が確保される。器具の連結部が器具保持器の連結受部から受け取った振動は、超音波の振幅を減衰させる可能性のある器具の他の部分を通過する必要なく、作動部に直接伝達される。
【0011】
また、本発明の器具は、その弾性変形可能な取付部により、迅速かつ容易に器具保持器に組み合わせることができる。同様に、本発明の器具は、迅速かつ容易に器具保持器から取り外すことができる。従って、本発明の振動機器の作動部は、振動発生器に据え付けられた器具保持器に対して迅速かつ容易に脱着可能な器具に組み込まれているので、短時間でこの作動部を取り替えることができ、特に、振動発生器に対して2つの異なる機器をそれぞれ完全に脱着することを要する先行技術に係る振動機器を使用した場合に作動部を取り替えるのにかかる時間と比べて、短時間で取り替えることができる。
【0012】
本発明の振動機器の異なる実施形態では、器具の連結部および器具保持器の連結受部は、相補的な円錐台形状または円筒形状を有してもよく、あるいは相補的な円錐台形状の第1の部分と円筒形状の第2の部分との両方を有してもよい。
【0013】
器具の連結部および器具保持器の連結受部が円筒形状を有する場合、器具の連結部は該器具の作動部につながる側の端部に軸方向当接部を備え、この軸方向当接部は器具保持器の連結受部の直径より大きな直径を有する。器具の連結部および器具保持器の連結受部が相補的な円錐台形状を有する場合、それら2つの部材が軸方向当接機構を形成する。
【0014】
本発明のさらなる特徴によれば、器具の取付部は、連結部の上流側に配置された保持部材を備え、器具保持器の収容部は、器具の保持部材を受ける保持部を備える。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、器具の連結部は径方向当接部を備え、器具保持器は該径方向当接部を受ける刳り抜き部を備え、この径方向当接部と刳り抜き部とが、器具保持器内での器具の回転を制限する回転制限機構を形成する。
【0016】
本発明の一側面においては、取付部に少なくとも1つの長手スロットを形成することにより、取付部の弾性が得られる。
【0017】
取付部はまた、該取付部の実質的に中央に位置する少なくとも1つの縮径部を備えてもよい。
【0018】
本発明のさらなる特徴によれば、器具保持器は、ハンドピース内の内部通路との協働に適した内部通路を備え、器具は、器具保持器の内部通路との協働に適し、作動部にて開口している内部通路を備える。
【0019】
本発明はまた、振動発生器に接続される少なくとも1つの外科用ハンドピースを備える歯科処置用超音波装置であって、本発明に係る少なくとも1つの振動機器をさらに備えることを特徴とする歯科処置用超音波装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも2つの分離可能な部材、すなわち音波振動または超音波振動を再生する端部(作動部)を有する振動器具に相当する第1部材と、超音波発生ハンドピース等の音波振動または超音波振動を発生させる装置に固定して機械的に連結される器具保持器とから構成される振動機器または振動インサート(「チップ」または「ソノトロード」としても知られている)の新規の設計を提供する。器具および器具保持器は、金属、合金(鋼)、炭素材料系複合物といった比較的堅い材料で作られている。
【0022】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る、器具保持器210および器具220を備える振動機器またはインサート200を示す。器具保持器210は、ハンドピース20に堅く固定される第1の端部または基部212を有する本体211を備える単一体部材である。周知の態様では、ハンドピース20は音波振動または超音波振動の発生器であり、例えば圧電材料で作られており、振動波をインサートに伝達するためにインサートに固定して機械的に連結される変換器(図示せず)を備えてもよい。ここに記載する実施形態では、器具保持器210は、ハンドピースの変換器に据え付けられた固定部材23に螺合されることにより、ハンドピースに堅く固定される。この目的のために、器具保持器210の基部212は凹部2120を備え、この凹部2120の壁には、部材23上に存在するねじ山231との協働に適したねじ立て(タッピング)2121が形成されている。当然、器具保持器の基部の形状およびハンドピースへの固定手段(ここではねじ山)は、異なるものであってもよい。一般に、器具保持器の基部の形状および固定手段は、ハンドピース上に存在する固定部材の形状および固定手段に応じて決定される。器具保持器は、例えば溶接によりハンドピースに永久固定されてもよく、あるいは、単にハンドピースの延長部分であってもよい。
図4に示す器具保持器は、処置対象部位へ届きやすいように湾曲形状を有する。しかし、問題となる部位に応じて、器具保持器は他の種類の形状を有してもよく、具体的には、さらに湾曲していてもよく、またはその反対に直線形状を有していてもよい。
【0023】
図4および
図5Aに示すように、器具保持器210の本体211は基部212から第2の端部213まで延びており、長手軸XX’(
図5A)に沿って順に、器具220の取付部222を受ける収容部214と、後に詳述するように、器具220の連結部223を少なくとも部分的に取り囲みかつ連結部223と協働する連結受部215とを備える。収容部214は、器具保持器210の端部213の内部に設けられた空洞によって形成される。収容部214の有する形状には変化があり、連結受部215から収容部214の端部へ向かって、縮径部2141と、保持部2142と、端部2143とを形成する。連結受部215は、この例においてその内面が雌型の円錐台形状を有しているが、この連結受部215は、後述するように、器具220との機械的連結がなされるように設計されている。保持部2142は突縁(リム)2142aを有する溝を形成し、この突縁2142aにより、一旦収容部214に挿入した器具220を保持することが可能になる。端部2143は、器具220の取付部の端部を受けるためのものである。端部2143は、本体211の内部に形成されかつハンドピースの固定部材23の内部通路232と協働する内部流路216を介して、基部212の凹部2120の端部に接続される。
【0024】
超音波器具220は主に、長手軸XX’に沿って順に配置された3つの部分、すなわち、「作動部」221と称する第1の部分と、連結部223に相当する第2の部分と、「取付部」222と称する第3の部分とを備える。作動部は、インサートの「有用」部分、すなわち処置を行うのに用いられる部分に相当する。インサートの作動部の形状、特にその端部の形状は、行なわれる処置に応じて決定される。ここに記載する実施形態では、作動部221は、2つの面221a、221bを規定する扁平形状を有する。この形状は特に異物除去、すなわち、「創面切除」に好適である。作動部はまた、複合体であってもよく、および/または、表面被覆(例えば研磨被覆)を含んでもよい。
図4に示すように、器具220はまた、開口2210a、2210bを介して面221a、221bの両方に通じる内部通路2210を含む。通路2210は、内部通路232を介してハンドピースから供給され、器具保持器の内部通路216によって器具まで運ばれる流体を受け取るためのものである。
【0025】
取付部222は、器具保持器210の収容部214に挿入される部分に相当する。取付部222は、伸長部2222、保持部材2223、および案内部2224を備える。取付部222はまた、案内部2224、保持部材2223、および伸長部2222内を長手方向に延びるスロット2225を備える。長手スロット2225は、器具220の器具保持器210の収容部214への挿入と、収容部214からの取り外しが可能となるように、器具220の取付部222が弾性変形できるようにする機能を有する。スロット2225は、取付部222内のみで延びており、連結部223には延びていないことが好ましい。仮にスロット2225が連結部223にも延びていたとすると、連結部の剛性を低下させ、当該部分を通って器具の作動部に伝わる振動を減衰させる効果を果たすことになる。また、スロットが連結部まで延びていたとすると、連結部が変形可能となり、それによって器具保持器の連結受部との(連結)接触面積が減少することになる。
【0026】
図5A〜
図5Cは、器具220が器具保持器210へ挿入される様子を示す。器具220の取付部222は、収容部の入口へ案内部2224を差し込むことにより、器具保持器210の収容部214に挿入される(
図5A)。そして、取付部222から突出するリングを形成する保持部材2223が、縮径部2141内の通路を形成する収容部の内壁と接触するが、該通路は、取付部設置時、保持部材2223の幅D
2223より小さい直径D
2141を有する。取付部222の弾性変形を可能にする長手スロット2225が存在し、さらに保持部材上のスロット2225の両側にそれぞれ形成された平面2223a、2223bが存在するために、保持部材は縮径部2141を通過することができる(
図5B)。平面2223a、2223bはそれぞれ、スロット2225の面に垂直な方向に延びる。平面2223a、2223bの間の距離は、縮径部の直径D
2141以下である。保持部材が保持部2142に達すると、取付部222はその初期形状に戻る(
図5Cおよび
図6)。そして、保持部材2223が保持部2142によって形成された空間に収容される。大きな引張力が器具に加えられない限り、突縁2142aにより、器具220が器具保持器210の収容部214から逆戻りすることが防止される。
【0027】
本発明によれば、器具保持器210と器具220との間で超音波が良好に伝達されることを確実にするために、これら2つの部材の寸法は、器具の連結部と器具保持器の連結受部とがいわば「作動」接触した場合、すなわち、軸方向および/または径方向の圧力が器具の作動部に加わった場合に、器具および器具保持器の残りの他の部分同士の接触、すなわち、器具の取付部と器具保持器の収容部との接触が生じないように決定される。この作動接触を除けば、器具は単に取付部の保持部材によって器具保持器に保持されている。
【0028】
より正確には、
図5Cに示すように、器具220の連結部223は平均径D
223を有する雄型の円錐台形状を有し、一方、器具保持器210の連結受部215の内面は、平均径D
215を有する雌型の円錐台形状を有する。これら相補的な形状によって、これら2つの部材を相互に嵌め込み、連結することが可能になる。また、直径D
223とD
215との相違と、連結部223と連結受部215との間のテーパー形状の相違とは、それらの両方ともが上記円錐台嵌合に関する加工公差を構成する要素であるが、これらの相違は、連結受部215内へ連結部223が進入する深さに影響を与える。従って、これらの相違は、器具の連結部と器具保持器の連結受部とが作動接触した場合に、これら2つの部材の他の部分は接触しないように決定される。
図5Cにおいては、連結部223および連結受部215の内面は実質的に同一のテーパー形状を有する円錐台形状を有する。
【0029】
器具の取付部222の保持部材2223は、器具保持器の収容部214の保持部2142の幅l
2142より小さい幅l
2223を有しており、これはこれら2つの部分間に中型の軸方向の間隔または遊びJ5、J7を残すためである。
【0030】
器具の取付部222の案内部2224は、収容部214の端部2143の長さl
2143より短い長さl
2224を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の軸方向の間隔または遊びJ6を残すためである。
【0031】
器具の伸長部2222は、その最大の部分において、器具保持器の収容部214の縮径部2141の直径D
2141より小さい直径D
2222を有しており、これは、これら2つの部分間に最小の径方向の間隔または遊びJ2を残すためである。
【0032】
器具の保持部材2223は、収容部214の保持部2142の直径D
2142より小さい直径D
2223を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の径方向の間隔または遊びJ3を残すためである。
【0033】
器具の案内部2224は、収容部の端部2143の直径D
2143より小さい直径D
2224を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の径方向の間隔または遊びJ4を残すためである。
【0034】
保持部材2223は、保持部材の上流側の面と収容部214の保持部2142の上流側の端部との間に遊びJ7が設けられるような器具の取付部222上の所定の位置に配置される。
【0035】
本発明によれば、器具の取付部222の各部と器具保持器の収容部214の各部との間に存在する遊びJ2〜J7は、連結部223と連結受部215の内面とが接触した場合に、取付部222と収容部214との接触が防止されるように決定される。
【0036】
図6に示すように、軸方向の押力Faが器具220の作動部221に作用すると、器具の連結部223と器具保持器210の連結受部215のみが作動接触し、器具の取付部および器具保持器の収容部の他の部分同士は接触しない。従って、器具保持器がハンドピースから受け取った超音波振動は、連結部223と連結受部215との間に形成された接触面のみを介して器具に伝達される。このように、この振動が器具および器具保持器の他の部分同士の接触によって減衰されるおそれがなく、従って器具保持器と器具との間の超音波振動の良好な伝達が可能になる。同様に、横方向または径方向の押力が作動部221に加えられた場合にも、同じ配置が得られる。すなわち、器具の連結部223と器具保持器210の連結受部215との間のみで接触が生じ、器具の取付部と器具保持器の収容部との間では接触が生じない。
【0037】
保持部材の上流側の面と、収容部214の保持部2142の上流側の端部との間の遊びJ7は、連結部223が延びる長さよりも小さく、これは、機器がある姿勢を取った場合に、連結部が器具保持器から完全に脱することを防止するため、すなわち、連結部が器具保持器の連結受部の少なくとも一部と対向する位置にもはや存しなくなることを防止するためである。
【0038】
上述したように、ハンドピースにより発生された超音波振動を正確に再生するために十分に堅い材料で器具を構成する必要がある。長手スロットの存在により、結果的に、器具を器具保持器に挿入することと、器具を器具保持器内に保持することとをそれぞれ可能にするのに十分な変形力と復元力とを器具の取付部に付与することができる。スロットによって分離された取付部の2つの部分は、保持部材が縮径部を通り抜けられるように、互いに向かって移動させることができ(
図5B)、次いで、一旦保持部材が収容部の保持部に達すると、初期位置へ戻ることができ、これにより器具を器具保持器内に確実に保持することが可能になる(
図5C)。
【0039】
収容部から出る方向に器具に対して引張力を作用させることにより、例えば、挿入方向とは反対の方向に作動部を引っ張ることにより、器具が器具保持器から抜き出される。このような場合には、
図5Bに示すように、器具220の取付部222が変形し、保持部材2223が保持部2142から外れて、縮径部2141を通過できるようになる。
【0040】
器具220の取付部222の弾性変形力をさらに向上させるために、縮径部2222a、2222b(例えば、フライス削りにより得られる)を伸長部2222に作成し、これによって堅い材質の厚さを局所的に減少させることができる。また、保持部材2223が器具保持器の収容部、特に縮径部2141へ進入できるようにするために、2つの平面2223aを保持部材2223に機械加工により形成する。平面2223aはスロット2225の両側に形成され、そしてそれらはスロットの面に垂直な方向に延びる。
【0041】
さらに、器具保持器の収容部への器具の挿入および収容部からの器具の取り外しを容易にするために、保持部材2223は、その周縁に面取り部(chanfrein)2223c、2223dを備えてもよい。面取り部2223cにより、特に、引張力が器具に作用した場合に、保持部材2223が保持部2142の突縁2142aから外れやすくなる。
【0042】
長手スロット2225の幅は、保持部材2223が縮径部2141へ進入することを可能にするために必要な取付部の変形(ここでは挟圧変形)に応じて決定される。
【0043】
図6に示すように、超音波振動波を伝達するための器具保持器210と器具220との機械的連結は、器具保持器210の連結受部215を器具220の連結部223と接触させることによって達成される。記載する実施形態では、これら2つの部分は、相補的な円錐形状を有する。
【0044】
図7は、本発明の振動機器の別の実施形態を示す。
図7の振動機器は、主に、器具の連結部と器具の連結受部とが両方とも、上記のような円錐台形状ではなく、円筒形状を有する点で
図4および
図5A〜
図5Cに示されるものと異なる。
【0045】
上述した振動機器200と同様に、
図7の振動機器600は器具保持器610および器具620により構成される。器具保持器610は、上記器具保持器210と同様に、ハンドピースに堅く固定される第1の端部または基部(
図7には示さず)を有する本体611を備える単一体部材である。器具保持器の基部の形状およびハンドピースに固定するための手段は変更してもよい(ねじ立て、永久固定、ハンドピースの延長等)。
【0046】
器具保持器610の本体611の第2の端部613は、長手軸XX’に沿って順に、器具620の連結部623を取り囲みそれと協働する連結受部615と、器具620の取付部622を受ける収容部614とを備える。収容部614の有する形状は変動するものであり、連結受部615から収容部614の端部へ向かって、縮径部6141と、保持部6142と、端部6143とを形成する。端部6143は、ハンドピースの固定部材内の内部通路と協働するために本体611の内部に形成された内部流路616を介して、器具保持器の固定基部(
図7には示さず)の端部に接続される。
【0047】
超音波器具620は、長手軸XX’に沿って順に、作動部621と、連結部623と、取付部622とを備え、連結部623は作動部621との接続部分にさらに軸方向当接部624を備える。器具620は、上記器具220と同様に、器具保持器の内部通路を介してハンドピースから供給された流体を受け取る内部通路であって、開口を介して作動部の両面に通じている内部通路(
図7には示さず)を、さらに備えてもよい。
【0048】
取付部622は伸長部6222および保持部材6223を備える。取付部622はまた、保持部材6223および伸長部6222内を長手方向に延びるスロット6225を備える。
【0049】
スロット6225と、平面6223a、6223bとが存在することによって起こる器具の取付部622の弾性変形によって、器具の保持部材6223の器具保持器の保持部6142への嵌合および/または保持部6142からの解放が可能となるので、器具に押力および/または引張力を作用させることにより、器具620の器具保持器610への挿入および/または器具保持器610からの引抜がなされる。
【0050】
また、本発明によれば、これら2つの部材の寸法は、器具が器具保持器に装着された場合に、
図7に示すように、器具の連結部と器具保持器の連結受部との間に存在する遊びが、器具および器具保持器の他の各部の間に存在する遊びよりも小さくなるように決定される。
【0051】
より正確に言うと、器具620の連結部623は、器具保持器610の連結受部615の直径D
615より小さい直径D
623を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の遊びJ10を残し、それによりこれらの部分を互いに嵌合できるようにするためである。
【0052】
器具の取付部622の保持部材6223は、器具保持器の収容部614の保持部6142の幅l
6142より小さい幅l
6223を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の軸方向の遊びJ11、J16を残すためである。
【0053】
器具の伸長部6222は、器具保持器の収容部614の縮径部6141の直径D
6141より小さい直径D
6222を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の径方向の遊びJ13を残すためである。
【0054】
器具の保持部材6223は、収容部614の保持部6142の直径D
6142より小さい直径D
6223を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の径方向の遊びJ14を残すためである。
【0055】
器具620の連結部623は、器具保持器610の連結受部615の長さl
615より短い長さl
623を有しており、これは、これら2つの部分間に中型の遊びJ15を残すためである。
【0056】
保持部材6223は、保持部材の上流側の面と、収容部614の保持部6142の上流側の端部との間に遊びJ16が設けられるような器具の取付部622上の所定の位置に配置される。
【0057】
本発明によれば、器具の取付部622の各部と器具保持器の収容部614の各部との間に存在する遊びJ10、J11、J13〜J16は、連結部623と連結受部615の内面とが作動接触した場合に取付部622と収容部614との接触が防止されるように決定される。
【0058】
図8に示すように、径方向の押力Frが器具620の作動部621に作用すると、特に遊びJ13、J14、J16が存在するために、器具の連結部623と器具保持器610の連結受部615のみが作動接触し(2つの部材の局所的な接触点)、器具の取付部および器具保持器の収容部の他の部分同士は接触しない。従って、器具保持器がハンドピースから受け取った超音波振動は、連結部623と連結受部615との間の接触により器具に伝達される。このように、この振動が器具および器具保持器の他の部分同士の接触によって減衰されるおそれがなく、従って器具保持器と器具との間の超音波振動の良好な伝達が可能になる。
【0059】
軸方向の押力Faが器具620の作動部621に加わると(
図7)、特に遊びJ11、J15が存在するため、器具620と器具保持器610との間の機械的連結が主に、器具保持器の連結受部615の端部に押しつけられる器具の軸方向当接部624を介して行われ、器具の取付部および器具保持器の収容部の他の部分同士は接触しない。
【0060】
保持部材の上流側の面と、収容部614の保持部6142の上流側の端部との間の遊びJ16は、連結部623が延びる長さよりも小さく、これは、機器がある姿勢を取った場合に、連結部が器具保持器から完全に脱することを防止するためであり、連結部が器具保持器の連結受部の少なくとも一部ともはや対向しなくなることを防止するためである。
【0061】
図9は、本発明の振動機器の別の実施形態を示す。
図9の振動機器400は、器具420の連結部423および器具410の連結受部415が両方とも相補的な円筒円錐台形状を有する点で、
図4および
図5A〜
図5Cに示すものと異なる。より正確に言うと、器具420の連結部は円錐台形状の第1の部分4201と、円筒形状の第2の部分4202とを備え、器具保持器410の連結受部415も同様に、円錐台形状の第1の部分4151と、円筒形状の第2の部分4152とを備える。
【0062】
器具420の他の部材または部分、すなわち作動部および取付部と、器具保持器410の他の部材または部分、すなわち収容部とは、上記振動機器200のものと同一である。
【0063】
本発明によると、上述したように、器具の取付部と器具保持器の収容部との間に存在する遊びJ21〜J25と、器具420の円錐台形状の第1の部分4201と器具保持器410の円錐台形状の第1の部分4151との間の直径およびテーパー形状の相違とは、器具420の作動部421に軸方向および/または径方向の押力が加わった場合に、器具の連結部423と器具保持器の連結受部415のみが作動接触し、器具の取付部および器具保持器の収容部の他の部分同士は接触しないように決定される。
【0064】
上述した実施形態に照らして、本発明の振動機器の他の実施形態を考案することは、当業者にとって困難ではない。一般に、器具保持器と器具との間の振動の伝達を最適化するために、それら2つの部材の寸法は、まず第一に、器具の取付部と器具保持器の収容部との間の軸方向の(複数の)遊びが、器具の連結部が器具保持器の連結受部に進入する深さより大きくなり、そして第二に、器具の取付部と器具保持器の収容部との間の径方向の(複数の)遊びが、器具の連結部と器具保持器の連結受部との間に存在する径方向の遊びより大きくなるように決定される。
【0065】
上述した振動機器200、400、600では、器具220、620は、該器具保持器の接触受部2140、6140の表面の形状と、該器具の連結部2221、6221の表面の形状とに従って、器具保持器210、610内において自在に回転できるように装着される。このような場合、器具は、それが接触する面に応じて自動的に向きを定める(すなわち、回動する)。このように自在に回転できることにより、例えば、同一の器具を用いて一本の歯の全周を処置することができる。
【0066】
図10Aおよび
図10Bは、振動機器700の実施形態を示しており、振動機器700は、器具720の連結部723が連結部の下流側部分に径方向当接部7230を備えるという点、および器具保持器710の連結受部715がその自由端713に刳り抜き部7150を有するという点で、
図4および
図5A〜
図5Cに示す機器200と異なる。器具720が器具保持器710に挿入されると、径方向当接部7230が刳り抜き部に収容されて、器具が器具保持器内で回転するのを制限する回転制限機構が形成される。径方向当接部7230の幅l
7230に対する刳り抜き部7150の円弧の長さL
7150によって、器具保持器710内での器具720の回転角度の限度が規定される。
【0067】
機器700の器具720および器具保持器710の他の部分は、上述した機器200の器具220および器具保持器210の部分と同一であるので、簡略化のためそれらについて再度説明はしない。
【0068】
図11Aおよび
図11Bは、振動機器300の実施形態を示しており、振動機器300は、器具320の連結部323の軸方向当接部324が径方向当接部3230を備えるという点、および器具保持器310の連結受部315がその自由端313に刳り抜き部3150を有するという点で、
図8を参照して説明した機器600と異なる。器具320が器具保持器310に挿入されると、径方向当接部3230が刳り抜き部内に収容されて、器具保持器内での器具の回転を制限する回転制限機構を形成する。径方向当接部3230の幅l
3230に対する刳り抜き部3150の円弧の長さL
3150によって、器具保持器310内での器具320の回転角度の限度が規定される。
【0069】
機器300の器具320および器具保持器310の他の部分は、上述した機器600の器具620および器具保持器610の部分と同一であるので、簡略化のためそれらについて再度説明はしない。
【0070】
図10A、10B、11A、11Bに示す実施形態においては、器具の径方向当接部の幅を器具保持器の刳り抜き部の円弧の長さと一致させることにより、器具保持器内で器具が回転しないようにしてもよい。
【0071】
なお、径方向当接部材を備えない器具を、上述したように刳り抜き部を備える器具保持器と併用してもよい。
【0072】
上記の説明に照らして、器具と器具保持器との間に形成される回転制限機構の他の実施形態を考案することは、当業者にとって困難ではない。
【0073】
本発明の振動機器またはインサートを、機能および人間工学的設計に従って上述した
図1に示したような最終品を構成する音波振動または超音波振動を使用する処置用機器等の歯科用周辺機器と、併用してもよい。このようなインサートはまた、歯科医院用ワークステーション等の専用製品内の他のモジュールに統合される(相手先商標製造会社(OEM)技術)モジュール形式の装置と併用してもよい。