特許第5748840号(P5748840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748840
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ヤヌス型鉄−ケイ素酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/00 20060101AFI20150625BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20150625BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150625BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C01G49/00 A
   B01J23/745
   B01J37/08
   B01J37/04 101
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-503052(P2013-503052)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-523586(P2013-523586A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2011053588
(87)【国際公開番号】WO2011124437
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】102010003647.1
(32)【優先日】2010年4月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュルツェ−イズフォート
(72)【発明者】
【氏名】オスヴィン クロッツ
(72)【発明者】
【氏名】ニーナ シューハルト
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ゴルヒャート
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−151817(JP,A)
【文献】 特開2008−063200(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/132911(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/148588(WO,A1)
【文献】 特開2006−257477(JP,A)
【文献】 特開平02−080325(JP,A)
【文献】 Nan Zhao et al.,ADVANCED MATERIALS,2009年,21,184-187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 49/00−49/08
C01B 33/00−33/193
C03B 1/00−5/44、8/00−8/04
C03B 19/12−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄−ケイ素酸化物粒子において、
a)該鉄−ケイ素酸化物粒子が、一方の部分は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成る2つの部分を有する球面形及び/又は回転楕円面形の粒子を有し、その際、
b)CuKα線、40kVの電圧U及び40mAの電流値Iを用いた回折計によってもたらされるX線回折図中で、
b1)最大シグナル高さ1が、回折角2Θ=32〜34°にある回折反射1、及び
b2)最大シグナル高さ2が、回折角2Θ=34.5〜36.5°にある回折反射2
を示し、ここで、32〜34°及び34.5〜36.5°でのX線回折図は、少なくとも2つの酸化鉄種を含み、その際、
b3)1≦q≦20、ここで、qは、最大シグナル高さ2/最大シグナル高さ1として定義されている、
ことを特徴とする、鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項2】
二酸化ケイ素又はFe23として計算された酸化鉄の割合が10〜90質量%であることを特徴とする、請求項1記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項3】
前記粒子の表面が、有機化合物及び/又は無機化合物によって改質されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項4】
二酸化ケイ素及びFe23として計算された酸化鉄の割合の総和が99質量%以上であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項5】
BET表面積が10〜200m2/gであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子を製造する方法において、
a)それぞれ1種以上の、
a1)製造されるべき鉄−ケイ素酸化物粒子の比に応じた、Fe23を基準とした酸化可能かつ/又は加水分解可能な蒸気状のケイ素化合物並びにSiO2を基準とした酸化可能かつ/又は加水分解可能な蒸気状の鉄化合物、
a2)水素含有燃焼ガス及び
a3)酸素を含有するガス
を有する混合物の流を火炎中で反応させ、その際、下記:
a4)酸素の全量は、水素含有燃焼ガス、ケイ素化合物及び鉄化合物の完全な反応に少なくとも十分であり、
a5)ケイ素化合物、鉄化合物、燃焼ガス及び酸素から成る出発原料の量を、500〜3000℃の断熱火炎温度Tadが生じるように選択し、その際、
ad=[出発原料の温度+部分反応の反応エンタルピーの総和/反応後の物質の熱容量]、
ここで、該物質の比熱容量は1000℃に基づいている、
ことが適用され、
b)反応混合物から固体をガス状物質より分離する
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子の製造法。
【請求項7】
前記固体を、無機表面改質剤及び/又は有機表面改質剤で処理することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記固体を水蒸気で処理することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記鉄化合物が塩化鉄(III)であることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素化合物がハロゲン化ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記断熱温度Tad=1500〜2800℃であることを特徴とする、請求項6から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
1<λ≦2かつ2.5≦γ≦20又は1<λ≦2かつ1<γ≦2であり、ここで、γは、供給された水素/化学量論的に必要な水素として定義され、かつλは、供給された酸素/化学量論的に必要な酸素として定義されることを特徴とする、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
反応体の負荷量cが0.5〜3モル/Nm3であり、ここで、cは、鉄化合物とケイ素化合物との総和[モル]/ガス容積[Nm3]であることを特徴とする、請求項6から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
データ記載装置中での、画像化法における造影剤としての、生化学的な分離法及び分析法のための、医療用途のための、ガラス表面や金属表面を研磨するための、触媒としての又は触媒担体としての、フィラーとしての、増粘剤としての、断熱のための、分散助剤としての、流動助剤としての、強磁性流体中や接着剤組成物中での、請求項1から5までのいずれか1項記載の鉄−ケイ素酸化物粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面形及び/又は回転楕円面形の鉄−ケイ素酸化物粒子に関し、該粒子は2つの部分を有し、その際、一方の部分は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成る。そのうえ本発明は、該粒子の製造法及び該粒子の使用に関する。
【0002】
Adv.Mater.21(2009)、184〜187には、二酸化ケイ素とマグヘマイトとからのいわゆるヤヌス粒子の単純化された方法が開示される。これらのヤヌス粒子は、71±33nmの平均粒度を有する球形粒子であり、一方の半球は非晶質二酸化ケイ素から成り、他方の半球は主としてマグヘマイトから成る。ヤヌス粒子は、メタノールと、ほぼ等モル量のアセチルアセトン鉄(III)及びテトラエトキシシランとからの溶液を火炎燃焼させることによって得られる。その際に重要なことは、通常の噴霧熱分解法とは対照的に、ガスによって微粒化されないことと、火炎負荷が明らかに軽減されることである。該刊行物は、これらのヤヌス粒子の磁性特性が様々に変わりうることは開示していない。この方法の場合の欠点は、得られた量が実験室規模と結び付いており、かつ工業規模における方法への転用が開示内容から導き出せないという事実である。
【0003】
それに対して、従来技術ではケイ素−鉄混合酸化物の製造法が公知であるが、しかしながら、該方法は、ヤヌス粒子の形態では存在しない。例えば、EP−A−1284485からはケイ素−鉄混合酸化物粒子が公知であり、その際、混合酸化物成分のドメインは、量的により多い混合酸化物成分のマトリックス中又は該マトリックス上に存在している。WO2008/148588は、二酸化ケイ素と、2〜100nmの酸化鉄の平均粒径を有する酸化鉄との空間的に互いに切り離された凝集域の形態のケイ素−鉄混合物粉末を開示している。該凝集体は、WO2008/148588の図1に示されるように、三次元構造である。さらに図1は、一次粒子中での混合酸化物成分の分散を概略的に示している。さらに開示されているのは、混合酸化物成分としての二酸化ケイ素が酸化鉄の周りでシェルを形成することができ、かつ酸化鉄相のマグヘマイト及びマグネタイトが大部分を占めうることである。ケイ素−鉄混合酸化物粉末は、蒸気状のクロロケイ素化合物と塩化鉄水溶液の火炎噴霧熱分解によって製造される。
【0004】
それゆえ本発明の技術的課題は、ヤヌス粒子の特別な化学特性及び物理特性を有し、かつ、その磁性特性がそのつどの適用に合わせられることができる粒子を提供することであった。本発明の更なる課題は、技術的規模での量が得られることを可能にする、これらの粒子の製造法を提供することであった。
【0005】
技術的課題は、
a)2つの部分を有する球面形及び/又は回転楕円面形の鉄−ケイ素酸化物粒子を包含し、その際、一方の部分は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、かつ他方の部分は実質的に酸化鉄から成り、
b)CuKα線、40kVの電圧U及び40mAの電流値Iを用いた回折計によってもたらされるX線回折図中で、
b1)最大シグナル高さ1が、回折角2Θ=32〜34°にある回折反射1、及び
b2)最大シグナル高さ2が、回折角2Θ=34.5〜36.5°にある回折反射2
を示し、その際、
b3)q=0.2〜20、ここで、qは、最大シグナル高さ2/最大シグナル高さ1として定義されている、鉄−ケイ素酸化物粒子によって解決される。
【0006】
本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子は、有利には大部分が、すなわち、そのつど粒子の総数を基準として、50%を上回って、通例は80%を上回って、球面形及び/又は回転楕円面形で存在し、その際、該粒子は2つの部分を有し、一方は実質的に非晶質二酸化ケイ素から成り、他方は実質的に酸化鉄から成る。該割合は、当業者に公知の方法によって、例えばTEM写真からカウントすることによって測定されることができる。鉄−ケイ素酸化物粒子の構造は、電子顕微鏡写真(TEM)によって調べられることができる。
【0007】
図1は、本発明による粒子を示す。該粒子のほぼ真ん中に凹形の界面が通っており、該界面は、Aの符号が付けられた酸化鉄側を、Bの符号が付けられた二酸化ケイ素側から切り離している。本発明による粒子は、有利には、独立した個々の粒子として存在する。
【0008】
本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子は、X線回折図中で、酸化鉄相γ−Fe23、Fe34、α−Fe23及びβ−Fe23に割り当てられることができる反射を示す。本発明による粒子の二酸化ケイ素分はX線アモルファスである。酸化鉄相γ−Fe23及びFe34の反射は、34.5〜36.5°の2Θ範囲内でオーバーラップし、かつα−Fe23及びβ−Fe23の反射は、32〜34°の2Θ範囲内でオーバーラップすることから、個々の相の割合を測定することは可能でない。しかしながら、X線回折図から、本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子中で少なくとも2種の酸化鉄相が存在することを読み取ることができる。2Θ範囲=32〜34°における回折角に対する2Θ範囲=34.5〜36.5°における回折角での反射の最大シグナル高さの比が、0.2〜20の範囲のq値をとることが明らかになった。これらの値に基づき、鉄−ケイ素酸化物粒子の磁性特性が、相組成の正確な把握とは無関係に、定められることができる。
【0009】
例えば、鉄−ケイ素酸化物粒子は、高いq値では、交流磁界内又は交流電磁界内での励起に際して加熱される速度が高くなり、その一方、低いq値では、低い加熱速度が結果生じる。q値は、0.2〜20の範囲で目的に合わせて調節可能であることから、各適用分野のために場合に応じた加熱速度を提供することができる。有利には、高い加熱速度をもたらす鉄−ケイ素酸化物粒子は、つまり、1≦q≦10を有する鉄−ケイ素酸化物粒子である。特に有利なのは、3≦q≦7の鉄−ケイ素酸化物粒子でありうる。
【0010】
さらに、二酸化ケイ素又はFe23として計算された酸化鉄の割合が10〜90質量%である鉄−ケイ素酸化物粒子が有利でありうる。
【0011】
特に有利には、二酸化ケイ素60〜80質量%及び二酸化ケイ素20〜40質量%の割合を有する鉄−ケイ素酸化物粒子が有利でありうる。係る実施形態において、該粒子は、概ね又は大部分が、酸化鉄及び二酸化ケイ素の半球を示す形態で存在する。組成は、当業者に公知の方法、例えば蛍光X線分析(RFA)によって測定されることができる。
【0012】
本発明による粒子は、無機試薬及び有機試薬による吸着、表面での反応又は錯化によって改質されることができる。例えば、本発明による粒子は、表面改質試薬による続く処理によって、部分的又は完全に疎水化された表面を得ることができる。
【0013】
例示的に、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン及びアミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0014】
本発明による、表面改質されなかった粒子中での酸化鉄及び二酸化ケイ素からの割合の総和は、通例は少なくとも98質量%、有利には少なくとも99質量%である。表面改質された粒子の場合、0.1〜15質量%の炭素含有率が考慮されるべきである。
【0015】
さらにまた、本発明による粒子は、塩化物2質量%までを含有してよい。通例、塩化物の割合は、0.01〜1質量%である。
【0016】
さらに、本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子のBET表面積は、有利には10〜200m2/g、特に有利には25〜100m2/gである。
【0017】
高い加熱速度を得るために、3≦q≦7、酸化鉄の割合が60〜80質量%であり、かつ二酸化ケイ素の割合が20〜40質量%であり、かつBET表面積が30〜100m2/gである鉄−ケイ素酸化物粒子の有効性が示された。
【0018】
本発明の更なる対象は、鉄−ケイ素酸化物粒子の製造法であって、その際、
a)それぞれ1種以上の、
a1)Fe23及びSiO2を基準とした、製造されるべき鉄−ケイ素酸化物粒子にとって所望の比に応じた、酸化可能かつ/又は加水分解可能な蒸気状のケイ素化合物並びに酸化可能かつ/又は加水分解可能な蒸気状の鉄化合物
を包含する混合物の流、
a2)水素含有燃焼ガス及び
a3)酸素を含有するガス
を火炎中で反応させ、その際、下記:
a4)酸素の全量は、水素含有燃焼ガス、ケイ素化合物及び鉄化合物の完全な反応に少なくとも十分であり、
a5)ケイ素化合物、鉄化合物、燃焼ガス及び酸素から成る出発原料の量を、500〜3000℃の断熱火炎温度Tadが生じるように選択し、その際、
ad=[出発原料の温度+部分反応の反応エンタルピーの総和/反応後の物質の熱容量]、
ここで、該物質の比熱容量は1000℃に基づいている、
ことが適用され、
b)反応混合物から固体をガス状物質より分離し、かつ
c)該固体を、場合により無機表面改質剤及び/又は有機表面改質剤で処理することが適用される。
【0019】
反応後の物質は、本発明による粒子、水、二酸化炭素、酸素及び窒素を包含する。塩化物含有出発原料が使用される場合、さらに塩化水素が発生する。比熱容量は、例えばVDI−Waermeatlas[Heat atlas of German Engineers Association(VDI)](8th edition、sections 7.1〜7.3及び3.7)によって調べられることができる。
【0020】
その際、鉄化合物及びケイ素化合物の蒸気は、別個に又は一緒に、それぞれキャリアーガスによっても火炎中に導入されることができる。
【0021】
本発明による方法にとって重要なのは、鉄化合物及びケイ素化合物が蒸気状態で火炎に供給されることである。従来技術では、これらの出発原料の少なくとも1種がエーロゾルの形態で、すなわち、微細な液滴で火炎に供給される方法が記載されている。しかしながら、これらの方法は、本発明の鉄−ケイ素酸化物粒子を生まない。EP−A−1284485では、塩化鉄(II)水溶液又は塩化鉄(III)水溶液を微粒化することによって形成されたエーロゾルが火炎中に導入される。超常磁性酸化鉄ドメインが二酸化ケイ素マトリックス中に存在する、マトリックスドメイン構造を有する粒子が結果生じる。EP−A−2000439では、凝集一次粒子の形態で存在する鉄−ケイ素酸化物粒子が開示されており、その際、該一次粒子は、二酸化ケイ素及び酸化鉄が空間的に互いに切り離された領域を示す。ここでも、鉄化合物は、エーロゾルの形態で火炎中に導入される。
【0022】
そのうえ、火炎に供給されるガス及び蒸気から成る反応混合物の流出速度が10〜80m/sである場合に好ましくありうる。
【0023】
ガス状物質からの固体の分離に続けて、これを、ハロゲン含有出発原料が使用される場合に殊に、水蒸気により、好ましくは250℃〜750℃で、かつ1秒〜5分の平均滞留時間で処理することができる。従来技術からの係る方法は、当業者に公知である。ところで、高い処理温度でも、例えば500〜750℃の範囲内で、本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子の加熱能力に悪影響が及ぼされないことが明らかになった。
【0024】
本発明による方法では、原則的に、加水分解可能かつ/又は酸化可能である限り、蒸気状の全ての鉄化合物を用いることができる。実際には、鉄化合物を含有するか又は鉄化合物から成る蒸気の準備が、技術的に慣用のユニットにより行われている鉄化合物が用いられる。この際、特に有利には塩化鉄(III)が用いられることができる。
【0025】
該鉄化合物は、キャリアーガス、例えば窒素又は空気によって導入されることができる。
【0026】
鉄化合物と同じように、本発明による方法において、ケイ素化合物も蒸気状で存在し、かつ鉄化合物と同じように酸化可能かつ/又は加水分解可能である。適した化合物は、すぐに入手可能なことから、ハロゲン含有ケイ素化合物、殊にクロロケイ素化合物であってよい。有利には、該ケイ素化合物は、ClSH3、Cl2SiH2、Cl3SiH、Cl4Si、Cl3SiCH3及びn−C37SiCl3から成る群からの1種以上の化合物から選択される。
【0027】
本発明による方法の実施に特に適しているのは、塩化鉄(III)とCl4Si又は塩化鉄(III)とCl3SiCH3又は塩化鉄(III)とCl4Si及びCl3SiCH3からの混合物である。
【0028】
水素含有燃焼ガスとして、水素、メタン、エタン、プロパン及び/又は天然ガスが適しており、その際、水素が有利である。酸素を含有するガスとして、通例は、空気、又は酸素で富化された空気が用いられる。
【0029】
鉄−ケイ素酸化物粒子がなお表面改質されるべき場合、熱分解金属酸化物の表面改質の従来技術において記載されている方法通りに行ってよい。
【0030】
高い加熱能力を有する鉄−ケイ素酸化物粒子の製造のために、出発原料は、断熱火炎温度Tadが1500〜2800℃となるように選択される。1800〜2600℃の範囲が特に有利でありうる。
【0031】
鉄−ケイ素酸化物粒子が、交流磁界中で到達可能な高い温度で製造されるべき場合、ラムダ及びガンマを、
1<λ≦2かつ2.5≦γ≦20又は
1<λ≦2かつ1<γ≦2
となるように選択することが好ましいとされえ、
その際、γ(ガンマ)は、供給された水素/化学量論的に必要な水素として定義されており、かつλ(ラムダ)は、供給された酸素/化学量論的に必要な酸素として定義されている。
【0032】
反応体の負荷量cは、有利には0.5〜3モル/Nm3から選択される。鉄−ケイ素酸化物粒子が、交流磁界中で到達可能な高い温度で製造されるべき場合、c≧2モル/Nm3を選択することが好ましいとされえ、その際、cは、そのつどc=総和(鉄化合物+ケイ素化合物)[モル]/ガス容積[Nm3]として定義されている。
【0033】
本発明の更なる対象は、データ記載装置中での鉄−ケイ素酸化物粒子の使用、画像化法における造影剤としての使用、生化学的な分離法及び分析法のための使用、医療用途のための使用、ガラス表面や金属表面を研磨するための使用、触媒としての又は触媒担体としての使用、フィラーとしての使用、増粘剤としての使用、断熱のための使用、分散助剤としての使用、流動助剤としての使用、強磁性流体中や接着剤組成物中での使用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による粒子を示す図
図2A】x軸として2Θをプロットし、かつy軸として"カウント数"をプロットしたX線回折図
図2B】x軸として2Θをプロットし、かつy軸として"カウント数"をプロットしたX線回折図
【0035】

分析
BET表面積を、DIN ISO9277に従って測定する。
【0036】
粒子形態を、TME写真(TEM=透過型電子顕微鏡法)によって測定する。
【0037】
個々の粒子の組成を、TEM/EDX(エネルギー分散型X線分析(EDX))によって測定する。粉末組成を、X線蛍光分析によって測定する。
【0038】
X線回折図を、Stoe & Cie社(Darmstadt,Germany)の透過型回折計によって調べる。このために、本発明によるプロセスから得られた粉末をサンプルホルダーに詰め、表面を慎重に平滑にし、カッティングエッジ(Schneide)に対して光線に向けて調整する。
【0039】
パラメーターは、CuKα線、励起電流40mA、励起電圧40kVである。
【0040】
qを、そのようにして得られたX線回折図中で、回折角2Θ=34.5〜36.5°での最大シグナル高さ2及び回折角2Θ=32〜34°での最大シグナル高さ1を測定し、かつ最大シグナル高さ2/最大シグナル高さ1の商を計算することによって測定する。図2Aでは、これを、例1(q=0.3)に基づいて表し、図2Bでは、例8に(q=2.6)に基づいて表している。図2A及び2Bでは、x軸として2Θをプロットしており、かつy軸として"カウント数"をプロットしている。"X"は、最大シグナル高さ1のしるしであり、"o"は、シグナル高さ2のしるしである。
【0041】
磁界内で最大到達可能な温度の測定:鉄−ケイ素酸化物粒子200mgを1.5トンの圧力でプレスする。得られたタブレットは、平滑な表面と十分な安定性を有していた。それらをスライド上でインダクターに置き、かつ温度を無接触で測った。最大到達可能な温度の測定を、MF計測器(medium frequecny instrument)を用いて40kHにて実施する。記した到達最大温度は、各々のサンプルから作製した少なくとも2つのタブレットの測定からの最大温度の平均値である。
【0042】
例1:蒸気状の塩化鉄(III)0.47kg/h、蒸気状のテトラクロロシラン0.10kg/h、水素0.26Nm3/h及び空気4.26Nm3/hからの混合物を点火し、かつ火炎を反応室内へ燃焼させる。固体の反応生成物を、ガス状の反応生成物から分離し、続けて300℃の温度にて約5秒の時間にわたり水蒸気で処理する。
【0043】
得られた粉末は、89m2/gのBET表面積、及びFe23として計算された86.8質量%の含有率の酸化鉄を有する。
【0044】
X線回折図の評価からqが0.3であることが引き出される。
【0045】
TEM−EDX分析は、それぞれ酸化鉄からの部分と二酸化ケイ素からの部分とを有する回転楕円面形の粒子を示す。
【0046】
磁界内で最大到達可能な温度は82.5℃である。
【0047】
例2〜10を、同じように実施する。
【0048】
試験は、交流磁界内での定義された最大到達可能な温度を有する本発明による鉄−ケイ素酸化物粒子を製造できることを示している。
【0049】
【表1】
【0050】
1)SiCl4の代わりにメチルトリクロロシラン;
2)さらに加えて酸素0.30Nm3/h;
3)γ=供給された水素/化学量論的に必要な水素;
4)λ=供給された酸素/化学量論的に必要な酸素;
5)FeCl3+SiCl4若しくはメチルトリクロロシランの負荷量/ガス容積;
6)q=最大シグナル高さ2/最大シグナル高さ1;
7)磁界内で最大到達可能な温度
【符号の説明】
【0051】
A 酸化鉄側、 B 二酸化ケイ素側、 X 最大シグナル高さ1、 o シグナル高さ2
図1
図2A
図2B