特許第5748843号(P5748843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748843高透過性の酸化状態を有する多色共役系ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748843
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】高透過性の酸化状態を有する多色共役系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   C08G61/12
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-511355(P2013-511355)
(86)(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公表番号】特表2013-526648(P2013-526648A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】US2011037138
(87)【国際公開番号】WO2012021195
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/347,091
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アール・レイノルズ
(72)【発明者】
【氏名】シー・ポンジエ
(72)【発明者】
【氏名】メイ・ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】チャド・マーティン・アンブ
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/117025(WO,A1)
【文献】 特表2009−533878(JP,A)
【文献】 特表2013−504209(JP,A)
【文献】 特表2013−527285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
G02F 1/15−1/19
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数種の異なるドナー(D)を含む複数の繰り返し単位と、少なくとも1種のアクセプター(A)を含む複数の繰り返し単位とを含むランダム共役コポリマーであって、
少なくとも1種のD単位が可溶性置換基を有し、統計的にA繰り返し単位の一部が1つのD単位のみによって互いに分離されており、複数のA単位が可溶性置換基を有するD単位に隣接し、
該A単位が、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、キノキサリン、ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、ピリド[3,4−b]ピラジン、シアノビニレン、チアゾロ[5,4−d]チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン、チエノ[3,4−b]ピラジン、[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4−c]ピリジン、ベンゾ[1,2−c;4,5−c‘]ビス[1,2,5]チアジアゾール、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリン、4−ジシアノメチレンシクロペンタジチレン、ベンゾ[c]チオフェン、またはそれらの誘導体を含み、
該D単位が、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、またはアルキル置換チオフェンからなる可溶性置換基を有し、および中性状態の上記コポリマーが黒色または着色しており、酸化状態では退色している、該ランダム共役コポリマー。
【請求項2】
3,4−アルキレンジオキシチオフェンが以下のものを含む請求項1記載のランダム共役コポリマー:
【化1】
ここで、xは0または1、yは0または1、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、ヒドロキシ、C〜C30アルコキシ、C〜C14アリールオキシ、C〜C30アリールアルキルオキシ、C〜C30アルケニルオキシ、C〜C30アルキニルオキシ、C〜C30アリールアルケニルオキシ、C〜C30アリールアルキニルオキシ、COH、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【請求項3】
3,4−ジアルコキシチオフェンが以下のものを含む請求項1記載のランダム共役コポリマー:
【化2】
ここで、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【請求項4】
3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェンまたは3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェンは以下のものを含む請求項1記載のランダム共役コポリマー:
【化3】
ここで、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【請求項5】
上記のコポリマー鎖におけるD単位とA単位の相対位置が−[(D)A]−であり、xが1より大きい請求項1記載のランダム共役コポリマー。
【請求項6】
上記のコポリマー鎖におけるD単位とA単位の相対位置が−(DA)−(D’A)−であり、D’は第2のD単位を含み、xおよびyが1より大きい請求項1記載のランダム共役コポリマー。
【請求項7】
以下のことを含むランダム共役コポリマーの製造方法:
D単位を含む少なくとも2種のモノマーを用意すること、ここで該モノマーの少なくとも1種は、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、またはアルキル置換チオフェンを含む置換されたD単位を含み、モノマーを含む1種または複数種の第1のD単位は1対の第1の反応性基を有し、モノマーを含む第1のD単位の少なくとも1種は置換されたD単位であり、およびモノマーを含む1種または複数種のD単位が第1の反応性基と相補的である1対の第2の反応性基を有する;
ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、キノキサリン、ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、ピリド[3,4−b]ピラジン、シアノビニレン、チアゾロ[5,4−d]チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン、チエノ[3,4−b]ピラジン、[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4−c]ピリジン、ベンゾ[1,2−c;4,5−c‘]ビス[1,2,5]チアジアゾール、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリン、4−ジシアノメチレンシクロペンタジチレン、ベンゾ[c]チオフェン、またはそれらの誘導体を含むA単位を有する少なくとも1種のモノマーを用意すること、ここでA単位は一対の第2の反応性基を有する;および
D単位をA単位と重合させること、ここで得られるランダム共役コポリマーが−[(D)A]−の構造を有し、x>1およびn(x+1)≧10である。
【請求項8】
重合がスティルカップリング、熊田カップリング、鈴木カップリング、または根岸カップリングである請求項記載の方法。
【請求項9】
以下のことを含むランダム共役コポリマーの製造方法:
D単位を含む少なくとも2種のモノマーを用意すること、ここで該モノマーの少なくとも1種は、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、またはアルキル置換チオフェンを含む置換されたD単位を含み、モノマーを含む1種または複数種の第1のD単位は1対の第1の反応性基を有し、およびモノマーを含む第1のD単位の少なくとも1種は置換されたD単位である;
ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、キノキサリン、ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、ピリド[3,4−b]ピラジン、シアノビニレン、チアゾロ[5,4−d]チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン、チエノ[3,4−b]ピラジン、[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4−c]ピリジン、ベンゾ[1,2−c;4,5−c‘]ビス[1,2,5]チアジアゾール、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリン、4−ジシアノメチレンシクロペンタジチレン、ベンゾ[c]チオフェン、またはそれらの誘導体を含むA単位を有する少なくとも1種のモノマーを用意すること、ここでA単位は、第1の反応性基と相補的である一対の第2の反応性基を有する;および
D単位をA単位と重合させること、ここで得られるランダム共役コポリマーが−[(DA)−(D’A)−の構造を有し、Dは第1のD単位を表し、D’は別のD単位を表し、x≧1、y≧1、および2n(x+y)≧10である。
【請求項10】
重合がスティルカップリング、熊田カップリング、鈴木カップリング、または根岸カップリングである請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2010年5月21日に出願された米国仮出願第61/347,091号の利益を主張するものであり、すべての図、表および図面を含む当該出願の開示内容は、出典明示によりすべて本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、空軍科学研究事務所との契約第FA9550−1−0320および海軍研究事務所との契約第N00014−10−1−0454による政府の支援のもとでなされた。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
電気化学的な酸化および還元に伴い速くかつ可逆的な色変化が可能なポリマーエレクトロクロミックが過去20年に亘り大きな関心を集めている。これらエレクトロクロミックポリマー(ECPs)の最も安定なものを、窓、鏡(車のバックミラーやサイドミラー)および他のディスプレイ等のデバイス並びに他のデバイスの中に組み入れることに特に重点が置かれている。最近、合成の導電性ドナー−アクセプター(DA)ポリマーが、エレクトロクロミックポリマー(ECPs)として優れた特性を有することが報告された。
【0004】
「ドナー−アクセプター」(DA)の手法は、ハビンガらの”Synthetic Metals, 1993, 55, 299”により巨大分子系に対して最初に報告されたものであり、電子潤沢性ドナー(D)セグメントと電子欠乏性アクセプター(A)セグメントの交互配置により共役系ポリマー(CPs)において、紫外吸収バンド、可視吸収バンドおよび近赤外吸収バンドの調整を可能としている。これらのDAポリマーでは、アクセプターは還元され易く、一方ドナーは酸化され易い。電界効果トランジスタ、発光ダイオードおよび光電池等に用いられるCPsの光学的特性および電子特性の調整にこの手法が用いられている。これらの目的のため、加法三原色空間における補色である、赤色、青色および緑色を持ったECPsに多くの努力が向けられている。これら各色を有するECPsは製造されたが、それらは光コントラスト、スイッチング速度、安定性、加工性または大規模製造性が多くの場合十分ではない。
【0005】
エレクトロクロミック材料として使用され、中性状態で緑色、青色または黒色を有する共役系ポリマーは、1.75eVより低い光学バンドギャップを必要とする。有機光電池、電界効果トランジスタおよび発光ダイオードに用いる共役系ポリマーのバンドギャップ技術を可能とする低ギャップ材料を達成するために、DA手法が使用されている。興味深いことに、DAポリマーは2つの別個の光学吸収バンドを一般的に示し、該バンドを、主鎖のアクセプター部分に対するドナーの濃度に応じて調節することができる。DA型ポリマーのデュアルバンド吸収特性を調整することにより、所望の色を得ることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透過性エレクトロクロミックDAポリマーを多色化するための簡単な合成方法は、遷移金属による重縮合により可能であり、その方法は、本発明者らを含む研究グループにより開示されており、”Amb et al., Adv. Mater. 2009, 21, 1”に記載されている。一般的な鈴木重合条件を用い、アリールジボロン酸エステルおよびアリールジハライドをパラジウム触媒を用いてクロスカップリングし、正確に交互配置したポリマーを得る。規則的なポリマーが形成されるこの方法により、青色飽和色から透過性へ変化するポリマーが得られたが、単一のアリールジスタンナンモノマーを単一のアリールジハライドとカップリングすることにより、黒色飽和色から透過性に変化するエレクトロクロミックポリマー(ECPs)の製造についてはより限定された成功が得られただけである。完全酸化状態では同じ領域で事実上退色しながら、完全中性状態で全可視スペクトル(400〜750nm)に亘り均等な吸収を達成することは、本来的には困難である。これは、本発明者らを含む研究グループにより、対称三量体D−A−D種のランダム酸化重合、”ボージュジュら、Nat. Mater. 2008”、を用いて以前達成された。オリゴマー種の合成は、追加の工程およびそれに付随するコストを必要とする。バッチ方式によっても吸収スペクトルの高い再現性を備え、容易に大規模化可能な効率的な方法による、黒色飽和色を含む様々な色の飽和中性状態のポリマーを生成させる簡単なデザインおよび方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、複数のドナー(D)繰り返し単位と複数のアクセプター(A)繰り返し単位とを有するランダム共役コポリマーに関する。D単位は、単一の構造を有するものでもよく、あるいは多数の可能な構造を有するものでもよいが、ランダム共役コポリマーの中のD単位の少なくとも1つが、可溶性置換基を有し、統計的にその一部がコポリマーのA単位に隣接している。A単位は1種より多くてもよく、A単位は、D単位により別のA単位と分離され、統計的にA単位の一部が1つのD単位のみにより分離されている。本発明のいくつかの態様では、ランダム共役コポリマーは、配列[(D)A]−を有し、xは1より大きい。本発明の別の態様では、ランダム共役コポリマーは、配列−(DA)−(D’A)−を有し、DとD’は少なくとも2つの異なる構造ドナー単位であり、xとyの両方が1より大きい。本発明の態様に係るランダム共役コポリマーは、中性状態では黒色または着色しており、酸化状態では高透過性である。
【0008】
可溶性置換基を有するD単位には、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、またはアルキル置換チオフェン単位を挙げることができる。A単位は、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール、キノキサリン、ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、ピリド[3,4−b]ピラジン、シアノビニレン、チアゾロ[5,4−d]チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、2,2’−ビチアゾール、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン、チエノ[3,4−b]ピラジン、[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4−c]ピリジン、ジシアノビニレン、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリン、4−ジシアノメチレンシクロペンタジチオレン、ベンゾ[c]チオフェンまたはこれら単位のすべての誘導体、例えば置換体、を挙げることができる。
【0009】
本発明の他の態様は、ランダム共役コポリマーの製造方法に関する。本発明の一態様として、少なくとも2種のモノマーがD単位を提供し、該モノマーの少なくとも1種が上記の種類の置換されたD単位を提供する。モノマーを含む1種または複数種の第1のD単位は、一対の第1の反応性基を有し、モノマーを含む該第1のD単位の少なくとも1種の置換されたD単位を提供する。モノマーを含む1種または複数種の第2のD単位は、第1の反応性基と相補的な一対の第2の反応性基を有している。本発明のこの態様では、上記の種類のA単位を含む少なくとも1種のモノマーは、一対の第2の反応性基を有している。第1の反応性基と第2の反応性基との間で反応が起こることにより、モノマーは重合し、−[(D)A]−、ここでx>1およびn(x+1)≧10で表される構造を有するランダム共役コポリマーが生成する。限定されるものではないが、利用できる重合反応には、スティルカップリング、熊田カップリング、鈴木カップリング、または根岸カップリングが挙げられる。
【0010】
本発明の別の態様では、ランダム共役コポリマーの製造方法は、D単位と一対の第1の反応性基を含む少なくとも2種のモノマーと、第1の反応性基と相補的な一対の第2の反応性基を有する上記の種類のA単位を含む少なくとも1種のモノマーを用意することを含む。D単位を含むモノマー、第1のD単位を有するモノマーの少なくとも1種は、上記の置換されたD単位を有している。D単位を含むモノマーとA単位を含むモノマーは、第1の反応性基と第2の反応性基との間の反応により重合して、−[(DA)−(D’A)−の構造を有するランダム共役コポリマーを形成する。ここで、x≧1、y≧1、および2n(x+y)≧10である。限定されるものではないが、利用できる重合反応には、スティルカップリング、黒田カップリング、鈴木カップリング、または根岸カップリングが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一態様であり、ジスタンニルProDOT−(CHOEtHx)(4)モノマーと、ジブロモProDOT−(CHOEtHx)(5)モノマーの製造およびそれらとジブロモベンゾチアジアゾール(BTD)との重合によりランダム共役コポリマーが生成することを示す合成スキームである。
図2図2は、本発明の一態様であり、a)表1の組成物のコポリマー PS−1〜PS−5のクロロホルム溶液の吸収スペクトル、b)トルエン溶液(2mg/mL)からITO被覆ガラスの上に吹き付け流延されたコポリマー PS−1〜PS−5のフィルムの吸収スペクトル、c)コポリマー PS−3、PS−3−s1およびPS−3−s2のクロロホルム溶液の吸収スペクトル、d)コポリマー PS−4、PS−4−s1およびPS−4−s2のクロロホルム溶液の吸収スペクトル、およびe)コポリマー PS−3−s3、PS−4−s1、PS−6、およびPS−7のクロロホルム溶液の吸収スペクトルのプロットであり、すべてのスペクトルは、ポリマーの長波長域の吸収極大に基づいて規格化されている。
図3図3は、本発明の一態様であり、a)トルエン溶液(2mg/mL)からITO被覆ガラスの上に吹き付け流延されたコポリマーPS−3フィルムの電気化学的酸化に伴う分光電気化学の吸収プロットであり、電気化学的酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線を準基準電極にし(Fc/Fc+基準)、白金線を対極にし、−0.25から+0.53V vs. Fc/Fc+の範囲で25mVごとに電圧を印加して行った;b)吹き付け流延されたPS−3の印加電圧と相対輝度の関係を示すものであり、Lは、完全に中性状態の場合と、完全に酸化状態の場合の値を示す;およびc)ITO上に吹き付け流延されたコポリマーPS−3の矩形波ポテンシャルステップクロノアブソープトメトリーのプロットであり、0.1M LiBTI/PC電解質溶液中、-0.72〜+0.48V vs.Fc/Fc+の電圧間でステップ時間を10s、2sおよび1sとし、540nmで測定した。
図4図4は、本発明の一態様であり、4および5とジブロモジオクチルキノキサリン(7)との重合により、ランダム共役コポリマー(モノマー比: 1:0.75:0.25)が生成することを示す。
図5図5は、本発明の一態様であり、a)ランダム共役コポリマーPS−6(モノマー比: 1:0.75:0.25)の溶液の吸収スペクトルと、b)トルエン溶液(2mg/mL)からITO被覆ガラスの上に吹き付け流延されたコポリマーPS−6の電気化学的酸化に伴う分光電気化学の吸収スペクトルを示し、該電気化学的酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線の準基準電極と、対極に白金線を用い、0.07、0.17、0.22、0.295、0.32、0.37および0.52V vs. Fc/Fc+の電圧を印加して行った。
図6図6は、本発明の一態様であり、交互コポリマーPS−7とランダム共役コポリマーPS−8の製造のための合成スキームを示す。
図7図7は、本発明の一態様であり、ランダムコポリマーPS−7と、モノマー比率がx=0.8とy=0.2であるランダム共役コポリマーPS−8の溶液の吸収スペクトルと、b)トルエン溶液(2mg/mL)からITO被覆ガラスの上に吹き付け流延されたコポリマーPS−7の電気化学的酸化に伴う分光電気化学の吸収スペクトルを示し、該電気化学的酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線の準基準電極と、対極に白金線を用い、-0.48、-0.28、-0.08、0.12、0.32および0.52V vs. Fc/Fc+の電圧を印加して行った。
図8図8は、本発明の一態様であり、交互コポリマーPS−9、ランダム共役コポリマーPS−10(モノマー比:x=0.8、y=0.2)およびPS−11(x=0.8、y=0.2)の製造のための合成スキームを示す。
図9図9は、a)交互コポリマーPS−9、ランダム共役コポリマーPS−10(モノマー比:x=0.8、y=0.2)およびPS−11(x=0.8、y=0.2)の溶液の吸収スペクトルと、b)トルエン溶液(1mg/mL)からITO被覆ガラスの上に吹き付け流延されたコポリマーPS−7の電気化学的酸化に伴う分光電気化学の吸収スペクトルを示し、該電気化学的酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線の準基準電極と、対極に白金線を用い、0.22、0.32、0.42、0.52、0.62、0.72、0.92および1.02V vs. Fc/Fc+の電圧を印加して行った。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様は、少なくとも1種のドナー(D)を含む複数の繰り返し単位と、少なくとも1種のアクセプター(A)を含む複数の繰り返し単位とを含む可溶性のランダム共役コポリマーの製造に関し、統計的にA繰り返し単位の一部が1つのD単位のみによって互いに分離されており、複数のA単位が可溶性置換基を有するD単位に隣接している。上記のコポリマーは、少なくとも1つのD単位と少なくとも1つのA単位を有する2種またはそれより多い識別可能な繰り返し単位を有している。本発明の一態様では、上記のコポリマーは、1つのD単位と1つのA単位からなる2つの繰り返し単位からなり、A単位の間のD単位の数は統計的である。本発明の別の態様では、上記のコポリマーは複数の異なるD単位を有し、D単位とA単位とが交互配置されている。A単位は、単一の単環芳香族単位または縮合多環芳香族単位を含む。本発明の1つまたは複数の態様に基づいて、コポリマーの組成を変化させることにより、黒色、赤色、緑色、青色、または他の色となるように中性状態のコポリマーを設計することができる。ポリマーは10またはそれより多い繰り返し単位を持つことができる。本明細書に開示された可溶性のランダム共役コポリマーは、2011年1月6日に公開された、Amb らの、PCT国際特許出願公開第WO/2011/003076の「可溶性の交互ドナー−アクセプター共役ポリマーエレクトロクロム」に開示された交互コポリマーを補完するものであり、出典明示によりその内容が本明細書に組み入れられる。
【0013】
本発明の一態様では、可溶性のランダム共役コポリマーは、スティル重合を用いる方法で製造される。本発明の他の態様では、熊田カップリング、鈴木カップリング、および根岸カップリング等の他のアリール−アリールクロスカップリングを用いることができ、それにより目的のコポリマーが得られる。本明細書のすべての実施例で用いられているスティル重合以外の重縮合反応を用いる場合、本明細書に開示された種類のコポリマーが得られるように重合をさせるためには、どのような適切な相補的な反応性官能基が必要か、および所定のモノマーの中にどのような官能基を導入すべきかについて、当業者は容易に理解できる。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、可溶性のランダム共役コポリマーのコポリマー配列は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、またはポリマーネットワークのセグメントである。例えば、当業者であれば理解できるように、D単位および/またはA単位をモノ末端とするポリマーを、本発明の態様に基づいて他のD単位および/またはA単位との交差縮合重合に用いて三元ブロックコポリマーを形成することができ、またはD単位末端および/またはA単位末端のポリマーの一部は、両端で停止して多元ブロックコポリマーを形成し、またはD単位末端および/またはA単位末端のすべてのポリマーは、重合により架橋ネットワークが形成されるように、分岐し、かつ十分な数のポリマー末端で停止する。エレクトロクロミック特性を付与するランダム共役コポリマーに結合する他のポリマーセグメントは、ステップ成長プロセスまたは連鎖成長プロセスにより製造できるポリマーであればよく、および当業者には理解できるように、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、またはポリマーネットワークのノンランダム共役セグメントは、ランダム共役コポリマー配列が形成される前、形成される間または形成後に形成されてもよい。ランダム共役コポリマー配列における反応、例えば、1つまたは複数のドナー単位上の置換基の変換により、または、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、またはポリマーネットワークのランダム共役コポリマー配列に結合した1つまたは複数の別のポリマーセグメントを含む反応により、ランダム共役コポリマー配列を異なるコポリマーに変換できる。ランダム共役コポリマー配列の他のポリマーセグメントへの結合は、DまたはAの中間単位上の置換基からでもよく、またはコポリマー配列の末端単位からでもよい。例えば、D単位および/またはA単位が末端であり、その末端官能基が、ポリマーセグメントの末端と、あるいはポリマーセグメントの末端または繰り返し単位へと変換されるモノマー種と反応して結合を形成することができる。本発明の別の態様では、D単位、A単位、またはランダム共役コポリマー配列の少なくとも1つが、自己会合または複数の機能性添加剤と交差会合し、水素結合、イオン双極子、イオンキレート、双極子―双極子、または他の非共有結合力等の非共有相互作用を通して超分子構造を形成する。例えば、いくつかのD単位を特定のポリオール基と置換してもよく、該ポリオール基は溶媒により容易に溶媒和されるが、ランダム共役コポリマーまたは他の添加剤の1つまたは複数の別のポリオールと特異的に強く会合し、溶媒を除去すると超分子複合体を形成する。
【0015】
本発明の態様に係る新規なランダム共役コポリマーは、可視域において高い光コントラストを示し、以前にエレクトロクロミックポリマー(ECPs)として報告されているポリマーに比べても往々にして優れたスイッチング速度とスイッチング安定性を有している。これらの溶液処理可能で、着色から透過性へと変化するポリマーは、低い製造コストと良好な大規模化を可能とする溶解性と、従来の着色から透過性へと変化するポリマー対応物と比較して向上した電気光学特性および機械特性を可能とする他の物理特性とを兼ね備えているので、反射性および透過性のエレクトロクロミックデバイス(ECDs)として有利である。
【0016】
可溶性のランダム共役コポリマーは、少なくとも3種のモノマーのステップ成長重合の生成物であり、少なくとも2種のモノマーは同じ反応性官能基を有し、および少なくとも1種のモノマーは、本発明の態様に基づき相補性の官能基を有している。複数のモノマーが異なるD単位を有しかつ同様の反応性官能基を有し、および複数のモノマーが同様のA単位を有しかつ相補的な官能基を有するような本発明の態様では、得られる三元ポリマーは、交互配置されたD単位とA単位を有し、異なるD単位が鎖に沿ってランダムに分布している。同様に、複数のモノマーが異なるアクセプター単位を有しかつ同様の反応性官能基を有し、および複数のモノマーが同様のドナー単位を有しかつ相補的な官能基を有するような本発明の態様では、得られる三元ポリマーは、交互配置されたD単位とA単位を有し、異なるA単位が鎖に沿ってランダムに分布している。モノマーを含む複数のD単位およびモノマーを含むすべてのA単位が同様の反応性官能基を有し、およびモノマーを含む複数のDが他のモノマーに対する相補的な官能基を有しかつ同じD単位構造を有するような本発明の態様では、得られるコポリマーは、統計的に分布するD単位により分離された隔離されたA単位を有している。本発明の一態様では、モノマーを含むすべてのA単位が同じ反応性官能基と、モノマーを含むいくつかのD単位の官能基と類似し、モノマーを含む他のD単位に対して相補的である反応性官能基とを含む場合、モノマーを含む異なるA単位を複数用いることができる。
【0017】
D単位によりA単位を互いに分離することができるので、およびD単位がランダムに分布したA単位の間に、または種々の構造例により束縛されたA単位の間に1つのD単位のみを位置させることができるので、コポリマー組成の調整により得られる特性を調整することにより、酸化状態で若干の着色または無色の透明状態となり、中性状態では所望の不透明な色を有するコポリマーを設計することができる。必要なモノマーは容易に合成および分離することができる。それは、それらモノマーが、1つまたは複数の、縮合芳香環またはヘテロ芳香環を有するとともに、その芳香環を接続し、モノマーの重合によってのみ形成される結合を有する、1つのA単位またはD単位を含んでいるからである。用いるモノマーは実質的にはオリゴマーではない。実質的にオリゴマー的であるモノマーは、追加の合成ステップを必要とし、実質的にモノマーであるものよりも製造することおよび使用することがより難しい。この方法により、重合を大規模に行うことができ、所望の化学量論性を容易に達成できる。
【0018】
本発明の態様に用いられるD単位には、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、またはアルキル置換チオフェン、またはそれらの組み合わせが含まれる。さらに、他のD単位も含まれ、それには、未置換チオフェン繰り返し単位の割合が、所望の溶解性とエレクトロクロミック特性に悪影響を与えることのない程度に、1つの繰り返し単位または複数の繰り返し単位が、チオフェンまたは置換チオフェンまたはオリゴチオフェンまたは置換オリゴチオフェンとして含まれる。D単位の部分は、アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−ジアルコキシチオフェン、3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン、3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン、および/またはアルキル置換チオフェンであり、十分な量が用いられ、これらD単位の少なくともいくつかは、可溶性のランダム共役コポリマーのA単位に統計的に隣接している。例えば、D単位の約10〜100モル%が置換されたモノマーである場合、溶解性が達成できる。通常、A単位が置換されておらず、そのためランダム共役コポリマーの溶解性に影響を与えない場合、置換D単位のかなりの割合、例えば、すべてのD単位の約25から約100モル%が、溶解性のためには必要である。
【0019】
適切な3,4−アルキレンジオキシチオフェンは、以下の構造を有している。
【0020】
【化1】
【0021】
ここで、xは0または1、yは0または1、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、ヒドロキシ、C〜C30アルコキシ、C〜C14アリールオキシ、C〜C30アリールアルキルオキシ、C〜C30アルケニルオキシ、C〜C30アルキニルオキシ、C〜C30アリールアルケニルオキシ、C〜C30アリールアルキニルオキシ、COH、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【0022】
適切な3,4−ジアルコキシチオフェン単位は以下のものを含む。
【0023】
【化2】
【0024】
ここで、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【0025】
適切な3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェンおよび3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェンは以下の構造を有する。
【0026】
【化3】
【0027】
ここで、RおよびRは独立に、水素、C〜C30アルキル、C〜C30アルケニル、C〜C30アルキニル、C〜C14アリール、C〜C30アリールアルキル、C〜C30アリールアルケニル、C〜C30アリールアルキニル、C〜C30アルキルエステル、C〜C15アリールエステル、C〜C30アルキルアリールエステル、C〜C30アルケニルエステル、C〜C30アルキニルエステル、NH、C〜C30アルキルアミノ、C〜C14アリールアミノ、C〜C30(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニルアミノ、C〜C30アルキニルアミノ、C〜C30(アリールアルケニル)アミノ、C〜C30(アリールアルキニル)アミノ、C〜C30ジアルキルアミノ、C12〜C28ジアリールアミノ、C〜C30ジアルケニルアミノ、C〜C30ジアルキニルアミノ、C〜C30アリール(アルキル)アミノ、C〜C30ジ(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミノ、C15〜C30アリール(アリールアルキル)アミノ、C〜C30アルケニル(アリール)アミノ、C〜C30アルキニル(アリール)アミノ、C(O)NH(アミド)、C〜C30アルキルアミド、C〜C14アリールアミド、C〜C30(アリールアルキル)アミド、C〜C30ジアルキルアミド、C12〜C28ジアリールアミド、C〜C30アリール(アルキル)アミド、C15〜C30ジ(アリールアルキル)アミド、C〜C30アルキル(アリールアルキル)アミド、C16〜C30アリール(アリールアルキル)アミド、チオール、C〜C30アルキルヒドロキシ、C〜C14アリールヒドロキシ、C〜C30アリールアルキルヒドロキシ、C〜C30アルケニルヒドロキシ、C〜C30アルキニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルケニルヒドロキシ、C〜C30アリールアルキニルヒドロキシ、C〜C30ポリエーテル、C〜C30ポリエーテルエステル、C〜C30ポリエステル、C〜C30ポリアミノ、C〜C30ポリアミノアミド、C〜C30ポリアミノエーテル、C〜C30ポリアミノエステル、またはC〜C30ポリアミドエステルである。
【0028】
本発明の態様で用いることのできるA単位は、電子欠乏性の芳香族単位、シアノビニレン単位またはジシアノビニレン単位である。適切な電子欠乏性芳香族単位は、本発明の態様に基づき共役ポリマーを達成できるA単位を含み、所望の不透明な中性状態の色を呈し、酸化状態では若干着色または無色の透明状態になるものであり、特に限定されるものではないが、以下のものを含む:ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール;ベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール;キノキサリン;ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール;ピリド[3,4−b]ピラジン;シアノビニレン;チアゾロ[5,4−d]チアゾール;1,3,4−チアジアゾール;ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン;[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−c]ピリジン;チエノ[3,4−b]ピラジン;[1,2,5]オキサジアゾロ[3,4−c]ピリジン;ベンゾ[1,2−c;4,5−c‘]ビス[1,2,5]チアジアゾール;[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリン;4−ジシアノメチレンシクロペンタジチレン;ベンゾ[c]チオフェン;またはそれらの誘導体。当業者であれば、本明細書の開示内容を参照することにより、最小限の実験で、A単位およびD単位の知られた光学特性に基づき、所望の色のために、適切なA単位およびB単位並びにそれらの組み合わせを容易に選択することができる。
【0029】
本発明の一態様では、ランダム共役コポリマーは、−[(D)A]−の構造を有し、ここで、平均してx>1であり、複数のD単位がA単位を分離し、D単位は例えば概ね正規なフローリー−シュルツ分布によってA単位の間にランダムに分布し、xが1の時、コポリマーは少なくともいくつかのD単位配列を含む。A単位は、1つのA単位または複数の異なるA単位でもよい。D単位は、1つまたは複数の以下のものを含む:アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン;3,4−ジアルコキシチオフェン;3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン;3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン;置換されたチオフェンがいくつかのまたはすべてのA単位に統計的に隣接しているアルキル置換チオフェン。
【0030】
本発明の別の態様では、ランダム共役コポリマーは、−[(DA)−(D’A)]−の構造を有し、D単位とA単位は交互に位置するが、少なくとも1つのD単位は鎖に沿ってランダムに配置され、例えば三元ポリマーでは、DA配列とD’A配列の長さはD繰り返いし単位およびD’繰り返し単位の比率によって規定され、(DA)配列および(D’A)配列は、概ね正規なフローリー−シュルツ分布を有している。D単位とD’単位の少なくとも1つは、例えばDで示され、以下のものである:アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェン;3,4−ジアルコキシチオフェン;3,6−ジアルコキシチエノ[3,2−b]チオフェン;3,5−ジアルコキシ−ジチエノ[3,2−b:2’、3’−d]チオフェン;またはアルキル置換チオフェン。
【0031】
本発明の1つの典型的な態様では、ランダム共役ポリマーは、−[(D)A]−の構造を有し、2,5−ジブロモ−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンと、2,5−トリブチルスタンニル−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンの両方がProDOT−(CHOEtH D単位をコポリマーに与える一方、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(BTD)がA単位をコポリマーに与えており、ブロム基の濃度がトリブチルスタンニル基の濃度と等しくなるように、それらが異なる仕込み量で結合されている。このポリマーは2つの吸収帯を与え、全ドナー/アクセプター比が約7/1では、可視スペクトルのほとんどの領域で均一な吸収を有する均衡した強度を示す。上記の−[(ProDOT−(CHOEtHBTD)]−ランダム共役ポリマーは、電位窓1V未満で、不透明な黒色の中性状態から高い透過性の酸化状態へと、速くかつ可逆なスイッチングを示し、低電圧デバイスへの応用が可能である。
【0032】
本発明の別の態様では、ランダム共役ポリマーは、−[(D)A]−の構造を有し、A単位の電子受容力を類似のD単位に応じて変化させることによって、吸収を600nm以下の広い領域に閉じ込めることができ、赤色光のみを反射または透過させることができる。例えば、ProDOT−(CHOEtH単位を与える、2,5−ジブロモ−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンおよび2,5−トリブチルスタンニル−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンと、5,8−ジブロモ−2,3−ジヘキシルキノキサリンとを仕込み比約0.75:1:0.25でランダム共重合すると、赤色から透過性へと切り替わるコポリマーが形成され、約400nm〜約600nmに広い吸収を示す。
【0033】
本発明の別の態様では、ランダム共役ポリマーが−[(DA)−(D’A)]−の構造を有し、D単位とA単位は交互に位置するが、2つのD単位は鎖に沿ってランダムに配置され、赤色光と青色光を吸収する中性状態で緑色のコポリマーを製造でき、コポリマーの組成によりエネルギーギャップを細かく調整できる。例えば、2,5−トリブチルスタンニル−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンと、5,7−ジブロモ−2,3−ジメチルチエノ[3,4−b]ピラジンを1:1の比率にすると、緑色と透明との間を切り替わる交互コポリマーが得られ、共重合混合物の中に2,5−トリブチルスタンニル−3,4−エチレンジオキシチオフェンを混合すると、ProDOT−(CHOEtH D単位だけでなく、EDOT D単位もコポリマーの中に存在するので、コポリマーの吸収帯を細かく制御して変更できる。
【0034】
本発明のいくつかの態様では、ランダム共役コポリマーのD単位またはD単位およびA単位の置換基は、非極性側鎖を有している。別の態様では、置換基は極性またはイオン性の側鎖を有し、限定するものでないが、エーテル、エステル、アミド、カルボン酸、スルホン酸塩、およびアミンの官能化鎖を含む。極性またはイオン性の置換基を導入することにより、金属表面または金属酸化物表面、例えば、限定されるものではないが、太陽電池(グレッツエルセル)または他のデバイスに使用されるチタニアの表面に吸着するようにランダム共役コポリマーを設計することができる。本発明のポリマーと類似または相違する、別のエレクトロクロミックポリマーの溶解性とは大きく異なる溶解性を付与できる置換基を有しているので、交互堆積法による複雑なエレクトロクロミックデバイスの作製が可能となる。
【0035】
アルキレン架橋部が置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェンを用いる本発明のいくつかの態様では、ランダム共役コポリマーを、続けて異なるコポリマーへと変換できるフィルムへと処理することを可能とするように置換基を設計することができ、例えば、可溶性フィルムを不溶性フィルムに変換できる。例えば、3,4−アルキレンジオキシチオフェンがジエステル置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンであり、エステル基のカルボン酸基への変換は、2007年8月2日に公開されたレイノルズらの国際特許出願公開第WO2007/087587A2に開示された方法で行うことができ、出典明示によりその内容は本明細書に組み入れられる。必要により、得られた二酸を二カルボン酸塩に続いて変換できる。
【0036】
本発明の態様に基づくランダム共役コポリマーを多くの用途およびデバイスに用いることができる。コポリマーは以下のものの成分として用いることができる:エレクトロクロミックな窓、鏡またはディスプレイ;太陽エネルギーを回収し、電気を発生させるポリマー光電池;他の光電池デバイス;電子ペーパー;静電防止導電体および透明導電体;電界効果トランジスタ、スーパーキャパシター、二次電池および他の電子部品;および近赤外線検出器。例えば、その用途の1つは、バルクヘテロ接合太陽電池の活性層である。ドナー基の置換基は、色素増感太陽電池において、極性カルボン酸基またはリン酸塩基を通してコポリマーの吸収を金属酸化物へと向けるとともに促進させる構造を有するものでもよい。本発明の態様に基づくランダム共役コポリマーの別の用途は、電界効果トランジスタデバイスの電荷移動層である。
【実施例】
【0037】
方法および材料
仕込みモノマー比が異なる、−[(D)A]−構造を有する一連のランダム共役コポリマーを、図1に示す反応を用いて製造し、以下の表1にまとめた。種々のコポリマーの吸収スペクトルを図2に示す。コポリマーPS−3−s1およびPS−3−s2は、表1および図2cに示すように、分子量(Mn)、PDIおよび溶液吸収については、PS−3のそれと矛盾しない結果を示している。モノマーの仕込み比を調整することにより、コポリマーの吸収パターンに対する有効で矛盾のない指示手順が達成された。本発明の態様に基づく共重合方法により、一貫した分子量と光学スペクトルが得られた。
【0038】
一連の−[(D)A]−型ランダム共役コポリマーのクロロホルム中の紫外可視吸収スペクトルを図2aに示す。代表的なドナー−アクセプターポリマーの可視吸収スペクトルは、2つの異なる吸収帯を一般的に有している。これに対し、PS−1からPS−5のランダム共役コポリマーのスペクトルは、短波長および長波長の光学遷移が合体し、明確なピーク間の窓が認められない。これらのコポリマーの中で、PS−1は比較的低濃度の電子潤沢性繰り返し単位を有しており、461nmを中心とする短波長吸収は最も強度が小さい。700〜750nmの暗赤色光吸収が存在しないだけでなく、青色光および緑色光(400〜580nm)の吸収が減少したことを考慮すると、PS―1の溶液は青色を与える。ProDOT−(CHOEtH単位の相対量を増加させると、2つの吸収帯の間の強度差が減少し、高エネルギー遷移と低エネルギー遷移が、それぞれ深色シフトと浅色シフトを示す。D/A比率が7の場合、2つの吸収帯の強度が均衡し、PS−3とPS−4には可視スペクトル(450〜650nm)のほとんどの領域で均一な吸収が認められた。PS−3とPS−4の溶液は、遠い青色領域および赤色領域の吸収が存在しないので、同様の強度の紫黒色を有している。PS−5の吸収は、ドナー濃度が増加すると、低エネルギー遷移(572nm)よりも高エネルギー遷移(530nm)で高い強度を示す。ポリマーPS−4−s1とPS−4−s2は、ポリマーPS−4と同じモノマー比を用いて合成した。その3種のポリマーは、図2dに示すように、ほとんど同じ溶液吸収を示した。
【0039】
ランダムコポリマーPS−6とPS−7を、以下の表1に示すように仕込みモノマー比を少し変化させて製造した。図2eから明らかなように、PS−6の溶液吸収は、低いドナー濃度では、低エネルギー遷移(600nm)よりも高エネルギー遷移(530nm)の方が低い強度を示した。ドナー濃度を0.005%だけ増加させると(ドナー濃度を下げると)、ポリマーPS−7は高エネルギー遷移において比較的高い吸収強度を示した。ポリマー構造のこれらの小さな変化は、ポリマー溶液の吸収に識別可能な変化を与えるが、ポリマーの溶液状態または固体状態における吸収スペクトルの差異は裸眼では識別することはできない。コポリマーPS−1からPS−5の薄いフィルムは、2mg/mLのトルエン溶液からインジウムスズ酸化物(ITO)被覆スライドガラスの上にフィルムとして吹き付け流延したものである。そのフィルムの可視吸収スペクトルは、図2bに示すように、5つのすべてのポリマーの溶液のスペクトルに比べ、固体状態では赤色シフト(7〜25nm)した。それらの中性状態の低エネルギー光学遷移の開始点から決定したところ、5つのコポリマーは、1.6〜1.7eVのバンドギャップを有していた。
【0040】
【表1】
【0041】
図3aは、2mg/mLのトルエン溶液からITO被覆スライドガラス上に吹き付け流延されたフィルムの分析により得られた、ランダム共役コポリマーPS−3の分光電気化学挙動を示している。分析する前に、フィルムの酸化還元を繰り返して安定で再現性ある切り替えを確認し、次いで-0.25Vから+0.35V vs.Fc/Fc+まで25mVごとにフィルムの電気化学酸化を行った。フィルムの電気化学酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線を準基準電極にし(Fc/Fc+基準)、白金線を対極にして行った。
【0042】
コポリマーを酸化すると、可視域の幅広い吸収は消失し、近赤外(800〜1200nm)にポーラロン遷移が現れ、さらにはNIRの中にバイポーラロン遷移として変化していく。完全に酸化されると、1600nmを超えるバイポーラロン吸収ピークは、可視吸収を事実上退色させ、人間の目に対して非常に高いレベルの透明性を与える。さらに、%透過率で表されるエレクトロクロミックコントラストΔ%Tは、波長540、591、635nmで、それぞれ51%、46%、41%であった。
【0043】
電気化学スイッチングに伴うランダム共役コポリマーの色変化を、国際照明委員会の1976L*a*b*色標準に基づき評価した。様々の厚さの3種のPS−3フィルムを比色分析に供した。相対輝度変化、それは透過光の輝度を、人間の視覚に合わせて補正された光源の輝度のパーセントとして推定するもので、ドーピングレベルを変化させて測定され、図3bにプロットされている。中性状態では、コポリマーフィルムのL*値は、最も厚いもので46、最も薄いもので75であった。吸収極大1.1a.u.を有するフィルムは、深黒色であり、a*値とb*値は3と−11と低いが、完全に酸化されたコポリマーフィルムは、82〜92の高いL*値と、小さなa*値とb*値を示し、このコポリマーがL*a*b*色座標で規定されるほとんど無色の状態へと到達できることを示している。
【0044】
1M LiBTI/PC電解質溶液中、-0.72Vから+0.48V vs.Fc/Fc+の電位範囲で、10秒、2秒、および1秒の矩形波電位ステップを印加することにより、540nmにおいて時間に対する変化として観察される、透過率変化(ECコントラスト、Δ%T)を観察することによりPS−3薄膜のスイッチング速度を調べた。図3cに示すように、540nmで観察される透過率変化は、長いスイッチ時間10秒では47%の高さであり、スイッチ時間を1秒に短縮すると、コントラストは42%に減少した。
【0045】
−[(D)A]−型構造のランダム共役コポリマーは、コポリマーPS−6について図4に示すように、ProDOT−(CHOEtH繰り返し単位を与える2,5−ジブロモ−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンおよび2,5−トリブチルスタンニル−2−エチルヘキシルオキシ置換3,4−プロピレンジオキシチオフェンと、5,8−ジブロモ−2,3−ジヘキシルキノキサリンとを仕込み比約0.75:1:0.25でランダム共重合することにより、赤色から透過性と変化することを可能とするECPsが得られるように設計された。PS−6の吹き付け流延された薄膜は吸収のレッドシフトにより紫色に見えるが、コポリマーのトルエン溶液は赤色であり、図5aに示すようにいくらかの青色光が透過する。酸化に伴う高い透過状態へのスイッチングを図5bに示す。フィルムは、2mg/mLトルエン溶液からITO被覆ガラスに吹き付け流延された。フィルムの電気化学酸化は、0.1M LiBTI/PC支持電解質中、銀線を準基準電極にし、白金線を対極にして行った。印加電圧は、0.07、0.17、0.22、0.295、0.32、0.37および0.52V vs.Fc/Fc+である。
【0046】
ProDOT−(CHOEtHをD単位とし、チエノ[3,4−b]ピラジンをA単位とする、正確に交互配置されたコポリマーPS−7を図6に示す。トルエン溶液と薄膜の両方で緑色が認められ、図7aに示すように、可視域を中心とする吸収(450nm)と近赤外域を中心とする吸収(950nm)を有している。上記の交互配置コポリマーを酸化すると、近赤外域の吸収(950nm)だけでなく可視域の吸収(450nm)も消失し、完全に酸化されると、図7bから明らかなように可視域の吸収が事実上退色する。エチレンジオキシチオフェンEDOTを第2のD単位として含有させることにより、本発明の態様である−[(DA)−(D‘A)]−型のコポリマーPS−8は、図7aに示すように、可視域の黄色部、オレンジ色部および赤色部よりも長波長の吸収部のブルーシフトを可能とする。
【0047】
3種の中性状態の共役子コポリマーを図8に示す方法で製造した。本発明の態様に基づく、交互配置コポリマーPS−9と、2種の−[(DA)−(D’A)]−型ランダム共役コポリマーPS−10およびPS−11を検討した。2,5−ビス(トリブチルスタンニル)−ProDOTモノマーを、2,5−ビス(トリブチルスタンニル)−EDOTのモノマーまたは2,5−ビス(トリブチルスタンニル)−チオフェンのモノマーで置換することにより、吸収極大波長だけでなく、2つの吸収帯の相対的な強度の細かい調整が可能である。例えば、図9aから明らかなように、PS−10は、交互配置コポリマーPS−9に比べ、長波長吸収が明らかにレッドシフトしているが、PS−11はPS−9に対して上記の長波長吸収と同じ領域においてブルーシフトし、短波長吸収の強度が増加している。
【0048】
図9bは、PS−10フィルムの分光電気化学挙動を示している。コポリマーの中性状態における光学吸収の減衰とともに、スペクトルの近赤外領域に現れる新しい遷移が形成され、それはラジカルカチオン(ポーラロン)の生成を示し、さらに高印可電圧ではジカチオン(バイポーラロン)へと結合する。ポリマーPS−10の薄膜は、酸化により青色から高透過性へと切り替わる。
【0049】
本明細書において言及するか、または引用したすべての特許、特許出願、出願および刊行物のすべての図および表を含む全記載内容は、本明細書による明確な教示内容と整合する範囲で、本明細書に組み入れられる。
【0050】
本明細書に開示される実施例および態様は本発明を例示的に説明するために記載されたものであり、これらの記載内容に基づく種々の修正または変更は当業者によって想起される事項であって、これらの事項も本発明の技術的な思想と範囲に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9