(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748860
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出するための方法、ユーザ機器及び該ユーザ機器へのインタフェースを備えている評価ユニット
(51)【国際特許分類】
H04B 17/00 20150101AFI20150625BHJP
H04W 24/00 20090101ALI20150625BHJP
H04K 3/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
H04B17/00 D
H04W24/00
H04K3/00
【請求項の数】21
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-539246(P2013-539246)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-504465(P2014-504465A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2011070282
(87)【国際公開番号】WO2012066052
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】10191430.7
(32)【優先日】2010年11月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509073693
【氏名又は名称】ジェムアルト エム・ツー・エム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Gemalto M2M GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ブロイアー
(72)【発明者】
【氏名】ベアント レール
【審査官】
石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−172953(JP,A)
【文献】
特開2009−278536(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/066053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00−17/02
H04W 4/00−99/00
H04B 1/10− 1/14
H04K 1/00− 3/00
H04J 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する方法であって、
前記通信ユーザ機器(UE)及び複数のベースノードステーション(BNS)は、セルラ方式の符号分割多重アクセス(CDMA)を基礎としている無線ネットワーク(RN)の構成要素であり、
通信信号ユニット(SU)は、サービングベースノードステーション(sBNS)のサービングセルカバレッジエリア(CA)における擬似雑音拡散コード(SC)と相関が取られ、擬似雑音チップ(CHI)として、スペクトル的に通信周波数帯域(FB I−XIX)の上限周波数と下限周波数との間に位置する多重共有通信周波数チャネルにおいて送信され、また、
前記擬似雑音拡散コード(SC)は前記通信ユーザ機器(UE)によって、サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)において、前記サービングベースノードステーション(sBNS)からのサービング擬似雑音拡散コード(sSC)として受信される、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する方法において、
先行の第1時間(t1)及び後行の第2時間(t2)において、通信リンクにおけるセル選択判定基準電力パラメータ(S)のセットを測定するステップを備えており、前記セル選択判定基準電力パラメータ(S)は、
通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける総受信電力に関する、チップ(CHI)当りの受信電力にとって有意な帯域及びチャネルバイアス比率パラメータの内の少なくとも一つと、
通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける前記擬似雑音拡散コード(SC)に関する受信信号電力にとって有意な帯域及びチャネルバイアス絶対パラメータの内の少なくとも一つと、
通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける通信ユーザ機器受信器の帯域幅内にある非バイアス受信広帯域電力とを含んでおり、
以下の条件を検査するステップを備えており、即ち、
(a)前記バイアスパラメータを前記後行の第2時間(t2)においては検出できないという条件、
(b)前記後行の第2時間(t2)における非バイアスパラメータは前記先行の第1時間(t1)と比較して増分しているという条件、
(c)非バイアスパラメータの増分した値は、閾値(X)よりも大きく基本ノイズフロア(NF)を超えているという条件を検査するステップを備えており、
前記閾値(X)は受信可能な擬似雑音拡散コードの確認には十分な調整可能な大きさであることを特徴とする、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する方法。
【請求項2】
前記閾値(X)は、拡散コード利得値に達するか、又は該拡散コード利得値を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のベースノードステーション(BNS)の内の少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)のセットは前記通信ユーザ機器(UE)の到達距離内にあり、
サービングセルカバレッジエリア(CA)における通信リンクは、前記通信ユーザ機器(UE)と、少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)の前記セットの割り当てられたサービングベースノードステーション(sBNS)との間に少なくとも提供されており、
前記通信リンクは、前記通信ユーザ機器(UE)と、少なくとも、前記サービングベースノードステーション(sBNS)との間での、複数の通信信号ユニットを含む信号の送信に適合されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記バイアス比率パラメータは、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギによって形成されたEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)であり、及び、
(ii)前記バイアス絶対パラメータは、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける擬似雑音拡散コードに関する、前記サービングダウンリンクチャネルにおける受信信号コード電力(CPICH RSCP)であり、
又は、
(i)前記バイアス比率パラメータは、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギによって形成されたEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)であり、若しくは、
(ii)前記バイアス絶対パラメータは、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける擬似雑音拡散コードに関する、前記サービングダウンリンクチャネルにおける受信信号コード電力(CPICH RSCP)であり、
(iii)また付加的に、前記非バイアス受信広帯域電力は、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける通信ユーザ機器受信器の帯域幅内にある受信総広帯域電力(RTWP)であり、
前記方法は、
(a’)前記擬似雑音拡散コード(SC)に関する前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における受信信号コード電力(CPICH RSCP)及び総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ当りの受信エネルギのEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)が前記後行の第2時間(t2)において検出できないという条件、
(b’)前記後行の第2時間(t2)における非バイアス受信広帯域電力(WBp)は前記先行の第1時間(t1)と比較して増分しているという条件、
(c’)前記非バイアス受信広帯域電力(WBp)の増分した値は、閾値(X)よりも大きく基本ノイズフロア(NF)を超えているという条件を検査するステップを備えている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)のセットはベースノードステーションのアクティブセットであり、
該アクティブセットは、少なくとも、該アクティブセットにおける最大Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び最大受信信号コード電力(CPICH RSCP)の内の少なくとも一つを有する、サービングベースノードステーション(sBNS)及びベースノードステーション(BNS)の内の少なくとも一つを含んでおり、
前記方法は更に、
(a”)前記後行の第2時間(t2)においては、最大Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び最大受信信号コード電力(CPICH RSCP)の内の少なくとも一つを有するダウンリンクチャネル(CPICH)を検出できないという条件、
(b”)前記後行の第2時間(t2)における前記非バイアス受信広帯域電力(WBp)は、前記先行の第1時間(t1)と比較して、最大Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び最大受信信号コード電力(CPICH RSCP)を有する前記ダウンリンクチャネル(CPICH)に関して増分しているという条件を検査するステップを備えている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(aa)前記後行の第2時間(t2)においては、前記通信周波数チャネルにおける前記少なくとも一つのダウンリンクチャネル(CPICH)のいずれかに関して、Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び受信信号コード電力(CPICH RSCP)を検出できないという別の条件を検査する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(aaa)前記後行の第2時間(t2)においては、前記通信周波数帯域(FB I−XIX)における前記少なくとも一つのダウンリンクチャネル(CPICH)のいずれかに関して、Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び受信信号コード電力(CPICH RSCP)を検出できないという別の条件を検査する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
(aaaa)前記後行の第2時間(t2)においては、全ての利用可能な通信周波数帯域(FB I−XIX)における前記少なくとも一つのダウンリンクチャネル(CPICH)のいずれかに関して、Ec/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び受信信号コード電力(CPICH RSCP)を検出できないという条件を検査する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記利用可能な通信周波数帯域(FB I−XIX)は全てのUMTS通信周波数帯域を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する、
但し、前記通信ユーザ機器(UE)及び複数のベースノードステーション(BNS)は、モバイル通信(GSM)を基礎とする無線ネットワーク(RN)のセルラ方式のグローバルシステムの構成要素である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(d)前記後行の第2時間(t2)においては、前記擬似雑音拡散コードに関して、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)におけるEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)及び受信信号コード電力(CPICH RSCP)を依然として検出できるが、しかしながら、前記先行の第1時間(t1)と比較して、前記通信周波数チャネルにおける少なくとも一つのダウンリンクチャネル(CPICH)のいずれかに関して、それぞれ減分していることを更に検査する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記減分は、それぞれ90%よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記条件(a)及び前記条件(b)及び前記条件(c)が満たされると、ジャミング放射源は通信ユーザ機器(UE)に影響を及ぼしていることを指示する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記条件(a)及び前記条件(b)及び前記条件(c)が満たされるか、又は前記条件(a’)及び前記条件(b’)及び前記条件(c’)が満たされると、ジャミング放射源は通信ユーザ機器(UE)に影響を及ぼしていることを指示する、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記条件(a)及び前記条件(b)及び前記条件(c)が満たされるか、又は前記条件(a’)及び前記条件(b’)及び前記条件(c’)が満たされるか、又は前記条件(a”)及び前記条件(b”)が満たされると、ジャミング放射源は通信ユーザ機器(UE)に影響を及ぼしていることを指示する、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
ジャミング放射源は、ジャミングを指示するメッセージを前記通信ユーザ機器(UE)からアプリケーションに提供する、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記条件(d)及び前記条件(b)及び前記条件(c)が満たされるか、又は前記条件(d)及び前記条件(b’)及び前記条件(c’)が満たされると、ジャミング放射源は通信ユーザ機器(UE)に影響を及ぼしていることを警告する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ジャミング放射源は、ジャミングを指示するメッセージを前記通信ユーザ機器(UE)からアプリケーション及び少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)のセットのいずれかのセットの内の少なくとも一つに提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源によって惹起される影響量を指示するために警告レベルを指示し、
前記警告レベルは、ノイズフロア(NF)を上回る広帯域電力(WBp)の超過量及び所定の閾値(X)の大きさの内の少なくとも一つに依存する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載されている、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する方法を実行するように構成されている通信ユーザ機器であって、
前記通信ユーザ機器(UE)及び複数のベースノードステーション(BNS)は、周波数分割多重(FDD)モード又は時分割多重(TDD)モードにおける、セルラ方式の符号分割多重アクセス(CDMA)を基礎としている無線ネットワーク(RN)の構成要素であり、
前記複数のベースノードステーション(BNS)の内の少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)のセットは前記通信ユーザ機器(UE)の到達距離内にあり、
サービングセルカバレッジエリア(CA)における通信リンクを、前記通信ユーザ機器(UE)と、少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)の前記セットの割り当てられたサービングベースノードステーション(sBNS)との間に少なくとも提供することができ、
前記通信リンクは、前記通信ユーザ機器(UE)と、少なくとも、前記サービングベースノードステーション(sBNS)との間での、複数の通信信号ユニットを含む信号の送信に適合されており、
前記通信信号ユニット(SU)は、前記サービングベースノードステーション(sBNS)の前記サービングセルカバレッジエリア(CA)における擬似雑音拡散コード(SC)と相関が取られており、擬似雑音チップ(CHI)として、スペクトル的に通信周波数帯域(FB I−XIX)の上限周波数と下限周波数との間に位置する多重共有通信周波数チャネルにおいて送信され、
前記通信ユーザ機器(UE)は、少なくとも一つのダウンリンクチャネルのサービングダウンリンクチャネル(sCPICH)において、少なくとも一つのベースノードステーション(BNS)の前記セットから、前記擬似雑音拡散コード(SC)を少なくとも一つの擬似雑音拡散コード(SC)のサービング擬似雑音拡散コード(sSC)として受信する、通信ユーザ機器において、
先行の第1時間(t1)及び後行の第2時間(t2)において、前記通信リンクにおける電力パラメータのセットを測定する手段を備えており、前記電力パラメータは、
(iv)通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギによって形成されたEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)、及び、
(v)通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける擬似雑音拡散コードに関する、サービングダウンリンクチャネルにおける受信信号コード電力(CPICH RSCP)、
又は、
(iv)通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギによって形成されたEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)、若しくは、
(v)通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける擬似雑音拡散コードに関する、サービングダウンリンクチャネルにおける受信信号コード電力(CPICH RSCP)、
(vi)また付加的に、通信ユーザ機器(UE)アンテナコネクタにおける通信ユーザ機器受信器の帯域幅内にある非バイアス受信広帯域電力を含んでおり、
以下の条件、即ち、
(a) 総受信電力スペクトル密度によって除算された、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギのEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)、及び、
前記擬似雑音拡散コード(SC)に関する、前記サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における受信信号コード電力(CPICH RSCP)は前記後行の第2時間(t2)において検出できないという条件、
(b)前記後行の第2時間(t2)における非バイアス受信広帯域電力(WBp)は前記先行の第1時間(t1)と比較して増分しているという条件、
(c)前記非バイアス受信広帯域電力(WBp)の増分した値は、閾値(X)よりも大きく基本ノイズフロア(NF)を超えているという条件を検査する手段を備えていることを特徴とする、通信ユーザ機器。
【請求項21】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、アプリケーションと通信ユーザ機器(UE)へのインタフェースとを備えている評価ユニットにおいて、
該評価ユニットは、
先行の第1時間(t1)及び後行の第2時間(t2)において、通信リンクにおける電力パラメータのセットを評価し、
条件(a)及び条件(b)及び条件(c)を検査し、
ジャミング放射源は通信ユーザ機器(UE)に影響を及ぼしていることの指示及び警告の少なくとも一方を行うように構成されていることを特徴とする、評価ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されている、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出するための方法に関する。更に本発明は、上記の方法を実施するように構成されているユーザ機器、並びに、上記の方法を実施するように構成されているアプリケーションとユーザ機器へのインタフェースとを備えている評価ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のセルラ方式の無線ネットワークはもう何年も公知のものではあり、種々異なる技術を基礎としている。最大有効範囲は現在でも、いわゆるGSM標準に準拠するモバイル通信用のグローバルシステムによって維持されている。ユーザ機器はそのようなセルラ方式のネットワークにおいて自由に移動することができ、また例えばGSM標準仕様書3GPP ETSI TS 51.010等に記載されているように、GSMネットワークの異なるセルにハンドオーバすることができる。
【0003】
現在の無線ネットワークは、例えばユニバーサル移動体通信システム(UMTS;universal mobile telecommunication system)において実現されているような、セルラ方式の符号分割多重アクセス(CDMA;code division multiple access)を基礎としている。UMTSはカメラシステム等のような機密保護の用途にとって益々重要になっている。
【0004】
一般的に、無線ネットワークにおけるユーザ機器はジャミング放射源による影響に晒される可能性がある。このコンテキストにおいてジャミングとは一般的に、基地局からの信号のユーザ機器による受信を阻止する機器によって行なわれるものである。実際のところ、高周波数が高出力レベルにあるユーザ機器の通信周波数と干渉することによって、ジャマーは実質的にセルラーフォンを使用不能にする。一方、幾つかのジャマー用途は例えば音信不通状況に起因して通話が抑制されるべきところでは合法であることを意味している。他のジャマーは、例えばユーザ機器等の機密保護用途に割り込むための悪用中に適用される。ジャマーはジャミングGSMまた、UMTS周波数を使用できる。しかしながらジャミングを検出及び阻止する解決手段は、現在のところ、基本的にはGMSジャマーに対してしか既知でない。これに関して、アンチジャミング解決手段の主たる目的は、ジャミング攻撃を阻止するよりもジャミング攻撃を確実に検出することであると認められる。
【0005】
アンチジャミング解決手段はWO 2007/019814から公知であるが、しかしながら、このアンチジャミング解決手段はGSM標準に限定されている。この刊行物には、通信端末に影響を及ぼすジャミング放射源を検出するための方法が開示されており、この方法では受信無線チャネル信号レベルがシグナリングチャネルにおける周期的な間隔で評価される。通信端末がシグナリングチャネルにおいて所定の閾値を超える無線チャネル信号レベルを検出するが、それにもかかわらずメッセージの内容を復号できない場合には、この状態は干渉状況とみなされ、警報信号が送信される。このGMSアンチジャミング解決手段に関する問題は、シグナリングチャネルにおける所定の閾値とメッセージ内容の受信を基礎としていることである。それらの特徴はGSM技術にとってある程度は固有のものではあるが、しかしながらUMTS技術には余り適していない。より詳細には、セルラ方式の符号分割多重アクセスを基礎とする無線ネットワークの枠内でのアンチジャミング解決手段がより需要が高いことが分かった。ユーザ機器の通信周波数帯域における外乱を処理する状態は、セルラ方式の符号分割多重アクセスを基礎とする無線ネットワーク内でのユーザ機器に関する動作のほぼ通常の状態である。特に、信号を復号できる限りは、イントラセル干渉及びインターセル干渉は一般的にCDMAを基礎とする無線ネットワークにおいて許容される。従って、この動作状態は必然的に、CDMAを基礎とする技術に起因して常に妨害されている。それらの自然な外乱の中から深刻なジャミング動作を識別することは依然として解決すべき課題である。
【0006】
その特殊な理由は以下の通りである。通信ユーザ機器(UE)及び複数のベースノードステーション(BNS)はCDMAを基礎としている無線ネットワークの基本構成要素である。無線ネットワーク(RN)は周波数分割多重(FDD:frequency division duplex)モード又は時分割多重(TDD:time division duplex)モードのいずれかにおいて動作することができる。サービングセルカバレッジエリアにおける通信リンクが通信ユーザ機器とサービングベースノードステーション(sBNS)との間に提供されると、通信信号ユニット(SU)はサービングベースノードステーションのサービングカバレッジエリア(CA)における擬似雑音拡散コード(SC)と相関が取られ、また擬似雑音チップ(CHI)として多重共有通信周波数チャネルにおいて送信される。従って、通信周波数チャネルにおける複数のベースノードステーション及びユーザ機器の干渉は、スペクトル的に通信周波数帯域の上限周波数と下限周波数との間に位置している。従って、多重共有通信周波数チャネルにおける広帯域の「ジャミングのような」干渉を異常なイベントとみなすことはできず、それどころかそのような干渉は通常の動作状態の一部である。そのような状況は、前述の周波数帯域におけるユーザ数の変化を毎回生じさせることも考えられる。同様の状況は、ユーザ機器がベースノードステーションから比較的長い距離又は比較的短い距離を有している場合にも生じる可能性がある。更には、ユーザ機器が二つのベースノードステーションの到達距離内に存在する場合、特にそれとは逆に、二つのユーザ機器がCDMAを基礎とする無線ネットワークの同一セル又は隣接セルに属する場合にも同様の状況が生じる可能性がある。その結果、CDMAを基礎としている無線ネットワーク技術において問題無く実現されるべきアンチジャミング解決手段は一層洗練されたものである。
【0007】
特に、上述のWO2007/019814のGSM解決手段と比較すると、ユーザ機器に関する特定のシグナリングチャネルの信号レベルについての所定の閾値自体を規定することはできない。チャネル及び/又は信号レベルは、ネットワークの周囲環境に依存して絶えず変化している。また、擬似雑音拡散コードが通信ユーザ機器によって受信されない限り、そのようなメッセージ内容を受信することはできない。従って、擬似雑音拡散コードが無ければ、擬似雑音拡散コードがユーザ機器に既知でない限り、メッセージの伝送も内容の復号も不可能である。
【0008】
これが本発明の出発点である。本発明の課題は、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出するための効果的で信頼性の高い方法及び装置を提供することである。通信ユーザ機器及び複数のベースノードステーションは、例えば周波数分割多重モード又は時分割多重モードの無線ネットワークのような、セルラ方式の符号分割多重アクセスを基礎としている無線ネットワークの構成要素である。本発明の更に別の課題は、広い周波数範囲においてジャミング放射源の検出も実現する、より精巧なアンチジャミングコンセプトを用いる方法及び装置を提供することである。とりわけ、本発明の更なる課題は、ジャミング放射源に対する警告を実現する、即ち、ジャミング動作の瞬間的な状況を検出するだけでなく、そのような状況に近付くことを予測する方法及び装置を提供することである。後者の課題を解決することに関する関心は高い。何故ならば、その解決手段によって方法及び装置は勿論、ジャミング動作がユーザ機器のあらゆる通信を中断する前に、例えば警報を送信することによって適時に対応することができるからである。
【0009】
方法に関しては、上記の課題は、請求項1に記載されている本発明の方法によって解決される。この課題は、また、請求項2の特徴部分に記載されている方法の発展形態によって解決される。
【0010】
この方法、また上記において概略を述べたような方法の発展形態は、あらゆる有利な形態のディジタル回路によって実現することができ、それにより、ディジタル回路に関連する利点を得ることができる。単一のプロセッサ又は他のユニットは特許請求の範囲に記載されている種々の手段の機能を実現することができ、これは特に本発明のコンセプトに応じたユーザ機器に対して用意されている。装置に関しては、上記の課題は、請求項16に記載されているユーザ機器の特に有利な発展形態によって解決される。
【0011】
特に、本発明のコンセプトにより、請求項17に記載されているような本発明の方法を実行するように構成されている、アプリケーションとユーザ機器へのインタフェースとを備えている評価ユニットも得られる。
【0012】
本発明は、ユーザ機器はそれ自体で、また更なる測定を行うことなく、通常モードの周波数外乱とジャミング周波数外乱とを区別できないという問題から出発し、CDMAを基礎としている無線ネットワークにおいては、周波数外乱が全く同一の擬似雑音拡散コードに固執するのではなく、むしろ有効になると、ユーザ機器には擬似拡散コードの変更が強制される。この問題により、本発明は、ジャミング動作が有効になるとユーザ機器はメッセージの送受信にとって重要な擬似雑音拡散コードを解放することになるという結論に至った。
【0013】
セルラ方式のCDMAを基礎としている無線ネットワークにおいては、擬似雑音拡散コードが、共通パイロットチャネル(CPICH)とも称されるダウンリンクチャネルにおいて、ベースノードステーションから通信ユーザ機器によって受信される。CPICHチャネルは、一定の電力を有するnode Bによるダウンリンクチャネルブロードキャストであり、ここでは擬似雑音拡散コードと称される既知のビットシーケンスである。その電力は通常の場合、総node B送信電力の5%から15%の間である。一般的なCPICH電力は43dBmの典型的な総送信電力の10%である。従ってCPICHチャネルは、node Bによって送受信されるべき信号ユニットのスクランブルのために使用される一次スクランブリングコードの第1の完全な識別のためにユーザ機器によって使用される。現在のCPICHは例えば、256の拡散率を有する拡散コード0を使用して送信される。CPICHは20ビットのデータを含んでおり、それらのデータは全て0であるか、又は、それらのデータを1と0が交互に繰り返されるパターンとして使用することができる。CPICHに関するスクランブリングコードが既知になると、通常の場合は、RSCP及びEc/Ioのようなセル選択判定基準電力パラメータのセットを含んでいる、信号品質の測定のためにチャネルを使用することができる。それらは3GPP TS25.133に最も正確に記述されている。定義及び略語等は3GPP TS25.215から公知である。特に、TS25.133の4.2.2.1章には、「圏外」状況が特許請求の範囲において定義されているような電力パラメータに関するセル判定基準を使用して定義されている。
【0014】
第1の選択判定基準電力パラメータは、帯域及び/又はチャネルバイアス比率パラメータ、即ち、通信ユーザ機器のアンテナコネクタにおける総受信電力スペクトル密度によって除算された、サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)における擬似雑音チップ(CHI)当りの受信エネルギによって形成されたEc/Io比率(CPICH_Ec/Io)である。
【0015】
別の帯域及び/又はチャネルバイアス絶対パラメータは、特に、通信ユーザ機器のアンテナコネクタにおける、擬似雑音拡散コードに関する、サービングダウンリンクチャネルにおける受信信号コード電力(CPICH RSCP)である。
【0016】
ユーザ機器を連続するサイクルに関して評価した場合に、サービングセルが例えばEc/Io及びRSCP条件の形のセル選択判定基準を満たさなければ、ユーザ機器は全ての隣接セルに関する測定を開始すべきである。そのような測定によっても、最終的に特定の周期時間の後に、セル選択判定基準が満たされなければ、ユーザ機器は非稼動エリアにいるとみなされる。
【0017】
それらの問題に基づき、本発明は、効果的なジャミング検出のために、通信ユーザ機器のアンテナコネクタにおける通信ユーザ機器受信器の帯域幅内にある非バイアス受信広帯域電力を測定することを更に必要とすることを認識した。
【0018】
上述の三つの電力パラメータに基づき、本発明のコンセプトは、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源の動作を確実に検出するには十分である三つの条件を検査することを提案する。本発明によって提案されるメインコンセプトは、請求項1及び2に定義されているような条件(a)、(b)、(c)を検査することである。
【0019】
特に、この基礎は、バイアスパラメータを検出できないが、その一方で非バイアスパラメータは増分したという条件を検査することである。本発明によって提案されるメインコンセプトは、相対的な測定のコンセプトを提供することであり、ここで、通信リンクにおけるセル選択判定基準電力パラメータのセットは先行の第1時間及び後行の第2時間において測定される。このコンセプトは、電力パラメータの絶対測定又は事前に定義された閾値が、CDMAを基礎としている無線ネットワークにおいて無視できる程度の有効性しか有していないという着想に基づいている。その代わりに、本発明によれば、先行の第1時間及び後行の第2時間における状況の比較のような相対的な条件が重要である。
【0020】
付加的に、本発明のコンセプトの条件を判断する別の鍵は、非バイアスパラメータの増分した値が閾値よりも大きく基本ノイズフロアを超えたという条件を検査することによって得られる。実質的に、閾値は固定されていない、又は事前に規定されていないが、しかしながら、受信可能な擬似雑音拡散コードの確認にとっては十分である調整可能な大きさである。
【0021】
本発明は、非バイアス受信広帯域電力が従来技術による基本ノイズフロアを超える場合、擬似雑音拡散コードは受信可能であるべきということを認識した。従って、例えばEc/Io比率又はCPICHにおける受信信号コード電力が検出されるべきである。つまり、条件(a)、(b)及び(c)が全て満たされると、ジャミング放射源が通信ユーザ機器に影響を及ぼしている唯一の可能性が残っている。特に、本発明のコンセプトは先行の第1時間と後行の第2時間との間の相対的な状況を基礎としている。非バイアス受信広帯域電力が増分しているが、後行の第2時間におけるサービングノードステーションの損失の状態は先行の第1時間についての状況を比較する相対的な判定基準であり、従って、CDMAを基礎としている技術に適合されている。
【0022】
従って本発明のコンセプトは、絶対測定又は事前に記載された閾値からは離れている。一般的な位置測定と比較すると、CDMAを基礎としている無線ネットワークに適合された本発明によって提案されたコンセプトによって種々の利点が達成される。特に、このコンセプトにより、受信可能な擬似雑音拡散コードの確認のための閾値の調整可能な大きさの別の発展形態が実現される。従って、このコンセプトを種々のタイプのスクランブラ及びスクランブリングコードに適合させることができる。スクランブラのタイプ及びスクランブリングコードのタイプを、セルラ方式のCDMAを基礎としている無線ネットワークの特定のタイプに依存して変更することができる。しかしながら、CPICHに関するスクランブリングコードが既知となると、調整可能な大きさを例えば拡散コード利得値の閾値として提供することができ、これは256の拡散率を基礎としており、従って24dBの拡散コード利得値が得られる。
【0023】
また、本発明のコンセプトは、広範な周波数範囲に拡張可能であるという利点を有している。またこのコンセプトを、ジャミング放射源の接近を示唆する警告コンセプトに使用することができる。
【0024】
本発明のそれらの発展形態の構成及び他の発展形態の構成は従属請求項において更に概述されている。それによって、上記において提案したコンセプトの利点は更に改善される。
【0025】
特に、少なくとも一つのベースノードステーションのセットはベースノードステーションの能動的なセットである。従来技術におけるソフトハンドオフの間に使用される信号を有するセルのセットを能動的なセットと称する。いわゆるサーチフィンガが新しいセルからの高Ec/Io又はRSCPに関する十分な強さの信号を発見した場合には、このセルは能動的なセットに加えられる。従って、能動的なセットのセルはその他のセルよりも頻繁に検査される。従って、能動的なセット内の隣接セルとのハンドオフがより見込まれる。有利な実施の形態においては、能動的なセットは、少なくとも、最大Ec/Io比率及び/又は最大RSCPを有する、サービングベースノードステーション及び/又はベースノードステーションを含んでいる。従って有利には、別の有利な発展形態においては、最大セルに関するコンセプトの条件を更に検査することによって、検出方法をより信頼性の高いものにすることができる。
【0026】
別の有利な実施の形態においては、請求項1及び7から9において(a)、(aa)、(aaa)又は(aaaa)と表されているような、バイアスパラメータを後行の第2時間において検出できないという別の条件を、通信周波数チャネルにおける少なくとも一つのダウンリンクチャネルのいずれかに拡張することができる。即ち、このコンセプトを全体として5MHzの周波数チャネル内において、また一つの周波数帯域又は全ての複数の周波数帯域に拡張することができる。特に、UMTS通信周波数帯域の全ての周波数帯域を実施することができる。特に、通信ユーザ機器はモバイル通信のセルラ方式のグローバルシステムの一部であって良く、従って、UMTSアンチジャミング測定とGSMアンチジャミング測定の組み合わせを基礎とすることができる。ここで、WO2007/019814の複数の実施の形態は、GSMアンチジャミング測定に関して参照によって本明細書に取り入れられる。
【0027】
発展形態の特に有利な構成においては、本発明のコンセプトは、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を警告するために別の条件の検査も含むことができる。これらの発展形態及び別の有利な発展形態は請求項12から15の方法クレームにおいて概説されている。基本的に、特許請求の範囲におけるいわゆる条件(d)においては、バイアスパラメータを後行の第2時間においても依然として検出することができるが、各パラメータが顕著に減分している。従って、いわゆる条件(d)は、本発明のコンセプトのいわゆる条件(a)が検査される前に検査される。例えば、これは、擬似雑音拡散コードを依然として後行の第2時間において検出できるが、Ec/Io比率及び受信信号コード電力RSCPはそれぞれ先行の第1時間に比べて90%より大きく減分しているケースに当てはまる。この発展形態は、条件(d)、(b)及び(c)が満たされると、ジャミング放射源の警告に関する効果的なコンセプトを提供する。その結果、この発展形態のコンセプトにより、ジャミング放射源が通信ユーザ機器に影響を及ぼしていることを警告又は指示するメッセージを提供することができる。特に、警告レベルをバイアス比率パラメータの減分量に依存させることができる。また、警告レベルを閾値の大きさに依存させることもできる。警告レベルをノイズフロアを上回る広帯域電力の超過量に依存させることもできる。例えば、先行の第1時間と比較した後行の第2時間におけるバイアスパラメータの減分及び非バイアスパラメータの増分が大きくなればなるほど、警告レベルはより高くなるべきである。また警告レベルは閾値の増加と共に高くなるべきである。
【0028】
特に有利な実施の形態においては、ジャミング動作時に、警告メッセージ又は警報メッセージがユーザ機器自体に存在していることが考えられる。有利には、警告メッセージ又は警報メッセージをユーザ機器から遠隔的に、例えばユーザ機器へのインタフェースを有している評価ユニットによって提供することもできる。そのような評価ユニットは、上述したような本発明のコンセプトを実行するように構成されているアプリケーションを提供することができる。
【0029】
例えば、評価ユニットはメモリにおいて始動される評価プログラムであって良い。特に、評価ユニットはアプリケーションの一部であり、またこのアプリケーションによって推定された警報信号である。例えば警報信号を、ユーザ機器から間隔を空けて設けられており、またセルラ方式の無線ネットワークを介する通信手段を有しているアンテナから送信することができる。特に、コンピュータ等をセルラ方式の無線ネットワークに接続することができ、また警報信号の送信を処理することができる。
【0030】
警報メッセージのそのような遠隔起動の特に有利なコンセプトは、基本的にWO2007/019814の実施の形態において最も良く記述されており、このために、この刊行物は参照により本明細書に取り入れられる。
【0031】
本発明のより完全な理解のために、以下では添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。詳細な説明は、本発明の有利な実施の形態とみなされるものを説明及び記述する。勿論、本発明の精神から逸脱することなく、形式的又は詳細の種々の修正及び変更を行うことができる。従って、本発明は本願において図示及び記述する正確な形式及び詳細に制限されるものでなければ、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている本発明全体に及ばないものでもない。更に、本発明を表す明細書、図面及び特許請求の範囲に記載した複数の特徴は単独でも組み合わせでも本発明にとって重要である。特に、特許請求の範囲におけるいずれの参照番号も本発明の範囲を制限するものではないと解される。「含む」と言う語句は他の構成要素又はステップを排除するものではない。「一つ」又は「ある」と言う語句は複数を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】CDMAを基礎としている無線ネットワークの構造の簡略化されたシンボリックな図を示す。
【
図2A】多重共有通信周波数チャネルにおいて擬似雑音チップCHIを提供するための、通信信号ユニットSUと擬似雑音拡散コードSCとの相関を説明する図を示す。
【
図2B】5MHzの周波数帯域におけるユーザ機器に関するベースノードステーション主要電力を概略的にシンボリックに示す。即ち、
図1の無線ネットワークのCDMAコード主要方法を示す。
【
図2C】
図2Bに示したものと同一の状況を示すが、ここでは、5MHzの周波数帯域においてユーザ機器によって測定された
図2Bのベースノードステーション主要電力の頂部におけるジャミング電力も含まれている。
【
図3】ジャミングに起因して検出できないCPICHと比較して検出可能なCPICHを有している、先行の第1時間及び後行の第2時間におけるユーザ機器主要電力を示す例示的な状況をより量的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、基本的に、セルラ方式の符号分割多重アクセス(CDMA)を基礎としている無線ネットワークRNが示されている。無線ネットワークRNにより、種々の送信器、ここではユーザ機器UEは、単一の通信チャネルを介して情報を同時に送信することができる。このことは種々のユーザ機器UEによる異なる周波数の帯域幅の共有を実現する。CDMAベースのネットワークはスペクトラム拡散技術を使用することができ、また特別なコーディング方式、例えば周波数分割多重FDD(frequency division duplex)モード又は時分割多重TDD(time division duplex)モードは同一の物理チャネルを介する複数のユーザの多重使用を実現する。スペクトラム拡散信号方式は通信しているデータよりも遥かに広いデータ帯域幅を有している。CDMAを基礎としている無線ネットワークRNは、少なくとも一つのベースノードステーション、ここでは例えばサービングベースノードステーションsBNS及び別のベースノードステーションBNSのセットを提供し、それらのベースノードステーションはユーザ機器UEの到達範囲内にある。例えば、sBNS#1のサービングセル#1カバレッジエリアCA1内の通信リンク1が、通信ユーザ機器#1と、割り当てられているサービングベースノードステーションsBNS#1との間に提供されている。ユーザ機器UE#1はベースノードステーションBNS#2のセルカバレッジエリアCA2内にも位置しているので、ベースノードステーションBNS#2とサービングベースノードステーションsBNS#1は、いずれもユーザ機器UE#1の到達範囲内にあるベースノードステーションの能動的なセットを形成する。この実施の形態においては、sBNS#1が最も強い通信リンク1を有している。
【0034】
通信リンク1は、通信ユーザ機器UE#1とサービングベースノードステーションsBNS#1との間での、複数の通信信号ユニットSUを含む信号の送信に適している。
図2Aに例示的に示されているように、通信信号ユニットSUはスクランブリングコード演算の入力を形成し、その際、信号ユニットSUはサービングベースノードステーションsBNS#1のサービングセルカバレッジエリアCA1における擬似雑音拡散コードsSCと相関が取られている。スクランブリングコード演算の出力信号は、サービングスクランブリングコードsSCを用いて本来の信号ユニットSUを処理するスクランブリング暗号化によって形成された、いわゆる擬似雑音チップCHIである。このことは、従来技術から基本的に既知であるような加法的又は乗法的なスクランブリング演算によって実施される。
【0035】
その結果、擬似雑音チップCHIは
図1の通信リンク1において示唆されているような多重共有通信周波数チャネルにおいて送信され、また、サービング擬似雑音拡散コードsSCがユーザ機器UE#1に既知である場合にのみ、この擬似雑音チップCHIをユーザ機器UE#1によって送受信することができる。スクランブリングコードSC、即ち擬似雑音拡散コードが既知であれば、信号ユニットをユーザUE#1によって送受信することができる。
【0036】
擬似雑音拡散コードSCは、いわゆるサービングダウンリンクチャネルsCPICHにおいて、
図1に示されているようなサービング擬似雑音拡散コードsSCとして通信ユーザ機器UE#1によって受信される。CPICHは20ビットのデータを含んでおり、それらのデータはsBNSの第2のアンテナにおける送信のために、全て0であるか、又は、時空間送信ダイバーシチ(STTD;space time transmit diversity)が使用される場合には0と1が交互に続くパターンである。ベースノードステーションの第1のアンテナはCPICHに関して常に全て0を送信する。CPICHダウンリンクチャネルは一定の電力を有しており、且つ、既知のビットシーケンスである。その電力は通常の場合、総BNS送信電力の5%から15%の間である。一般的なCPICH電力は43dBmの典型的な総送信電力の10%である。CPICHを信号品質の測定に使用することができる。
【0037】
この実施の形態においては、ジャマーが通信周波数帯域内にある多重共有通信周波数チャネルと干渉することによってユーザ機器UE#1に影響を及ぼす。周波数帯域FBI〜FBIXXは既知であり、それぞれが約60MHzの帯域幅を有している。各周波数帯域は、それぞれが5MHzの帯域幅を有している複数の通信周波数チャネルを含んでいる。従って、各周波数チャネルに関して、110dBmのノイズフロアを174dBm/Hzの相対ノイズに基づき規定することができる。
【0038】
図2Bに示されているように、ジャミング領域外のユーザ機器UE#10に関する主要電力は、比較的小さいCPICH電力と、ユーザ機器専用の比較的大きい信号コード電力と、共有信号電力の主要部分とが合算されたものである。後者は通信周波数チャネルの同一の5MHz帯域幅にある種々のユーザ機器によって使用される。それにもかかわらず、サービングベースノードステーション及び別のベースノードステーションによって各ユーザ機器に提供される擬似雑音拡散コードに応じて、各ユーザ機器に関して情報を検索することができる。
【0039】
サービスベースノードステーション1のカバレッジエリアCA1内のユーザ機器の数が変化すると、共有信号電力も変化することが多い。しかしながら、共有信号電力が変化した場合でもユーザ機器UE#10はサービング擬似雑音拡散コードsSCを利用することができるので、ユーザ機器UE#10はサービングベースノードステーションsBNS#1との通信リンクを維持することができる。これは、共有信号電力が変化した場合であっても、それにもかかわらずCPICH電力をユーザ機器UE#10によって検出できることに基づく。CPICH電力は通常の場合、主要電力の上限を下回る24dBmよりも低い。従って、瞬時の24dBmの拡散コード利得値に基づき、CPICH電力及び擬似雑音拡散コードSCをユーザ機器UE#10によって通常の動作中に検出することができる。
【0040】
サービングノードステーションsBNS#1とユーザ機器UE#10と間の距離、例えばサービングノードステーションsBNS#1とユーザ機器UE10との間の距離が低減されると、セル選択判定基準電力パラメータEc/Io比率(一般的には受信信号コード電力CPICH RSCPと同様にCPICH Ec/Ioと表される)が増分し、従って、信号品質全体が向上することになる。しかしながら、例えばUE#20に向かって移動することによってUE#10とsBNS#1との距離が増加すると、バイアスパラメータEc/Io、即ち、sBNS#1の受信信号コード電力CPICH RSCPとCPIHC Ec/Ioの比率はBNS#2のものに比べて減分されるが、その代わりにBNS♯2に関するものは増分される。従って、その状況に基づき、UE#10からUE#20へと移動することによって、ソフトハンドオーバがsBNS#1とBNS#2との間で行なわれる可能性がある。この状況は例えば3GPP TS25.133に記載されている。
【0041】
それらの通常動作とは区別されて、通信周波数チャネルにおける干渉は、ジャマーJの存在に起因する、
図1に示されている状況である。ジャマーの存在によって、ユーザ機器UE#1においては、
図2Cに示されているような受信主要出力が生じる。CPICH電力、専用信号コード及び共有信号電力に付加的に、
図2Bの主要電力の頂部においては大量のジャミング電力がUE#1によって検出される。従って、
図2Cから既に容易に見て取れるように、CPICH電力は拡散コード利得にはもはや存在せず、従ってもはや検出することはできない。この状況は、TS25.133、4.2.2.1章に記載されているような、非稼動状況とは区別される。即ち、ここで説明する
図1及び
図2Cの状況においては、バイアスパラメータを検出することはできないが、その一方で非バイアスパラメータは増分している。この増分はジャマーJのジャミング電力に起因している。「非稼動エリア」状態においては、非バイアスパラメータは減分し、バイアスパラメータも同様に減分する。
【0042】
従って本発明のコンセプトによれば、この状況は、通信ユーザ機器UE#1における通信ユーザ機器受信器の帯域幅内にある非バイアス受信帯域幅電力も測定されるときに、ユーザ機器UE#1に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する効果的なコンセプトを提供するために使用することができる。バイアスパラメータ、即ちEc/Io及びRSCCIを検出することができず、且つ、非バイアスパラメータが増分しているという条件の検査に基づき、ジャミング放射源の第1の指示が得られる。しかしながら、この結果を強固なものにするために、第3の条件が本発明のコンセプトに応じて満たされなければならない。
【0043】
図3から最も良く見て取れるように、非バイアスパラメータの増分した値は、所定の閾値Xよりも大きく基本ノイズフロアを上回ることが検査されなければならない。ここで、閾値Xは受信可能な擬似雑音拡散コードの確認にとって十分なものである調整可能な大きさである。このケースにおいては、擬似雑音拡散コード利得値は24dBmの大きさを有している。
【0044】
図3の左側は、
図2Bに既に示した状況を定量的に表している先行の時間に対応する。
図3の右側は、
図2Bに既に示した状況を定量的に表している後行の第2時間に対応する。従って、
図3は例えばUE#10からUE#1への移動を表している。両ケースに関する
図3におけるノイズフロアは174dBm/Hz及び5MHzの周波数帯域FBIにそれぞれ対応する−110dBmに位置しており、周波数帯域FBIは1920−1980MHzの間のアップリンク周波数と、2110−2170MHzの間のダウンリンク周波数とを有しており、二重距離(duplex distance)は190MHzであり、またチャネル幅は5MHzである。
【0045】
先行時点においては、CPICHを依然として検出することができ、また、CPICH電力は約−90dBmに位置しており、従って、−80dBmにおける非ジャミング状況に関して示される総広帯域電力WBpを10dBm下回っている。従って、CPICHチャネル電力は−24dBmの拡散コード利得内にある。CPICH電力は−104dBmまでは検出することができる。
【0046】
通信ユーザ機器UE#1のアンテナコネクタにおける通信ユーザ機器受信器の帯域幅内の非バイアス受信広帯域電力WBpがジャマーJのジャミング電力出力に起因して増分すると、この状況は変化する。この状況は後行の第2時間t
2に示されており、CPICHはジャミングに起因してもはや検出することができない。既に概要を述べたように、先行の第1時間と比較すると、後行の第2時間t
2における最大受信広帯域電力WBpは、
図3の左側と右側との間の点線の矢印によって示されているように増分している。従って、特許請求の範囲及び上記において説明したような条件(b)の検査の結果は肯定される。更には、非バイアス受信広帯域電力WBpの増分した値は、閾値Xよりも大きく、即ち24dBmの拡散コード利得値よりも大きく、基本ノイズフロアNFを上回る。従って、特許請求の範囲の条件(c)は満たされている。他方では、−90dBmにおけるCPICH電力は広帯域電力から拡散コード利得を減算したものよりも遥かに下回っており、即ち−64dBmから遥かに下回っているので、Ec/Io比率もRSCP受信信号コード電力も検出することはできない。従って、特許請求の範囲に記載した条件(a)の検査の結果は肯定される。
【0047】
従って、後行の時間t
2における状況はジャミング状況である。また
図3の右側は、それどころか、上述したような肯定された条件(c)が必要であることを示している。非バイアス受信広帯域電力の増分した値がノイズフロアを超えて24dBよりも小さい場合には、これは依然として時間t
1及び時間t
2における非稼動エリア状況から生じることが考えられる。
【0048】
ここでは図示していない更に別の実施の形態においては、広帯域電力WBpが
図3における破線の矢印における二重のスラッシュを下回る限りは、ユーザ機器UE#10からアプリケーションに、また特に、少なくとも一つのベースノードステーションのセットのいずれかへとジャミングを指示するメッセージを提供することによって警告を出力することができる。この場合、擬似雑音拡散コードに関するサービングダウンリンクチャネルsCPICHにおけるバイアスパラメータ、即ちEc/Io及びRSCPを依然として、t
1とt
2との間の後行の時間tにおいて検出することができる。しかしながら、それにもかかわらず、それぞれが顕著に減分しており、例えば先行の第1時間t
1と比較して、90%よりも大きく減分している。例えば、低警告レベルWL
lowを時間t’において設定することができ、高警告レベルWL
highを時間t''において設定することができる。広帯域電力WBpが二重のスラッシュを超える後行の時間においては、CPICH電力はもはや拡散コード利得内にはなく、ジャミングはUE#1からsBNS#1への通信リンクを遮断している。このケースにおいて、条件(a)、(b)及び(c)は満たされており、またジャミング放射源は通信ユーザ機器UE#1に影響を及ぼしている。ジャミングを指示するメッセージをユーザ機器UE#1からアプリケーションに提供することができ、またアプリケーションは更に警告メッセージを提供することができる。警告メッセージをネットワーク局又は制御局の他のアイテムへと導くことができる。
【0049】
警告レベルは閾値Xの大きさと共に増分するものであっても良い。例えば、閾値が比較的低い場合には警告レベルを主として高くすることができ、この場合拡散コード利得はむしろ低く、またジャミングは閾値が高いケースよりも効果的に通信リンクを遮断する可能性がある。
【0050】
本発明は、通信ユーザ機器に影響を及ぼすジャミング放射源を検出する方法に関し、この通信ユーザ機器(UE)及び複数のベースノードステーション(BNS)はセルラ方式の符号分割多重アクセス(CDMA)を基礎としている無線ネットワーク(RN)の構成要素であり、ここで、
通信信号ユニット(SU)は、サービングベースノードステーション(sBNS)のサービングセルカバレッジエリア(CA)における擬似雑音拡散コード(SC)と相関が取られ、擬似雑音チップ(CHI)として、スペクトル的に通信周波数帯域(FB I−XIX)の上限周波数と下限周波数との間に位置する多重共有通信周波数チャネルにおいて送信され、また、
擬似雑音拡散コード(SC)は、サービングダウンリンクチャネル(sCPICH)において、前述のサービングベースノードステーション(BNS)から、サービング擬似雑音拡散コード(sSC)として通信ユーザ機器(UE)によって受信される。