特許第5748929号(P5748929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5748929
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】螺旋突条付き現場造成杭の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/56 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   E02D5/56
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-41963(P2015-41963)
(22)【出願日】2015年3月4日
【審査請求日】2015年3月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199234
【氏名又は名称】千代田ソイルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103757
【弁理士】
【氏名又は名称】秋田 修
(72)【発明者】
【氏名】雨甲斐 隆
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−062446(JP,A)
【文献】 特開昭61−083718(JP,A)
【文献】 特開2005−264454(JP,A)
【文献】 特開2014−091930(JP,A)
【文献】 特開2003−184078(JP,A)
【文献】 特開2013−091902(JP,A)
【文献】 特開2015−017418(JP,A)
【文献】 特公昭61−058614(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22 − 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に掘削ヘッドが装着され、下端部外周面に螺旋状掘削刃が設けられた鋼管によって、外周面に螺旋状の突条を有する現場造成杭を地中に構築する方法であって、
前記掘削ヘッドは、鋼管の下端部内周面を直径方向に横断し、両端を前記内周面に固定されて鋼管の下端面から垂直に突出する板状の先端掘削刃と、前記下端面の先端掘削刃の両側に形成される略半月形の開口部をそれぞれ塞ぐ、下方へ開放可能な一対の底板から構成されたものであり、
鋼管を垂直に保持して、鋼管下端の開口部を底板で塞いだ掘削ヘッドを、杭孔掘削位置の地面の上に位置決めする第1の工程と、
鋼管を螺旋状掘削刃の螺旋ピッチに合わせて回転させながら地中を下降させ、先端掘削刃と螺旋状掘削刃により目的の深度まで螺旋状の杭孔を掘削する第2の工程と、
鋼管を前記深度で停止させた後、鋼管内に必要量の杭材料を充填する第3の工程と、
鋼管内の杭材料上面を圧搾空気で加圧した状態で、前記第2の工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃がなぞるように鋼管を逆転させながら上昇させることにより、杭孔底部近傍で鋼管下端の開口部を塞いでいる底板を当該鋼管内の杭材料の圧力で開放して前記開口部から放出される杭材料を螺旋状掘削刃下方の杭孔内に連続的に充填していく第4の工程を含むことを特徴とする螺旋突条付き現場造成杭の構築方法。
【請求項2】
鋼管内の開口部近傍の杭材料内に、当該鋼管内に上下方向に配管されて下端部出口に杭材料の侵入を防ぐ逆止弁が設けられた連通管を介して杭材料上方の圧搾空気を導入することにより、前記開口部から杭孔内に放出される杭材料の圧力を高めることを特徴とする請求項1に記載の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法。
【請求項3】
下端に掘削ヘッドが装着され、下端部外周面に螺旋状掘削刃が設けられた鋼管によって、外周面に螺旋状の突条を有する現場造成杭を地中に構築する方法であって、
前記掘削ヘッドは、鋼管の下端部内周面を直径方向に横断し、両端を前記内周面に固定されて鋼管の下端面から垂直に突出する板状の先端掘削刃と、前記下端面の先端掘削刃の両側に形成される略半月形の開口部をそれぞれ塞ぐ、下方へ開放可能な一対の底板から構成され、前記鋼管は、その下端近傍部分の内側に前記開口部と連通する蓄圧空間が形成されたものであり、
鋼管を垂直に保持して、鋼管下端の開口部を底板で塞いだ掘削ヘッドを、杭孔掘削位置の地面の上に位置決めする第1の工程と、
鋼管を螺旋状掘削刃の螺旋ピッチに合わせて回転させながら地中を下降させ、先端掘削刃と螺旋状掘削刃により目的の深度まで螺旋状の杭孔を掘削する第2の工程と、
前記蓄圧空間内に外部のコンクリートポンプから高圧の杭材料を圧送しつつ、第2の工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃がなぞるように鋼管を逆転させながら上昇させることにより、杭孔底部近傍で鋼管下端の開口部を塞いでいる底板を当該蓄圧空間内の杭材料の圧力で開放して前記開口部から放出される杭材料を螺旋状掘削刃下方の杭孔内に連続的に充填していく第3の工程を含むことを特徴とする螺旋突条付き現場造成杭の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度と耐久性に優れた高品質の螺旋突条付き現場造成杭を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小規模住宅の基礎杭として用いられる、外周面に螺旋状の突条を形成した杭は、突条が地盤に食い込んで地盤との摩擦を効果的に増加できるため、小径の杭でも大きな荷重を支持できる利点がある。
【0003】
このような螺旋突条付きの杭を現場造成する方法としては、従来、例えば、特許文献1や特許文献2に提案されているものがある。特許文献1において提案されている方法においては、ケーシング先端に三つ割状に開閉自在なアースオーガを設けケーシング下部外周にスクリューを備えた掘削機構を用いている。
【0004】
前記掘削機構は、鉛直方向に回転掘進するケーシング上部から圧搾空気を送り込んでワースオーガ先端から噴出させながら、掘進部分の地盤をケーシング外周に圧密するように掘削して所定深さまで掘進し、次いでケーシング内に生コンクリートを打設する。
【0005】
次いで、ケーシングを逆回転してケーシング外周の地盤にスクリュー溝を刻設しながら地中より引き抜く。この過程でケーシング先端が開いて内部の生コンクリートが地盤に形成されたスクリュー溝内に放出されて生コンクリート杭体が形成される。その後、前記生コンクリート杭体内に鉄筋籠を埋入して固化することにより、外周に突条が形成された摩擦杭が造成される。
【0006】
また、特許文献2において提案されている方法においては、鋼管の下端にその外周面よりも一部が突出した刃体を有する先端掘削刃が、取外しまたは前記鋼管の外周面よりも内側に収納可能に取り付けられた掘削刃取付け鋼管を用いている。
【0007】
前記掘削刃取付け鋼管は、鋼管の中心軸回りに一定方向に回転させつつ押し下げることで、先端掘削刃によって下方に掘削し且つ鋼管外周の土に螺旋状の溝を形成しながら地盤に挿入し、次いで、鋼管内に杭材料となるモルタルまたは生コンクリートまたはセメントミルクを充填する。
【0008】
次に、掘削刃取付け鋼管から鋼管のみを引き上げて先端掘削刃を分離させるか、または、掘削刃取付け鋼管を逆回転させて鋼管外径よりも内周側に収納して地盤から引き抜く。この過程で鋼管内の杭材料は、鋼管の抜き跡となる杭孔及び螺旋状の溝内に充填され、螺旋状の突条を有する節付き現場打ちコンクリート系杭が現場造成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−213915号公報
【特許文献2】特開2014−62446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1において提案されている方法においては、ケーシング先端のヘッドが蝶番で三つ割状に開閉するため、ケーシング下部の閉塞が完全でなく、掘進時にヘッドの割溝部分からケーシング内部への地下水や土が侵入してしまう問題があった。
【0011】
また、ケーシングを逆回転してケーシング外周の地盤にスクリュー溝を刻設しながら地中より引き抜く過程で、ケーシング先端のヘッドが蝶番を中心に外側に揺動して三割状に開かれるため、地盤に形成されるスクリュー溝の形状が崩れる問題があった。
【0012】
また、地中に形成されたスクリュー溝内に生コンクリートが充填される際に、杭孔周囲から作用する土圧によって、地中に造成される生コンクリート杭体の外径がケーシングの外径よりも細くなる問題があった。
【0013】
また、特許文献2において提案されている工法においては、鋼管下端の外周面から突出した先端掘削刃によって鋼管外周の土を掻くようにして地中に螺旋状の溝を形成しているため崩れ易く、また、前記特許文献1のものと同様に、周囲から作用する土圧によって、杭の外径が鋼管の外径よりも細くなる問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題を解消し、強度と耐久性に優れた高品質の螺旋突条付き現場造成杭を構築する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的のために提供される本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法は、下端に掘削ヘッドが装着され、下端部外周面に螺旋状掘削刃が設けられた鋼管によって、外周面に螺旋状の突条を有する現場造成杭を地中に構築する方法であって、前記掘削ヘッドは、鋼管の下端部内周面を直径方向に横断し、両端を前記内周面に固定されて鋼管の下端面から垂直に突出する板状の先端掘削刃と、前記下端面の先端掘削刃の両側に形成される略半月形の開口部をそれぞれ塞ぐ、下方へ開放可能な一対の底板から構成されたものであり、鋼管を垂直に保持して、鋼管下端の開口部を底板で塞いだ掘削ヘッドを、杭孔掘削位置の地面の上に位置決めする第1の工程と、鋼管を螺旋状掘削刃の螺旋ピッチに合わせて回転させながら地中を下降させ、先端掘削刃と螺旋状掘削刃により目的の深度まで螺旋状の杭孔を掘削する第2の工程と、鋼管を前記深度で停止させた後、鋼管内に必要量の杭材料を充填する第3の工程と、鋼管内の杭材料の上面を圧搾空気で加圧した状態で、前記第2の工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃がなぞるように鋼管を逆転させながら上昇させることにより、杭孔底部近傍で鋼管下端の開口部を塞いでいる底板を当該鋼管内の杭材料の圧力で開放して前記開口部から放出される杭材料を螺旋状掘削刃下方の杭孔内に連続的に充填していく第4の工程を含む。
【0016】
前記発明における第4の工程においては、鋼管内の開口部近傍の杭材料内に、当該鋼管内に上下方向に配管されて下端部出口に杭材料の侵入を防ぐ逆止弁が設けられた連通管を介して杭材料上方の圧搾空気を導入することにより、前記開口部から杭孔内に放出される杭材料の圧力を高めることが望ましい。
【0017】
また、本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法は、下端に掘削ヘッドが装着され、下端部外周面に螺旋状掘削刃が設けられた鋼管によって、外周面に螺旋状の突条を有する現場造成杭を地中に構築する方法であって、前記掘削ヘッドは、鋼管の下端部内周面を直径方向に横断し、両端を前記内周面に固定されて鋼管の下端面から垂直に突出する板状の先端掘削刃と、前記下端面の先端掘削刃の両側に形成される略半月形の開口部をそれぞれ塞ぐ、下方へ開放可能な一対の底板から構成され、前記鋼管は、その下端近傍部分の内側に前記開口部と連通する蓄圧空間が形成されたものであり、鋼管を垂直に保持して、鋼管下端の開口部を底板で塞いだ掘削ヘッドを、杭孔掘削位置の地面の上に位置決めする第1の工程と、鋼管を螺旋状掘削刃の螺旋ピッチに合わせて回転させながら地中を下降させ、先端掘削刃と螺旋状掘削刃により目的の深度まで螺旋状の杭孔を掘削する第2の工程と、前記蓄圧空間内に外部のコンクリートポンプから高圧の杭材料を圧送しつつ、第2の工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃がなぞるように鋼管を逆転させながら上昇させることにより、杭孔底部近傍で鋼管下端の開口部を塞いでいる底板を当該蓄圧空間内の杭材料の圧力で開放して前記開口部から放出される杭材料を螺旋状掘削刃下方の杭孔内に連続的に充填していく第3の工程を含む。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された発明に係る螺旋突条付き現場造成杭の構築方法によれば、杭孔内へ鋼管内の杭材料を放出して杭を造成する際に、鋼管内の杭材料の圧力が高められているため、打設される杭の土圧による外径減少を防止することができるとともに、杭孔周囲に形成された螺旋状溝の隅々まで確実に杭材料を充填することができる。
【0019】
また、鋼管を回転上昇させながら、地中に形成された螺旋状の杭孔内に杭材料を充填していく工程において、鋼管周囲の螺旋状掘削刃の上方に既に形成されている杭孔周囲の螺旋状溝の内周縁が、周囲から作用する土圧によって崩れたり変形を生じた場合でも、前記螺旋状溝を下方からなぞるように上昇してくる螺旋状掘削刃が、杭材料が充填される直前に当該螺旋状溝の崩れを修復することができるため、強度と耐久性に優れた螺旋突条付き現場造成杭を構築することができる。
【0020】
請求項2に記載された発明に係る螺旋突条付き現場造成杭の構築方法によれば、鋼管を回転上昇させながら、地中に形成された螺旋状の杭孔内に杭材料を充填していく工程において、鋼管下端から杭孔内に放出される際に生じる杭材料の圧力低下を抑えることができるため、土圧による杭の外径減少や螺旋溝の崩れをより確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項3に記載された発明に係る螺旋突条付き現場造成杭の構築方法によれば、コンクリートポンプから鋼管内の蓄圧空間に杭材料を直接供給しながら杭孔内に杭材料の充填を行うため、杭孔掘削工程の後に、鋼管内に必要量の杭材料を充填する工程を省くことができ、作業時間を短縮することができる。
【0022】
また、コンクリートポンプの圧力や流量の脈動が、蓄圧空間内の杭材料上方に閉じ込められた空気の体積変化によって吸収されるため、鋼管下端から杭孔内に充填される杭材料の圧力や流量を安定させることができるとともに、鋼管内で杭材料を加圧するための圧搾空気を導入する必要が無いため、エアコンプレッサが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法の1実施形態において使用する構築装置を装着した作業車の側面図である。
図2図1に示す構築装置の鋼管下端近傍部分の斜視図である。
図3】鋼管下端から底板を外した状態を示す斜視図である。
図4】先端掘削刃の横断方向から見た鋼管下端部の縦断面図である。
図5】先端掘削刃の側面方向から見た鋼管下端部の縦断面図である。
図6】本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法における各工程の前半部分を説明する図である。
図7】本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法における各工程の後半部分を説明する図である。
図8】本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法の別の実施形態における、鋼管下端近傍部分の斜視図である。
図9】底板を開いた状態を示す鋼管下端近傍部分の斜視図である。
図10】本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法のさらに別の実施形態において使用される鋼管の内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法の1実施形態において使用する構築装置を装着した作業車の側面図であって、同図に示す構築装置1は、作業車2のアーム3に支持されたガイド柱4に対して上下動可能に支持される駆動ヘッド5と、前記駆動ヘッド5に上端が支持されて回転駆動される鋼管6、及び、前記鋼管6の下端開口部に装着される掘削ヘッド7から構成されている。
【0025】
作業車2はクローラ2Aで走行移動が可能で、作業内容に応じてアースオーガ等の様々な作業装置を取り付けて使用可能な車両である。また、ガイド支柱4には、その上下の端部に一対のガイドシーブ8A、8Bが設けられており、これらのガイドシーブ8A、8B間に昇降チェーン9が掛け渡されている。
【0026】
前記昇降チェーン9には駆動ヘッド5が連結されていて、当該昇降チェーン9を図示しない駆動手段で駆動することによって、駆動ヘッド5がガイド柱4に沿って昇降移動する構造になっている。
【0027】
駆動ヘッド5の下面には、正逆両方向に回転可能な駆動軸5Aが下方に突出して設けられている。前記駆動軸5Aは、鋼管6の上端に連結部6Aを介して設けられている被駆動軸10と切り離し可能に連結されていて、駆動軸5Aが回転駆動されると、被駆動軸10と鋼管6は、一体となって回転されるようになっている。
【0028】
鋼管6には、その長手方向の複数箇所に連結部が設けられていて、必要に応じてこれらの連結部でその上下の部分が切り離し可能に構成されている。なお、これらの連結部ならびに上端の連結部6Aは、シール部材が組み込まれて密閉されている。
【0029】
また、鋼管6の下端に装着される掘削ヘッド7は、図2に示すように、鋼鉄製の先端掘削刃11と、その両側に配置されている一対の底板12から構成されており、これらの底板12は、図3に示すように鋼管6の下方へ分離可能になっている。
【0030】
図4及び図5に示すように、先端掘削刃11は平板状に形成されていて、その下方部分は、鋼管6の下端から垂直に突出しており、またその上方部分は、鋼管6の内側に嵌入してその直径方向に横断して両端が当該鋼管の内周面に溶接固定されている。
【0031】
図3に示すように、先端掘削刃11には前記直径方向両側の垂直な端面の途中位置にそれぞれ、段部11aが形成されていて、当該段部11aより上方部分の前記直径方向の幅は、鋼管6の内径に適合させてある。
【0032】
また、前記段部11aより下方部分の幅は鋼管6の外径に適合させてあり、先端掘削刃11の下端には、杭孔掘削時の掘削抵抗を減らすとともに、鋼管6の掘進時の直進安定性を高めるために、山形の切欠部11bが形成されている。
【0033】
また、前記一対の底板12は、鋼管6下端の先端掘削刃11の両側に形成されている平面視略半月形の開口部h(図3参照)にそれぞれ適合する、平面視略半月形の外周輪郭を有している。
【0034】
これらの底板12は、鋼管6の下端開口部の内周面に適合する半径で形成されている小径外周部12aと、当該鋼管6の外周面に適合する半径で形成されている大径外周部12bとを上下二段に有しており、先端掘削刃11の両側面11cにそれぞれの平坦な端面12cを当接させて鋼管6の下端内周面に小径外周部12aを嵌入させた状態で、大径外周部12bが鋼管6の外周面と段差無く整合するようにしてある。
【0035】
また、鋼管6の下端部外周面には、螺旋状掘削刃13が設けられている。この螺旋状掘削刃13は、杭孔内周面を螺旋溝状に掘削するためのものであって、本実施形態のものにおいては、前記螺旋状掘削刃13は、螺旋状に湾曲させた厚手の鋼板を鋼管6の外周面に巻き付けて溶接固定して形成しており、図4及び図5に示すように、その断面形状を長手方向中間部分で台形螺旋状とし、巻き始めと巻き終わり部分を上下の厚みが薄くなるように略3角形状にしてある。
【0036】
なお、本実施形態のものにおいては、螺旋状掘削刃13は湾曲させた鋼板を組み合わせて製作しているが、これに限定するものではなく、螺旋状掘削刃13は、鋼鋳物等で一体に製作してもよい。
【0037】
また、図4に示すように、鋼管6の内壁面にはその上下方向に連通管6aが付設されている。ここでは図示していないが、連通管6aの上端は、鋼管6内の上端近傍に開口している。また、前記連通管6aの下端は、鋼管6の下端開口部の近傍まで延びており、その出口には、連通管6a内への杭材料の侵入を防ぐ逆止弁6bが設けられている。
【0038】
本実施形態のものにおいては、前記連通管6aには小径の鋼管が用いられていて、鋼管6内の上下方向複数箇所において管固定部材6cで固定されている。なお、連通管6aは鋼管に限らず、塩化ビニル管やホース等の可撓管を用いてもよい。
【0039】
次に、前述した構築装置1を用いて現場造成杭を構築する方法について説明する。
現場造成杭の構築に当たっては、図1に示す、構築装置1を装着した作業車2を杭の構築現場に移動させて鋼管6を杭の構築位置の真上に位置させる。
【0040】
ここで、図6(a)に示すように、鋼管6の下端を地面GL付近まで下降させ、先端掘削刃11の両側に形成されている開口部のそれぞれを下方から底板12で塞いで掘削ヘッド7を組み立て、当該掘削ヘッド7を杭孔掘削位置の地面GLの上に位置決めする。なお、これらの底板12は開口部に固定されていないが、下面を地面GLに当接することにより開口部に嵌入された状態に保持される。
【0041】
次に、同図(b)に示すように、鋼管6をその下端部外周に設けられた螺旋状掘削刃13の螺旋ピッチに合わせて回転させながら下降させることにより、鋼管6の下端の先端掘削刃11と、前記螺旋状掘削刃13によって杭孔を掘進していく。
【0042】
この際、螺旋状掘削刃13上方の鋼管6の周囲には杭孔の一部として、螺旋状溝Nが形成されていく。なお、前記一対の底板12は、それぞれの下面に作用する土圧によって鋼管6の下端に押し付けられているため、鋼管6から外れることはない。
【0043】
こうして、同図(c)に示すように、鋼管6で目的の深度まで杭孔を掘削したら、鋼管6の回転と下降移動を停止させる。次いで同図(d)に示すように、鋼管6内に上方から杭材料C(生コンクリート等)を充填する。なお、この実施形態のものにおいては、杭材料Cの充填は、図1に示す連結部6Aを被駆動軸10から外し、その開口部から鋼管6内に杭材料Cを投入する。
【0044】
この際、図7(a)に示すように、杭材料Cは、地中に形成されている螺旋状溝Nの容積分と鋼管6自体の地中に侵入している体積分を加算した分だけ、地面GLより高い位置まで鋼管6内に充填する。
【0045】
次に、図1に示す連結部6Aを被駆動軸10に連結して鋼管6の上端を密閉した後、図7(b)に示すように、鋼管6内の杭材料Cの上方の空間内に、外部に設置した図示しないエアコンプレッサから圧搾空気を導入して鋼管6内の杭材料Cの上面に圧力Pを加え、前の工程で形成されている螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃13がなぞるように鋼管6を逆転させながら上昇させる。
【0046】
なお、図示による詳細な説明は省略するが、図1に示す構築装置1の連結部6A、被駆動軸10、駆動軸5Aのそれぞれの中心部には、鋼管6の内部と連通する流路が軸方向に貫通して設けられていて、駆動軸5Aの流路は駆動ヘッド5内側の上部組み込まれているスイベルジョイントを介して前記エアコンプレッサの配管と接続されている。
【0047】
鋼管6の上昇により、鋼管6の下端に装着されていた一対の底板12は、鋼管6内の杭材料Cから受ける圧力によって下方に分離して杭孔底部に残される。これと同時に、鋼管6内に充填されている杭材料Cは、鋼管6下端の開口部hから放出されて、螺旋状溝Nが形成されている杭孔内に充填されていく。
【0048】
鋼管6とともに螺旋状掘削刃13が回転しながら上昇して抜けたあとの螺旋状溝Nには周囲から土圧が作用しているが、鋼管6内に導入されている圧搾空気の圧力Pが杭材料Cの上面に加わって杭材料Cの圧力が高められているため、杭材料Cは螺旋状溝Nの隅々まで確実に充填される。
【0049】
この際、螺旋状掘削刃13の上方に既に形成されている螺旋状溝Nの内周縁が、周囲から作用する土圧によって崩れたり変形しても、下方から螺旋状溝Nをなぞるように上昇してくる螺旋状掘削刃13によって、杭材料Cが充填される直前に当該螺旋状溝Nの崩れは修復される。
【0050】
なお、鋼管6を回転上昇させながら、地中に形成された螺旋状の杭孔内に杭材料Cを充填していく過程において、鋼管6の下端開口部hの近傍で杭材料Cの圧力が低下する。しかしながら、本実施形態のものにおいては、連通管6aの下端周囲の杭材料C内の圧力が鋼管6の上方に導入されている圧搾空気の圧力Pよりも下がると、連通管6aを通って杭材料C内に前記圧力Pの空気Aが流れ込んで杭材料C内部の圧力低下を抑えることができる。
【0051】
こうして、最終的には、図7(c)に示すように、鋼管6は地上に引き上げられる。その後、地面GLに露出している杭材料Cの上面を均し、杭孔内の杭材料Cの固化を待って螺旋突条付き現場造成杭の打設作業が完了する。この際、必要に応じて固化前の杭材料C内に鉄筋籠等の補強部材を埋設してもよい。
【0052】
次に、図8は、本発明の別の実施形態における、鋼管下端近傍部分の斜視図であって、先に図2及び図3で説明したものとは掘削ヘッドの構造のみが相違しており、その他の構成部分については、これらの図と共通の符号を用いている。
【0053】
図8に示す掘削ヘッド7Aにおいては、一対の底板12は、先端掘削刃11の両側面11cにそれぞれ蝶番14によって、鋼管6の直径方向に平行な軸回りに回動自在に枢着されていて、図9に示すように、鋼管6下方への回動により先端掘削刃11の両側の開口部hが開放されるようにしてある。
【0054】
そのため、前述した図6(a)の工程においては、一対の底板12を上方に回動してそれぞれに対応する開口部hを塞ぐだけでよいため、セッティングが極めて簡単であり、また、不使用時にこれらの底板12を紛失しないように別途保管しておく必要がない。
【0055】
また、一対の底板12は、掘削された杭孔底部で鋼管6の下端から外れた後も、蝶番14を介して先端掘削刃11に連結されているので、鋼管6の地上への引き上げとともに回収されて消耗部品とならないため、現場造成杭の打設本数が多い場合には、工事コストの削減効果に大きく寄与することができる。
【0056】
なお、本実施形態のものにおいては、図8に示す閉じた位置から図9に示す開いた位置へ先端掘削刃11の両側の底板12を回動する際に、各蝶番14の回動中心よりも鋼管6の下端面が高い位置にあるので、底板12の小径外周部12aの回動軌跡が鋼管6の下端内側周縁と干渉して底板12が開き難くなる。そこで、本実施形態のものにおいては、図示していないが、前記小径外周部12aの中央上縁部分の適宜範囲に面取りを施すことで前記干渉を回避している。
【0057】
さらに、図示は省略するが、一対の底板12と先端掘削刃11との間を蝶番14で連結する代わりに、先端掘削刃11の両側に配置される各底板12の上面と、先端掘削刃11の両側の各側面11cの上方部分の中央位置との間をそれぞれ、鋼管6の下部内側に格納可能な30cm〜50cm程度のワイヤロープで連結し、前述した図7(b)に示す工程で鋼管6を上昇させる際に、鋼管6の下端から分離されたこれらの底板12を前記ワイヤロープで先端掘削刃11から吊り下げ、杭孔内に充填されている杭材料Cの中を通過させて地上に回収するようにしてもよい。
【0058】
図10は、本発明の螺旋突条付き現場造成杭の構築方法のさらに別の実施形態において使用される鋼管の内部構造を示す縦断面図であって、同図に示す鋼管6’は、上方部分が連結部6’Aを介して被駆動軸10と連結される小径部6’Bとなっている。
【0059】
前記小径部6’Bの内側には、上端部が図示しない外部のコンクリートポンプとスイベルジョイントを介して連通する杭材料通路6’Cが形成されている。また、前記小径部6’Bの下方部分は、先に説明した実施形態において用いている鋼管6の下方部分と同一構造の大径部6’Dの内側に同心状に差し込まれている。
【0060】
本実施形態においては、前記大径部6’Dの内側の空間により、蓄圧空間Rが形成されている。前記蓄圧空間Rは、前記コンクリートポンプから圧送されてくる杭材料の圧力や流量の変動を吸収するアキュムレータの機能を有している。
【0061】
大径部6’Dの上端と小径部6’B外周面との間の円環状の隙間は天蓋6’Eによって密閉されている。天蓋6’Eは、その内周縁部が小径部6’Bの外周面に溶接固定されているとともに、外周縁部が大径部6’Dの上端面に溶接固定されている。また、前記天蓋6’Eの上面には円錐ガイド6’Fが設けられている。
【0062】
円錐ガイド6’Fは、その上端周縁部と下端周縁部がそれぞれ、小径部6’Bの外周面と天蓋6’Eの上面周縁部にそれぞれ溶接固定されており、天蓋6’と円錐ガイド6’Fを介して小径部6’Bと大径部6’Dが一体に連結されている。また、杭材料通路6’が開口する小径部6’Bの下端面は、掘削刃11の上端面に近接して配置されている。
【0063】
次に、前述した鋼管6’を用いた螺旋状現場造成杭の構築方法について説明する。ここでは図示は省略するが、はじめに図6(a)に示す鋼管6と同様に、鋼管6’の下端を地面付近まで下降させ、先端掘削刃11の両側に形成されている開口部のそれぞれを下方から底板12で塞いで掘削ヘッド7を組み立て、当該掘削ヘッド7を杭孔掘削位置の地面の上に位置決めする。
【0064】
次に、これも図6(b)に示す鋼管6と同様に、鋼管6’を螺旋状掘削刃13の螺旋ピッチに合わせて回転させながら地中を下降させて、先端掘削刃11と螺旋状掘削刃13で杭孔を掘進していく。
【0065】
こうして、鋼管6’で目的の深度まで杭孔を掘削したら、鋼管6’の回転と下降移動を停止させた後、外部のコンクリートポンプから杭材料通路6’Cを介して大径部6’Dの内側に形成されている蓄圧空間Rに高圧の杭材料Cを圧送する。
【0066】
これと略同時に、前工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃13がなぞるように、その螺旋ピッチに合わせて鋼管6’を逆向きに回転させながら上昇させて、杭孔底部近傍で鋼管下端の開口部を塞いでいる底板12を鋼管6’の大径部6Dの杭材料Cの圧力で開放する。
【0067】
その後、鋼管6’の回転と上昇を継続しつつ、コンクリートポンプから鋼管6’の大径部6’D内へ杭材料Cを圧送して、螺旋状掘削刃下方の杭孔内に、前記開口部から放出される杭材料を連続的に充填する。
【0068】
本実施形態においては、図10に示すように、大径部6’D内の蓄圧空間Rに杭材料通路6’Cから高圧で送り込まれてくる杭材料C(仮想線はその液面を示す。)の上方に閉じ込められて圧縮された空気でコンクリートポンプの圧力や流量の脈動が吸収されるため、鋼管6’の下端から杭孔内に充填される杭材料の圧力を安定させることができる
【0069】
この方法によると、先に説明した鋼管6を使用する構築方法と比較して、図6(d)と図7(c)に示す、鋼管6内に杭の容積相当量の杭材料Cを充填する工程を省くことができるため、作業時間が短縮できるとともに、鋼管内の杭材料を加圧する圧搾空気を鋼管内に導入するためのエアコンプレッサも不要となる利点がある。
【0070】
なお、図10に示す鋼管6’は、その下方部分を、内側にコンクリートポンプから杭材料Cが導入される蓄圧空間Rを形成した大径部6’Dとして上方の小径部6’Bより直径を大きくしているが、本方法で用いる鋼管は、同図に示す構造のものに限定するものではなく、先の実施形態において用いている鋼管6と同様に全体に直径が一様で、その内部の下端近傍部分に開口部と連通する蓄圧空間を区画形成した構造のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 構築装置
2 作業車
2A クローラ
3 アーム
4 ガイド柱
5 駆動ヘッド
5A 駆動軸
6、6’ 鋼管
6A、6’A 連結部
6’B 小径部
6’C 杭材料通路
6’D 大径部
6’E 天蓋
6’F 円錐ガイド
6a 連通管
6b 逆止弁
6c 管固定部材
7、7A 掘削ヘッド
8A、8B ガイドシーブ
9 昇降チェーン
10 被駆動軸
11 先端掘削刃
11a 段部
11b 切欠部
11c 側面
12 底板
12a 小径外周部
12b 大径外周部
12c 端面
13 螺旋状掘削刃
14 蝶番
15 鋼管
h 開口部
R 蓄圧空間
【要約】
【課題】 強度と耐久性に優れた高品質の螺旋突条付き現場造成杭を構築する方法を提供する。
【解決手段】 鋼管6下端の開口部を底板で塞いだ掘削ヘッド7を杭孔掘削位置の地面GLの上に位置決めする第1の工程と、鋼管6を螺旋状掘削刃13の螺旋ピッチに合わせて回転・下降させて、目的の深度まで螺旋状の杭孔を掘削する第2の工程と、鋼管6内に必要量の杭材料を充填する第3の工程と、鋼管6内の杭材料の上面を圧搾空気で加圧した状態で、第2の工程で形成された螺旋状の杭孔内周面を螺旋状掘削刃13がなぞるように鋼管6を逆転・上昇させることにより、杭孔底部近傍で底板を鋼管6内の杭材料の圧力で開口部から開放して当該開口部から放出される杭材料を螺旋状掘削刃13下方の杭孔内に連続的に充填していく第4の工程により、外周面に螺旋状の突条を有する現場造成杭を地中に構築する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10