(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆バイアス回路は、レーザダイオードと並列に接続されたダイオードに通電するバイアス電流を所定値以上に可変設定するバイアス電流設定手段を具備することを特徴とする請求項1記載の光パルス発生器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る光パルス試験器の機能構成を示すブロック図である。この図に示すように、本光パルス試験器は、光パルス発生器1、方向性結合器2、受光部3、増幅部4、A/D変換部5及び表示部6から構成されている。
【0008】
光パルス発生器1は、測定光としての光パルスを発生して方向性結合器2に出射する。この光パルス発生器1は、本光パルス試験器の特徴的構成要件であり、
図2に示すような詳細構成を有する。すなわち、光パルス発生器1は、制御信号源1a、駆動トランジスタ1b、定電流源1c、定電圧源1d、レーザダイオード1e及び逆バイアス回路1fから構成されている。これら構成要件のうち、制御信号源1a、駆動トランジスタ1b、定電流源1c、定電圧源1d及び逆バイアス回路1f
は、レーザダイオード1eを駆動するための駆動手段を構成している。
【0009】
制御信号源1aは、制御信号を発生して駆動トランジスタ1bのベース端子に供給する。この制御信号源1aが発生する制御信号は、数nsec程度の極めて狭いパルス幅のパルス信号である。駆動トランジスタ1bは、エミッタ接地されたNPNトランジスタであり、出力側(コレクタ端子)に直列接続された定電圧源1dとレーザダイオード1eとが接続されており、また入力側(ベース端子)には上記制御信号源1aから制御信号が入力され、さらにエミッタ端子には定電流源1cが接続されている。
【0010】
定電流源1cは、駆動トランジスタ1bのエミッタ電流(当該エミッタ電流に略等しいコレクタ電流)を所定の電流値に設定するために設けられている。定電圧源1dは、上記駆動トランジスタ1bの出力側及びレーザダイオード1eを順バイアスするためのものであり、正極がレーザダイオード1eのアノード端子に接続されている。また、レーザダイオード1eは、カソード端子が駆動トランジスタ1bのコレクタ端子に接続されている。
【0011】
逆バイアス回路1fは、図示するようにバイアスダイオード1g、定電圧源1h及び抵抗器1iから構成されている。バイアスダイオード1gは、カソード端子が上記レーザダイオード1eのアノード端子及び定電圧源1hの負極に、またアノード端子が上記レーザダイオード1eのカソード端子及び抵抗器1iの一端にそれぞれ接続されている。定電圧源1hは、正極が抵抗器1iの他端に接続されている。すなわち、この逆バイアス回路1fは、バイアスダイオード1g、定電圧源1h及び抵抗器1iが閉ループ回路を構成すると共に、バイアスダイオード1gがレーザダイオード1eに対して逆極性で接続されたものである。
【0012】
方向性結合器2は、上記光パルスを試験対象である光ファイバFに向けて透過させると共に、該光ファイバFから入射される戻り光を受光部3に向けて出射する。受光部3は、上記戻り光を電気信号(受光信号)に光電変換して増幅部4に出力する。増幅部4は、上記受光信号を所定の増幅度で電圧増幅してA/D変換部5に出力
する。A/D変換部5は、上記増幅部4から入力された受光信号(アナログ信号)を所定のタイムインターバルでサンプリングすることによりデジタル信号(受光データ)に信号変換して表示部6に出力する。すなわち、上記受光データは、戻り光の強度変化を示す時系列データである。
【0013】
表示部6は、上記A/D変換部9から時系列データとして順次入力される受光データに所定の信号処理を施すことにより表示データに変換し、該表示データに基づいて測定画面を表示する。この測定画面は、後述するように、戻り光の強度変化(時間変化)を本光パルス試験器を基点とした光ファイバFの距離に換算して示すものである。
【0014】
次に、このように構成された本光パルス試験器の動作、特に本光パルス試験器の特徴である光パルス発生器1の
動作を説明する。
【0015】
図3は、光パルス発生器1におけるレーザダイオード1eの印加電圧を示す波形図である。この図において、ON期間は、駆動トランジスタ1bが制御信号源1aから供給された制御信号に基づいてON状態にある期間を示し、OFF期間は、駆動トランジスタ1bが制御信号に基づいてOFF状態にある期間を示している。
【0016】
この波形図に示すように、駆動トランジスタ1bがOFF状態にある場合、レーザダイオード1eは、逆バイアス回路1fから(つまり、定電圧源1hから抵抗器1iを介して)逆バイアス電圧が印加されている。この逆バイアス電圧は、レーザダイオード1eに並列接続されているバイアスダイオード1gの順方向電圧(一般のシリコンダイオードの場合には0.6V程度)である。
【0017】
このような状態において、制御信号によって駆動トランジスタ1bがOFF状態からON状態に遷移すると、レーザダイオード1eには上記逆バイアス電圧を越える順方向バイアス電圧が定電圧源1dから印加され、定電圧源1dから注入される駆動電流によってレーザダイオード1eが光パルスを発生する。
【0018】
図4は、制御信号のパルス幅を10nsecとした場合の光パルスの波形図であり、(a)は本第1実施形態における光パルスの波形図、(b)は従来(逆バイアス回路1fがない場合)における光パルスの波形図である。両者を比較するとわかるように、本第1実施形態の光パルスは、立上がり及び立下りが従来の光パルスよりも極めて急峻である。また、波高値が従来よりも2倍程度あり、したがってダイナミックレンジが従来よりも6dB程度広くなっている。
【0019】
また、
図5は、制御信号のパルス幅を5nsecとした場合の第1実施形態における光パルスの波形図である。この
図5は、
図4の場合に対して制御信号のパルス幅を半分にしたパルス信号の波形図を示すものであるが、立上がり及び立下りが従来の光パルスよりも急峻であり、また波高値も従来の光パルスよりも高いものとなっている。
【0020】
このような光パルス発生器1で発生した光パルスは方向性結合器2に入射し、当該方向性結合器2を介して光ファイバFに入射される。この結果、光ファイバF中では光パルスの伝搬位置において散乱光が順次発生し、当該散乱光のうち
光パルスの伝搬方向とは反対方向に散乱した後方散乱光が光ファイバF中を伝搬して、戻り光として方向性結合器2に入射する。また、光ファイバFにおいて接続器等の反射要素が存在する位置においては光パルスの反射光が発生し、当該反射光も戻り光として方向性結合器2に入射する。
【0021】
そして、このような戻り光は、方向性結合器2を介して受光部3に受光され、当該受光部3によって受光信号(電気信号)に変換される。そして、この受光信号は、増幅部4で増幅された後、A/D変換部5によって受光データ(時系列データ)に変換されて表示部6に入力される。そして、表示部6は、
図6に示すような測定画面を受光データに基づいて生成・表示する。
【0022】
この測定画面において、光強度の全体的な傾きは光ファイバFの伝送損失を示しており、また距離Laにおける光強度の突発的な変化は反射の発生を示している。空間分解能は、このような反射の発生位置つまり距離Laの識別能力を示すものであるが、本光パルス試験器では、光パルス発生器1が従来よりも立上がり及び立下りが急峻で、かつ波高値の高い光パルスを発生することができるので、上記空間分解能を従来の光パルス試験器よりも向上させることができる。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る光パルス試験器について説明する。
なお、本光パルス試験器は上述した光パルス試験器に対して光パルス発生器の構成のみが相違する。したがって、以下では本光パルス試験器における光パルス発生器1Bについて詳しく説明する。
【0024】
図7は、光パルス発生器1Bの詳細構成を示す回路図である。この
図6と上記
図2とを比較すると分かるように、光パルス発生器1Bは、逆バイアス回路1jの構成が第1実施形態の逆バイアス回路1fとは異なる。本第2実施形態における光パルス発生器1Bの逆バイアス回路1jは、第1実施形態の逆バイアス回路1fにおける定電圧源1hを可変電圧源1kに変更したものである。
【0025】
この可変電圧源1kは、本第2実施形態における逆バイアス設定手段であり、出力電圧を可変設定することにより逆バイアス回路1jに流れる逆バイアス電流Ir(バイアスダイオード1gにとっては順バイアス電流であるが、レーザダイオード1eにとっては逆バイアス電流となる。)を所定値以上に可変設定するものである。また、この場合の逆バイアス電流Irは、可変電圧源1kの出力電圧E、抵抗器の抵抗値R、及びバイアスダイオード1gの順方向電圧Edとすると、Ir=(E−Ed)/Rとなる。
【0026】
このような光パルス発生器1Bでは、
図8(a)に示すように、光パルスの立ち上がりタイミングが制御信号の立上がりタイミングに対して遅延する。この遅延量(発光遅延量Δt2)は、
図8(b)に示すように、逆バイアス電流Irを所定値以上(
図8(b)の場合には約17mA以上)に設定することにより有意な値となり、また逆バイアス電流Irが増加するに従って増加する傾向を有する。
【0027】
すなわち、このような光パルス発生器1Bによれば、逆バイアス電流Irに応じて光パルスのパルス幅を狭幅化することができる。したがって、このような光パルス発生器1Bを用いる光パルス試験器によっても、空間分解能を従来の光パルス試験器よりも向上させることができる。
【0028】
また、見方を変えると、本第2実施形態における光パルス発生器1Bは、逆バイアス電流Irに応じて光パルスのパルス幅を可変設定することが可能な光パルス発生器である。この光パルス発生器1Bによれば、逆バイアス電流Irに応じて光パルスの立上がりタイミングを可変することができるので、例えば光パルス発生器におけるパルス幅のばらつきを容易に調整することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記各実施形態では、光パルス発生器1,1Bを光パルス試験器に適用した場合について説明したが、本発明に係る光パルス発生器は、光パルス試験器への適用のみに限定されるものではなく、光パルスの立上がり及び立下りの急峻性、高波高値あるいは/及び狭幅化が要求される各種アプリケーションに適用することが可能である。
【0030】
(2)上記各実施形態では、逆バイアス回路1f,1jを電圧源(定電圧源1hあるいは可変電圧源1k)と抵抗器1iとバイアスダイオード1gとによって構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。逆バイアス回路1f,1jではレーザダイオード1eに印加する逆バイアス電圧は、バイアスダイオード1gの順方向電圧となり、バイアスダイオード1gにシリコンダイオードを用いたときには0.6V程度である。
この逆バイアス電圧は、レーザダイオード1eの逆降伏電圧以下に設定する必要があるが、逆バイアス回路は、逆バイアス電圧を上記逆降伏電圧以下に設定し得るものであれば他の構成でも良い。例えば、バイアスダイオード1gにゲルマニウムダイオード、あるいは定電圧ダイオードを用いて、逆バイアス電圧を変更することが考えられる。
【0031】
(3)上記第2実施形態では可変電圧源1kを逆バイアス設定手段としたが、逆バイアス設定手段はこれに限定されない。例えば抵抗器1iを可変抵抗器として逆バイアス設定手段としても良い。
(4)上記第2実施形態は光パルスの立上がり及び立下りの急峻性、高波高値あるいは/及び狭幅化に加えて、パルス幅の可変が要求される各種アプリケーションに適用することができる。このようなアプリケーションとしては、例えばパルス幅変調器、パルス幅調整器、立上がり遅延が要求される可変トリガ装置が考えられる。
【0032】
〔追加実施形態〕
次に、追加実施形態に係る光パルス試験器について説明する。
なお、本光パルス試験器は上述した光パルス試験器に対して光パルス発生器の構成のみが相違する。したがって、以下では本光パルス試験器における光パルス発生器1Cについて詳しく説明する。
【0033】
図9は、光パルス発生器1Cの詳細構成を示す回路図である。この
図9と上記
図2とを比較すると分かるように、光パルス発生器1Cは、逆バイアス回路1kの構成が第1実施形態の逆バイアス回路1fとは異なる。本追加実施形態における光パルス発生器1Cの逆バイアス回路1kは、第1実施形態の逆バイアス回路1fに開閉スイッチ1mを付加したものである。
【0034】
開閉スイッチ1mは、具体的にはフォトダイオードによってフォトMOSFETをON/OFFさせることにより一対の端子を開閉するフォトMOSリレーである。本光パルス試験器では、上記フォトMOSリレーを開閉スイッチ1mとして用いることにより、開閉スイッチ1mを制御するデジタル回路と光パルス発生器1Cとの電気的なアイソレーションを確立し、デジタル回路から光パルス発生器1Cにデジタルノイズが侵入すること防止している。
【0035】
このような開閉スイッチ1mを備えた光パルス発生器1Cは、パルス幅を狭幅化する必要がある場合、例えば狭パルス幅の光パルスを発生させる必要がある場合は、開閉スイッチ1mを閉状態にしてレーザダイオード1eに逆バイアス電流を流し、一方、パルス幅を狭幅化する必要がない場合、例えば比較的広いパルス幅の光パルスを発生させる場合には、開閉スイッチ1mを開状態としてレーザダイオード1eに逆バイアス電流を流さないようにする。
【0036】
ところで、比較的広いパルス幅の光パルスを用いて光ファイバFの特性を試験する場合、光パルスの立上がり及び立下りを急峻にする必要はない。光パルスの立上がり及び立下りを急峻にする必要がある場合は、狭パルス幅の光パルスを用いて光ファイバFの特性を試験する場合である。また、比較的広いパルス幅の光パルスにおいて、当該光パルスの立上り及び立下りを急峻にすると、立上り部においてオーバーシュートやリンギングが生じ、このオーバーシュートやリンギングに起因して、
図6に示した測定画面において光パルスの反射を示す光強度の突発的な変化の立上りあるいは立下りが乱れて急峻ではなくなり、空間分解能が低下するという問題がある。
【0037】
しかしながら、本追加実施形態に係る光パルス試験器では、比較的広いパルス幅の光パルスを用いる場合に、開閉スイッチ1mを開状態として上記オーバーシュートやリンギングの発生を抑制することができるので、空間分解能の低下を抑制することができる。
【0038】
なお、本追加実施形態では、開閉スイッチ1mとしてフォトMOSリレーを採用したが、開閉スイッチ1mは、フォトMOSリレーに限定されることなく各種方式のスイッチを適用することができる。