(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
45at.%から55at.%の濃度のニッケルと、45at.%から55at.%の濃度のチタンからなる等原子比の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療機器。
15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、前記ニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、前記等原子比の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の1〜8倍の範囲内となる、請求項5に記載の医療機器。
40keV〜110keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、前記ニッケル−チタン合金のX線コントラストが、前記等原子比の二元ニッケル−チタン合金のX線コントラストの1〜2倍の範囲内となる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
以下の明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
【0024】
マルテンサイト開始温度(M
s)は、マルテンサイト相変態を示す形状記憶材料が冷却されるときにマルテンサイトへの相変態が開始する温度である。
【0025】
マルテンサイト仕上温度(M
f)は、冷却によるマルテンサイトへの相変態が完了する温度である。
【0026】
オーステナイト開始温度(A
s)は、オーステナイト相変態を示す形状記憶材料が加熱されるときにオーステナイトへの相変態が開始する温度である。
【0027】
オーステナイト仕上温度(A
f)は、加熱によるオーステナイトへの相変態が完了する温度である。
【0028】
R’相開始温度(R’
s)は、R相変態を示す形状記憶材料が加熱されるときにR相への相変態を開始する温度である。
【0029】
R’相仕上温度(R’
f)は、加熱によるR相への相変態が完了する温度である。
【0030】
R相開始温度(R
s)は、R相変態を示す形状記憶材料が冷却されるときにR相への相変態が開始する温度である。
【0031】
R相仕上温度(R
f)は、冷却によるR相への相変態が完了する温度である。
【0032】
放射線不透過性は、材料または物体がX線放射線などの入射電磁放射線を吸収する能力の尺度の1つである。放射線不透過性材料は、優先的に入射X線を吸収し、高い放射線コントラストを示し、X線画像中の視認性が良好となる傾向にある。放射線不透過性ではない材料は、入射X線を透過する傾向にあり、X線画像中で容易に見ることができない。材料の線吸収係数(μ)は、材料のX線放射線を吸収する能力、したがって材料の放射線不透過性の良好な指標の1つとなりうる。本開示の目的では、以下に定義され詳細に説明される累積線吸収係数を、材料の放射線不透過性を表すものとして採用することができる。
【0033】
用語「等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金」は、45at.%〜55at.%のニッケルおよび残分のチタンを含む2成分合金を意味する。
【0034】
本明細書において説明されるのは、ニッケル、チタン、および少なくとも1種類の希土類元素を含むニッケル−チタン合金である。一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも1種類の追加の合金化元素を含む。本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは従来のニッケル−チタン合金よりも改善された放射線不透過性を有する。したがって、本発明のニッケル−チタン合金を含む医療機器は、X線透視などの非侵襲的画像化手法中により良好な視認性を有することができる。本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは超弾性または形状記憶性を有し、このことは後述するように医療機器において好都合である。
【0035】
好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金の1種類以上の希土類元素は、周期表のランタニド系列および/またはアクチニド系列から選択され、このようなものとしては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUが挙げられる。イットリウム(Y)およびスカンジウム(Sc)が希土類元素と呼ばれる場合があるが、これらはランタニドまたはアクチニド系列の元素ではない。より好ましくは、希土類(RE)元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される。
【0036】
好ましい一実施形態によると、希土類元素は、合金中の濃度に関して3番目の位置を占める。言い換えると、希土類元素の量は、好ましくはニッケルおよびチタンのそれぞれの量よりも少ないが、合金中に存在しうる任意の追加の合金化元素の量よりも多い。本発明の合金の代表的な組成範囲の1つを
図1に概略的に示す。
【0037】
本発明のニッケル−チタン合金は、一実施形態によると少なくとも約0.1%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約1.0at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約2.5at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。本発明のニッケル−チタン合金が少なくとも約5at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含むことが望ましいこともある。
【0038】
本発明のニッケル−チタン合金が約15at.%以下の少なくとも1種類の希土類元素を含むことも望ましい。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約12.5at.%以下の少なくとも1種類の希土類元素を含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約10at.%以下の少なくとも1種類の希土類元素を含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約7.5at.%以下の少なくとも1種類の希土類元素を含む。最も好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約5.0at.%以下の少なくとも1種類の希土類元素を含む。
【0039】
例として、本発明のニッケル−チタン合金は、好ましい一実施形態によると約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約1.0at.%〜約12.5at.%を含む。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約1.0at.%〜約10.0at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約1.0at.%〜約7.5at.%、または約2.5at.%〜約7.5at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。最も好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約2.5at.%〜約5.0at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含む。たとえば、本発明のニッケル−チタン合金は3.0at.%、3.25at.%、3.5at.%、3.75at.%、または4at.%の少なくとも1種類の希土類元素を含むことができる。
【0040】
好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約34at.%のニッケルを含む。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約36.5at.%のニッケルを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約39at.%のニッケルを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約44at.%のニッケルを含む。
【0041】
本発明のニッケル−チタン合金が約60at.%以下のニッケルを含むことも好ましい。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約55at.%以下のニッケルを含む。本発明のニッケル−チタン合金は50at.%のニッケルを含むことができる。
【0042】
好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約34at.%のチタンを含む。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約36.5at.%のチタンを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約39at.%のチタンを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約44at.%のニッケルを含む。
【0043】
本発明のニッケル−チタン合金が約60at.%以下のチタンを含むことも好ましい。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約55at.%以下のチタンを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約50at.%以下のチタンを含む。
【0044】
代表的な一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約36.5at.%〜約55at.%のニッケルと、約36.5at.%〜約55at.%のチタンと、約2.5at.%〜約12.5at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含む。別の代表的な一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約39at.%〜約55at.%のニッケルと、約39at.%〜約55at.%のチタンと、約5at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含む。
【0045】
本発明のニッケル−チタン合金は、遷移金属またはその他の金属などの1種類以上の追加の合金化元素を含むこともできる。たとえば、1種類以上のAl、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、lr、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、およびミッシュメタル(Mischmetal)を追加の合金化元素(AAE)として含めることができる。本発明のニッケル−チタン合金が約14.9at.%以下のAAEを含むことが好ましい。より好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約9.9at.%以下のAAEを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約7.4at.%以下のAAEを含む。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約4.9at.%以下のAAEを含む。最も好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は約1.9at.%以下のAAEを含む。好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約0.1at.%のAAEを含む。好ましくは、1種類以上の追加の合金化元素がIr、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される場合、本発明のニッケル−チタン合金中、追加の合金化元素は希土類元素よりも低い濃度を有する。
【0046】
等原子比または等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金が超弾性挙動または形状記憶挙動を示すことは当技術分野において周知である。このような合金はニチノール(Nitinol)またはニチノール(Nitinol)合金と一般に呼ばれている。たとえば51at.%のNiおよび49at.%のTiを含むわずかにニッケルリッチのニチノール(Nitinol)合金は、医療機器において有用であることが知られており、これらは体温においてオーステナイトとなる。特に、50.6〜50.8at.%のNiおよび49.2〜49.4at.%のTiを含む合金は、医療グレードのニチノール(Nitinol)合金になると考えられている。
【0047】
したがって、好ましい一実施形態によると本開示のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約34at.%のTi、および約15at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素(AAE)が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、約51at.%のNi、約34at.%のTi、約(15−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦14.9である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、0≦x≦7.4である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0048】
別の好ましい一実施形態によると、本開示のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約36.5at.%のTi、および約12.5at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素(AAE)が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、約51at.%のNi、約36.5at.%のTi、約(12.5−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦12.4である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、0≦x≦6.2である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0049】
別の好ましい一実施形態によると、本開示のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約39at.%のTi、および約10at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素(AAE)が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、約51at.%のNi、約39at.%のTi、約(10−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦9.9である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、および0≦x≦4.9である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0050】
別の好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約41.5at.%のTi、および約7.5at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、約51at.%のNi、約41.5at.%のTi、約(7.5−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦7.4である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、0≦x≦3.7である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0051】
別の好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約44at.%のTi、および約5.0at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約44at.%のTi、約(5.0−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦4.9である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、0≦x≦2.4である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0052】
別の好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約46.5at.%のTi、および約2.5at.%のREを含む。1種類以上の追加の合金化元素が合金中に存在する別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は、約51at.%のNi、約46.5at.%のTi、約(2.5−x)at.%のRE、および約xat.%のAAEを含み、ここで0≦x≦2.4である。好ましくは、希土類元素は合金中で三番目の位置にあり、0≦x≦1.2である。これらの例によると、希土類元素はチタンと置換される。あるいは、希土類元素はニッケルと置換される場合もあり、ニッケルおよびチタンの両方と置換される場合もある。
【0053】
別の一実施形態においては、本発明のニッケル−チタン合金は、約50at.%のNi、(50−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAEを含むことができ、ここで前述したようにxは約15以下であり、yは約14.9以下である。別の一例においては、本発明のニッケル−チタン合金は、約52at.%のNi、(48−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAEを含むことができ、xおよびyは前述の制限を有する。あるいは、本発明の合金は、約53at.%のNi、(47−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAEを含むことができる。本発明の合金が、約54at.%のNi、(46−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAE、あるいは55at.%のNi、(45−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAEを含むことができることも想定される。別の一例においては、本発明の合金は、約56at.%または56at.%のNi、(44−y−x)at.%のTi、yat.%のRE、およびxat.%のAAEを含むことができる。好ましい一実施形態によると、yは(4−x)であり、xは以下の表1に示す代表的な値を有する。
表1 好ましい合金組成(at.%)
【表1】
【0054】
エルビウム(Er)は好ましい希土類元素の1つである。Erは、希土類濃度が高まる場合に他の希土類元素よりも本発明のニッケル−チタン合金の亀裂または脆性が生じにくいと考えられている。クロム(Cr)は好ましい追加の合金化元素(AAE)の1つである。クロム濃度を増加させると合金のオーステナイト相変態温度を体温付近に抑制するのに有効であると考えられており、後により詳細に説明する。ニッケルリッチ合金は変態温度を抑制したことも知られている。したがって、以下の表2には、ErおよびCrを含むとともに、ニッケル濃度が増加していく数種類の好ましいNi−Ti合金組成がまとめられている。
表2 ErおよびCrを含む好ましい合金組成(at.%)
【表2】
【0055】
パラジウム(Pd)も合金のオーステナイト相変態温度を抑制するのに有用な場合があり、パラジウムは材料の放射線不透過性をさらに改善させる場合もある。したがって、Crの代わりにまたはCrに加えて、Pdを合金化金属として含めることができる。鉄は本発明のニッケル−チタン合金の熱間加工性を改善することができるので、第4番目またはそれより高位の元素添加として合金組成物中に鉄(Fe)を含めることが有用となる場合もある。
【0056】
たとえば、C、H、N、またはOなどの少量(たとえば、数百ppm)の非金属元素添加物が本発明のニッケル−チタン合金に存在することもできるが、非金属元素は、合金の組成を明記するために使用される合金化元素の合計には一般には含まれない。高数密度および/または大型の炭化物、酸化物、窒化物、または複合炭窒化物の粒子の形成を回避するため、好ましくは、C、O、およびNの量は、米国材料試験協会(American Society of Testing and Materials)(ASTM)規格F2063に一致する。これによって、本発明のニッケル−チタン合金のより良い電解研磨表面およびより良い疲労寿命を得ることができる。合金の水素脆化を最小限にするために、Hは好ましくはASTM規格F2063に準拠して制御される。上述のASTM規格は参照として本明細書に援用される。
【0057】
本発明のニッケル−チタン合金は、同合金の組成および加工履歴に依存する相構造を有する。希土類元素はニッケルおよび/またはチタンと固溶体を形成することができる。希土類元素は、1種類以上の二元金属間化合物相をニッケルおよび/またはチタンと形成することもできる。言い換えると、希土類元素は、特定の比率でニッケルと結合し、および/または特定の比率でチタンと結合することができる。理論によって束縛しようと望むものではないが、好ましい三元合金化添加物として記載される希土類元素の大部分は、チタンと置換され、ニッケルと1種類以上の金属間化合物相、たとえば、NiRE、Ni
2RE、Ni
3RE
2、またはNi
3RE
7などを形成すると考えられる。しかし場合によっては、希土類元素は、ニッケルと置換し、チタンと結合して固溶体またはTi
xRE
yなどの化合物を形成することができる。組成および熱処理に依存して、本発明のニッケル−チタン合金は、NiTi、Ni
3Ti、および/またはNiTi
2などのニッケルおよびチタンの1種類以上の他の金属間化合物相を含むこともできる。希土類添加物は、Ni
xTi
yRE
zなどのニッケル原子およびチタン原子の両方を有する三元金属間化合物相を形成することができる。種々のNi−Ti−RE合金中の一部の代表的な相を以下の表3に示している。また、1種類以上の追加の合金化元素が本発明のニッケル−チタン合金中に存在する場合、それらの追加の合金化元素は、ニッケル、チタン、および/または希土類元素と金属間化合物相を形成することができる。
表3 Ni−Ti−RE合金中の代表的な相
【表3】
【0058】
本発明のニッケル−チタン合金の相構造は、実験的方法および/または計算的方法によって求めることができる。たとえば、X線回折、中性子回折、および/または電子回折などの回折方法を使用することができる。あるいは、CALPHAD法(状態図の計算(CALculation of PHAse Diagrams))を使用することができる。CALPHAD法の実施は「多成分相平衡の熱力学モデリング」(Thermodynamic Modeling of Multicomponent Phase Equilibria),JOM49,12(1997)14−19において説明されており、これは参照として本明細書に援用される。CALPHAD法を実施するためにたとえばケムセージ(ChemSage)、MTDATA、およびサーモ−カルク(Thermo−Calc)などの多数の市販のソフトウェアプログラムを使用することができる。たとえば、サーモ−カルク(Thermo−Calc)プログラムは、状態図を計算するために元素の既存の公開データおよび使用者によって提供されるデータを組み合わせて使用する。このプログラムは、NiTiの一部の既存データを含み、一方、科学文献から得た希土類のデータおよび熱力学方程式を提供する必要が生じる場合もある。三元状態図は、これら2組の情報から構成することができる。この方法は、既知の相データを入力するステップ、未知の追加の相をプログラムに加えるステップ、および元素と相との間の相互作用を操作するステップを含む。これらの操作から得られた1組の式を、次に既知または予想される状態図の不変の点または特徴に適用することができ、プログラムは与えられたデータから図を計算し、フィットさせるために特定のパラメーターを最適化させる。
【0059】
非経験的超構造計算(ab initio superstructure calculation)を使用して、置換機構のエネルギー論、すなわち希土類元素がニッケルまたはチタンと置換されるかどうかを求めることができる。これらの計算から、エネルギー的に好ましい構成の機械的性質に対する希土類の置換の影響も求められる。対象となる合金のエネルギー論が求められると、半経験的な原子間ポテンシャルを、合金を表すための非経験的データおよび利用可能な実験データにフィットさせることができる。たとえば、これらのポテンシャルモデルは、たとえば、M
f温度およびA
f温度の指標となりうる温度および圧力(応力)に対する相安定性の依存性など、本発明のニッケル−チタン合金の動的挙動の予測および記述に使用することができる。
【0060】
所望の合金組成の選択において、放射線不透過性、変態温度(M
f、M
s、R’
s、R’
f、R
s、R
f、A
s、A
f)、および機械的性質などの本発明のニッケル−チタン合金の種々の性質に対する希土類合金化元素の影響を考察することができる。
【0061】
材料の放射線不透過性は、その実効原子番号(Z
eff)および密度(ρ)、ならびに入射X線フォトンのエネルギー(E)に依存する線吸収係数μと関連がある:
【0063】
線吸収係数μは、材料の密度ρに比例し、したがって量μ/ρは質量吸収係数と呼ばれる材料定数であり、cm
2g
−1の単位で表される。
【0064】
線吸収係数μは、数種類の希土類元素について計算し、比較のため白金についても計算した。結果を
図2に示す。
図3において、線吸収係数μは、白金の線吸収係数μ
Ptに関して規格化して示されている。これらの図面は、希土類元素の吸収は約40〜80keVのフォトンエネルギー範囲内でピークとなる傾向にあり、一部の希土類元素は、この領域内で白金の吸収を超えていることを示している。
【0065】
後述するように、数種類のNi−Ti−RE合金組成物についても線吸収係数を計算した。これらの計算は、ニッケル−チタン医療機器の放射線不透過性を改善するために希土類合金化添加物のポテンシャルを評価するためにシミュレートされたX線条件下で行った。
【0066】
通常のX線診断法を行うために、X線源またはX線管を、患者に向かって配置し、少なくとも1つのフィルターをX線源と患者との間に配置することができる。診断用X線管は、通常は、食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)規制に準拠した厚さ約2.5mmの内蔵アルミニウムフィルターを有し、放出されるX線ビームをさらに濾過するために追加のフィルターを使用することができる。管電圧によって加速されて、X線管内のWまたはW/Reアノードに衝突するときに、X線フォトンが発生することができる。通常、診断法の場合、管電圧は約50kVp〜約150kVpの範囲内である。この衝突によって発生したX線は、ベリリウム窓を通過し、X線源と患者との間に配置された1つ以上のフィルターを通過することができる。X線は、空気中を通過し患者の組織を通過するときに濾過または減衰作用も受ける。
【0067】
X線管から放出されたX線ビームは単色ではなく、むしろある範囲のエネルギーにわたるフォトン分布を含む。
図4A〜
図4Dを参照すると、X線フォトンは、管電圧に対応した最大エネルギーを有する。たとえば、70kVpの管電圧においては(
図4B参照)、X線ビームの最大エネルギーは70keVである。このX線ビームは最大フォトンエネルギーの約3分の1に相当するエネルギーでピーク強度(最大フォトン数)を有する。しかしこのピーク強度は、1つ以上のフィルターを使用することによって、より高いエネルギーにシフトさせることができる。X線ビームが体組織を通過することなどの他の減衰作用によっても、より高いエネルギーに最大強度がシフトする場合があり、これはビーム硬化と呼ばれることもある現象である。たとえば、
図4Bに示されるように、X線源と患者との間に2.5mmのアルミニウムフィルターに加えて0.2mmの銅フィルターを含めることによって、X線ビームのピーク強度を約35keVから約45keVにシフトさせることができる。0.2mmの銅フィルターを0.3mmの銅フィルターと交換することによって、X線ビームのピーク強度を約50keVにシフトさせることができる。一般的に言えば、1つ以上のフィルターによって、フィルターを通過する放射線のピーク強度を5keV〜30keVの間でシフトさせることができる。
【0068】
材料を透過するX線の強度I
xは、その入射強度I
0、材料の厚さx、および線吸収係数μと関係がある:
【0070】
入射X線を実質的に透過する材料または組織は、X線画像中に容易に見ることができない。対照的に、放射線不透過性材料は特定のエネルギー範囲にわたって入射X線を吸収し、X線中で高コントラストおよび良好な視認性を示す傾向にある。材料の線吸収係数の大きさは、そのX線放射線を吸収する能力、すなわちその放射線不透過性の良好な指標となりうる。
【0071】
オーストリアのウィーン(Wien,Austria)のウィーン大学(University of Wien)の生物医学技術および物理研究所(Institut f.Biomed.Technik und Physik)のロバート・ノボトニー(Robert Nowotny)によって開発されたXMuDatと呼ばれるソフトウェアプログラムを使用して数種類のNi−Ti−RE合金組成物の線吸収係数を計算した。XMuDatは、対象となる線量測定材料について種々のフォトン相互作用係数の提示および計算を行うためのコンピュータープログラムである。1keV〜50MeVの範囲のフォトンエネルギーにおける質量減衰、質量エネルギー移動、および質量エネルギーの吸収係数のデータを利用することができる。計算のためにこのプログラムは、J M.ブーン(Boone),A E.チャベス(Chavez);Medical Physics 23,12(1996)1997−2005から集めたフォトン相互作用係数を使用する。
【0072】
以下の表4にまとめたように、種々の診断用X線管電圧および濾過方式の影響を考慮した。種々の管電圧における濾過していないフォトンの未加工データは、ホルスト・アイヒンガー(Horst Aichinger),ジョアキム・ディアカー(Joachim Dierker),シグリッド・ジョイト−バーフス(Sigrid Joite−Barfuss),およびマンフレッド・ゼーベル(Manfred Saebel),X線診断放射線医学における放射線照射および画像品質:物理的原理および臨床応用(Radiation Exposure and Image Quality in X−Ray Diagnostic Radiology:Physical Principles and Clinical Applications),シュプリンガー(Springer):ベルリン(Berlin)より入手した。W/Reアノードから発生したX線ビームの多色性および種々のフィルターを使用したビーム減衰の役割も考慮した。
表4 線吸収係数計算のパラメーター
【表4】
【0073】
計算の第1ステップとして、複合則方法(rule of mixtures approach)を使用して種々の合金組成物について質量吸収係数A
alloyを計算した:
A
alloy=pA
Ni+qA
Ti+rA
RE
上式中
【0075】
変数A
Ni、A
Ti、およびA
REは、元素の質量吸収係数を表しており、これは各元素のμ/ρに等しい。変数M
Ti、M
Ni、およびM
REは、各元素の分子量を表し、a、b、およびcは、合金中の各元素の原子パーセント値である。原子パーセント値の概算において希土類元素がチタンと置換したと仮定した。この仮定は、周期表において希土類元素がニッケルよりもチタンに近いことに基づいて行った。X線診断法で対象となるエネルギー範囲においてはニッケルの放射線不透過性はチタンの放射線不透過性と同等であるので、この置換の詳細は、Ni−Ti−RE合金中の希土類元素の原子パーセント値ほどは重要ではないと考えられる。
【0076】
特定の合金組成物に関する質量吸収係数A
alloyを求めた後、A
alloyと合金の密度ρ
alloyとの積として線吸収係数μ
alloyを計算した。密度ρ
alloyは、前述と同じ複合則方法を使用して計算した。
【0077】
次に、X線ビームの多色性を考慮するために、各合金組成物について累積線吸収係数
μ
calloy
を計算した。種々のX線管電圧および異なる濾過レベルにおけるW/ReアノードのX線強度分布を使用して、フォトンの確率分布を計算した。前述のようにして求めたμ
alloyの値を特定のエネルギーにおけるそれぞれのフォトンの確率で乗じ、次にそれらの値を全エネルギースペクトルにわたって合計することによって、種々のX線管電圧および異なる濾過レベルにおける累積線吸収係数μ
calloyを求めた。得られた値のμ
calloyすなわち放射線不透過性を、種々のNi−Ti−RE合金組成物について原子パーセント(at.%)、管電圧、および濾過方式に関して
図5〜8にグラフの形態で示している。計算データは、比較のためNi−Ti−Pt、Ni−Ti−Pd、およびNi−Ti−Wの合金についても示している。
【0078】
本発明のNi−Ti−RE合金が二元ニチノール(Nitinol)合金よりも改善された放射線不透過性を示すことが望ましい。したがって、種々のNi−Ti−RE合金組成物に関して得られた累積線吸収係数μ
calloyを、二元ニチノール(Nitinol)の累積線吸収係数μ
cNiTi に対して規格化することによって、相対放射線不透過性の値R
relを求め、すなわち
【数8】
とした。二元ニチノール(Nitinol)のμ
cNiTiの計算において50.6at.%のNiのわずかにニッケルリッチの組成物を仮定した。この方法を使用すると、放射線不透過性を等原子比近傍の二元Ni−Ti合金の放射線不透過性と比較することができる。相対放射線不透過性値R
relを、種々のNi−Ti−RE合金組成物について原子パーセント(at.%)、管電圧、および濾過方式(たとえば、フィルターなし、Alフィルター、Cuフィルター、または後述し
図20に示されるCDRHファントム)に関して
図9〜12にグラフの形態で示している。計算データは、比較のためNi−Ti−Pt、Ni−Ti−Pd、およびNi−Ti−Wの合金についても示している。
【0079】
図9〜
図12中に示される計算データを参照すると、本発明のNi−Ti−RE合金の放射線不透過性が等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金よりも高いことが分かる。15keV〜125keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のNi−Ti−RE合金の累積吸収係数μ
calloy(放射線不透過性)は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約3.2倍の範囲の大きさである。このことは、たとえば、管電圧125kVpに対応する
図12に見られる。15keV〜80keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のNi−Ti−RE合金の累積吸収係数μ
calloy(放射線不透過性)は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約2.7倍の範囲の大きさであり、このことは、たとえば、管電圧80kVpに対応する
図11Aに示されている。15keV〜70keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のNi−Ti−RE合金の累積吸収係数μ
calloy(放射線不透過性)は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約2.5倍の範囲の大きさであり、このことは、たとえば、管電圧70kVpに対応する
図10に示されている。
【0080】
本発明のニッケル−チタン合金中に2種類以上の希土類元素および/または追加の合金化元素を使用することによって、放射線不透過性は、個別の合金化元素の放射線不透過性に合わせて累積的に増加しうる。
【0081】
好ましくは、15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約8倍の範囲内の放射線不透過性を有する(すなわち、相対放射線不透過性R
relが約1〜約8の範囲内である)。15keV〜125keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約8倍の範囲内となることもできる。別の実施形態によると、15keV〜80keV、15keV〜70keV、または15keV〜60keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、その放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約8倍の範囲内となることができる。
【0082】
より好ましくは、15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約8倍の範囲内の放射線不透過性を有する(すなわち、相対放射線不透過性R
relが約1.2〜約8の範囲内である)。15keV〜125keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約8倍の範囲内となることもできる。別の実施形態によると、15keV〜80keV、15keV〜70keV、または15keV〜60keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、その放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約8倍の範囲内となることができる。
【0083】
さらにより好ましくは、15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内の放射線不透過性を有する(すなわち、相対放射線不透過性R
relが約1.2〜約5の範囲内である)。15keV〜125keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内となることもできる。別の実施形態によると、15keV〜80keV、15keV〜70keV、または15keV〜60keVの範囲内の放射線を本発明の合金に照射した場合、その放射線不透過性は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内となることができる。
【0084】
前述のいずれかの範囲内のエネルギー(すなわち、15keV〜150keV、15keV〜125keV、15keV〜80keV、15keV〜70keV、または15keV〜60keV)を有する放射線を本発明の合金に照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.5〜約5倍の範囲内となるとさらにより好都合となる場合もある。
【0085】
好ましい一実施形態によると、30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約8倍の範囲内の放射線不透過性を有する。35keV〜55keV、または40keV〜50keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1〜約8倍の範囲内となることも好ましい。
【0086】
別の好ましい一実施形態によると、30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内の放射線不透過性を有する。35keV〜55keV、または40keV〜50keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内となることも好ましい。
【0087】
図9〜
図12中に示される計算データを再び参照すると、フィルターの選択に依存するが、70kVp〜125kVpの範囲内の管電圧において、本発明のNi−Ti−RE合金の放射線不透過性は、Ni−Ti−Pdの放射線不透過性と同等以上である。
図9〜
図12は、それぞれ40kVp、70kVp、80kVp、および125kVpの管電圧に対応している。たとえば
図11Aを参照すると、2.5mmのAlフィルターおよび0.3mmのCuフィルターを使用した場合、7.5at.%のNdを含むニッケル−チタン合金は相対放射線不透過性R
relが約1.9であり、一方同じ条件下で7.5at.%のPdを含むニッケル−チタン合金は相対放射線不透過性R
relが約1.7である。好ましくは、60kVp〜150kVpの範囲内の管電圧において本発明のNi−Ti−RE合金の放射線不透過性は、Ni−Ti−Pdの放射線不透過性と同等以上である。
【0088】
希土類合金化添加物の濃度が高くなると、本発明のNi−Ti−RE合金の放射線不透過性が増加することも計算データから見ることができる。たとえば、再び
図11Aを参照すると、各合金組成物の最大放射線不透過性(μ
crelの最大値)は、計算において考慮されている最高希土類元素濃度(15at.%)において実現されている。
【0089】
本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性に対する希土類元素の影響を考慮することに加えて、合金の超弾性および機械的性質に対する影響を考慮することも望ましい。高濃度の希土類元素において実現される改善された放射線不透過性は、好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金の超弾性および機械的性質に対する高濃度の合金化元素の影響と均衡することができる。
【0090】
好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は超弾性挙動または形状記憶挙動を示す。すなわち、本発明のニッケル−チタン合金は、可逆的な相変態が進行し、元の形状または形態を「記憶し」、元の形状または形態に戻ることができる。本発明のニッケル−チタン合金は、低温相(マルテンサイト)と高温相(オーステナイト)との間で変態する。オーステナイトは特徴的に強い相であり、マルテンサイトは最大約8%の回復性ひずみで変形することができる。形状を変化させるために合金中のマルテンサイト相中に生じたひずみは、オーステナイトへの逆相変態が完了することによって実質的に回復することができ、それによって合金は元の形状に戻ることができる。このひずみ回復は、応力の適用および除去(超弾性効果)および/または温度変化(形状記憶効果)によって促進させることができる。
【0091】
図13の応力−ひずみ図は、合金のオーステナイト仕上温度(A
f)よりも高温における代表的なニッケル−チタン合金の超弾性効果を示している。応力σ
aを適用すると、第1の形態の合金は、応力によって誘起されてマルテンサイトが形成される結果、オーステナイトからマルテンサイトへの変態を開始する。合金のマルテンサイト相は、ほぼ一定の応力において数パーセントのひずみを吸収することができる。この例では8%のひずみに相当する応力σ
bにおいて、マルテンサイト変態が完了し、合金は第2の形態まで変形している。応力を開放すると、マルテンサイトオーステナイトに戻る変態を開始し、合金はσ
cの低いプラトー応力においてひずみを回復する。したがって、本発明のニッケル−チタン合金は第1の形態に戻る。
【0092】
図14は、代表的なニッケル−チタン形状記憶合金の典型的な変態温度曲線を示しており、y軸は合金中のマルテンサイト量を表し、x軸は温度を表している。A
f以上の温度では、本発明のニッケル−チタン合金は完全にオーステナイト構造を有する。矢印に従って、合金を温度M
sまで冷却することができ、この温度でマルテンサイト相への変態が開始する。
図14に示されるように、さらに冷却すると材料中のマルテンサイトのパーセント値が増加し、最終的には、温度M
fにおいて完全にマルテンサイト構造になる。
【0093】
ここで
図15も参照すると、代表的なニッケル−チタン形状記憶合金のひずみ対温度が示されており、温度M
fにおいて実現される完全なマルテンサイト構造は、第1の形態から第2の形態にひずむことができる(応力記号σによって表されている)。この合金は数パーセントの回復性ひずみ(この例では8%)を吸収することができる。逆方向に相変態させてひずみを回復するために、合金の温度を上昇させる。再び矢印に従って、本発明のニッケル−チタン合金を温度A
sまで温めることができ、この温度において合金はオーステナイト相への変態を開始する。さらに加熱すると、オーステナイトへの変態が進行し、合金は徐々に第1の形態を回復する。最終的にはA
f以上の温度において、材料はオーステナイト相に戻る変態を完了し(0%のマルテンサイト)、8%のひずみを完全に回復する。
【0094】
一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、高温のオーステナイト相および低温のマルテンサイト相に加えて中間温度のR相を含む場合がある。言い換えると、オーステナイトから冷却するとマルテンサイトの前にR相が表れることができる。同様に、マルテンサイトから加熱するとオーステナイトの前にR相が表れることができる。本発明のニッケル−チタン合金がR相を含むかどうかは、合金の組成および加工履歴に依存する。
【0095】
本開示の目的では、変形応力を除去すると、実質的な量の回復性ひずみ(すなわち、少なくとも約0.5%の弾性ひずみ)が得られるニッケル−チタン合金を超弾性合金と呼ぶ場合があり、この挙動がマルテンサイトとオーステナイトとの間の相変態によって促進されるかどうかは無関係である。たとえば、約0.75%の回復性ひずみは、オーステナイトとR相との間の応力および/または温度によって誘起される相変態によって得ることができる(ニチノール合金の使用(Using Nitinol Alloys),ジョンソン・マッセイ(Johnson Mathey),カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA)(2004)p.17)。冷間加工されたマルテンサイト系ニッケル−チタン合金は、オーステナイトに相変態することなく、数パーセント(たとえば3〜4%)の回復性ひずみを得ることができるも知られている(デュリグ(Duerig),T.W.ら,冷間加工したNi−Tiの線形超弾性、形状記憶合金の工学的見地(Linear Superelasticity in Cold−Worked Ni−Ti, Engineering Aspects of Shape Memory Alloys),バターワース−ハイネマン・リミテッド(Butterworth−Heinemann Ltd.),ロンドン(London)(1990)pp.414−419)。好ましくは、本開示のニッケル−チタン合金は、約0.5%〜約10%の範囲内の回復性ひずみが得られる。より好ましくは、該回復性ひずみは約2%〜約10%の範囲内である。さらにより好ましくは、該回復性ひずみは約3%〜約10%の範囲内である。最も好ましくは、該回復性ひずみは約5%〜約10%の範囲内である。
【0096】
好ましくは、本発明の医療機器は、本明細書に説明するニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む。この構成要素は、全体または一部が本発明のニッケル−チタン合金のワイヤー、管材料、リボン、ボタン、バー、円板、シート、箔、あるいは別の鋳造または加工された形状から形成されてよい。一実施形態によると、構成要素は、構造の1つ以上の部分が本発明のNi−Ti−RE合金から形成され、構造の1つ以上の部分が異なる材料から形成される複合構造を有する。たとえば、構成要素は、層、被覆、フィラメント、ストランド、ケーブル、粒子、繊維、および/または相などの別個の構成成分を含むことができ、1つ以上の構成成分が本発明のNi−Ti−RE合金から形成され、1つ以上が異なる材料から形成される。この異なる材料は、一実施形態においては等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金であってよく、あるいはAl、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Tc、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される1種類以上の元素を含む材料であってもよい。このような複合構造により、モノリシック構成要素よりも改善された放射線不透過性および最適化された超弾性および/または機械的性質を有する構成要素を得ることができる。
【0097】
本明細書に記載のニッケル−チタン合金を含む構成要素は、少なくとも1つのワイヤーを含むことができる。このワイヤーは、たとえば、コア層とコア層のまわりに配置された1つ以上の外層とを含む複合構造を有することができる。好ましくは、この1つ以上の層がNi−Ti−RE合金から形成される。1つ以上の層が異なる材料から形成されてもよい。この異なる材料は、二元ニッケル−チタン合金、または前述の1種類以上の元素を含む材料であってもよい。
図16に示す実施形態によると、ワイヤー1600は、本発明のNi−Ti−RE合金でできたコア層1610、および等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金でできた外層1620を含むことができる。あるいは、コア層1610は等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金からできていてよく、外層1620は本発明のNi−Ti−RE合金からできていてよい。ワイヤー1600は、たとえば、複数の同軸層を含むプリフォームの引き抜きまたは押出加工により複合構造を形成することによって形成することができる。あるいは、ワイヤー1600は、めっきまたは別の堆積技術によってコア層の上に1つ以上の層をコーティングすることによって形成することができる。
【0098】
一実施形態によると構成要素は2、3、4、5、6、またはそれを超える数のワイヤーを含むことができ、各ワイヤーは一部または全体が本開示のニッケル−チタン合金でできている。1つ以上のワイヤーの全体または一部が等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金または放射線不透過性金属などの異なる材料でできていてよいことも考慮される。たとえば、
図17Aおよび
図17Bを参照すると、構成要素は、ねじれた形態1710の複数のワイヤーストランド1700(たとえば、ケーブル)または編まれた形態1720の複数のワイヤーストランド1700を含むことができ、1つ以上のストランドは本発明のNi−Ti−RE合金からできており、1つ以上のストランドは等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金からできている。
【0099】
別の一実施形態によると、構成要素は、管、すなわち、医療機器業界で一般的な専門用語を使用すると「カニューレ」を含む。該カニューレは複合構造を有することができる。一実施形態によると、該カニューレは、多層管から形成することができる。たとえば
図18を参照すると、カニューレ1800は、Ni−Ti−REの1つ以上の同軸層1810、および二元ニッケル−チタン合金または放射線不透過性金属などの別の材料の1つ以上の同軸層1820、1830を含むことができる。多層管は、同軸管材料の引き抜きまたは押出成形によって形成することができる。あるいは、多層管は、管に成形されたクラッドシートから作製することもできる。
【0100】
別の一実施形態によると、構成要素は、リボン、ボタン、バー、リベット、球、円板、シート、または箔などの別の鋳造または加工された形状を含む。
【0101】
前述の構成要素は、たとえば、ステント、ステントグラフト、ワイヤーガイド、放射線不透過性マーカーまたはマーカーバンド、トルク伝達可能なカテーテル、イントロデューサシース、矯正用アーチワイヤーなどの挿入可能または埋め込み可能な医療機器、あるいは捕捉器具、スネア、バスケット(たとえば、結石抽出または手技用バスケット)、血管プラグ(vascular plug)、または塞栓防止フィルターなどの手技用機器、回収機器、または閉鎖機器の一部として個別にまたは組み合わせて使用することができる。
【0102】
一実施形態によると、本発明の機器はステントである。ステントのすべてまたは一部が本発明のニッケル−チタン合金でできていてよい。本発明のステントは、ステントに取り付けられた移植材料をさらに含むことができる。好ましくは、本発明のステントは自己拡張型ステントである。しかし、本開示のNi−Ti−RE合金からはバルーン拡張型ステントも有益となりうる。本発明のステントは、当技術分野において周知の技術を使用して、1つ以上のワイヤーから形成したり、管(カニューレ)から切断(たとえばレーザー切断)したりすることができる。カニューレは前述のような複合構造を有することができる。
図19に示される別の一実施形態によると、ステント1900は、1つ以上のワイヤーを含むワイヤー構造を有することができる。ワイヤー構造の一部がNi−Ti−REから形成されていてよく、ワイヤー構造の一部が二元ニッケル−チタン合金などの異なる材料で形成されていてよい。このようなステントの1つ以上のワイヤーは、前述のように形成することができる。ステントは、たとえばパクリタキセルなどの薬物を含む治療用表面コーティングをさらに含むことができる。該治療用表面コーティングは、たとえば治療部位の再狭窄および無機物の沈着の防止に有用となりうる。
【0103】
別の一実施形態によると、本発明の機器は、高いX線コントラストが得られる放射線不透過性のマーカーまたはマーカーバンド(「マーカー」)である。このような放射線不透過性マーカーは、Ni−Ti−REと二元ニッケル−チタンとの間の類似性のため、別の材料(たとえば、PtまたはAu)から形成された放射線不透過性マーカーよりもニッケル−チタン医療機器に容易に結合することができる。さらに、Ni−Ti−RE放射線不透過性マーカーは、ニッケル−チタンを主成分とする機器とともに使用される場合に、他の材料よりも電解腐食に対する抵抗性が優れている場合がある。一実施形態によると、Ni−Ti−RE放射線不透過性マーカーの超弾性によって、カテーテル、ステント、ワイヤーガイド、または別の医療機器にマーカーを取り付けやすくなる場合がある。該マーカーの該機器への固定を促進するために、Ni−Ti−RE合金のA
fに対応する温度以上で完全に膨張または収縮するようにマーカーを設計することができる。たとえば、Ni−Ti−REマーカーバンドが収縮することで、カテーテルの周囲に取り付けることができ、Ni−Ti−REマーカーが膨張することで、ステントのアイレット内に固定することもできる。Ni−Ti−RE放射線不透過性マーカーは、スエージ加工などの当技術分野において周知の機械加工技術によって形成することができ、マーカーバンドは、薄肉Ni−Ti−RE管から切り取ることができる。
【0104】
本開示による患者体内の医療器の画像化方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含むニッケル−チタン合金からできた少なくとも1つの構成要素を有する医療機器を患者体内の部位に送達するステップを含む。この希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される。
【0105】
次に患者に、好ましくは15keV〜125keVの範囲内のエネルギーを有する放射線が照射されて、医療機器が画像化される。より好ましくは、画像化のエネルギーは、15keV〜80keVの範囲内である。さらにより好ましくは、画像化のエネルギーは、15keV〜70keV、または15keV〜60keVの範囲内である。放射線が30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有することも好ましい。より好ましくは、この放射線は35keV〜55keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。さらにより好ましくは、この放射線は40keV〜50keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。
【0106】
患者に放射線を照射するために、患者を、X線源に対して配置し、少なくとも1つのフィルターをX線源と患者との間に配置することができる。このフィルターは、たとえばアルミニウムフィルター(たとえば、2.5mmのアルミニウムフィルター)および/または銅フィルター(たとえば、0.1mmの銅フィルター、0.2mmの銅フィルター、または0.3mmの銅フィルター)であってよい。X線源は、好ましくは60kVp〜150kVpの範囲内の電圧(「管電圧」)で動作する。
【0107】
本開示による医療機器の使用方法は、本発明のニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む医療機器を提供するステップを含む。この医療機器(たとえばステント、ステントグラフト、回収機器、または塞栓防止フィルター)は、本発明の方法の一態様による送達システム内に搭載することができる。次に該医療機器は患者体内に挿入され、次に、患者体内の治療部位に送達することができる。治療部位に位置した後、機器を配備することができる。超弾性効果および/または形状記憶効果を使用して医療機器の送達および配備を行うことができる。
【0108】
超弾性効果が送達および配備のために利用される好ましい一実施形態によると、束縛部材によって、機器を送達形態に維持することができる。たとえば、自己拡張型ステントは通常、ステントの上に重なる管状デリバリーシースによって、血管内に送達するための圧縮された直径に維持される。束縛部材(たとえば、デリバリーシース)が取り外されて応力が開放されると、マルテンサイトがオーステナイトに変態し、医療機器はその配備形態に到達(回復)することができる。たとえば、自己拡張型ステントは、圧縮された直径から拡張した直径まで拡張して、血管壁に接触することができる。本発明の合金の放射線不透過性は、送達および配備中に身体経路内の所望の位置に該機器を位置決めするのに役立つ。
【0109】
この実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、人間の体温(37℃)以下のオーステナイト仕上温度(A
f)を有し、そのため束縛部材の除去が、オーステナイト相への変態を誘起するのに十分となる。好ましくは、A
fは、約−15℃〜約37℃の範囲内とすることができる。さらにより好ましくは、A
fは約−15℃〜約20℃の範囲内とすることができる。一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金のオーステナイト開始温度(A
s)は好ましくは約−25℃〜約20℃の範囲内である。
【0110】
あるいは、形状記憶効果を利用して、本発明のニッケル−チタン合金を含む医療機器の送達および配備を行うことができる。言い換えると、適用される(除去される)応力の代わりに温度変化によって、マルテンサイトからオーステナイトへの変態を制御することができる。たとえば、上記の例のステントは、デリバリーシースを引っ込める代わりに加熱することによって配備することができる。この実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は体温(37℃)以下のオーステナイト仕上温度(A
f)を有する。該機器を体内に送達する前および送達中に、医療機器はA
f未満、好ましくはA
s未満の温度に維持され、それによって本発明のニッケル−チタン合金のマルテンサイト構造が維持される。体温付近まで温められると、機器はオーステナイト構造に変態し、それによって配備される。マルテンサイト構造が早期にオーステナイトに変態するのを防止するために、送達中に機器を冷却することが望ましい。機器が体内を進むときには、機器または機器の送達システムに冷たい流体をフラッシングすることなどによって、A
s未満の温度に機器を維持する必要がある。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金のA
f値は少なくとも約27℃であるが、A
fが約27℃未満となることも可能である。さらにより好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、A
f値が少なくとも約32℃である。A
fが約37℃以下であることも好ましい。
【0111】
形状記憶効果を利用する別の例においては、本発明のニッケル−チタン合金のA
fは体温(37℃)よりも高いが、隣接組織を損傷しうる温度よりは低い。好ましくは、A
fは少なくとも約38℃である。A
fが約58℃以下であることも好ましい。より好ましくは、A
fは約50℃以下である。この実施形態によると、マルテンサイト構造を維持するために冷却または束縛部材を必要とせずに、医療機器は治療部位まで体内を進められる。該機器が治療部位の適所に来ると、機器はA
f以上の温度に温められ、それによってマルテンサイトからオーステナイトに変態し、機器は配備形態に配備される。この加熱は、医療機器に、または該機器の送達システムに温かい流体をフラッシングすることによって行うことができる。配備形態が得られると、加熱を中止し、機器は身体経路内に配備形態で残存する。医療機器が経路内の適所にあるときに、本発明のニッケル−チタン合金のオーステナイトの構造を維持するために、本発明のニッケル−チタン合金は、M
f、好ましくはM
sが体温未満となるように選択されるべきである。オーステナイトはマルテンサイトよりも強いので、医療機器が配備されるときに、ニッケル−チタン合金のオーステナイト相が維持されることが好ましい。マルテンサイト仕上温度(M
f)およびマルテンサイト開始温度(M
s)が体温未満でない場合は、マルテンサイトへの望ましくない相変態を防止するために配備中に機器を連続的に加熱する必要が生じることがある。
【0112】
本発明のニッケル−チタン合金の変態温度は、該合金の組成および工程を制御することによって希望通りに調整することができる。変態温度は、ニッケル対チタン比の小さな変化、ならびに希土類または他の合金化元素の存在に敏感である。たとえば、ニッケル原子対チタン原子が正確に1対1の比率である化学量論NiTi合金のA
fは一般に100℃を超えるが、過剰のニッケル(たとえば、約50.6〜約50.8at.%のNi)を含むわずかに化学量論からはずれた合金のA
fは一般に約0℃である。従って、合金中のニッケル対チタンの比率を増加させることは、A
fを所望のレベルまで低下させる手段となる。
【0113】
希土類または他の合金化元素の存在によっても、変態温度を上昇または低下させたり、あるいは温度ヒステリシスの大きさを変化させたりすることができる。希土類合金化元素の適切な濃度、種類、および/または組み合わせを選択することによって、A
fおよびその他の変態温度を所望の温度範囲内で微調整することができる。さらに、1種類以上の追加の合金化元素を1種類以上の希土類合金化元素とともに含めることによって所望の変態温度を得ることができる。たとえば、クロム、パラジウム、コバルト、および/または鉄の添加はA
fの低下に有効となりうる。バナジウムおよび/またはコバルトの添加はM
sの低下に有効となりうる。銅は、R相をなくすために有用である。
【0114】
実際には、当技術分野において周知である示差走査熱量測定(DSC)技術を使用して、本発明のニッケル−チタン合金中に存在する相の相変態温度を求めることができる。DSC測定は、「熱分析によるニッケル−チタン合金の変態温度の標準試験方法」(Standard Test Method for Transformation Temperature of Nickel−Titanium Alloys by Thermal Analysis)と題される米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(ASTM)規格F2004−05に準拠して行うことができ、これは参照として本明細書に援用される。あるいは、定荷重膨張計測(constant load dilatometry)ならびに曲げおよび自由回復として知られる方法を使用して変態温度を求めることができる。曲げおよび自由回復試験は、「曲げおよび自由回復によるニッケル−チタン形状記憶合金の変態温度を測定するための標準試験方法」(Standard Test Method for Determination of Transformation Temperature of Nickel−Titanium Shape Memory Alloys by Bend and Free Recovery)と題されるASTM規格F2082−03に準拠して行うことができ、これは参照として本明細書に援用される。金属および合金の相変態温度を求めるための電気抵抗率測定も当技術分野において周知である。このような測定は、対象となる合金の加熱および冷却を行いながら、4プローブ定電流技術などを使用して電圧を記録することによって行うことができる。電気抵抗率測定を使用することによって、本発明のニッケル−チタン合金において発生する相変態を、適用される応力および温度の関数として特徴付けることが可能となる。
【0115】
好ましい一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は生体適合性である。患者体内に導入されると、生体適合性の材料または機器は、大多数の患者で有害な反応または応答を引き起こさない。本発明のニッケル−チタン合金の生体適合性は、「材料および機器の一般的な生物学的試験を選択するための標準的手法」(Standard Practice for Selecting Generic Biological Test Methods for Materials and Devices)と題される米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(ASTM)規格F748−04、「医療機器用材料の直接接触細胞培養評価の標準的手法」(Standard Practice for Direct Contact Cell Culture Evaluation of Materials for Medical Devices)と題されるF813−01、および/または「細胞毒性の寒天拡散細胞培養スクリーニングのための標準試験方法」(Standard Test Method for Agar Diffusion Cell Culture Screening for Cytotoxicity)と題されるF895−84に準拠して評価することができる。さらに、国際標準化機構(International Standards Organization)(ISO)規格番号10993、および/または米国薬局方(U.S.Pharmacopeia)(USP)23、および/または「国際規格ISO−10993の使用、医療機器の生物学的評価パート1:評価および試験」(Use of International Standard ISO−10993,Biological Evaluation of Medical Devices Part−1:Evaluation and Testing)と題される米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)ブルー・ブック・メモランダム(blue book memorandum)第G95−1号が、本発明のニッケル−チタン合金および/またはその合金を含む医療機器の生体適合性の評価において有用となりうる。上記規格は、細胞毒性、感染力、発熱性、刺激可能性、反応性、溶血活性、発癌性、および/または免疫原性を評価するために計画された手法および方法が記載されており、これらは参照として本明細書に援用される。生体適合性は体組織の接触の種類および接触時間の関数となるため、試験に必要な量は一般に用途に依存する。たとえば、短期間接触するバスケットにおける生体適合性試験の要求は、永久的に埋め込まれるステントにおける要求とは実質的に異なる。
【0116】
本開示のニッケル−チタン合金およびその合金を含む医療機器を製造するために、所望の量の合金化元素を含む溶融物が形成され、次に固体(たとえばインゴット)となるまで冷却される。たとえば、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを溶融物に加えることができる。最高約14.9at.%の追加の合金元素を溶融物に含めることもできる。好ましくは高純度原材料(たとえば、Ti>99.7重量%の純度およびNi>99.99重量%の純度)が不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で溶融される。
【0117】
限定するものではないが、真空誘導溶解(VIM)、真空消耗電極式アーク溶解(VAR)、および電子ビーム溶解などの当技術分野において周知の溶融方法を使用して溶融物を形成することができる。インゴット中で十分な微細構造均一性を得るために、再溶融することが一般に望ましい。たとえば、連続的VARプロセスまたはVIM/VAR二重溶解プロセスを使用することができる。
【0118】
インゴットは次に、たとえば、押出成形、熱間圧延、または鍛造によって第1の形状(たとえば、バー、ロッド、中空管、または板)に熱間加工することができる。熱間加工は一般に、インゴットの鋳造構造を精錬し機械的性質を改善するために使用される。熱間加工は一般に約700℃〜約950℃の範囲内の温度で行われ、複数の熱間加工および再加熱のサイクルを必要とする場合がある。再加熱は、たとえば8時間の周期で行うことができる。好ましくは、鋳造時の樹枝状微細構造を均一化するために、インゴットは熱間加工中に約90%の最小変形が行われる。熱間加工の前に、高温で特定の時間インゴットを均熱した後、急冷することを含む固溶化熱処理を行うと好都合な場合がある。この固溶化熱処理は、合金の微細構造の均一化を促進することができ、たとえば約850℃〜約1150℃の範囲内の温度で行うことができる。好ましくは、固溶化熱処理は約1000℃〜約1150℃の範囲内の温度で行われる。
【0119】
第1の形状(たとえば、バー、ロッド、管、または板)は次に、たとえば低温延伸または冷間圧延によって構成要素に冷間加工することができる。冷間加工は、一般的には数回のパスが約600℃〜約800℃の範囲内の温度におけるパス間焼きなまし処理と併用される。パス間焼きなまし処理によって、30〜40%の変形が一般的には付与される冷間加工のパス間で、オーステナイト結晶粒の再結晶および成長によって材料が軟化する。ワイヤーの形成に低温延伸が使用される場合、延伸応力を軽減するために、たとえば、多結晶ダイヤモンドダイスを二硫化モリブデンまたはその他の好適な潤滑剤とともに使用することができる。
【0120】
たとえば、ドリリング、円筒芯なし研削、またはレーザー切断などの機械加工作業を構成要素の製造に使用することもできる。ワイヤーの編組または巻き取りなどの他の作業を行うこともできる。
【0121】
所望の最終形状の「記憶」を付与し、構成要素の形状記憶/超弾性および機械的性質を最適化するために、熱処理が使用される。熱処理の回数、時間、および温度によって変態温度を変えることができる。一般的には、最終形状の設定、形状記憶/超弾性および機械的性質の最適化のために、350℃〜550℃の熱処理温度が適切となる。好ましくは、熱処理では、約350℃〜約550℃の範囲内の温度で最終形状に束縛しながら構成要素の焼きなましが行われる。より好ましくは、450℃〜550℃の範囲内の熱処理温度または焼きなまし温度が適切である。たとえば、過剰のニッケル原子を有する(たとえば、約50.6〜約50.8at.%のNi)合金の場合、上記の熱処理によって、ニッケルリッチの析出物が形成されることがあり、それによってマトリックスのニッケル含有率が低下し、変態温度が上昇しうる。これらの析出物は、本発明のニッケル−チタン合金の引張強度を改善することもできる。これらのニッケルリッチ粒子の析出は、オーステナイトからの熱弾性型マルテンサイト相変態を実現するために望ましい場合がある。
【0122】
好ましい一実施形態によると、本開示のニッケル−チタン合金は少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有する。当業者には周知のように、材料の極限引張強度(または引張強度)は、破壊されずに張力下にある材料によって維持することができる最大工学応力に対応する。工学応力は、F/A
0と定義され、式中、Fは張力を表し、A
0は、力を加える前の試験体の元の断面積を表す。合金の引張試験は、米国材料試験協会(American Society of Testing and Materials)(ASTM)規格F2063、「医療機器および外科用移植材料用の鍛造ニッケル−チタン形状記憶合金の標準規格」(Standard Specification for Wrought Nickel−Titanium Shape Memory Alloys for Medical Devices and Surgical Implants)および/またはF2516「ニッケル−チタン超弾性材料の引張試験のための標準試験方法」(Standard Test Method for Tension Testing of Nickel−Titanium Superelastic Materials)に準拠して行われ、これらの規格は参照することにによって本明細書に援用される。
【0123】
二方向形状記憶効果が望ましいニッケル−チタン合金の場合には、より低温でのさらなる「トレーニング(training)」を行って第2の形状を設定することができる。
【実施例】
【0124】
実施例1
真空誘導溶解(VIM)を使用して数種類の希土類ドープニッケル−チタン合金のインゴットを作製した。具体的には、それぞれ7.5at.%の希土類元素を含有するNi−Ti−Er、Ni−Ti−La、Ni−Ti−Gd、およびNi−Ti−Ndを溶解させた。比較のため、Ni−Ti−7.5at.%Ptインゴットおよび二元ニッケル−チタン合金もVIMによって作製した。直径5.72センチメートル(2.25インチ)および高さ7.62センチメートル(3インチ)のインゴットを圧延して板を形成した。それぞれのNi−Ti−X板は、圧延の結果としていくつかの樹枝状晶間亀裂が示されたが、Erドープニッケル−チタン合金が最も圧延に耐えられるように思われた。圧延した板は、850℃で24時間均熱した後、高さが2.54cm(1インチ)をわずかに超える大きさまで熱間加工した。各試験体の組成を重量パーセントの単位で表5に示している。炭素、酸素、および窒素の不純物の濃度も百万分率(ppm)の単位で示している。
表5 Ni−TiおよびNi−Ti−X(X=Er、La、Gd、Nd、またはPt)の試験体の組成データ
【表5】
【0125】
圧延前に、従来のブリネル(Brinell)硬度試験用の試料を作製するために鋳造された状態の試験体の表面を研磨した。このような試験は、試験体表面に既知の荷重下で指定の直径の球状圧子を押し込み、試験後にくぼみの直径(d)を測定することを含む。次に、ブリネル(Brinell)硬度数(BHN)は、キログラムの単位の使用した荷重を、平方ミリメートルの単位のくぼみの実効表面積で割ることによって求めることができる。鋳造し研磨した試験体の硬度試験から得られたブリネル(Brinell)硬度数(BHN)を以下の表6に示す。直径1.68mmの鋼球を、30kgの力を使用し10秒の停止時間で各試験体の表面に押し込んだ。各試料で4つのくぼみを形成し、各くぼみについて直径を2回測定した(d
1、d
2)。塑性変形に対して高い抵抗性を示す(すなわち、硬度の増加を示す)試験体からは高い平均BHN数が得られ、より軟質の試験体からは低い平均BHN数が得られる。表6に示されるように、Ni−Ti−RE試験体は二元Ni−Ti試験体よりも低い硬度を示した。Ni−Ti−Pt試料は、二元Ni−Ti試験体よりも高い硬度を示した。
表6 鋳造し研磨した試験体のブリネル(Brinell)硬度データ
【表6】
【0126】
エネルギー分散X線分光器(EDS)を取り付けた走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、熱間加工した試験体の微細構造を調べた。SEMによって合金の領域を高倍率で観察することができ、EDSによって局所的な化学情報が得られた。これらを併用すると、これらの用具によって、希土類元素がNi−Ti−RE試験体の結晶粒界に分離する傾向にあることが示された。合金の微細構造は、樹枝状形態を示し、酸化物および炭化物の析出物を含んだ。組成の不均一性によって、人間の体温付近での形状記憶相変態が阻害されうると考えられる。実際、−150℃〜80℃の範囲の温度にわたって試験体の加熱および冷却を行うことで実施したDSC実験では、相変態が起こらないことが分かった。したがって、本発明者らは、850℃を超える温度(たとえば、1000℃〜1150℃)でより長い時間(たとえば、2〜3日)の均一化熱処理が、Ni−Ti−REインゴットの組成の均一性を改善し、体温付近での形状記憶挙動に適した相構造を得るために好都合となりうると考えている。
【0127】
ピッカー・クリニクス(Picker Clinix)RF蛍光透視装置、および食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)の医療機器・放射線保健センター(Center for Devices and Radiological Heath)(CDRH)によって開発されたファントムを使用して、Ni−Ti−RE合金およびNi−Ti−Ptの2つのX線コントラストを二元ニチノール(Nitinol)合金のX線コントラストと比較する実験を行った。このファントムを使用して、一般的な成人の下腹部を通過するX線の減衰をシミュレートした。特に、体重74.9キログラム(約165ポンド)および前後方向厚さ23cmの173センチメートル(5フィート8インチ)の成人の上部消化管を表現するためにファントムを設計した。主としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびアルミニウムで構成されるファントムの寸法を
図20に示す。
【0128】
放射線不透過性実験に使用した3つの三元ニッケル−チタン合金試験体は、7.5at.%のEr、7.5at.%のGd、および7.5at.%のPtをそれぞれ含んだ。蛍光透視モードおよび静止モードでCDRHファントムを使用して実験を行った。各試験体を透過する放射線の強度および背景強度を種々の管電圧で測定した。X線コントラストの値は、各電圧で試験体を透過する放射線を背景強度から減じることによって求めた。次にX線コントラスト値を、二元Ni−Ti試料で得られたX線コントラストによって規格化して、各試験体のX線コントラスト値を求め、表7および8に示した。
【0129】
X線コントラストデータによって示されるように、各三元合金は、二元ニチノール(Nitinol)合金に対して放射線不透過性の改善が示された。表7は、蛍光透視モードにおいて種々の電圧でCDRHファントムを使用して測定した合金の相対X線コントラスト値を示しており、
図21は、使用した範囲の電圧にわたる各合金の相対X線コントラストの平均値を示している。全体的に、Ni−Ti−Gd合金が最高のX線コントラストを示し、40〜110kVの範囲の電圧で平均相対X線コントラストが1.50であった。Ni−Ti−Er合金は、同じ電圧範囲で平均相対X線コントラストが1.48であり、一方Ni−Ti−Pt合金は平均相対X線コントラストが1.45であった。
表7 相対X線コントラスト値(蛍光透視モード)
【表7】
【0130】
表8は、静止モードにおいて種々の電圧でCDRHファントムを使用して測定した合金の相対X線コントラスト値を示しており、
図22は、使用した範囲の電圧にわたる各合金の相対X線コントラストの平均値を示している。全体的に、Ni−TI−Pt合金がこれらの条件下で最も高いX線コントラストを示し、60〜100kVの範囲の電圧で平均相対X線コントラストが1.35であった。Ni−Ti−Er合金は、同じ電圧範囲で平均相対X線コントラストが1.34であり、一方Ni−Ti−Gd合金は平均X線コントラストが1.29であった。
表8 相対X線コントラスト値(静止モード)
【表8】
【0131】
好ましくは、40keV〜110keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を合金に照射した場合に、Ni−Ti−RE合金のX線コントラストは、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金のX線コントラストの1〜約2倍の範囲内となる。より好ましくは、40keV〜110keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を合金に照射した場合に、Ni−Ti−RE合金のX線コントラストは、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金のX線コントラストの約1.2〜約1.9倍の範囲内となる。
【0132】
実施例2
以下の表9に示す組成を有する12のさらなる合金を溶融させる。溶融および鋳造の後、合金は、1000℃で72時間の均一化熱処理を行うことができる。均一化された合金は次に、前述のように試験体に機械加工することができる。
表9 Ni−Ti−ErおよびNi−Tt−Ef−X(X=PdまたはCr)の試験体の組織データ
【表9】
【0133】
ニッケルと、チタンと、少なくとも1種類の希土類元素(RE)とを含むニッケル−チタン合金については説明した。本発明のニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む医療機器についても説明した。本発明の放射線不透過性Ni−Ti−RE合金は、従来のニッケル−チタン合金よりも改善された放射線不透過性を有する。したがって、本発明の医療機器は、X線透視などの非侵襲的画像化手法中に、より優れた視認性を有する。本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、医療機器に好都合となる超弾性または形状記憶性をさらに有する。
【0134】
一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約39at.%〜約55at.%のニッケルと、約39at.%〜約55at.%のチタンと、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択されることが好ましい約5at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含む。本発明の合金は、最高約9.9at.%の濃度で1種類以上の追加の合金化元素をさらに含む。好ましくは、1種類以上の追加の合金化元素は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Tc、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される。1種類以上の追加の合金化元素が、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される場合には、追加の合金化元素は、好ましくは合金中で希土類元素よりも低い濃度を有する。15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2倍〜約5倍となることも好ましい。この放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有することができる。本発明の合金は好ましくは生体適合性および超弾性であり、約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有することも好都合である。
【0135】
別の一実施態様によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約39at.%〜約55at.%のニッケルと、約39at.%〜約55at.%のチタンと、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択されることが好ましい約2.5at.%〜約7.5at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含む。好ましくは、本発明の合金は、最高約9.9at.%の濃度で1種類以上の追加の合金化元素をさらに含み、1種類以上の追加の合金化元素は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Tc、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される。1種類以上の追加の合金化元素が、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される場合には、追加の合金化元素は、好ましくは合金中で希土類元素よりも低い濃度を有する。15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍となることも好ましい。この放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有することができる。本発明の合金は好ましくは生体適合性および超弾性であり、約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有することも好都合である。
【0136】
別の一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、放射線不透過性を有し、約39at.%〜約55at.%のニッケルと、約39at.%〜約55at.%のチタンと、約5at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、それによって、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する。好ましくは、少なくとも1種類の希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される。本発明の合金が、最高約9.9at.%の濃度で1種類以上の追加の合金化元素をさらに含むことも好ましい。好ましくは、該1種類以上の追加の合金化元素は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Tc、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される。該1種類以上の追加の合金化元素が、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される場合には、該1種類以上の追加の合金化元素は、好ましくは合金中で希土類元素よりも低い濃度を有する。15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内の放射線不透過性を有することが好ましい。好ましくは、この放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が低温相および高温相を有することも好ましく、その場合、本発明のニッケル−チタン合金の低温相中で生じたひずみは、高温相に相変態することで回復する。低温相は好ましくはマルテンサイトであり、高温相は好ましくはオーステナイトである。本発明の合金が約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度を有することも好ましく、本発明の合金は中間温度のR相をさらに含むこともできる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有し、生体適合性である。
【0137】
別の一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、放射線不透過性を有し、約39at.%〜約55at.%のニッケルと、約39at.%〜約55at.%のチタンと、約2.5at.%〜約7.5at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、それによって、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する。好ましくは、少なくとも1種類の希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される。本発明の合金が、最高約9.9at.%の濃度で1種類以上の追加の合金化元素をさらに含むことも好ましい。好ましくは、該1種類以上の追加の合金化元素は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Tc、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、V、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される。該1種類以上の追加の合金化元素が、Ir、Pt、Au、Re、W、Pd、Rh、Ta、Ag、Ru、Hf、Os、Zr、Nb、およびMoからなる群から選択される場合には、該1種類以上の追加の合金化元素は、好ましくは合金中で希土類元素よりも低い濃度を有する。15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合、本発明のニッケル−チタン合金の放射線不透過性が、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の範囲内となると好都合である。好ましくは、この放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が低温相および高温相を有することも好ましく、その場合、本発明のニッケル−チタン合金の低温相中で生じたひずみは、高温相に相変態することで回復する。低温相は好ましくはマルテンサイトであり、高温相は好ましくはオーステナイトである。本発明の合金が約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度を有することも好ましく、本発明の合金は中間温度のR相をさらに含むこともできる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有し、生体適合性である。
【0138】
別の一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約34at.%〜約60at.%の濃度のニッケルと、約34at.%〜約60at.%の濃度のチタンと、約2.5at.%〜約7.5at.%の濃度の少なくとも1種類の希土類元素とを含む。好ましくは、少なくとも1種類の希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される。本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有し、約4.9at.%以下の濃度で少なくとも1種類の追加の合金化元素をさらに含む。好ましくは、該追加の合金化元素は、Cf、Co、Fe、およびPdからなる群から選択される。本発明の合金が超弾性であり、約37℃以下のオーステナイト仕上温度を有することも好都合となる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、体温以下で変形応力を除去した場合に少なくとも約0.5%の回復性ひずみを含む。
【0139】
別の一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約50at.%〜約56at.%のニッケルと、約40at.%〜約46at.%のチタンと、約0.1at.%〜約4at.%のErと、最高約1at.%の少なくとも1種類の遷移金属とを含み、少なくとも1種類の遷移金属は、Cr、Fe、Co、およびPdからなる群から選択される。好ましくは、15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合に、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の放射線不透過性を有する。この放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有することができる。本発明のニッケル−チタン合金が超弾性であり、約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度を有することも好ましい。本発明のニッケル−チタン合金は、好ましくは少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有し生体適合性でもある。
【0140】
別の一実施形態によると、本発明のニッケル−チタン合金は、約50at.%〜約56at.%のニッケルと、約40at.%〜約46at.%のチタンと、約0.1at.%〜約4at.%のErと、最高約1at.%の少なくとも1種類の遷移金属とを含み、少なくとも1種類の遷移金属は、Cr、Pd、Co、およびFeからなる群から選択される。好ましくは、15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線を照射した場合に、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性の約1.2〜約5倍の放射線不透過性を有する。この放射線は好ましくは30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が低温相および高温相を有することも好ましく、その場合、本発明のニッケル−チタン合金の低温相中で生じたひずみは、高温相に相変態することで回復する。低温相はマルテンサイトであってよく、高温相はオーステナイトであってよい。本発明の合金は中間温度のR相をさらに含むこともできる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、約−15℃〜約37℃の範囲内のオーステナイト仕上温度、および少なくとも約1350MPaの極限引張強度を有する。本発明のニッケル−チタン合金が生体適合性であることも好ましい。
【0141】
別の一実施形態によると、本発明の医療機器は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素が、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する。本発明の合金が超弾性であり、本発明の構成要素が自己拡張型ステントであることも好ましい。
【0142】
別の一実施形態によると、本発明の医療機器は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素と、約4.9at.%以下の濃度の少なくとも1種類の遷移金属とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素が、Ce、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有し超弾性である。本発明の構成要素は自己拡張型ステントであってもよい。
【0143】
別の一実施形態によると、本発明の医療機器は、約34at.%〜約60at.%の濃度のニッケルと、約34at.%〜約60at.%の濃度のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の濃度の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素が、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む。好ましくは、本発明の構成要素はワイヤーおよびカニューレの少なくとも一方を含む。該少なくとも1種類の希土類元素の濃度が約2.5at.%〜約7.5at.%であることも好ましい。本発明のニッケル−チタン合金は好ましくは、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有し超弾性であり、約37℃以下のオーステナイト仕上温度を有する。
【0144】
別の一実施形態によると、本発明の医療機器は、放射線不透過性であり、約34at.%〜約60at.%の濃度のニッケルと、約34at.%〜約60at.%の濃度のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の濃度の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、少なくとも1種類の希土類元素が、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む。本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有し、本発明のニッケル−チタン合金は、体温以下で変形応力を除去した場合に少なくとも約0.5%の回復性ひずみをさらに含む。好ましくは、回復性ひずみは約2%〜約10%の範囲内である。本発明のニッケル−チタン合金が超弾性であり約37℃以下のオーステナイト仕上温度を有することも好ましい。
【0145】
医療機器の使用方法も本明細書に記載されている。一態様によると、本発明の方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含むニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を有する医療機器を提供するステップを含む。好ましくは該少なくとも1種類の希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される。次に、医療機器は患者体内の治療部位に送達される。本発明の方法は、医療機器を送達システム内に搭載するステップと、医療機器を送達システム内に搭載した後に医療機器を患者体内に挿入するステップとをさらに含むことができる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する。本発明のニッケル−チタン合金が超弾性であることも好ましい。本発明の構成要素は、ステント、回収機器、および塞栓防止フィルターであってよい。
【0146】
別の一態様によると、本発明の医療機器の使用は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素と、約4.9at.%以下の濃度の少なくとも1種類の遷移金属とを有し、該少なくとも1種類の希土類元素が、Ce、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を含む医療機器を提供するステップを含むことができる。この医療機器は患者体内の治療部位に送達される。本発明の方法は、医療機器を送達システム内に搭載するステップと、医療機器を患者体内に挿入するステップとをさらに含むことができる。好ましくは、本発明のニッケル−チタン合金は、等原子比近傍の二元ニッケル−チタン合金の放射線不透過性よりも高い放射線不透過性を有する。本発明のニッケル−チタン合金が超弾性であることも好ましい。本発明の構成要素は、ステント、回収機器、および塞栓防止フィルターであってよい。
【0147】
患者体内で医療機器を画像化する方法も本明細書に記載されている。一態様によると、この方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含むニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を有する医療機器を患者体内の治療部位に送達するステップを含む。少なくとも1種類の希土類元素は、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される。患者に15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線が照射され、それによって医療機器が画像化される。好ましくは、放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。患者への放射線の照射は、好ましくは、患者に向かってX線源を提供し、少なくとも1つのフィルターを該X線源と患者との間に提供するステップを含み、このX線源は60kVp〜150kVpの範囲内の管電圧を有する。好ましくは、該フィルターは、2.5mmのアルミニウムフィルター、0.1mmの銅フィルター、0.2mmの銅フィルター、および0.3mmの銅フィルターからなる群から選択される。
【0148】
別の一態様によると、医療機器の画像化方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素と、約4.9at.%以下の濃度の少なくとも1種類の遷移金属とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素が、Ce、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択されるニッケル−チタン合金を含む少なくとも1つの構成要素を有する医療機器を患者体内の治療部位に送達するステップを含む。患者に15keV〜150keVの範囲内のエネルギーを有する放射線が照射され、それによって医療機器が画像化される。好ましくは、放射線は30keV〜60keVの範囲内のエネルギーにおいてピーク強度を有する。患者への放射線の照射は、好ましくは、患者に向かってX線源を提供し、少なくとも1つのフィルターをX線源と患者との間に提供するステップを含み、このX線源は60kVp〜150kVpの範囲内の管電圧を有する。好ましくは、フィルターは、2.5mmのアルミニウムフィルター、0.1mmの銅フィルター、0.2mmの銅フィルター、および0.3mmの銅フィルターからなる群から選択される。
【0149】
医療機器の製造方法も本明細書に記載されている。一態様によると、この方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約15at.%の少なくとも1種類の希土類元素とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素がLa、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される溶融物を形成するステップを含む。この溶融物を冷却して固体を形成し、その固体から構成要素を形成することで医療機器が形成される。固体からの構成要素の形成は好ましくは、固体を第1の形状に熱間加工するステップと、第1の形状を構成要素に冷間加工するステップとを含む。固体の熱間加工は、押出成形、熱間圧延、および鍛造の少なくとも1つを含むことができる。第1の形状の冷間加工は、延伸または圧延を含むことができる。固体から構成要素の形成は好ましくは、構成要素の焼きなましを行うステップをさらに含む。焼きなましは、構成要素を最終形状に束縛し、構成要素を約350℃〜約550℃の範囲内の温度に加熱する必要が生じうる。少なくとも約1,000℃の温度で固体を固溶化熱処理することが好都合となる場合がある。
【0150】
別の一実施形態によると、医療機器の製造方法は、約34at.%〜約60at.%のニッケルと、約34at.%〜約60at.%のチタンと、約0.1at.%〜約10at.%の少なくとも1種類の希土類元素と、約4.9at.%以下の濃度の少なくとも1種類の遷移金属とを含み、該少なくとも1種類の希土類元素が、Ce、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、およびUからなる群から選択される溶融物を形成するステップを含む。この溶融物を冷却して固体を形成し、その固体から構成要素を形成することで医療機器が形成される。固体からの構成要素の形成は好ましくは、固体を第1の形状に熱間加工するステップと、第1の形状を構成要素に冷間加工するステップとを含む。固体の熱間加工は、押出成形、熱間圧延、および鍛造の少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、熱間加工の前に固体の固溶化熱処理が行われる。第1の形状の冷間加工は、延伸または圧延を含むことができる。固体から構成要素の形成は好ましくは、構成要素の焼きなましを行うステップをさらに含む。焼きなましは、構成要素を最終形状に束縛し、構成要素を約350℃〜約550℃の範囲内の温度に加熱する必要が生じうる。少なくとも約1,000℃の温度で固体を固溶化熱処理することが好都合となる場合がある。
【0151】
本発明の特定の実施形態を参照しながら本発明を非常に詳細に説明してきたが、本発明から逸脱しない他の実施形態も可能である。したがって添付の請求項の趣旨および範囲が、本明細書に含まれる好ましい実施形態の記述に限定されるべきではない。文字通りまたは等価物のいずれかによって特許請求の範囲の意味の範囲内にあるすべての実施形態が、本発明に含まれることを意図している。
【0152】
さらに、以上に説明した利点が、必ずしも本発明のすべての利点ではなく、記載の利点のすべてが本発明のすべての実施形態で実現されると必ずしも期待されるものでもない。