特許第5748963号(P5748963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748963
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】金属製熱交換器管
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/26 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   F28F1/26 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-94587(P2010-94587)
(22)【出願日】2010年4月16日
(65)【公開番号】特開2010-266189(P2010-266189A)
(43)【公開日】2010年11月25日
【審査請求日】2013年2月19日
(31)【優先権主張番号】10 2009 021 334.1
(32)【優先日】2009年5月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592179160
【氏名又は名称】ヴィーラント ウェルケ アクチーエン ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】WIELAND−WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース ベウトラー
(72)【発明者】
【氏名】ジーン エル ハジャル
(72)【発明者】
【氏名】アチム ゴターバーム
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ルイス
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0131396(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0034361(US,A1)
【文献】 特開平08−219675(JP,A)
【文献】 実開昭59−042477(JP,U)
【文献】 特開昭54−101760(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/009426(WO,A1)
【文献】 特開昭59−046490(JP,A)
【文献】 特開昭59−093190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管壁(2)と、管外面(21)に周回するように延在し、一体に成形されたフィン(3)とを備え、該フィン(3)がフィン足部(31)とフィン側面部(32)とフィン先端部(33)とを有し、前記フィン足部(31)が前記管壁(2)から実質的に半径方向へ突出し、前記フィン側面部(32)が該フィン側面部(32)の側部に配置される材料突出部(4)として形成された補助的な構造要素を備え、前記材料突出部(4)が複数個の境界面(41,42)を有している金属製熱交換器管(1)であり
少なくとも1つの前記材料突出部(4)の前記複数個の境界面のうち少なくとも1つの境界面(42)が凸状に湾曲しており、凸状の前記境界面(42)の局部的な曲率半径が、前記フィン側面部からの距離が増すにつれて縮小しており、凸状に湾曲している前記境界面(42)が、1つの前記材料突出部(4)の、前記管壁(2)とは逆の側の境界面であり、前記フィン側面部(32)に配置されている前記材料突出部(4)が周方向(U)において互いに間隔をもっている金属製熱交換器管(1)であって、断面にて管周方向(U)に対し垂直に位置し且つ複数個の点P1,P2,P3によって定義される仮想円(K)の半径(RM)が1mmよりも小さく、P1は前記材料突出部(4)の凸状の前記境界面(42)を前記フィン側面部(32)に取り付けた点であり、P3は前記材料突出部(4)の凸状の前記境界面(42)が前記フィン側面部(32)から最も遠く離れている点であり、P2は前記材料突出部(4)の凸状の境界面(42)の輪郭線上にあるP1とP3の間の中間点である金属製熱交換器管(1)において、前記材料突出部(4)の凸状の前記境界面(42)が、その先端(SP)の領域で、前記フィン側面部(32)から最も遠く離れた前記点P3から凸状に湾曲して突出し、先端(SP)がフィン足部(31)の方へ巻いてあることを特徴とする金属製熱交換器管(1)。
【請求項2】
前記フィン側面部(32)に配置されている前記材料突出部(4)が、周方向(U)において、少なくともその幅の分だけ間隔をおいて等間隔に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の金属製熱交換器管(1)。
【請求項3】
前記材料突出部(4)はフィン側面部(32)から加工されており、フィン側面部(32)には繰り抜き部(34)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製熱交換器管(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の金属製熱交換器管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の金属製熱交換器管は、特に、純粋物質または混合物から成る流体を管外面で凝縮させるために使用される。凝縮は冷凍技術および空調技術の多くの分野並びにプロセス技術およびエネルギー技術の分野で生じる。頻繁に使用されるのは管型熱交換器で、純粋物質または混合物の蒸気を管外面で液化させ、その際に管内面で塩水または水を加熱させるものである。このような装置は管型凝縮機或いは管型液化機と呼ばれる。
【0003】
管型熱交換器用の熱交換器管は、通常、少なくとも1個の構造化された領域と、平滑な終端部材と、場合によっては平滑な中間部材とを有している。平滑な終端部材または中間部材は構造化された領域を画成している。管を管型熱交換器のなかへ支障なく組み付けることができるようにするには、構造化された領域の外径は平滑な終端部材および中間部材の外径よりも小さくなければならない。今日慣用されている高性能管は、例えばファクターに関して言えば等径の平滑管よりもかなり高性能である。
【0004】
管外面での凝縮の際の熱伝達を向上させるため、種々の処置が知られている。広く流布しているのは、管の外表面に設けられるフィンである。これによりまず管の表面積が大きくなり、結果的に凝縮が強化される。熱伝達にとっては、フィンが平滑管の壁材から成形されるのが特に有利である。というのは、フィンと管壁との間に最適な接触が生じるからである。成形プロセスにより平滑管の壁材からフィンを形成させたフィン付き管は、一体転造型フィン付き管と呼ばれる。
【0005】
技術水準によれば、フィン先端に切欠きを形成させることにより管の表面積をさらに拡大させる。切欠きによって、さらに、凝縮プロセスに好影響を与える付加構造が生じる。フィン先端の切欠きの例は、特許文献1および特許文献2から知られている。
【0006】
今日、液化機用に市販されているフィン付き管は、管外面に、1インチ当たりのフィン密度が30個ないし45個のフィン構造を有している。これは約0.85ないし0.56mmのフィン分布に相当している。この種のフィン構造は、たとえば特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6から見て取れる。フィン密度の増大による更なる高性能化は、管型熱交換器内に生じるイナンデーション効果により制限をうける。これは、フィン間の間隔が小さくなるにつれて毛細管作用により個々のフィンの中間空間が凝縮物であふれ、フィン間の小さくなっていく管路を通じて凝縮物が流出するのを妨害するものである。
【0007】
さらに、液化機管の場合、フィン密度が均一であれば、フィン間のフィン側面部の領域に付加的な構造要素を挿入することによって高性能化が得られることが知られている。このような構造は、歯車状の円板によってフィン側面部に成形させることができる。その際に生じる材料突出部は、隣接しているフィンの中間空間のなかへ突出する。このような構造の実施態様は前記特許文献4、特許文献5、特許文献6に見られる。これらの特許文献では、材料突出部は平坦な境界面を備えた構造要素として示される。平坦な境界面は、平坦な面に形成された凝縮物が該凝縮物を境界面から離間させるような、表面張力によって誘起される力を蒙らないので、不具合である。したがって、熱伝達を持続的に阻害させる望ましくない液膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3326283号明細書
【特許文献2】米国特許第4660630号明細書
【特許文献3】独国特許第4404357C2号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0196776A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0131396A1号明細書
【特許文献6】中華人民共和国特許出願公開第101004337A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、管外面で流体を凝縮させるための高性能熱交換器管を、管側の熱伝達および圧力降下を同じくして且つ製造コストを同じくして改良することである。この場合、管の機械的安定性に悪影響を及ぼさないようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は請求項1の構成を特徴としている。他の従属項は本発明の有利な構成に関わる。
【0011】
本発明は、管壁と、管外面に周回するように延在し、一体に成形されたフィンとを備え、該フィンがフィン足部とフィン側面部とフィン先端部とを有し、前記フィン足部が前記管壁から実質的に半径方向へ突出し、前記フィン側面部が該フィン側面部の側部に配置される材料突出部として形成された補助的な構造要素を備え、前記材料突出部が複数個の境界面を有している金属製熱交換器管に関わる。本発明によれば、少なくとも1つの前記材料突出部の前記複数個の境界面のうち少なくとも1つの境界面は凸状に湾曲している。
【0012】
本発明は、管外面での熱伝達係数を向上させた、構造化された管に関するものである。これにより伝熱抵抗物の主要成分が頻繁に内面へ移動するので、通常は内面での熱伝達係数も同様に向上させねばならない。管内面での熱伝達を向上させると、通常は管側の圧力降下が増大する。
【0013】
この場合、本発明は、一体転造型フィン付き管は管壁と管外面にねじ線状に周回するように延在するフィンとを有しているという考察から出発している。フィンは、フィン足部と、フィン先端部と、両側のフィン側面部とを有している。フィン足部は管壁から実質的に半径方向へ突出している。フィンの高さは管壁からフィン先端部までを測ったものであり、好ましくは0.5mmと1.5mmの間である。フィンの輪郭は、フィン足部の領域と該フィン足部に接続しているフィン側面部の領域とで半径方向に凹状に湾曲している。フィン先端部と該フィン先端部に接続しているフィン側面部の領域とでフィンの輪郭は半径方向に凸状に湾曲している。フィンの高さの略半分の位置で凸状湾曲部が凹状湾曲部へ移行している。凸状湾曲部の領域では、発生した凝縮物が表面張力のために引き剥がされる。凝縮物は凹状湾曲部の領域に集積し、そこで滴を形成する。
【0014】
フィン側面部の側部には、本発明によれば、付加的な構造要素が材料突出部の形態で形成されている。これらの材料突出部は、工具を用いて材料を切屑のようにすくい取って移動させることにより、上部フィン側面部の材料から成形させる。しかしフィン側面部から切離さない。材料突出部はフィンと固着させたままである。結合部位には、フィン側面部と材料突出部との間に凹状エッジが生じる。材料突出部は、フィン側面部から2個のフィンの間の中間空間のなかへ実質的に軸線方向に延在している。材料突出部は特にフィンの高さの略半分の位置に配置されていてよい。材料突出部により管の表面積が拡大する。
【0015】
隣接するフィンの対向している材料突出部は接触すべきではない。それ故、通常の場合、材料突出部の軸線方向延在距離は、2個のフィンの間にある中間空間の幅の略半分よりも小さい。たとえば、冷媒R134aまたはR123のための液化機管の場合、2個のフィンの間にある中間空間の幅は約0.4mmであり、これにより結果的に材料突出部の軸線方向延在距離は0.2mmよりも短くなる。
【0016】
材料突出部は、本発明によれば、少なくとも1つの凸状に湾曲した面によって画成されている。凸状形状により、付加的な構造要素の作用が改善される。凝縮物は表面張力のために凸状に湾曲した面から離間して、材料突出部とフィン側面部との間の取り付け部位の凹状エッジのほうへ引張られる。それ故、凸状に湾曲した材料突出部の境界面での凝縮物膜が薄くなり、熱抵抗が小さくなる。材料突出部はフィン側面部の領域の辺りに配置され、この領域においてフィンの凸状に湾曲した輪郭は凹状に湾曲した輪郭へ移行する。フィンの上部領域の凝縮物と材料突出部の凝縮物とは前記取り付け部位において衝突し、フィンの凹状に湾曲した部分で滴を形成する。前記特許文献5と特許文献4に示されている、フィン側面部の側部に取り付けられた付加構造物は、このような有利な特性を有しない、平坦な面を備えた要素である。
【0017】
格別な利点は、管外面での好ましい熱伝達と関連して管内面での熱伝達を強化することにより、液化機のサイズを著しく縮小させることができる点にある。これによりこの種の装置の製造コストが低減する。この場合、本発明による解決手段により、管の機械的安定性も圧力降下も悪影響を受けない。さらに、冷媒の必要充填量が減る。今日主に使用されている、塩素を含んでいない安全冷媒の場合、冷媒の必要充填量は設備コスト全体のなかで無視できないほどのコスト負担といえる。通常では特殊なケースでしか使用されない毒性冷媒または可燃性冷媒の場合、充填量が減ることによって危険ポテンシャルをさらに低減させることができる。
【0018】
本発明の有利な構成では、凸状境界面の局部的曲率半径は、フィン側面部からの距離が増すにつれて小さくなっていてよい。局部的曲率半径は凸状境界面のどの点でも曲率円の半径として定義することができる。その際に曲率円はフィン側面部に対し垂直に指向している面内にある。任意に成形した境界面の場合、この局部的曲率半径は変化する。もしこのような面が液膜で覆われていると、表面張力および変化する曲率半径のために液膜内に圧力勾配が発生する。この圧力勾配は、曲率半径がより小さな領域から液体を引張って離間させ、曲率半径がより大きな領域のほうへ引張る。材料突出部の特に有利な実施態様は、該材料突出部の境界面の局部的曲率半径が、フィン側面部からの距離が増すにつれて小さくなる場合である。このとき凝縮物は、フィン側面部から離れている材料突出部の領域から特に効率的に引張られて離間し、フィンのほうへ搬送される。
【0019】
有利には、凸状に湾曲した境界面は、1つの材料突出部の管壁とは逆の側の境界面であってよい。このとき、凝縮されるべき蒸気は支障なくこの面に向かって流れる。
【0020】
本発明の有利な構成では、境界面はフィン側面部に対し平行な面内でも凸状に湾曲していてよく、この場合フィン側面部に対し垂直な面内での凸状境界面の曲率は、フィン側面部に対し平行な面内での凸状境界面の曲率よりも大きい。これにより、材料突出部の先端からフィンへの横方向での凝縮物の搬送がさらに好ましくなる。
【0021】
凸状境界面の平均曲率半径と呼ばれる、仮想円の半径は、3個の点での測定によって特定することができる。特に有利な実施態様では、断面にて管周方向に対し垂直に位置し且つ複数個の前記点P1,P2,P3によって定義されるこの仮想円の半径は、1mmよりも小さくてよい。P1は材料突出部の凸状境界面をフィン側面部に取り付けた点であり、P3は材料突出部の凸状境界面がフィン側面部から最も遠く離れている点であり、P2は材料突出部の凸状境界面の輪郭線上にあるP1とP3の間の中間点である。もしこの曲率半径が1mmよりも大きければ、通常使用される物質(たとえば冷媒または炭化水素)で生じる表面張力は、凝縮物の搬送に決定的に影響させるには、重力に比べて十分大きなものではない。
【発明の効果】
【0022】
有利には、材料突出部の凸状境界面は、その先端の領域で、フィン側面部から最も遠く離れた前記点P3から凸状に湾曲して突出している。このケースでは、材料突出部の先端は略スパイラル状に湾曲している。これにより、同じフィン間隔でフィン間に提供される中間空間内に凝縮用の他の表面が得られる。
【0023】
本発明の有利な実施態様では、フィン側面部に配置されている材料突出部は周方向において互いに間隔をもっていてよい。これにより、凝縮が行われる付加的なエッジが生じる。さらに、2個の材料突出部の間の領域内でフィン側面部に集積する凝縮物をフィン足部のほうへ排流させることができる。
【0024】
本発明の他の有利な実施態様では、フィン側面部に配置されている材料突出部は、周方向において、少なくともその幅の分だけ間隔をおいて等間隔に設けられている。これにより、フィン側面部に集積する凝縮物用の中間空間は、搬出を保証するうえで十分なものが提供される。
【0025】
本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】材料突出部を備えた熱交換器管のフィン部分の部分斜視図である。
図2】凸状に湾曲した境界面を備える、図1に図示した材料突出部の詳細図である。
図3】凸状に湾曲した2個の境界面を備える材料突出部の他の詳細図である。
図4】二重に凸状に湾曲した境界面を備える材料突出部の他の詳細図である。
図5】フィン側面部から最も遠く離れた点から突出している延設部を備えた材料突出部の他の詳細図である。
図6】熱交換器管の一部分の外面の部分斜視図である。
図7】熱交換器管の一部分の内面の部分斜視図である。
図8】熱交換器管の一部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例】
【0028】
全図において、互いに対応する部材には同一の参照符号を付した。図1は、3個の材料突出部4を備えた熱交換器管1のフィン部分の部分斜視図である。管外面21のうち、周回するように延在している一体成形されたフィン3の一部のみが図示されている。フィン3は、ここには図示していない管壁に取り付けられるフィン足部31と、フィン側面部32と、フィン先端部33とを有している。フィン3は実質的に管壁から半径方向へ突出している。フィン側面部32は、該フィン側面部32の側部に取り付けられている材料突出部4として形成された補助的な構造要素を備えている。これらの材料突出部4は複数個の境界面41と42を有している。図示した実施形態では、材料突出部4の図示した3個の境界面42が管壁とは逆の側で凸状に湾曲している。しかし、基本的には、本発明によれば、どの材料突出部4においても、他の境界面42または同じ複数個の境界面42が凸状湾曲部を備えていてもよい。残りの凸状でない境界面41は、平坦に構成するか、或いは、凹状に構成されていてよい。一体に加工される材料突出部4は、第1に、フィン側面部32から加工されたものである。その際、熱交換器管1を製造する際の材料転位により繰り抜き部34が生じる。
【0029】
図2は、凸状に湾曲した境界面42を備えた1個の材料突出部4の詳細図である。この場合、残りの凸状でない境界面41は平坦に延在している。気相から沈殿する凝縮物は、表面張力のために凸状表面の領域において搬出され、これによって凝縮物は凹状湾曲部の領域にまたは平坦な表面領域にも集中的に集積する。
【0030】
仮想円Kの凸状境界面42の平均曲率半径RMは3個の点P1,P2,P3によって定義されている。この曲率半径RMは、凸状表面の突出量を表わす特性量として考慮することができる。P1は材料突出部4の凸状境界面42がフィン側面部に境を接している点であり、P3は材料突出部4の凸状境界面42がフィン側面部から最も遠く離れている点であり、P2は材料突出部4の凸状境界面42の輪郭線上でのP1とP3との間の中間点である。フィンを一体的に転造させた本発明による熱交換器管の通常の構造サイズの場合、平均曲率半径RMは典型的には1ミリメートル未満の範囲である。
【0031】
図3は、互いに対向しあっている2個の凸状に湾曲した境界面を備える材料突出部4の他の詳細図である。この幾何学的構成により、材料突出部4の先端を基点として凝縮物はフィン側面部へ特に効率的に搬送される。基本的には、最も効率的な実施形態に対しては、すべての境界面42が側面41をも含めて凸状湾曲部を有していてもよい。しかしながら、この種の実施形態は、一体のフィン形状およびその材料突出部4の構造化の過程でプロセス技術的に高度な要求を伴う。
【0032】
他の有利な実施形態として、図4に他の詳細図で示した、二重に凸状に湾曲した境界面42と平坦な側面41とを備えた材料突出部4を実現させることもできる。この場合、フィン側面部に対し垂直な面内での凸状境界面の曲率は、フィン側面部に対し平行な面内での凸状境界面42の曲率よりも大きい。このように湾曲した表面は、凝縮物をフィン側面部のほうへ排流させる補助的な用を成す。
【0033】
図5は他の実施形態を例示するもので、平坦な側面41と、フィン側面部から最も遠く離れた点P3から突出している延設部とを備えた材料突出部4の詳細図である。このケースでは、材料突出部4の先端SPはフィン足部のほうへスパイラル状に巻いてある。これにより提供されるフィン間の中間空間内に凝縮物用の他の表面が得られる。この場合も、点P1,P2,P3によって仮想円Kの凸状境界面42の平均曲率半径RMが設定される。
【0034】
図6は熱交換器管1の一部分の外面の部分斜視図である。これに対し、図7は熱交換器管の一部分の内面を見た他の部分斜視図である。管外面21には、一体に成形され、管軸線Aのまわりに周回するように延在しているいくつかのフィン3が図示されている。フィン3は管壁2から半径方向へ突出し、フィン足部31を介して管壁2と結合されている。フィン側面部32には、該フィン側面部32の側部に取り付けられた材料突出部4が形成されている。材料突出部4の複数個の境界面のうち、管壁2とは逆の側の境界面42が凸状に形成されている。残りの凸状でない境界面41は、図6の実施形態では平坦である。図7では、側部の境界面41が平坦であり、管内部のほうへ指向している境界面41は凹状に成形されている。一体に加工された材料突出部4の材料は、第1に、フィン側面部32から加工されたものであり、一部のみフィン先端部33の領域から加工されており、これによって繰り抜き部34が形成されている。フィン側面部32に配置されている材料突出部4は、周方向Uにおいておよそその幅の分だけ等間隔で配置されている。隣接するフィン3の、対向している材料突出部は、接触していない。というのは、材料突出部4の軸線方向の延在距離は、2個のフィン3の間にある中間空間の幅の半分よりも小さく選定されているからである。管内面22には、スパイラル状に周回して延在する内側フィン5が配置され、該内側フィン5は熱交換器管1の内部にある流体への熱伝導を平滑管に比べて増大させる。
【0035】
図8は熱交換器管1の一部分の横断面図である。管内面22には、スパイラル状に周回して延在する内側フィン5がある。管外面21のフィン3はフィン足部31を基点として管壁2上に垂直に規則的に配置され、フィン先端部33はいくぶん面取りされている。フィン側面部32に取り付けられている材料突出部の4の管壁2とは逆の側の境界面42は、凸状に形成され、管内部22のほうへ指向している境界面41は凹状である。隣接するフィン3の対向している材料突出部はこの場合も接触していない。これにより、集積する凝縮物を搬出させるための空間が十分に提供される。
【符号の説明】
【0036】
1 熱交換器管
2 管壁
21 管外面
22 管内面
3 管外面のフィン
31 フィン足部
32 フィン側面部
33 フィン先端部
34 繰り抜き部
4 材料突出部
41 境界面
42 凸状境界面
5 管内面のフィン
SP 材料突出部の先端
U 管周方向
A 管軸線
RM 平均曲率半径
K 円
P1,P2,P3 凸状境界面上の点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8