特許第5748970号(P5748970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748970血管セグメンテーションを行う超音波システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748970
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】血管セグメンテーションを行う超音波システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20150625BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20150625BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A61B8/06
   A61B8/14
   G06T1/00 290D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-172680(P2010-172680)
(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公開番号】特開2011-36653(P2011-36653A)
(43)【公開日】2011年2月24日
【審査請求日】2013年7月23日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0072559
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597096909
【氏名又は名称】三星メディソン株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュン ギョ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン, ドン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ゼ フン
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−178090(JP,A)
【文献】 特表2007−524445(JP,A)
【文献】 米国特許第06424732(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の血管を含む対象体に超音波信号を送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して前記対象体に対応する超音波データを取得する超音波データ取得部と、
前記超音波データを用いてボリュームデータを形成するボリュームデータ形成部と、
前記ボリュームデータを用いて3次元超音波映像を形成し、前記3次元超音波映像に複数のスライスを設定し、互いに隣接したスライス間における前記複数の血管の整列程度(degree of registration)に基づいて、前記複数の血管のセグメンテーション(segmentation)を行うプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、
前記複数のスライスのそれぞれに対して前記複数の血管のそれぞれの境界を検出する境界検出部と、
前記互いに隣接するスライスにおいて、一方のスライスにおける前記複数の血管の境界と、他方のスライスにおける前記複数の血管の境界との間で複数の位置差を求め、当該複数の位置差のそれぞれを所定のしきい値と比較して前記複数の血管の前記セグメンテーションを行うセグメンテーション部とを備えることを特徴とする超音波システム。
【請求項2】
a)複数の血管を含む対象体に超音波信号を送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して前記対象体に対応する超音波データを取得する段階と、
b)前記超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、
c)前記ボリュームデータを用いて3次元超音波映像を形成する段階と、
d)前記3次元超音波映像に複数のスライスを設定する段階と、
e)互いに隣接したスライス間における前記複数の血管の整列程度に基づいて前記複数の血管のセグメンテーション(segmentation)を行う段階と
を備え、
前記血管のセグメンテーションを行う段階e)は、
前記複数のスライスのそれぞれに対して前記複数の血管のそれぞれの境界を検出する段階と、
前記互いに隣接するスライスにおいて、一方のスライスにおける前記複数の血管の境界と、他方のスライスにおける前記複数の血管の境界との間で複数の位置差を求め、当該複数の位置差のそれぞれを所定のしきい値と比較して前記複数の血管のセグメンテーションを行う段階とを備えることを特徴とする血管セグメンテーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムに関し、特に、血管セグメンテーション(segmentation)を行う超音波システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波システムは、無侵襲および非破壊特性を有しており、対象体内部の情報を得るために医療分野で広く用いられている。超音波システムは、対象体を直接切開して観察する外科手術の必要がなく、対象体の内部組織を高解像度の映像で医師に提供することができるので、医療分野で非常に重要なものとして用いられている。
【0003】
3次元の超音波映像を用いた超音波システムは、2次元超音波映像では提供することができない空間情報や解剖学的な形態情報を提供してくれる。即ち、この超音波システムは、超音波信号を対象体に送信して対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を用いてボリュームデータを形成し、その形成されたボリュームデータをレンダリングして3次元超音波映像を形成する。
【0004】
一方、超音波システムは、3次元超音波映像にセグメンテーション(segmentation)を行い、3次元超音波映像で関心物体(例えば血管)のみを抽出することができる。しかし、セグメンテーション処理を行っても、それで得られる血管の構造が複雑な場合、その多数の血管の中から特定の血管を識別するのが困難であるだけでなく、血管連結点(または分岐点)の位置を把握するのが困難である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−512862号公報
【特許文献2】特開1995−178086号公報
【特許文献3】特表2001−504603号公報
【特許文献4】特開1993−137728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、3次元超音波映像に複数のスライスを設定し、互いに隣接するスライス間に血管境界の位置差を用いて血管のセグメンテーションを行う超音波システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における超音波システムは、血管を含む対象体に超音波信号を送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して前記対象体に対応する超音波データを取得する超音波データ取得部と、前記超音波データを用いてボリュームデータを形成するボリュームデータ形成部と、前記ボリュームデータを用いて3次元超音波映像を形成し、前記3次元超音波映像に複数のスライスを設定し、互いに隣接したスライス間のおける前記血管の整列程度(degree of registration)に基づいて、前記血管のセグメンテーション(segmentation)を行うプロセッサとを備える。
【0008】
また、血管セグメンテーションの方法は、a)血管を含む対象体に超音波信号を送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して前記対象体に対応する超音波データを取得する段階と、b)前記超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、c)前記ボリュームデータを用いて3次元超音波映像を形成する段階と、d)前記3次元超音波映像に複数のスライスを設定する段階と、e)前記互いに隣接したスライス間における前記血管の整列程度に基づいて前記血管のセグメンテーション(segmentation)を行う段階とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、3次元超音波映像を用いて血管のセグメンテーション(segmentation)を正確に行うことができ、血管をツリー形態で表現することができるだけでなく、各血管の太さ、長さ、血流などの臨床的情報を容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例における超音波データ取得部の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例におけるプロセッサの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例における複数のスライスおよび血管の境界を示す例示図である。
図5】本発明の実施例によって隣接するスライス間に血管の境界の位置差を示す例示図である。
図6】本発明の実施例における血管セグメンテーションの例を示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例における超音波システム100の構成を示すブロック図である。超音波システム100は、超音波データ取得部110、ボリュームデータ形成部120、プロセッサ130、ディスプレイ部140および制御部150を備える。
【0013】
超音波データ取得部110は、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信して対象体の超音波データを取得する。
【0014】
図2は、本発明の実施例における超音波データ取得部110の構成を示すブロック図である。超音波データ取得部110は、送信信号形成部210、複数の変換素子(transducer element)(図示せず)を含む超音波プローブ220、ビームフォーマ230および超音波データ形成部240を備える。
【0015】
送信信号形成部210は、変換素子の位置および集束点を考慮して送信信号を形成する。本実施例で、送信信号は、複数のフレームのそれぞれを得るための送信信号を含む。
【0016】
超音波プローブ220は、送信信号形成部210から送信信号が提供されると、送信信号を超音波信号に変換して対象体に送信し、対象体から反射される超音波エコー信号を受信して受信信号を形成する。
【0017】
ビームフォーマ230は、超音波プローブ220から受信信号が提供されると、受信信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を形成する。また、ビームフォーマ230は、変換素子の位置および集束点を考慮してデジタル信号を受信集束させて受信集束信号を形成する。
【0018】
超音波データ形成部240は、ビームフォーマ230から受信集束信号が提供されると、受信集束信号を用いて超音波データを形成する。超音波データは、RF(radio frequency)データおよびIQ(in−phase/quardrature)データを含む。
【0019】
再び図1を参照すると、ボリュームデータ形成部120は、超音波データ取得部110から提供される超音波データを用いてボリュームデータを形成する。ボリュームデータは、複数のフレームからなり、輝度値を有する複数のボクセル(voxel)で形成される。
【0020】
プロセッサ130は、ボリュームデータ形成部120から提供されるボリュームデータを用いて対象体内の血管を含む3次元超音波映像を形成し、3次元超音波映像を用いて血管のセグメンテーション(segmetation)を行う。
【0021】
図3は、本発明の実施例におけるプロセッサ130の構成を示すブロック図である。プロセッサ130は、映像形成部310、境界検出部320、スライス設定部330およびセグメンテーション部340を備える。
【0022】
映像形成部310は、ボリュームデータ形成部120から提供されるボリュームデータにレンダリングを行って3次元超音波映像を形成する。レンダリングは、レイキャスティング(ray−casting)レンダリング、表面レンダリングなどを含む種々の方法で行なうことができる。
【0023】
境界検出部320は、映像形成部310から提供される3次元超音波映像に境界検出を行って血管の境界を検出する。境界は、ソーベル(Sobel)マスク、プレウィット(Prewitt)マスク、ロバート(Robert)マスク、キャニー(Canny)マスクなどのような境界マスク(edge mask)を用いて検出することができる。または、境界は、構造テンソル(structure tensor)を用いた固有値(eigen value)の差を用いて検出することもできる。
【0024】
また、境界検出部320は、後述するスライス設定部330により複数のスライスS〜Sが設定された後、それら複数のスライスS〜S上における血管の境界を検出することもできる。
【0025】
スライス設定部330は、図4に示すように複数のスライスS〜Sを境界検出された3次元超音波映像に設定する。本実施例で、複数のスライスは、複数のフレームに対応するスライスであってもよい。また、スライス設定部330は、複数のスライスS〜Sを境界検出されていない3次元超音波映像に設定してもよい。
【0026】
セグメンテーション部340は、互いに隣接したスライス間の血管の整列程度(degree of registration)に基づいて、血管のセグメンテーションを行う。一実施例で、セグメンテーション部340は、血管の境界を用いて隣接するスライス間で血管位置を比較して血管のセグメンテーションを行う。図4を参照してセグメンテーション部340の動作を説明すると次の通りである。
【0027】
セグメンテーション部340は、第1のスライスSを分析して第1のスライスS上で血管境界VE11、VE12を検出する。セグメンテーション部340は、第2のスライスSを分析して第2のスライスS上で血管境界VE21、VE22を検出する。
【0028】
セグメンテーション部340は、図5に示すように、隣接するスライス、即ち、第1のスライスSと第2のスライスSとの間で血管境界の位置差を検出する。即ち、セグメンテーション部340は、第1のスライスSの血管境界VE11と第2のスライスSの血管境界VE21との間の位置差を検出すると伴に、第1のスライスSの血管境界VE11と第2のスライスSの血管境界VE22との間の位置差を検出する。また同様にして、セグメンテーション部340は、第1のスライスSの血管境界VE12と第2のスライスSの血管境界VE21との間の位置差を検出すると伴に、第1のスライスSの血管境界VE12と第2のスライスSの血管境界VE22との間の位置差を検出する。
【0029】
セグメンテーション部340は、第1のスライスSの血管境界VE11と第2のスライスSの血管境界VE21との間の位置差および第1のスライスSの血管境界VE12と第2のスライスSの血管境界VE22との間の位置差が予め設定しておいたしきい値以下であり、第1のスライスSの血管境界VE11と第2のスライスSの血管境界VE22との間の位置差および第1のスライスSの血管境界VE12と第2のスライスSの血管境界VE21との間の位置差が予め定めておいたしきい値を超える場合は、第2のスライスSの血管境界VE21と第1のスライスSの血管境界VE11を連結すると伴に、第2のスライスSの血管境界VE22と第1のスライスSの血管境界VE12を連結する。
【0030】
セグメンテーション部340は、第3のスライスSおよび第4のスライスSに対しても前述したのと同様な操作を行う。
【0031】
セグメンテーション部340は、第5のスライスSを分析し、第5のスライスSで血管境界VEを検出する。セグメンテーション部340は、隣接するスライス、即ち第4のスライスSと第5のスライスSとの間で血管境界の位置差を検出する。そして、セグメンテーション部340は、第4のスライスSの血管境界VE41と第5のスライスSの血管境界VE間の位置差および第4のスライスSの血管境界VE42と第5のスライスSの血管境界VE間の位置差が予め定めておいたしきい値以下であれば、第5のスライスSの血管境界Vと第4のスライスSの血管境界VE41およびVE42を連結する。
【0032】
セグメンテーション部340は、第6のスライスSを分析して第6のスライスSで血管境界VEを検出する。セグメンテーション部340は、隣接するスライス、即ち第5のスライスSと第6のスライスSとの間に血管境界の位置差を検出する。セグメンテーション部340は、第5のスライスSの血管境界VEと第6のスライスSの血管境界VEとの間の位置差が予め定めておいたしきい値以下であれば、第6のスライスSの血管境界Vと第5のスライスSの血管境界VEとを連結する。
【0033】
セグメンテーション部340は、第7〜第nのスライスS〜Sに対しても前述したと同様な操作を行い、図6に示すように血管のセグメンテーションを行う。
【0034】
再び図1を参照すると、ディスプレイ部140は、プロセッサ130で形成された3次元超音波映像を表示する。また、ディスプレイ部140は、プロセッサ130により前記方法で血管セグメンテーション処理された3次元超音波映像を表示する。
【0035】
制御部150は、超音波データの取得を制御し、ボリュームデータおよび3次元超音波映像の形成を制御する。また、制御部150は、3次元超音波映像の処理(即ち、血管セグメンテーション)を制御する。
【0036】
本発明は望ましい実施例によって説明および例示をしたが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項および範疇を逸脱することなく様々な変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
100 超音波システム
110 超音波データ取得部
120 ボリュームデータ形成部
130 プロセッサ
140 ディスプレイ部
150 制御部
210 送信信号形成部
220 超音波プローブ
230 ビームフォーマ
240 超音波データ形成部
310 映像形成部
320 境界検出部
330 スライス設定部
340 セグメンテーション部
図1
図2
図3
図4
図5
図6