特許第5749089号(P5749089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749089
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、および加工装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/32 20060101AFI20150625BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20150625BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20150625BHJP
   B26D 5/00 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   B65H20/32
   B26D7/06 Z
   B41J11/70
   !B26D5/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2011-130178(P2011-130178)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2012-254880(P2012-254880A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 武美
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−254293(JP,A)
【文献】 特開2011−068034(JP,A)
【文献】 特開2008−006523(JP,A)
【文献】 特開2000−218880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/00−20/40
B41J 11/00−11/70
B26D 5/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御方法であって、
前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御工程と、
前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御工程と
前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の数をユーザに設定させる第2の設定工程を含み、
前記搬送制御工程では、
ユーザによって設定された数の加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記搬送制御工程において事前に引き出された複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間を計測する計測工程をさらに含み、
前記加工制御工程では、
前記複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲の前記計測された経過時間が前記待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記待機時間をユーザに設定させる第1の設定工程をさらに含み、
前記加工制御工程では、
前記加工対象範囲の前記経過時間がユーザによって設定された前記待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の長さをユーザに設定させる第3の設定工程をさらに含み、
前記搬送制御工程では、
ユーザによって設定された長さの加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御装置
であって、
前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御手段と
を備え、前記搬送制御手段は、ユーザによって設定された事前に引き出される加工対象範囲の数の加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、
前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段と、
請求項に記載の制御装置と
を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項7】
シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御方法であって、
前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御工程と、
前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御工程と、
前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の長さをユーザに設定させる第3の設定工程を含み、
前記搬送制御工程では、
ユーザによって設定された長さの加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御装置であって、
前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御手段と
を備え、前記搬送制御手段は、ユーザによって設定された事前に引き出される加工対象範囲の長さの加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象媒体を引き出して加工する加工装置、ならびに、この加工装置を制御するための制御方法、および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工対象となる紙やフィルムなどシート状の媒体(以下、「加工対象媒体」と示す。)に対して、印刷や切り抜き等の加工を施す加工装置として、カッティングプロッタやプリンタ等が知られている。
【0003】
例えば、アパレル業界においては、加工対象媒体から所望する型を切り出すための加工装置として、カッティングプロッタが利用されている。このカッティングプロッタは、ロール状に巻かれたロール紙を引き出し、引き出されたロール紙から、指示された形状の型を切り出すというものである。
【0004】
ここで、カッティングプロッタ等に使用される加工対象媒体は、その使用環境によって変形が生じてしまうことが知られている。例えば、カッティングプロッタ等に用いられるロール紙は、引き出されて外気にさらされると、その温度や湿度の影響を受けて伸縮するという性質を有している。このようなロール紙の伸縮がその加工中に生じてしまうと、加工精度の低下を招くこととなるため、従来、ロール紙の伸縮をいかに生じさせないかが課題となっていた。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、インクジェットプリンタにおいて、温度や湿度等の各種条件に基づいて印刷テープに紙くせが生じると判断したときには、印刷テープを自動空送りする技術が開示されている。この技術によれば、印刷テープに紙くせが生じるとされた部分が自動空送りされるので、常に良好な状態の印刷テープに対して印刷を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−122632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、紙くせが生じるとして自動空送りされた部分が印刷に使用されることがないので、印刷テープを無駄に消費してしまう。
【0008】
そこで、従来、カッティングプロッタ等において、上記特許文献1に記載の技術のように加工対象媒体を無駄に消費することが無いように、加工対象媒体を事前に引き出しておき、加工対象媒体を環境に馴染ませておいてから、この加工対象媒体を使用する方法が採られている。
【0009】
例えば、カッティングプロッタ等において、印刷または切り出し等の加工を行う直前に、この加工に必要な長さの用紙を自動的に引き出してから、この用紙が環境に馴染むように一定時間待機した後、加工を行う方法がある。
【0010】
この方法では、加工を行う毎に、上記のとおりこの加工に必要な用紙を環境に馴染ませる必要があるため、連続して加工を行うような場合、処理時間が長時間化するといった問題が生じていた。
【0011】
また、カッティングプロッタ等において、印刷または切り出し等の加工を行う前に、必要以上の長さの用紙をユーザが手作業により事前に引き出してから、この用紙が環境に馴染むようにこの用紙を一定時間放置した後、加工を行う方法がある。
【0012】
この方法では、ユーザによって必要以上に長く引き出された用紙がかさばるため、待機中にその待機場所において折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題を生じさせる要因となっていた。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工対象媒体の無駄な消費や、加工時間の増加等の諸問題を生じさせることなく、加工装置による加工精度の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明に係る制御方法は、シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御方法であって、前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御工程と、前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御工程と、前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の数をユーザに設定させる第2の設定工程を含み、前記搬送制御工程では、ユーザによって設定された数の加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲を環境に馴染ませた後に、当該加工対象範囲の加工を開始させることができる。これにより、当該加工対象範囲の加工中に当該加工対象範囲が環境の影響を受けて伸縮するようなことが無いので、加工装置による加工精度の低下を防止することができる。
【0016】
特に、本発明は、複数の加工対象範囲を事前に引き出しておくので、一の加工対象範囲を加工している間に、他の加工対象範囲を環境に馴染ませておくことができる。すなわち、一の加工対象範囲の加工と、他の加工対象範囲を環境に馴染ませておくこととを、並行して行うことができる。これにより、他の加工対象範囲を開始するタイミングをより早めることができるので、加工装置による加工時間の増加を抑制することができる。
【0017】
ここで、一の加工対象範囲を加工する際には、その妨げとならないように、事前に引き出された他の加工対象範囲をどこかに退避させておく必要があるが、本発明によれば、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻すといった簡単な制御により、当該加工対象範囲を加工手段による加工位置よりも手前の位置に退避させておくことができる。
【0018】
このように、手前の位置に退避させておくことで、退避中、装置外部からの影響を受け難くなるため、加工対象媒体を良好な状態に保つことができ、加工装置による加工精度の低下を防止することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、退避された加工対象範囲は、引き出される前の状態に戻されることが無い。例えば、退避された加工対象範囲がロール状に巻かれた部分から引き出されたものであれば、この加工対象範囲は、その退避中、ロール状に巻き戻されることが無い。このため、この加工対象範囲は、その退避中においても、引き続き外気にさらされて待機時間が消化されていくこととなる。また、前記搬送制御工程では、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において、折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段を制御する。シート状の加工対象媒体は、特に、折り重なった場合に、折り目やしわが生じ易い。そこで、この構成によれば、加工対象範囲は、折り重なることなくたるんだ状態で退避されるので、この退避中に、折り目やしわが生じることが無い。ところで、事前に引き出される加工対象範囲の数を多くすることで、より多くの加工対象範囲を早めに環境に馴染ませておくことができる。しかしながら、事前に引き出される加工対象範囲の数が多い場合、事前に引き出される加工対象媒体の全長も長くなる。この全長が長すぎると、引き出された加工対象媒体が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまう場合がある。そこで、本発明は、上記制御方法において、前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の数をユーザに設定させる第2の設定工程をさらに含み、前記搬送制御工程では、ユーザによって設定された数の加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御する。この構成によれば、引き出された加工対象媒体の待機場所のスペースの形状や大きさに応じて、ユーザが適切な加工対象範囲数を設定することができる。これにより、事前に引き出される加工対象媒体の全長が長すぎてしまうようなことが無いため、引き出された加工対象媒体が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまうことも無い。
【0022】
上記制御方法において、前記搬送制御工程において事前に引き出された複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間を計測する計測工程をさらに含み、前記加工制御工程では、前記複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲の前記経過時間が前記待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、複数の加工対象範囲の各々について経過時間を計測するので、複数の加工対象範囲の各々について、事前に引き出されてからの経過時間を正確に把握することができる。例えば、複数の加工対象範囲の引き出しに時間差がある場合や、加工対象範囲毎にその待機時間が異なるような場合であっても、複数の加工対象範囲の各々について、引き出されてからの経過時間を正確に把握することができる。これにより、複数の加工対象範囲の各々について、待機時間の過不足を生じさせることが無いため、加工中に加工対象媒体が変形してしまったり、無駄に長時間待機してしまったりするようなことも無い。
【0024】
上記制御方法において、前記待機時間をユーザに設定させる第1の設定工程をさらに含み、前記加工制御工程では、前記加工対象範囲の前記経過時間がユーザによって設定された前記待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御することが好ましい。
【0025】
加工対象媒体が環境に馴染むまでに必要な待機時間は、その環境の温度、湿度や、その加工対象媒体の材質、厚み、長さ等の各種条件によって変動する。
【0026】
そこで、この構成によれば、これら各種条件を鑑みて、ユーザが適切な待機時間を設定することができる。これにより、待機時間の過不足を生じさせることが無いため、加工中に加工対象媒体が変形してしまったり、無駄に長時間待機してしまったりするようなことも無い。
【0030】
また、上記制御方法において、前記搬送制御工程で事前に引き出される加工対象範囲の長さをユーザに設定させる第3の設定工程をさらに含み、前記搬送制御工程では、ユーザによって設定された長さの加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することが好ましい。
【0031】
事前に引き出される加工対象範囲の数を最小限にしたとしても、その加工対象範囲の長さが長すぎると、引き出された加工対象媒体が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまう場合がある。
【0032】
そこで、この構成によれば、引き出された加工対象媒体の待機場所のスペースの形状や大きさに応じて、ユーザが適切な加工対象範囲長を設定することができる。これにより、加工対象範囲の途中までしか事前引き出しを行うことができなくなる場合も生じてくるが、事前に引き出される加工対象媒体の全長が長すぎてしまうようなことが無いため、引き出された加工対象媒体が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまうことも無い。
【0033】
また、本発明に係る制御装置は、シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御装置であって、前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御手段とを備え、前記搬送制御手段は、ユーザによって設定された事前に引き出される加工対象範囲の数の加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする。また、本発明に係る制御装置は、シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段とを備えている加工装置を制御する制御装置であって、前記加工手段が前記加工対象媒体のうちの一の加工対象範囲の加工を開始する前に、当該一の加工対象範囲を含む複数の加工対象範囲を事前に引き出し、事前に引き出された加工対象範囲をさらに引き戻し、前記加工手段による加工位置よりも手前の位置において退避させておくように、前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、前記加工対象範囲が事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該加工対象範囲の加工を開始するように、前記加工手段を制御する加工制御手段とを備え、前記搬送制御手段は、ユーザによって設定された事前に引き出される加工対象範囲の長さの加工対象範囲を事前に引き出しておくように、前記搬送手段を制御することを特徴とする。

【0034】
本発明によれば、制御装置により、上記制御方法と同様の効果を奏することができる。
【0035】
また、本発明に係る加工装置は、シート状の加工対象媒体を搬送して引き出す搬送手段と、前記搬送手段によって引き出された前記加工対象媒体を加工する加工手段と、上記制御装置とを備えることを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、加工装置により、上記制御装置と同様の効果を自ら奏することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る制御方法、制御装置、および加工装置によれば、複数の加工対象範囲の各々について、当該加工対象範囲を環境に馴染ませた後に、当該加工対象範囲の加工を開始させることができる。特に、本発明は、一の加工対象範囲を加工する前に、複数の加工対象範囲を事前に引き出しておくので、一の加工対象範囲を加工している間に、他の加工対象範囲を環境に馴染ませておくことができる。さらに、本発明は、加工対象範囲を加工手段による加工位置よりも手前の位置において退避させておくことができる。これにより、加工装置による加工精度の低下を防止しつつ、加工装置による加工時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施形態に係るプロッタの構成を示す図である。
図2】実施形態に係るプロッタが備える制御回路の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るプロッタによる処理の手順を示すフローチャートである。
図4】各種カッティングプロッタによるカッティング処理の具体的な手順を示すタイムチャートである。
図5図4(a)に示すタイミングt2のとき(1ページ目および2ページ目の双方が引き出されたとき)の、実施形態に係るプロッタの状態を示す図である。
図6図4(a)に示すタイミングt3のとき(2ページ目を引き戻して退避させたとき)の、実施形態に係るプロッタの状態を示す図である。
図7図4(a)に示すタイミングt5のとき(1ページ目を引き戻して、1ページ目のカッティング処理を開始することが可能な状態となったとき)の、実施形態に係るプロッタの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0040】
(プロッタ100の概要)
まず、本実施形態に係るプロッタ100の構成について説明する。図1は、実施形態に係るプロッタ100の構成を示す図である。
【0041】
プロッタ100は、本発明の加工装置の一例であって、ロール状に巻かれたシート状の用紙(以下、「ロール紙」と示す。)から、加工データによって指示された型を切り出す装置、いわゆるカッティングプロッタである。
【0042】
特に、本実施形態のプロッタ100は、カッタの刃先をロール紙に押し当てつつ、ロール紙をX軸方向(ロール紙が引き出される方向。すなわち、ロール紙の長さ方向)に引き出しながら、カッタをY軸方向(ロール紙が引き出される方向に直交する方向。すなわち、ロール紙の幅方向)に移動させることにより型を切り出す、いわゆるフリクション型のプロッタである。
【0043】
(プロッタ100の構成)
図1に示すように、プロッタ100は、ロール紙110、搬送手段120、加工手段130、バスケット106、バスケット108、および制御回路140を備えている。
【0044】
ロール紙110は、本発明のシート状の加工対象媒体の一例であって、ロール状に巻かれた状態となっている。
【0045】
プロッタ100は、一対の支柱102を有している。これら一対の支柱102は、互いにY軸方向にある程度の間隔を有して立設されている。ロール紙110は、これら一対の支柱102によって、これら支柱102の上部において、その両端が軸支されて保持される。これにより、ロール紙110は、そのロール状に巻かれた部分が回転しつつ、その先端からX軸方向に順次引き出されることが可能となっている。
【0046】
プロッタ100は、一対の支柱104を有している。これら一対の支柱104は、支柱102よりもX軸方向にある程度離間した位置において、互いにY軸方向にある程度の間隔を有して立設されている。これら一対の支柱104間の上部には、搬送手段120および加工手段130が設けられている。特に、搬送手段120は、加工手段130よりもX軸方向における手前(支柱102側)に設けられている。
【0047】
搬送手段120は、ロール紙110を搬送することにより、ロール紙110の引き出しおよび引き戻しを行う。
【0048】
具体的には、搬送手段120は、グリットローラ122およびピンチローラ124を有している。グリットローラ122およびピンチローラ124は、互いに対向して設けられている。このグリットローラ122とピンチローラ124との間には、ロール紙110が挟みこまれる。
【0049】
グリットローラ122は、主にロール紙110を搬送する役割を担う。一方のピンチローラ124は、主にロール紙110をグリットローラ122へ押さえつける役割を担う。グリットローラ122は、駆動モータ(図示を省略する)の駆動によって正方向/逆方向に回転する。これにより、搬送手段120は、グリットローラ122およびピンチローラ124の各々の外周面によって、ロール紙110の引き出し/引き戻しを行うように構成されている。
【0050】
加工手段130は、搬送手段120によって引き出されたロール紙110から、加工データによって指示された型を切り出す。すなわち、加工手段130は、ロール紙110に対して、いわゆるカッティング処理を行う。
【0051】
具体的には、加工手段130は、キャリッジ132、ガイドレール133、およびカッタ134を有している。
【0052】
カッタ134は、キャリッジ132の下方からその刃先が突出するように、キャリッジ132によって保持される。
【0053】
ガイドレール133は、Y軸方向に延伸する部材である。このガイドレール133には、キャリッジ132が嵌合されている。
【0054】
キャリッジ132は、駆動モータ(図示を省略する)の駆動により、ガイドレール133に沿って、Y軸方向に移動することが可能である。加工手段130においては、このキャリッジ132のY軸方向への移動により、カッタ134によるY軸方向の切断位置が決定される構成となっている。
【0055】
カッタ134は、さらにZ軸方向(上下方向)に移動することも可能である。カッタ134は、下方に移動することにより、刃先をロール紙110へ押し当て、ロール紙110を切断することが可能となる。反対に、カッタ134は、上方に移動することにより、刃先とロール紙110とが離間し、ロール紙110を切断することなく、カッタ134の移動およびロール紙110の搬送が可能となる。
【0056】
バスケット106および108は、ロール紙を受け止める受止手段の一例である。この例では、バスケット106および108は、両端が保持されることによって張架されたシート状の部材を有しており、このシート状の部材の上面でロール紙を受け止めるように構成されている。
【0057】
このうち、バスケット106は、支柱104よりもX軸方向の外側に設けられており、加工手段130による加工位置よりもさらに引き出されたロール紙110(すなわち、加工終了後に排出されたロール紙110)を、この上面で受け止めるように構成されている。
【0058】
一方、バスケット108は、支柱104と支柱102との間に設けられており、上記加工位置よりも手前に引き戻されたロール紙110(すなわち、退避させられたロール紙110)を、この上面で受け止めるように構成されている。
【0059】
制御回路140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されており、ROM、RAM等に記録されているプログラムをCPUが実行することにより、プロッタ100の各部を制御する。
【0060】
例えば、制御回路140は、グリットローラ122を駆動する駆動モータを制御することにより、ロール紙110の引き出し/引き戻し量や、カッタ134によるX軸方向の切断位置を制御する。
【0061】
また、制御回路140は、キャリッジ132を駆動する駆動モータを制御することにより、カッタ134によるY軸方向の切断位置を制御する。
【0062】
上記以外にも、プロッタ100は、表示パネル150、入力デバイス160、通信インタフェース170等を備えている。
【0063】
表示パネル150は、各種情報を表示する。例えば、表示パネル150には、各種設定をユーザに行わせるための設定画面等が表示される。
【0064】
入力デバイス160は、ユーザによって操作されることにより、各種情報を入力する。入力デバイス160としては、例えば、ボタン、キー、タッチパネル等が挙げられる。また、入力デバイス160によって入力される情報としては、例えば、各種設定を行うための設定値等が挙げられる。
【0065】
通信インタフェース170は、外部とのデータ通信を制御する。プロッタ100は、この通信インタフェース170による外部とのデータ通信により、外部から加工データを受信することができる。
【0066】
加工データとは加工内容が示されたデータである。本実施形態では、加工データの一例としてCAD(Computer Aided Design)データを採用している。このCADデータは、CADソフトウェア等によって生成されたものであり、切り出される型の形状が、ベクトルデータによって示されている。
【0067】
なお、プロッタ100には、通信インタフェース170に限らず、可搬性を有する記録媒体(メモリカード等)を介して、加工データが入力されてもよい。
【0068】
(基本動作)
このように構成されたプロッタ100は、外部の装置からCADデータが入力されると、制御回路140の制御により、搬送手段120が、加工データによって指示された型を切り出すために必要な長さのロール紙110を引き出す。そして、制御回路140の制御により、加工手段130が、引き出されたロール紙110からこの型を切り出す。
【0069】
ここで、上記CADデータにおいては、ページ単位で加工内容が示されている。すなわち、本実施形態においては、ロール紙110のX軸方向の範囲である加工対象範囲が、ページ単位で設定されている。これにより、搬送手段120および加工手段130は、ロール紙110の搬送および加工をそのページ単位で行うことができる。
【0070】
例えば、1ページ目の加工を行った後に、この1ページ目を排出してから、2ページ目の加工を開始するといった具合である。
【0071】
プロッタ100は、オートカット機能を有しており、この機能がオンのとき、あるページの加工が終了すると、このページをロール紙110から自動的に切り離して、排出することができる。
【0072】
なお、加工手段130のツールとしては、カッタに限らず、シャープペンシル、インクペン、ボールペン等の各種ペンも採用され得る。この場合、芯の太さや色が異なるものを採用することもできる。加工手段130のツールとしてペンを採用することにより、プロッタ100は、CADデータによって指示された型をロール紙に印刷する、いわゆるペンプロッタとしても機能する。
【0073】
(事前フィード機能)
ここで、プロッタ100は、事前フィード機能を有している。事前フィード機能とは、ロール紙110のあるページを加工する場合、このページを事前に引き出しておき、直ぐにロール紙110の加工を開始せず、予め設定された待機時間が経過した後に、このページの加工を開始するという機能である。これにより、プロッタ100は、ロール紙110の加工対象のページを事前にその環境に馴染ませてから、このページの加工を開始することができるようになっている。
【0074】
上記待機時間とは、加工対象のページが引き出されてから、この引き出されたページがその環境に馴染むまでに要する時間である。ロール紙110がその環境に馴染むまでに要する時間は、ロール紙110の材質、長さ、厚さや、周囲の温度、湿度等の各種条件によって変動する。このため、プロッタ100には、これらの各種条件に応じて、適切な時間が待機時間として設定される。
【0075】
例えば、プロッタ100は、ユーザが入力デバイス160を操作することによって設定した時間を、待機時間として採用する。他の例として、プロッタ100は、予め各種条件毎に待機時間を記憶しておき、ユーザが入力デバイス160を操作することによって設定した各種条件に基づいて、記憶しておいた待機時間の中から、採用する待機時間を自動的に決定するようにしてもよい。
【0076】
プロッタ100は、この事前フィード機能により、加工対象のページが環境に馴染んだ後に、このページの加工を開始することができるので、このページの加工中にこのページの素材が伸縮することを防止することができる。これにより、加工手段130による加工精度の低下を防止することができるのである。
【0077】
(オーバーフィード機能)
さらに、プロッタ100は、オーバーフィード機能を有している。オーバーフィード機能とは、加工対象のある一のページの加工が終了する前に、当該一のページに続く他のページを上記事前フィード機能のために引き出しておくという機能である。
【0078】
プロッタ100は、このオーバーフィード機能により、一のページの加工の終了を待つことなく、当該一のページに続く他のページを早めに引き出しておくことができるので、当該他のページをいち早く環境に馴染ませておくことができる。これにより、当該他のページの加工を開始するタイミングをより早めることができるので、加工手段130による加工時間の増加を抑制することができるのである。
【0079】
特に、本実施形態100のプロッタは、ある一のページの加工が開始される前に、当該一のページを含む複数のページを引き出しておく構成を採用しているので、当該一のページの加工中に、他のページをいち早く環境に馴染ませておくことができる。これにより、他のページの加工を開始するタイミングをより早めることができるので、加工手段130による加工時間の増加をより抑制することができるのである。
【0080】
なお、本実施形態における「引き出す」は、上記のとおり外気にさらすことをその目的として含んでいるため、少なくとも、ロール紙110のロール状に巻かれた部分から乖離させれば、この定義に含まれることとなる。すなわち、装置本体がカバーに覆われている場合等において、装置本体の外部に露出していなくとも、ロール紙110のロール状に巻かれた部分から僅かにでも乖離されていれば、この部分は、「引き出された」部分に該当する。
【0081】
(制御回路140の機能構成)
続いて、プロッタ100が備える制御回路140の機能構成について説明する。図2は、実施形態に係るプロッタ100が備える制御回路140の機能構成を示すブロック図である。
【0082】
図2に示すように、制御回路140は、搬送制御部302、計測部304、記憶部306、判断部308、および加工制御部310を備える。
【0083】
(記憶部306)
記憶部306は、入力デバイス160の操作等によって設定されたフィード設定を記憶する。また、記憶部306は、外部の装置から入力されたCADデータを記憶する。上記フィード設定には、事前フィード機能のオン/オフ、オーバーフィード機能のオン/オフ、待機時間、事前フィードするページ数、および事前フィードする1ページ分の長さ(ページ長)等が含まれる。
【0084】
(搬送制御部302)
搬送制御部302は、搬送手段120によるロール紙110の引き出しおよび引き戻しを制御する。
【0085】
具体的には、搬送制御部302は、記憶部306に記憶されているCADデータに従って、指定された型を切り出す際の、ロール紙110の加工位置を決定するための、搬送手段120によるロール紙110の引き出しおよび引き戻しを制御する。
【0086】
また、搬送制御部302は、事前フィード機能がオンになっている場合、記憶部306に記憶されているフィード設定に従って、ロール紙110の事前フィードのための、搬送手段120によるロール紙110の引き出しおよび引き戻しを制御する。
【0087】
(計測部304)
計測部304は、事前フィード機能によってロール紙110のあるページが事前に引き出された場合、このページが事前に引き出されてからの経過時間を計測する。
【0088】
(判断部308)
判断部308は、計測部304によって計測された経過時間が、記憶部306に記憶されている待機時間に到達したか否かを判断する。
【0089】
(加工制御部310)
加工制御部310は、加工手段130によるロール紙110の加工を制御する。例えば、加工制御部310は、加工手段130がロール紙110を加工する際の、開始タイミング、加工位置、ツールの移動速度、ツールの圧力等を制御する。
【0090】
(事前フィード機能)
このように構成されたプロッタ100において、事前フィード機能がオンになっている場合、搬送制御部302は、加工手段130がロール紙110のうちの1ページ目の加工を開始する前に、当該1ページ目を事前に引き出しておくように、搬送手段120を制御する。
【0091】
そして、加工制御部310は、事前に引き出された1ページ目の上記経過時間が上記待機時間に到達していなければ、この1ページ目の加工を開始せずに待機し、上記経過時間が上記待機時間に到達している場合に、この1ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0092】
(オーバーフィード機能)
さらに、オーバーフィード機能がオンになっている場合、搬送制御部302は、加工手段130がロール紙110のうちの1ページ目の加工を開始する前に、当該1ページ目を含む複数のページを事前に引き出しておくように、搬送手段120を制御する。
【0093】
この場合、計測部304は、搬送手段120によって事前に引き出された複数のページの各々について、当該ページが事前に引き出されてからの経過時間を計測する。例えば、オーバーフィード機能により、ロール紙110の1ページ目と2ページ目とが引き出されたとする。この場合、計測部304は、ロール紙110の1ページ目が引き出されたタイミングで、当該1ページ目の経過時間の計測を開始し、ロール紙110の2ページ目が引き出されたタイミングで、当該2ページ目の経過時間の計測を開始する。
【0094】
そして、加工制御部310は、事前に引き出された複数のページの各々について、当該ページの上記経過時間が上記待機時間に到達していなければ、このページの加工を開始せずに待機し、上記経過時間が上記待機時間に到達している場合に、このページの加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0095】
例えば、加工制御部310は、1ページ目の経過時間が待機時間に到達している場合に、1ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御し、1ページ目の加工が終了した後においては、2ページの目の経過時間が待機時間に到達している場合に、2ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0096】
すなわち、加工制御部310は、1ページ目の加工が終了した時点で2ページの目の経過時間が待機時間に到達している場合には、直ぐに2ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御し、1ページ目の加工が終了した時点で2ページの目の経過時間が待機時間に到達していない場合には、この到達を待って、2ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0097】
ここで、プロッタ100は、このときに用いられる待機時間を、ユーザに設定させることができる。そして、加工制御部310は、事前に引き出された複数のページの各々について、当該ページの上記経過時間がユーザによって設定された待機時間に到達していなければ、このページの加工を開始せずに待機し、上記経過時間がユーザによって設定された待機時間に到達している場合に、このページの加工を開始するように、加工手段130を制御することができる。
【0098】
また、プロッタ100は、このときに搬送手段120によって事前に引き出されるページの数を、ユーザに設定させることができる。そして、搬送制御部302は、ユーザによって設定された数の加工対象範囲を事前に引き出すように、搬送手段120を制御することができる。
【0099】
また、プロッタ100は、このときに搬送手段120によって引き出されるページの長さを、ユーザに設定させることができる。そして、搬送制御部302は、ユーザによって設定された長さのページを事前に引き出すように、搬送手段120を制御することができる。
【0100】
例えば、上記待機時間として「10分」が設定され、上記ページ数として「2ページ」が設定され、上記長さとして「3m」が設定されたとする。この場合、搬送制御部302は、加工手段130が1ページ目の加工を開始する前に、1ページ目の長さ(3m)および2ページ目の長さ(3m)の双方を加算した長さに相当する6m分のロール紙110を事前に引き出しておくように、搬送手段120を制御する。
【0101】
そして、上記のとおり事前に引き出しが行われた後、加工制御部310は、1ページ目の経過時間が10分を経過した場合に、1ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0102】
さらに、1ページ目の加工が終了した後、2ページ目の経過時間が10分を経過した場合に、2ページ目の加工を開始するように、加工手段130を制御する。
【0103】
上記のとおり複数のページが事前に引き出された場合、加工手段130が1ページ目の加工を開始する前に、1ページ目をその加工位置に引き戻しておく必要がある。また、1ページ目の加工の妨げとならないように、2ページ目以降の他のページを退避させておく必要がある。
【0104】
そこで、搬送制御部302は、加工手段130が1ページ目の加工を開始する前に、引き出された複数のページを同時に引き戻すことにより、1ページ目についてはその加工位置に引き戻し、2ページ目以降のページについては支柱104と支柱102との間に退避させておくように、搬送手段120を制御する。
【0105】
このとき、2ページ目以降のページについては、ロール紙110のロール部分に巻き戻されるようなことはないので、その待機中においても、引き続き外気にさらされて待機時間が消化されていくこととなる。
【0106】
特に、搬送制御部302は、2ページ目以降のページを、折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、搬送手段120を制御する。このため、例えば、搬送制御部302は、支柱104と支柱102との間に退避されたロール紙110のたるんだ部分が何らかの対象物(例えば、バスケット108)に接地しない程度に、あるいは接地したとしても大きく変形しない程度に、退避させるロール紙110の長さを調整することが好ましい。
【0107】
例えば、本実施形態のプロッタ100は、支柱104および支柱102の各々の高さや、支柱104と支柱102との間の距離等を、ある程度の余裕を持たせるサイズとしている。そして、本実施形態のプロッタ100は、事前に引き出した複数のページのうち、上記接地あるいは上記変形が生じない分だけを、引き戻して退避させるようにしている。具体的には、図3以降で説明する例において、本実施形態のプロッタ100は、2つのページを事前に引き出した場合、上記接地あるいは上記変形が生じないように、このうちの1ページだけを、引き戻している。
【0108】
当然、本実施形態のプロッタ100は、上記高さや上記距離等のサイズにさらに余裕を持っている場合には、事前に引き出した複数のページのうちの全てのページ(例えば、図3以降で説明する例では、2ページ)を、引き戻して退避させることもできる。
【0109】
さらに、本実施形態のプロッタ100は、ページ単位以外の単位(例えば、長さ)で、引き戻して退避させることもできる。
【0110】
このように、引き出した複数のページのうち、どれだけを引き戻して退避させるかは、プロッタ100に予め設定されていてもよいし、ユーザが任意に設定することができるようにしてもよい。
【0111】
このようにして、本実施形態のプロッタ100は、上記接地あるいは上記変形が生じないように、事前に引き出したロール紙110のうちの適切な分を引き戻して、一時的に退避させているのである。
【0112】
他の例として、プロッタ100は、上記接地あるいは上記変形が生じない範囲内で、事前に引き出しておくことが可能なロール紙110の長さの制限値を予め設けておき、上記制限値を超えるようなフィード設定が設定された場合は、このフィード設定を認めないようにしてもよい。もしくは、上記制限値を超えないように、自動的にフィード設定を調整したり、フィード設定の変更をユーザに促したりするようにしてもよい。上記制限値は、支柱104および支柱102の各々の高さや、支柱104と支柱102との間の距離等によって、当業者であれば容易に求めることができる。上記制限値は、プロッタ100に予め設定されていてもよく、ユーザが任意の値を設定することができるようにしてもよい。
【0113】
(プロッタ100による処理の手順)
以下、図3を参照して、プロッタ100による処理の手順について説明する。図3は、実施形態に係るプロッタ100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0114】
(プロッタ100に対する準備および各種設定)
はじめに、ユーザは、プロッタ100がカッティング処理を行う前に、プロッタ100に対して、以下のとおり準備および各種設定を行う必要がある。もちろん、以下準備および各種設定のうち、既になされているものや、変更する必要がないものについては、これを省略することができる。
【0115】
まず、ユーザは、ロール紙110をプロッタ100の装置本体にセットする(ステップS302)。具体的には、プロッタ100が図1に示したような状態となるように、ロール紙110の両端を支柱102に保持させた後に、グリットローラ122とピンチローラ124との間を通すように、ロール紙110をその先端から適度に引き出しておく。
【0116】
次に、ユーザは、表示パネル150に表示された情報を参照しつつ、入力デバイス160を操作することにより、プロッタ100に対して、各種設定を行う(ステップS304)。ここでは、少なくとも、フィード設定を行う必要がある。この例では、フィード設定には、事前フィード機能のオン/オフ、オーバーフィード機能のオン/オフ、待機時間、事前フィードするページ数、および事前フィードする1ページ分の長さ(ページ長)が含まれる。ここでは、一例として、待機時間として「10分」が、事前フィードするページ数として「2ページ」が、事前フィードする1ページ分の長さとして「3m」が、ユーザによって設定されたものとする。
【0117】
そして、ユーザは、プロッタ100に対し、外部の装置からCADデータを入力する(ステップS306)。
【0118】
このようにステップS304で行われた各種設定、およびステップS306で入力されたCADデータは、記憶部306によって記憶される。
【0119】
(プロッタ100による処理)
上記のように準備および各種設定が行われた後、プロッタ100は、以下のとおり事前フィード処理およびカッティング処理を実行する。
【0120】
まず、プロッタ100は、記憶部306に記憶されているフィード設定を参照することにより、事前フィードを行うか否かを判断する(ステップS308)。ステップS308において「事前フィードを行わない」と判断した場合(ステップS308:No)、プロッタ100は、ステップS326へ処理を進め、ステップS326以降による1ページ目のカッティング処理を実行する。
【0121】
一方、ステップS308において「事前フィードを行う」と判断した場合(ステップS308:Yes)、プロッタ100は、ステップS310へ処理を進め、ステップS310以降の事前フィード処理を実行する。
【0122】
(事前フィード処理)
ステップS310では、プロッタ100は、記憶部306に記憶されているフィード設定を参照することにより、オーバーフィードを行うか否かを判断する(ステップS310)。
【0123】
ステップS310において「オーバーフィードを行わない」と判断した場合(ステップS310:No)、プロッタ100は、事前フィード機能によりロール紙110を1ページ分引き出すとともにこの1ページ目が引き出されてからの経過時間を計測開始し(ステップS312)、ステップS318へ処理を進める。
【0124】
一方、ステップS310において「オーバーフィードを行う」と判断した場合(ステップS310:Yes)、プロッタ100は、オーバーフィード機能によりロール紙110を2ページ分(すなわち、フィード設定に設定されているページ数分)引き出すとともに引き出したページの各々について引き出されてからの経過時間を計測開始する(ステップS314)。そして、プロッタ100は、ステップS314で引き出されたロール紙110の1ページ分(すなわち、フィード設定に設定されているページ数−1ページ分)を引き戻して退避させ(ステップS316)、ステップS318へ処理を進める。
【0125】
ステップS318では、プロッタ100は、ロール紙110が環境に馴染むまで待機をするか否かを判断する(ステップS318)。例えば、プロッタ100は、ステップS314で引き出されたロール紙110のうち、次にカッティング処理を行うべき1ページ目の経過時間が既に待機時間「10分」を経過していることがわかっている場合、待機をしないと判断する。
【0126】
ステップS318において、「待機をしない」と判断した場合、プロッタ100は、1ページ目の先端位置(または、何らかの基準位置)が、加工手段130の近傍の所定の準備位置にまで移動するように、1ページ目を引き戻し(ステップS324)、ステップS326以降による1ページ目のカッティング処理を実行する。
【0127】
一方、ステップS318において、「待機をする」と判断した場合、プロッタ100は、1ページ目が引き出されてからの経過時間が記憶部306に記憶されている待機時間に達するまで待機を行う。このとき、ステップS314により1ページ目および2ページ目の双方が引き出されていれば、プロッタ100は、1ページ目および2ページ目の各々について、経過時間を計測している。
【0128】
その後、プロッタ100は、1ページ目の経過時間が記憶部306に記憶されている待機時間「10分」に達したか否かを判断する(ステップS322)。
【0129】
ステップS322において「待機時間に達した」と判断した場合(ステップS322:Yes)、プロッタ100は、1ページ目の先端位置(または、何らかの基準位置)が、加工手段130の近傍の所定の準備位置にまで移動するように、1ページ目を引き戻し(ステップS324)、ステップS326以降による1ページ目のカッティング処理を実行する。
【0130】
一方、ステップS322において「待機時間に達していない」と判断した場合(ステップS322:No)、プロッタ100は、「待機時間に達した」と判断するまで、繰り返しステップS322の判断処理を行う。
【0131】
(カッティング処理)
ステップS326では、プロッタ100は、記憶部306に記憶されているCADデータに従って、1ページ目のカッティング処理を行う(ステップS326)。そして、プロッタ100は、ステップS326でカッティング処理が行われた1ページ目を、ロール紙110から裁断する(ステップS328)。
【0132】
その後、プロッタ100は、CADデータに示されている全ての(全ページ分の)カッティング処理が行われたか否かを判断する(ステップS330)。
【0133】
ステップS330において「全てのカッティング処理が行われた」と判断した場合(ステップS330:Yes)、プロッタ100は、処理を終了する。
【0134】
一方、ステップS330において「全てのカッティング処理が行われていない」と判断した場合(ステップS330:No)、プロッタ100は、処理をステップS308へ戻す。
【0135】
その後、プロッタ100は、全ての(全ページ分の)カッティング処理を行うまで、ステップS308〜S330を繰り返し行う。
【0136】
なお、上記において「1ページ目」および「2ページ目」とは、ある時点において未だカッティング処理が行われていない複数のページのうちの、1ページ目(先頭ページ)および2ページ目を意味する。
【0137】
したがって、1ページ目のカッティング処理が終了した後には、この処理前の「2ページ目」が繰り上がって「1ページ目」となり、この処理前の「3ページ目」が繰り上がって「2ページ目」となる。
【0138】
(カッティング処理の具体的な手順)
以下、図4〜7を参照して、カッティングプロッタによるカッティング処理の具体的な手順の一例について説明する。
【0139】
図4は、各種カッティングプロッタによるカッティング処理の具体的な手順を示すタイムチャートである。
【0140】
このうち、図4(a)は、本発明の実施形態に係るプロッタ100によるカッティング処理の具体的な手順を示すタイムチャートである。
【0141】
一方、図4(b)は、従来のカッティングプロッタによるカッティング処理の具体的な手順を示すタイムチャートである。
【0142】
一方、図5〜7は、本発明の実施形態に係るプロッタ100の状態を示す図である。
【0143】
特に、図5は、図4(a)に示すタイミングt2のとき(1ページ目および2ページ目の双方が引き出されたとき)の、実施形態に係るプロッタ100の状態を示す図である。
【0144】
また、図6は、図4(a)に示すタイミングt3のとき(2ページ目を引き戻して退避させたとき)の、実施形態に係るプロッタ100の状態を示す図である。
【0145】
そして、図7は、図4(a)に示すタイミングt5のとき(1ページ目を引き戻して、1ページ目のカッティング処理を開始することが可能な状態となったとき)の、実施形態に係るプロッタ100の状態を示す図である。
【0146】
図4(a)に示すとおり、本実施形態のプロッタ100は、1ページ目の加工を行う前に、ロール紙110の1ページ目および2ページ目を連続して事前に引き出す(タイミングt1〜t2)。
【0147】
これにより、プロッタ100は、図5に示すように、1ページ目および2ページ目の双方が事前に引き出された状態となる(タイミングt2)。
【0148】
このとき、ロール紙110の事前に引き出された部分は、支柱102と支柱104との間の部分を除き、その殆どの部分が、装置本体の外部に排出された状態となる。なお、支柱102と支柱104との間の部分は、僅かにたるんだ状態となっている。
【0149】
その後、プロッタ100は、1ページ目とともに2ページ目を引き戻す(タイミングt2〜t3)。
【0150】
これにより、図6に示すように、1ページ目は依然として装置本体の外部に排出されたままとなっているが、2ページ目は支柱102と支柱104と間において折り重なることなくたるんだ状態となって退避されている(タイミングt3)。
【0151】
その後、プロッタ100は、1ページ目が引き出されてからの経過時間が待機時間に達するまで、待機する(タイミングt3〜t4)。
【0152】
そして、待機時間が経過すると、プロッタ100は、1ページ目を引き戻し(タイミングt4〜t5)、これにより、図7に示すように、1ページ目の先頭位置がその加工位置まで引き戻され、1ページ目および2ページ目の殆どの部分は、支柱102と支柱104と間においてたるんだ状態となって退避される(タイミングt5)。
【0153】
そして、プロッタ100は、1ページ目のカッティング処理を行い(タイミングt5〜t6)、1ページ目のカッティング処理が終了すると(タイミングt6)、この時点において既に2ページ目の待機時間が消化されているので、プロッタ100は、2ページ目のカッティング処理を続けて行うこともできるが、3ページ目が存在する場合、図4(a)に示すように、3ページ目を事前に引き出し(タイミングt6〜t7)、これにより2ページ目もさらに引き出されるので、2ページ目をその加工位置まで引き戻し(タイミングt7〜t8)、その後、2ページ目のカッティング処理(タイミングt8〜t9)を行うようにしてもよい。
【0154】
このように、本実施形態のプロッタ100によれば、1ページ目のカッティング処理を開始する前に、1ページ目および2ページ目の双方を引き出している。これにより、1ページ目のカッティング処理の待機中および処理中の間に、2ページ目の待機時間の殆どを消化させることができるので、1ページ目のカッティング処理が終了した後に、続けて、または長時間待機することなく、2ページ目のカッティング処理を開始することができる。これにより、加工時間を増加させることなく、加工装置による加工精度の低下を防止することができる。また、ロール紙110を折り重ねることなく待機させることができるので、ロール紙110に折り目やしわが生じることが無く、その加工精度が低下することも無い。
【0155】
一方、図4(b)に示すとおり、従来のカッティングプロッタでは、1ページ目のカッティング処理が終了してから(タイミングt5´)、2ページ目を引き出し(タイミングt5´〜t6´)、2ページ目を待機させている(タイミングt6´〜t7´)。このため、従来のカッティングプロッタでは、1ページ目のカッティング処理の待機中および処理中のいずれにおいても、2ページ目の待機時間を消化させることができないので、1ページ目のカッティング処理が終了してから(タイミングt5´)、2ページ目のカッティング処理を開始するまで(タイミングt8´)、非常に長い待ち時間を要している。
【0156】
したがって、従来のカッティングプロッタでは、本実施形態のプロッタ100ように、加工時間を増加させることなく、加工装置による加工精度の低下を防止することができない。
【0157】
(プログラム、記録媒体)
実施形態で説明した制御回路140の各機能は、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPUを用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0158】
例えば、制御回路140は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の各種記憶装置(記録媒体)を備えている。そして、上記CPUが、上記各種記憶装置に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムを実行することによって、制御回路140の各機能を実現することができる。
【0159】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類等を用いることができる。
【0160】
なお、上記プログラムは、通信ネットワークを介して制御回路140に供給されてもよい。この通信ネットワークは、少なくとも上記プログラムを制御回路140に伝送可能であればよく、その種類はどのようなものであってもよい。例えば、通信ネットワークとしては、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。
【0161】
また、上記プログラムを制御回路140に供給するための伝送媒体としても、どのような種類のものを利用してもよい。例えば、伝送媒体として、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線によるものを利用してもよい。また、伝送媒体として、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE80211無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線によるものを利用してもよい。
【0162】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、この変更後の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施形態の変形例について説明する。
【0163】
(本発明の適用対象)
実施形態では、本発明をフリクション型のプロッタに適用する例を説明したが、本発明は、少なくとも何らかのシート状の加工対象媒体を引き出して加工する加工装置であれば、どのような加工装置にも適用することができ、その加工内容も印刷および切り出しに限らず、その加工対象媒体もロール紙に限らない。
【0164】
例えば、本発明は、キャリッジをX軸方向およびY軸方向の双方向に移動させることにより型を切り出す、いわゆるフラットベッド型のプロッタにも適用することができる。
【0165】
また、本発明は、シート状の用紙等を引き出し、引き出された用紙等に対して印刷を行う、インクジェットプリンタやレーザプリンタ等の各種印刷装置にも適用することができる。
【0166】
特に、一の印刷領域に単色の印刷を繰り返し行うことにより多色の印刷物を形成する印刷装置等、加工時間に比較的長い時間を要する加工を行う加工装置においては、環境による加工対象媒体の変形の影響を受け易いので、本発明は、このような加工装置への適用が有用である。
【0167】
(構成)
実施形態では、加工装置(プロッタ100)の内部に制御装置(制御回路140)が設けられている例を説明したが、加工装置の外部に制御装置が設けられている構成としてもよい。すなわち、加工装置の外部から、実施形態で説明したような加工装置の制御を行うようにしてもよい。
【0168】
(加工対象範囲)
実施形態では、本発明の加工対象範囲の一例としてページを用いたが、本発明の加工対象範囲は、ページに限定するものではなく、搬送処理および加工処理の処理単位となるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0169】
(オーバーフィード動作)
実施形態では、オーバーフィード動作において、1ページの加工の開始前に、1ページ目に続けて2ページ目を引き出すこととしたが、1ページ目を引き出してある程度の時間が経過した後に、2ページ目を引き出すようにしてもよい。
【0170】
また、実施形態では、1ページ目の加工の開始前に1ページ目および2ページ目の双方を引き出すこととしたが、少なくとも1ページ目の加工の終了前に2ページ目を引き出すようにすればよく、例えば、1ページ目の加工中に2ページ目を引き出すようにしてもよい。この場合、プロッタ100は、1ページ目をその加工中に搬送する搬送手段120とは別に、2ページ目を引き出す第2の搬送手段を有していれば、このような動作を実現することが可能となる。
【0171】
(フィード設定)
実施形態では、フィード設定として、事前フィード機能のオン/オフ、オーバーフィード機能のオン/オフ、事前フィードするページ数、ページ長、および待機時間をユーザが設定する例を説明した。
【0172】
これら各種設定のうち、少なくともいずれか1つは、予めプロッタ100に設定されている設定値(デフォルト値)をそのまま採用してもよく、用紙の種類や、ページ長、環境等の各種条件に応じて、自動的に設定されるようにしてもよく、入力された加工データに示されている加工内容に応じて、自動的に設定されるようにしてもよく、ページ毎に異なる設定値が設定されるようにしてもよい。
【0173】
<付記事項>
以上のように、本発明の実施形態に係る制御方法は、シート状のロール紙110を搬送して引き出す搬送手段120と、前記搬送手段120によって引き出された前記ロール紙110を加工する加工手段130とを備えているプロッタ100を制御する制御方法であって、前記加工手段130が前記ロール紙110のうちの一のページの加工を開始する前に、当該一のページを含む複数のページを事前に引き出し、事前に引き出されたページをさらに引き戻し、前記加工手段130による加工位置よりも手前の位置において退避させておくように、前記搬送手段120を制御する搬送制御工程と、前記ページが事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該ページの加工を開始するように、前記加工手段130を制御する加工制御工程とを含むことを特徴とする。
【0174】
本制御方法によれば、複数のページの各々について、当該ページを環境に馴染ませた後に、当該ページの加工を開始させることができる。これにより、当該ページの加工中に当該ページが環境の影響を受けて伸縮するようなことが無いので、プロッタ100による加工精度の低下を防止することができる。
【0175】
特に、本制御方法は、複数のページを事前に引き出しておくので、一のページを加工している間に、他のページを環境に馴染ませておくことができる。すなわち、一のページの加工と、他のページを環境に馴染ませておくこととを、並行して行うことができる。これにより、他のページを開始するタイミングをより早めることができるので、プロッタ100による加工時間の増加を抑制することができる。
【0176】
ここで、一のページを加工する際には、その妨げとならないように、事前に引き出された他のページをどこかに退避させておく必要があるが、本制御方法によれば、事前に引き出されたページをさらに引き戻すといった簡単な制御により、当該ページを加工手段130による加工位置よりも手前の位置に退避させておくことができる。
【0177】
このように、手前の位置に退避させておくことで、退避中、装置外部からの影響を受け難くなるため、ロール紙110を良好な状態に保つことができ、プロッタ100による加工精度の低下を防止することができる。
【0178】
さらに、本制御方法によれば、退避されたページは、引き出される前の状態に戻されることが無い。例えば、退避されたページがロール状に巻かれた部分から引き出されたものであれば、このページは、その退避中、ロール状に巻き戻されることが無い。このため、このページは、その退避中においても、引き続き外気にさらされて待機時間が消化されていくこととなる。
【0179】
上記制御方法において、前記搬送制御工程では、事前に引き出されたページをさらに引き戻し、前記加工手段130による加工位置よりも手前の位置において、折り重なることなくたるんだ状態で退避させておくように、前記搬送手段120を制御することが好ましい。
【0180】
シート状のロール紙110は、特に、折り重なった場合に、折り目やしわが生じ易い。そこで、この構成によれば、ページは、折り重なることなくたるんだ状態で退避されるので、この退避中に、折り目やしわが生じることが無い。
【0181】
上記制御方法において、前記搬送制御工程において事前に引き出された複数のページの各々について、当該ページが事前に引き出されてからの経過時間を計測する計測工程をさらに含み、前記加工制御工程では、前記複数のページの各々について、当該ページの前記経過時間が前記待機時間に到達している場合に、当該ページの加工を開始するように、前記加工手段130を制御することが好ましい。
【0182】
この構成によれば、複数のページの各々について経過時間を計測するので、複数のページの各々について、事前に引き出されてからの経過時間を正確に把握することができる。例えば、複数のページの引き出しに時間差がある場合や、ページ毎にその待機時間が異なるような場合であっても、複数のページの各々について、引き出されてからの経過時間を正確に把握することができる。これにより、複数のページの各々について、待機時間の過不足を生じさせることが無いため、加工中にロール紙110が変形してしまったり、無駄に長時間待機してしまったりするようなことも無い。
【0183】
上記制御方法において、前記待機時間をユーザに設定させる第1の設定工程をさらに含み、前記加工制御工程では、前記ページの前記経過時間がユーザによって設定された前記待機時間に到達している場合に、当該ページの加工を開始するように、前記加工手段130を制御することが好ましい。
【0184】
ロール紙110が環境に馴染むまでに必要な待機時間は、その環境の温度、湿度や、そのロール紙110の材質、厚み、長さ等の各種条件によって変動する。
【0185】
そこで、この構成によれば、これら各種条件を鑑みて、ユーザが適切な待機時間を設定することができる。これにより、待機時間の過不足を生じさせることが無いため、加工中にロール紙110が変形してしまったり、無駄に長時間待機してしまったりするようなことも無い。
【0186】
また、上記制御方法において、前記搬送制御工程で事前に引き出されるページの数をユーザに設定させる第2の設定工程をさらに含み、前記搬送制御工程では、ユーザによって設定された数のページを事前に引き出しておくように、前記搬送手段120を制御することが好ましい。
【0187】
事前に引き出されるページの数を多くすることで、より多くのページを早めに環境に馴染ませておくことができる。しかしながら、事前に引き出されるページの数が多い場合、事前に引き出されるロール紙110の全長も長くなる。この全長が長すぎると、引き出されたロール紙110が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまう場合がある。
【0188】
そこで、この構成によれば、引き出されたロール紙110の待機場所のスペースの形状や大きさに応じて、ユーザが適切なページ数を設定することができる。これにより、事前に引き出されるロール紙110の全長が長すぎてしまうようなことが無いため、引き出されたロール紙110が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまうことも無い。
【0189】
また、上記制御方法において、前記搬送制御工程で事前に引き出されるページの長さをユーザに設定させる第3の設定工程をさらに含み、前記搬送制御工程では、ユーザによって設定された長さのページを事前に引き出しておくように、前記搬送手段120を制御することが好ましい。
【0190】
事前に引き出されるページの数を最小限にしたとしても、そのページの長さが長すぎると、引き出されたロール紙110が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまう場合がある。
【0191】
そこで、この構成によれば、引き出されたロール紙110の待機場所のスペースの形状や大きさに応じて、ユーザが適切なページ長を設定することができる。これにより、ページの途中までしか事前引き出しを行うことができなくなる場合も生じてくるが、事前に引き出されるロール紙110の全長が長すぎてしまうようなことが無いため、引き出されたロール紙110が折り重なる等によって、折り目やしわが生じたり、用紙の搬送動作に不具合を生じさせてしまう等の問題が生じてしまうことも無い。
【0192】
また、本発明の実施形態に係る制御回路140は、シート状のロール紙110を搬送して引き出す搬送手段120と、前記搬送手段120によって引き出された前記ロール紙110を加工する加工手段130とを備えているプロッタ100を制御する制御回路140であって、前記加工手段130が前記ロール紙110のうちの一のページの加工を開始する前に、当該一のページを含む複数のページを事前に引き出し、事前に引き出されたページをさらに引き戻し、前記加工手段130による加工位置よりも手前の位置において退避させておくように、前記搬送手段120を制御する搬送制御部302と、前記ページが事前に引き出されてからの経過時間が所定の待機時間に到達している場合に、当該ページの加工を開始するように、前記加工手段130を制御する加工制御部310とを備えることを特徴とする。
【0193】
本制御回路140によれば、上記制御方法と同様の効果を奏することができる。
【0194】
また、本発明の実施形態に係るプロッタ100は、シート状のロール紙110を搬送して引き出す搬送手段120と、前記搬送手段120によって引き出された前記ロール紙110を加工する加工手段130と、上記制御回路140とを備えることを特徴とする。
【0195】
本プロッタ100によれば、上記制御回路140と同様の効果を自ら奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、加工対象媒体を加工する加工装置およびその制御に適用可能であり、特に、環境に応じて変形が生じ易いシート状の加工対象媒体を加工する加工装置およびその制御に有用である。
【符号の説明】
【0197】
100 プロッタ(加工装置)
110 ロール紙(加工対象媒体)
120 搬送手段
130 加工手段
140 制御回路(制御装置)
302 搬送制御部(搬送制御手段)
304 計測部(計測手段)
306 記憶部
308 判断部
310 加工制御部(加工制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7