(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力が優先的に供給される優先機器、及び、電力が優先的に供給される優先機器、及び、該優先機器以外の非優先機器の双方の電力消費機器が設置された建物において前記双方の電力消費機器の各々に電力を分配する電力分配システムであって、
前記双方の電力消費機器のうち、少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測するために設置された計測機器と、該計測機器と通信可能な情報処理サーバとを有し、
該情報処理サーバは、
前記建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を設定するとともに、前記双方の電力消費量の各々が前記所定期間中に消費する電力消費量の目標量を電力消費機器毎に設定する設定部と、
前記所定期間中、定期的に、前記計測機器に少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測させて、計測結果を示す計測データを取得する計測データ取得部と、
前記計測データを集計して、前記所定期間の開始時点から前記計測機器による直近の計測が実行された時点までの間に前記非優先機器が実際に消費した電力消費量の累積量を算出する累積量算出部と、
前記設定部が設定した前記非優先機器の前記所定期間中の前記目標量と、前記累積量算出部が算出した前記累積量との差を求め、該差に応じた処理を実行する処理実行部と、を備え、
前記設定部は、先払いした電力使用料金に応じた分となるように前記総目標量を予め設定した上で、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定し、
前記処理実行部は、前記処理として、前記差、及び、前記所定期間において前記非優先機器を運転することができる残り時間を示す電力消費時間であって前記差に相当する電力消費時間をユーザに提示するための提示処理を実行することを特徴とする電力分配システム。
前記処理実行部は、前記提示処理として、前記情報処理サーバと通信可能なユーザ端末に向けて、該ユーザ端末の表示画面に前記差に応じた情報を表示させるための情報表示データを送信する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の電力分配システム。
前記処理実行部は、前記差が0になると、前記所定期間の終了時点まで、前記非優先機器への電力の分配を中断する中断処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の電力分配システム。
前記設定部は、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計に、所定の安全率を乗じて得られる量が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電力分配システム。
電力が優先的に供給される優先機器、及び、該優先機器以外の非優先機器の双方の電力消費機器が設置された建物において前記双方の電力消費機器の各々に電力を分配する電力分配方法であって、
前記建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を設定するとともに、前記双方の電力消費量の各々が前記所定期間中に消費する電力消費量の目標量を電力消費機器毎に設定する設定工程と、
前記所定期間中、定期的に、計測機器を用いて、前記双方の電力消費機器のうち、少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測して、計測結果を示す計測データを取得する計測データ取得工程と、
前記計測データを集計して、前記所定期間の開始時点から前記計測機器による直近の計測が実行された時点までの間に前記非優先機器が実績に消費した電力消費量の累積量を算出する累積量算出工程と、
前記設定工程にて設定した前記非優先機器の前記所定期間中の前記目標量と、前記累積量算出工程にて算出した前記累積量との差を求め、該差に応じた処理を実行する処理実行工程と、を有し、
前記設定工程では、先払いした電力使用料金に応じた分となるように前記総目標量を予め設定した上で、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定し、
前記処理実行工程では、前記処理として、前記差、及び、前記所定期間において前記非優先機器を運転することができる残り時間を示す電力消費時間であって前記差に相当する電力消費時間をユーザに提示するための提示処理を実行することを特徴とする電力分配方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、住宅単位で電力消費量を管理し、上述したように、所定期間中に実際の電力消費量が目標値を超えた場合には屋内配電系統を断続して屋内への電力供給を制御するので、屋内配電系統を断続している間には、本来電力を供給すべき機器にすら電力が供給されなくなってしまう。
【0007】
一方、住宅内の電力消費量を管理する上で、住宅内において使用される電力消費機器毎に電力消費量を管理し、電力消費機器毎に運転状況を制御することも考えられる。ただし、機器個別に電力消費量を管理する際には、他の機器の運転状況を考慮しないと、住宅内の電力消費機器すべての電力消費量を合計した総電力電力量が削減されないこともあり、環境負荷の低減を期待することができない。また、仮に、一の機器について運転制御によって電力電力量を削減できたとしても、住宅内にある他の機器において電力が浪費された場合には、上記の電力削減が相殺されてしまうことになる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物全体における電力消費量の最適化を図りつつ、建物内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配する電力分配システム及び電力分配方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の電力分配システムによれば、電力が優先的に供給される優先機器、及び、電力が優先的に供給される優先機器、及び、該優先機器以外の非優先機器の双方の電力消費機器が設置された建物において前記双方の電力消費機器の各々に電力を分配する電力分配システムであって、前記双方の電力消費機器のうち、少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測するために設置された計測機器と、該計測機器と通信可能な情報処理サーバとを有し、該情報処理サーバは、前記建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を設定するとともに、前記双方の電力消費量の各々が前記所定期間中に消費する
電力消費量の目標量を電力消費機器毎に設定する設定部と、前記所定期間中、定期的に、前記計測機器に少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測させて、計測結果を示す計測データを取得する計測データ取得部と、前記計測データを集計して、前記所定期間の開始時点から前記計測機器による直近の計測が実行された時点までの間に前記非優先機器が実際に消費した電力消費量の累積量を算出する累積量算出部と、前記設定部が設定した前記非優先機器の前記所定期間中の前記目標量と、前記累積量算出部が算出した前記累積量との差を求め、該差に応じた処理を実行する処理実行部と、を備え、前記設定部は、
先払いした電力使用料金に応じた分となるように前記総目標量を予め設定した上で、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定し、前記処理実行部は、前記処理として、前記差
、及び、前記所定期間において前記非優先機器を運転することができる残り時間を示す電力消費時間であって前記差に相当する電力消費時間をユーザに提示するための提示処理を実行する、ことにより解決される。
【0010】
上記の電力分配システムでは、建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を予め設定するので、この総目標量に応じた供給量にて建物に電力を供給すれば、建物全体での環境負荷の低減を計画的に進めることが可能になる。そして、建物内に設置された優先機器及び非優先機器の各々の目標量を設定する際に、その合計量が上記の総目標量を超えないように設定するので、単に各電力消費機器の電力消費量を管理する場合に比して、建物内の各電力消費機器に対して合理的に電力を分配することが可能になる。具体的に説明すると、予め設定した建物全体の電力消費量の総目標量のうち、優先機器の運転に要する分を差し引いて得られる量の範囲内で、非優先機器の電力消費量の目標量を設定するので、優先機器及び非優先機器の各々への電力分配量が適切に設定されることになる。一方、本システムのユーザ(具体的には、建物の居住者)は、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差を確認することができるので、所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間を把握し、もって、ユーザの省エネルギー意識を喚起することが可能になる。
より詳しく説明すると、上記の差に相応する電力量を表示すると共に、差に相当する電力消費時間(所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間)が併せて表示されることで、ユーザにとって電力消費量の管理がし易くなり、以て、省エネ行動の実践を促進させることが可能となる。以上のように、本発明の構成により、建物全体における電力消費量の最適化を図りつつ、建物内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することが可能な電力分配システムが実現される。
そして、上述した本発明の効果は、建物全体の電力消費量の総目標量を先払いした電力使用料金に応じた分に設定した場合に、特に有効なものとなる。
【0011】
また、上記の電力分配システムにおいて、前記処理実行部は、前記提示処理として、前記情報処理サーバと通信可能なユーザ端末に向けて、該ユーザ端末の表示画面に前記差に応じた情報を表示させるための情報表示データを送信する処理を実行すると、好適である。
【0012】
そして、上記の電力分配システムにおいて、前記処理実行部は、前記差が0になると、前記所定期間の終了時点まで、前記非優先機器への電力の分配を中断する中断処理を実行すると、上述した本発明の効果が、有効に奏されるようになる。つまり、上記の電力分配システムでは、非優先機器が実際に消費した電力消費量の累積量が目標量を超えた場合、非優先機器の運転を強制的に終了する。これにより、優先機器の運転を継続させつつ、上記の総目標量を超えないように建物全体における電力消費量を管理することが可能になる。
【0013】
また、上記の電力分配システムにおいて、前記差が0よりも大きい所定量に達したことをユーザに報知するための報知処理が、前記ユーザ端末により行われる場合、前記処理実行部は、前記差が前記所定量に達した時点で、前記ユーザ端末に向けて、前記報知処理の実行を命じる信号を出力する処理を実行すると、より一層好適である。かかる構成により、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差が所定量に達したことをユーザに気付かせ、省エネルギー行動を促すことができる。
【0014】
また、上記の電力分配システムにおいて、前記情報処理サーバは、前記非優先機器の運転状況を調整するための制御部を備え、前記ユーザ端末が、前記制御部に前記非優先機器の運転状況を調整させる際にユーザが行う入力操作を受け付ける受け付け部と、該受け付け部による前記入力操作の受け付けの許否を決める許否決定部と、該許否決定部の決定結果を前記表示画面に表示する表示部とを有し、前記処理実行部は、前記差が0になると、前記ユーザ端末に向けて、前記許否決定部に前記受け付け部による前記入力操作の受け付けを拒絶させるための拒絶信号を送信する処理を実行すると、さらに好適である。かかる構成により、ユーザは、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差が0になったことを、ユーザ端末の表示画面にて確認することができる。また、ユーザ端末側では、非優先機器の運転状況を調整させるための入力操作を受け付けないようになるので、上記の差が0になってからの非優先機器の運転制限を適切に実現することができる。
【0015】
また、上記の電力分配システムにおいて、前記設定部は、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計に、所定の安全率を乗じて得られる量が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定すると、尚一層好適である。かかる構成によれば、予備や緊急時に備えて、建物内で使用できる電力量を一定量だけ確保しておくことが可能になる。
【0016】
さらに、前述した課題は、本発明の電力分配方法によれば、電力が優先的に供給される優先機器、及び、該優先機器以外の非優先機器の双方の電力消費機器が設置された建物において前記双方の電力消費機器の各々に電力を分配する電力分配方法であって、前記建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を設定するとともに、前記双方の電力消費量の各々が前記所定期間中に消費する
電力消費量の目標量を電力消費機器毎に設定する設定工程と、前記所定期間中、定期的に、計測機器を用いて、前記双方の電力消費機器のうち、少なくとも前記非優先機器の電力消費量を計測して、計測結果を示す計測データを取得する計測データ取得工程と、前記計測データを集計して、前記所定期間の開始時点から前記計測機器による直近の計測が実行された時点までの間に前記非優先機器が実績に消費した電力消費量の累積量を算出する累積量算出工程と、前記設定工程にて設定した前記非優先機器の前記所定期間中の前記目標量と、前記累積量算出工程にて算出した前記累積量との差を求め、該差に応じた処理を実行する処理実行工程と、を有し、前記設定工程では、
先払いした電力使用料金に応じた分となるように前記総目標量を予め設定した上で、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量の合計が前記総目標量を超えないように、前記双方の電力消費機器の各々の前記目標量を設定し、前記処理実行工程では、前記処理として、前記差
、及び、前記所定期間において前記非優先機器を運転することができる残り時間を示す電力消費時間であって前記差に相当する電力消費時間をユーザに提示するための提示処理を実行する、ことにより解決される。
上記の電力分配方法では、予め設定した建物全体の電力消費量の総目標量のうち、優先機器の運転に要する分を差し引いて得られる量の範囲内で、非優先機器の電力消費量の目標量を設定することになる。これにより、優先機器及び非優先機器の各々への電力分配量が適切に設定される。また、一方、ユーザは、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差を確認することができるので、所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間を把握し、もって、ユーザの省エネルギー意識を喚起することが可能になる。
より詳しく説明すると、上記の差に相応する電力量を表示すると共に、差に相当する電力消費時間(所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間)が併せて表示されることで、ユーザにとって電力消費量の管理がし易くなり、以て、省エネ行動の実践を促進させることが可能となる。以上の結果、建物全体における電力消費量の最適化を図りつつ、建物内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することが可能になる。
そして、上述した本発明の効果は、建物全体の電力消費量の総目標量を先払いした電力使用料金に応じた分に設定した場合に、特に有効なものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電力分配システム及び電力分配方法によれば、建物全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を予め設定するので、この総目標量に応じた供給量にて建物に電力を供給すれば、建物全体での環境負荷の低減を計画的に進めることが可能になる。そして、建物内に設置された優先機器及び非優先機器の各々の目標量を設定する際に、その合計量が上記の総目標量を超えないように設定するので、単に各電力消費機器の電力消費量を管理する場合に比して、建物内の各電力消費機器に対して合理的に電力を分配することが可能になる。また、本システムのユーザは、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差を確認することができるので、所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間を把握し、もって、ユーザの省エネルギー意識を喚起することが可能になる。
より詳しく説明すると、上記の差に相応する電力量を表示すると共に、差に相当する電力消費時間(所定期間における非優先機器を使用することができる残り時間)が併せて表示されることで、ユーザにとって電力消費量の管理がし易くなり、以て、省エネ行動の実践を促進させることが可能となる。以上の結果、建物全体における電力消費量の最適化を図りつつ、建物内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することが可能になる。
そして、上述した本発明の効果は、建物全体の電力消費量の総目標量を先払いした電力使用料金に応じた分に設定した場合に、特に有効なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る電力分配システムについて、
図1〜
図9を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力分配システムを搭載した建物の説明図である。
図2Aは、情報処理サーバの一例を示した図である。
図2Bは、情報処理サーバの構成を示す図である。
図3は、ユーザ端末の表示画面の一例を示した図である。
図4は、非優先機器への電力の分配が中断された場合の図である。
図5は、電力分配プロセスの説明図である。
図6は、建物全体の電力消費量の総目標量を設定する際の画面例である。
図7は、優先機器の電力消費量の目標量を設定する際の画面例である。
図8は、非優先機器の電力消費量の目標量を設定する際の画面例である。
図9は、電力消費量の目標量を設定する手順を示す図である。
図10は、処理実行部による処理の流れを示す図である。
【0020】
以下では、本実施形態に係る電力分配システム(以下、本システムS)を搭載した建物の一例としての住宅Hについて、主に、電力管理に関する機構について説明する。ただし、あくまでも住宅Hは建物の一例に過ぎず、本発明の電力分配システムは、他の建物、例えば、オフィスビル、工場内の建屋、店舗等においても利用可能なものである。
なお、以下の説明において、ユーザとは、住宅Hの居住者であり、換言すると、本システムSの利用者である。
【0021】
住宅Hは、
図1に示すように、商用電源CPからの電力を受け、分電盤1を通じて、住宅H内に設置された電力消費機器の各々に分配される。ここで、住宅H内に設置された電力消費機器について説明すると、主に2種類に大別され、一つの種類は、電力を優先的に供給すべき機器である優先機器である。優先機器は、常時電力を供給すべき機器(換言すると、常時運転状態にある機器)などが該当し、
図1に示す例では、冷蔵庫が該当する。
【0022】
もう一つの種類は、優先機器以外の電力消費機器たる非優先機器であり、ユーザの生活スタイルに応じて電力消費量が変動する機器などが該当し、
図1に示す例では、エアコン、照明、電気給湯器が該当する。なお、住宅H内に設置されている電力消費機器の各々が、優先機器及び非優先機器のうち、いずれの種類に該当するかについては、入居時に予め決定されていることとしてもよく、ユーザ側で任意に設定できることとしてもよい。また、新たに電力消費機器を購入した場合には、不図示の登録画面にて登録をするための入力をし、その入力に際して、優先機器・非優先機器の選択をすることとしてもよい。
【0023】
これらの電力消費機器には、不図示の配線を介して、商用電源CPからの電力(系統電力)が供給される。
一方、ユーザは、所定のモニタ(詳しくは後述する操作パッド20の表示画面21)を通じて、各機器の電力消費量を視認することができる。さらに、各機器の電力消費量を確認したユーザは、省エネルギー行動として、電力消費量の削減を図るべく、各機器の運転状況を調整することとなる。
【0024】
以上のような性能を住宅Hに具備させるために、本システムSが住宅Hに搭載されている。具体的に説明すると、本システムSは、個々の電力消費機器及び住宅H全体の電力消費量を所定の計測機器を介して計測する役割と、当該計測結果を視覚化してユーザに提示する役割と、ユーザからの命令に応じて各電力消費機器の運転状況を制御する役割を担っている。ここで、運転状況とは、電力消費機器が運転(停止)しているかどうか、運転している場合にはどのような運転条件(例えば、設定温度)にて運転しているのかを示す概念である。
【0025】
また、本システムSは、上述した役割の他、電力消費量について予め設定された目標量と実際の電力消費量との差を機器毎に管理し、差が所定値に達した電力消費機器については、一定期間電力の分配を遮断する役割をも担っている。
【0026】
以上の役割についてより詳細に説明するために、以下、本システムSの構成について
図1、2A及び2Bを参照しながら説明する。本システムSは、
図1に示すように、情報処理サーバとしての宅内サーバ2と、住宅H全体の電力消費量を計測するために設置された計測機器としてのスマートメータ3と、個々の電力消費量を計測するために機器毎に設置された計測機器としてのCTセンサ4と、を主たる構成要素として有する。
【0027】
宅内サーバ2は、住宅H内に設置されたシステムサーバであり、
図2Aに示すようにCPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ(以下、HDD)13、及び、通信用インタフェース14を備えており、これら各部の協働により上述の役割を実現するものである。また、宅内サーバ2のメモリ12及びHDD13には、宅内サーバ2に上述の役割を果たさせるためのプログラムが記憶されている。なお、本実施形態のように、上述の役割を実現するための装置である情報処理サーバを住宅H内に設置することとしてもよいが、これに限定されるものではなく、住宅Hの外(例えば、住宅Hの管理会社)に設定されていることとしてもよい。
【0028】
宅内サーバ2は、宅内ネットワークN1を介して、スマートメータ3やCTセンサ4と通信可能に接続されている。そして、宅内サーバ2は、これらの計測機器に、定期的に電力消費量を計測させて、計測結果を示す計測データを取得する。
なお、本実施形態において、スマートメータ3は、プリペイド式の電力計であり、
図1に示すように、イーサネット(登録商標。以下、同じ)N2を通じて、例えば、電力会社EC(商用電源CPの管理会社)に設置されたセンターサーバ5と通信可能に接続されている。かかるスマートメータ3が住宅Hに設置されていることにより、電力使用料金の先払いをした上で、住宅H全体での電力消費量を、先払いした料金に応じた範囲内になるように管理することが可能になる。
【0029】
具体的に説明すると、ユーザは、住宅H内に設置された不図示のカードリーダを通じて、電力会社ECに、所定期間(例えば、月初から月末までの期間)分の電力消費量(予想量)に応じた電力使用料金を上記所定期間の前に支払うことができる。電力会社ECは、所定期間中、先払いされた電力使用料金に相当する電力消費量を上限として、商用電源CPからの電力(系統電力)を供給する。
【0030】
一方、スマートメータ3は、系統電力を住宅H内に引き込むために敷設された配電ラインL中に設置され、住宅H全体での電力消費量を計測する。スマートメータ3による計測結果は、電子データ(計測データ)として、宅内ネットワークN1を通じて宅内サーバ2に向けて伝送されるとともに、イーサネットN2を通じて電力会社ECのセンターサーバ5に向けて伝送される。
【0031】
そして、仮に、所定期間中において住宅H全体での電力消費量が、先払いした電力使用量金に応じた量を超えた場合、電力会社ECは、ユーザに対して電力使用量金の追加支払いを命じ、命令に応じなかった場合には住宅Hへの送電を一時的に中断する。
【0032】
ところで、宅内サーバ2は、宅内ネットワークN1を通じて、住宅H内の電力消費機器、及び、ユーザが住宅H内において使用する操作パッド20と通信可能である。そして、ユーザが操作パッド20を通じて各電力消費機器の運転状況を調整するための入力操作を実行すると、宅内サーバ2が、当該入力操作に応じて各電力消費機器を制御するようになる。すなわち、本システムSでは、各電力消費機器の制御が宅内サーバ2を経由して行われる。
【0033】
具体的に説明すると、ユーザにより操作される操作パッド20は、タッチパネル型のユーザ端末であり、具体的にはタブレット端末(携帯情報端末)である。この操作パッド20の表示画面21を通じて、ユーザは、各機器の運転状況や電力消費量を確認することが可能でき、さらに、各機器の運転状況を調整することが可能である。
【0034】
図3を参照しながら、操作パッド20の表示画面21について、より具体的に説明する。
操作パッド20は、
図3に示す管理ウィンドウWを表示画面21に表示し、当該管理ウィンドウWを通じて、各機器の運転状況や電力消費量等を確認することができる。なお、本実施形態では、
図3に示すように、管理ウィンドウWが住宅H内の電力消費機器の数にて分割されているので、ユーザは、機器毎に運転状況や電力消費量等を確認することができる。さらに、管理ウィンドウWには、住宅H全体の電力消費量等を表示するスペースが設けられているので、ユーザは、管理ウィンドウWを通じて、住宅H全体についても電力消費量等を確認することができる。
【0035】
一方、管理ウィンドウWには、電力消費機器の運転状況を変えるための操作ボタンが設けられており、ユーザは、操作パッド20の表示画面21のうち、上記操作ボタンが表示された領域を押すことにより、電力消費機器の運転状況の調整を行うことができる。換言すると、操作パッド20は、表示画面21を通じてユーザの入力操作を受け付けることができる。
【0036】
より具体的に説明すると、
図3に示すように、管理ウィンドウWには、各電力消費機器の発停状況を示すカラムC1と、運転条件(
図3に示すケースでは設定温度)を示すカラムC2が表示されている。また、管理ウィンドウWには、電力消費機器の発停を切り替えるためのボタン(以下、発停切り替えボタン)B1と、運転条件等を変更するためのボタン(以下、設定変更ボタン)B2a、B2bとが、機器毎に設けられている。これらのボタンB1、B2a、B2bをユーザが押すことにより、操作パッド20は、ユーザの入力操作を受け付けるようになる。その後、操作パッド20は、ユーザの入力操作に応じた信号を宅内サーバ2に向けて出力し、当該信号を受信した宅内サーバ2は、当該信号に基づいて、ユーザの入力操作の対象とされた電力消費機器の運転状況を制御する。
【0037】
なお、本実施形態では、住宅Hの電力消費機器のうち、所定の要件を満たした機器については強制的に運転を中断し、操作パッド20においても、当該機器の運転状況を調整するために行うユーザの入力操作を受け付けないようになる。具体的に説明すると、
図4に示すように、管理ウィンドウW中、所定の要件を満たした機器の運転状況を調整するためのボタンB1、B2a、B2bが非表示となる。かかる処理に関しては後に詳述する。
【0038】
以上のように、本実施形態では、住宅H内にある全ての電力消費機器について、運転状況の確認や切り替えを1台の操作パッド20に統合されており、ユーザは、操作パッド20を通じて、住宅H内の電力消費機器すべてについて、運転状況の確認や切り替えを行うことが可能である。ただし、これに限定されるものではなく、従来型のリモコンや操作パネルのように、運転状況の確認や切り替えを行うためのインタフェースが機器毎に用意されていることとしてもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、操作パッド20がタブレット端末(携帯情報端末)である例について説明したが、これに限定されるものではなく、PCやスマートフォン、固定式の操作パネル等であってもよい。
【0040】
ところで、本システムSでは、前述したように、電力消費量について予め設定された目標量と実際の電力消費量との差を機器毎に管理し、差が所定値に達した機器については、一定期間電力の分配を遮断することになっている。かかる機能を説明するために、本システムSの構成について、機能面から改めて説明する。
【0041】
宅内サーバ2は、
図2Bに示すように、構成要素として、設定部15Aと、計測データ取得部15Bと、累積量算出部15Cと、処理実行部15Dと、制御部15Eとを有する。
以下、宅内サーバ2の各部について説明する。
【0042】
設定部15Aは、宅内サーバ2のCPU11、メモリ12、HDD13、通信用インタフェース14及び目標設定用のプログラムにより構成され、住宅H内の各電力消費機器の所定期間中に消費する電力消費量の目標量を予め電力消費機器毎に設定するものである。ここで、住宅H内の各電力消費機器としては、前述したように、優先機器と非優先機器とがあり、本実施形態に係る設定部15Aは、優先機器及び非優先機器の双方について、電力消費量の目標量を設定する。
【0043】
なお、本実施形態では、所定期間中に消費される電力消費量の目標量として、1ヶ月間に消費される電力消費量の目標量を設定する。より具体的に説明すると、ユーザが所定の時期(例えば、月初に該当する日の所定時刻)に操作パッド20を通じて上記の目標量を設定するための操作(目標設定操作)を行うことにより、設定部15Aは、当該操作に従って、当月の目標量を機器毎に設定する。なお、目標量の設定周期については、1ヶ月に限定されるものではなく、1日や1週間など、任意に設定することが可能である。
【0044】
また、本実施形態に係る設定部15Aは、優先機器及び非優先機器の双方の各々に対して当月の電力消費量の目標量を設定するにあたり、住宅H全体で当月中に消費される電力消費量の総目標量を予め設定する。すなわち、本実施形態では、住宅H全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を予め設定した上で、双方の電力消費機器の各々の目標量を設定する。なお、住宅H全体で消費される電力消費量の総目標量についても、ユーザが所定の時期に操作パッド20を通じて行う目標設定操作に従って設定される。
【0045】
さらに、本実施形態では、住宅H全体で当月中に消費される電力消費量の総目標量を設定してから、優先機器及び非優先機器の双方の各々に対して当月の電力消費量の目標量を設定する際には、双方の電力消費機器の各々の目標量の合計が総目標量を超えないように、双方の電力消費機器の各々の目標量を設定する。なお、設定部15Aによる目標量の設定手順については、後に詳しく説明する。
【0046】
以上のように各電力消費機器の目標量及び住宅H全体での総目標量が設定されると、これらの目標量を示すデータが宅内サーバ2で生成され、当該データは、宅内ネットワークN1を通じて操作パッド20に受信される。そして、操作パッド20側では、受信したデータを展開し、表示画面21(より詳しくは、管理ウィンドウW)に各々の目標量が表示されるようになる(
図3参照)。
【0047】
計測データ取得部15Bは、宅内サーバ2のCPU11、メモリ12、HDD13、通信用インタフェース14及び計測実行用のプログラムにより構成され、当月中、定期的に、スマートメータ3に住宅H全体の電力消費量を計測させて、計測結果を示す計測データを取得する。また、計測データ取得部15Bは、同様に、CTセンサ4に住宅H内の各電力消費機器の電力消費量を計測させて、計測結果を示す計測データを機器毎に取得する。計測データ取得部15Bが取得した計測データは、メモリ12に一時的に記憶された後、HDD13に電力消費機器単位で蓄積される。
【0048】
なお、計測データ取得部15Bによる計測データ取得工程は、所定時間毎に行われ、本実施形態では1時間毎に行われるものとする。ただし、これに限定されるものではなく、計測周期については、任意に設定することが可能である。
【0049】
累積量算出部15Cは、宅内サーバ2のCPU11、メモリ12、HDD13及び累積量算出用プログラムにより構成され、蓄積された計測データを読み出して、当該計測データを集計して、当月の開始時点(具体的には、月初に相当する日の午前0時)からの電力消費量の累積量を電力消費機器毎に算出するものである。すなわち、累積量算出部15Cは、当月の開始時点から、CTセンサ4による直近の計測が実行された時点(以下、直近の計測データ取得工程の実行時点)までの間に実際に消費した電力消費量の累積量を算出するものである。
【0050】
なお、累積量算出部15Cによる累積量算出工程は、定期的に行われ、本実施形態においては、計測データ取得工程が実行される度に行われることになっている。ただし、これに限定されるものではなく、累積量の算出を行う周期については、任意に設定することが可能である。
【0051】
さらに、本実施形態において、累積量算出部15Cは、住宅H内の各電力消費機器についての累積量を算出するとともに、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点まで間に実際に住宅H全体で消費された電力消費量の総累積量を算出する。そして、各電力消費機器及び住宅H全体について、当月における電力消費量の累積量が算出されると、これらの累積量を示すデータが宅内サーバ2で生成され、当該データは、宅内ネットワークN1を通じて操作パッド20に受信される。操作パッド20側では、受信したデータを展開し、表示画面21(より詳しくは、管理ウィンドウW)に各々の累積量が表示されるようになる(
図3参照)。
【0052】
処理実行部15Dは、宅内サーバ2のCPU11、メモリ12、HDD13、通信用インタフェース14及び処理実行用プログラムにより構成され、設定部15Aが設定した当月の電力消費量の目標量と、累積量算出部15Cが算出した当月の電力消費量の累積量との差を求め、当該差に応じた処理を実行する。
【0053】
ここで、目標量については、前述したように、住宅H内の電力消費機器毎に設定されるとともに、住宅H全体での電力消費量に対しても設定される。同様に、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点までの累積量についても、前述したように、電力消費機器毎に算出されるとともに、住宅H全体での電力消費量について算出される。このため、処理実行部15Dが上記の差を求める際には、対応する目標量と累積量との差を求めることになる。例えば、当月における住宅H全体の電力消費量の目標量から、当月における住宅H全体の電力消費量の累積量を差し引くことにより、住宅H全体についての差が求められる。
【0054】
そして、処理実行部15Dは、求めた差のうち、非優先機器の各々に対して求めた差に応じて、所定の処理を実行する。具体的に説明すると、処理実行部15Dは、処理として、上記の差をユーザに提示するための提示処理を実行し、特に本実施形態では、差の大きさを3段階に分けて各段階に対する処理を実行する。以下、各段階の処理について説明する。
【0055】
先ず、第1段階の処理について説明する。
第1段階の処理は、上述した提示処理に該当し、非優先機器に対して求めた差が前述の目標量から所定量(詳しくは、第2段階の処理用に設定された量)までの範囲にある場合、操作パッド20に向けて、操作パッド20の表示画面21に上記の差に応じた情報を表示させるための情報表示データを送信する処理である。操作パッド20は、上記の情報表示データを受信すると、当該データを展開して、非優先機器に対して求めた差に相当する電力量を管理ウィンドウW上の対応領域(非優先機器についての電力消費量を表示する領域)に表示する。かかる表示を確認することにより、ユーザは、非優先機器に対して設定した当月の電力消費量の目標量と比較して、当月中に非優先機器の運転にて消費することが可能な電力量の残りを把握することが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、差に相当する電力量を表示するとともに、差に相当する電力消費時間(換言すると、当月において電力消費機器を運転することができる残り時間)が併せて表示される(
図3参照)。換言すると、上記の情報表示データには、非優先機器に対して求めた差に相当する電力量と、当該差に相当する電力消費時間とを操作パッド20の表示画面21に併せて表示するためのデータが組み込まれていることになる。なお、差に応じた情報としては、上述した情報(具体的には、差に相当する電力量及び電力消費量)以外のものであってもよく、例えば、上記の差に相当する金額(電気料金)、あるいは、上記の差に応じた記号、グラフ又はイラストであってもよい。
【0057】
さらに、本実施形態において、処理実行部15Dは、非優先機器に対して電力消費量の目標量と累積量(実績量)との差を求めるとともに、優先機器及び住宅H全体について、同様に差を求めることになっている。上記の情報表示データには、非優先機器に対して求めた差と同様、優先機器及び住宅H全体に対して求めた差についても、上記の情報(具体的には、差に相当する電力量及び電力消費時間)を表示するためのデータが組み込まれている。
【0058】
次に、第2段階の処理について説明する。
第2段階の処理は、上述した提示処理に該当し、非優先機器に対して求めた差が所定量に達した時点で、宅内ネットワークN1を通じて操作パッド20に向けて、所定の信号を出力する信号出力処理である。そして、操作パッド20側では、上記の信号出力処理により出力された信号を受信すると、上記の差が所定量に達したことをユーザに報知するための報知処理が行われるようになる。
【0059】
より具体的に説明すると、ある非優先機器にて当月中に実際に消費した電力消費量の累積量が、同機器について設定された当月の目標量に近付いたことにより、目標量と実績量との乖離(すなわち、差)が所定量よりも小さくなった場合、その事をユーザに報知するために、処理実行部15Dは、操作パッド20に対して、報知処理の実行を命じる信号を出力する。
【0060】
なお、上記信号出力処理の実行時点を規定するための設定量(すなわち、上述の所定量)は、0よりも大きい量であり、目標量を基準として設定されるのが望ましく、例えば、目標量の5〜20%の範囲で設定するのが望ましい。ただし、かかる範囲は、あくまでも一例に過ぎず、0よりも大きい量である限り、任意の量に設定可能である。また、操作パッド20側で行われる報知の方法としては、警告音やランプ点灯、その他、報知手段として好適なものであれば、制限なく利用することが可能である。
【0061】
最後に、第3段階の処理について説明する。
第3段階の処理は、非優先機器に対して求めた差が0に達した時点で、当該非優先機器への電力供給回路を遮断し、当月の終了時点まで、当該非優先機器への電力の分配を中断する中断処理を実行する。
【0062】
より具体的に説明すると、処理実行部15Dは、ある非優先機器にて当月中に実際に消費した電力消費量の累積値が目標量に達して上記の差が0になると、ある非優先機器への電力供給回路に設けられた遮断スイッチ(不図示)を作動して、当該電力供給回路を遮断し、ある非優先機器の運転を強制的に中止する。その後、上記の遮断スイッチは、当月の終了時点まで入状態のまま保持され、この結果、ある非優先機器への電力分配の中断は、当月の終了時点まで維持されることになる。
【0063】
なお、本実施形態では、優先機器に対して求めた差が0に達したとしても、当該優先機器への電力の分配を中断せずに継続することになっている。これは、冷蔵庫等の優先機器については、運転を継続させる必要性の高いからである。ただし、これに限定されるものではなく、優先機器についても、上記の差が0に達した時点で電力の分配を中止することとしてもよい。
【0064】
また、本実施形態において、処理実行部15Dは、非優先機器に対して求めた差が0に達すると、第3段階の処理として、上述した中断処理に加え、当該非優先機器の運転状況を調整するためにユーザが行う入力操作を制限する処理を実行する。
【0065】
より具体的に説明すると、宅内サーバ2は、
図2Bに示すように、制御部15Eを構成要素として有している。この制御部15Eは、CPU11、メモリ12、HDD13、通信用インタフェース14及び処理実行用プログラムにより構成され、操作パッド20から出力される信号(具体的には、電力消費機器の運転状況を調整するためにユーザが行う入力操作に応じた信号)に基づいて、非優先機器を含む電力消費機器の各々の運転状況を調整する。
【0066】
一方、操作パッド20側には、
図2Bに示すように、表示画面21を通じてユーザが行う入力操作を受け付ける受け付け部22Aと、受け付け部22Aによる入力操作の受け付けの許否を決める許否決定部22Bと、許否決定部22Bの決定結果を表示画面21に表示する表示部22Cとを有する。
【0067】
受け付け部22Aは、許否決定部22Bが認める場合に限り、宅内サーバ2の制御部15Eに非優先機器の運転状況を調整させる際にユーザが行う入力操作を受け付け、許否決定部22Bが拒絶する場合には、上記入力操作を受け付けない。そして、受け付け部22Aによる入力操作の受け付けの許否に関して、許否決定部22Bが決定を下すと、その決定結果は、表示部22Cにより表示画面21に表示される。具体的に説明すると、入力操作の受け付けを認める決定をした場合には、前述した発停切り替えボタンB1や温度設定ボタンB2a、B2bを表示画面21に表示させるのに対し、受け付けを拒絶する決定をした場合には、これらのボタンB1、B2a、B2bを非表示とする(
図4参照)。
【0068】
そして、宅内サーバ2の処理実行部15Dは、ある非優先機器に対して求めた差が0になると、操作パッド20に向けて、上記入力操作の受け付けを許否決定部22Bに拒絶させるための拒絶信号を送信する処理を実行する。これにより、ある非優先機器(差が0になった機器)について、ユーザの入力操作の受け付けが制限されることになる。
分かり易く説明すると、上記の拒絶信号を受信した操作パッド20側では、許否決定部22Bが、ある非優先機器の運転状況を調整する際に行われるユーザの入力操作に対して、受け付け部22Aによる受け付けを拒絶する決定をする。この決定に則って、表示部22Cは、ある非優先機器用の発停切り替えボタンB1や温度設定ボタンB2a、B2bを非表示とする。この結果、ある非優先機器に対するユーザの入力操作については、受け付け不能となる。
【0069】
以上のように、差が0になった非優先機器については、運転状況を調整するためのユーザの入力操作を受け付け不能な状態になり、操作パッド20の表示画面21には当該機器用の発停切り替えボタンB1や温度設定ボタンB2a、B2bが表示されなくなる。かかる状態は当月の終了時点まで継続され、かかる間にユーザが操作パッド20の表示画面21を確認すれば、入力操作を受け付け不能な非優先機器(すなわち、上記のボタンB1、B2a、B2bが非表示となっている非優先機器)については、上記の差が0になったことを把握することができるようになる。
【0070】
なお、本実施形態において、上記の差が0になった時点で運転状況を調整するためのユーザの入力操作を受け付けることができなくなる機器は、非優先機器のみであることとした。ただし、これに限定されるものではなく、優先機器についても、上記の差が0に達した時点で運転状況を調整するためのユーザの入力操作を受け付け不能とすることとしてもよい。
【0071】
そして、第3段階の処理が行われた場合、すなわち、上記の差が0になった非優先機器が生じた場合には、上述したように、当該非優先機器への電力分配が中断され、かつ、当該非優先機器の運転状況を調整するためのユーザの入力操作を受け付けない状態が、当月の終了時点まで維持される。一方、当月が終了して次期の月に入ると、上記の状態は解除され、電力分配が中断されていた非優先機器への電力分配が再開され、当該非優先機器の運転状況を調整するためのユーザの入力操作を受け付けることが再び可能になる。
【0072】
以上の構成の下、本システムSでは、前述したように、電力消費量について予め設定された目標量、実際の電力消費量の累積量、及び両者の差を機器毎に確認することができ、差が0に達した非優先機器については、それ以降、当月が終了するまでの間、電力の分配が遮断されることになっている。これにより、住宅H全体における電力消費量の最適化を図りつつ、住宅H内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することが可能なシステムが実現されることになる。
【0073】
より具体的に説明すると、住宅H全体で当月中に消費される電力消費量の総目標量を予め設定し、この総目標量に応じて供給される電力量を住宅H内で分配すれば、住宅H全体での環境負荷の低減を計画的に進めることが可能になる。
【0074】
また、住宅H内に設置された優先機器及び非優先機器の各々の目標量を設定する際に、その合計量が上記の総目標量を超えないように設定するので、他の機器の運転状況を考慮せずに各電力消費機器の電力消費量を管理する場合に比して、住宅H内の各電力消費機器に対して合理的に電力を分配することが可能になる。つまり、本実施形態では、予め設定した住宅H全体の電力消費量の総目標量のうち、優先機器の運転に要する分を差し引いて得られる量の範囲内で、非優先機器の電力消費量の目標量を設定することになる。この結果、優先機器及び非優先機器の各々への電力分配量が適切に設定されることになる。
【0075】
さらに、本システムSがユーザに、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差を提示することにより、ユーザは、当該差を確認して、当月における非優先機器を使用することができる残り時間を把握するようになり、もって、ユーザの省エネルギー意識を喚起することが可能になる。
【0076】
以上のような作用により、本システムSでは、住宅H全体における電力消費量の最適化を図りつつ、住宅H内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することが可能である。また、本実施形態のように、スマートメータ3が設置されており、当月における住宅H全体での電力消費量の上限が、先払いした電力使用料金に応じた分の量に設定された場合には、上述の効果は特に有効なものとなる。
【0077】
すなわち、住宅H全体の電力消費量の総目標量を設定した上で当該総目標量に応じた電力使用料金を先払いした場合には、上記の総目標量が、当月に住宅Hに対して供給される電力量の上限となるので、優先機器及び非優先機器の各々の目標量を設定する際に、その合計量が上記の上限を超えないように設定すれば、住宅H全体の電力消費量を上記の上限の範囲内で抑えつつ、優先機器の運転に要する電力消費量を確保しておくことができる。
【0078】
次に、以上の効果を奏する本システムSによる電力分配方法について、
図5〜
図10を参照しながら説明する。
本システムSによる電力分配方法は、優先機器及び非優先機器の双方の電力消費機器が設置された住宅Hにおいて双方の電力消費機器の各々に電力を分配する電力分配方法であって、本システムSによる電力分配プロセスにおいて採用されている。当該プロセスは、
図5に示す順序にて進められ、先ず、宅内サーバ2による設定工程から始まる(S001)。
【0079】
設定工程S001は、住宅H全体で所定期間中に消費される電力消費量の総目標量を設定するとともに、優先機器及び非優先機器双方の電力消費量の各々が同期間中に消費する電力消費機器毎に設定する工程であり、本実施形態では、1ヶ月中に消費する電力消費量の目標量(当月の目標量)を設定する。
【0080】
そして、本実施形態では、当月の住宅H全体での総目標量を予め設定した上で、各電力消費機器の目標量の合計が上記の総目標量を超えないように、各電力消費機器の目標量を設定する。
【0081】
特に、本実施形態では、各電力消費機器の目標量の合計に、所定の安全率を乗じて得られる量が上記の総目標量を超えないように、各電力消費機器の目標量を設定する。これにより、予備や緊急時に備えて、住宅H内で使用できる電力量を一定量だけ確保しておくことが可能になる。例えば、万一、各電力消費機器の電力消費量の累積量の合計が当初の想定量を超えた場合であっても、当該想定量に安全率を乗じて得られる量が目標量を超えない量に設定されていれば、優先機器の運転に要する電力量を確保しておくことが可能になる。なお、本実施形態では、各電力消費機器の目標量の合計に所定の安全率を乗じることにより、電力消費量の余剰分を確保することとしているが、これに限定されるものではなく、上記の合計に一定量の電力消費量を上乗せする(加える)ことによって余剰分を確保するとしてもよい。
【0082】
設定工程S001は、月初の所定時刻にユーザが操作パッド20を通じて上記の目標量を設定するための操作(目標設定操作)を行うことによって、設定部15Aによって実行される。本実施形態では、前述したように、設定工程S001において、先ず、当月の住宅H全体での電力消費量の総目標量を設定し、その後、当月の各電力消費機器の電力消費量の目標量を機器毎に設定する。
【0083】
設定工程S001にて各目標量を設定する際の手順について、
図6〜
図9を参照しながら説明する。先ず、ユーザは、所定の操作を行うことによって、操作パッド20の表示画面21に、住宅H全体の電力消費量の総目標量を設定するためのウィンドウ(
図6に示した目標量設定ウィンドウWm1)を表示させる。この目標量設定ウィンドウWm1には、前期の月(先月)において住宅H全体で消費された電力消費量の累積量(実績量)が表示されているとともに、当月の総目標量を設定するためのボタン(以下、総目標量設定ボタン)B3a、B3b、B3cが設けられている。
【0084】
そして、上記の総目標量設定ボタンB3a、B3b、B3cの中のいずれか一のボタンがユーザによって押されると、その押されたボタンに応じた信号が操作パッド20から宅内サーバ2に向けて送信される。宅内サーバ2が上記の信号を受信すると、設定部15Aが、上記の信号に基づいて当月の総目標量を設定するようになる(
図9においてS011)。具体的に説明すると、設定部15Aは、総目標量設定ボタンB3a、B3b、B3cのうち、ユーザが押したボタンに表示されている増減率(
図6に示す例では、+10%、0%、−10%)に相当する分だけ、前期の月(先月)の電力消費量の累積量に上乗せして得られる量を総目標量として設定する。
【0085】
以上のように、本実施形態では、前期の月(先月)における住宅H全体での電力消費量の累積量に対する増減率を、操作パッド20(より具体的には、表示画面21上の総目標量設定ボタンB3a、B3b、B3c)を通じてユーザに選択させて、当該選択結果に基づいて総目標量を設定する。ただし、上記の手順は、総目標量を設定する手順の一例に過ぎず、それ以外の手順、例えば、総目標量に相当する数値を直接入力する等の方法により総目標量を設定することとしてもよい。
【0086】
住宅H全体の電力消費量の総目標量を設定した後には、優先機器の電力消費量の目標量を設定するためのウィンドウ(
図7に示した目標量設定ウィンドウWm2)が、操作パッド20の表示画面21に表示される。この目標量設定ウィンドウWm2には、前期の月(先月)において優先機器が消費した電力消費量の累積量(実績量)が表示されているとともに、当月の目標量を設定するためのボタン(以下、目標量設定ボタン)B4a、B4b、B4cが設けられている。そして、上記の目標量設定ボタンB4a、B4b、B4cの中のいずれか一のボタンがユーザによって押されると、その押されたボタンに応じた信号が操作パッド20から宅内サーバ2に向けて送信される。以降、住宅H全体の電力消費量の総目標量を設定する際の手順と同様の手順により、優先機器の電力消費量の目標量が設定される(
図9においてS012)。
【0087】
なお、住宅H内に優先機器が複数設置されている場合、電力消費量の目標量の設定は、優先機器別に行われ、具体的に説明すると、操作パッド20の表示画面21に表示される目標量設定ウィンドウWm2が優先機器毎に切り替わる。そして、すべての優先機器に対して当月の電力消費量の目標量が設定された時点で、優先機器についての目標量の設定が完了する。
【0088】
優先機器の電力消費量の目標量を設定した後には、非優先機器の電力消費量の目標量を設定するためのウィンドウ(
図8に示した目標量設定ウィンドウWm3)が、操作パッド20の表示画面21に表示される。この目標量設定ウィンドウWm3には、前期の月(先月)において非優先機器が消費した電力消費量の累積量(実績量)が表示されているとともに、当月の目標量を設定するためのボタン(以下、目標量設定ボタン)B5a、B5b、B5cが設けられている。
【0089】
そして、上記の目標量設定ボタンB5a、B5b、B5cの中のいずれか一のボタンがユーザによって押されると、その押されたボタンに応じた信号が操作パッド20から宅内サーバ2に向けて送信される。宅内サーバ2が上記の信号を受信すると、設定部15Aが、目標量設定ボタンB5a、B5b、B5cのうち、ユーザが押したボタンに表示されている増減率に相当する分だけ、前期の月(先月)の電力消費量の累積量に上乗せして得られる量を仮の目標量として算出する(
図9においてS013)。なお、住宅H内に非優先機器が複数設置されている場合、仮の目標量の算出は、非優先機器別に行われる。
【0090】
非優先機器に対する仮の目標量が算出された後、宅内サーバ2の設定部15Aは、仮の目標量(非優先機器が複数設置されている場合には、仮の目標量を合算した合算量)と、優先機器の電力消費量の目標量との合計を求める。そして、当該合計が住宅H全体の電力消費量の総目標量を超えた場合(
図9においてS014でYes)、設定部15Aは、エラーメッセージを操作パッド20の表示画面21に表示させるためのデータを生成して、操作パッド20に向けて送信する。当該データを受信した操作パッド20側では、上記のエラーメッセージを表示画面21に表示し、ユーザに対して、入力操作のやり直しを要求する。
【0091】
さらに、本実施形態において、設定部15Aは、上記の合計に所定の安全率を乗じ、その積として得られる量が住宅H全体の目標量を超えた場合(
図9においてS015でYes)、上記のケースと同様に、エラーメッセージを操作パッド20の表示画面21に表示させるためのデータを生成して送信する。他方、上記の合計に所定の安全率を乗じて得られる量が住宅H全体の総目標量を超えない場合には、非優先機器に対して算出した仮の目標量を、正規の目標量として採用し、以って、非優先機器に対する当月の目標量を設定する(
図9においてS016)。
【0092】
以上までに説明してきた一連の手順により、当月における住宅H全体の電力消費量の総目標量、及び、当月における各電力消費機器の電力消費量の目標量が設定される。なお、設定部15Aは、設定された各目標量を操作パッド20の表示画面21に表示するためのデータを生成し、操作パッド20に向けて送信する。当該データを受信した操作パッド20側では、当該データを解析して、表示画面21(より具体的には、管理ウィンドウW)に各目標量を表示する処理が実行される。
【0093】
その後、当月中、商用電源CPからの電力が各電力消費機器に分配され、各電力消費機器は、宅内サーバ2の制御部15Eによる制御の下、ユーザが操作パッド20を通じて調整した運転条件にて運転するようになる。
【0094】
一方、当月中には、計測データ取得部15Bによる計測データ取得工程が定期的に実行される(S002)。本工程S002では、スマートメータ3を用いて住宅H全体の電力消費量を計測して、当該計測結果を示す計測データを取得するとともに、CTセンサ4を用いて各電力消費機器の電力消費量を計測して、当該計測結果を示す計測データを取得する。なお、取得された計測データは、メモリ12に一時的に記憶された後に、HDD13に機器ごとに蓄積される。
【0095】
当月中には、また、累積量算出工程が定期的に実行され(S003)、特に本実施形態では、計測データ取得工程S002が実行される都度、本工程S003が実行される。本工程S003では、宅内サーバ2の累積量算出部15Cが、計測データを集計して、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点までの間に各電力消費機器が実際に消費した電力消費量の累積量を機器毎に算出する。また、本工程S003では、計測データを集計して、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点までの間に住宅H全体で実際に消費された電力消費量の総累積量を算出する。
【0096】
そして、各電力消費機器及び住宅H全体について、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点までの間の電力消費量の累積量が算出されると、これらの累積量を示すデータが宅内サーバ2で生成され、当該データは、宅内ネットワークN1を通じて操作パッド20に受信される。操作パッド20側では、受信したデータを展開し、表示画面21(より詳しくは、管理ウィンドウW)に各々の累積量が表示されるようになる。
【0097】
さらに、本実施形態では、累積量算出工程S003が実行される度に、宅内サーバ2の処理実行部15Dが所定の処理を実行する処理実行工程が行われる(S004)。本工程S004では、まず、設定工程S001にて設定した累積量算出工程S003にて算出した累積量との差が求められ、当該差に応じた処理が実行される。なお、差については、住宅H内に設置された電力消費機器別に求められ、さらには、住宅H全体についても求められる。なお、本実施形態では、上記の差に応じた処理が、住宅H内に設置された電力消費機器のうち、非優先機器に対してのみ実行される。
【0098】
本工程S004にて実行される処理は、前述したように、差の大きさに応じて3段階に分かれており、第1段階での処理は、操作パッド20に向けて、操作パッド20の表示画面21に上記の差に応じた情報を表示させるための情報表示データを送信する処理である。
第1段階の処理は、上記の差が0よりも大きい所定量(第2段階の処理用の設定量)に達していない場合に実行される(
図10においてS021、S22)。
【0099】
一方、情報表示データを受信した操作パッド20側では、非優先機器に対して求めた差に相当する電力量が管理ウィンドウW上の対応領域に表示されるようになる。かかる表示を確認することにより、ユーザは、非優先機器に対して設定した当月の電力消費量の目標量と比較して、当月中に非優先機器を運転して消費される電力量についての残量を把握することが可能になる。そして、上記の作用により、ユーザは、省エネルギー意識を喚起され、表示された差の大きさに応じて非優先機器の運転状況を調整する等、省エネルギー行動を実行するようになる。
【0100】
なお、本実施形態では、前述したように、差に相当する電力量を表示するとともに、差に相当する電力消費時間(すなわち、当月において電力消費機器を運転することができる残り時間)が併せて表示される。これにより、ユーザにとって電力消費量の管理がし易くなり、以って、省エネルギー行動の実践を促進させることが可能となる。
【0101】
第2段階の処理は、非優先機器に対して求めた差が所定量に達した時点で実行され、操作パッド20に向けて、前述した報知処理の実行を命じる信号を出力する処理である(
図10においてS023、S024)。この信号を受信した操作パッド20側では、上記の差が所定量に達したことをユーザに報知するための報知処理(具体的には、警告音発生やランプ点灯など)が行われる。これにより、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差が所定量に達したこと(分かり易くすると、現状のままで非優先機器の運転を維持すれば程なくして上記の差が0になってしまうこと)をユーザに気付かせ、ユーザの省エネルギー行動を促すことができる。
【0102】
第3段階の処理は、非優先機器に対して求めた差が0に達した時点で、当該非優先機器への電力供給回路を遮断し、当月の終了時点まで、当該非優先機器への電力の分配を中断する中断処理である(
図10においてS025)。
このような処理が実行されることにより、上述した本システムSの効果が有効に奏されるようになる。つまり、本システムSでは、非優先機器が実際に消費した電力消費量の累積量が目標量を超えた場合、非優先機器の運転を強制的に中止して当月の終了時点まで停止状態で維持する。この結果、本システムSでは、優先機器の運転を継続させつつ、設定した総目標量を超えないように住宅H全体での電力消費量を管理することが可能になる。
【0103】
また、第3段階の処理では、上述した処理に加え、操作パッド20に向けて、非優先機器の運転状況を調整させる際にユーザが行う入力操作の受け付けを拒絶させるための拒絶信号を送信する処理を実行する。拒絶信号を受信した操作パッド20側では、許否決定部22Bが、差が0になった非優先機器に対するユーザの入力操作の受け付けを拒絶する決定をし、その決定結果を反映して、表示画面21に表示されていた上記の非優先機器用の発停切り替えボタンB1や温度設定ボタンB2a、B2bが非表示となる。
このような処理が実行されることにより、ユーザは、非優先機器の電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差が0になったこと(転じて、非優先機器への電力分配が遮断されたこと)を、操作パッド20の表示画面21にて確認することができる。また、操作パッド20側では、非優先機器の運転状況を調整させるための入力操作を受け付け不能になるので、上記の差が0になってからの非優先機器の運転を適切に制限することができる。
【0104】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、主として本発明の電力分配システム及び電力分配方法について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0105】
また、上記の実施形態では、住宅H内の電力消費機器への電力の供給源が商用電源CPのみであることとしたが、これに限定されるものではない。電力の供給源として、商用電源CPのほかに、太陽光エネルギー等の自然エネルギーを利用して発電をする発電機構や、電力を蓄積しておき必要に応じて放電する蓄電池が設けられている建物に対しても、本発明は適用可能である。
【0106】
また、上記の実施形態では、スマートメータ3が設置されており、当月における住宅H全体での電力消費量の上限が、先払いした電力使用料金に応じた分の量に設定されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、通常の形態、すなわち、当月における住宅H全体での電力消費量について上限を設けず、かつ、当月における電力消費量の累積量に応じた電力使用量金を当月の終了後に支払うケースであっても、本発明は適用可能である。
【0107】
また、上記の実施形態では、住宅H内の電力消費機器の各々に対して、電力消費量を計測するための計測機器(上記の実施形態におけるCTセンサ4)が設けられていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、住宅H内に設置された電力消費機器である優先機器及び非優先機器のうち、少なくとも非優先機器の電力消費量を計測するために計測機器が設置されていることとしてもよい。これは、非優先機器については、ユーザの省エネ行動によって運転状況が見直されて電力消費量が削減され得る機器であるので、優先機器及び非優先機器のうち、少なくとも非優先機器の電力消費量についてはモニタリングする必要があるためである。
【0108】
さらに、上記の実施形態では、電力消費機器毎の計測機器とは別に、住宅H全体の電力消費量を計測するための計測機器(上記の実施形態におけるスマートメータ3)が設けられていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、住宅H全体の電力消費量については、別途の計測機器を設置して計測するのではなく、電力消費機器毎に設置された計測機器の計測結果を集計して住宅H全体の電力消費量とすることとしてもよい。
【0109】
また、上記の実施形態では、住宅H内に設置された各電力消費機器の電力消費量について、当月の開始時点から直近の計測データ取得工程の実行時点までの累積量を算出するとともに、住宅H全体の電力消費量についても、同期間における累積量を算出することとした。ただし、これに限定されるものではなく、上記期間において少なくとも非優先機器が実際に消費した電力消費量の累積量を算出すればよい。つまり、優先機器や住宅H全体の電力消費量の累積量については、算出しなくともよい。
【0110】
また、上記の実施形態では、住宅H全体の電力消費量の総目標量や各電力消費機器の電力消費量の目標量は、操作パッド20を通じて行うユーザの入力操作に基づいて設定されることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、宅内サーバ2が、過去の電力消費量を参考にして自動的に(ユーザの入力操作に基づかないで)設定することとしてもよい。
【0111】
また、上記の実施形態では、本発明の電力分配システムの一例として、電力消費量の目標量と実際の電力消費量の累積量との差に基づいて電力を分配するシステムについて説明した。本発明の電力分配システムとしては、電力消費量のみならず、消費電力(単位時間に電流がする仕事の量)まで管理対象とするシステムも考えられる。
かかるシステムについて説明すると、先ず、住宅H全体での消費電力の目標上限値を設定し、その後、各電力消費機器に対して目標上限値を設定する。この際、各電力消費機器の目標上限値の合計が、住宅H全体での消費電力の目標上限値を超えないように設定する。そして、実際の消費電力が目標上限値を超えた電力消費機器(特に、非優先機器)に対しては、電力の分配を一時的に中断する。かかるシステムによれば、住宅H全体における電力消費量及び消費電力の双方について最適化を図りつつ、住宅H内の各電力消費機器に対して計画的且つ合理的に電力を分配することができる。つまり、上記のシステムでは、ある電力消費機器(具体的には、非優先機器)が過度に電力を消費することによりブレーカーが落ちて他の電力消費機器(具体的には、優先機器)にも電力が供給されなくなるという不具合を防止することができる。