【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の害虫駆除用粉剤は製剤安定性に優れているとはいえ、その安定性は段落[0015]にも記載されている通り、約2週間程度という期間であることから更なる改良の余地があった。
ここで、2週間を超えるような長期安定性を確保するためには防除成分や溶剤の配合量を増量することも考えられるが、コストが高くなったり、溶剤が多くなりすぎることによって粉剤として成形できなくなったりすることから単純に配合量を増量することができないという問題がある。
また、特許文献2においてはn−パラフィンなどの溶剤による防除性能の向上効果が認められるものの、2週間を超えるような長期安定性の面からは満足できるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、防除性能の長期安定性を向上させるとともに、防除性能自体のさらなる向上を図ることができる匍匐害虫防除用粉剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る匍匐害虫防除用粉剤は、シフルトリンと、
流動パラフィン、n−パラフィン、イソパラフィンから選ばれた少なくとも一種以上の溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤および/または
ピペロニルブトキシドである芳香族エーテル系溶剤と、
ジプロピレングリコールおよび/またはトリプロピレングリコールであるグリコール系溶剤とを、鉱物質担体に担持させる匍匐害虫防除用粉剤であって、シフルトリンの配合量が粉剤に対して0.03〜1.0重量%であり、脂肪族炭化水素系溶剤および/または芳香族エーテル系溶剤の配合量が粉剤に対して0.5〜20.0重量%であり、グリコール系溶剤の配合量が粉剤に対して0.5〜9.0重量%であ
り、さらに密閉した25m3の部屋に匍匐害虫防除用粉剤を50〜150g散布した際のクロヤマアリに対するKT50値(分)が、製造後24ヶ月後の前記匍匐害虫防除用粉剤においても5.1以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明に用いられる防除成分であるシフルトリン[化学名:α−シアノ−3− (4−フルオロフェノキシ)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]は、広い殺虫スペクトラムを有し、特に農業用途で使用されているピレスロイド系殺虫成分である。
また、シフルトリンは8個の光学異性体を有し、2個ずつの光学異性体が対をなして存在し、融点の異なる4成分のジアステレオマーペア(成分I、II、III、IV)から構成されている。
ここで本発明に用いられるシフルトリンは、上記の4成分が略等量含まれるものだけでなく、成分IIと成分IVが主体のベータシフルトリンや上記異性体が任意の組成比で含まれる全てのものを包含するものである。
【0011】
また、上記の防除成分の他に、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、フェンプロパトリン、エトフェンプロックスなどのピレスロイド系殺虫剤、フェニトロチオン、ダイアジノン、プロパホスなどの有機リン剤、プロポクスル、メトキサジアゾンなどのカーバメート剤、シラフルオフェンなどの有機ケイ素系殺虫剤、カルタップ、ブプロフェジンなどの殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、昆虫成虫かく乱剤その他の活性成分を適宜添加することもできる。
【0012】
なお、シフルトリンの配合量としては、匍匐害虫防除用粉剤に対して0.03〜1.0重量%である必要がある。0.03重量%よりも少ないと防除性能の向上が十分には発現せず、一方、1.0重量%を超えると防除性能の向上によるメリットは望めず、さらにコスト面によるデメリットの方が大きくなるからである。
また、脂肪族炭化水素系溶剤や芳香族エーテル系溶剤やグリコール系溶剤との配合比率の関係から、1.0重量%を超えるとシフルトリンに対するこれらの溶剤の配合量も多くなることになり、後記するように粉体状に成形することができなくなるからである。
【0013】
本発明に用いられる脂肪族炭化水素系溶剤および芳香族エーテル系溶剤としては、流動パラフィン、n−パラフィン、イソパラフィン、ピペロニルブトキシド、エチレン列炭化水素、アセチレン列炭化水素などを挙げることができるが、その中でも沸点が200℃以上の高沸点の溶剤を用いることが好ましく、さらにその中でも流動パラフィン、n−パラフィン、イソパラフィン、ピペロニルブトキシドを用いることが好ましい。また、これらの脂肪族炭化水素系溶剤および芳香族エーテル系溶剤については単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
【0014】
脂肪族炭化水素系溶剤および芳香族エーテル系溶剤の匍匐害虫防除用粉剤に対する配合量としては、匍匐害虫防除用粉剤に対して、0.5〜20.0重量%である必要がある。0.5重量%よりも少ないと防除性能の向上効果が十分に発現せず、一方、20.0重量%を超えると粉体状に成形することができなくなるからである。
【0015】
また、脂肪族炭化水素系溶剤および芳香族エーテル系溶剤の分子量については特に限定されるものではなく、防除対象とする害虫に応じて適宜設定することができるが、あまりにも高分子量のものを使用すると匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触した際に防除成分が害虫に付着しづらくなる恐れがあることから、分子量が300以下のものを用いることが好ましい。
【0016】
なお、脂肪族炭化水素系溶剤および芳香族エーテル系溶剤の粘度についても特に限定されるものではなく、防除対象とする害虫に応じて適宜設定することができるが、あまりにも高粘度や低粘度のものを使用すると粉体状に成形することが困難になったり、匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触した際に防除成分が害虫に付着しづらくなる恐れがあることから、25℃において5〜100mPa・sであることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるグリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなど各種のグリコール類を挙げることができるが、その中でもジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールを用いることが好ましい。また、これらのグリコール系溶剤については単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
【0018】
また、本発明に用いられるグリコール系溶剤の匍匐害虫防除用粉剤に対する配合量としては、匍匐害虫防除用粉剤に対して、0.5〜9.0重量%である必要がある。0.5重量%よりも少ないと防除性能の長期安定性が十分に発現せず、一方、9.0重量%を超えると粉体状に成形することができなくなるからである。
【0019】
本発明に用いられる鉱物質担体としては、カオリン、クレー、タルク、ベントナイト、ゼオライト、ジークライト、カープレックスなどを挙げることができる。
【0020】
なお、上記した構成要件以外にも必要に応じて種々の界面活性剤、分散剤、PAPなどの流動性改良剤、殺虫成分の安定剤、補助溶剤などを配合することができる。さらに、シナモンパウダー、レモングラスパウダーなど各種パウダー類を添加することもできる。
【0021】
そして、こうして得られた本発明の匍匐害虫防除用粉剤は、屋内もしくは屋外において、1m
2当たり5〜30g散布することによってダンゴムシ、ワラジムシ、ムカデ、ヤスデ、ケムシ、ゲジゲジ、アリ、シバンムシなどの各種不快害虫、ツマグロヨコバイ、ウンカ類、コブノメイガ、カメムシ類、ゴキブリ、ダニ、ナンキンムシなどの衛生害虫などの匍匐害虫に対して優れた防除性能を発揮する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤によれば、脂肪族炭化水素系溶剤や芳香族エーテル系溶剤とグリコール系溶剤とを併用することによる相乗効果によって、脂肪族炭化水素系溶剤や芳香族エーテル系溶剤を単独で配合した場合に比べて飛躍的な防除性能を発現させることができ、グリコール系溶剤を単独で配合した場合に比べて飛躍的な防除性能の長期安定性を発現させることができる。
また、脂肪族炭化水素系溶剤や芳香族エーテル系溶剤を用いることによって、匍匐害虫防除用粉剤に接触した匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触していない他の害虫とグルーミングを行った際に防除成分を他の害虫へ付着させることができることから高い防除性能を発現させることができる。
【0023】
さらに、各溶剤成分に特定の物質を用いることによって、上記の防除性能および防除性能の長期安定性をより向上させることができる。