特許第5749198号(P5749198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749198
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】安定化された農園芸用殺菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/22 20060101AFI20150625BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20150625BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A01N25/22
   A01N43/653 F
   A01P3/00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-40819(P2012-40819)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177322(P2013-177322A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242002
【氏名又は名称】北興化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 政一
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 佳彦
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−025710(JP,A)
【文献】 特開平10−251445(JP,A)
【文献】 特開平10−251444(JP,A)
【文献】 特開2003−026879(JP,A)
【文献】 特開2001−181116(JP,A)
【文献】 特開平10−072305(JP,A)
【文献】 特開平10−182308(JP,A)
【文献】 特開2013−177323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 殺菌活性成分として4−クロロベンジル=N−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)チオアセトイミダード(一般名:イミベンコナゾール)、およびb)下記の化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物を含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤。
化合物1: ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=デカンジオアート
化合物2: メチル=1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル=セバケート
化合物3:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物
【請求項2】
a) イミベンコナゾール、およびb)化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物を、c)プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて添加することを特徴とする、請求項1記載の農園芸用殺菌剤。
【請求項3】
b)化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物が、化合物1および化合物2の混合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の農園芸用殺菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−クロロベンジル=N−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)チオアセトイミダード(一般名:「イミベンコナゾール」、以下「イミベンコナゾール」という。)を殺菌活性成分として含み、且つ、ヒンダードアミン系化合物、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルの配合により安定化された農園芸用殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イミベンコナゾールを殺菌活性成分として用い、これに固体または液体状の担体を混合してなる混合物を農薬として製剤化した場合に、イミベンコナゾールは経時的に分解することが知られている。そこで、イミベンコナゾールの保存安定性を向上させるため、安定化剤、補助剤あるいは増量剤の種類や添加量を変えることなどが検討されてきた。
【0003】
これまでにイミベンコナゾールの安定化の方法としては、ポリオキシアルキレンアルキルおよびアルキレン(C8〜20)アミン(特許文献1参照)またはポリオキシアルキレンアルキル(C8〜20)ジアミン(特許文献2参照)を添加する方法などが知られている。
【0004】
しかし、これらの従来技術で用いた安定化剤は当該農薬活性成分の安定化には必ずしも充分に満足なものではない。また、本発明に類似する技術として、ヒンダードアミン系化合物:〔1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールもしくはトリデシルアルコールとの縮合物〕、〔1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールもしくはトリデシルアルコールとの縮合物〕、ビス(2,2,6,6−ヘキサメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、および1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートから選ばれる一種またはそれ以上を添加することによって、遮光下の40℃30日の過酷試験下(常温で1年貯蔵したことに相当)で、優れた安定性を見出している(特許文献3参照)。しかし、製品流通場面を考慮すると、農薬製剤の有効期限としては、3年以上担保することが求められることから、これでも十分満足できるとは言えない。
【0005】
一方、本発明で使用されるヒンダードアミン系化合物は、一般的に光安定化剤として知られており、樹脂の光安定化剤(特許文献4参照)、紙、繊維、プラスチックの黄変防止(特許文献5参照)、微粒子集合体エマルションの安定化剤(特許文献6参照)として既に使用されている。その他に、ヒンダードアミン系化合物自体を抗菌剤として使用することも知られている(特許文献7および8参照)。
【0006】
また、ヒンダードアミン系化合物の生物活性成分の安定化剤としての使用としては、有機リン系殺虫剤の安定化(特許文献9参照)、トリアジン系化合物と共に添加した防藻剤(特許文献10参照)、有機リン系やピレスロイド系殺虫剤を含む防虫塗料の安定化(特許文献11参照)が知られているが、本発明で用いているヒンダードアミン系化合物1〜3が、イミベンコナゾールの安定化に寄与するという報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−65322号公報
【特許文献2】特公平4−60442号公報
【特許文献3】特開平7−25710号公報
【特許文献4】特開2008−7676号公報
【特許文献5】特開2009−7397号公報
【特許文献6】特開平5−70663号公報
【特許文献7】特開平10−53509号公報
【特許文献8】特開平11−335213号公報
【特許文献9】特開平3−294285号公報
【特許文献10】特開2001−122709号公報
【特許文献11】特開2001−181116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、簡便な方法によって、イミベンコナゾールが長期貯蔵にも耐えて分解しない、安定化された農園芸用殺菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明を要約すると次のようになる。すなわち、
(1)a) 殺菌活性成分として4−クロロベンジル=N−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)チオアセトイミダード(一般名:イミベンコナゾール)、およびb)下記の化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物を含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤。
化合物1: ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=デカンジオアート
化合物2: メチル=1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル=セバケート
化合物3:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物
【0010】
(2)a) イミベンコナゾール、およびb)化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物を、c)プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて添加することを特徴とする、請求項1記載の農園芸用殺菌剤。
【0011】
(3)b)化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物が、化合物1および化合物2の混合物であることを特徴とする、(1)または(2)記載の農園芸用殺菌剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施すると次のような効果がもたらされる。すなわち、第1に、本発明の製剤は、ヒンダードアミン系化合物を添加するにより、農薬活性成分であるイミベンコナゾールの分解を抑制することができる。第2に、その結果、製品の長期貯蔵が可能となる。第3に、イミベンコナゾールの分解を抑えることで、分解時に生じるメルカプタン臭を抑制することができる。第4に、イミベンコナゾールの分解を抑えることで製造時のロスを大幅に削減し、コストダウンが可能となる。第5に、特殊な技術を必要とせず、容易に安定化できることから、コスト的にも安価である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の農薬製剤について具体的に説明する。
【0014】
<農薬製剤の調製方法について>
a) 4−クロロベンジル N−2,4−ジクロロフェニル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)チオアセトイミダート(一般名イミベンコナゾール)。
本発明の殺菌活性成分のイミベンコナゾールは、果樹および園芸用のトリアゾール系のエルゴステロール生合成阻害剤として広く用いられている。本殺菌性化合物の調製は、特開昭57−158707公報に記載の方法に準じて製造して用いればよい。
上記殺菌活性成分の添加量は、農薬製剤の全量に対して、通常0.001〜40重量%である。
【0015】
b)以下の化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物
化合物1: ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=デカンジオアート
化合物2: メチル=1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル=セバケート
化合物3:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物
【0016】
本発明の農園芸用殺菌剤には、上記ヒンダードアミン系化合物1〜3が必須成分である。これらは、有用作物に薬害がなく、また人および家畜に対する安全性も高いことから、農薬製剤に添加してなんら問題ない化合物であり、また、市販品として入手できる既知化合物である。これらの化合物を、イミベンコナゾールを含有する農園芸用殺菌剤に添加することでイミベンコナゾールの分解防止効果が得られる。この安定化効果は、粉剤、粒剤、水和剤などの固体状製剤でも、乳剤やエアゾル剤などの液体状製剤でも用いることができる。
【0017】
なお、これらは、それぞれ単一で用いるだけでなく、2種あるいは3種混合して用いてもよく、特に、化合物1と化合物2の2種を混合させて用いると、それぞれが相乗効果をもたらし、よりイミベンコナゾールの分解を抑制する効果が認められる。
これらb)の製剤中への添加量は、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3重量%程度である。
【0018】
c)プロピレングリコールモノメチルエーテル
本発明は、上記したとおり、固体状製剤および液体状製剤に使用することができるが、a)イミベンコナゾール、b)化合物1〜化合物3で表されるヒンダードアミン系化合物からなる群から選ばれる1種またはそれ以上の化合物を、c)プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させて添加することでより高い安定性を得ることができる。本発明で用いるプロピレングリコールモノメチルエーテルは、エチレンオキサイド系のグリコールエーテルに代わる安全性の高い溶剤として、農薬のみならず、塗料、インキ、電子材料分野で幅広く使われている。
【0019】
この溶剤を増量剤として、a)イミベンコナゾール、b)化合物1〜化合物3から選ばれるヒンダードアミン系化合物を溶解させてそのまま乳剤にしたり、または、オイルプレミックスとして、他の溶剤に混和させたり、もしくは、オイルプレミックスをホワイトカーボンに吸油させて固形製剤として製剤化させた場合、溶剤を用いなかった場合や、その他の溶剤に溶解させ調製した製剤よりもイミベンコナゾールの安定性は高くなる。
【0020】
なお、本溶剤は、引火性が31℃と低いため、溶剤添加後に、高温条件下とする製造工程、例えば、オイルプレミックスを吸油させた粉体を、加水混練し、押し出し造粒した後に乾燥工程させる、といった調製法は適さない。ただし、オイルプレミックスを添加せずに、乾燥工程を経て調製した核粒や、粒状の増量剤に、各成分を溶解させたオイルプレミックスを吹きつける、もしくは含浸させるなどして調製することにはなんら問題はない。
【0021】
これらプロピレングリコールモノメチルエーテルの添加量は、a)イミベンコナゾール、b)化合物1〜化合物3から選ばれるヒンダードアミン系化合物の必要量を溶解させるだけの量があれば問題ないが、粉剤、水和剤、粒剤などの固形製剤では通常0.1〜15重量%の範囲であり、乳剤、エアゾルなどの液体製剤では、1%以上である。
【0022】
これらの、b)化合物1〜化合物3から選ばれるヒンダードアミン系化合物、さらにc)プロピレングリコールモノメチルエーテルを、a)イミベンコナゾールを含有した農園芸用殺菌剤に添加することによって、製剤中のイミベンコナゾールの分解を抑制することができる。イミベンコナゾールが、製剤中で分解する機構についての詳細が判明していないため、b)化合物1〜3のヒンダードアミン系化合物がその分解機構のどの部分にどのように作用して分解を抑制しているのかは、明らかにはなっていない。しかし、b)の化合物1〜化合物3のヒンダードアミン系化合物を添加することで、常温で遮光下に3年貯蔵(40℃90日間の過酷試験による)しても、イミベンコナゾールの分解率を大きく抑制することができる。
【0023】
本発明の農園芸用殺菌剤は、上記の必須成分のほかに、必要に応じて、イミベンコナゾール以外の農薬活性成分、界面活性剤、担体(プロピレングリコールモノメチルエーテルを除く)、その他補助剤などを用いることができる。
【0024】
本発明で用いることのできるイミベンコナゾール以外の農薬活性成分は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤などの一般に農薬の活性成分として使用されるものであれば特に限定されないが、製剤において、イミベンコナゾールの効果を補填するようなものが望ましい。
【0025】
このような農薬活性成分としては次のものが挙げられる。
例えば、殺虫剤として有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ベンゾイルヒドラジド系、ネオニコチノイド系、トリアジン系、チオウレア系、オキサダイアジン系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、天然殺虫剤、生物農薬、殺ダニ剤および殺線虫剤などが挙げられる。
【0026】
殺菌剤としては、例えば、無機銅類、有機銅類、無機硫黄剤、有機硫黄剤や、有機リン系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系、トリアゾール系、イミダゾール系、ピペラジン系、メトキシアクリレート系、オキサゾリジンジオン系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤、天然物殺菌剤および生物農薬などが挙げられる。
【0027】
除草剤としては、例えば、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、アセトアニリド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、イミダゾリノン系、脂肪酸系、有機リン系、アミノ酸系、ジフェニルエーテル系、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、トリアゾリノン系、無機除草剤、生物農薬などが挙げられる。
【0028】
植物生長調節剤としては、例えば、エチレン系、オーキシン系、サイトカイニン系、ジベレリン系などが挙げられる。
【0029】
なお、これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2011年版」(社団法人 日本植物防疫協会、平成23年2月25日発行)、「SHIBUYA INDEX 15th Edition」(平成22年11月30日発行)、「The Pesticide Manual Fifteenth Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されている。
【0030】
また、本発明においてイミベンコナゾールと共に使用される農薬活性成分としては、本発明と同様の目的を果たし、農薬製剤として適用されるものであるならば、上記以外の公知あるいは今後開発される農薬活性成分を適用することができる。
【0031】
本発明に使用できる界面活性剤としては、次のようなものをあげることができる。
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、シリコーン系界面活性剤(ポリオキシアルキレンジメチルポリシロキサンコポリマー)、アセチレングリコール系界面活性剤(2,4,7,9−テトラメチル−デシン−4,7−ジオールなど)などが挙げられる。
【0032】
また、陰イオン性界面活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルリン酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩が挙げられる。
【0033】
また、陽イオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが挙げられる。
【0034】
また、両性界面活性剤としては、ジアルキルアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタインなどが挙げられる。
【0035】
本発明で使用できる界面活性剤としてはこれらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用してもかまわない。
【0036】
本発明で用いることができる担体としては、固体担体、および液体担体共に使用することができる。また、エアゾルとして使用する場合は、噴射剤も使用できる。
【0037】
固体担体としては、例えば次のものを挙げることができる。すなわち、クレー、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、ジークライト、セリサイト、酸性白土、珪石、ケイソウ土、軽石、ゼオライト、セピオライト、バーミキュライト、アタパルジャイト、シラスバルーンを粉砕したガラス質粉末、ホワイトカーボン、モミガラ、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、などの単糖類、二糖類、多糖類、尿素、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、などが挙げられる。
【0038】
本発明で用いることができる液体担体としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル以外のプロピレン系グリコールエーテル類、シクロヘキサン、γ−ブチロラクトンなどのケトン類、脂肪酸メチルエステル、二塩基酸メチルエステルなどのエステル類、N-アルキルピロリドン類、ヤシ油、大豆油、ナタネ油などの植物油類、ノルマルパラフィン、ナフテン、イソパラフィン、キシレン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ケロシンなどの炭化水素類をあげることができる。
【0039】
本発明で用いることができる噴射剤としては、例えば、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)や、不燃性の炭酸ガス、窒素ガス、などをあげることができる。
【0040】
その他、本発明で使用できる補助剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの粘結剤、酸化防止剤、紫外線防止剤などの安定化剤、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−m−キシレノール、p−オキシ安息香酸ブチルなどの防腐防バイ剤、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガムなどの粘度調整剤などを挙げることができる。
【0041】
ただし、本発明はここに例示した補助剤に限定されるものではなく、本発明の目的を達成しうる範囲内であれば各種の補助剤を使用することができる。
【0042】
本発明の農園芸用殺菌剤は、通常の方法によって施用することができる。
【0043】
また、本発明の農現芸用殺菌剤は、通常の方法によって使用することができる。例えば、本発明の農薬製剤をそのまま、あるいは水で適当濃度(通常は約8倍〜3000倍程度)に希釈して、噴霧器を用いて防除しようとする作物の茎葉に噴霧散布すればよい。このとき、地上で散布できるだけでなく、有人の航空機、ヘリコプターや無人のRCヘリコプターを使用して空中から散布することもできる。粒剤であれば、そのまま均一散布すればよい。エアゾル剤であれば、噴射剤ともにスプレー缶内に封入し、その噴射剤によって、直接植物体などに散布することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明の農園芸用殺菌剤を得る方法を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例、比較例中の「部」はすべて重量部を意味する。
【0045】
実施例1:粉剤1
イミベンコナゾール1部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 1部、およびクレー98部をハンマーミルにて均一に混合したのち、粉砕して粉剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0046】
実施例2:粉剤2
イミベンコナゾール1部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 1部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル3部に、マグネチックスターラーにて攪拌溶解させて調製したオイルプレミックスをホワイトカーボン10部に吸油させた後、クレー85部をハンマーミルにて均一に混合した後、粉砕して粉剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0047】
実施例3:粒剤1
イミベンコナゾール5部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 3部、ポリビニルアルコール1.5部、ホワイトカーボン10部、およびクレー80.5部を加え、ハンマーミルで粉砕混合した。得られた粉体混合物に、水10%を加えて混練した。次にこの加水混練物を孔径1.2mmのバスケット型スクリーンをつけた押出造粒機で造粒した。得られた造粒物を整粒した後、流動層乾燥機で乾燥した。これを1700μm〜850μmで篩別することで、粒剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0048】
実施例4:粒剤2
ポリビニルアルコール1.5部、ホワイトカーボン10部、およびクレー70.5部を加え、ハンマーミルで粉砕混合した後、実施例3と同様の操作で調製した空粒に、イミベンコナゾール5部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 3部をプロピレングリコールモノメチルエーテル10部にマグネチックスターラーにて攪拌溶解させて調製したオイルプレミックスをスプレーにて均一に吹き付け、完全に吸油させることで、粒剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0049】
実施例5:水和剤1
イミベンコナゾール3部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 1.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートNH塩 1.5部、ホワイトカーボン10部、クレー84部をハンマーミルにて均一に混合粉砕して、水和剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0050】
実施例6:水和剤2
イミベンコナゾール3部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 1.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル6部にマグネチックスターラーにて攪拌溶解させて調製したオイルプレミックスをホワイトカーボン10部に吸油させた後、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートNH塩 1.5部、クレー78部をハンマーミルにて均一に混合粉砕して、水和剤の形の本発明の殺菌剤を得た。
【0051】
実施例7:乳剤
イミベンコナゾール15部、ヒンダードアミン系化合物として化合物3 2部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル 3部をプロピレングリコールモノメチルエーテル80部に、スリーワンモーター(HEIDON社製)にて混合溶解させ、乳剤形態の本発明の農薬製剤を得た。
【0052】
実施例8:エアゾル
イミベンコナゾール0.01部、ヒンダードアミン系化合物として化合物1 0.3部をイソパラフィン32部、N−メチルピロリドン 32部にスリーワンモーター(HEIDON社製)にて混合溶解させ、噴射剤としてのジメチルエーテル 10部、液化石油ガス(LPG)25.69部を加えてスプレー缶に充填しエアゾルの形を本発明の殺菌剤を得た。
【0053】
本発明の貯蔵安定化効果について確認するために、本発明に準じて調製した殺菌製剤71剤、およびその比較例殺菌製剤31剤を用いて、下記の方法で試験を実施した。
【0054】
試験例
虐待試験
実施例、比較例で調製した殺菌製剤50gを、ガラスビンに入れて密栓し、エアゾルについては、500mlのスプレー缶に封入したまま、40℃恒温室に静置する。虐待期間は、30日後(常温で一年放置したことに相当する)、60日後(常温で二年放置したことに相当する)、および90日後(常温で三年放置したことに相当する)の3条件で行った。虐待後、製剤中のイミベンコナゾールを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、それらの初期含有値に対する残存率(%)を求めた。その結果を表1〜5に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
試験1〜5に記載された結果から明らかなように、b)以下の3つから選ばれるヒンダードアミン系化合物
化合物1: ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)=デカンジオアート
化合物2: メチル=1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル=セバケート
化合物3:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物
を添加している実施例に沿って調製したイミベンコナゾール含有農薬殺菌剤 試験No.1〜71は、イミベンコナゾールの添加量や製剤の剤型に関わらず、比較製剤No.1〜31に比べ明らかに、虐待試験後のイミベンコナゾールの残存率が高いことから、本発明の効果が顕著に示された。
【0061】
また、いずれの剤型においても、イミベンコナゾールおよびヒンダートアミン系化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させた処方のほうが、オイルプレミックスを調製していない処方、および他の溶剤を用いた処方と比較して、イミベンコナゾールの安定性に優れていた。
【0062】
また、ヒンダートアミン系化合物の種類による効果差としては、化合物1、2、3のそれぞれ単用添加では、大きな差は認められなかったが、化合物1と2を混合したものについては、より高い分解抑制効果を認めた。
【0063】
一方で、化合物1〜3とは類似であるものの、異なる構造を持つヒンダートアミン系化合物を用いた場合では、40℃30日といった短期的な虐待試験では高い安定性を認めたものの、60日、90日と、さらに長期的な虐待試験では、イミベンコナゾールの分解が大きくなっていくことが確認された。
【0064】
以上の結果より、イミベンコナゾールの分解を長期的に抑制するといった、本発明の効果が確認された。