(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状体が前記軸受の抜け止めを行なうための抜け止め部を有し、この抜け止め部に前記排水溝が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1〜
図5は本発明の第1の実施形態を示している。図示のように、本実施形態の魚釣用リールは、特に海水等が浸入し易い磯場等で使用されるロータブレーキ方式のスピニングリールとして構成されている。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係るスピニングリールのリール本体1には、釣竿に装着されるリール脚1aが一体形成されており、その前方には、回転可能に支持されたロータ9と、ロータ9の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール10とが配設されている。
【0014】
ロータ9は、スプール10の周囲を回転する一対の腕部9cを備えており、各腕部9cのそれぞれの前端部には、ベール9aの基端部を取り付けたベール支持部材9eが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。なお、ベール9aの一方の基端部は、ベール支持部材9eに一体的に設けられた釣糸案内部9bに取り付けられている。
【0015】
また、本実施形態に係るスピニングリールでは、リール本体1の背部(スプール10と反対側の部分)に異なる形状のリアキャップ90A,90Bを交換可能に着脱できるようにして、リール本体1を共通としながら意匠面で差別化が図れるようになっている。具体的には、
図2の(a)に示されるような形状の第1のリアキャップ90Aと、
図2の(b)に示されるような形状の第2のリアキャップ90Bとをリール本体1の背部に着脱できるようになっている。特に本実施形態において、第2のリアキャップ90Bは、第1のリアキャップ90Aからリール脚1aへ向かって延びるような延在部102を付設した形状を成している。
【0016】
リール本体1の背部には、2種類(あるいは、それ以上の種類でもよい)のリアキャップ90A,90Bを着脱できるように、キャップ90A,90Bが面一に接合できる段差状の接合面が形成される。具体的には、第1および第2のリアキャップ90A,90Bに共通の下側接合面1cと、第2のリアキャップ90Bに専用の上側接合面1bとが設けられる。そして、第1のリアキャップ90Aをネジ部材95を用いてリール本体1の背部に取り付けると、第1のリアキャップ90Aの下部先端が下側接合面1cに当て付き、第1のリアキャップ90Aの上部先端と上側接合面1bとの間に凹状の段差部91が残る(
図1参照)。一方、第2のリアキャップ90Bをネジ部材95を用いてリール本体1の背部に取り付けると、第2のリアキャップ90Bの下部先端が下側接合面1cに当て付くとともに、第2のリアキャップ90Bの上部先端が上側接合面1bに当て付く(
図2の(b)参照)。このとき、第2のリアキャップ90Bの延在部102とリール本体1との間に隙間(または、貫通孔)98が形成されてもよい。なお、リアキャップ90A,90Bをリール本体1に対して取り付けるためのネジ部材95は、頭部95aとネジ軸部95bとから成り、頭部95aがキャップ90A,90Bの挿通穴97に埋没して位置された状態でネジ軸部95bがリール本体1の背面のネジ穴99に螺合される。
【0017】
図3に明確に示されるように、スピニングリールのリール本体1には、ハンドル軸2が軸受3A,3Bを介して回転可能に支持されており、ハンドル軸2の端部には、巻き取り操作されるハンドル2Aが装着されている。軸受3A,3Bは、リール本体1とハンドル軸2との間に配設されており、ハンドル軸2をリール本体1に対して回転可能に支持している。
【0018】
本実施形態のハンドル軸2には、ドライブギヤ4が一体回転可能となるように外嵌されており、軸受3A,3Bは、ドライブギヤ4に一体形成される筒軸部(駆動部)4aとリール本体1との間に介挿されて、ハンドル軸2を回転可能に支持している。
【0019】
ハンドル軸2は、リール本体1に対して、左右の付け替えが可能となっており、ハンドル軸2の先端側には、リール本体の他方側からハンドル軸2を抜け止めするビス2aがスペーサ2bを介在させて螺入されるように雌ネジ部2eが形成されている。リール本体1の反ハンドル側には、カバー部材2cがリール本体1に対して螺合されており、ビス2aを閉塞している。
【0020】
したがって、
図3の構成においてハンドルを付け替える場合、カバー部材2cをリール本体1から外すと共に、ビス2aを緩めることで、ハンドル軸2を取り外す。そして、取り外したハンドル軸2を反対側から筒軸部4aに嵌合させ、さらにその反対側からスペーサ2bを介在させてビス2aを螺合させ、最終的にカバー部材2cを装着すれば良い。
【0021】
また、駆動部となる筒軸部4aには、軸受3A,3Bに隣接して、後述する磁気シール機構30Aが配設されている。磁気シール機構30Aは、リール本体1(リール本体1と一体化される筒状体としてのカバー支持部材1d)とドライブギヤ4の筒軸部(駆動部)4aとの間で、筒軸部4a上に配設された軸受3Bをシールするように設置されている。
【0022】
ハンドル軸2に一体回転可能に外嵌されるドライブギヤ4には、ハンドル軸2に対して直交する方向に延出し、軸受6A,6Bを介して回転可能に支持されたピニオンギヤ(駆動部)7の歯部7Aが噛合している。ピニオンギヤ7の先端部には、ロータナット8を螺合することで、ベール9aおよび釣糸案内部9bを備えたロータ9が一体回転するように取り付けられている。
【0023】
ピニオンギヤ7は、軸方向に沿って貫通しており、その内部には、先端に釣糸が巻回されるスプール10を保持したスプール軸11が挿通されている。このスプール軸11の基端側には、公知のオシレーティング機構(図示せず)が連結されており、ハンドル軸2がハンドル2Aの回転操作によって回転されたとき、スプール軸11は軸方向に沿って往復駆動される。この場合、スプール軸11には、ロータ9をピニオンギヤ7に固定するロータナット8を回転可能に支持するように、ロータナット8との間に軸受13が介在されている。詳細には、スプール軸11は、ピニオンギヤ7の先端縁に設置されるカラー部材(非磁性部材で構成される)15に挿通されており、軸受13は、カラー部材15とロータナット8との間に介在されている。カラー部材15は、例えば、アルミニウム合金や合成樹脂材(例えば、POM材)等で形成され、スプール軸11の外周に回転かつ摺動可能に嵌合されており、軸受13の内輪内周に多少圧入ぎみで嵌入される。そして、カラー部材15には、軸受13に隣接して、後述する磁気シール機構30Bが配設されている。
【0024】
上記した構成により、ハンドル2Aを回転操作すると、前記オシレーティング機構を介してスプール10が前後に往復動するとともに、ロータ9がドライブギヤ4およびピニオンギヤ7を介して回転駆動するため、スプール10には、釣糸案内部9bを介して釣糸が均等に巻回される。
【0025】
また、リール本体1内には、ロータ9をフリー回転状態としていたときに魚が掛かって、ロータ9が釣糸放出方向へ回転したとき(逆回転したとき)、ロータ9に対して制動力を付与する公知の制動機構20が配設されている。
【0026】
制動機構20は、リール本体1に一体的に固定される筒状体としての支持部材21(正確には、支持部材21の後述する支持部21a)に、軸受22を介して回転自在に配されたブレーキロータ23と、ブレーキロータ23に対して軸方向に移動可能となるように一体回転可能に回り止め嵌合され、バネ24によって後方側に付勢された輪帯状の制動板25と、この制動板25を挟持するように配される圧接片26aおよびブレーキシュー26bとを備えている。この場合、圧接片26aはリール本体1のフレームに支持されており、また、ブレーキシュー26bは圧接片26aに向けて摺動可能に支持されている。
【0027】
ロータ9の内面にはラチェット9cが固定されており、このラチェット9cにはブレーキロータ23に回転可能に支持されたストッパ23aが係合可能に支持されている。また、ピニオンギヤ7には、フランジ27aが形成された筒部材27が外嵌されており、フランジ27aには、ストッパ23aに係合するフリクションスプリング28が保持されている。このフリクションスプリング28は、ロータ9が逆回転したとき、ストッパ23aをラチェット9cに係合させる機能を備えている。
【0028】
そして、ロータ9が逆回転すると、フリクションスプリング28によって、ストッパ23aがラチェット9cと係合し、制動板25は、バネ24の付勢力による摩擦力によってブレーキロータ23と共に一体的に逆回転する。
【0029】
ブレーキシュー26bは、リール本体1のリール脚1a(
図1参照)に対して回動操作可能に支持された操作レバー100(
図1参照)を牽引操作することで、圧接片26aに向けて移動可能となっており、これにより、ロータ9が逆回転したときに操作レバーを牽引操作することで、圧接片26aとブレーキシュー26bとの間で制動板25を挟持してロータ9に対して所望の制動力を付与することが可能となっている。
【0030】
また、本実施形態において、それぞれの軸受3A,3B(13,22)をシールする前述した磁気シール機構30A(30B,30C)は、非磁性の筒軸部4a(カラー部材15、ブレーキロータ23)を所定の隙間をおいて囲繞するように配されるリング状磁石31と、リング状磁石31を両側から保持する一対の保持部材(磁気リング)32と、筒軸部4a(カラー部材15、ブレーキロータ23)に嵌合され(本実施形態では外嵌されている)、少なくとも保持部材32と対向する長さを有するとともに、保持部材32との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体33と、リング状磁石31と筒状の磁性体33との間に保持される磁性流体35とを備えて構成されている。
【0031】
この場合、保持部材32は、リング状磁石31を挟持して保持し、かつ、リング状磁石31の内側に周方向に沿って凹所が生じるように構成されている。また、リング状磁石31を挟持する保持部材32は、筒状の磁性体33の外表面との間に僅かな隙間が生じるように構成されている。
【0032】
筒状の磁性体33は、鉄系の材料、例えば、鋼材、SUS430、SUS440C、SUS630等によって形成されており、これにより、リング状磁石31により、これを保持する保持部材32、および、筒状の磁性体33の間には磁気回路が形成されるようになっている。なお、筒状の磁性体33の長さについては、上記した磁気回路が生じる程度の長さ(磁性流体を安定して保持できる程度の長さ)を有していれば良く、保持部材32がカバーされるように、保持部材32の軸方向の長さよりも、多少長く形成されている。
【0033】
磁性流体35は、例えばFe
3O
4 のような磁性微粒子を、界面活性剤及びベースオイルに分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体35は、リング状磁石31、これを保持する保持部材32、および、筒状の磁性体33によって形成される磁気回路によって、前記凹所内及び前記隙間内に安定して保持され、軸受をシールしている。
【0034】
また、本実施形態において、制動機構20を支持する筒状体としての前述した支持部材21は、
図3に示されるように、駆動部としてのピニオンギア7および軸受6Aを外側から部分的に覆っており、
図4にも示されるように、制御機構20を支持する(直接的には軸受22を支持する)支持部21aと、軸受6Aまたはこれを支持するリール本体1の支持部位に対して径方向外側から当て付いて軸受6Aの抜け止めを行なうための抜け止め部21bとを有しており、リール本体1に一体的に固定される。また、この固定状態では、筒状の支持部21aの内孔51の内径がピニオンギア7の外周に嵌合される筒部材27の外径よりも大きく設定されていることから、支持部21aの内面と筒部材27の外面との間に隙間が形成される。
【0035】
また、支持部材21は、特にその先端側(
図3では上側)から支持部21aの内面と筒部材27の外面との間の隙間に入り込んで軸受6Aに達する水分を排出するため、軸受6Aと対向する部位、特に本実施形態では抜け止め部21bの内面部位に、軸受6Aへと達する水分を支持部材21の外部(支持部材21の基端側(
図3の下側))へ排出するための排水溝52を有する。特に本実施形態では、
図5に明確に示されるように、排水溝52が、支持部材21の周方向に沿って所定の間隔で複数(本実施形態では、8個)設けられている。
【0036】
このように、本実施形態によれば、リール本体1内に浸入して支持部材21の内孔51を通じて軸受6Aへと達する水分を排水溝52を通じて支持部材21の外部へ排出することができるため、軸受6A付近で水分が滞留することを防止できる。そのため、錆びや塩分等に起因するピニオンギア7の回転性能の悪化を未然に防止できる。特に、スピニングリールでは、スプール10を上向き気味にして糸を巻く動作をすることが多く、その際に、水分が支持部21aの内面と筒部材27の外面との間の隙間に入り込んで軸受6Aに達し易いが、排水溝52により水分を下側へ逃がすことができるため、有益である。
【0037】
図6は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態において、駆動部となるピニオンギヤ7には、軸受6Aに隣接して、磁気シール機構30Dが配設されている。この磁気シール機構30Dも、前述した磁気シール機構30A,30B,30Cと同様に、非磁性のピニオンギヤ7を所定の隙間をおいて囲繞するように配されるリング状磁石31と、これを保持する保持部材(磁気リング)32と、ピニオンギヤ7に嵌合され(本実施形態では外嵌されている)、少なくとも保持部材32と対向する長さを有する筒状の磁性体33と、リング状磁石31と筒状の磁性体33との間に保持される磁性流体35とを備えて構成されている。そして、第1の実施形態と同様、制動機構20を支持する筒状体としての前述した支持部材21(排水溝52を有する)が、駆動部としてのピニオンギア7および軸受6Aを外側から部分的に覆っている。
【0038】
このように、本実施形態では、排水溝52と対向する部位に磁気シール機構30Dが介在するため、軸受6Aのシール性を確保しつつ、この部位に達する水分の排出も行なえ、ピニオンギア7の高い回転性能を維持できる。
【0039】
図7は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、ハンドル2A側の前述した筒状体としてのカバー支持部材1dが支持部材21と同様に排水溝を備えて成る。具体的には、
図7に示されるように、カバー支持部材1dは、ハンドル2Aに付設されるキャップ部材94内に隙間を存して入り込む軸方向に延びる第1の軸方向筒部63と、軸方向筒部63から磁気シール機構30Aおよび軸受3Bと対向するように径方向に延びる段部62と、テーパ状の外面を有して段部62から磁気シール機構30Aおよび軸受3Bと対向するように軸方向に延びる第2の軸方向筒部61とから成る。そして、段部62および第2の軸方向筒部61の内面には、第1の軸方向筒部63の外面とハンドル2Aのキャップ部材94との間の隙間から第1の軸方向筒部63の内孔に浸入して軸受3Bへと達する水分をカバー支持部材1dの外部へ排出するための連続する階段状の排水溝82,81,83が形成されている。
【0040】
このように、本実施形態によれば、リール本体1内に浸入してカバー支持部材1dの内孔を通じて軸受3Bへと達する水分を排水溝82,81,83を通じてカバー支持部材1dの外部へ排出することができるため、軸受3B付近で水分が滞留することを防止できる。そのため、錆びや塩分等に起因するハンドル軸2(ドライブギヤ4)の回転性能の悪化を未然に防止できる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態において、排水溝の形状、配置形態、および、数は、任意であり、要は、筒状体内に入り込んだ水分を外部(好ましくは排水専用の穴または溝などの排水部)へスムーズに導くようになっていればよい。