(54)【発明の名称】ネガ型輻射線感応性リソグラフィック印刷プレートのための輻射線感応性コーティング組成物用のコポリマー、前記コポリマーを含むポリマー粒子、及びコポリマーバインダー
【文献】
Edward J. Urankar et al.,Photogenerated Base in Polymer Curing and Imaging: Cross-Linking of Base-Sensitive Polymers Containing Enolizable Pendant Groups,Chem. Mater.,1997年,Vol.9, No.12,p.2861-2868
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート連結基が、前記のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖の一方又は両方の末端に結合している、請求項1に記載のコポリマー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
様々なポリマー、コポリマー、ポリマー粒子、及びバインダーを用いた、ネガ型で機能するリソグラフィック印刷プレートが既に開発されている。しかし、そのようなプレートのための新しい材料及びコーティングは未だに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
1.
・シアノ含有ペンダント(pendant)基を含み、そのシアノがコポリマーの骨格に直接結合していないモノマー単位A;
・フィルム形成性ペンダント基を含むモノマー単位B;
・ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)を含む側鎖を含み、その側鎖が、アミド、カルバメート、エステル、又はウレア連結基を介してコポリマーの骨格に結合されているモノマー単位C;並びに
・任意選択により場合によっては、カチオン重合によって架橋反応をすることができる少なくとも1つの官能基を含んでいてもよいモノマーD、
を含むコポリマー。
【0013】
2.
下記式:
【化1】
(式中、
・a、c、及びdは、約0.01〜約0.90の範囲のモル比であり;
・b及びeは、約0〜約0.90の範囲のモル比であり;
・A1はモノマー単位Aを表し;
・A2はモノマー単位A又はモノマー単位Bを表し;
・A3はモノマー単位Cを表し;
・A4はモノマー単位Bを表し;且つ
・A5はモノマー単位B又はモノマー単位Dを表し、
A1及びA2のモノマー単位Aは互いに異なり、
A2、A4、及びA5のモノマー単位Bは互いに異なる。)
である、上記1のコポリマー。
【0014】
3.
モノマー単位Aが下記式:
【化2】
(式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキルもしくはアルコキシ置換基を表し、そのアルキル及びアルコキシ置換基は任意選択で場合によっては1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよく、そのアルキル及びアルコキシ置換基は任意選択で場合によっては1つ以上のシアノで置換されていてもよく;
・U
1はアミド又はエステル連結基であり;
・V
1は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し、そのアルキルは任意選択により1つ以上のシアノで置換されていてもよく;且つ
・Wは−CN又は
【化3】
である。)
で表される、上記1又は2のコポリマー。
【0015】
4.
モノマー単位Aが下記式:
【化4】
【化5】
(式中、Rは、水素、メチル、又はエチルであり、nは1〜10の範囲である。)
で表される、上記3のコポリマー。
【0016】
5.
下記式:
【化6】
(式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・U
3は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;且つ
・Zはアルキル又はアリールであり;
そのアルキルは任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルコキシ、又はハライドで置換されていてもよく;且つ
そのアリールは、任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルコキシ、又はハライドで置換されていてもよい1つ以上のアルキルで、任意選択により場合によっては置換されていてもよい。)
のモノマー単位Bを含む、上記1〜4のいずれかのコポリマー。
【0017】
6.
下記式:
【化7】
(式中、
Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキル置換基を表し;そのアルキル置換基は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく;
・U
4は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;
・V
4は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し;かつ
・Aは−COOH、−PO(OH)
2、
【化8】
である。)
で表されるモノマー単位Bを含む、上記1〜5のいずれかのコポリマー。
【0018】
7.
モノマー単位Bが下記式:
【化9】
【化10】
(式中、
・Rは水素又はメチルであり;
・R1は水素又はアルキルであり;且つ
・xは1〜10の範囲の繰り返し単位の数である。)
で表される、上記1〜6のいずれか一つのコポリマー。
【0019】
8.
モノマー単位Cが、シアノ基含有置換基、ヒドロキシル基、又はメトキシ基で末端封止されている、上記1〜7のいずれか一つのコポリマー。
【0020】
9.
モノマー単位Cが下記式:
【化11】
〔式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・Jは存在しないか、又はアミド、エステル、カルバメート、又はウレア連結基を表し;且つ
・K及びLは一緒になって側鎖を形成し、Kはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖を含み、且つLは、−OH、−OCH
3、−CN、又は
【化12】
(式中、
R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキルもしくはアルキルオキシ置換基を表し、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよく、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で1つ以上のシアノで置換されていてもよく;且つ
V
1は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し、そのアルキルは任意選択で1つ以上のシアノで置換されていてもよい。)
である。〕
で表される、上記8のコポリマー。
【0021】
10.
1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート連結基が、上記のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖の一方又は両方の末端に結合している、上記9のコポリマー。
【0022】
11.
アルキルが、上記のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖の一方又は両方の末端に結合しており、そのアルキルが任意選択で1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよい、上記9又は10のコポリマー。
【0023】
12.
モノマー単位Cが下記式:
【化13】
〔式中、
・Rは独立に水素、メチル、又はエチルであり;
・x、y、及びnは1〜20の範囲であり;
・zは0〜20の範囲であり;
・Qは独立に−O−、
【化14】
又は、−O−CH
2CH
2−NH−C(=O)−NH−CH
2−であり;かつ、
・Gは、
ヒドロキシル、
メトキシ、
【化15】
(式中、nは上で定義したとおりである。)
であり、且つ
Q及びG中のR1は水素又はアルキルである。〕
で表される、上記1〜11のいずれかのコポリマー。
【0024】
13.
カチオン重合によって架橋反応をしうる少なくとも1つの官能基が、N−アルコキシメチルアミド(例えば、N−メトキシメチルアミド)、N−ヒドロキシメチルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド)、N−アルコキシメチルメタクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルメタクリルアミド)、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、エポキシ、又はオキセタンである、上記1〜12のいずれかのコポリマー。
【0025】
14.
モノマー単位Dが下記式:
【化16】
(式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・Eは存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;
・Fは、任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルであるか、あるいは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖であって、その鎖は任意選択で1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルと一方もしくは両方の末端で結合していてもよく;且つ
・Gはカチオン重合によって架橋反応をすることができる官能基である。)
で表される、上記12のコポリマー。
【0026】
15.
モノマー単位Dが下記式:
【化17】
(式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R1は水素又はアルキルであり;且つ
・m及びnは1〜50の範囲である。)
で表される、上記1〜14のいずれかのコポリマー。
【0027】
16.
A5がモノマー単位Dを表す、上記1〜15のいずれかのコポリマー。
【0028】
17.
ポリマー粒子の形態である、上記1〜16のいずれかのコポリマー。
【0029】
18.
上記のポリマー粒子が約80〜約1000nmの範囲の粒径を有する、上記17のコポリマー。
【0030】
19.
上記のポリマー粒子が約150〜約300nmの範囲の粒径を有する、上記18のコポリマー。
【0031】
20.
・シアノ含有ペンダント基を含み、そのシアノがコポリマーバインダーの骨格に直接結合していないモノマー単位A;
・フィルム形成性ペンダント基を含むモノマー単位B;及び
・任意選択により場合によっては、カチオン重合によって架橋反応をすることができる少なくとも1つの官能基を含むモノマーD、
を含むコポリマーバインダー。
【0032】
21.
下記式:
【化18】
(式中、
・a及びdは、約0.01〜約0.90の範囲のモル比であり;
・b及びeは、約0〜約0.90の範囲のモル比であり;
・A1はモノマー単位Aを表し;
・A2はモノマー単位A又はモノマー単位Bを表し;
・A4はモノマー単位Bを表し;且つ
・A5はモノマー単位B又はモノマー単位Dを表し、
A1及びA2のモノマー単位Aは互いに独立しており、
A2、A4、及びA5のモノマー単位Bは互いに独立である。)
である、上記20のコポリマーバインダー。
【0033】
22.
モノマー単位Aが下記式:
【化19】
(式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキルもしくはアルキルオキシ置換基を表し、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で場合によっては1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよく、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で場合により1つ以上のシアノで置換されていてもよく;
・U
1はアミド又はエステル連結基であり;
・V
1は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し、そのアルキルは任意選択により1つ以上のシアノで置換されていてもよく;且つ
・Wは−CN又は
【化20】
である。)
で表される、上記20又は21のコポリマーバインダー。
【0034】
23.
モノマー単位Aが下記式:
【化21】
【化22】
(式中、Rは、水素、メチル、又はエチルであり、nは1〜10の範囲である。)
で表される、上記20〜22のコポリマーバインダー。
【0035】
24.
下記式:
【化23】
(式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・U
3は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基であり;且つ
・Zはアルキル又はアリールであり;
そのアルキルは任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルキルオキシ、又はハライドで置換されていてもよく;且つ
そのアリールは、任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルキルオキシ、又はハライドで置換されていてもよい1つ以上のアルキルで、任意選択により場合によっては置換されていてもよい。)
のモノマー単位Bを含む、上記20〜23のいずれかのコポリマーバインダー。
【0036】
25.
コポリマーバインダーのモノマー単位Bが下記式:
【化24】
(式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキル置換基を表し;そのアルキル置換基は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく;
・U
4は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;
・V
4は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し;かつ
・Aは−COOH、−PO(OH)
2、
【化25】
である。)
である上記20〜24のいずれかのコポリマーバインダー。
【0037】
26.
モノマー単位Bが下記式:
【化26】
(式中、
・Rは水素又はメチルであり;
・R1は水素又はアルキルであり;且つ
・xは1〜10の範囲の繰り返し単位の数である。)
で表される、上記20〜25のいずれかのコポリマーバインダー。
【0038】
27.
カチオン重合によって架橋反応をしうる少なくとも1つの官能基が、N−アルコキシメチルアミド(例えば、N−メトキシメチルアミド)、N−ヒドロキシメチルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド)、N−アルコキシメチルメタクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルメタクリルアミド)、ヒドロキシル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、エポキシ、又はオキセタンである、上記20〜26のいずれかのコポリマーバインダー。
【0039】
28.
モノマー単位Dが下記式:
【化27】
(式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり、
・Eは存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し、
・Fは、任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルであるか、あるいは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖であって、その鎖は、任意選択で1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルと一方もしくは両方の末端で結合していてもよく、
・Gはカチオン重合によって架橋反応をすることができる官能基である。)
で表される、上記27のコポリマーバインダー。
【0040】
29.
モノマー単位Dが下記式:
【化28】
(式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R1は水素又はアルキルであり;且つ
・m及びnは1〜50の範囲である。)
で表される、上記20〜28のいずれかのコポリマーバインダー。
【0041】
30.
A5がモノマー単位Dを表す、上記20〜29のいずれかのコポリマーバインダー。
【0042】
31.
・上記1〜19のいずれか一つで定義されたコポリマー及び/又は上記20〜30のいずれか一つで定義されたコポリマーバインダー;
・フリーラジカル及び/又は酸を発生させる化合物;
・近赤外線吸収性化合物;及び
・場合により、任意選択による添加物、
を含む、ネガ型で機能するリソグラフィック印刷プレートのための輻射線感応性コーティング組成物。
【0043】
32.
約20〜約60w/w%の上記コポリマーを含む、31のコーティング組成物。
【0044】
33.
約2〜約30w/w%の上記コポリマーバインダーを含む、31又は32のコーティング組成物。
【0045】
34.
近赤外輻射線感応性コーティングを含むネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートであって、そのコーティングが上記31〜33のいずれかで定義されたコーティング組成物から調製されている印刷プレート。
【0046】
35.
近赤外輻射線感応性コーティングを含むネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートであって、そのコーティングが
・上記1〜19のいずれか一つで定義されたコポリマー及び/又は上記20〜30のいずれか一つで定義されたコポリマーバインダー;
・フリーラジカル及び/又は酸を発生させる化合物;
・近赤外線吸収性染料;及び
・場合により、任意選択による添加剤、
を含む印刷プレート。
【0047】
36.
上記1、3、4、20、22、及び23のいずれか一つで定義されたモノマー単位Aに相当するモノマー。
【0048】
37.
上記1、5〜7、20、及び24〜26のいずれか一つで定義されたモノマー単位Bに相当するモノマー。
【0049】
38.
上記1及び8〜12のいずれか一つで定義されたモノマー単位Cに相当するモノマー。
【0050】
39.
上記1、13〜15、20、及び27〜29のいずれか一つで定義されたモノマー単位Dに相当するモノマー。
【発明を実施するための形態】
【0053】
さらに詳しく本発明に戻ると、第一の側面では、シアノ含有ペンダント基を含むモノマー単位を含むコポリマーであって、そのシアノがコポリマーの骨格に直接結合していないコポリマーを提供する。実施態様では、このコポリマーは、ネガ型で機能する熱リソグラフィック印刷プレートのための近赤外もしくはUV輻射感応性コーティング組成物に用いられるものである。
【0054】
本明細書で用いる場合、コポリマーは少なくとも2種の異なる種類のモノマー単位から作られるポリマーである。そのようなモノマー単位は比較的小さな分子であり、これが比較的多い数の他のモノマー単位と連結して鎖、すなわちポリマー又はコポリマーを形成している。本明細書で用いる場合、ポリマー又はコポリマーの「骨格」とは、そのポリマー又はコポリマーの連続鎖を一緒に作っているモノマー単位からの一連の共有結合した原子群を意味する。「ペンダント基」は、コポリマーの骨格の一部ではないがその骨格に結合した原子群である。
【0055】
次にそのように、「シアノ含有ペンダント基」はシアノ(−C≡N)基を含むペンダント基である。したがって、上記において(下のA1及びA2においても同様に)、ペンダント基に含まれるシアノ基は、コポリマーの骨格に直接結合されておらず、それはむしろペンダント基に結合されており、ペンダント基が代わりに骨格に結合している。より詳細には、シアノ基含有ペンダント基を有するモノマー単位は、
【化29】
(式中、Rは任意のペンダント基である)
であることはできない。むしろこのモノマー単位は式:
【化30】
(式中、R及びQは任意のペンダント基である)
で表されることができる。
【0056】
本明細書で、「モノマー」は重合した場合にモノマー単位になる化合物である。たとえば、
【化31】
は、ポリマー又はコポリマー中で
【化32】
のモノマー単位を生成するモノマーである。
【0057】
実施態様において、上記コポリマーは、
・シアノ含有ペンダント(pendant)基を含み、そのシアノがコポリマーの骨格に直接結合していないモノマー単位A;
・フィルム形成性ペンダント基を含むモノマー単位B;
・ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)を含む側鎖を含み、その側鎖が、アミド、カルバメート、エステル、又はウレア連結基を介してコポリマーの骨格に結合されているモノマー単位C;並びに
・任意選択成分として場合によっては、カチオン重合によって架橋反応をすることができる少なくとも1つの官能基を含むモノマー単位D、
を含む。
【0058】
ある実施態様においては、上記コポリマーは、上に挙げたタイプのモノマー単位のうち2種以上のモノマー単位を含む。
【0059】
本明細書で用いる場合、「側鎖」は多くのより小さな繰り返し単位を含むペンダント基である。より具体的には、「ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)を含む側鎖」は、いくつかのポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)モノマー単位を含む側鎖である。そのような側鎖は1種類よりも多いモノマー単位を同時に含むことができる。
【0060】
ある実施態様においては、上記コポリマーは以下の一般式を有する。
【化33】
(式中、
・a、c、及びdは、約0.01〜約0.90の範囲のモル比であり;
・b及びeは、約0〜約0.90の範囲のモル比であり;
・A1はモノマー単位Aを表し;
・A2は別のモノマー単位A又はモノマー単位Bを表し;
・A3はモノマー単位Cを表し;
・A4は別のモノマー単位Bを表し;且つ
・A5は別のモノマー単位B又はモノマー単位Dを表す。
【0061】
上の式はコポリマーがどのようなタイプであるか(ブロック、交互、ランダムなど)を特定することを意味しない。むしろ、全てのタイプのコポリマーがそれに含まれることを意図している。
【0062】
ある実施態様においては、a、b、c、d、及び/又はeは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、又は0.8あるいはそれより大きい。ある実施態様では、a、b、c、d、及び/又はeは0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1あるいはそれ未満である。
【0063】
上において、b及びeは0であってもよく、これはA2及びA5は任意成分(あってもなくてもよい)であることを意味する。したがって、そのような実施態様では、A2及び/又はA5は上記化学式中に存在しない。
【0064】
ある実施態様では、A5はモノマー単位Dのみを表す。
【0065】
[モノマー単位A]
ある実施態様において、モノマー単位Aは下記式で表される。
【化34】
(式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキルもしくはアルキルオキシ置換基を表し、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で場合によっては1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよく、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択で場合によっては1つ以上のシアノで置換されていてもよく(ある実施態様ではそのアルキル及びアルキルオキシ置換基は1〜10の炭素原子を有する);
・U
1はアミド又はエステル連結基であり;
・V
1は存在しないか、あるいは1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、もしくはカルバメート官能基で任意選択により置換されていてもよいアルキルを表し、そのアルキルは任意選択で場合により1つ以上のシアノで置換されていてもよい(ある実施態様ではアルキルは1〜15の炭素原子を有する);且つ
・Wは−CN又は
【化35】
である。)
【0066】
本明細書において、アルキルが官能基を含む(あるいは任意選択で含んでいてもよい)と言った場合、それはその官能基がそのアルキルの末端か、そのアルキルの任意の2つの炭素原子の間のいずれかに存在しうることを意味する。もちろん、1つより多い官能基がアルキルに含まれている場合、その官能基はアルキルの炭素原子によって必ずしも分離されている必要はなく、すなわちそれらは互いに直接結合していてもよい。そのような官能基(以下に示すように2つの利用可能な結合を有するもの)がアルキルの末端に位置している場合、その2つの利用可能な結合のうち一つはそのアルキルの末端の炭素原子に結合し、他方は水素原子に結合しているか、あるいはそのアルキルの末端に結合されていることが示されている基に結合している。
【0067】
本明細書において、アルキルが基で置換されている(あるいは任意選択で場合によっては置換されている)という場合、この表現は当技術分野での通常の意味を有し、すなわち、アルキルの水素原子の一つがその基で置換されている。
【0068】
より詳細には、エーテル官能基は−O−であり、エステル官能基(又は連結基)は−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−であり、アミン官能基(又は連結基)は−NR
3−であり、アミド官能基(又は連結基)は−(C=O)−NR
3−又は−NR
3−(C=O)−であり、ウレア官能基(又は連結基)は−NR
3−(C=O)−NR
3−であり、ピペラジニル官能基(又は連結基)は、
【化36】
であり、スルホンアミド官能基は−SO
2−NR
3−又は−NR
3−SO
2−であり、カルバメート官能基は−NR
3−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−NR
3−である。これらの官能基では、R
3は水素又はアルキルであり、そのアルキルは任意選択によって1つ以上のヒドロキシル、アルキルオキシ、又はハライドで置換されていてもよい。
【0069】
具体的な態様では、モノマーAは下記式で表される。
【化37】
【化38】
式中、Rは、水素、メチル、又はエチルであり、nは1〜10の範囲である。
【0070】
関連する側面では、本発明はモノマーにも関する。より具体的には、本発明は、上述したモノマーAの任意のもの及び全てのものに関連するモノマーに関するものであり、そのそれぞれあるいは群として一緒に、並びにそれらの任意の及び全ての一部集団に関する。
【0071】
簡単のために、これらのモノマーの式はここでは繰り返さない。当業者は上に示したモノマー単位Aの式からこれらのモノマーの式を容易に想到する。実際に、本明細書で用いるとおり、「モノマー」は重合によってモノマー単位となる化合物である。例えば、
【化39】
は、ポリマー又はコポリマー中の下記モノマー単位:
【化40】
を生成するモノマーである。当業者は、任意の与えられたモノマー単位に対応するモノマーは、2つの別のモノマー単位(上の式においてその左と右)にそのモノマー単位を連結させている2つの結合が一つの二重結合によって置き換えられていることを除いてそのモノマー単位と同じであることを容易に理解するだろう。
【0073】
モノマー単位Bは、良好なフィルム形成性と現像性をもたらすモノマー単位である。
【0074】
ある実施態様では、A2、A4、及び/又はA5中のモノマー単位Bは下記式で表される。
【化41】
式中、
・Rは、水素、メチル、又はエチルであり;
・U
3は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;且つ
・Zはアルキル又はアリールであり;
そのアルキルは任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルキルオキシ、又はハライドで置換されていてもよく;且つ
そのアリールは、任意選択により1つ以上のヒドロキシル、アルキルオキシ、又はハライドで置換されていてもよい1つ以上のアルキルで、任意選択により場合によっては置換されていてもよい。
【0075】
上からわかるとおり、これらのモノマー類はアルキル又はアリールペンダント基を含む。そのアルキル及びアリール基は、有機溶媒への溶解度を高める。有機溶媒中へのコポリマーの溶解度は、したがって、これらのモノマー単位のモル比を変えることによって調節することができる。
【0076】
ある実施態様では、A2、A4、及び/又はA5中のモノマー単位Bは下記式で表される。
【化42】
式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R
1は存在しないか、又は1〜4つのアルキル置換基を表し;そのアルキル置換基は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく;
・U
4は存在しないか、又はアミドもしくはエステル連結基を表し;
・V
4は存在しないか、又は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、もしくはカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し;かつ
・Aは−COOH、−PO(OH)
2、
【化43】
である。
【0077】
上で、V
4は、アルキルの一部にいくつかのポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)の繰り返し単位を含む場合を含むことを意味する。
【0078】
そのようなモノマー単位は、水性アルカリ溶液中への溶解度を高め、なぜならそれらが酸性官能基、例えば、カルボキシル基(−COOH)又はリン酸基(−PO(OH)
2)を含むからである。水性アルカリ溶液中へのコポリマーの溶解度は、したがって、これらのモノマー単位のモル比を変えることによって調節することができる。
【0079】
ある実施態様では、モノマー単位Bは下記式で表される。
【化44】
【化45】
式中、Rは水素又はメチルであり、R1は水素又はアルキル(ある態様では、アルキルは1〜10の炭素数を有する)であり、且つxは1〜10の範囲の繰り返し単位の数である。
【0080】
ある態様では、モノマー単位Bは、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキルアクリルアミド、アルキルメタクリルアミド、スチレン、及びそれらの組み合わせを含めたエチレン性モノマーのフリーラジカル重合によって得られ、ここで、ある態様ではアルキルは1〜10の炭素原子を有する。
【0081】
関連する側面で、本発明はモノマーにも関する。より具体的には、本発明は上述したモノマー単位Bのいずれか又は全てに対応するモノマーに、個々にあるいは群として一緒に、ならびにそれらの一部のいずれか又は全ての構成部分に関する。
【0082】
簡潔さのために、これらのモノマーの式はここでは繰り返さない。当業者は上に示したモノマー単位Bの式からこれらの式を容易に推論することができる。事実、本明細書で用いる場合、「モノマー」は重合によってモノマー単位になる化合物である。例えば、
【化46】
は、ポリマー又はコポリマー中、
【化47】
のモノマー単位を作り出すモノマーである。当業者は任意の与えられたモノマー単位に対応するモノマーが、そのモノマー単位を(上の式中の右と左に)2つの他のモノマー単位を連結している2つの結合が一つの二重結合によって置き換わられていることを除いてそのモノマー単位と同じであることを容易に理解するだろう。
【0084】
上述したように、モノマー単位Cは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)を含む側鎖を含んでおり、その側鎖はそのコポリマーの骨格にアミド、カルバメート、エステル、又はウレア基によって結合されている。
【0085】
ある態様では、モノマー単位Cの側鎖には、ヒドロキシル基、メトキシ基、又はシアノ基含有置換基が末端にある。シアノ基は接着を促進する。ヒドロキシル及びメトキシ基はカチオン重合による架橋反応をしうる。このポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)を含む側鎖は、内部界面活性剤として作用する。ポリマー粒子は、側鎖が毛髪である毛玉として考えることができる。これらの毛髪は溶液中でそのポリマー粒子を安定化する。
【0086】
ある態様では、モノマー単位Cは下記式で表される。
【0087】
【化48】
式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・Jは存在しないか、あるいはアミド、エステル、カルバメート、又はウレア連結基を表し;
・K及びLは一緒になって側鎖を形成し、Kはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖を含み、且つLは−OH、−OCH
3、−CN、又は
【化49】
(式中、
R
1は存在しないか、あるいは1〜4つのアルキル又はアルキルオキシ置換基を表し、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、スルホンアミド、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく、そのアルキル及びアルキルオキシ置換基は任意選択により1つ以上のシアノで置換されていてもよい(ある態様では、アルキル及びアルキルオキシ置換基は1〜10の炭素原子を有する);
V
1は存在しないか、あるいは1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよいアルキルを表し、そのアルキルは任意選択で1つ以上のシアノで置換されていてもよい(ある態様では、アルキルは1〜15の炭素原子を有する)。
【0088】
ある態様では、1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート連結基が、K中のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖のいずれか又は両方の末端に結合している。あるいは、又はこの連結基に加えて、ある態様ではK中のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-プロピレングリコール)鎖のいずれか又は両方の末端にアルキルが結合しており、このアルキルは任意選択により場合によっては1つ以上のエーテル、エステル、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよい。ある態様では、このアルキルは1〜25の炭素原子を有する。
【0089】
より具体的態様では、モノマー単位Cは下記式で表される。
【0091】
上記式中、
・Rは独立に水素、メチル、又はエチルであり;
・x、y、及びnは1〜20の範囲であり;
・zは0〜20の範囲であり;
・Qは独立に、−O−、
【化51】
又は、−O−CH
2CH
2−NH−C(=O)−NH−CH
2−であり;
・Gは、ヒドロキシル、メトキシ、
【化52】
【化53】
式中、nは上で定義したとおりであり、
Q及びG中のR1は水素又はアルキルである。
【0092】
ある態様では、Q及びG中のR1は1〜10の炭素原子をもつアルキルである。
【0093】
関連する側面では、本発明はモノマーにも関する。より具体的には、本発明は上述したモノマー単位Cのいずれか及び全てに、個別に又は一緒に群として対応するモノマー、並びにそれらの任意の部分及び全ての部分に対応するモノマーに関する。
【0094】
簡単のために、これらのモノマーの式はここでは繰り返さない。当業者は上に示したモノマー単位Cの式からこれらのモノマーの式を容易に想到する。実際に、本明細書で用いるとおり、「モノマー」は重合によってモノマー単位となる化合物である。例えば、
【化54】
は、ポリマー又はコポリマー中の下記モノマー単位:
【化55】
を生成するモノマーである。当業者は、任意の与えられたモノマー単位に対応するモノマーは、2つの別のモノマー単位(上の式においてその左と右)にそのモノマー単位を連結させている2つの結合が一つの二重結合によって置き換えられていることを除いてそのモノマー単位と同じであることを容易に理解するだろう。
【0096】
上述したとおり、モノマー単位Dはカチオン重合によって架橋反応をしうる少なくとも1つの官能基を含んでいる。
【0097】
ある態様では、モノマー単位D中のカチオン重合によって架橋反応をしうる少なくとも1つの官能基は、
N−アルコキシメチルアミド(例えば、N−メトキシメチルアミド)、
N−ヒドロキシメチルアミド、
N−アルコキシメチルアクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド)、
N−アルコキシメチルメタクリルアミド(例えば、N−メトキシメチルメタクリルアミド)、
ヒドロキシ、
アルコキシ、
ヒドロキシアルキル、
エポキシ、又は
オキセタン、
であり、ある態様では、アルキルは1〜10の炭素原子を有し、及び/又はアルコキシは1〜10の炭素原子を有する。
【0098】
ある態様では、モノマー単位Dは以下の式で表される。
【0100】
式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・Eは存在しないか、あるいはアミド又はエステル連結基であり;
・Fはアルキル(ある態様では1〜55の炭素原子を含む)であり、これは任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく;
あるいはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、及び/又はポリ(エチレングリコール-ran-ポリプロピレングリコール)鎖であって、この鎖は任意選択により一方又は両方の末端でアルキル(ある態様では1〜10の炭素原子を含む)と結合していてもよく、このアルキルは任意選択により1つ以上のエーテル、エステル、アミン、アミド、ウレア、ピペラジニル、又はカルバメート官能基を含んでいてもよく;
・Gはカチオン重合によって架橋反応をしうる官能基である。
【0101】
より具体的態様では、モノマー単位Dは下記式で表される。
【0103】
式中、
・Rは水素、メチル、又はエチルであり;
・R1は水素又はアルキルであり;
・m及びnは1〜50の範囲である。
【0104】
ある態様では、R1のアルキルは約1〜10の炭素原子を有する。
【0105】
関連する側面では、本発明はモノマーにも関する。より具体的には、本発明は上述したモノマー単位Dのいずれか及び全てに、個別に又は一緒に群として対応するモノマー、並びにそれらの任意の部分及び全ての部分に対応するモノマーに関する。
【0106】
簡単のために、これらのモノマーの式はここでは繰り返さない。当業者は上に示したモノマー単位Dの式からこれらのモノマーの式を容易に想到する。実際に、本明細書で用いるとおり、「モノマー」は重合によってモノマー単位となる化合物である。例えば、
【化58】
は、ポリマー又はコポリマー中の下記モノマー単位:
【化59】
を生成するモノマーである。当業者は、任意の与えられたモノマー単位に対応するモノマーは、2つの別のモノマー単位(上の式においてその左と右)にそのモノマー単位を連結させている2つの結合が一つの二重結合によって置き換えられていることを除いてそのモノマー単位と同じであることを容易に理解するだろう。
【0108】
別の側面では、本発明は上述したコポリマーを製造する方法に関する。この方法は、所望のコポリマーの構成モノマー単位に対応するモノマーを、そのコポリマーが溶ける溶媒中で共重合する工程を含む。
【0109】
コポリマーバインダーは、形成されたコポリマーを溶かすことができる有機溶媒中でのフリーラジカル重合によって、均一溶液を形成させることによって作ることができる。有機溶媒は、2−メトキシプロパノール、エチルグリコール、1,3−ジオキソラン、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、及びN,N−ジメチルホルムアミドであってもよい。
【0110】
[上記コポリマーを含むポリマー粒子]
【0111】
ある態様では、上述したコポリマーはポリマー粒子の形態である。本明細書で用いる場合、「ポリマー粒子」はポリマー又はコポリマーからできている小さな粒子である。
【0112】
ある態様では、ポリマー粒子は、約80〜約1000nm、より特に約150〜約300nmの範囲の粒径を有する。ある態様では、ポリマー粒子は、150、200、300、400、500、600、700、800nmあるいはそれより大きな粒径、及び/又は1000、900、800、700、600、400、300、200nm及びそれ未満の粒径を有する。
【0113】
ある態様では、ポリマー粒子は上で論じたようなコーティング組成物及び印刷プレートに用いられる。
【0115】
別の側面では、本発明は上述したポリマー粒子を製造する方法に関する。この方法は、所望のポリマー粒子を構成するコポリマーのモノマー単位に対応するモノマーを、このコポリマーが溶けない溶媒中で共重合させる工程を含む。
【0116】
このポリマー粒子は、したがって、形成されたコポリマーを溶かすことができない溶媒中でのフリーラジカル重合によって作ることができる。ある態様では、溶媒は水及び/又はアルコール、例えばn−プロパノールである。
【0118】
別の側面では、この発明は、
・モノマー単位A、これは上述したとおりの、シアノ含有ペンダント基を含み、そのシアノはコポリマーバインダーの骨格に直接結合しないモノマー単位である;及び
・少なくとも1種の別のタイプのモノマー単位、
を含むコポリマーバインダーに関する。
【0119】
本明細書で用いる場合、「コポリマーバインダー」は、粒子の形態にはなく、コーティング組成物に用いられるコポリマーであって、それは以下で説明するように、(A)組成物の膜形成性を向上させ、あるいは(B)その組成物から作られるコーティングの(2〜14の範囲のpHを有する)水性溶液中での溶解度を改変するものである。
【0120】
上記のとおり、コポリマーバインダー中のシアノ基(これはペンダント基中に含まれる)は、コポリマーの骨格に直接結合しておらず;それはむしろその骨格に結合しているペンダント基に結合している。
【0121】
ある態様では、このコポリマーバインダーは、
・モノマー単位A;
・モノマー単位B(これは上述したように膜形成性のペンダント基を含むモノマー単位である);及び
・任意選択により場合によってはモノマー単位D(これは上述したようにカチオン重合によって架橋反応をしうる少なくとも1つの官能基を含むモノマー単位である)、
を含む。
【0122】
ある態様では、このコポリマーバインダーは、上述した式1からA3を取り除いた式で表される。言い換えれば、このコポリマーバインダーは、c=0であり、A1、A2、A4、A5、a、b、d、e、及びモノマー単位A、B、及びDは上述のとおりである式1で表される。
【0123】
したがって、このコポリマーバインダーは式2:
【化60】
(式中、A1、A2、A4、A5、a、b、d、及びeは式1に関して上で定義したとおりであり、式1の別の態様である。)
で表される。
【0124】
ある態様では、コポリマーバインダーは上で論じたようなコーティング組成物及び印刷プレートに用いられる。
【0126】
別の側面では、本発明は、上述したコポリマーバインダーを製造する方法に関する。この方法は、所望のコポリマーバインダーの構成モノマー単位に対応するモノマーを、そのコポリマーバインダーが溶ける溶媒中で共重合する工程を含む。この共重合はコポリマーバインダーが溶ける溶媒中で行われる。
【0127】
したがって、このコポリマーバインダーは、形成されたコポリマーバインダーを溶かすことができる有機溶媒中でのフリーラジカル重合により、均一溶液を形成することによって作ることができる。この有機溶媒は、2−メトキシプロパノール、エチルグリコール、1,3−ジオキソラン、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、及びN,N−ジメチルホルムアミドであってよい。
【0128】
[近赤外線感応性コーティング組成物]
【0129】
別の側面では、本発明は、ネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートのための近赤外線感応性コーティング組成物に関し、この組成物は、
・上で定義したコポリマー、及び/又は上で定義したポリマー粒子、及び/又は上で定義したコポリマーバインダー;
・フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物;
・近赤外線吸収性化合物;及び
・任意選択で場合によっては添加剤、
を含む。
【0130】
以上より、ある態様では、上記コーティング組成物は、コポリマーの混合物、ポリマー粒子の混合物、ポリマーバインダーの混合物、フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物の混合物、及び/又は近赤外線吸収性化合物の混合物、並びに任意選択で場合によってはフィルム形成性添加剤を含むことができる。
【0131】
そのようなコーティング組成物は、ネガ型で機能するリソグラフィックオフセット印刷プレートのためのコーティングを調製するために用いることができる。このコーティング組成物は近赤外線感応性であり、輻射への曝露時に、(そのコーティング組成物を用いて作った)コーティング中で物理的又は化学的過程があり、それによって(1)画像を画かれた領域は、近赤外線の曝露後に、画像が画かれていない領域とは異なっており、且つ(2)現像がその印刷プレート上に画像を作り出す。
【0132】
ある態様では、コーティング組成物は、約20〜約60w/w%の間のコポリマー及びポリマー粒子の合計量を含み、さらに特定の態様では約30〜約50w/w%の合計量を含む。
【0133】
ある態様では、コーティング組成物は、約2〜約30w/w%のコポリマーバインダーを、より特に約5〜約20w/wのバインダーを含む。
【0134】
[フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物]
【0135】
フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、当分野ではフリーラジカル及び/又はカチオン性開始剤ともよばれる。本明細書で用いる場合、フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、近赤外輻射又は熱に曝露させたときに、あるいは電子を受け取ったときにフリーラジカル、酸、又は酸とフリーラジカルの両方を生成する化合物である。本発明の組成物などの組成物中で用いるために適している、当業者に公知の任意の、フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物を用いることができる。
【0136】
これらのフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、例えば、米国特許出願2007/0269739号、同2008/0171286号、及び同2009/0035694号(これらを参照により本明細書に援用する)に記載されている反応性オリゴマーであることができる。例えば、フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、商品名タクセド(Tuxedo)(登録商標)600PFBでアメリカン・ダイ・ソース社(American Dye Source, Inc.)(カナダ国、ケベック、バイエドウルフェ(Baie d’Urfe))から市販されているものであってよい。この製品は
図1〜6に示した反応性ヨードニウムオリゴマー類の混合物である。ある態様では、上記コーティング組成物は、約20〜60w/w%のそのようなフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物を含む。
【0137】
これらのフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、例えば、酸を生成するジアゾ化合物及びポリマーであってもよい。これらは以下の化合物及びポリマーであってよく、そのうちのいくつかはPCAS(フランス国)から市販されている。
【0139】
式中、
AはPF
6、SbF
6、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、及びBF
4を表し、
Rは、直鎖状又は分枝状のアルキル、あるいはポリ(アルキレングリコール)を表し、
nは、1〜50の範囲の繰り返し単位の数を表す。
ある態様では、上記のアルキルは1〜5の炭素原子を有し、ポリ(アルキレングリコール)は1〜50の範囲の繰り返し単位を有する。
【0140】
ある態様では、これらのフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物は、例えば、フリーラジカルを生成するトリアジン化合物であってもよい。これらは以下の化合物であってよく、そのうちのいくつかはPCAS(フランス国)から市販されてもいる。
【0142】
式中、Rは、直鎖状又は分枝状アルキル、あるいはポリ(アルキレングリコール)を表す。ある態様では、このアルキル及び/又はアルキレンは1〜10の範囲の炭素原子を有し、ポリ(アルキレングリコール)は1〜50の繰り返し単位を有する。
【0143】
ある態様では、コーティング組成物は、約1.0〜約3.0w/w%のそのようなジアゾ及びトリアジン化合物を含む。
【0145】
近赤外線を吸収する化合物(近赤外線吸収性化合物)は分子染料又はポリマー染料であってよい。本明細書で用いる場合、近赤外線吸収性化合物は、近赤外線を吸収し、次に熱及び/又は励起した電子を生みだし、これがフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物に供与されることができる。本発明の組成物などの組成物に用いるために適した当業者に公知のそのような分子又は高分子の近赤外線吸収性染料が用いることができる。
【0146】
ある態様では、この近赤外線吸収性化合物は、アゾ染料又はアリールアミン染料であることができる。本明細書で用いる場合、「アゾ染料」は当分野におけるその通常の意味を有する。さらに具体的には、この「アゾ染料」は、アゾ官能基すなわち二重結合で結合した2つの窒素原子を含む発色団(クロモフォア):R−N=N−R′として理解することができる。ある態様では、このR及びR′基は芳香族であり、これが、N=N基を延長された非局在化された系の一部にすることによって安定化させることを助けている。本明細書で用いる場合、「アリールアミン染料」は当分野におけるその通常の意味を有する。さらに具体的には、「アリールアミン染料」はアリールアミン基、すなわち窒素原子が結合したアリール基を含む発色団:アリール−N(R
1)(R
2)(式中、R
1及びR
2は独立に水素、アルキル、又はアリールである)として理解することができる。ある態様では、アルキルは、直鎖状、分枝状、又は環状のC
1〜C
12であってよく、アリールは5〜12の炭素原子を含んでいてもよい。
【0147】
ある態様では、近赤外線吸収性化合物は、以下のうちの一つであり、これらはアメリカン・ダイ・ソース社(ベーデュルフェ、ケベック、カナダ国)から市販されている。
【0149】
ある態様では、コーティング組成物は、約1.0〜約10w/w%のそのような赤外線吸収性染料を含み、より特に約2.0〜約6.0w/w%の間である。
【0150】
ある態様では、近赤外線吸収性化合物は、米国特許出願番号第2008/0171286号に記載されている近赤外線吸収性ポリマー粒子であり、これを参照により本明細書に援用する。ある態様では、このコーティング組成物は約10〜約50w/w%のそのような近赤外線吸収性ポリマー粒子を含む。
【0152】
ある態様では、上記コーティング組成物は1種以上の添加剤をさらに含む。そのような添加剤は、フィルム形成性添加剤、発色剤、安定化剤、顔料、可視色素などであってよい。そのような添加剤及びそれらの使用は当業者に周知である。
【0153】
したがって、上記コーティング組成物は、例えば、顔料及び可視色素を含んでいてもよい。ある態様では顔料はアセタールコポリマー及び2−メトキシプロパノール溶液中に分散したフタロシアニンブルー15:3である。この材料はマイラン化学社(トラビン、ベトナム)から市販されている。この顔料分散物は、0.5〜5w/w%の範囲の量でコーティング組成物中に使用することができる。
【0154】
このコーティング組成物はレーザー画像形成後の良好な画像印刷をもたらすための発色剤を含むこともできる。本発明の組成物に用いるために、適していることが当業者に公知の任意の発色剤を用いてもよい。発色剤はトリアリールピリジン、キサンテン、及びイソベンゾフラノンの誘導体であってもよい。ある態様では、発色剤は無色であり、次にフリーラジカル又は酸の存在下で発色するように選択してもよい。例えば、発色剤は以下のものであることができる。
【0155】
・3′,6′−ビス[N−[2−クロロフェニル]−N−メチルアミノ]スピロ[2−ブチル−1,1−ジオキソ[1,2−ベンゾイソチアゾール−3(3H),9′−(9H)キサンテン]](米国特許第4,345,017号の方法によって調製した);
・3′,6′−ビス[N−[2−[メタンスルホニル]フェニル]−N−メチルアミノ]スピロ[2−ブチル−1,1−ジオキソ[1,2−ベンゾイソチアゾール−3(3H),9′−(9H)キサンテン]](米国特許第4,345,017号の方法によって調製した);
・9−ジエチルアミノ[スピロ[12H−ベンゾ(a)キサンテン−12,1′(3′H)−イソベンゾフラン)−3′−オン](カナダ国のBFグッドリッチ社から入手可能);
・2′−ジ(フェニルメチル)アミノ−6′−[ジエチルアミノ]スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−(9H)−キサンテン]−3−オン(カナダ国のBFグッドリッチ社から入手可能);
・3−[ブチル−2−メチルインドール−3−イル]−3−[1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル]−1−(3H)−イソベンゾフラノン(カナダ国のBFグッドリッチ社から入手可能);
・6−[ジメチルアミノ]−3,3−ビス[4−ジメチルアミノ]−フェニル−(3H)イソベンゾフラノン(カナダ国のBFグッドリッチ社から入手可能);
・2−[2−オクチルオキシフェニル]4−[4−ジメチルアミノフェニル]−6−フェニルピリジン(カナダ国のBFグッドリッチ社から入手可能);又は
・ロイコラクトン染料、例えば、Blue−63、GN−169、及びRed−40、これらは日本の山本化成社から入手可能である。
【0156】
発色剤はコーティング組成物中に、約0.5〜5w/w%の範囲の量で用いてよい。
【0157】
上記コーティング組成物は、印刷時の運転長さを向上させるために接着促進剤を含むこともできる。本件の組成物に用いるために、適していることが当業者に公知の任意の接着促進剤を用いることができる。接着促進剤は、以下の化学式を有する、リン酸基を含む不飽和オリゴマーであってもよい。
【0159】
上記式中、Rは水素又はメチルであり、xは1〜10の範囲の繰り返し単位数である。そのような接着促進剤は、商品名Sipormer(登録商標)PAM100及びSipormer(登録商標)PAM200(ローディア社から入手可能)、又はPhosmer(登録商標)A、Phosmer(登録商標)M、Phosmer(登録商標)PE、Phosmer(登録商標)PP、及びPhosmer(登録商標)MH(日本国のユニケミカル社から入手可能)として市販されている。接着促進剤はコーティング組成物中に約0.5〜約5w/w%の範囲の量で用いてもよい。
【0160】
コーティング組成物は1種以上の好適な溶媒を含むこともできる。これによって基材へのコーティングの形成が可能になる。この目的のために適している当業者に公知の任意の溶媒を用いることができる。そのような溶媒の非限定的な例には、n−プロパノール、イソプロパノール、2−メトキシプロパノール、エチルグリコール、水、及びそれらの混合物が含まれる。しかし溶媒はポリマー粒子を溶かすべきではない。
【0161】
[ネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレート並びに製造及び使用の方法]
【0162】
別の側面では、本発明は、近赤外線感応性コーティングを含むネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートに関し、このコーティングは、上述したコーティング組成物から調製されたコーティングである。
【0163】
別の関連する側面では、本発明は、近赤外線感応性コーティングを含むネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートに関し、そのコーティングは以下のものを含む。
1.コポリマー、ポリマー粒子、及び/又はコポリマーバインダー;
2.上で定義したフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物;
3.上で定義した近赤外線吸収性染料;及び
4.任意選択により場合によって添加剤。
これらの全ては上で定義したとおりである。
【0164】
近赤外線感応性コーティングは基材に堆積させる。ある態様では、基材は陽極酸化アルミ、プラスチックフィルム、又は紙である。アルミニウム基材はブラシがけで粗くするか、電気的に粗くすることができ、次に酸性溶液を用いて陽極酸化する。近赤外線感応性コーティングは、約0.5〜約2.5g/m
2の間のコーティング質量を有していてもよい。
【0165】
ある態様では、当業者に公知のように、基材と近赤外線感応性コーティングとの間及び/又は近赤外線感応性コーティングの上面に1つ以上の層があってもよい。
【0166】
例えば、ポリマー接着促進及び/又は断熱の層が、基材と近赤外線感応性コーティングの間に存在していてもよい。この層は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸-co-ビニルリン酸)、又はポリビニルリン酸を含む水性溶液から、これを次に約110℃で熱風を用いて乾燥させることによって得ることができる。この接着促進及び/又は断熱層のコーティング質量は、約0.1〜約1.0g/m
2の間であってよい。
【0167】
近赤外線感応性コーティングに加えて印刷プレート上に存在することができる層の別の例は、環境から近赤外線感応性コーティングを保護し、あるいはいくらかの利点、例えば、低減されたべたつき又は引っ掻きに対する向上した耐性をもたらすためのオーバーコートである。
【0168】
別の関連する側面では、本発明はネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートの製造方法に関するものであり、この方法は、以下の工程:a)基材を準備する工程、及びb)上で定義したコーティング組成物をその基材にコーティングする工程、を含む。ある態様では、この方法は、工程b)の前に基材をポリマー型接着促進及び/又は断熱層でコーティングする工程をさらに含む。
【0169】
別の関連する側面では、本発明は印刷方法に関するものであり、その方法は以下の工程:a)上で定義したネガ型リソグラフィックオフセット印刷プレートを準備する工程、及びb)その印刷プレートに近赤外照射で画像形成する工程、c)その印刷プレートを現像する工程、及びd)その印刷プレートを印刷機で用いて印刷する工程、を含む。
【0170】
印刷プレートは、コンピュータからプレートへのデジタルオフセット印刷技術における近赤外レーザー画像形成装置を用いて直接画像形成されうる。
【0171】
ある態様では、画像形成されたプレートは、水又は現像液を用いて印刷外で現像される。代わりの態様では、画像形成されたプレートは、湿し液及び水を用いて印刷時に現像される。
【0172】
使用において、近赤外線感応性コーティングが近赤外線照射を用いて画像形成される場合、近赤外線吸収性化合物がその照射を吸収する。その近赤外線吸収性染料分子のうちのいくらかのものの電子がその基底状態から励起状態へと励起される。その近赤外線吸収性染料分子の励起した電子は、次にフリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物に供与されることができる。いくつかの他の赤外線染料分子は分解して、熱といくらかの酸を生じさせる。電子を受け取ったとき、並びに/あるいは熱及び/又は酸に曝されたときに、そのラジカル及び/又は酸を生成する化合物はフリーラジカル及び/又は酸を生成する。ポリマー粒子は、熱に曝されると、一緒に融合し、これが、イメージ形成されていない領域とは対照的に、画像形成された領域を基材へよりよく接着させる。さらに、近赤外線感応性コーティング中のコポリマー、ポリマー粒子、コポリマーバインダー、フリーラジカル及び/又は酸を生成する化合物、又は任意のその他の成分が、カチオン重合によって架橋反応をしうる官能基を含む場合には、生じたフリーラジカル及び/又は酸がこれらの化合物の重合を引き起こす。これが画像形成された領域中での3次元架橋網目をもたらす。これらの変化が、なお可溶性を保っている非画像形成領域とは対照的に、画像領域を、水又は現像液(印刷外(オフプレス)現像)あるいは湿し液及びインク(印刷時(オンプレス)現像)に対する溶解性が低くなるようにする。したがって画像形成された領域におけるこれらの変化の両方が、非画像形成領域から画像形成領域を区別して、印刷プレートの現像(オン又はオフプレス)を可能にする。
【0173】
本明細書に記載した化合物のいくつかは、様々なタイプの異性体(例えば、光学、幾何、及び/又は位置異性体)として存在しうる。本発明はそのような異性体の全てを含む。
【0174】
別段の記載がない限り、本明細書で用いる場合、「アルキル」は1〜60の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、「アリール」は1〜3の環を有し且つ場合によっては1又は2つのヘテロ原子(例えば、N、O、及びS)を含んでいてもよいアリール基を意味する。同様に「アルキルオキシ」は、1〜60の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のアルキルオキシ(R−O−)基を意味する。ある態様では、アルキル及びアルキルオキシは24、20、12、6またはそれ未満の炭素原子を有する。ある態様では、アルキル及びアルキルオキシは6、12、20、24又はそれより多い炭素原子を有する。
【0175】
本明細書では、別段の記載がない限りw/w%値はコーティング組成物の全乾燥質量を基準にしている。
【0176】
本明細書で用いる場合、「近赤外線」は電磁放射線、例えば、レーザーによって放射される放射線で、約700と約1100nmの間の波長をもつものを意味する。そのような近赤外線の非限定的な例は、ダイオードレーザーによって発せられる光であり、ダイオードレーザーはCreo−Kodak、大日本スクリーン、ハイデルベルグ、及びプレステックインターナショナルから入手できるプレートセッターを備えている。
【0177】
本明細書で用いる場合、「約」はそうして限定された数値の±5%を意味する。
【0178】
本発明のその他の目的、利点、及び特徴は、添付している図面を参照して、例のみの目的で与えられている本発明の具体的態様の以下の非限定的記載を読むことでより明確になるだろう。
【0180】
本発明を以下の限定されない例によってさらに詳細に説明する。これらの例は、以下の用語説明に挙げられた化合物を用いている。
【0184】
[ポリマー粒子及びポリマーバインダーの合成]
【0185】
ポリマー粒子の合成は、水冷コンデンサー、機械式攪拌機、滴下ロート、及び窒素又は酸素ガス導入口を備えた四つ口ガラス反応器中で行った。得られた物質の分子構造はプロトンNMR及びFTIRスペクトルによって決定した。得られたコポリマーの平均分子量は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を用い、ポリスチレン基準品で較正して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した。ポリマー粒子の粒径は、粒径解析装置(ブルックヘブン・インスツルメンツ・コーポレーションのModel90PLUS)によって測定した。
【0188】
以下に示す一般構造:
【化66】
(式中、a=0.50(100ミリモル)、b=0.15(30ミリモル)、c=0.02(4ミリモル)、d=0.30(60ミリモル)、e=0.03(6ミリモル)、x=10及びy=31)
を有するポリマー粒子を、1Lの四つ口フラスコ中で75℃にて窒素雰囲気下で一定の高剪断撹拌を用いて、対応するモノマーを溶かした46gのn−プロパノール及び107gの脱イオン水の混合物を加熱することによって合成した。30分間の加熱後、0.4gのV59をその反応混合物に添加した。溶液は重合60分以内に濁った。75℃で10時間の重合後、さらに0.5gのV59を反応混合物に添加し、重合をさらに14時間続けた。空気を反応混合物に導入し、75℃での撹拌をさらに2時間続けて重合を終わらせた。得られたポリマー粒子の分子量をテトラヒドロフラン溶液中で測定した。粒径はイソプロパノール−水溶液中(30−70w/w%)で測定した。
【0191】
以下の一般構造:
【化67】
(式中、a=0.50(100ミリモル)、b=0.02(4ミリモル)、c=0.20(40ミリモル)、d=0.25(50ミリモル)、e=0.03(6ミリモル))
を有するポリマー粒子を、1Lの四つ口フラスコ中で75℃にて窒素雰囲気下で一定の高剪断撹拌を用いて、対応するモノマーを溶かした107gのn−プロパノール及び46gの脱イオン水の混合物を加熱することによって合成した。30分間の加熱後、0.4gのV59をその反応混合物に添加した。溶液は重合60分以内に濁った。75℃で10時間の重合後、さらに0.5gのV59を反応混合物に添加し、重合をさらに14時間続けた。空気を反応混合物に導入し、75℃での撹拌をさらに2時間続けて重合を終わらせた。得られたポリマー粒子の分子量をテトラヒドロフラン溶液中で測定した。粒径はイソプロパノール−水溶液中(70−30w/w%)で測定した。
【0195】
以下の構造:
【化68】
(式中、a=0.38、b=0.22、c=0.15、及びd=0.25)
を有するコポリマーバインダーCN−BD01を、80℃、窒素雰囲気且つ一定の撹拌のもとで、300gのジメチルアセトアミド溶液中の45gのシアノメチルアセトアミド−エチルメタクリレート、12.0gのメタクリル酸、12.0gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び12.0gのスチレンのフリーラジカル重合によって調製した。2gのVazo59をフリーラジカル開始剤として用いた。重合を24時間後に停止させた。得られたポリマーの平均分子量は、ポリスチレン標準品を用いたGPCによって測定して45,000g/モルだった。このポリマー溶液をジメチルアセトアミドで調節して15%固形分質量とし、これはこのまま使用できた。
【0197】
以下に示した化学構造:
【化69】
(式中、a=0.42、b=0.25、c=0.05、及びd=0.27)
を有するコポリマーバインダーCN−BD02を、80℃、窒素雰囲気且つ一定の撹拌のもとで、300gのジメチルアセトアミド溶液中の45gのシアノメチルアセトアミド−エチルメタクリレート、12.0gのProsmer(登録商標)PE、12.0gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び12.0gのスチレンのフリーラジカル重合によって調製した。2gのVazo59をフリーラジカル開始剤として用いた。重合を24時間後に停止させた。得られたポリマーの平均分子量は、ポリスチレン標準品を用いたGPCによって測定して32,000g/モルだった。このポリマー溶液をジメチルアセトアミドで調節して15%固形分質量とし、これはこのまま使用できた。
【0199】
以下の構造:
【化70】
(式中、a=0.38、b=0.31、c=0.15、及びd=0.16)
を有するコポリマーバインダーCN−BD03を、80℃、窒素雰囲気且つ一定の撹拌のもとで、300gのジメチルアセトアミド溶液中の45gのN−(4−シアノフェニル)カルボニルエチルメタクリレート、16.0gのメタクリル酸、12.0gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び10.0gのスチレンのフリーラジカル重合によって調製した。2gのVazo59をフリーラジカル開始剤として用いた。重合を24時間後に停止させた。得られたポリマーの平均分子量は、ポリスチレン標準品を用いたGPCによって測定して47,000g/モルだった。このポリマー溶液をジメチルアセトアミドで調節して15%固形分質量とし、これはこのまま使用できた。
【0200】
[ネガ型近赤外線感応性リソグラフィックオフセット印刷プレート]
【0201】
印刷プレートを以下のようにして調製し、試験した。コーティングしたプレートには、830nmのレーザーを備えたスクリーンプレートライト8600Sプレートセッターを用いて90%のレーザー出力及び700RPMのドラム速度で画像形成をさせた。画像形成されたプレートは、ガム溶液(WG100、ベルギー国のAfga社から入手可能)又はSP200現像液(米国のKodak社から入手可能)をスプレーすることによってオフプレス現像した。現像したプレートは、HyPlus100ブラックインク(日本国の東洋インキグループから入手可能)及び97.0部の水中に3.0部のMYLAN−FS100を含む湿し液(湿し水)(ベトナム国のMyLanケミカルズ社から入手可能)を用いてスピードメーター74印刷機(ドイツ国のハイデルベルクから入手可能)に取り付けた。紙上の画像の10%ドットが損傷を受けたときを、このプレートの印刷長さと判断した。
【0203】
表1に示した組成をもつコーティング溶液を、塩酸電解で表面を粗くし、硫酸陽極酸化したアルミ基板にコーティングし、これをワイヤーを巻いた棒を使用して80℃にてNaF/NaH
2PO
4溶液で処理した。このコーティングした膜を熱い空気を用いて80℃で乾燥させた。得られたコーティング質量は、約1.0g/m
2だった。
【0207】
表IIに示した組成をもつコーティング溶液を、塩酸電解で表面を粗くし、硫酸陽極酸化したアルミ基板上にコーティングし、これを、ワイヤーを巻いた棒を使用して80℃にてNaF/NaH
2PO
4溶液で処理した。このコーティングした膜を熱い空気を用いて80℃で乾燥させた。得られたコーティング質量は、約1.0g/m
2だった。
【0210】
例14〜26によるプレートもレーザー画像形成の後すぐに印刷機上に備え付けた。このプレートは、約50回転後、紙の上にきれいで高解像度の画像をもたらした。この場合に得られた印刷数は、プレートをオフプレスで現像したときのものと同様だった。
【0211】
以上、本発明を具体的な態様によって説明しているが、それは添付した特許請求の範囲で定義された主題の発明の精神及び性質から離れることなく改変できる。
【0212】
[参考文献]
本明細書は多くの文献を参照しており(先行技術文献の欄)、その内容を参照によりその全体を本明細書に援用する。