(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749300
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】粉末セラミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/00 20060101AFI20150625BHJP
C12P 7/64 20060101ALN20150625BHJP
A61K 8/68 20060101ALN20150625BHJP
A61Q 19/10 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
C12P13/00
!C12P7/64
!A61K8/68
!A61Q19/10
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-158127(P2013-158127)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-27277(P2015-27277A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2014年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097825
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 久紀
(74)【代理人】
【識別番号】100137925
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 紀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敬典
(72)【発明者】
【氏名】名倉 泰三
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 輝久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】吉本 忠司
(72)【発明者】
【氏名】細貝 知弘
【審査官】
小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−120321(JP,A)
【文献】
特開2008−274106(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/084275(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/016558(WO,A1)
【文献】
ANTI-AGING MEDICINE,2010年,Vol.7, No.11,p.129-142、特に第130頁右欄第1-9行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甜菜パルプをエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮し、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行いその粘度を低下させ、酵素失活後に乳化処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥により粉末化する工程からなることを特徴とする、粉末セラミドの製造方法。
【請求項2】
酵素反応温度を10〜70℃、酵素反応時間を6分以上の条件で酵素反応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素反応温度を45〜50℃、酵素反応時間を0.5〜2時間の条件で酵素反応することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペクチナーゼを、原料となる甜菜パルプ量の0.0002重量%以上添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ペクチナーゼを、原料となる甜菜パルプ量の0.005〜0.2重量%添加することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
粉末化の助剤として、賦形剤を乳化処理前に添加することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
賦形剤として加工澱粉を添加することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
甜菜パルプをエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮したセラミド含有濃縮液について、この液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、その粘度を低下させた後に酵素失活処理を行い、その後乳化液とすることを特徴とする、セラミド含有乳化液の噴霧乾燥時の歩留向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甜菜パルプからの粉末セラミド製造方法等に関するものである。詳細には、甜菜パルプエタノール抽出物からの、セラミド分離、精製、噴霧乾燥による粉末セラミド製造方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
甜菜(ビート)は、砂糖抽出原料としてだけでなく、各種機能性成分(ラフィノース、ベタインなど)の抽出原料としても使用されている有用な植物である。最近では、セラミド(グルコシルセラミド)の抽出原料として、甜菜や甜菜パルプ(例えば甜菜根から砂糖を抽出した後の繊維質残渣)などが用いられている。
【0003】
植物由来のグルコシルセラミドは、セラミドにグルコースが1分子結合したスフィンゴ糖脂質の一種で、肌機能改善効果(保湿、抗アトピーなど)を発揮することが知られており、化粧品原料としてだけでなく食品原料(経口摂取用)としても利用されている注目の成分である。
【0004】
穀類、甜菜などの植物原料からグルコシルセラミド含有物を製造する方法としてはいくつか開示がされているが(特許文献1〜4)、いずれも原料からの抽出効率を検討したものであって、粉末化は減圧乾燥によるものが例示されているに過ぎず、スプレードライでの粉末化及びその効率化検討に関する記載はない。
【0005】
一方で、植物からのセラミド抽出を行うと、スフィンゴ糖脂質以外の成分が多く混在するなどのため、その精製や粉末化が効率的にできない場合が見受けられる。特に、粉末化は、工業的に大量生産を行うためには噴霧乾燥(スプレードライ)が最も好ましいが、セラミド含有液の噴霧乾燥は、その性状等から効率的に行うことが難しい場合が多い。
【0006】
このような背景の中、当業界において、植物原料から抽出したセラミド含有液を噴霧乾燥により効率的に粉末化できるような粉末セラミドの製造方法の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−092781号公報
【特許文献2】特開平11−193238号公報
【特許文献3】特開2000−080394号公報
【特許文献4】国際公開第2011/016558号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、甜菜パルプから簡便且つ効率的にセラミドを抽出・分離し、且つ、噴霧乾燥により効率的に粉末化できる粉末セラミドの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、甜菜パルプをエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮し、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、酵素失活後に乳化処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥により粉末化する工程により、粉末セラミドを効率よく取得できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の実施形態を例示すると次のとおりである。
(1)甜菜パルプをエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮し、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、酵素失活後に乳化処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥により粉末化する工程からなることを特徴とする、粉末セラミドの製造方法。
(2)酵素反応温度を10〜70℃、酵素反応時間を6分以上の条件で酵素反応することを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)酵素反応温度を45〜50℃、酵素反応時間を0.5〜2時間の条件で酵素反応することを特徴とする、(2)に記載の方法。
(4)ペクチナーゼを、原料となる甜菜パルプ量の0.0002重量%以上添加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)ペクチナーゼを、原料となる甜菜パルプ量の0.005〜0.2重量%添加することを特徴とする、(4)に記載の方法。
(6)粉末化の助剤として、賦形剤を乳化処理前に添加することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)賦形剤として加工澱粉を添加することを特徴とする、(6)に記載の方法。
(8)甜菜パルプをエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮したセラミド含有濃縮液について、この液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、その粘度を低下させた後に乳化液とすることを特徴とする、セラミド含有乳化液の噴霧乾燥時の歩留向上方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、甜菜パルプから高い収率で、且つ、噴霧乾燥時の歩留を必要以上に低下させることなく、簡便且つ効率的に粉末セラミドを製造できる。そして、本発明は、簡便性、噴霧乾燥時の歩留(収率)という点において、従来の方法と比較して非常に優れたものであり、粉末セラミドの工業的大量生産に適した方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1でのビートファイバー(BF)からの粉末セラミド製造フロー図を示す。
【
図2】実施例2でのビートファイバー(BF)からの粉末セラミド製造フロー図を示す。なお、酵素(スミチームSPG)量は、左から実施例1と同量(コントロール)、実施例1の10分の1量、実施例1の20分の1量、実施例1の50分の1量である。
【
図3】参考例でのビートファイバー(BF)からの粉末セラミド製造フロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、甜菜パルプを原料とし、ここからセラミドを抽出、精製、粉末化する方法等に係るものであるが、本発明において、甜菜パルプとは、ビート(甜菜)の根部より得られた繊維含有物を意味するものであって、製糖原料として知られる甜菜根からショ糖などの糖分を採取した後の粕(繊維質残渣)、あるいはこれを乾燥及び/又は粉砕したもの(例えばビートファイバーなど)が包含される。ここで、本発明に用いる甜菜パルプは、糖分抽出(除去)が十分に行われていることが好ましく、例えば製糖工場などで使用されているビート糖製造装置を用いて糖分を除去したものが好ましい。
【0014】
一例として、ビートファイバーの調製方法としては、甜菜根を細片状に切断するか或いは磨砕、搾汁し、次いで温湯に浸漬し、ショ糖などの可溶性成分を十分に抽出除去した残渣を脱色、脱臭、乾燥、粉砕、篩別等の必要な処理を施して得る方法が示される。なお、十分な乾燥及び/又は破砕処理をしたものは、ビートファイバーの繊維構造の多くが破壊されており、エタノールによる有効成分抽出原料としてより好適である。
【0015】
そして、本発明においては、上記のような甜菜パルプからエタノール抽出を行う。抽出溶媒としてはエタノールを使用するが、極性等の性質に差異がないのであれば他のアルコール類を使用しても差し支えない。しかし、アルコール類以外の溶媒(熱水や酸など)を使用する方法は、セラミド抽出には適していないため除外される。
【0016】
エタノール抽出は、甜菜パルプ重量に対し、エタノール(濃度90%以上)を0.1〜10倍量以上(例えば1〜10倍量、2〜5倍量などの範囲で)混合し、0〜78℃、好ましくは10〜70℃、更に好ましくは40〜60℃の温度で抽出処理を行ったあと固形分を除去(遠心分離、フィルター等での濾過など)する方法等が例示される。溶媒としてのエタノール量が5倍量未満の場合には、有効成分を十分量抽出するためにソックスレー抽出器などにより還流抽出を行うこともできる。また、5倍量以上のエタノールを用いる場合でも還流抽出を行うことは好適である。
【0017】
そして、上記のようにして得た甜菜パルプエタノール抽出液は、そのまま濃縮、及び/又は軟水を加えてから濃縮を行う。濃縮は定法により行うことができるが、減圧濃縮を行うことが好ましい。この工程では、抽出溶媒であるエタノールの大部分を除去するものであるが、水の大部分は除去せず、濃縮水溶液とする。
【0018】
次に、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行う。酵素反応工程で使用するペクチナーゼは、ペクチンを分解する触媒能を持つものであれば使用可能であるが、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のペクチナーゼを用いることが好ましい。これは、市販品も使用可能であり、市販品としてはスクラーゼN、スクラーゼS(以上三菱化学フーズ株式会社製品)、スミチームSPC、スミチームSPG(以上新日本化学工業株式会社製品)、ウルトラザイム、ビノザイム(以上ノボザイムズジャパン株式会社製品)などが例示される。
【0019】
酵素反応条件は、ペクチナーゼを原料となる甜菜パルプ量の0.0002重量%以上、好ましくは0.005〜0.2重量%添加し、酵素反応温度を10〜70℃(好ましくは45〜50℃)、酵素反応時間を6分以上(好ましくは0.5〜2時間)の条件で中性域で行う。但し、この条件は、原料や濃縮液の状態等により適宜調整でき、上記範囲に完全に限定されるものではない。この酵素処理により、濃縮液の粘度を低下させることが可能となる。
【0020】
酵素反応後は、酵素失活処理(例えば85〜95℃、1〜5分などの処理)を行い、冷却後に乳化処理を行う。乳化処理は、高速回転ミキサー(例えば5000〜10000rpm、10〜30分などの処理)、高圧乳化機(例えば0.01〜10MPaなどの処理)等により行うことができる。なお、粉末化の助剤として、賦形剤を乳化処理前に添加することが好ましい。また、必要に応じて、乳化処理の前及び/又は後に殺菌処理を行っても良い。
【0021】
賦形剤としては、加工澱粉を使用することが好ましく、デキストリン、粉末油脂、セルロースなども使用できるが、これも酵素反応液や乳化液の状態等により適宜選択・調整でき、上記に完全に限定されるものではない。
【0022】
そして、得られた乳化液を噴霧乾燥(スプレードライ)工程により粉末化する。噴霧乾燥は公知のあらゆる様式(噴霧方式としてノズル噴霧方式、遠心噴霧方式など、回収方式としてテークアップ方式、ブローダウン方式、バグフィルター一括捕集方式など)の装置を使用することができ、特段の限定はない。これにより、短時間で微細粉末を得ることができる。本発明では、噴霧乾燥に用いるセラミド含有乳化液がこの噴霧乾燥に非常に適した性状であるため、噴霧乾燥時のロスが少ない(例えば、スプレードライの歩留を75%以上、更には85%以上とすることが可能となる)。
【0023】
このようにして、本発明により甜菜パルプから粉末セラミドが簡便且つ効率的に工業生産できるが、本発明の工程においては、噴霧乾燥前の乳化液粘度が極めて低く性状が安定しているため、噴霧乾燥時のセラミド回収率だけでなく、噴霧乾燥歩留自体の向上という点においても非常に有効である。
【0024】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0025】
(ビートファイバーからの粉末セラミド製造I)
ビートファイバーを抽出原料として粉末セラミドを製造する工程について、以下の通り試験を行った。
【0026】
まず、乾燥ビートファイバー3.6kgに90%エタノールを13kg加え、60℃で撹拌しながら1時間抽出を行った。そして、これを固液分離(遠心分離)して得られたビートファイバーエタノール抽出液10kgを減圧濃縮し、減圧濃縮物に加水してからさらに減圧濃縮し、液量が260gとなったところで軟水36gを添加した。この濃縮液に対し、原料ビートファイバー量の0.1%量(3.6g)のペクチナーゼ(スミチームSPG;新日本化学工業株式会社製品)を添加して、47.5±2.5℃で攪拌しながら1時間酵素処理を行い、濃縮液の粘度を低下させた。その後、酵素失活処理(90℃、2min)を行い、冷却後に軟水550g、加工澱粉170gを添加して攪拌溶解(懸濁)した。これを殺菌(90℃、2min)・冷却後にTKホモミクス(プライミクス株式会社製)で乳化処理(6000rpm,15min)を行い、その後100メッシュ濾過処理をして乳化液946gを得た。この乳化液を、スプレードライヤーL−8型(大川原化工機株式会社製)により粉末化した。
【0027】
なお、得られた粉末セラミドは209g、セラミド含量は1.0%であった。これは、ビートファイバー抽出液に含まれるセラミド(3.0g)の約70%の収率であり、また、スプレードライの歩留は約80%であった。
図1に、本試験の製造フロー、収量等を示した。
【実施例2】
【0028】
(ビートファイバーからの粉末セラミド製造II)
ビートファイバーから粉末セラミドを製造する工程において、ペクチナーゼの添加量を検討するため以下の通り試験を行った。
【0029】
まず、乾燥ビートファイバー3.5kgに90%エタノールを13kg加え、60℃で撹拌しながら1時間抽出を行った。そして、これを固液分離(遠心分離)して得られたビートファイバーエタノール抽出液10kgを減圧濃縮し、減圧濃縮物に加水してからさらに減圧濃縮し、液量が262gとなったところで軟水を
図2に記載された量添加した(4パターン)。この濃縮液に対し、ペクチナーゼ(スミチームSPG;新日本化学工業株式会社製品)をそれぞれ
図2に記載された量添加して、47.5±2.5℃で攪拌しながら1時間酵素処理を行い、濃縮液の粘度を低下させた。その後、酵素失活処理(92℃、2min)を行い、冷却後に軟水500g、加工澱粉をそれぞれ
図2に記載された量添加して攪拌溶解(懸濁)した。これらを殺菌(92℃、2min)・冷却後にTKホモミクス(プライミクス株式会社製)で乳化処理(6000rpm,15min)を行い、その後100メッシュ濾過処理をして乳化液を得た。これらの乳化液を、スプレードライヤーL−8型(大川原化工機株式会社製)により粉末化した。
【0030】
なお、得られた粉末セラミドは、コントロール(実施例1と同条件)が197g、酵素1/10が178g、酵素1/20が153g、酵素1/50が129gで、セラミド含量はコントロールが1.0%、酵素1/10が1.0%、酵素1/20が1.1%、酵素1/50が1.0%であった。これは、ビートファイバー抽出液に含まれるセラミド(2.8g)に対して、コントロールが約70%、酵素1/10が約64%、酵素1/20が約60%、酵素1/50が約46%の収率であり、また、スプレードライの歩留はコントロールが約83%、酵素1/10が約78%、酵素1/20が約65%、酵素1/50が約52%であった。この結果から、酵素量は実施例の1/10程度までは収量、粉末歩留ともに良好であることが示された。
図2に、本試験の製造フロー、収量等を示した。
【0031】
(参考例)
比較として、ビートファイバーを抽出原料として酵素処理を行わないで粉末セラミドを製造する工程について、以下の通り試験を行った。
【0032】
まず、乾燥ビートファイバー3.6kgに90%エタノールを13kg加え、60℃で撹拌しながら1時間抽出を行った。そして、これを固液分離(遠心分離)して得られたビートファイバーエタノール抽出液10kgを減圧濃縮し、減圧濃縮物に加水してからさらに減圧濃縮し、液量が350gとなったところで軟水475g、加工澱粉170gを添加して攪拌溶解(懸濁)した。これを殺菌(90℃、2min)・冷却後にTKホモミクス(プライミクス株式会社製)で乳化処理(6000rpm,15min)を行い、その後100メッシュ濾過処理をして、スプレードライヤーL−8型(大川原化工機株式会社製)により粉末化した。
【0033】
なお、得られた粉末セラミドは95g、セラミド含量は1.0%であった。これは、ビートファイバー抽出液に含まれるセラミド(3.0g)の約32%の収率であり、また、スプレードライの歩留は約36%であった。
図3に、本試験の製造フロー、収量等を示した。
【0034】
以上の結果から、ビートファイバーをエタノール抽出して得たビートファイバーエタノール抽出液、これに加水したものを濃縮(溶媒除去)し、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、酵素失活後に加工澱粉を添加、殺菌、乳化処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥により粉末化する工程により、噴霧乾燥の歩留が78%以上、さらには80%以上となり、粉末セラミドを高収率で取得できることが明らかになった。
【0035】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0036】
本発明は、甜菜パルプから簡便且つ効率的にセラミドを抽出・分離し、且つ、噴霧乾燥により効率的に粉末化できる粉末セラミドの製造方法等を提供することを目的とする。
【0037】
そして、甜菜パルプ(例えばビートファイバーなど)をエタノール抽出して得た甜菜パルプエタノール抽出液を濃縮、及び/又は加水して濃縮し、この濃縮液にペクチナーゼを添加して酵素反応を行い、酵素失活後に乳化処理を行い、得られた乳化液を噴霧乾燥により粉末化する工程により、粉末セラミドを効率よく取得できる。