(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の伝熱管は、銅板の両端部を溶接しているため、この溶接部分が腐食しやすく、腐食により孔が空いた場合には、流体が漏れる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、伝熱性に優れ且つ長期に亘って流体の漏れを防止する伝熱管、伝熱管の製造方法及びこの伝熱管を備えた熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の伝熱管は、管内面に第1凹凸部を備える伝熱管であって、前記第1凹凸部が形成され
ると共に幅方向の中間部がクランク状に曲げられて段差部が形成された長尺な金属板を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合して形成され
、筒状に巻かれた前記金属板の外面に形成された前記段差部の外側段差面に、前記金属板の巻き方向外側の端部が突き合わされて接合され、筒状に巻かれた前記金属板の内面に形成された前記段差部の内側段差面に、前記金属板の巻き方向内側の端部が突き合わされて接合されている。
【0007】
請求項1に記載の伝熱管では、管内面に第1凹凸部を備えることから、例えば、管内面が平坦状とされたものと比べて、管内面の表面積が大きいため、流体から伝熱管及び伝熱管から流体への熱伝達効率が向上する、すなわち、伝熱性に優れる。
ここで、上記伝熱管は、予め第1凹凸部を形成した金属板を筒状に巻いて形成することから、例えば、押し出し工法で形成された金属管の内面に後から溝(凹凸部)を加工するものと比べて、第1凹凸部の形状やパターンが制限されない、すなわち、第1凹凸部の設計自由度が高い。このため、上記伝熱管では、金属板に形成する第1凹凸部の形状やパターンを調整することで、流体と伝熱管との間の熱伝達効率をより高めることができる。
また、上記伝熱管では、金属板を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合していることから、例えば、金属板を曲げて両端部同士を接合(溶接)したものと比べて、管内側から管外側までの接合部分の長さを長くすることができるため、接合部分の腐食が速い場合でも、接合部分の腐食が管外側から管内側(または管外側から管内側)へ到達するまでの時間を遅くすることができる。すなわち、上記伝熱管によれば、長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【0009】
また、請求項
1に記載の伝熱管では、筒状に巻かれた金属板の外側段差面に巻き方向外側の端部を突き合わせて接合していることから、管内側から管外側までの接合部分の長さがより長くなる。
【0011】
またさらに、請求項
1に記載の伝熱管では、筒状に巻かれた金属板の内側段差面に巻き方向内側の端部を突き合わせて接合していることから、管内側から管外側までの接合部分の長さがより長くなる。
【0012】
本発明の請求項
2に記載の伝熱管は、請求項
1に記載の伝熱管において、筒状に巻かれた前記金属板の巻き重ねられた部分の内面には、前記第1凹凸部と形状が異なる第2凹凸部が形成されている。
【0013】
請求項
2に記載の伝熱管では、筒状に巻かれた金属板の巻き重ねられた部分の内面に第2凹凸部を形成していることから、例えば、上記内面が平坦状に形成されたものと比べて、接合面積が増えるため、管内側から管外側までの接合部分の長さがさらに長くなり、且つ、巻き重ねられた部分の接合強度が向上する。
【0014】
本発明の請求項
3に記載の伝熱管は、請求項1
又は請求項2に記載の伝熱管において、前記金属板は、アルミニウムで構成されている。
【0015】
請求項
3に記載の伝熱管では、金属板をアルミニウムで構成していることから、熱伝導率を確保しつつ、重量を軽減し且つコストを削減することができる。
【0016】
本発明の請求項
4に記載の伝熱管の製造方法は、管内面に凹凸部を備える伝熱管の製造方法であって、
幅方向の中間部がクランク状に曲げられて段差部が形成された長尺な金属板に前記凹凸部を形成し、前記凹凸部を内側にして前記金属板を筒状に巻
いて筒状に巻かれた前記金属板の外面に形成された前記段差部の外側段差面に前記金属板の巻き方向外側の端部を突き合わせると共に、筒状に巻かれた前記金属板の内面に形成された前記段差部の内側段差面に前記金属板の巻き方向内側の端部を突き合わせ、筒状に巻かれた前記金属板の巻き重ねられた部分、
前記外側段差面と前記巻き方向外側の端部とを突き合わせた部分及び前記内側段差面と前記巻き方向内側の端部とを突き合わせた部分を
それぞれ接合する。
【0017】
請求項
4に記載の伝熱管の製造方法では、まず、
幅方向の中間部がクランク状に曲げられて段差部が形成された長尺な金属板
に凹凸部を形成する。次に、凹凸部を内側にして金属板を筒状に巻
いて筒状に巻かれた金属板の外側段差面に巻き方向外側の端部を突き合わせると共に、筒状に巻かれた金属板の内側段差面に巻き方向内側の端部を突き合わせる。そして、筒状に巻かれた金属板の巻き重ねられた部分
、外側段差面と巻き方向外側の端部とを突き合わせた部分及び内側段差面と巻き方向内側の端部とを突き合わせた部分を
それぞれ接合することで、管内面に凹凸部を備える伝熱管が形成される。このようにして形成された伝熱管は、請求項1に記載の伝熱管と同様の作用効果を奏する。すなわち、上記製造方法で製造された伝熱管は、伝熱性に優れ且つ長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【0018】
本発明の請求項
5に記載の熱交換器は、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の伝熱管と、板状とされ、板厚方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記伝熱管が挿入されると共に前記貫通孔の孔壁に前記伝熱管の外周面が接合された金属製のフィンと、を備えている。
【0019】
請求項
5に記載の熱交換器では、フィンに形成された貫通孔の孔壁に請求項1〜
3のいずれか1項に記載の伝熱管の外周面が接合されていることから、伝熱管からフィン及びフィンから伝熱管への熱伝達効率が向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の伝熱管は、伝熱性に優れ且つ長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の伝熱管及び伝熱管の製造方法の第1実施形態である伝熱管10及び伝熱管10の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図4に示されるように、本実施形態の伝熱管10は、空調機器に搭載される熱交換器50に用いられる。この熱交換器50は、空調機器の熱交換部で使用する流体の熱交換に用いられるものである。なお、本発明は上記構成に限定されず、熱交換器50は、冷蔵庫などに搭載されて冷蔵庫の冷却部で使用する冷媒(流体の一例)の冷却に用いられてもよく、自動車に搭載されてエンジン冷却装置の冷却水(流体の一例)の冷却に用いられてもよい。つまり、本実施形態の熱交換器50は、流体を熱交換する用途であれば、いずれの機器に適用してもよい。
【0024】
本実施形態の熱交換器50は、伝熱管10とフィン52とを備えている。フィン52は、金属材料(例えば、アルミニウム)を板状に形成したもの(所謂、金属板)であり、板厚方向に貫通する貫通孔54が形成されている。この貫通孔54には、伝熱管10が挿入されると共に孔壁54Aに伝熱管10の外周面である管外面10Aが接合されている。この接合により、伝熱管10からフィン52及びフィン52から伝熱管10へ熱が効率よく伝達される。なお、熱交換器50は、本発明の熱交換器の一実施形態である。
【0025】
次に、熱交換器50について詳細に説明する。
図4に示されるように、熱交換器50では、複数本の伝熱管10が互いに平行に並べられ、隣接する伝熱管10の端部同士がU字状の管継手56で連結されている。また、各伝熱管10は、間隔をあけて並べた複数枚のフィン52の各貫通孔54にそれぞれ挿入されると共に各孔壁54Aに各管外面10Aがそれぞれ接合されている。
【0026】
次に本実施形態の伝熱管10について説明する。
図1(A)に示されるように、伝熱管10は、内周面である管内面10Bに凹凸部12(本発明の伝熱管の第1凹凸部の一例である。)を備えている。具体的には、伝熱管10は、管内面10B全体に凹凸部12が形成され、管外面10Aが略平坦状とされている。
【0027】
伝熱管10は、一枚の金属板11を曲げ加工して形成されている。具体的には、伝熱管10は、凹凸部12が形成された金属板11を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合して形成されている。なお、本実施形態の伝熱管10は、金属板11を二重巻きした二重巻管である。
【0028】
また、伝熱管10は、筒状に巻かれた金属板11の内面11Bの一部分が
管内面10Bとされ、筒状に巻かれた金属板11の外面11Aの一部分が
管外面10Aとされている。
【0029】
筒状に巻かれた金属板11の内面11Bには、巻き方向内側の端部11Cと巻き方向外側の端部11Dとの間に内側段差面14Bが形成されている。この内側段差面14Bには、筒状に巻かれた金属板11の端部11Cが突き合わされて接合されている。また、内側段差面14Bの高さは、金属板11の板厚と略同じとされている。
【0030】
筒状に巻かれた金属板11の外面11Aには、端部11Cと端部11Dとの間に外側段差面14Aが形成されている。この外側段差面14Aには、筒状に巻かれた金属板11の端部11Dが突き合わされて接合されている。また、外側段差面14Aの高さは、金属板11の板厚と略同じとされている。
【0031】
なお、本実施形態では、筒状に巻かれた金属板11の端部11Cと端部11Dとの中間部分(巻き方向の中間部分)をクランク状に曲げて段差部14を形成し、この段差部14の一方の面を内側段差面14Bとし、他方の面を外側段差面14Aとしている。また、本実施形態では、金属板11の板厚を略一定としている。このため、伝熱管10の外径及び内径が周上略均一とされている。
また、本実施形態では、金属板11に段差部14を形成しているため、伝熱管10の外径及び内径を周上略均一とするために金属板11の端部11C側及び端部11D側を先細り形状に加工する必要がないため、金属板11の端部11Cまで凹凸部12を精度よく形成することができる。
【0032】
図1(B)及び
図3に示されるように、本実施形態の金属板11は、金属材料で形成された芯材16に、芯材16よりも融点の低い金属材料で形成された被覆材18を張り合わせて形成された金属板、すなわち、クラッド板である。
また、金属板11は、アルミニウムで構成されている。具体的には、金属板11は、純アルミニウムで形成された芯材16に、アルミニウム合金(例えば、アルミニウムにシリコンを含有させたもの)で形成された被覆材18を張り合わせて形成されている。この被覆材18は、筒状に巻かれた金属板11の外面11Aを形成している。また、被覆材18は、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分を接合する接合材(ろう材)として用いられている。一方、芯材16は、筒状に巻かれた金属板11の内面11Bを形成している。
【0033】
なお、本実施形態では、金属板11をアルミニウムで構成しているが、本発明はこの構成に限定されず、金属板11を銅や鉄などの金属材料で構成してもよい。
【0034】
図1(A)及び
図2に示されるように、凹凸部12は、伝熱管10の周方向に間隔をあけて形成され、伝熱管10の軸方向(
図2では中央線CLに沿った方向)に対して交差する方向に延び、伝熱管10の半径方向外側へ凹む溝12Aと、隣接する溝12A間に形成され、伝熱管10の半径方向内側へ凸となる突条12Bとで構成されている。この溝12Aは、
図2において、伝熱管10の軸方向に対する傾斜角が15度以上に設定されることが好ましい。
【0035】
次に第1実施形態の伝熱管10を成形するための成形装置について説明する。
図5及び
図6に示されるように、成形装置40は、金属板11に凹凸部12を形成する凹凸形成部42と、凹凸部12が形成された金属板11を筒状に巻き、所定外径の管形状とするロール成形(ロールフォーミング)を行う成形部44と、を備えている。
【0036】
凹凸形成部42は、対向配置され、同期して回転する一対のローラ42A、42Bを備えている。ローラ42A、42Bは、金属板11を挟みつつ回転して、金属板11を成形部44へ送り出すように構成されている。また、ローラ42Aの外周には、凹凸部12に対応する凹凸部43が形成されている。このため、ローラ42Aとローラ42Bで挟まれた金属板11の一方の面(
図7では上面)には、ローラ42Aの凹凸部43が押し付けられて、凹凸部12が形成される。
なお、金属板11の一方の面は、筒状に巻いた金属板11の内面11Bに対応する面であり、
図7では、符号11Bで示す。また、金属板11の他方の面は、筒状に巻いた金属板11の外面11Aに対応する面であり、
図7では、符号11Aで示す。
【0037】
図5及び
図6に示されるように、成形部44は、金属板11を湾曲させる複数の成形ロール44Aと、湾曲された金属板11が巻き付けられるマンドレル44Bと、マンドレル44Bに巻き付けられた金属板11を所定外径の管形状に成形するローラ44C、44Dと、を備えている。これらの成形ロール44Aは、金属板11が搬送されるにしたがって、凹凸部12を内側にして金属板11を徐々に湾曲させながらマンドレル44Bに巻き付けられるように構成されている。ローラ44C、44Dは、対向配置され、同期して回転し、マンドレル44Bに巻き付けられた金属板11を所定外径の管形状となるように加圧しながら送り出すように構成されている。なお、ローラ44C、44Dには、各々の外周面を合わせたときに伝熱管10の外径と同じ大きさの円を構成する周溝部がそれぞれ形成されている。
【0038】
次に第1実施形態の伝熱管10の製造方法について説明する。
まず、芯材16に被覆材18を張り合わせた長尺な金属板11を用意し、
図7に示されるように、金属板11の幅方向の中間部をクランク状に折り曲げて段差部14を形成する。
【0039】
次に、一方の面(芯材16によって形成される面)を上にして金属板11を成形装置40にセットする。そして、凹凸形成部42で金属板11の一方の面に凹凸部12を形成する。なお、凹凸部12は、金属板11の一方の面の管内面10Bに対応する範囲に形成される。
【0040】
次に、成形部44で凹凸部12が形成された金属板11を、凹凸部12を内側にしてマンドレル44Bに巻き付けていく。これにより金属板11が凹凸部12を内側にして筒状に巻かれ、所定外径の管形状にロール成形される。
【0041】
次に、筒状に巻かれた金属板11をフィン52の貫通孔54に挿入する。その後、筒状に巻かれた金属板11とフィン52を共に加熱して被覆材18を溶融させて、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分を密着させた状態で被覆材18を冷却固化させて筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分を接合(ろう付け)する。このとき、筒状に巻かれた金属板11の外周を形成する被覆材18と貫通孔54の孔壁54Aも接合される。このようにして、伝熱管10が形成される。また、この伝熱管10を備えた熱交換器50が形成される。
【0042】
本実施形態では、金属板11に段差部14を形成してから一方の面に凹凸部12を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、段差部14は、金属板11が筒状に巻かれる前に形成されればよい。例えば、成形装置40の凹凸形成部42に金属板11に段差部14を形成する機能を持たせて、凹凸形成部42で金属板11に段差部14を形成してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、筒状に巻かれた金属板11をフィン52の貫通孔54に挿入してから金属板11とフィン52を共に加熱しているが、本発明はこの構成に限定されず、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分を接合(ろう付け)して伝熱管10を形成した後、伝熱管10をフィン52の貫通孔54に挿入し、伝熱管10を再加熱後冷却することで、フィン52と伝熱管10を接合して熱交換器50を形成してもよい。
【0044】
次に第1実施形態の伝熱管10及び熱交換器50の作用効果について説明する。
伝熱管10では、管内面10Bに凹凸部12を備えることから、例えば、管内面が平坦とされたものと比べて、管内面10Bの表面積が大きいため、流体から伝熱管10及び伝熱管10から流体への熱伝達効率(言い換えると、流体と伝熱管10との間の熱伝達効率)が向上する。すなわち、伝熱管10は伝熱性に優れる。
【0045】
ここで、伝熱管10は、予め凹凸部12を形成した金属板11を筒状に巻いて形成することから、例えば、押し出し工法で形成された金属管の内面に後から溝(凹凸部)を加工(切削)したものと比べて、凹凸部12の形状やパターンが制限されない、換言すれば、凹凸部12の設計自由度が高い。このため、伝熱管10では、凹凸部12の形状やパターンを調整することで、流体と伝熱管10との間の熱伝達効率をより高めることができる。
【0046】
また、伝熱管10では、金属板11を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合していることから、例えば、金属板を曲げて端部同士を接合(溶接)したものと比べて、管内側から管外側までの接合部分の長さを長くすることができるため、接合部分の腐食が速い場合でも、この接合部分の腐食が管外側から管内側(または管外側から管内側)へ到達するまでの時間を遅くすることができる。すなわち、伝熱管10によれば、長期に亘って流体の漏れを防止することができる。特に、伝熱管10は、金属板11を二重に巻いているため、接合部分の長さを十分に確保できる。
【0047】
また、伝熱管10では、
図1(B)に示されるように、筒状に巻かれた金属板11の内側段差面14Bに端部11Cを突き合わせて接合し、外側段差面14Aに端部11Dを突き合わせて接合していることから、管内側から管外側までの接合部分の長さをさらに長くすることができる。
【0048】
さらに、伝熱管10では、金属板11をアルミニウムで構成していることから、熱伝導率を確保しつつ、重量を軽減し且つコストを削減することができる。
【0049】
また、伝熱管10を備える熱交換器50では、フィン52に形成された貫通孔54の孔壁54Aに伝熱管10の管外面10Aが接合されていることから、伝熱管10からフィン52及びフィン52から伝熱管10への熱伝達効率(言い換えると、伝熱管10とフィン52との間の熱伝達効率)が向上する。これにより、伝熱管10を介して流体とフィン52との間で熱が効率よく伝達されるため、熱交換器50の熱交換性能が向上する。
【0050】
第1実施形態では、
図2に示されるように、凹凸部12を構成する溝12A及び突条12Bを伝熱管10の軸方向(
図2では中央線CL方向に沿った方向)に対して交差する方向に延ばす構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、
図8に示す第1変形例の伝熱管100のように、凹凸部102を構成する溝102A及び突条102Bを伝熱管100の軸直方向(
図8では中央線CLに対して直交する方向)にジグザグ状に延ばす構成としてもよく、
図9に示す第2変形例の伝熱管110のように、凹凸部112を構成する溝112A及び突条112Bを伝熱管110の軸方向(
図9では中央線CLに対して沿った方向)にジグザグ状に延ばす構成としてもよい。また、
図10に示す第3変形例の伝熱管120のように、凹凸部122を伝熱管120の軸方向に対して交差する方向に延びる複数の溝122Aと、この溝12
2Aと交差する方向に延びる複数の溝122Bと、溝122Aと溝122Bで区画される凸部122Cとで構成してもよい。また、各凹凸部を構成する溝は、直線状に延びても曲線状に延びてもよく、連続していても不連続であっても構わない。なお、前述した第1〜第3変形例の各凹凸部102、112、122の構成は、後述の第2〜第4実施形態のいずれの形態に適用してもよい。
【0051】
第1実施形態では、凹凸部12を金属板11の一方の面の管内面10Bに対応する範囲に形成し、凹凸部12を内側にして金属板11を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合して伝熱管10を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、凹凸部12を金属板11の一方の面ほぼ全てに形成し、凹凸部12を内側にして金属板11を筒状に巻き且つ巻き重ねられた部分を接合して伝熱管10を形成してもよい。なお、凹凸部12を金属板11の一方の面ほぼ全てに形成する構成については、後述する第2、第3実施形態に適用してもよい。
【0052】
次に本発明の伝熱管及び伝熱管の製造方法の第2実施形態である伝熱管60及び伝熱管60の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図11に示されるように、本実施形態の伝熱管60は、金属板61の構成を除いて、第1実施形態の伝熱管10と同一の構成である。
【0054】
金属板61は、芯材16に、芯材16よりも自然電極電位が低い金属材料で形成された被覆材68を張り合わせて形成された金属板、すなわち、クラッド板である。また、本実施形態の金属板61は、アルミニウムで構成されている。具体的には、金属板61は、純アルミニウムで形成された芯材16に、アルミニウム合金(例えば、アルミニウムに亜鉛を含有させたもの)で形成された被覆材
68を張り合わせて形成されている。この被覆材68は、筒状に巻かれた金属板61の外面61Aを形成している。すなわち、伝熱管60の管外面60Aは、被覆材68によって形成されている。一方、芯材16は、筒状に巻かれた金属板61の内面61Bを形成している。すなわち、伝熱管60の管内面60Bは、芯材16によって形成されている。
【0055】
次に本実施形態の伝熱管60の製造方法について説明する。
本実施形態の伝熱管60の製造方法では、凹凸部12を内側にして金属板61を筒状に巻き、筒状に巻かれた金属板61をフィン52の貫通孔54に挿入する。そして、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分の隙間に溶融したアルミニウム合金(ろう材)を注入(例えば、毛細管現象を利用して注入)して巻き重ねられた部分を接合する(ろう付けする)。なお、
図11では、ろう材として用いられたアルミニウム合金層について図示省略している。このようにして、伝熱管60が形成される。また、フィン52の孔壁54Aと伝熱管60の管外面60Aとの間の隙間に溶融したアルムニウム合金(ろう材)を注入することで孔壁54Aに伝熱管60の管外面60Aが接合されて熱交換器が形成される。
【0056】
なお、本実施形態の伝熱管60の製造方法では、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分の隙間に溶融したアルミニウム合金(ろう材)を注入して巻き重ねられた部分を接合(ろう付け)してから、伝熱管60の管外面60Aと孔壁54Aの間に上記溶融したアルミニウム合金(ろう材)を注入して伝熱管60の管外面60Aを孔壁54Aに接合しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、予めフィン52の片面又は両面に芯材16やフィン52よりも融点が低いアルミニウム合金(ろう材)を張り合わせておくことで、筒状に巻かれた金属板61とフィン52を共に加熱した場合に溶融したアルミニウム合金(ろう材)が筒状に巻かれた金属板61の巻き重ねられた部分の隙間と孔壁54Aと管外面60Aとの間の隙間に入り込むため、上記アルミニウム合金(ろう材)の冷却後に、筒状に巻かれた金属板61の巻き重ねられた部分が接合されると共に伝熱管60の管外面60Aと孔壁54Aが接合される。
【0057】
次に、本実施形態の伝熱管60の作用効果について説明する。なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態で得られる作用効果と同様の作用効果については、その説明を適宜省略する。
【0058】
伝熱管60では、芯材16よりも自然電極電位が低い金属材料で形成された被覆材68が犠牲陽極作用によって早期に腐食し、代わりに芯材16の腐食の進行が抑制される。特に伝熱管60では、上記作用を有する被覆材68で管外面60Aを形成していることから、芯材16の腐食の進行を効果的に抑制することができる。したがって、伝熱管60によれば、長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【0059】
また、伝熱管60では、
図1(B)に示される第1実施形態の伝熱管10と同様に、筒状に巻かれた金属板11の外側段差面14Aに端部11Dを突き合わせて接合していることから、芯材16が外部に露出するのを防げるため、例えば、芯材16が外部に露出するものと比べて、露出した部分を起点とした芯材16の腐蝕による伝熱管60の寿命の低下を抑制することができる。すなわち、芯材16の外部への露出を防止することで芯材16の腐食を抑えて伝熱管60の寿命を延長することができる。
【0060】
次に本発明の伝熱管及び伝熱管の製造方法の第3実施形態である伝熱管70及び伝熱管70の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図12に示されるように、本実施形態の伝熱管70は、金属板71の構成を除いて、第1実施形態の伝熱管10と同一の構成である。
【0062】
金属板71は、芯材16に、芯材16よりも自然電極電位が低く且つ融点が低い金属材料で形成された被覆材78を張り合わせて形成された金属板、すなわち、クラッド板である。また、本実施形態の金属板71は、アルミニウムで構成されている。具体的には、金属板71は、純アルミニウムで形成された芯材16に、アルミニウム合金(例えば、アルミニウムにシリンコンと亜鉛を含有させたもの)で形成された被覆材78を張り合わせて形成されている。この被覆材78は、筒状に巻かれた金属板71の外面71Aを形成している。すなわち、伝熱管70の管外面70Aは、被覆材78によって形成されている。一方、芯材16は、筒状に巻かれた金属板71の内面71Bを形成している。すなわち、伝熱管70の管内面70Bは、芯材16によって形成されている。
【0063】
次に本実施形態の伝熱管70の製造方法について説明する。
本実施形態の伝熱管70の製造方法では、凹凸部12を内側にして金属板71を筒状に巻き、筒状に巻かれた金属板71をフィン52の貫通孔54に挿入する。次に、筒状に巻かれた金属板71とフィン52を共に加熱することで被覆材78が溶融し、冷却固化と共に筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分が接合されて伝熱管70が形成される。このとき、伝熱管70の管外面70Aとフィン52の孔壁54Aも接合されて熱交換器が形成される。
【0064】
次に、本実施形態の伝熱管70の作用効果について説明する。なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態で得られる作用効果と同様の作用効果については、その説明を適宜省略する。
【0065】
伝熱管70では、芯材16よりも自然電極電位が低い金属材料で形成された被覆材78が犠牲陽極作用によって早期に腐食し、代わりに芯材16の腐食の進行が抑制される。特に伝熱管70では、上記作用を有する被覆材78で管外面70Aを形成していることから、芯材16の腐食の進行を効果的に抑制することができる。したがって、伝熱管70によれば、長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【0066】
また、伝熱管70では、
図1(B)に示される第1実施形態の伝熱管10と同様に、筒状に巻かれた金属板11の外側段差面14Aに端部11Dを突き合わせて接合していることから、芯材16が外部に露出するのを防げるため、例えば、芯材16が外部に露出するものと比べて、露出した部分を起点とした芯材16の腐蝕による伝熱管70の寿命の低下を抑制することができる。すなわち、芯材16の外部への露出を防止することで芯材16の腐食を抑えて伝熱管70の寿命を延長することができる。
【0067】
また、伝熱管70では、成形時において、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分の隙間に別途溶融したアルミ合金(ろう材)を注入する必要がないため、第2実施形態と比べて、製造工程を簡単にでき、さらに、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分全体に溶融したアルミ合金を介在させられるため、より長期に亘って流体の漏れを防止することができる。
【0068】
次に次に本発明の伝熱管及び伝熱管の製造方法の第4実施形態である伝熱管80及び伝熱管80の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図13及び
図14に示されるように、本実施形態の伝熱管80は、金属板81の構成を除いて、第1実施形態の伝熱管10と同一の構成である。
【0070】
伝熱管80は、筒状に巻かれた金属板81の内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分に凹凸部12と形状が異なり且つ凹凸部12よりも高低差が小さい凹凸部84(本発明の伝熱管の第2凹凸部の一例)が形成されている。すなわち、筒状に巻かれた金属板81の内面81Bには、凹凸部12と凹凸部84がそれぞれ形成されている。なお、凹凸部12と凹凸部84はともに図示しない金属板81の芯材16に形成されている。
【0071】
なお、
図13に示す符号80Aは伝熱管80の管外面を示し、符号80Bは伝熱管80の管内面を示し、符号81Cは筒状に巻かれた金属板81の巻き方向内側の端部を示し、符号81Dは筒状に巻かれた金属板81の巻き方向外側の端部を示している。
【0072】
次に本実施形態の伝熱管80の製造方法について説明する。
本実施形態の伝熱管80の製造方法では、まず、段差部14を形成した金属板81の芯材16側の一方の面のうち、管内面80Bとなる部分に凹凸部12を形成し、残りの部分に凹凸部12よりも剛性が低い(例えば、突条の幅が狭い)凹凸部85を形成する。次に、凹凸部12を内側にして金属板81をマンドレル44Bに巻き付け、巻き付けられた金属板81をローラ44C、44Dで所定外径の管形状に成形する。このとき、凹凸部12よりも剛性が低い凹凸部85が潰れるため、凹凸部12の形状が維持される。その後、筒状に巻かれた金属板81の巻き重ねられた部分を第1実施形態と同様の方法で接合することで伝熱管80が形成される。なお、伝熱管80の凹凸部84は、凹凸部85が潰れたものであり、被覆材18の凹凸部84側の面は加熱溶融した際に凹凸部84に対応した形状となる。
【0073】
なお、凹凸部85については、例えば、成形装置40のローラ42Aに形成された凹凸部43の隣に凹凸部85に対応する凹凸部を形成することで金属板81に形成することができる。
【0074】
次に、本実施形態の伝熱管80の作用効果について説明する。なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態で得られる作用効果と同様の作用効果については、その説明を適宜省略する。
【0075】
伝熱管80では、筒状に巻かれた金属板81の内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分に凹凸部84を形成していることから、例えば、上記内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分が平坦状に形成されたものと比べて、接合面積が増えるため、筒状に巻かれた金属板81の巻き重ねられた部分の接合強度が向上する。また、管内側から管外側までの接合部分の長さがさらに長くなる。
【0076】
本実施形態では、伝熱管80の製造時に、凹凸部12よりも剛性が低い凹凸部85が潰れて、筒状に巻かれた金属板81の内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分に、凹凸部12と形状が異なり且つ凹凸部12よりも高低差が小さい凹凸部84が形成されるが、本発明はこの構成に限定ない。例えば、伝熱管80の製造時に、凹凸部85が潰れるが、筒状に巻かれた金属板81の内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分に、凹凸部12と形状が異なり且つ凹凸部12よりも高低差が同じ又は大きい凹凸部84が形成される構成としてもよい。この場合でも、接合面積が増えるため、筒状に巻かれた金属板81の巻き重ねられた部分の接合強度を向上する効果が十分に得られる。
【0077】
なお、本実施形態の筒状に巻かれた金属板81の内面81Bのうち外面81Aに巻き重ねられた部分に凹凸部84を形成する構成については、第2実施形態及び第3実施形態に適用してもよい。
【0078】
第1実施形態では、金属板11を芯材16と被覆材18で構成されたクラッド板としているが、本発明はこの構成に限定されず、金属板11を芯材16のみの金属板としてもよい。この場合には、金属板11を筒状に巻いた後で巻き重ねた部分の隙間に溶融した接合材(ろう材)を注入して、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねた部分を接合する構成としてもよい。
【0079】
また、第1実施形態では、板状のフィン52を打ち抜いて貫通孔54を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、
図15に示されるように、フィン52にバーリング加工によって貫通孔54を形成してもよい。この場合には、バーリング加工によって形成された環状の立ち上がり部55の内壁である孔壁54Aに伝熱管10の管外面10Aが接合されるため、接合面積が増えて伝熱管10とフィン52との間の熱伝達効率が向上する。なお、フィン52にバーリング加工によって貫通孔54を形成する構成については、第2実施形態〜第4実施形態のいずれの形態に適用してもよい。
また、フィン52を芯材(例えば、純アルミニウム)にこの芯材よりも自然電極電位が低い被覆材(例えば、アルミニウムに亜鉛を含有させたもの)を張り合わせたクラッド板とし、このフィン52に上記のようにバーリング加工によって貫通孔54を形成する。そして、
図15に示されるように、複数枚のフィン52の各貫通孔54に伝熱管10を挿入し、互いに隣接するフィン52において一方のフィン52の立ち上がり部55の端部55Aを他方のフィン52の貫通孔54周辺の板面に当接させて伝熱管10の管外面10Aを複数枚のフィン52で覆う。これにより、伝熱管10のフィン52によって覆われた部分が外部に露出しないため、伝熱管10の腐食が長期に亘って効果的に抑制される。なお、上記のように、クラッド板としてのフィン52にバーリング加工によって貫通孔54を形成し、複数枚のフィン52で伝熱管10の管外面10Aを覆う構成についても第2実施形態〜第4実施形態のいずれの形態に適用してもよい。
【0080】
第1実施形態の伝熱管10は、金属板11を二重巻した二重巻管としているが、本発明は、この構成に限定されず、金属板11を二重よりも多く巻いた多重巻管としてもよい。一方、伝熱管10は、金属板11を二重よりも少なく巻いた巻管としてもよい。この場合には、接合部分の長さ確保のために、筒状に巻かれた金属板11の巻き重ねられた部分の幅が少なくとも金属板11の板厚よりも必要である。なお、上記構成については、第2実施形態〜第4実施形態のいずれの形態に適用してもよい。
【0081】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。