特許第5749316号(P5749316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749316
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ロータの冷却方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150625BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   F25B1/00 321N
   F25B1/10 F
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-215412(P2013-215412)
(22)【出願日】2013年10月16日
(62)【分割の表示】特願2010-541514(P2010-541514)の分割
【原出願日】2008年12月30日
(65)【公開番号】特開2014-6046(P2014-6046A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】61/017,966
(32)【優先日】2007年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】サマー,スティーヴン・ティー
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−329557(JP,A)
【文献】 特開昭61−061986(JP,A)
【文献】 特開昭61−217662(JP,A)
【文献】 特開2007−225162(JP,A)
【文献】 特開2007−212112(JP,A)
【文献】 特表2000−512725(JP,A)
【文献】 特開2001−095205(JP,A)
【文献】 特表2005−519214(JP,A)
【文献】 特開2006−194579(JP,A)
【文献】 米国特許第02963878(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00−7/00
F25B 31/00
F04B 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気圧縮システムにおいて、
冷媒閉ループ接続された圧縮機と蒸発器と凝縮器と、
圧縮機を作動させ得るよう圧縮機に接続されたモータと、
圧縮機のモータを冷却する構成とされたモータの冷却剤システムと、を備え、
前記圧縮機は、第一の圧縮機段と、第二の圧縮機段とを備え、前記第一の圧縮機段は、圧縮した蒸気を前記第二の圧縮機段の入口に供給し、
前記モータの冷却剤システムは、
前記凝縮器と流体的に連通していて冷媒をモータキャビティ内に供給する第一の接続部と、
冷媒を中間圧力を有する段間の接続部に戻すべく冷媒ループとの第二の接続部とを備え、前記中間圧力は、蒸発器の作動圧力よりも高く且つ凝縮器の作動圧力よりも低く、
前記モータキャビティと前記第一の圧縮機段との間に配置された第一のシールと、
前記モータキャビティと前記第二の圧縮機段との間に配置された第二のシールとを備え、
前記第一及び第二のシールは、冷媒を、前記モータキャビティ内で中間圧力に維持する構成とされており、
該蒸気圧縮システムは、シールの漏洩損失及びロータの風損による損失の合計値が最小となる所定の最も高いモータキャビティ圧力点で作動することによって、その複合的な動力損失が最小となるようになされている、蒸気圧縮システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第一の接続部は、前記中間圧力よりも高い圧力で前記冷媒を前記凝縮器から受け取る、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記モータは、前記第一の圧縮機段と前記第二の圧縮機段との間に配置される、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記凝縮器からの前記冷媒は、蒸発器の蒸気圧力を上回る蒸気圧力を提供し、前記第一及び第二のシールにおける圧力差を小さくし、モータキャビティを冷却しシステムの損失を少なくし且つ前記モータキャビティと前記第二の圧縮機段との間の冷媒の漏洩を減少させるようにした、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記凝縮器からの前記冷媒は、前記モータキャビティ内で純粋な蒸気となるように膨張させ、ロータの空隙の冷却作用を提供する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、蒸気冷媒は、前記蒸発器と流体連通している冷媒管を通じて前記第一の圧縮機段内に吸引される、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、蒸気冷媒は、前記第一の圧縮機段により圧縮され且つ前記第二の圧縮機段の入口内に排出される、システム。
【請求項8】
請求項5に記載のシステムにおいて、前記蒸気冷媒は、前記第二の圧縮機段内に受け取られ且つ更に圧縮され、該蒸気冷媒は、前記第二の圧縮機段の出口から前記凝縮器へと流れる、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記凝縮器と前記蒸発器との間に接続されたエコノマイザ回路を更に備え、
該エコノマイザ回路は、蒸気冷媒を前記第二の圧縮機段に提供するように前記第二の圧縮機段の入口と流体連通した流れ管を備えている、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記中間圧力は、第一の圧縮機段の排出圧力、第二の圧縮機段の吸引圧力又はエコノマイザ回路の作動圧力にほぼ等しい、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記モータキャビティは、第二の接続部を構成する第二の流れ管を通じて前記第一の圧縮機段の排出口と前記第二の圧縮機段の吸引入口との間の段間位置と流体連通している、システム。
【請求項12】
冷却システム内にて圧縮機を作動させるモータに対するモータ冷却剤システムにおいて、
前記冷却システムは、
冷媒閉ループ接続された、圧縮機と蒸発器と凝縮器とを備え、
前記モータ冷却剤システムは、モータを取り囲むモータハウジングと、モータハウジング内のモータキャビティとを備え、
前記圧縮機は、
第一の圧縮機段と、第二の圧縮機段と、
前記モータキャビティと前記第一の圧縮機段との間に配置された第一のシールと、
前記モータキャビティと前記第二の圧縮機段との間に配置された第二のシールとを備え、
前記第一及び第二のシールは、前記冷媒を前記モータキャビティ内にて中間圧力に維持する構成とされ、
前記モータ冷却剤システムは、前記冷媒を前記キャビティ内に供給すべく前記凝縮器と流体的に連通した前記モータキャビティからの第一の接続部と、冷媒を中間圧力を有する段間接続部に戻すべく前記ループと流体的に連通した前記モータキャビティからの第二の接続部とを備え、前記中間圧力は、蒸発器の作動圧力よりも高く且つ凝縮器の作動圧力よりも低く、
前記モータキャビティは、冷媒を、モータキャビティ内にて中間圧力に維持する構成とされており、
モータ冷却剤システムは、シールの漏洩損失及びロータの風損による損失の合計値が最小となる所定の最も高いモータキャビティ圧力点で冷却システムを作動させることによって、その複合的な動力損失が最小となるようになされている、冷却剤システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記冷媒は、前記蒸発器の作動圧力よりも高い中間圧力まで加圧される、システム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記凝縮器と前記蒸発器との間に接続された膨張装置を更に備えている、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記モータキャビティは、供給管を通じて前記凝縮器から液体冷媒を受け取り、蒸気冷媒が、中間圧力で前記閉ループ状態で通気されて戻される、システム。
【請求項16】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記モータキャビティは、該モータキャビティを通じて前記第二の圧縮機段の排出口から前記第一の圧縮機段内への冷媒のシールの漏洩流れにより冷却される、システム。
【請求項17】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記モータが、誘導モータ、永久磁石モータ、ハイブリッド永久磁石モータ、又はソリッドロータモータである、システム。
【請求項18】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記圧縮機が軸受を更に備え、該軸受は、油膜軸受、ガス軸受、ころがり要素軸受、又は磁気軸受である、システム。
【請求項19】
請求項12に記載のシステムにおいて、前記凝縮器と前記蒸発器との間に接続されたエコノマイザ回路を更に備え、
該エコノマイザ回路は、蒸気冷媒を前記第二の圧縮機段に提供するように前記第二の圧縮機段の入口と流体連通した流れ管を備えている、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムにおいて、
前記モータキャビティ内の圧力は、第一の圧縮機段の排出圧力、第二の圧縮機段の吸引圧力、又はエコノマイザの作動圧力、にほぼ等しいように調節することができる、システム。
【請求項21】
冷却システム内の圧縮機を作動させるモータのためのモータの冷却剤システムにおいて、
前記冷却システムは、閉ループ接続された、圧縮機と、蒸発器と、凝縮器とを備え、
前記モータの冷却剤システムは、
モータを取り囲むモータハウジングと、モータハウジング内のモータキャビティと、
前記モータキャビティと前記圧縮機との間に配置されたシールと、を備え、
該シールは、前記冷媒を前記モータキャビティ内にて中間圧力に維持する構成とされ、
該冷却剤システムは、冷媒をキャビティ内に供給すべく前記凝縮器と流体連通している前記モータキャビティからの第一の接続部と、冷媒を所定の作動圧力を有する前記蒸発器に戻すべく前記閉ループと流体連通している前記モータキャビティからの第二の接続部とを備えており、
前記モータキャビティは、前記冷媒を該モータキャビティ内にて蒸発器の作動圧力に維持する構成とされており、
該モータの冷却剤システムは、シールの漏洩損失とロータの風損による損失との合計値が最小となる最も高いモータキャビティ圧力点で作動することによって、その複合的な動力損失が最小となるようになされている、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、前記圧縮機が単一段の圧縮機である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容を参考として引用し本明細書に含めた、ロータの冷却方法及びシステム(METHOD AND SYSTEM FOR ROTOR COOLING)という名称にて2007年12月31日付けで出願した、米国仮特許出願第61/017,966号の利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、概して、蒸気圧縮システムの圧縮機のモータを冷却するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
密閉型モータは、回転中に生ずる摩擦による風損(ウィンデージ・ロス)を受ける。風損は、モータの性能及び効率に悪影響を与える。モータ内の風損を少なくするため、例えば、ロータの周速度、モータの周囲を循環するモータの冷却ガスの流れ及び熱力学的状態の条件、ロータの表面積、及びロータ表面の粗さのような、モータに直接関係する因子は、モータ内の摩擦を少なくするよう制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを冷却する一方でモータ内のエネルギ損失を少なくする一つの方法は、冷媒をモータの巻線に向けて吸引することによる方法である。冷媒をモータの巻線を横切るように吸引することにより生じた温度低下は、モータの構成要素の過熱を防止し且つモータの作動効率を増大させる。モータ内のエネルギ損失を少なくする別の方法は、モータキャビティ全体にわたって一定の圧力を維持することである。圧力弁をモータキャビティ内に配置して、作動中にモータキャビティ内に生じるより高圧のガスの蓄積を解放することができる。キャビティ内の圧力が上昇するに伴い、弁が開いて高圧のガスが解放される。キャビティ内に一定の圧力を維持することは、モータの効率を増大させる。しかし、この方法は、機械的装置を使用し、また、モータキャビティ内に真の一定圧力を維持するのに最適ではない。更に、この方法は、モータキャビティの温度についての問題点に対して対処していない。
【0005】
追加的な方法は、モータの構成要素間の油の損失を防止しつつ、モータキャビティ内に一定の圧力を維持することにより、モータ内のエネルギ損失を制御する。モータ軸受構成要素内に油を保持することは、部品が動くための一層の潤滑を可能にし、これにより、モータの冷却キャビティ内へ油が逃げるのを許容しない状態で摩擦が少なくされ且つ過剰な油のかき回しが防止され且つエネルギ損失が少なくなる。冷却圧縮機のトランスミッション及び油の供給リザーバを保持する密封ハウジングが圧縮機の吸引側と接続され、ハウジング内の圧力を均等にする。この方法の主目的は、冷媒が油リザーバから沸騰するのを防止することである。しかし、このシステムは、モータキャビティ内の圧力を一定のレベルに保持するのみであり、また、モータ効率を最適化するのではなくエネルギ損失を少なくする助けとなるだけである。
【0006】
しかし、極めて高速のモータの場合、ロータの周速度、モータの周囲のモータの冷却ガスの密度及び流れ、ロータの表面積及び/又はロータ表面の粗さのような因子が最適化された後でさえ、風損は依然としてかなりのものとなる可能性がある。風損を少なくするよう操作することのできる唯一の残る因子は、モータキャビティ内のガスの密度である。モータキャビティ内のガスの密度が低下するに伴い、風損は少なくなってより優れたモータ効率がもたらされる。
【0007】
これらの高速度モータのキャビティ内のガス密度を低下させるために、真空ポンプが使用されてモータの周囲の圧力が低下せしめられて風損が可能な限り少なくされる。しかしながら、真空ポンプの使用は、モータを十分に冷却すると共にモータキャビティを取り囲む真空を提供する双方の能力を提供しない。モータを冷却すると同時にモータキャビティ内のガス密度を低下させる一つの試みは、完全な蒸気圧縮システムが作動している間モータキャビティを「ポンプダウン」する独立の動力源により作動される補助的定容積形ガス圧縮機を使用することを含む。しかしながら、補助的圧縮機は、モータの風損において節約される量よりも多くのエネルギを消費する可能性がある。
【0008】
蒸気圧縮システム内の密閉/半密閉型モータ用のその他の従来のロータ冷却システムは、ロータを通じて導入され且つ圧縮機へのインペラの吸引入口の最低の圧力位置へと排出される蒸発器ガスを利用する。システム内の冷媒密度をほぼ蒸発器の状態に維持することによりロータの風損又は摩擦損失を最小にするために、このシステムが使用される。モータ内の風損は、ロータの速度が一定の場合には、モータキャビティ内のガス密度にほぼ直接的に比例する。
【0009】
モータを冷却するために最低圧力のガスを使用してモータの損失を最小にするときの潜在的に望ましくない結果は、シールにおける最大の圧力差が経験されるため、圧縮機内のシールの漏洩が実際に最大となることである。この議論は、モータキャビティを通して第一段の吸引へと排気される任意のシールに当てはまる。シールの上流の圧力は、それぞれのインペラの各排出静圧状態にあり、また、下流の圧力は、ロータを冷却するため蒸発器の蒸気を利用するときのモータキャビティ圧力、すなわち蒸発器圧力に近い圧力にある。該システムは、モータの風損が唯一の考慮事項である場合に、損失を最小にする。しかしながら、モータを冷却するための蒸発器条件を利用することにより、特に二段圧縮機内において、圧縮機内のシールの漏洩が増大するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は蒸気圧縮システムに関する。該蒸気圧縮システムは、閉ループにて接続された圧縮機と、蒸発器と、凝縮器とを含んでいる。モータは、圧縮機と接続されて該圧縮機を作動させる。モータの冷却剤システムは、圧縮機のモータを冷却する構成とされている。圧縮機は、第一の圧縮機段と第二の圧縮機段とを含んでいる。第一の圧縮機段は、圧縮した蒸気を第二の圧縮機段の入口に供給する。該モータの冷却剤システムは、閉ループと流体連通して冷媒をモータキャビティ内に送る第一の接続部と、冷媒を中間圧力を有する段間の接続部に戻すべく冷媒ループとの第二の接続部とを含む。前記の中間圧力は、蒸発器の作動圧力よりも高く且つ凝縮器の作動圧力よりも低い。第一のシールがモータキャビティと第一の圧縮機段との間に配置されており、また、第二のシールがモータキャビティと第二の圧縮機段との間に配置されている。第一及び第二のシールは、冷媒をモータキャビティ内で前記中間圧力に維持している。
【0011】
本発明は更に、冷却システム内にて圧縮機を作動させるモータのためのモータ冷却剤システムに関する。該冷却システムは、閉ループで接続された、圧縮機と蒸発器と凝縮器とを含んでいる。モータ冷却剤システムは、モータを取り囲んでいるモータハウジングと、モータハウジング内のモータキャビティとを含んでいる。冷却剤システムは、冷媒をキャビティ内へ供給すべく凝縮器と流体連通したモータキャビティからの第一の接続部と、冷媒を中間圧力の段間接続部に戻すべく前記のループと流体連通したモータキャビティからの第二の接続部とを含んでいる。前記の中間圧力は、蒸発器の作動圧力よりも高く且つ凝縮器の作動圧力よりも低い。モータキャビティは、冷媒をモータキャビティ内で前記中間圧力に維持する構成とされている。
【0012】
本発明はまた、閉ループで接続された、圧縮機と蒸発器と凝縮器とを備えている冷却システム内の圧縮機を作動させるモータのためのモータの冷却剤システムにも関する。該モータの冷却剤システムは、モータを取り囲んでいるモータハウジングと、該モータハウジング内のモータキャビティとを含んでいる。該冷却剤システムは、冷媒をキャビティ内へ供給すべく凝縮器と流体連通しているモータキャビティからの第一の接続部と、冷媒を所定の作動圧力を有する蒸発器に戻すべく前記ループと流体連通しているモータキャビティからの第二の接続部とを含んでいる。モータキャビティは、冷媒をモータキャビティ内で蒸発器の作動圧力に維持する構成とされている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、商業的環境にある暖房、換気及び空調(HVAC)システムの一例としての実施の形態を示す図である。
図2図2は、蒸気圧縮システムの一例としての実施の形態の概略図である。
図3図3は、蒸気圧縮システムに取り付けられた速度可変駆動装置(VSD)の一例としての実施の形態を示す図である。
図4】多段蒸気圧縮システム用の冷却システムの一例としての実施の形態の概略図である。
図5】圧縮機内の平衡ピストンラビリンスシールの一例としての実施の形態を示す図である。
図6】モータキャビティの圧力の関数として示した、風損、シール漏洩損失、及び複合損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、商業的環境のための建物12内にて暖房、換気、空調システム(HVACシステム)10の例示的環境を示している。システム10は、建物12を冷房するため使用可能な冷却した液体を供給することのできる蒸気圧縮システム14内に組み込んだ圧縮機を含んでいる。システム10はまた、建物12を暖房するために使用されるボイラー16と、空気を建物12内で循環させる空気分配システムとを含むこともできる。空気分配システムは、空気戻りダクト18と、空気供給ダクト20と、空気取り扱い装置22とを含むことができる。空気取り扱い装置22は、導管24によりボイラー16及び蒸気圧縮システム14と接続された熱交換器を含むことができる。空気取り扱い装置22内の熱交換器は、システム10の作動モードに依存して、ボイラー16からの加熱した液体又は蒸気圧縮システム14からの冷却した液体の何れかを受け取ることができる。システム10は、建物12の各フロアー毎に別個の空気取り扱い装置を有している状態で示されているが、これらの構成要素は、フロアー間で共用しても良いことが理解されよう。
【0015】
図2は、図1の建物12内で使用することができるVSD26を備えているシステム14の一例としての実施の形態を概略図にて示している。システム10は、圧縮機28と、凝縮器30と、液体冷却器又は蒸発器32と、制御盤34とを含んでいる。圧縮機28は、VSD26により作動されるモータ36により駆動される。VSD26は、例えば、ベクトル型駆動装置、又は、可変電圧可変周波数(VVVF)駆動装置とすることができる。VSD26は、特定の一定の線間電圧及び一定の線間周波数を有するAC電力をAC電源38から受け取り且つ所望の電圧及び所望の周波数(その双方は特定の必要条件を満足させるように変化させることができる)のAC電力をモータ36に提供する。制御盤34は、アナログ対デジタル(A/D)変換器、マイクロプロセッサ、非揮発性記憶装置及びインターフェースボードのような、システム10の作動を制御するための多様な異なる構成要素を含むことができる。制御盤34は、VSD26及びモータ36の作動を制御するために使用することもできる。
【0016】
圧縮機28は、冷媒蒸気を圧縮し且つ排出管を通して該蒸気を凝縮器30に供給する。圧縮機28は、例えば、スクリュー圧縮機、遠心圧縮機、往復圧縮機又はスクロール圧縮機のような、任意の適正な型式の圧縮機とすることができる。圧縮機28により凝縮器30に供給された冷媒蒸気は、例えば、空気又は水のような流体との熱交換関係に入り、また、流体との熱交換関係の結果として、冷媒液体への相変化を受ける。凝縮器30からの凝結した液体冷媒は、膨張装置66を通って蒸発器32へと流れる。
【0017】
別の一例としての実施の形態においては、蒸発器32は、冷却負荷の供給管と戻し管との接続部を含んでいる。例えば、水、エチレン、塩化カルシウムブライン又は塩化ナトリウムブラインのような二次的液体は、戻し管を介して蒸発器32内に流れ、供給管を介して蒸発器32から出る。蒸発器32内の液体冷媒は、二次的液体と熱交換関係に入って該二次的液体の温度を低下させる。蒸発器32内の冷媒液体は、二次的液体との熱交換関係の結果として冷媒蒸気に相変化する。蒸発器32内の蒸気冷媒は、吸引管により蒸発器32から出て圧縮機28に戻ってサイクルを完了する。
【0018】
図3は、HVAC&Rシステムの一例としての蒸気圧縮システムを示している。VSD26は、蒸発器32の頂部において、モータ36及び制御盤34に隣接して取り付けられている。モータ36は、蒸発器32の反対側において凝縮器30に取り付けられている。VSD26からの出力配線(図示せず)は、モータ36のためのモータ用リード線(図示せず)に接続されていてモータ36に電力を供給し、該モータが圧縮機28を駆動する。
【0019】
図1を参照すると、一例としてのHVAC、冷却又は液体冷却システム10は、冷媒ループで接続された圧縮機28と、凝縮器30と、液体冷却蒸発器32とを含んでいる。一つの例示的な実施の形態においては、冷却システムは、250トン以上の容量を有し、また、1000トン以上の容量を有することができる。モータ36は、圧縮機28を作動させるよう圧縮機28に接続されている。モータ36及び圧縮機28は、共通の密閉式包囲体内に収容されることが好ましいが、互いに別個の密閉式包囲体内に収容されても良い。
【0020】
凝縮器30からの高圧の液体冷媒は、膨張装置66内を流れ、より低圧で蒸発器32に入る。蒸発器32に供給された液体冷媒は、例えば、空気又は水のような流体との熱交換関係に入り、流体との熱交換関係の結果として冷媒蒸気に相変化する。蒸発器32内の蒸気冷媒は、吸引管により蒸発器32から出て圧縮機28に戻り、サイクルが完了する。凝縮器30及び蒸発器32内での冷媒の適正な相変化が得られる限り、任意の適当な形態の凝縮器30及び蒸発器32をシステム内で使用することができることは理解されるべきである。モータの冷却ループは、冷媒ループに接続されて、モータ36に対する冷却効果を提供する。
【0021】
図4には多段圧縮機システムが示されている。多段圧縮機38は、第一の圧縮機段42と第二の圧縮機段44とを含んでいる。第一の圧縮機段42及び第二の圧縮機段44が、これらの圧縮機段42、44の各々を駆動するモータ36の両端に配設されている。蒸気冷媒は、冷媒管50を通じて第一の圧縮機段42内に吸引される。冷媒管50は蒸発器32の排出管46により供給される。蒸気冷媒は、第一の圧縮機段42により圧縮され、段間を跨いでいる管48内に排出される。段間を跨いでいる管48は、その他端において第二の圧縮機段44の吸引入口52に接続されている。冷媒は、第二の圧縮機段44内で更に圧縮され、圧縮機の排出管54へと排出され、凝縮管30に供給され、凝縮器30において加圧された蒸気冷媒は凝縮されて液体にされる。図4に示した例示的な実施の形態においては、選択随意のエコノマイザ回路60が液体冷媒の戻し経路56、58内に挿入されており、また、蒸気流動管62が吸引入口52に接続されていて、中間圧力の冷媒が第二の圧縮機段44に供給されて冷却サイクルの効率が高められている。モータの冷却源は、蒸発器32を第二の冷媒の蒸気管64を介して密閉型又は半密閉型圧縮機38内のモータ36の内部の空隙に接続することにより提供されている。蒸発管64は、モータ36の内部と流体連通しており且つ冷媒を第二の圧縮機段44の吸引入口52に対して中間の圧力で提供している。該中間の圧力は、蒸気器の作動圧力よりも高いが、凝縮器の作動圧力よりも低い圧力である。一例としての実施の形態においては、中間圧力は、第一の圧縮機段42の排出圧力、第二の圧縮機段44の吸引圧力、又はエコノマイザの作動圧力にほぼ等しくすることができ、これら3つの圧力の全ては、管による圧力低下のため僅かに差がある可能性があるが概ね等しい。一つの実施の形態においては、モータ36は、通気管49を介して通気され、段間を跨いでいる管48に又は該管と流体連通している位置に接続することができる。該通気接続部は、モータキャビティ78の中間圧力のレベルを決定する(図5)。
【0022】
一つの代替的な実施の形態においては、モータ36は、代替的な通気管47及び図4において省略されている通気管49を介して蒸発器32に通気することができる。例えば、圧縮機段42、44とモータキャビティ78(図5)との間において完全な又はほぼ完全なシールを実現することができる場合に代替的な通気管47を使用することができる。この場合には、最小の損失はモータキャビティ78内の最小圧力に相応し、この最小損失は、代替的な通気管47を通じて蒸発器32へと通気することにより実現できる。また、単一段圧縮機38の場合、モータ36及びモータキャビティ78は、モータ36を蒸発器32へと通気することにより、上述した方法により冷却することができる。
【0023】
次に、図5を参照すると、多段圧縮機38の部分断面図には、モータ36と第一の圧縮機段42又は第二の圧縮機段44との間の境界部72が示されており、圧縮器38は、境界部72の近くでは概ね対称である。モータ36と第一の圧縮機段42との間にはシール70が配設されている。モータ36と第二の圧縮機段44との間には別のシール70が配設されている。第一の圧縮機段42及び第二の圧縮機段44の平衡ピストンラビリンスシール70に対する漏洩路が生じる。シール70の上流の圧縮機段キャビティ74内の圧力は、各インペラ76の排出静止状態とそれぞれほぼ同一である。シール70の下流に配置されているモータキャビティ78は、蒸発器32からの蒸気がロータを冷却するために使用されるときにモータキャビティの圧力が蒸発器の圧力とほぼ等しいというモータキャビティ78の状態で加圧される。蒸発器32からの蒸気は、冷媒の蒸気管64を通じて第一の圧縮機段42の吸引入口を介して通気されて戻る。
【0024】
図6は、代表的な圧縮機に対するモータキャビティの圧力の関数として、風損(ウィンデージ・ロス)及びシールの漏洩に対する近似的な理論的損失を示している。X軸に示したモータキャビティの圧力は、曲線を生成するように蒸発器の状態と凝縮器の状態との間で変化させた。グラフ80は、モータキャビティの圧力対全動力の比の関数として、シールの漏洩動力損失84、ロータの風損による動力損失82、モータ内の複合的な動力損失86を示している。複合的な動力損失86は、シールの漏洩動力損失とロータの風損による動力損失との合計値である。ロータの風損に起因して損失する最小動力は、モータキャビティの最低圧力に対応する点88において生ずる。点88は、モータ36内のほぼ蒸発器の圧力状態にて生ずる。これと逆に、シールの漏洩に起因する最小の動力損失が生ずる点90は、シールの両側の圧力差がほぼ0であるときに生ずる。シールの両側の圧力差がほぼ0である点90は、高いモータキャビティの圧力と一致する。例示的なグラフ80においては、モータキャビティの内部圧力は約868.73kpa(126PSI)である。
【0025】
圧縮機システムの最小の圧力損失又は複合的な動力損失が生ずる点92は、線86で示したように、シールの漏洩損失とロータの風損による損失との合計値が最小となる点において生ずる。この複合的な動力損失の最小点92は、高いモータキャビティ圧力において生ずる。この結果は、ロータの風損のみを考慮するとき、すなわち、シールの漏洩に関係なくロータの風損を考慮するときに得られる結果に反し、ロータの風損は最低のモータキャビティ圧力のとき最小となる。
【0026】
グラフ80は、複合的な圧縮機システムの損失86を最小にするためには、シールの漏洩損失82を最小にするか又は減少させなければならないことを示している。これは、例えば、漏洩を少なくするように改良したシールにより、また、シールにおける圧力差を最小にすることにより実現することができる。一つの例示的な実施の形態においては、シールの両側における圧力の差は、モータの冷却流の源を使用することにより、また、可能な限りほぼ等しい圧力にて通気することにより最小にすることができる。
【0027】
シール70の両側における圧力の差を最小にする1つの方法は、蒸発器32の蒸気圧力を上回る高い圧力の蒸気を使用してモータキャビティ78を冷却し、最小のシステム損失を実現する方法である。一つの例示的な実施の形態においては、この方法は、冷却剤の供給管37(図4)によって示したように、純粋蒸気まで膨張させた凝縮器30からの液体冷媒を採用してロータ空隙を冷却し且つ、例えば、第二の段の吸引入口52のような中間圧力位置、第一の段の排出口又は段間を跨いでいる管48又はエコノマイザ容器60に通気して戻す。その他の中間の圧力位置を使用することもでき、また、上記の文節にて掲げた位置は、単に一例として記載したものであり、限定的なものではない。当業者は、中間圧力の位置は冷媒回路の全体にわたって見出すことができ、また、上述した例は、全体として冷媒回路内のアクセス可能な点であることが理解されよう。
【0028】
別の例示的な実施の形態においては、バリヤシールの両側の圧力差が最小の状態で専用の冷却管を設置することに代えて、システムは、システムの別の部分からの別個の冷却源を使用することなく、モータキャビティを通じて第二の段から第一の段内へのシールの漏洩流れのみを利用することができる。この方法は、システムの複雑さ及びコストを軽減する。何れの場合でも、モータ及び軸受の作動温度を要求される限界値内に維持することが保証される。
【0029】
ここに開示した冷却方法は、例えば、それぞれのモータの作動限界値内にて、密閉的/半密閉的環境内で、誘導モータ、永久磁石モータ、ハイブリッド永久磁石モータ、ソリッドロータモータのような、色々な型式のモータに適用することができる。更に、この方法は、例えば、油膜、ガス又はフォイル、転がり要素、磁気及びその他の適当な軸受のような、色々な型式の軸受に、それぞれの軸受の作動限界値内で適用される。
【0030】
モータキャビティ78に対する最適な作動圧力は、種々の特徴を有するシールの型式間で変更することができ、また、形成されるシールの漏洩はこれに応じて相違するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0031】
色々な例示的実施の形態において示したロータを冷却するための方法及びシステムの構造及び配置は単に例示的なものであることを認識することが重要である。本明細書においては幾つかの例示的な実施の形態に関してのみ詳細に説明したが、本明細書を参照した当業者は、特許請求の範囲に記載した主題事項の新規な教示及び有利な効果から逸脱することなく、多数の改変例(例えば、色々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータの値、取り付け配置、材料の使用方法、色、向き等の変更)が可能であることが容易に理解できるであろう。例えば、一体的に形成されたものとして示した要素は、多数の部品又は要素により構成することができ、また、要素の位置は、逆にし又はその他の変更を加えることができ、また、別個の要素の性質又は数量又は位置は、変更し又は変化させることができる。従って、かかる改変例の全てが本出願の範囲に含めることを意図されたものである。任意の過程又は方法のステップの順序又は順番は、代替的な実施の形態に従って変更し又は順序変えすることができる。請求項において、任意の手段プラス機能の項は、構造的等価物のみならず等価構造をも含んで、上述した機能を実施するものとして本明細書に記載した構造を包含することを意図するものである。本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施の形態の設計、作動状態及び配置の点において、その他の置換、改変例、変更、変化及び省略を為すことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6