特許第5749322号(P5749322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5749322リチウムイオン電池用セパレータ、その製造方法及びそれを利用したリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749322
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用セパレータ、その製造方法及びそれを利用したリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20150625BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 M
   B32B5/18
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-245988(P2013-245988)
(22)【出願日】2013年11月28日
(62)【分割の表示】特願2011-137334(P2011-137334)の分割
【原出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-75351(P2014-75351A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2013年11月28日
(31)【優先権主張番号】201010555227.4
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】何 向明
(72)【発明者】
【氏名】蒲 薇華
(72)【発明者】
【氏名】張 麗春
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】李 建軍
(72)【発明者】
【氏名】高 剣
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146610(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0155677(US,A1)
【文献】 特開2010−021033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆された改質剤層と、を含み、
前記改質剤層は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合して形成された溶液の改質剤で、前記多孔膜の少なくとも一つの表面被覆されて、乾燥して形成されたものであり、
前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrOあり、
前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンであり、
前記改質剤の組成が以下の式1で表され、
1:2.5≦(Al+M):P≦1:4 (式1)
前記式1において、Alは前記三価のアルミニウム源におけるアルミニウム元素のモル数であり、Mは前記金属酸化物におけるクロムのモル数であり、Pは前記リン酸基を含むリン源におけるリン元素のモル数であることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
【請求項2】
リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合することによって形成された溶液の改質剤と、多孔膜と、を提供する第一ステップと、
前記改質剤を前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆して、被覆層を形成する第二ステップと、
前記被覆層を有する多孔膜を乾燥して、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に改質剤層を形成する第三ステップと、
を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータの製造方法であって、
前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrOあり、
前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンであり、
前記改質剤の組成が以下の式1で表され、
1:2.5≦(Al+M):P≦1:4 (式1)
前記式1において、Alは前記三価のアルミニウム源におけるアルミニウム元素のモル数であり、Mは前記金属酸化物におけるクロムのモル数であり、Pは前記リン酸基を含むリン源におけるリン元素のモル数であることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
正極と、負極と、非水電解液と、前記正極及び前記負極の間に配置される電池セパレータと、外部の密封構造体と、を備えるリチウムイオン電池において、
前記正極、負極、非水電解液及びセパレータは、前記密封構造体内に設置され、
前記セパレータは、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆された改質剤層と、を含み、
前記改質剤層は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合して形成された溶液の改質剤で、前記多孔膜の少なくとも一つの表面被覆されて、乾燥して形成されたものであり、
前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種であり、
前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrOあり、
前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンであり、
前記改質剤の組成が以下の式1で表され、
1:2.5≦(Al+M):P≦1:4 (式1)
前記式1において、Alは前記三価のアルミニウム源におけるアルミニウム元素のモル数であり、Mは前記金属酸化物におけるクロムのモル数であり、Pは前記リン酸基を含むリン源におけるリン元素のモル数であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、リチウムイオン電池用セパレータ、その製造方法及びそれを利用したリチウムイオン電池に関するものであるに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器類用、電気自動車用などの電源としてエネルギー密度が高く、かつ自己放電が少なくてサイクル特性の良いリチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池が注目されている。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は、正極と、負極と、非水電解液と、前記正極及び前記負極の間に配置される電池セパレータと、を含む。前記電池セパレータは、電池の中で正極と負極を隔離し、これらの両電極が接触することによる短路を防止すると同時に、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する重要な材料である。電池セパレータは、リチウムイオン電池の容量、高温での保存安定性及びサイクル特性に関与する。
【0004】
従来のリチウムイオン電池用セパレータは、単層又は多層ポリマーからなる多孔膜であり、加熱される場合、該多孔膜は熔融しやすいので、前記リチウムイオン電池の電極間を短絡させる。更に、該リチウムイオン電池を燃焼又は爆発させる。従って、前記リチウムイオン電池の応用範囲は制限される。
【0005】
前記課題を解決するために、前記セパレータの表面に酸化アルミニウムのようなセラミックス材料を被覆する方法がある。多孔質の無機絶縁層を含むリチウムイオン電池用セパレータは特許文献1に開示されている。該セパレータを利用したリチウムイオン電池を加熱する場合、前記セパレータのポリマー基板が熔融しても、前記無機絶縁層が該リチウムイオン電池の電極間の短絡の問題を防止するため、前記電池の安全性が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸化アルミニウムは、低い水溶性を有するので、前記セパレータの表面に被覆される場合、その均一性を容易に制限することができない。これは、前記セパレータの熱安定性に悪影響を与える。
【0007】
従って、本発明は、前記課題を解決するリチウムイオン電池用セパレータ、その製造方法及びそれを利用したリチウムイオン電池を提供する。前記セパレータの製造方法で形成された前記セパレータを利用したリチウムイオン電池の安全性及び安定性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆された改質剤層と、を含む。前記改質剤層は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合して、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆されて、乾燥して形成されたものである。前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)の一種又は数種である。前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンである。
【0009】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータの製造方法は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合することによって形成された改質剤と、多孔膜と、を提供する第一ステップと、前記改質剤を前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆して、被覆層を形成する第二ステップと、前記被覆層を有する多孔膜を乾燥して、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に改質剤層を形成する第三ステップと、を含む。前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)の一種又は数種である。前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンである。
【0010】
本発明のリチウムイオン電池は、正極と、負極と、非水電解液と、前記正極及び前記負極の間に配置される電池セパレータと、外部の密封構造体と、を備える。前記正極、負極、非水電解液及びセパレータは、前記密封構造体内に設置される。前記セパレータは、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆された改質剤層と、を含む。前記改質剤層は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合して、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆されて、乾燥して形成されたものである。前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種であり、前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種であり、前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種であり、前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO)の一種又は数種である。前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)の一種又は数種である。前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンである。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べると、本発明のリチウムイオン電池用セパレータの製造方法によって形成されたセパレータは、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも一つの表面に被覆された均一な改質剤層と、を含むので、前記セパレータの熱安定性、及びセパレータを利用したリチウムイオン電池の安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池の改質剤の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池用集電体の構造の側面図である。
図3】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池用集電体のSEM写真である。
図4】従来のリチウムイオン電池用集電体のSEM写真である。
図5】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池用電極の構造の側面図である。
図6】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池電極用複合材料の構造を示す図である。
図7】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池用セパレータの構造の側面図である。
図8】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池用セパレータと従来のリチウムイオン電池用セパレータとの熱収縮性の対比図である。
図9】本発明の実施例に係るリチウムイオン電池の局部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、改質剤を含むので、まず、該リチウムイオン電池の改質剤及びその製造方法について説明する。
【0014】
(実施例1)
本実施例において、リチウムイオン電池の改質剤及びその製造方法を提供する。前記リチウムイオン電池の改質剤は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合することによって形成された透明な溶液である。
【0015】
前記リン酸基は、三価のリン酸基(PO3−)、リン酸二水素基(HPO)及びリン酸水素基(HPO2−)の一種又は数種である。前記三価のリン酸基(PO3−)を含むリン源は、リン酸(HPO)、リン酸三アンモニウム((NHPO)、リン酸アルミニウム(AlPO)の一種又は数種である。前記リン酸二水素基(HPO)を含むリン源は、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)及びそれらの混合物のいずれか一種である。前記リン酸水素基(HPO2−)を含むリン源は、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO))の一種又は数種である。前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化アルミニウム(Al)、リン酸アルミニウム(AlPO)、リン酸二水素アルミニウム(Al(HPO)、第二リン酸アルミニウム(Al(HPO))の一種又は数種である。前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化バナジウム(V)、酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)の一種又は数種である。
【0016】
前記改質剤は、粘性を持つ透明な溶液である。前記液相溶剤は、水又はN-メチル-ピロリドンである。本実施例において、三価のアルミニウム源、リン酸基を含むリン源及び金属酸化物のモル比の関係は、次の式1のように示されている。
【0017】
1:2.5≦(Al+M):P≦1:4 (式1)
【0018】
前記式1において、Alは、前記三価のアルミニウム源におけるアルミニウム元素のモル数で、Mは、金属酸化物における金属元素のモル数で、Pは、リン酸基を含むリン源におけるリン元素のモル数である。それらのモル比の関係は、次の式の2ように示されていることが好ましい。
【0019】
1:2.5≦(Al+M):P≦1:3 (式2)
【0020】
前記金属酸化物が三酸化クロム(CrO)である場合、前記改質剤は、赤い透明な溶液である。実際の応用に応じて前記改質剤の濃度を選択することができる。前記改質剤で均一に薄い被覆層を形成するために、該改質剤の濃度を低下させる。前記改質剤の濃度は、該改質剤全体におけるリン酸基、前記アルミニウム元素及び前記金属元素の総質量と、該改質剤の体積との比である。本実施例において、前記改質剤の濃度は、0.02g/ml〜0.08g/mlであることが好ましい。
【0021】
前記改質剤を、リチウムイオン電池用セパレータ、集電体及び電極板の表面に均一に被覆することができる。この場合、100℃以上に加熱すると、前記改質剤は化学反応を起こして、生成物としてAlPO、Al(PO及びそれらの混合物のいずれか一種が形成される。前記Mは、Cr、Zn、Cu、Mg、Zr、Mo、V、Nb、Taの一種又は数種であり、その原子価がkである。
【0022】
0<x<1 (式3)
【0023】
0<y<1 (式4)
【0024】
3x+ky=3 (式5)
【0025】
前記x、yは、それぞれ前記式3〜式5を満足する。前記MがCrである場合、k=3であり、その生成物はAlCr1−xPO、AlCr1−x(PO及びそれらの混合物のいずれか一種である。
【0026】
図1を参照すると、前記改質剤の製造方法は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を提供する第一ステップと、前記リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を、液相溶剤の中で混合して、透明な溶液を形成する第二ステップと、を含む。
【0027】
前記第二ステップにおいて、前記三価のアルミニウム源と、前記リン源と、前記金属酸化物と、を同時又は次第に前記液相溶剤の中に添加することができる。本実施例において、前記透明な溶液の形成方法は、前記リン源を含む溶液を調製する第一サブステップと、前記三価のアルミニウム源及び前記金属酸化物を、前記リン源を含む溶液に同時又は次第に添加する第二サブステップと、を含む。本実施例において、前記リン源は、リン酸(HPO)であり、前記三価のアルミニウム源は、水酸化アルミニウム(Al(OH))であり、前記金属酸化物は、三酸化クロム(CrO)である。前記リン酸の濃度は、60%〜90%である。まず、前記リン酸水溶液を調製する。次に、前記水酸化アルミニウムを前記リン酸水溶液に添加して、白色の懸濁液(AlPO)を形成した後、前記三酸化クロムを前記白色の懸濁液に添加すると、前記懸濁液の白色が消失して、赤い透明な溶液が形成される。
【0028】
更に、前記第二ステップにおいて、前記液相溶剤における前記三価のアルミニウム源と、前記リン源と、前記金属酸化物と、を攪拌する及び/または加熱するステップS1を含むこともできる。前記ステップS1によって、前記三価のアルミニウム源と、前記リン源と、前記金属酸化物とを均一に混合させて、十分に反応させることができる。本実施例において、前記三価のアルミニウム源、前記リン源及び前記金属酸化物を加熱する温度は、60℃〜100℃であり、それらの反応時間は、2時間〜3時間である。
【0029】
一つの例として、34.5グラムのリン酸(濃度:85%)及び14グラムの脱イオン水を容器に添加して溶液を形成する。前記溶液を80℃まで加熱させて磁力攪拌器で5分間攪拌した後、5.9グラムの水酸化アルミニウムを前記容器の中に添加して、前記リン酸と前記水酸化アルミニウムとを2時間反応させて、コロイド状懸濁液を形成する。この場合、前記容器の中に2.5グラムの三酸化クロムを添加して、該の三酸化クロムと前記コロイド状懸濁液とを2時間反応させた後、前記容器における前記コロイド状懸濁液は、赤い透明な溶液になって、改質剤を形成する。
【0030】
(実施例2)
本実施例において、前記リチウムイオン電池の改質剤の応用を提供する。
【0031】
前記リチウムイオン電池の改質剤を以下の(1)〜(5)の製品に利用することができる。
【0032】
(1)リチウムイオン電池用集電体
本実施例において、前記リチウムイオン電池の改質剤を集電体の表面に被覆することによって、該集電体を利用したリチウムイオン電池の安定性を高める。前記改質剤を均一に前記集電体の表面に被覆して、且つ前記改質剤が被覆された前記集電体を加熱処理することによって、該集電体の表面に均一に保護フィルムを形成することができる。前記保護フィルムは、電解液の腐食性に対して保護効果を有するので、前記集電体を保護すると同時に、前記集電体の導電性に影響を与えない。
【0033】
図2を参照すると、本実施例のリチウムイオン電池用集電体100は、金属片102と、前記金属片102の表面に被覆された保護フィルム106と、を含む。前記保護フィルム106は、(AlPO)及び(Al(PO)の少なくとも一種からなる。前記Mは、Cr、Zn、Cu、Mg、Zr、Mo、V、Nb及びTaの一種又は数種である。その原子価がkである。
【0034】
0<x<1 (式3)
【0035】
0<y<1 (式4)
【0036】
3x+ky=3 (式5)
【0037】
前記x、yは、それぞれ前記式3〜式5を満足する。前記金属片102は、Al、Cu、Ni及びそれらの合金などの材料のいずれか一種からなる。本実施例において、前記金属片102の材料は、アルミニウム箔であり、その厚さが5μm〜60μmであり、その幅が10mm〜300mmである。厚さが20μmであり、幅が30mmであることが好ましい。前記保護フィルム106の厚さが10nm〜200nmである。本実施例において、前記保護フィルム106は、(AlCr1−xPO)及び(AlCr1−x(PO)の少なくとも一種からなりその厚さが50nm〜60nmである。
【0038】
前記リチウムイオン電池用集電体100の製造方法は、実施例1の改質剤の製造方法で得られる改質剤と、前記金属片102と、を提供するステップS21と、前記改質剤を前記金属片102の表面に被覆して、被覆層を形成するステップS22と、前記被覆層が被覆された前記金属片102を加熱処理することによって、前記被覆層を保護フィルム106とするステップS23と、を含む。
【0039】
前記ステップS22において、ナイフコーティング法、ブラッシング法、スプレー塗装法、静電塗装方法、ロールコーティング法、シルクスクリーン印刷及びディップ・コーティング法のいずれか一種の方法によって、前記金属片102の少なくとも一つの表面に前記改質剤を被覆する。本実施例において、前記ディップ・コーティング法で同時に前記金属片102の二つの表面に均一な前記被覆層を形成し、且つ前記被覆層の厚さを調整することができる。
【0040】
前記ディップ・コーティング法は、前記金属片102を、前記改質剤を含む溶液に完全に浸漬するステップaと、前記浸漬された金属片102を前記溶液から持ち上げるステップbと、を含む。
【0041】
前記ステップbにおいて、前記改質剤を前記金属片102の表面に均一に形成するために、前記金属片102の厚さ方向と長さ方向とが形成する平面を、前記溶液の液面に垂直にすることが好ましい。
【0042】
前記被覆層の厚さ及び均一性を調整するために、前記ステップa及び前記ステップbを数回繰返すことができる。前記改質剤を含む溶液の濃度が低く、前記浸漬された金属片102を前記改質剤から持ち上げる速度が速いほど、被覆層の厚さが薄くなる。
【0043】
更に、前記ステップS22と前記ステップS23との間に、前記被覆層が被覆された金属片102を乾燥する(室温下風乾燥又は加熱乾燥)サブステップcを含むことができる。前記サブステップcによって、前記被覆層中の溶剤を除去することができる。
【0044】
前記ステップS23において、前記被覆層が被覆された前記金属片102を加熱処理することによって、前記被覆層中の溶剤を除去すると同時に、前記被覆層が連続的な保護フィルム106となって、前記金属片102の表面を被覆する。前記保護フィルム106は、電解液の腐食性に対して保護効果を有するので、前記金属片102を保護することができる。前記加熱処理温度は100℃〜350℃である。本実施例において、前記加熱処理温度は150℃〜250℃であり、加熱処理時間は、1時間〜3時間である。
【0045】
一つの例として、前記リチウムイオン電池用集電体100の製造方法は、前記改質剤を含む溶液に0.5mlのトリトン及び30mlの水を添加して、前記溶液を20分間超音波処理するステップS221と、ディップ・コーティング法で前記改質剤を、厚さが20μm、幅が30μmのアルミニウム箔の表面に被覆して、被覆層を形成するステップS222と、前記被覆層が被覆されたアルミニウム箔をオーブンに置いて80℃で0.5時間乾燥させた後、該アルミニウム箔をマッフル炉に置いて200℃で1時間保持する加熱処理を行って、前記被覆層が保護フィルム106となる前記ステップS223と、を含む。
【0046】
図3及び図4を参照して、従来のリチウムイオン電池用集電体と比べて、前記の製造方法で得られたリチウムイオン電池用集電体100の表面は、前記保護フィルム106が被覆されているので、平滑な表面を有する。
【0047】
本発明によるリチウムイオン電池用集電体100及びアルミニウム箔のみからなるリチウムイオン電池用集電体を別々に塩酸中に浸漬する。前記塩酸の濃度は0.01%〜30%である。前記アルミニウム箔からなるリチウムイオン電池用集電体を前記塩酸中に浸漬すると、該集電体の表面に気泡が形成される。しかしながら、本発明によるリチウムイオン電池用集電体100を前記塩酸中に4時間より長い時間ほど浸漬した後、該集電体100の表面には気泡が形成されない。このような結果からみると、前記保護フィルム106は、耐腐食性を有するので、前記リチウムイオン電池用集電体100を保護することができることが分かれる。従って、前記リチウムイオン電池用集電体100は、良好な安定性を有する。
【0048】
(2)リチウムイオン電池用電極
図5を参照すると、本実施例のリチウムイオン電池用電極200は、リチウムイオン電池用集電体202と、前記集電体202の表面に被覆した電極材料層204と、前記電極材料層204の表面に被覆した保護フィルム206と、を含む。前記保護フィルム206は、(AlPO)及び(Al(PO)の少なくとも一種からなる。前記Mは、Cr、Zn、Cu、Mg、Zr、Mo、V、Nb及びTaの一種又は数種である。その原子価がkである。
【0049】
0<x<1 (式3)
【0050】
0<y<1 (式4)
【0051】
3x+ky=3 (式5)
【0052】
前記x、yは、それぞれ前記式3〜式5を満足する。前記保護フィルム206は、実施例1の製造方法で得られた改質剤からなる。本実施例において、前記保護フィルム206は、AlCr1−xPO、AlCr1−x(PO及びそれらの混合物のいずれか一種からなる。
【0053】
前記集電体202は、Al、Cu、Ni及びそれらの合金などの材料のいずれか一種からなる。前記電極材料層204は、電極活物質と、導電剤と、接着剤と、を含む。前記電極活物質は、正極活物質または負極活物質であることができる。前記正極活物質は、ドープされた又はドープされないスピネル型リチウムマンガン酸化物(LiMn2−y)、層状リチウムマンガン酸化物(LiMn1−y)、リチウムニッケル酸化物(LiNi1−y)、リチウムコバルト酸化物(LiCo1−y)、リン酸鉄リチウム(LiFe1−yPO)、リチウム、ニッケルマンガン酸化物(LiNi0.5+z−aMn1.5−z−b)及びリチウムニッケルコバルト酸化物(LiNiCoMn)の一種または数種である。
【0054】
0.1≦x≦1.1 (式6)
【0055】
0≦y<1 (式7)
【0056】
0≦z≦1.5 (式8)
【0057】
0≦a−z≦0.5 (式9)
【0058】
0≦b+z<1.5 (式10)
【0059】
0<c<1 (式11)
【0060】
0<d<1 (式12)
【0061】
0<e<1 (式13)
【0062】
0≦f≦0.2 (式14)
【0063】
c+e+f=1 (式15)
【0064】
前記x、y、z、a、b、c、d、e、fは、それぞれ前記式6〜式15を満足する。前記L及びRは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第13族元素、第14族元素、遷移金属元素及び希土類元素の一種又は数種である。前記L及びRは、Mn、Ni、Cr、Co、V、Ti、Al、Fe、Ga、Nd及びMgの少なくとも一種であることが好ましい。前記負極活物質は、チタン酸リチウム、グラファイト、アセチレンブラック、有機分解炭素及びメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、の一種又は数種である。詳しくは、前記チタン酸リチウムの化学式は、Li(4−g)AgTi12又はLiAhTi(5−h)12である。
【0065】
0<g≦0.33 (式16)
【0066】
0<h≦0.5 (式17)
【0067】
前記g、hは、それぞれ前記式16〜式17を満足する。前記Aは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第13族元素、第14族元素、遷移金属元素及び希土類元素の一種又は数種である。前記Aは、Mn、Ni、Cr、Co、V、Ti、Al、Fe、Ga、Nd及びMgの少なくとも一種であることが好ましい。前記導電剤は、グラファイトであり、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)の一種又は数種である。
【0068】
前記リチウムイオン電池用電極200の製造方法は、前記集電体202の表面に前記電極材料層204を形成するステップS31と、前記電極材料層204の表面に前記改質剤を被覆して、被覆層を形成するステップS32と、前記被覆層が被覆された前記集電体202を加熱処理することによって、前記被覆層が保護フィルム206となるステップS33と、を含む。
【0069】
前記ステップS31は、前記電極活性材料、導電剤及び接着剤を混合してスラリーとするサブステップS331と、前記スラリーを前記集電体202の表面に被覆して、前記電極材料層204を形成するサブステップS332と、を含む。前記電極材料層204を密接に前記集電体202の表面に被覆するために、前記電極材料層204が被覆された前記集電体202を加熱処理する。
【0070】
前記ステップS32において、前記改質剤は、透明な溶液であるので、ナイフコーティング法、ブラッシング法、スプレー塗装法、静電塗装方法、ロールコーティング法、シルクスクリーン印刷及びディップ・コーティング法のいずれかの一種の方法によって、前記改質剤を容易に前記電極材料層204の表面に被覆させることができる。
【0071】
前記ステップS33において、前記加熱処理温度は100℃〜200℃であり、加熱処理時間は、1時間〜3時間である。前記保護フィルム206の厚さは、10nm〜200nmである。本実施例において、その厚さは50nm〜60nmである。前記保護フィルム206は、前記電極200の導電性に影響を与えない。
【0072】
(3)リチウムイオン電池電極用複合材料
図6を参照すると、本実施例において、リチウムイオン電池電極用複合材料300は、複数のリチウムイオン電池電極用活物質粒子302と、各々の前記電極用活物質粒子302の表面に被覆された保護フィルム306と、を含む。前記保護フィルム306の成分は、前記(1)における保護フィルム106の成分と同じである。本実施例において、前記保護フィルム306は、AlCr1−xPO、AlCr1−x(PO及びそれらの混合物のいずれか一種からなる。
【0073】
各々の前記電極用活物質微粒子302の表面には、前記保護フィルム306で均一かつ連続的に被覆されている。前記電極用複合材料300における前記保護フィルム306の質量比は、0.05%〜3%であり、その厚さは、5nm〜100nmであることが好ましい。前記複数の電極用活物質粒子302の成分は、前記(2)における電極活物質の成分と同じである。単一の前記電極用活物質粒子302の粒径は、100nm〜100μmであることが好ましい。本実施例において、前記複数の電極用活物質粒子302は、グラファイト粉末からなる負極活物質であり、その粒径が8μm〜12μmである。
【0074】
本実施例において、前記電極用複合材料300の製造方法は、前記実施例1の改質剤及び前記複数の電極用活物質粒子302を提供するステップB11と、前記改質剤及び前記複数の電極用活物質粒子302を混合して混合物とするステップB12と、前記混合物を乾燥させた後に加熱処理を行うステップB13と、を含む。
【0075】
前記ステップB12において、前記複数の電極用活物質粒子302は、前記改質剤に溶けないので、前記改質剤は、前記複数の電極用活物質粒子302の表面に簡単に且つ均一に被覆され、改質剤層となる。
【0076】
更に、前記ステップB12の後、前記混合物の中から、前記改質剤が被覆された前記複数の電極用活物質粒子302を過濾するステップb121を行うこともできる。
【0077】
前記ステップB13において、室温で風乾燥又は加熱乾燥などの乾燥方法で前記混合物における前記改質剤を除去する。前記加熱乾燥の温度は、60℃〜100℃であることが好ましい。本実施例において、前記加熱乾燥処理の温度は、80℃である。前記加熱処理工程によって、前記複数の電極用活物質粒子302の表面に被覆された前記改質剤層は、前記保護フィルム306となる。前記加熱処理温度は300℃〜800℃であり、前記加熱処理時間は1時間〜3時間である。本実施例において、前記加熱処理温度は700℃であり、前記加熱処理時間は3時間である。
【0078】
(4)リチウムイオン電池用セパレータ
図7を参照すると、リチウムイオン電池用セパレータ400は、多孔膜402と、前記多孔膜402の二つの表面に被覆された改質剤層404と、を含む。
【0079】
前記多孔膜402は、例えば、純ポリマーセパレータ、セラミックセパレータ、またはセラミック材料を含むポリマーセパレータなどである。前記多孔膜402の厚さは、5μm〜60μmである。前記多孔膜402の多孔度は、20%〜90%であり、その孔径は、0.1μm〜80μmである。本実施例において、前記多孔膜402の厚さは、15μm〜40μmであり、その多孔度は、40%〜80%であり、その孔径は、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0080】
前記改質剤層404の厚さは、10nm〜100nmであるが、本実施例において、前記改質剤層404の厚さは、10nm〜40nmである。
【0081】
本実施例において、前記セパレータ400の製造方法は、実施例1の前記改質剤及び前記多孔膜402を提供するステップB21と、前記改質剤を前記多孔膜402の二つの表面に被覆して、被覆層を形成するステップB22と、前記被覆層が被覆された前記多孔膜402を乾燥して、前記被覆層を改質剤層404とするステップB23と、を含む。
【0082】
前記ステップB21において、溶融押出法又は熱誘起相分離法で前記多孔膜402を製造する。
【0083】
前記ステップB22において、ナイフコーティング法、ブラッシング法、スプレー塗装法、静電塗装方法、ロールコーティング法、シルクスクリーン印刷及びディップ・コーティング法のいずれか一種によって、前記多孔膜402の少なくとも一つの表面に前記改質剤を被覆する。本実施例において、前記ディップ・コーティング法で同時に前記多孔膜402の二つの対向する表面に均一な前記被覆層を形成し、且つ前記被覆層の厚さを制御することができる。
【0084】
詳しくは、前記ディップ・コーティング法は、前記多孔膜402を、前記改質剤を含む溶液に完全に浸漬するステップ2aと、前記浸漬された前記多孔膜402を前記溶液から持ち上げるステップ2bと、を含む。
【0085】
前記ステップ2bにおいて、前記改質剤を前記多孔膜402の表面に均一に形成するために、前記多孔膜402の厚さ方向と長さ方向とが形成する平面を、前記溶液の液面に垂直にすることが好ましい。
【0086】
前記被覆層の厚さ及び均一性を抑制するために、前記ステップ2a及び前記ステップ2bを数回繰返すことができる。前記改質剤を含む溶液の濃度が低く、前記浸漬された前記多孔膜402を前記改質剤から持ち上げる速度が速いほど、被覆層の厚さが薄くなる。
【0087】
前記ステップB23において、室温で風乾燥又は加熱乾燥などの乾燥方法で前記被覆層が被覆された多孔膜402を乾燥する。これにより、前記被覆層中の溶剤を除去することができる。本実施例において、前記加熱乾燥方法の加熱温度は、70℃以下である。
【0088】
一つの例として、前記セパレータ400の製造方法は、多孔度が60%、孔径が7μmのポリプロピレン多孔質膜及び前記実施例1の改質剤を希釈して形成された濃度が1mol/Lの改質剤を提供するステップB221と、ディップ・コーティング法によって、前記希釈された改質剤を、前記ポリプロピレン多孔質膜の二つの表面に被覆して、被覆層を形成するステップB222と、前記被覆層が被覆されたポリプロピレン多孔質膜を40℃で一時間乾燥して、前記被覆層を改質剤層404とするステップB223と、を含む。前記改質剤層404の厚さは、20nmである。
【0089】
図8を参照すると、本発明によるセパレータ400と改質剤層で被覆されていないポリプロピレン多孔質膜からなるセパレータとを比べると、本発明のセパレータ400は、その幅方向に沿って、良好な熱収縮性を有する。
【0090】
(5)リチウムイオン電池
図9を参照すると、本実施例のリチウムイオン電池500は、正極502と、負極504と、セパレータ506と、非水電解液と、外部の密封構造体508と、を含む。前記正極502、負極504、非水電解液及びセパレータ506は、前記密封構造体の内に設置される。前記セパレータ506は、前記正極502と前記負極504との間に設置される。前記正極502は、正極集電体512及び該正極集電体512の表面に被覆された正極材料層522を含む。前記負極504は、負極集電体514及び該負極集電体514の表面に被覆された負極材料層524を含む。前記リチウムイオン電池500において、前記正極集電体512、前記正極材料層522、前記負極504及び前記負極材料層524の少なくとも一つは、前記実施例1の改質剤の成分又は前記改質剤が100℃以上で加熱されて得られる生成物を含む。
【0091】
前記改質剤は、リン酸基を含むリン源、三価のアルミニウム源及び金属酸化物を液相溶剤で混合することによって形成される透明な溶液である。前記改質剤が100℃以上で加熱されて得られた生成物は、(AlPO)及び(Al(PO)の少なくとも一種である。前記Mは、Cr、Zn、Cu、Mg、Zr、Mo、V、Nb及びTaの一種又は数種である。その原子価がkである。
【0092】
0<x<1 (式3)
【0093】
0<y<1 (式4)
【0094】
3x+ky=3 (式5)
【0095】
前記x、yは、それぞれ前記式3〜式5を満足する。本実施例において、前記生成物は、(AlCrPO)及び(AlCr(PO)の少なくとも一種である。
【0096】
前記正極502は、前記正極材料を有する前記(2)のリチウムイオン電池用電極200であり、前記負極504は、前記負極材料を有する前記(2)のリチウムイオン電池用電極200であることができる。前記正極集電体512及び/または負極集電体514は、前記(1)のリチウムイオン電池用集電体100または前記リチウムイオン電池用集電体202である。
【0097】
更に、前記正極材料層522は、均一に混合した正極活物質と、導電剤と、接着剤と、を含む。前記負極材料層524は、均一に混合した負極活物質と、導電剤と、接着剤と、を含む。前記正極材料層522における正極活物質は、前記(3)の正極用活物質粒子を有するリチウムイオン電池電極用複合材料300を含み、前記負極材料層524における負極活物質は、前記(3)の負極用活物質粒子を有するリチウムイオン電池電極用複合材料300を含む。
【0098】
前記セパレータ506は、前記(4)の多孔膜402又は前記リチウムイオン電池用セパレータ400である。
【0099】
前記非水電解液は、電解質塩と、有機溶媒と、を含む。前記電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)又はリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiBOB)である。前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、および炭酸ジメチル(DMC)の少なくともいずれか一種である。前記外部の密封構造体508は、ハード電池ケース又はソフト密封袋である。更に、前記リチウムイオン電池500は、接続素子(図示せず)を含む。前記接続素子によって、前記リチウムイオン電池の正極集電体512及び/または負極集電体514を外部電源装置(図示せず)などに接続するように設置されている。
【0100】
本発明のリチウムイオン電池の改質剤の製造方法で合成された改質剤は、容易にリチウムイオン電池用集電体、リチウムイオン電池用電極、リチウムイオン電池電極用複合材料及びリチウムイオン電池用セパレータの表面に被覆されて、均一に薄い保護フィルムまたは改質剤層を形成する。前記保護フィルムは、電解液の腐食性に対して保護効果を有するので、前記各々の製品を保護することができる。更に、前記改質剤層は、前記リチウムイオン電池用セパレータに良好な熱収縮性を与える。従って、前記各々の製品を利用したリチウムイオン電池の安全性及び熱安定性が高くなる。
【符号の説明】
【0101】
100、202 リチウムイオン電池用集電体
102 金属片
106、206、306 保護フィルム
200 リチウムイオン電池用電極
204 電極材料層
300 電極用複合材料
302 電極用活物質粒子
400、506 リチウムイオン電池用セパレータ
402 多孔膜
404 改質剤層
500 リチウムイオン電池
502 正極
504 負極
508 外部の密封構造体
512 正極集電体
514 負極集電体
522 正極材料層
524 負極材料層
図1
図2
図5
図6
図7
図8
図9
図3
図4