(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749350
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/34 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-540716(P2013-540716)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(86)【国際出願番号】JP2012076165
(87)【国際公開番号】WO2013061774
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-236315(P2011-236315)
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田近 善志雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
(72)【発明者】
【氏名】荒木 慎吾
【審査官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−255168(JP,A)
【文献】
特開平11−037057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にブレーキ液の流路を形成する液圧ユニットと、前記液圧ユニットに接続されるマスタシリンダと、前記液圧ユニットに接続されるホイルシリンダと、前記ホイルシリンダから流出するブレーキ液を貯留するリザーバと、前記リザーバに貯留したブレーキ液を前記マスタシリンダに還流させるピストンポンプと、前記ピストンポンプを駆動するモータとを有するブレーキ液圧制御装置において、
前記ピストンポンプは、前記モータの回転を偏心動に変えるピストン駆動部材と、前記ピストン駆動部材の前記偏心動に連動して往復動するピストンと、前記ピストンを収容するピストン収容部材と、前記ピストン収容部材に形成されて前記ピストン及びブレーキ液を収容するピストン収容室と、前記リザーバからブレーキ液を吸入して前記ピストン収容室に導く吸入弁と、前記ピストン収容室からブレーキ液を吐出する吐出弁とを有しており、
前記吐出弁は、前記ピストンが往復動する第1の方向に沿って配置され、
前記吸入弁は、前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に沿って配置され、かつ前記リザーバと前記ピストンとの間に配置され、
前記ピストン収容部材は、前記吸入弁から流入するブレーキ液を前記ピストン収容室に受け入れる受入孔を有しており、
前記受入孔は、前記ピストンの前記往復動に伴って、前記ピストン収容室と前記吸入弁との間のブレーキ液の流れを制限することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記吸入弁と前記吐出弁と前記ピストン収容部材とにより、前記ピストンポンプにおけるブレーキ液の流入経路が略L字に形成されることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記吐出弁は、前記ピストンが往復動する第1の方向と略平行に配置され、前記吸入弁は、前記第2の方向と略平行に配置されることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記ピストン収容部材は、前記ピストンを収容するピストン収容室と、前記吐出弁及び前記ピストン収容室を連通するテーパ孔とを有し、前記吐出弁は、前記テーパ孔に配置される弁体を有することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記受入孔は、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側に最も近づいた位置で、前記ピストン収容室と前記吸入弁とを連通すると共に、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側から最も離れた位置で、前記空間と前記吸入弁と間のブレーキ液の流れを制限することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記受入孔の中心は、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側に最も変位した位置において、前記ピストン収容部材側の前記ピストンの端部の位置とほぼ整列するように配置されることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記ピストン収容部材の硬度は、前記液圧ユニットの硬度より高いことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記ピストンの一部は、前記液圧ユニットを形成するハウジングによって摺動可能に保持されていることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪車用のブレーキ液圧制御装置に関し、より詳細には、ブレーキ液圧制御回路内でのブレーキ液を還流する液圧回路部品の配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車用のブレーキ液圧制御装置は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配設され、マスタシリンダからホイールシリンダへ供給されるブレーキ液の圧力を制御し、ホイールがロックすると車両のアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)で制動を行う。さらに、ブレーキ液圧制御装置は、マスタシリンダとホイールシリンダとを連結する配管と、配管内を流れるブレーキ液の流れを切替える複数の電磁切替弁と、この電磁切替弁を制御してブレーキ液の圧力を制御する電子制御ユニットと、ブレーキ液をホイールシリンダからマスタシリンダへ戻すためのポンプと、を備える。
【0003】
特開2005−255168号公報には、このようなブレーキ液圧制御装置において、モータの回転軸を含む平面(D-D)を挟んで、一方に、ABS制御用の複数の電磁弁を配設し、他方にアウト側ゲート弁及びリザーバを配設すると共に、イン側ゲート弁をポンプのポンプ室に近接して配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−255168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2005−255168号公報では、自動車用のブレーキ制御ユニットの小型化を目的としている([0007])ものの、さらなる小型化が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、液圧回路部品の配置を最適化して、より小型のブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のブレーキ液圧制御装置は、内部にブレーキ液の流路を形成する液圧ユニットと、前記液圧ユニットに接続されるマスタシリンダと、前記液圧ユニットに接続されるホイルシリンダと、前記ホイルシリンダから流出するブレーキ液を貯留するリザーバと、前記リザーバに貯留したブレーキ液を前記マスタシリンダに還流させるピストンポンプと、前記ピストンポンプを駆動するモータとを有するブレーキ液圧制御装置において、前記ピストンポンプは、前記モータの回転を偏心動に変えるピストン駆動部材と、前記ピストン駆動部材の前記偏心動に連動して往復動するピストンと、前記ピストンを収容するピストン収容部材と、前記ピストン収容部材に形成されて前記ピストン及びブレーキ液を収容するピストン収容室と、前記リザーバからブレーキ液を吸入して前記ピストン収容室に導く吸入弁と、前記ピストン収容室からブレーキ液を吐出する吐出弁とを有しており、前記吐出弁は、前記ピストンが往復動する第1の方向に沿って配置され、前記吸入弁は、前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に沿って配置され、かつ前記リザーバと前記ピストンとの間に配置される。
【0008】
前記吸入弁と前記吐出弁と前記ピストン収容部材とにより、前記ピストンポンプにおけるブレーキ液の流入経路が略L字に形成される。前記吐出弁は、前記ピストンが往復動する第1の方向と略平行に配置され、前記吸入弁は、前記第2の方向と略平行に配置される。前記ピストン収容部材は、前記ピストンを収容するピストン収容室と、前記吐出弁及び前記ピストン収容室を連通するテーパ孔とを有し、前記吐出弁は、前記テーパ孔に配置される弁体を有する。前記ピストン収容部材は、前記吸入弁から流入するブレーキ液を前記ピストン収容室に受け入れる受入孔を有しており、前記受入孔は、前記ピストンの前記往復動に伴って、前記空間と前記吸入弁と間のブレーキ液の流れを制限する。前記受入孔は、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側に最も近づいた位置で、前記空間と前記吸入弁とを連通すると共に、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側から最も離れた位置で、前記空間と前記吸入弁と間のブレーキ液の流れを制限する。前記受入孔の中心は、前記ピストンが前記ピストン駆動部材側に最も変位した位置において、前記ピストン収容部材側の前記ピストンの端部の位置とほぼ整列するように配置される。前記ピストン収容部材の硬度は、前記液圧ユニットの硬度より高い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブレーキ液圧制御装置によれば、リザーバとピストンとの間に吸入弁を配置することにより、ピストンが往復動する第1の方向の幅を狭くできると共に、装置の小型化も可能となる。さらに、リザーバとピストンとの間のブレーキ液の流路を短くできるため、この流路におけるブレーキ液の流動損失も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のブレーキ液圧制御装置に用いられる液圧回路図である。
【
図2】本発明のブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。
【
図3】本発明のブレーキ液圧制御装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のブレーキ液圧制御装置に係る実施形態を、以下、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。なお、各図において同一部材には同一符号を付す。
【0012】
本発明の前提となるブレーキ液圧制御装置10の構成を
図1及び
図2を用いて説明する。
図1に示すブレーキ用液圧回路100は、例えば、自動二輪車に搭載されるものであり、周知のABS制御用の液圧回路に適用される。
【0013】
ブレーキ用液圧回路100は、前輪に対する制動力を発生させるための前輪用マスタシリンダ(Front M/C)101、前輪用リザーバタンク102及び前輪用ホイールシリンダ(Front W/C)103と、後輪に対する制動力を発生させるための後輪用マスタシリンダ(Rear M/C)104、後輪用リザーバタンク105及び後輪用ホイールシリンダ(Rear W/C)106と、ブレーキ液圧制御装置10と、を備えている。
【0014】
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用及び後輪用マスタシリンダ101、104と、前輪用及び後輪用ホイールシリンダ103、106との間に配設される。また、ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、及び/又は、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、ABS制御を行う。
【0015】
前輪用マスタシリンダ101には、第1配管107を介して前輪用リザーバタンク102が接続される。また、前輪用マスタシリンダ101には、第2配管108、ブレーキ液圧制御装置10及び第3配管109を介して、前輪用ホイールシリンダ103が接続される。
【0016】
前輪用マスタシリンダ101は、例えば、車両のハンドルレバー110により駆動されると、ブレーキ液圧制御装置10を介して、前輪用ホイールシリンダ103に対するブレーキ液圧が発生させる。また、前輪用ホイールシリンダ103は、供給されるブレーキ液圧に応じて前輪用ディスクブレーキ装置111を駆動し、前輪を制動する。
【0017】
後輪用マスタシリンダ104には、第4配管112を介して後輪用リザーバタンク105が接続される。また、後輪用マスタシリンダ104には、第5配管113、ブレーキ液制御装置10及び第6配管114を介して、後輪用ホイールシリンダ106が接続される。
【0018】
後輪用マスタシリンダ104は、例えば、車両のフットペダル115により駆動されると、ブレーキ液圧制御装置10を介して、後輪用ホイールシリンダ106に対するブレーキ液圧が発生させる。また、後輪用ホイールシリンダ106は、供給されるブレーキ液圧に応じて後輪用ディスクブレーキ装置116を駆動し、後輪を制動する。
【0019】
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用EV弁(込め弁)1、前輪用AV弁(弛め弁)2、後輪用EV弁3、後輪用AV弁4、前輪用ポンプエレメント5、後輪用ポンプエレメント6、モータ7および電子制御ユニット(ECU)8を有している。
【0020】
前輪用EVおよびAV弁1、2と、後輪用EVおよびAV弁3、4とは、例えば、周知の2位置型電磁弁である。また、前輪用ポンプエレメント5及び後輪用ポンプエレメント6は、モータ7により駆動される構成となっている。各弁1、2、3、4及びモータ7は、電子制御ユニット8に接続されており、この電子制御ユニット8からの制御信号に基づいて、駆動制御される。
【0021】
ブレーキ液圧制御装置10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液が流動するための前輪用流路11と、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液が流動するための後輪用流路21と、を含む。
【0022】
前輪用流路11において、第1流路11aの一端側が、第2配管108に接続されており、第1流路11aの他端側が前輪用EV弁1に接続される。第2流路11bの一端側が前輪用EV弁1に接続されており、第2流路11bの他端側が第3配管109に接続される。第1流路11aには第3流路11cの一端側が接続されており、第3流路11cの他端側が前輪用ポンプエレメント5の吐出側に接続される。第4流路11dの一端側が前輪用ポンプエレメント5の吸引側に接続されており、第4流路11dの他端側が前輪用AV弁2に接続される。前輪用ポンプエレメント5は、第4流路11d側から第3流路11c側へ、すなわち、前輪用ホイールシリンダ103側から前輪用マスタシリンダ101側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路11dには、ブレーキ液の圧力を減圧するリザーバ9が接続される。第2流路11bには第5流路11eの一端側が接続されており、第5流路11eの他端が前輪用AV弁2に接続される。第2流路11bには、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が設けられている。このように、圧力センサ13を設けることにより、より正確なブレーキ液の圧力制御を行うことが可能となる。
【0023】
一方、後輪用流路21において、上述した前輪用流路11と略同様に、第1流路21aの一端側が第2配管113に接続されており、第1流路21aの他端側が後輪用EV弁3に接続される。第2流路21bの一端側が後輪用EV弁3に接続されており、第2流路21bの他端側が第3配管114に接続される。第1流路21aには、第3流路21cの一端が接続されており、第3流路21cの他端が後輪用ポンプエレメント6の吐出側に接続される。第4流路21dの一端側が後輪用ポンプエレメント6の吸引側に接続されており、第4流路21dの他端側が後輪用AV弁4に接続される。後輪用ポンプエレメント6は、第4流路21d側から第3流路21c側へ、すなわち、後輪用ホイールシリンダ106側から後輪用マスタシリンダ104側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路21dには、リザーバ12が接続される。第2流路21bには、第5流路21eの一端が接続されており、第5流路21eの他端が後輪用AV弁4に接続される。
【0024】
図2は、ブレーキ液圧制御装置10の構成を示す分解斜視図である。ブレーキ液圧制御装置10は、ハウジング30と、前輪用EV弁1と、前輪用AV弁2と、後輪用EV弁3と、後輪用AV弁4と、ブレーキ液圧を検出する圧力センサ13と、ブレーキ液を加圧する一対のポンプエレメント5、6と、弁1〜4等を駆動制御するECU8と、ポンプエレメント5、6のピストンを駆動するモータ7と、ブレーキ液を受け入れるリザーバ9、12と、を備えている。
【0025】
ハウジング30は、例えば、アルミニウム等の金属からなり、略直方体形状のブロックに形成される。また、ハウジング30の内部には、上述の前輪用流路11と後輪用流路21とからなる流路が形成される。また、ハウジング30の複数の側面には、前輪用及び後輪用流路11、21に連通する複数の取付孔が形成される。電子制御ユニット8は、ハウジング30の第1側面30aを覆うように取付けられる。一対のポンプエレメント5、6は、ハウジング30の第2及び第3側面30b、30cに形成された取付孔内に夫々挿入されており、ポンプエレメント5、6に含まれるピストンは、ハウジング30の中心方向へ移動可能である。一対のリザーバ9、12は、ハウジング30の下側面に形成された取付孔に夫々取付けられる。
【0026】
図3に本発明のブレーキ液圧制御装置10の要部断面図を示す。
図3において、前輪用の液圧回路に関する断面構造のみを示している。
図3で省略された後輪側の液圧回路に関する断面構造は、
図3に示す断面の右辺を中心線としてほぼ線対称の構造である。
【0027】
図3において、ハウジング30には、モータ7の回転を偏心動に変えるピストン駆動部材(偏心カム)51と、ピストン駆動部材51に接触しピストン駆動部材51の動きに連動して往復動するピストン52と、ピストン52の左端側を収容するピストン収容部材53と、リザーバ9からブレーキ液を吸入する吸入弁60と、ポンプクロージングカバー73と、を含む。なお、吐出弁70は、ピストン収容部材53と、球状の弁体71と、弁体71を保持するポンプクロージングカバー73と、弁体71をピストン収容部材53側に付勢するバネ74と、弁体71とピストン収容部材53との間に形成される空間72と、から構成される。
【0028】
ピストン52及びピストン収容部材53に沿う長手方向軸線Aは、吸入弁60及び流路11dに沿う長手方向軸線Bに対して略垂直に配置される。また、吸入弁60は、流路11dを介してリザーバ9からピストン収容部材53にブレーキ液を流通可能に配置される。吐出弁70も、ピストン52の長手方向軸線Aに沿って平行に配置される。吸入弁60と吐出弁70とピストン収容部材53とにより、リザーバ9からポンプエレメント5までのブレーキ液の流通経路は、略L字に形成される。
【0029】
ピストン収容部材53は、ピストン52を収容するピストン収容室54と、空間72及びピストン収容室54を連通するテーパ孔55を有する。弁体71は、空間72側でテーパ孔55を閉鎖するようにバネ74で付勢される。なお、空間72は、流路11cに接続される。
【0030】
ピストン収容部材53は、吸入弁60から流路11dを介して流入するブレーキ液を受け入れる受入孔56を有する。受入孔56は、ピストン収容部材53の外側空間とピストン収容室54とを接続する。さらに、ピストン収容部材53は、ピストン収容室54内に配置されて、ピストン52をピストン駆動部材51に向かって付勢するピストンバネ57と、ピストン52とハウジング30との間をシールする環状のシール部材58とを有する。
【0031】
受入孔56の中心を、ピストン52がピストン駆動部材51側に最も変位した位置(
図3の位置)において、ピストン収容部材53側のピストン52の端部(左端面)の位置とほぼ整列するように配置してもいい。さらに、受入孔56は、ピストン52がピストン駆動部材51側に最も近づいた位置(
図3の位置)で、ピストン収容室54と吸入弁60とを連通する。
図3の位置からピストン52がピストン駆動部材51側から最も離れた位置に移動すると、受入孔56の大部分は閉鎖されて(完全には遮断されない)、吸入弁60からピストン収容室54へのブレーキ液の流れにくくなり、吐出弁70から吸入弁60への逆流が防止される。
【0032】
金属製のピストン収容部材53は、焼き入れにより硬化されており、ピストン収容部材53の硬度は、ハウジング11の硬度よりも高くされる。従来のブレーキ液圧制御装置ではポンプエレメント内にフィルター(不図示)を設けていたが、本実施形態では、ピストン収容部材53の硬度を高めることにより、加工屑等による流路の破損のおそれが低下したため、フィルターを廃止することが可能となる。これに伴い、長手方向軸線A側の部品幅を小さくできてハウジングの横幅を小型化できると共に、部品点数削減によるコストの削減も可能となる。また、ブレーキ液圧制御装置の組立時に、加工屑等のコンタミネーションによるテーパ孔55周囲のシート部分の破損も生じない。
【0033】
また、本実施形態では、
図3に示すように、吸入弁60をリザーバ9の真上に位置することにより、リザーバ9からピストン側へのブレーキ液の排出がスムーズとなる。吸入弁60は、ハウジング11内でリザーバ9とピストンとの間に配置されるため、吸入弁60からのブレーキ液の液漏れをリザーバ9により防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
51 ピストン駆動部材
52 ピストン
53 ピストン収容部材
54 ピストン収容室
55 テーパ孔
56 受入孔
57 ピストンバネ
58 シール部材
60 吸入弁
70 吐出弁
71 弁体
72 空間
73 ポンプクロージングカバー
A 長手方向軸線(第1の方向)
B 長手方向軸線(第2の方向)