【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、油圧制御装置は、遠心油ラインに、ひいては遠心油室に、作動流体を供給するための第2の供給ラインを有する。第2の供給ラインは、遠心油弁(Fliehoelventils)を用いて閉じられることができ、また、開放されることができる。それにより、シフトエレメントの正確な制御のために遠心油圧均一化が機能することが不可欠である状況の場合、第2の遠心油ラインの開口により、遠心油室に作動流体を迅速に供給し、遠心油室を迅速に十分に満たすことができる。
【0006】
遠心油ラインは、特にいくつかのシフトエレメントのいくつかの遠心油室と、特にオートマティックトランスミッションのディスククラッチと接続される。以降、遠心油カバー(Fliehoelhauben)という言葉を用いる場合、特に、オートマティックトランスミッションのいくつかの、または全ての遠心油カバーを意味しうる。
【0007】
適切な措置を介して、ギヤシフト圧力室を常に作動流体で満たすことが保障される場合、本発明は特に有利に使用可能である。この場合、シフトエレメントが意図せずに閉じるリスクが特に大きい。1つの可能な措置は、例えば、ギヤシフト圧力室の流出口中へ弁を予め備えることであり、この弁は、固定可能な圧力より下で、例えば0.2から0.4バールで、タンクへの接続を閉鎖する。それにより、ギヤシフト圧力室中の圧力は、通常の場合において、固定可能な圧力より下には下降しない。他の可能性は、シフトエレメントを開くべき場合に、ギヤシフト圧力室の最小圧力を制御することである。上記固定可能な圧力および最小圧力が採用されると、ギヤシフト圧力室におけるこの圧力の調整の際に、シフトエレメントは、より確実に完全に開かれる。
【0008】
オートマティックトランスミッションを、例えば、いくつかの連結された遊星歯車を備えるトランスミッションとして実施する。これは特に出願人の独国特許第 10 2008 055 626 A1号に相当するオートマティックトランスミッションとして実施する。しかし、オートマティックトランスミッションを、例えば歯車式オートマティックトランスミッション、デュアルクラッチトランスミッションまたは無段トランスミッションとしても実施できる。
【0009】
本発明の一実施形態では、遠心油弁を制御可能な弁として実施し、この弁は、基本位置において、第2の供給ラインを閉鎖する。遠心油弁を特にスライドバルブとして実施し、このスライダに、一方で制御圧力が、他方でばね力が作用する。制御圧力が遠心油弁へ作用しない基本位置において、スライダは、スプリングによって、スライダが第2の供給ラインを閉鎖するポジションへと押される。これによって、遠心油弁の簡単な制御が可能となる。制御圧力は、例えばパイロット弁によって調節される。パイロット弁を、例えばソレノイド弁、特にいわゆる直接制御弁として実施する。パイロット弁は、供給圧力と共に、例えば作動圧力または弁供給圧力の形態で供給され、そこから、電子トランスミッション制御装置による制御に応じて、所望のパイロット圧力を導出する。
【0010】
本発明の一実施形態では、第1および/または第2の供給ラインにおいて、作動流体の流量の調節のための油圧エレメントを配置する。上記油圧エレメントを、特に絞り弁(Blenden)および/またはスロットルバルブ(Drosseln)として実施する。上記油圧エレメントを用いて、有利に、第1および第2供給ラインにおける作動流体の流量に影響を及ぼし、調節することができる。それによって、大量ではない作動流体が第2の供給ラインを通して遠心油室に流すことを保障でき、第1供給ライン、および第1供給ラインから供給されるそれに付随する部品には供給が不足する。
【0011】
本発明の一実施形態では、第1供給ラインは、2つの接続もしくは区間を介して遠心油弁に接続される。遠心油弁を用いて、接続のうちの1つもしくは1つの区間を遮断でき、その結果、この接続または区間を通じて、作動流体を第1供給ラインへ流すことはできない。遠心油弁が第2の供給ラインを開放する場合、特に、一方の接続もしくは区間を遮断する。これにより、第1供給ラインにおける流量および圧力を、遠心油弁を介して変えることができる。
【0012】
このことは、次の場合、遠心油弁の制御での遠心油弁のための制御圧力の多目的使用により、遠心油弁の上流の圧力を同時に高め、第1供給ライン中に部品、例えば、流体トルクコンバータを配置する場合に、特に重要であり、この際、この部品の供給圧力は圧力限界を越えてはならない。この場合、遠心油弁上の第1供給ラインの遮断されえない接続において、絞り弁またはスロットルバルブを配置することができ、この絞り弁を介して、遠心油弁の上流の圧力が上昇する際に、第1供給ラインの圧力は制限される。
【0013】
第1供給ラインにおいて、流体トルクコンバータおよび/またはトランスミッションオイル冷却装置および/または分岐点を潤滑油ラインに配置する場合、本発明は特に有利に使用可能である。潤滑油ラインを通して、例えばディスククラッチのディスク、ギヤホイールまたはベアリングのようなオートマティックトランスミッションの部品は、潤滑および/または冷却される。
【0014】
本発明の一実施形態では、油圧制御装置は、パイロット弁および第1および第3の弁ユニットを有する。パイロット弁を用いて調節されたパイロット圧力を、第1および第3の弁ユニットへ、ならびに第2の弁ユニットとしての遠心油弁上へ、制御圧力として伝えることができる。反対圧力ラインを用いて、制御圧力に対して作用する反対圧力を第3の弁ユニット上へ加えることができ、それにより第3の弁ユニットの作動を阻止することができる。
【0015】
弁ユニットは、特にスライドバルブとして、例えばシフトスライダ(Schaltscieber)またはレギュレーティングスライダとして実施する。
【0016】
第3の弁ユニットの作動とは、特に第3の弁ユニットのシフト位置の変化、または第3の弁ユニットによって調節された圧力もしくは流量の変化と理解される。
【0017】
第3の弁ユニットを特にシフトスライダとして実施し、このスライダ上では、片側でパイロット圧力が制御圧力として、また、スライダの反対側で反対圧力が作用しうる。さらに、第3の弁ユニットは、パイロット圧力とは逆に作用する力をスライダ上へ加圧しうるスプリングを特に有する。パイロット圧力および反対圧力ならびに場合によってスプリングの圧力範囲の、スライダにおける有効面積を好適に設計することによって、第3の弁ユニットへ反対圧力が加わることにより、弁ユニットの作動を阻止することを保障できる。この場合、弁ユニットの作動とは、シフトバルブのシフト位置の変化と理解される。
【0018】
本発明の一実施形態では、第1の弁ユニットの作動のために、第2および第3の弁ユニットとしての遠心油弁に、それぞれ第1、第2、第3の圧力範囲を予め備える。シフトバルブにおいて、シフトバルブに割り当てられた圧力範囲内の制御圧力の変化によって、シフトバルブの状態または状況の変化が生じると理解される。その際、一方の限界から他方の限界までの圧力範囲の制御圧力の変化によって、シフトスライダのシフト位置の変化が達成される。上限を超える制御圧力の増大または、それぞれ割り当てられた圧力範囲の下限を下回る減少は、シフトスライダのシフト位置への更なる影響はない。スライドバルブとして実行される弁ユニットでは、圧力範囲内の変化の際、調整された圧力または流量が変化する。しかし、制御圧力が割り当てられた圧力範囲外にある場合、この圧力が調整された圧力または流量へなお影響を及ぼすこともありうる。圧力範囲はオーバーラップしてよいが、圧力範囲の何にも属さない範囲が圧力範囲の間にそれぞれ存在していてもよい。第1、2および3の圧力範囲を、その際特に圧力増大の方向に連続して配置する。例えば、第1の弁ユニットに約0〜3バールの圧力範囲を、遠心油弁に4〜5バールの圧力範囲を、第3の弁ユニットに6〜8バールの圧力範囲を割り当てる。
【0019】
第3の弁ユニットにおける反対圧力により、特に遠心油弁を意図的に作動する際に、第3の弁ユニットの作動を確実に避けることができる。このことは、圧力範囲の分割によって、本来は全く生じない。もっとも、油圧部品の部品耐性、摩擦または老朽化が原因で、圧力範囲のズレおよび/またはオーバーラップが生じ、その結果、第3の弁ユニットの意図的ではない作動が生じる場合はある。第3の弁ユニットにおいて反対圧力がかかることにより、油圧制御装置の信頼性ある作動を可能にする。
【0020】
第3の圧力範囲を第1および第2の圧力範囲の間に配置することも可能である。例えば、第1弁ユニットに約0〜3バールの圧力範囲、第3の弁ユニットに4〜5バールの圧力範囲、第2の遠心油弁に6〜8バールの圧力範囲を割り当てることができる。
【0021】
反対圧力によって第3の弁ユニットの作動を妨げることにより、制御が第3の弁ユニットへの影響を及ぼすことなく、第1または第2の弁ユニットを制御できる。記載した実施例では、第3の弁ユニットを作動することなく、遠心油弁を制御できる。その際、遠心油弁および第3の弁ユニットを、互いに独立して、ただ一つのパイロット弁によって制御できる。
【0022】
本発明の一実施形態では、第3の弁ユニット上で制御圧力に対して作用しうる反対圧力が、主に他の機能を果たす圧力から導出される。この表現:「主に他の機能を果たす」とは、特に、反対圧力を導出するためだけの目的のために調節されるのではないことと理解される。上記圧力を、例えば、さらなる弁ユニットを制御するように、ディスククラッチまたはディスクブレーキの形態でオートマティックトランスミッションのシフトエレメントを作動するように調節する。第3の弁ユニットの意図しない作動を妨げるために、遠心油弁の制御が有効または不可欠である状況で反対圧力が十分に高いように、反対圧力が導出される圧力を、特に選択する。
【0023】
本発明の実施形態では、油圧制御装置は切替弁(Umschaltventil)を有し、これを用いて、反対圧力を第1または第2の圧力から導出することができる。切替弁を、特に、双方の上記圧力のうち高い方の圧力から反対圧力を導出する自動式切替弁として実施する。切替弁を、その際特にボール切替弁として実施する。この場合、第3の弁ユニットの作動を、1つの圧力だけでなく、2つの圧力に依存して妨げることができる。第3の弁ユニット上への影響を伴わない第2の弁ユニットの制御は、非常に多くの状況において可能である。
【0024】
本発明の一実施形態では、反対圧力を、オートマティックトランスミッションのシフトエレメントの作動圧力から導出する。オートマティックトランスミッションの特定のギヤに入れ、特定のシフトエレメントを作動する場合、第3の弁ユニットへの影響なしに遠心油弁の制御が可能となる。1つまたはそれ以上の遠心油カバーを迅速に満たすことは、たいていの場合、オートマティックトランスミッション内の特定のシフトに不可欠である。このシフトは、オートマティックトランスミッションの構造に依存して影響を受ける。例えばディスククラッチの形態のシフトエレメントは加速するが、閉じられた状態でシフト動作され得る。遠心油カバーを十分に満たさない場合、上記のようにシフトエレメントの意図しない閉鎖が生じる。反対圧力をシフトエレメントの作動圧力から導出する場合、第3の弁ユニットの作動を伴わない遠心油弁の制御が可能であるギヤを固定することができる。さらに、2つの異なるシフトエレメントの2つの作動圧力間で切替えが可能である上記の切替弁を使用する場合、多数のギヤにおいて十分に高い作動圧力を提供することができる。
【0025】
潤滑圧力の調節のための第1の弁ユニットを予め備え、第3の弁ユニットをパーキングロックシステムに組み込む場合、本発明は特に有利に使用可能である。
【0026】
制御圧上昇が潤滑圧力上昇を引き起こすように、第1弁ユニットを特に実施する。弁ユニットへ割り当てられた圧力範囲の上記例において、これは、遠心油弁のパーキングロックシステムの制御の際に高い潤滑圧力が調節されることを意味する。
【0027】
オートマティックトランスミッションにおいてなんのギヤにも入れられていない場合にのみ、パーキングロックシステムのパーキングロックは制御され、特に閉じられるべきである。従って、いくつかのギヤで反対圧力のためにパーキングロックの制御が不可能である場合、このことは、パーキングロックシステムに関するいかなる機能的制限も示しません。一方で、オートマティックトランスミッションにおいて特定のギヤに入れる場合にのみ、遠心油カバーを満たすことは不可欠である。オートマティックトランスミッションにおいてギヤが入っていない場合にのみ、パーキングロックを制御する。この場合、全ての必要な状況において、遠心油弁を制御することができる。共通の制御ソレノイドバルブを介したパーキングロックシステムおよび遠心油弁の制御は、双方のシステムの機能を制限しない。
【0028】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、以下の詳細な実施例の記載ならびに図面を基に明らかにする。なお、同一または機能的に同等の要素については同一の符号を付している。