特許第5749415号(P5749415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5749415
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】切削剤回収装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   B23Q11/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-77350(P2015-77350)
(22)【出願日】2015年4月6日
【審査請求日】2015年4月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中下 克博
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−033870(JP,A)
【文献】 特開2010−173041(JP,A)
【文献】 特開2012−183613(JP,A)
【文献】 実開昭58−006707(JP,U)
【文献】 実開平07−020234(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第2335867(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B65G 47/52
B65G 21/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップコンベア及び切粉回収用の台車を有する切粉回収装置に設けられ、切削に用いられた切削剤を回収するための装置であって、
前記チップコンベアの排出端部の下方に配置されたフレームと、
前記フレームに支持されるとともに、前記台車の移動に連動して、前記台車が前記チップコンベアの排出端部下方の回収位置に位置しているときには退避姿勢をとり、前記台車が前記回収位置から移動させられたときには受け姿勢を取る回収容器と、
を備え、
前記回収容器が退避姿勢のときには、前記チップコンベアから排出される切粉及び切削剤は前記台車に回収され、
前記回収容器が受け姿勢のときには、前記チップコンベアから落下する切削剤は前記回収容器に回収される、
切削剤回収装置。
【請求項2】
前記回収容器は、前記台車の移動方向に沿った方向の一端が前記フレームに回動自在に支持されており、
前記回収容器は、前記一端を回動支点として他端が下方を向くようにして前記退避姿勢となり、
前記退避姿勢の回収容器の他端は、前記回収位置の台車の上方又は内部に位置している、
請求項1に記載の切削剤回収装置。
【請求項3】
前記回収容器には排出口が形成されており、
切削剤をためるタンクと、
前記回収容器の排出口から排出された切削剤を前記タンクにガイドするガイド部材と、
をさらに備えている、
請求項1又は2に記載の切削剤回収装置。
【請求項4】
前記回収容器に連結される連結部を一端に有するとともに、前記台車に当接可能な当接部を他端に有するリンク機構をさらに備え、
前記リンク機構は、前記当接部が前記台車に当接していない状態では前記回収容器を前記受け姿勢に維持し、前記当接部が前記台車に当接して前記台車が前記チップコンベアの排出端部の下方に押し込まれるときには、前記台車の移動に連動して前記回収容器を前記受け姿勢から前記退避姿勢に移動させる、
請求項1から3のいずれかに記載の切削剤回収装置。
【請求項5】
前記リンク機構は複数のリンク部材を有し、
前記複数のリンク部材の少なくとも1つは、前記回収容器の退避姿勢及び受け姿勢における床面に対する角度を調整可能にするために長さが可変である、
請求項4に記載の切削剤回収装置。
【請求項6】
前記チップコンベアは、幅方向の少なくとも一方側に搬送面から突出する側壁を有し、
前記チップコンベアの排出端部に付着した切削剤を、前記チップコンベアの側壁に向けて吹き飛ばすためのエアブローと、
前記チップコンベアの側壁に吹き飛ばされた切削剤を回収する回収部材と、
をさらに備えた請求項1から5のいずれかに記載の切削剤回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削剤回収装置、特に、チップコンベア及び切粉回収用の台車を有する切粉回収装置に設けられ、切削に用いられた切削剤を回収するための切削剤回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の切削加工機で加工を行った際に、加工屑としての切粉が発生する。この切粉を回収するために、特許文献1に示されるような切粉回収装置が設けられている。また、切削加工を行う場合、潤滑及び冷却のために切削油又は切削水(以下、これらを含んで「切削剤」と記す)が使用される。特許文献1の装置は、この切削剤をも回収するように構成されている。
【0003】
具体的には、特許文献1に示された切粉回収装置は、チップコンベアの搬出口から落下する切粉を受ける羽根車が設けられている。羽根車は、切削剤の付着した切粉を羽根車で受けて一方向に回転する。この回転によって、切粉と切削剤とを分離し、切粉は台車に落下され、切削剤は戻しシュートに案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−173041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、台車に落下した切粉が一定の量に達すると、台車は羽根車の下方から引き出される。そして、台車は廃棄場所に移動され、台車にたまった切粉が廃棄される。そして、空の台車が羽根車の下方に置かれる。
【0006】
しかし、台車をチップコンベアの下方から別の場所に移動させている際に、羽根車やチップコンベアから切削剤が落下し、床面を汚すことになる。
【0007】
本発明の課題は、チップコンベアから落下する切削剤を効果的に捕捉し、工場内の床面が汚れるのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一側面に係る切削剤回収装置は、チップコンベア及び切粉回収用の台車を有する切粉回収装置に設けられ、切削に用いられた切削剤を回収するための装置である。この装置は、フレームと、回収容器と、を備えている。フレームは、チップコンベアの排出端部の下方に配置されている。回収容器は、フレームに支持されるとともに、台車の移動に連動して、台車がチップコンベアの排出端部下方の回収位置に位置しているときには退避姿勢をとり、台車が回収位置から移動させられたときには受け姿勢を取る。そして、回収容器が退避姿勢のときには、チップコンベアから排出される切粉及び切削剤は台車に回収される。また、回収容器が受け姿勢のときには、チップコンベアから落下する切削剤は回収容器に回収される。
【0009】
この装置では、台車がチップコンベアの排出端部下方の回収位置に配置されているときには、回収容器は退避姿勢になっている。したがって、チップコンベアで搬送されてきた切粉及び切削剤は、台車内に落下する。一定の量の切粉等が台車内にたまると、台車は別の切粉等の廃棄場所に移動させられる。このとき、すなわち、台車が回収位置から移動させられたときには、回収容器は、受け姿勢になり、チップコンベアから落下する切削剤を回収する。
【0010】
ここでは、チップコンベアの排出端部の下方に台車がない場合に、工場の床面に切粉や切削剤が落下するのを防止でき、床面が汚れるのを抑えることができる。
【0011】
(2)本発明の別の側面に係る切削剤回収装置では、回収容器は、台車の移動方向に沿った方向の一端がフレームに回動自在に支持されている。そして、回収容器は、一端を回動支点として他端が下方を向くようにして退避姿勢となり、退避姿勢の回収容器の他端は、回収位置の台車の上方又は内部に位置している。
【0012】
ここでは、回収容器が退避姿勢になったときには、回収容器の先端が下方を向く。したがって、回収容器に切粉や切削剤がたまっている場合は、たまった切粉等が下方に落下する。そこで、回収容器は、退避姿勢になったときの先端が、台車の上方又は内部に位置するように配置されている。したがって、退避姿勢になって回収容器が傾いた場合であっても、切粉等は台車の中に回収される。
【0013】
(3)本発明のさらに別の側面に係る切削剤回収装置では、回収容器には排出口が形成されている。そして、切削剤をためるタンクと、回収容器の排出口から排出された切削剤をタンクにガイドするガイド部材と、をさらに備えている。
【0014】
ここでは、回収容器に回収された切削剤は、排出口からガイド部材を介してタンクに回収される。したがって、回収容器に回収された切削剤が回収容器から溢れでて床面に落下するのを防止できる。
【0015】
(4)本発明のさらに別の側面に係る切削剤回収装置では、回収容器に連結される連結部を一端に有するとともに、台車に当接可能な当接部を他端に有するリンク機構をさらに備えている。リンク機構は、当接部が台車に当接していない状態では回収容器を受け姿勢に維持する。一方で、リンク機構は、当接部が台車に当接して台車がチップコンベアの排出端部の下方に押し込まれるときには、台車の移動に連動して回収容器を受け姿勢から退避姿勢に移動させる。
【0016】
なお、連結部は、回収容器そのものに直接連結されている構成、回収容器に固定された別の部材に連結されている構成を含む。
【0017】
ここでは、台車をチップコンベア下方の回収位置から引きぬいた場合には、回収容器は受け姿勢になる。一方で、台車を回収位置にセットすると、この台車の移動に連動して、回収容器が退避姿勢になる。
【0018】
このため、作業者は、台車を移動させるだけで、回収容器を受け姿勢と退避姿勢にセットすることができる。
【0019】
(5)本発明のさらに別の側面に係る切削剤回収装置では、リンク機構は複数のリンク部材を有している。そして、複数のリンク部材の少なくとも1つは、回収容器の退避姿勢及び受け姿勢における床面に対する角度を調整可能にするために長さが可変である。
【0020】
ここでは、リンク部材の長さを調節することによって、主に、受け姿勢における回収容器の角度を調整することができる。このため、切削剤の床面への落下をより抑えることができる。
【0021】
(6)本発明のさらに別の側面に係る切削剤回収装置では、チップコンベアは、幅方向の少なくとも一方側に搬送面から突出する側壁を有している。そして、本装置は、エアブローと、回収部材と、をさらに備えている。エアブローは、チップコンベアの排出端部に付着した切削剤を、チップコンベアの側壁に向けて吹き飛ばす。回収部材はチップコンベアの側壁に吹き飛ばされた切削剤を回収する。
【0022】
ここでは、チップコンベアに付着した切削剤は、エアブローによってチップコンベアの側壁に向けて吹き飛ばされ、側壁にたまることになる。そして、この側壁にたまった切削剤は、回収部材によって、例えばタンクに回収される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明では、チップコンベアから落下する切削剤を効果的に捕捉し、工場内の床面が汚れるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による切粉回収装置及び切削剤回収装置の概略構成図。
図2】切削剤回収装置の平面部分図。
図3】切削剤回収装置の外観図。
図4】チップコンベアの排出端部を示す側面図。
図5】リンク機構の一部を示す図。
図6A】切削剤回収装置の動作を説明するための図。
図6B】切削剤回収装置の動作を説明するための図。
図6C】切削剤回収装置の動作を説明するための図。
図6D】切削剤回収装置の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図3に、本発明の一実施形態による切削剤回収装置を示している。図1は切粉回収装置1及び切削剤回収装置2の概略正面図である。図2図1の一部平面図、図3は外観図である。なお、図3では一部を省略して示している。図1の左側には、旋盤等の切削加工機(図示せず)が設置されている。
【0026】
[切粉回収装置1]
切粉回収装置1は、図1に示すように、チップコンベア3と、台車4と、を有している。チップコンベア3は、切削加工機で生じた切粉を搬送する。台車4は、チップコンベア3の排出端部の下方の回収位置に配置され、チップコンベア3で搬送されてきた切粉を受ける。台車4に一定量の切粉がたまれば、他の廃棄場所に移動させられて、台車4内の切粉が廃棄される。そして、空の台車4は、チップコンベア3の下方の回収位置に戻される。
【0027】
[切削剤回収装置2]
切削剤回収装置2は、フレーム10と、回収容器としてのオイルパン11と、エアブロー12(図2参照)と、タンク13(図2参照)と、を有している。また、切削剤回収装置2は、リンク機構15をさらに備えている。
【0028】
<フレーム10>
フレーム10はチップコンベア3の排出端部の下方である回収位置(図1の二点鎖線で示す位置)に配置されている。フレーム10は、図1及び図3に示すように、4本の縦フレーム18と、第1〜第3横フレーム19a,19b,19cと、1対の支持フレーム20a,20bと、を有している。
【0029】
4本の縦フレーム18は床面に設置されている。第1及び第2横フレーム19a,19bは、対向して配置され、チップコンベア3の搬送方向に延びている(以下、搬送方向の切削加工機側(図1において左側を「奥側」、逆を「手前側」と記す場合もある)。第1及び第2横フレーム19a,19bは縦フレーム18の上端面に固定されている。第3横フレーム19cは、第1及び第2横フレーム19a,19bの奥側の端部を連結するように固定されている。なお、第1及び第2横フレーム19a,19bの手前側は開放されている。したがって、このフレーム10の手前側から、台車4をフレーム10内に進入させることが可能である。
【0030】
1対の支持フレーム20a,20bは、第1及び第2横フレーム19a,19bの上面に固定され、上方に延びている。各支持フレーム20a,20bの上端部には、軸受22a,22bが設けられている。
【0031】
<オイルパン11>
オイルパン11は、深さの浅い矩形の皿状に形成されており、チップコンベア3の排出端部の下方、すなわち、回収位置にある台車4の上方に配置されている。オイルパン11の底部下面には、図2及び図3から明らかなように、横方向に延びる回転軸24が固定されている。回転軸24は、両端部が1対の支持フレーム20a,20bの上端部に設けられた軸受22a,22bに回転自在に支持されている。
【0032】
以上のような構成により、オイルパン11は回転軸24とともに回転し、図1の実線で示す受け姿勢と、二点鎖線で示す退避姿勢と、を取り得る。オイルパン11が受け姿勢の状態では、チップコンベア3から落下する切削剤及び切粉を受けることが可能である。また、オイルパン11が退避姿勢の状態では、チップコンベア3から落下する切削剤及び切粉は台車4内に落下する。さらに、オイルパン11が退避姿勢の場合は、オイルパン11の先端は下方に向き、その先端は回収位置にある台車4の内部に位置する。
【0033】
オイルパン11には、図2及ぶ図3に示すように、下方に貫通する排出口11aが形成されている。オイルパン11の底部下面、より詳細には、排出口11aの下方には、第1ガイド部材26が固定されている。第1ガイド部材26は、断面が概略L字形状の例えばアングル材で構成されている。そして、排出口11aから落下した切削剤は、第1ガイド部材26に沿ってタンク13に導かれる。
【0034】
<エアブロー12>
図2から明らかなように、エアブロー12は、チップコンベア3の一方の側方に配置されている。エアブロー12からは、チップコンベア3に向けて、かつチップコンベア3の他方の側方に向けてエアが吹き付けられる。チップコンベア3の両側方には、図2及び図4に示すように、搬送面から縦方向に突出する側壁3aが形成されている。
【0035】
また、エアが吹き付けられる側の側壁3aの下方には、ガイドプレート28が配置されている。ガイドプレート28は、先端がチップコンベア3の排出端部からさらに外側(手前側)に突出し、奥側に延びて配置されている。また、ガイドプレート28は、図4に示すように、手前側の先端が奥側に比較して上方に位置するように配置されている(図4では、水平面を符号Hで示している)。したがって、チップコンベア3の側壁3aから落下した切削剤は、ガイドプレート28によって受けられ、さらに奥側に流れる。
【0036】
ガイドプレート28の奥側には、下方に貫通する排出口28aが形成されている。したがって、ガイドプレート28の奥側に案内された切削剤は、排出口28aを介して下方に落下する。ガイドプレート28の下方には、第2ガイド部材29が配置されている。第2ガイド部材29は、ガイドプレート28の延びる方向と直交する方向に延びている。そして、ガイドプレート28の排出口28aから落下した切削剤は、第2ガイド部材29によってタンク13に導かれるようになっている。
【0037】
<リンク機構15>
リンク機構15は、図1及び図3に示すように、第1〜第4リンク部材31,32,33,34から構成されている。各リンク部材31〜34は帯状の鋼板によって形成されている。第1リンク部材31の一端は回転軸24に固定されており、第1リンク部材31の移動によって回転軸24は回転する。第1リンク部材31は奥側に延び、第1リンク部材31の他端は第2リンク部材32の一端に回動自在に連結されている。また、第2リンク部材32の他端は、下方に延び、第3リンク部材33の一端に回動自在に連結されている。第3リンク部材33の他端は、手前側に延び、第4リンク部材34の一端に回動不能に固定されている。第3リンク部材33と第4リンク部材34との連結部は、第3横フレーム19cの上面に、回動自在に支持されている。そして、第4リンク部材34は、手前側に延び、その先端は下方に垂れ下がるように配置されている。この第4リンク部材34の先端には軸受36が配置されており、軸受36はフレーム10内に進入してくる台車4の側面に当接可能である。
【0038】
なお、リンク機構15は、台車4がフレーム10内に配置されていないとき、すなわち第4リンク部材34の先端の軸受36が台車4の側面に当接していない状態では、オイルパン11の重量及び各リンク部材31〜34の重量のバランスによって、オイルパン11は受け姿勢に維持される。
【0039】
ここで、4つのリンク部材の31〜34のうちの例えば第2リンク部材32は、図5に示すように、その長さを変えることができる。具体的には、第2リンク部材32は、帯状の第1部材32a及び第2部材32bから構成されている。そして、第1及び第2部材32a,32bの互いに向かい合う端部には、互いに向けてボルト部材40,41が固定されている。なお、2つボルト部材40,41のねじ方向は逆になっている。そして、2つのボルト部材40,41は、ターンバックル42にねじ込まれている。
【0040】
このような構成では、ターンバックル42を回転させることによって、第1部材32aと第2部材32bとの間の距離を変えることができる。すなわち、第2リンク部材32の長さを変えることができる。この第2リンク部材32の長さを変えることによって、オイルパン11の受け姿勢及び退避姿勢の角度(水平面に対する角度)を、微調整することができる。
【0041】
[動作]
旋盤等により切削加工を行う場合は、図6Aで示すように、台車4をフレーム10内に進入させ、チップコンベア3の排出端部の下方の回収位置に配置させておく。この状態では、リンク機構15の第4リンク部材34の軸受36が台車4の側面によって押されている。したがって、リンク機構15の作動によってオイルパン11は先端が下方に向くように退避姿勢となっている。オイルパン11が退避姿勢の場合は、オイルパン11の先端は台車4の内部に位置している。
【0042】
そして、この図6Aに示す状態では、切削加工により生じた切粉及びそれに付着する切削剤は、チップコンベア3によって搬送され、チップコンベア3の排出端部から下方の台車4内に落下する。したがって、この状態では、切粉及び切削剤は台車4の内部に回収される。
【0043】
台車4内に切粉が所定量たまってくると、台車4内の切粉を廃棄する必要がある。この場合は、切削加工が中断しているときに、チップコンベア3の搬送を停止する。そして、図6B及び図6Cに示すように、台車4をフレーム10から引き出し、台車4を切粉の廃棄場所に移動させる。このとき、前述のように、オイルパン11及びリンク機構15は、重量バランスによってオイルパン11が受け姿勢に維持されるように構成されているので、台車4の引き出しに連動して、オイルパン11は退避姿勢から受け姿勢に移行する。
【0044】
そして、台車4の側面が第4リンク部材34の軸受36から離れると、図6Dに示すように、オイルパン11は受け姿勢になる。この状態では、チップコンベア3から落下する切削剤及び切粉は、オイルパン11に受けられる。したがって、切削剤や切粉が床面に落下するのを防止することができる。
【0045】
また、オイルパン11に落下した切削剤は、オイルパン11の排出口11aを介して第1ガイド部材26に落下する。そして、切削剤は、第1ガイド部材26に沿ってタンク13に導かれ、タンク13内に回収される。
【0046】
また、チップコンベア3が止まった状態において、エアブロー12を作動させると、エアブロー12からのエアによって、チップコンベア3に付着している切削剤は、チップコンベア3の一方側の側壁3aに吹き飛ばされる。吹き飛ばされた切削剤は、側壁3aを伝って下方に落下し、その下方のガイドプレート28に受けられて奥側に導かれる。そして、ガイドプレート28の排出口28aからさらにその下方の第2ガイド部材29に落下し、この第2ガイド部材29に沿ってタンク13に導かれ、タンク13内に回収される。
【0047】
切粉が廃棄された台車4がフレーム10内に押し込まれると、前述と逆の動作によって、オイルパン11は退避姿勢に移行する。すなわち、台車4の側面によって第4リンク部材34の軸受36が押され、これによりリンク機構15が作動する。そして、オイルパン11が固定されている回転軸24が回転し、オイルパン11はその先端が台車4の内部に位置する退避姿勢となる。
【0048】
[特徴]
(1)台車4がチップコンベア3の下方の回収位置から移動させられたときには、オイルパン11は、受け姿勢になり、チップコンベア3から落下する切削剤及び切粉を受ける。したがって、台車4が回収位置にない場合であっても、切削剤等によって床面が汚れるのを抑えることができる。
【0049】
(2)チップコンベア3に付着した切削剤をエアブロー12によって吹き飛ばし、吹き飛ばされた切削剤を第2ガイド部材29を介してタンク13内に回収するようにしている。したがって、切削剤の落下による床面の汚れをさらに抑えることができる。
【0050】
(3)オイルパン11は、台車4の動きに連動して受け姿勢と退避姿勢とになる。したがって、作業者がオイルパン11の姿勢を変えたりする作業が不要となる。
【0051】
(4)オイルパン11が退避姿勢の場合は、オイルパン11の先端が台車4の中に位置するので、退避姿勢のオイルパン11から落下する切削剤を台車4の中に回収でき、床面の汚れを抑えることができる。
【0052】
(5)オイルパン11に排出口11aが形成され、この排出口11aからの切削剤をタンク13に導く第1ガイド部材26を設けているので、オイルパン11に落下する切削剤が多量の場合でも、オイルパン11から切削剤が溢れて床面に落下するのを防止できる。
【0053】
(6)リンク機構15を構成するリンク部材の長さを調節可能にしているので、オイルパン11の姿勢を微調整することができる。したがって、オイルパン11によって確実に切削剤を受けることができ、また退避姿勢のオイルパン11から落下する切削剤を確実に台車4内に回収できる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0055】
(a)前記実施形態では、第2リンク部材32の長さを可変にしたが、他のリンク部材を可変にしてもよい。
【0056】
(b)オイルパン11の形状、大きさ等は前記実施形態に限定されない。
【0057】
(c)リンク機構15を構成するリンク部材の個数、形状については、前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1 切粉回収装置
2 切削剤回収装置
3 チップコンベア
4 台車
10 フレーム
11 オイルパン(回収容器)
11a 排出口
12 エアブロー
13 タンク
15 リンク機構
26 第1ガイド部材
31〜34 リンク部材
【要約】
【課題】チップコンベアから落下する切削剤を効果的に捕捉し、工場内の床面が汚れるのを抑える。
【解決手段】この装置は、フレーム10と、オイルパン11と、を備えている。フレーム10は、チップコンベア3の排出端部の下方に配置されている。オイルパン11は、フレーム10に支持されるとともに、台車4の移動に連動して、台車4がチップコンベア3の排出端部下方の回収位置に位置しているときには退避姿勢をとり、台車4が回収位置から移動させられたときには受け姿勢を取る。そして、オイルパン11が退避姿勢のときには、チップコンベア3から排出される切粉及び切削剤は台車4に回収される。また、オイルパン11が受け姿勢のときには、チップコンベア3から落下する切削剤はオイルパン11に回収される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D