(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749437
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】熱電変換材料および熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 35/14 20060101AFI20150625BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20150625BHJP
C22C 14/00 20060101ALI20150625BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20150625BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20150625BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20150625BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20150625BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
H01L35/14
C22C13/02
C22C14/00 Z
C22C19/03 M
C22C19/07 M
C22C28/00 B
C22C38/00 301Z
C22C38/00 302Z
H01L35/32 A
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2009-550473(P2009-550473)
(86)(22)【出願日】2009年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2009000224
(87)【国際公開番号】WO2009093455
(87)【国際公開日】20090730
【審査請求日】2011年11月7日
【審判番号】不服2014-6265(P2014-6265/J1)
【審判請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2008-12213(P2008-12213)
(32)【優先日】2008年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-64358(P2008-64358)
(32)【優先日】2008年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】郭 俊清
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊一
(72)【発明者】
【氏名】耿 慧遠
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
【合議体】
【審判長】
小野田 誠
【審判官】
河口 雅英
【審判官】
加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−89847号公報(JP,A)
【文献】
特開平11−103098号公報(JP,A)
【文献】
特開2003−92435号公報(JP,A)
【文献】
特開2006−49736号公報(JP,A)
【文献】
特開2006−128522号公報(JP,A)
【文献】
特開平2006−156993号公報(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/104255号(WO,A2)
【文献】
特開2002−26401号公報(JP,A)
【文献】
特開2007−5544号公報(JP,A)
【文献】
特開2002−26400号公報(JP,A)
【文献】
Xinfeng Tang et al.,ynthesis and thermoelectric properties of double−atom−filled skutterudite compounds CamCenFexCo4−xS,Journal of Applied Physics,米国,American Institute of Physics,2006年12月19日,Volume100,Issue 12,P.123702
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/00-25/00, 27/00-28/00, 30/00-30/06, 35/00-45/10
H01L 27/16, 35/00-37/04
H02K 24/00-27/30, 31/00-31/04, 35/00-35/06, 39/00, 47/00-47/30,53/00, 57/00
H02N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素のTiおよび第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、前記三種以上の元素が、希土類、アルカリ土類金属、第4族および第13族からなる群から選択される少なくとも三種の異なる族の元素であり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種であることを特徴とするR−T−M−X−N系熱電変換材料。
【請求項2】
前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmが、0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項3】
前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmが、0であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項4】
前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるnが、0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項5】
前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるnが、0であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項6】
前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmおよびnがともに、0であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載された熱電変換材料のうち少なくとも一種と、電極と、を備えた熱電変換モジュールであって、
前記熱電変換材料と前記電極との間に、接合部材が設けられており、
前記接合部材は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される少なくとも一種の合金からなる合金層を有する接合層であることを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項8】
前記合金層が、
Tiを50重量%以上100重量%未満、
Al、Ga、In、またはSnの少なくとも一種を0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項9】
前記合金層が、
Niを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項10】
前記合金層が、
Coを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項11】
前記合金層が、
Feを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱電変換モジュール。
【請求項12】
前記熱電変換材料と、前記熱電変換材料に最隣接する前記接合部材の前記合金層との、20℃〜600℃における熱膨張係数の差が、前記熱電変換材料の熱膨張係数の値に対して、0%以上20%以下であることを特徴とする請求項7乃至11いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項13】
前記合金層は、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10−6(/K)以上15×10−6(/K)以下であることを特徴とする請求項7乃至12いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項14】
前記電極が、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される合金を含むことを特徴とする請求項7乃至13いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項15】
前記電極は、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10−6(/K)以上15×10−6(/K)以下の範囲にある金属または合金であることを特徴とする請求項7乃至14いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項16】
前記電極は、前記合金層と同じ組成の合金からなることを特徴とする請求項7乃至14いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを電気に、あるいは電気を熱エネルギーに直接変換できる熱電変換材料および熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換材料は、熱エネルギーを電気に直接変換できる、あるいは電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換し、即ち電気を印加することによって加熱・冷却できる材料である。p型熱電変換材料とn型熱電変換材料とを組み合わせたp/n熱電変換材料のペアを多数、電気的に直列に接続すれば、一つの熱電変換モジュールが形成される。熱電変換モジュールを使用すれば、従来あまり利用されていなかった廃熱を電気に変換してエネルギーを有効に活用することができる。
【0003】
熱電変換材料の性質は、性能指数Zによって評価される。性能指数Zとは、ゼーベック係数S、熱伝導率κ及び電気抵抗率ρを用いた以下の式(1)によって表される。
Z=S
2/(κρ) ・・・式(1)
また、熱電変換材料の性質は、性能指数Zと温度Tとの積によって評価されることがある。この場合には、式(1)の両辺に温度T(ここで、Tは絶対温度)を乗じて以下の式(2)とする。
ZT=S
2T/(κρ) ・・・式(2)
式(2)に示したZTは無次元性能指数と呼ばれ、熱電変換材料の性能を示す指標になる。熱電変換材料は、このZTの値が大きいほど、その温度Tにおける熱電性能が高いことになる。式(1)および式(2)から、優れた熱電変換材料とは、性能指数Zの値を大きくできる材料、すなわちゼーベック係数Sが大きく、熱伝導率κおよび電気抵抗率ρが小さい材料である。
【0004】
また、電気的な観点から熱電変換材料の性能を評価する場合、次式(3)で表される出力因子Pを用いる場合がある。
P=S
2/ρ ・・・式(3)
【0005】
熱電変換材料の最大変換効率η
maxは、以下の式(4)で表される。
η
max={(T
h−T
c)/T
h}{(M−1)/(M+(T
c/T
h))} ・・・式(4)
式(4)のMは、以下の式(5)によって表される。ここでT
hは熱電変換材料の高温端の温度、T
cは低温端の温度である。
M={1+Z(T
h+T
c)/2}
−0.5 ・・・式(5)
上記の式(1)〜(5)から、熱電変換材料の熱電変換効率は、性能指数及び高温端と低温端との温度差が大きいほど、向上することが分かる。
【0006】
熱電変換モジュールに用いられる熱電変換材料として、今まで研究されてきた代表的なものには、Bi
2Te
3系、PbTe系、AgSbTe
2−GeTe系、SiGe系、(Ti、Zr、Hf)NiSn系、CoSb
3系、Zn
4Sb
3系、FeSi
2系、B
4C系、NaCo
2O
4系酸化物、Ca
3Co
4O
9系酸化物などがある。しかしながら、この中で実用化されているのはBi
2Te
3系のみである。Bi
2Te
3系熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールは、発電用途として使用できる温度範囲は室温付近からBi
2Te
3系材料が耐えうる最大250℃の範囲に限られる。
【0007】
そこで種々の廃熱を有効利用するという点で、300℃〜600℃の中温領域で使用可能な熱電変換モジュールが求められている。近年、特にこの温度域で使用可能な熱電変換材料として、充填スクッテルダイト熱電変換材料が注目されている。充填スクッテルダイト化合物は、化学式RT
4X
12(R=金属、T=遷移金属、X=プニコゲン)で表され、空間群Im
−3の立方晶構造を有する。式中、Rはアルカリ土類金属、ランタノイド系、またはアクチノイド系元素、TはFe、Ru、Os、Co、Pd、Ptなどの遷移金属、XはAs、P、Sbなどのプニコゲン元素である。特にXがSbとなる充填スクッテルダイト系熱電変換材料が盛んに研究されている。
【0008】
開発されたLa(Ce)−Fe−Sb、Yb−Co−Sb系スクッテルダイト熱電変換材料、特にp型CeFe
4Sb
12、p型La
xFe
3CoSb
12(0<x≦1)及びn型Yb
yCo
4Sb
12(0<y≦1)熱電変換材料は、300〜600℃の中温域で比較的に良好な熱電性能を有している。このような熱電性能について、特許文献1には無次元性能指数ZTが0.9〜1.4、特許文献2には無次元性能指数ZTが0.7〜0.8であることが示されている。
【0009】
しかしながら、高い熱電変換効率を示す熱電変換モジュールを作るためには、広い温度範囲でより高い無次元性能指数ZTを有する熱電変換材料が要求される。本発明者らが特許文献1に基づいて追試を行ったところ、同文献に開示があったp−型CeFe
4Sb
12熱電材料の無次元性能指数ZTは450℃で0.5〜0.6であった。したがって、特許文献1に開示されていたZT=1.4には及ばなかった。また、n−型熱電材料は室温〜600℃の温度範囲で使用可能であるが、その無次元性能指数ZTは200℃でZT=0.5、300℃でZT=0.6、および500℃でZT=0.8である。したがって、室温〜600℃の温度範囲で熱電性能としての無次元性能指数ZT値、特に300℃以下のZT値は低かった。このように従来の材料では広い温度範囲でより高い無次元性能指数ZTを得ることは困難であった。
【0010】
一方、300℃〜600℃の中温領域で使用可能な熱電変換モジュールを製作するには、p型熱電変換材料とn型熱電変換材料を連結する電極材料の選択および接合法が重要な課題である。電極材料と熱電変換材料との間は、接合性が良く、且つ電極材料による熱電変換材料の性能劣化が発生しないことが必須である。これを実現するには、600℃までの使用温度範囲における、熱電変換材料、電極材料およびその接合に用いる材料との間の熱膨張係数の整合性、接合界面における接合層の安定性が不可欠である。熱膨張係数の差が大きいと、そこで大きな熱応力が発生し、接合部の破断が起きる問題が生じる。また、電極材料と熱電変換材料は接合界面において元素拡散が進行すれば、熱電性能の劣化および電極材料の性能低下が生じる。
【0011】
上記の問題に対し、特許文献3には、スクッテルダイト構造の熱電変換材料に関する高温部における熱電変換材料と電極材料との間にチタンまたはチタン合金の合金層を設けることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−252526号公報
【特許文献2】特開2001−135865号公報
【特許文献3】特開2003−309294号公報
【0012】
しかしながら、本発明者らが充填スクッテルダイト系熱電変換材料および接合材料としてTiを用いて追試を行ったところ、電極材料が充填スクッテルダイト系熱電変換材料から剥がれてしまった。剥がれが生じた原因の一つとしては、高温になるにつれて、特に400℃以上の温度において、熱電変換材料の熱膨張係数と、電極材料との熱膨張係数の差が大きくなり、熱応力が発生したことが考えられる。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、上記の点に鑑み、広い温度範囲でも熱電性能が高い熱電変換材料を提供し、またこのような熱電変換材料と電極との接合を良好にする接合部材を用いた熱電変換モジュールを提供するものである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、熱電変換材料は、
一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素
、アルカリ土類金属元素、第4族元素のTiおよび第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、前記三種以上の元素が、希土類
、アルカリ土類金属、第4族および第13族からなる群から選択される少なくとも三種の異なる族の元素であり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種であることを特徴とするR−T−M−X−N系熱電変換材料である。
【0015】
本発明において、化学式RT
4X
12(R=金属、T=遷移金属、X=プニコゲン)で表されるスクッテルダイト熱電変換材料、特にSb系スクッテルダイト熱電変換材料の熱電性能を向上させるために、熱電変換材料の結晶格子内のTサイトにFeおよびCoから選択される少なくとも一種と、Rサイトに希土類元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素
のTi、および第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素と、XサイトにSbと、SeおよびTeから選択される少なくとも一種とを、同時に混在させる。これにより、特にRサイトに三種以上の元素の同時混在によって、フォノン散乱を強く起こすことができる。このフォノン散乱が熱伝導率κを低下させるので、式(2)より無次元性能指数ZTの値を大きくすることが可能である。
【0016】
さらに、本発明では、R
rT
t−mM
mX
x−nN
n(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2、)中のr、t、m、x及びnの量を調整することによって、スクッテルダイト構造を主相とする熱電変換材料の出力因子P(=S
2/ρ)の値を大きくすることも可能である。この効果により無次元性能指数ZTの値をより一層大きくすることができる。
【0017】
本発明によれば、上記一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n中におけるmが、0より大きいR−T−M−X−N系熱電変換材料が提供される。元素Feまたは元素Coの少なくとも一部を元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素で置換することにより、熱伝導率κをさらに低下させることができる。その結果、熱電変換材料の熱電性能を表す無次元性能指数ZTの値をさらに大きくすることができる。
【0018】
本発明によれば、上記一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n中におけるnが、0より大きいR−T−M−X−N系熱電変換材料が提供される。元素P、Asまたは元素Sbの少なくとも一部を元素SeおよびTeからなる群から選択される少なくとも一種の元素で置換することにより、出力因子P(=S
2/ρ)の値を大きくすると同時に、熱伝導率κをさらに低下させることができる。その結果、熱電変換材料の熱電性能を表す無次元性能指数ZTの値をさらに大きくすることができる。
【0019】
また、本発明によれば、熱電変換モジュールは、
一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素
、アルカリ土類金属元素、第4族元素のTiおよび第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、前記三種以上の元素が、希土類
、アルカリ土類金属、第4族および第13族からなる群から選択される少なくとも三種の異なる族の元素であり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種であることを特徴とするR−T−M−X−N系熱電変換材料のうち少なくとも一種と、電極と、を備えた熱電変換モジュールであって、
前記熱電変換材料と前記電極との間に、接合部材が設けられており、
前記接合部材は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される少なくとも一種の合金からなる合金層を有する接合層であることを特徴とする。
【0020】
すなわち、本発明によれば、充填スクッテルダイト構造を有するp型熱電変換材料およびn型熱電変換材料、特にSb系熱電変換材料および電極を備えた熱電変換モジュールであって、前記p型熱電変換材料または前記n型熱電変換材料と前記電極との接合部材として、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される少なくとも一種の合金からなる合金層を有する接合層が設けられていることを特徴とする熱電変換モジュールが提供される。
【0021】
本発明によれば、充填スクッテルダイト構造を有するSb系熱電変換材料を用いる熱電変換モジュールにおいて、チタン合金層および、鉄族元素であるニッケル、またはコバルト、あるいは鉄を主成分とした鉄族合金層を熱電変換材料および電極の接合部材として用いることにより、広い温度範囲で良好な接合が安定に得られる。さらに、前記接合部材においてチタンが含まれることにより、熱電変換材料および電極に含まれる構成成分の拡散が防止されるという効果もある。
【0022】
本発明によれば、広い温度範囲で熱電性能が高い熱電変換材料が実現される。また、本発明によれば、広い温度範囲で熱電性能が高く、熱電変換材料と電極との接合が良好な熱電変換モジュールが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【
図1】熱電変換モジュールのp/n素子ペアの構造図である。
【
図2】p型熱電変換材料のゼーベック係数の温度依存性を表した図である。
【
図3】p型熱電変換材料の電気抵抗率の温度依存性を表した図である。
【
図4】p型熱電変換材料の出力因子の温度依存性を表した図である。
【
図5】p型熱電変換材料の熱伝導率の温度依存性を表した図である。
【
図6】p型熱電変換材料の無次元性能指数の温度依存性を表した図である。
【
図7】n型熱電変換材料のゼーベック係数の温度依存性を表した図である。
【
図8】n型熱電変換材料の電気抵抗率の温度依存性を表した図である。
【
図9】n型熱電変換材料の出力因子の温度依存性を表した図である。
【
図10】n型熱電変換材料の熱伝導率の温度依存性を表した図である。
【
図11】n型熱電変換材料の無次元性能指数の温度依存性を表した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明による熱電変換材料及び熱電変換モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
本実施形態にかかる熱電変換材料は、一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素および第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種であることを特徴とするR−T−M−X−N系熱電変換材料である。
【0026】
希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuが挙げられる。
アルカリ金属元素としては、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrが挙げられる。
アルカリ土類金属元素としては、Ca、Sr、及びBaが挙げられる。
第4族元素としては、Ti、Zr、及びHfが挙げられる。
第13族元素としては、B、Al、Ga、In、及びTlが挙げられる。
Rは、希土類元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素および第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素であり、異なる族から選択された元素でもよく、また同一の族から選択された元素であってもよい。Rとしては、例えば、p型熱電変換材料においては希土類元素のLa及びCe、第4族元素のTi、Zr及びHf、第13族元素のAl、Ga及びInを主とし、n型熱電変換材料においては希土類元素のYb、アルカリ土類金属元素のCa、Sr及びBa、第13族元素のAl、Ga及びInを主とする三種以上の元素の組み合わせが挙げられる。
【0027】
本実施形態にかかる熱電変換材料は、本発明の一般式を満たす構造であれば特に限定されないが、化学式RT
4X
12(R=金属、T=遷移金属、X=プニコゲン)で表される充填スクッテルダイト構造を有することが望ましい。このような構造を有する熱電変換材料は、溶解法、急冷凝固法(ガスアトマイズ、水アトマイズ、遠心アトマイズ、単ロール法、双ロール法)、メカニカルアロイング法(ボールミル法)、または単結晶育成法などと、ホットプレス法、加熱焼結法、放電プラズマ成型法、または熱処理法などを組み合わせることによって作製することができる。しかしながら、充填スクッテルダイト構造が得られる限り、製法としては特に上記に限定されない。
【0028】
次に、本実施形態にかかる熱電変換材料の具体的な合成方法の例(i)〜(iii)について、以下説明する。
【0029】
(i)本実施形態にかかる熱電変換材料の合成方法として、溶解法と熱処理法とを組み合わせた例について説明する。所定比率で純金属の原料をカーボン坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気炉加熱によって1200℃まで加熱溶解する。5時間保持した後、900℃で6時間、引き続いて800℃で12時間、700℃で24時間、さらに600℃で12時間保持する。その後、室温まで冷却することにより、目的の熱電変換材料を得ることができる。
【0030】
(ii)本実施形態にかかる熱電変換材料の合成方法として、溶解法と放電プラズマ成型法とを組み合わせた例について説明する。所定比率で純金属の原料をカーボン坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、1200℃まで加熱溶解し、5時間保持した後、水急冷する。水急冷した材料を700℃まで加熱し、24時間保持した後、室温まで冷却し、目的のインゴットを得る。このインゴット原料を粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら500〜750℃の温度まで加熱する。10分間保持した後、室温まで冷却することで目的の熱電変換材料を得ることができる。
【0031】
(iii)本実施形態にかかる熱電変換材料の合成方法として、メカニカルアロイング法と放電プラズマ成型法とを組み合わせた例について説明する。まず、不活性ガス雰囲気中において、所定比率で純金属粉末をアルミナ容器の中に入れ、アルミナボールと混合する。次いで、メカニカルアロイングを24時間行い、原料粉末を得る。この粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら500〜750℃の温度まで加熱し、10分間保持する。その後、室温まで冷却することにより、目的の熱電変換材料を得ることができる。
【0032】
上記(i)〜(iii)何れの合成方法を用いた場合も、得られた熱電変換材料は充填スクッテルダイト構造を有することが粉末X線回折によって確認された。そして、そのゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κと温度Tとの関係を測定し、無次元性能指数ZTの温度依存性を調べた。その結果、温度の上昇と共にZTが大きくなり、室温〜600℃の温度範囲でZTは1.0〜1.3に達した。
【0033】
次に、
図1を用いて、本実施形態にかかる熱電変換モジュールについて説明する。
図1は、本実施形態に係る熱電変換モジュールのp/n素子ペアの構造を示す模式図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の熱電変換モジュールは、p型熱電変換材料1と電極4、n型熱電変換材料2と電極4との間に、それぞれ接合部材3を備えている。
【0035】
本実施形態においてp型熱電変換材料1またはn型熱電変換材料2は、充填スクッテルダイト構造を有する化合物である。
また、p型熱電変換材料1またはn型熱電変換材料2は、
一般式R
rT
t−mM
mX
x−nN
n(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素および第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種である。
【0036】
このような充填スクッテルダイト熱電変換材料、特にSb系充填スクッテルダイト熱電変換材料は、20℃〜600℃における熱膨張係数が通常、8×10
−6(/K)以上、15×10
−6(/K)以下の範囲である。
【0037】
接合部材3は、p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2と、電極4とをそれぞれ接合する接合部材として機能する。
【0038】
接合部材3は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される少なくとも一種の合金からなる合金層を有する接合層である。また、接合部材3は一種の合金層からなってもよいが、二種以上の合金層からなっても構わない。
【0039】
接合部材3の合金層としては、例えば、チタンを主成分とし、Al、Ga、In、Snの少なくとも一種を含有したTi系合金、ニッケルを主成分とし、チタンを含有したNi−Ti系合金、コバルトを主成分として、チタンを含有したCo−Ti系合金、鉄を主成分とし、チタンを含有したFe−Ti系合金が挙げられる。
【0040】
また、接合部材3の合金層における組成比は、熱電変換材料の熱膨張係数に合致するように調整する。接合部材3の合金層がチタン合金からなる合金層であってもよい。接合部材3のチタン合金からなる合金層は、チタン合金層全体を基準として、Tiを50重量%以上100重量%未満、Al、Ga、In、またはSnの少なくとも一種を0重量%を超え、50重量%以下、含む。接合部材3がTiを含むことにより、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4に含まれる構成成分の拡散が抑制できる。
【0041】
また、接合部材3の合金層がニッケル合金からなる合金層であってもよい。接合部材3のニッケル合金からなる合金層は、ニッケル合金層全体を基準として、Niを50重量%以上100重量%未満、Tiを0重量%を超え、50重量%以下、含む。Niにより、接合部材3の合金層の熱膨張係数とp型熱電変換材料の熱膨張係数との差を小さくすることができる。この場合も、Tiを含むため、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4に含まれる構成成分の拡散が抑制できる。
【0042】
また、接合部材3の合金層が鉄合金からなる合金層であってもよい。接合部材3の鉄合金からなる合金層は、鉄合金層全体を基準として、Feを50重量%以上100重量%未満、Tiを0重量%を超え、50重量%以下、含む。Feにより、接合部材3の熱膨張係数がp型熱電変換材料の熱膨張係数との差を小さくすることができる。この場合も、Tiを含むため、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4に含まれる構成成分の拡散が抑制できる。
【0043】
また、接合部材3の合金層がコバルト合金からなる合金層であってもよい。接合部材3のコバルト合金からなる合金層は、コバルト合金層全体を基準として、Coを50重量%以上100重量%未満、Tiを0重量%を超え、50重量%以下、含む。Coにより、接合部材3の合金層の熱膨張係数とp型熱電変換材料の熱膨張係数との差を小さくすることができる。この場合も、Tiを含むため、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4に含まれる構成成分の拡散が抑制できる。
【0044】
接合部材3の合金層は、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10
−6(/K)以上15×10
−6(/K)以下であることが好ましい。これにより、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4との良好な接合性が得られる。
【0045】
また、p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2と、接合部材の合金層との、20℃〜600℃における熱膨張係数の差が、熱電変換材料の値に対して、0%以上20%以下が好ましい。熱膨張係数の差が、20%以下であることにより、p型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4とのさらに良好な接合性が得られる。
【0046】
本実施形態において、「熱膨張係数の差」とは、「p型熱電変換材料1またはn型熱電変換材料2いずれか」の熱膨張係数に対する「p型熱電変換材料1またはn型熱電変換材料2のいずれかの熱膨張係数と、接合部材3の合金層の熱膨張係数」の差が0%以上20%以下であることを意味する。
【0047】
接合部材3の合金層は、スパッタリング、蒸着、溶射、SPS法(放電プラズマ焼結法)などの公知の方法によって作製することができる。
【0048】
本発明は、充填スクッテルダイト構造を有するSb系p型およびn型熱電変換材料と、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金とが密着性に優れるという知見から完成されたものである。接合部材3の合金層は、p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2と各電極4との間に密着性の良い安定な化合物を形成し、p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2と各電極4間の元素拡散を防止すると共に、その熱膨張係数の値がp型熱電変換材料1、n型熱電変換材料2、及び電極4材料の値に近いことで熱応力を緩和することができる。本実施形態において、充填スクッテルダイト構造を有するSb系p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2との熱膨張係数の変化に十分整合するように、所定のチタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される合金を用いることによって、良好な接合性を達成することができる。
【0049】
電極4は、接合部材3を介して、p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2とそれぞれ接続されている。
【0050】
電極4の材料としては、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される合金を含むことが好ましい。また、電極4の材料は、接合部材3の合金層と同じ組成の合金を使用することがより好ましい。これにより、両者の密着性を高めることができる。
【0051】
または、電極4の材料として用いるものは、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10
−6(/K)以上、15×10
−6(/K)以下の範囲にある金属または合金であってもよい。
【0052】
ここで、金属または合金は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、銅、チタン、パラジウム、アルミニウム、錫、およびニオブからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。例えば、SUS403、SUS430など、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10
−6(/K)以上、15×10
−6(/K)以下となる合金鋼でも構わない。これらはスパッタリング、蒸着、溶射、SPS法(放電プラズマ焼結法)あるいは微小レーザ溶接などの公知の方法によって接合することができる。
【0053】
上記の構造により、充填スクッテルダイト系p型熱電変換材料1及びn型熱電変換材料2と電極4とが安定に接合した熱電変換モジュールを提供することができる。本実施形態における熱電変換モジュールは室温〜600℃の温度範囲で熱電変換効率が7%以上に達することができる。
【0054】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明の熱電変換材料及び熱電変換モジュールについて具体的に説明する。なお、本発明の熱電変換材料及び熱電変換モジュールは下記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲においてあらゆる変形や変更が可能である。
【0056】
〔熱電変換材料〕
(熱電性能の評価)
熱電変換材料の評価は、次のように行った。
熱電性能評価装置(アルバック理工株式会社製 熱電能測定装置ZEM−2及びレーザフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000H)を用い、室温〜600℃の温度範囲で熱電変換材料ごとに、ゼーベック係数S、電気抵抗率ρおよび熱伝導率κを測定し、無次元性能指数ZTと出力因子P(P=S
2/ρ)をそれぞれ算出した。
【0057】
(実施例1〜実施例4)
実施例1〜実施例4では、以下に示すp型熱電変換材料を用いた。
実施例1 p型La
0.7Ba
0.07Ga
0.1Co
1Fe
3Sb
12
実施例2 p型La
0.7Ba
0.07Ti
0.1Co
1Fe
3Sb
12
実施例3 p型La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Co
1Fe
3Sb
12
実施例4 p型La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Co
1.2Fe
2.8Sb
12【0058】
上記実施例1〜4のp型熱電変換材料の合成方法について、以下に説明する。
所定比率の純金属La、Ba、Ga、Ti、Co、FeおよびSbをカーボン材質の坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気炉加熱によって1200℃まで加熱溶解し、5時間保持した後、水急冷した。水急冷した材料を700℃まで加熱し、24時間保持した後、室温まで冷却し、目的のインゴットを得る。このインゴット原料を粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら500〜750℃の温度まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することで目的の熱電変換材料を得ることができた。
【0059】
(比較例1)
本比較例では、従来のLa
0.7Co
1Fe
3Sb
12熱電変換材料を用いた。
【0060】
上記比較例1の熱電変換材料を、以下のようにして合成した。
所定比率の純金属La、Co、FeおよびSbをカーボン材質の坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気炉加熱によって1200℃まで加熱溶解し、5時間保持した後、水急冷した。水急冷した材料を700℃まで加熱し、24時間保持した後、室温まで冷却し、目的のインゴットを得た。このインゴット原料を粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら600℃の温度まで加熱した。10分間保持した後、室温まで冷却することで目的の熱電変換材料を得ることができた。
【0061】
上記実施例1〜4及び比較例1で合成した熱電変換材料を用いて、それぞれの熱電性能の評価を行った。結果を、
図2〜6に示す。
【0062】
図2〜
図6は、それぞれ実施例1〜実施例4で得られたp型熱電変換材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、出力因子P、熱伝導率κ及び無次元性能指数ZTと温度との関係を示す。
【0063】
実施例1〜4は、温度の上昇につれて、ゼーベック係数Sの絶対値、電気抵抗率ρ及び無次元性能指数ZTは大きくなった。これらの結果から、
図6に示すように、実施例1〜実施例4のp型熱電変換材料の無次元性能指数ZTは温度の上昇につれて大きくなり、実施例3及び実施例4ではZTの最大値が1を超えている。特に、実施例4のp型熱電変換材料La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Co
1.2Fe
2.8Sb
12は、無次元性能指数ZTの値が、200℃の温度で0.7、300℃の温度で0.9、350℃〜550℃の温度範囲で1.0以上、ZTの最大値が450℃で1.1に達している。
一方、比較例1は、温度の上昇につれて、ゼーベック係数Sの絶対値、電気抵抗率ρ及び無次元性能指数ZTは大きくなったが、無次元性能指数ZTの最大値は500℃で0.5であった。
【0064】
また、
図2〜
図4から分かるように、室温〜600℃の温度範囲で実施例1〜4のp型熱電変換材料は、そのゼーベック係数Sが比較例1の従来p型熱電変換材料La
0.7Co
1Fe
3Sb
12より大きく、電気抵抗率が比較例1と同じ値か、やや大きくなったが、その出力因子Pが比較例1よりかなり大きくなった。一方、
図5に示すように希土類元素のLa、アルカリ土類元素のBa、第4族元素のTi及び第13族元素のGaの内、三種類以上の元素を同時に添加すると、その熱伝導率は、比較例1のLa一種類だけの添加より、約40%も大幅に低下した。出力因子Pの向上と熱伝導率の低下の寄与によって、本発明の実施例1〜実施例4のp型熱電変換材料の無次元性能指数ZTは、
図6に示すように、室温〜600℃の全温度領域において、かなり大きくなった。その最大値が1.1に達し、比較例1の0.5より1.2倍にも大きくなった。これは、本発明が提示したR位置に三種類以上の元素を配置するのが熱電変換材料の性能向上に有効であることを裏付けた。
【0065】
(実施例5〜実施例10)
実施例5〜実施例10では、以下に示すn型熱電変換材料を用いた。
実施例5 n型Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12
実施例6 n型Yb
0.3Ca
0.1Ga
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12
実施例7 n型Yb
0.3Ca
0.1In
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12
実施例8 n型Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12
実施例9 n型Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12
実施例10 n型Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.3Co
3.75Fe
0.25Sb
12【0066】
上記実施例5〜10のn型熱電変換材料の合成方法について、以下に説明する。
所定比率の純金属Yb、Ca、Al、Ga、In、Co、FeおよびSbをカーボン材質の坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気炉加熱によって1200℃まで加熱溶解し、5時間保持した。その後、900℃で6時間、引き続いて800℃で12時間、700℃で24時間、さらに600℃で12時間保持した。その後、室温まで冷却し、目的のインゴットを得た。このインゴット原料を粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら500〜750℃の温度まで加熱し、10分間保持した。その後、室温まで冷却することで目的の熱電変換材料を得た。
【0067】
(比較例2)
本比較例では、従来のn型Yb
0.15Co
4Sb
12熱電変換材料を用いた。
【0068】
上記比較例2の熱電変換材料を、以下のようにして合成した。
所定比率の純金属Yb、CoおよびSbをカーボン材質の坩堝に入れ、不活性ガス雰囲気中において、電気炉加熱によって1200℃まで加熱溶解し、5時間保持した。その後、900℃で6時間、引き続いて800℃で12時間、700℃で24時間、さらに600℃で12時間保持した。その後、室温まで冷却し、目的のインゴットを得た。このインゴット原料を粉砕し、粉末をカーボンダイスに入れ、真空もしくは不活性ガス雰囲気中において、60MPaの圧力の下でパルス電流をかけながら700℃の温度まで加熱し、10分間保持した。その後、室温まで冷却することで目的の熱電変換材料を得た。
【0069】
上記実施例5〜10及び比較例2で合成した熱電変換材料を用いて、それぞれの熱電性能の評価を行った。結果を
図7〜
図11に示す。
【0070】
図7〜
図11はそれぞれ実施例5〜実施例10で得られたn型熱電変換材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、出力因子P、熱伝導率κ及び無次元性能指数ZTと温度との関係を示す。
【0071】
実施例5〜10は、温度の上昇につれて、ゼーベック係数の絶対値S、電気抵抗率ρ及び無次元性能指数ZTは大きくなり、ZTの最大値が1.0〜1.3に達した。
図11から分かるように、実施例10のn型熱電変換材料Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.3Co
3.75Fe
0.25Sb
12の無次元性能指数ZTは、200℃の温度でZT=0.8、300℃〜600℃の温度範囲でZT>1、550℃の温度でZT=1.3であり、このn型熱電変換材料は300℃〜600℃の広い温度範囲で無次元性能指数ZTの値が1を超え、室温〜600℃の温度範囲で優れた熱電性能を有することが分かった。
一方、比較例2は、その無次元性能指数ZTは、200℃において0.5、300℃において0.6、400〜600℃の温度範囲で最大0.7であった。
【0072】
実施例5〜実施例10と比較例2とを比較すると、Al、Ga、In、Yb、Caの多重元素添加は、材料のゼーベック係数の絶対値、電気抵抗率に悪影響を及ぼし、出力因子Pの値を小さくさせたが、その反面、多重元素添加は実施例5〜実施例10の熱電変換材料の熱伝導率を大幅に低下させ、その値が比較例2のn型熱電変換材料Yb
0.15Co
4Sb
12の熱伝導率の半分まで小さくなった。よって、実施例5〜実施例10のn型熱電変換材料は無次元性能指数ZTが比較例2の最大値ZT=0.7からZT=1.0〜1.3まで上昇した。これは、本発明が提示したRサイトに三種以上の元素を同時混在するのは熱電変換材料の性能向上に特に有効であることを裏付けた。
【0073】
(実施例11〜実施例20)
表1は、実施例11〜実施例20の熱電変換材料の組成、及び熱電性能の評価の結果を示している。
実施例11〜15では上記p型熱電変換材料の合成方法を用い、実施例16〜20では上記n型熱電変換材料の合成方法を用いて、それぞれの組成の熱電変換材料を合成し、それぞれの熱電性能の評価を行った。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例3のp型La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Co
1Fe
3Sb
12熱電変換材料中のFeを部分的にRu、Rh、Ptによって置換した結果、実施例11〜実施例13のp型熱電変換材料の熱伝導率は実施例3の熱伝導率よりも小さくなったため、熱電性能の無次元性能指数ZTの最大値は実施例3のZT=1.0よりも大きく、ZT=1.03〜1.05に達した。さらに、SbをTe、Seによって部分置換した結果、実施例14〜実施例15のp型熱電変換材料の電気抵抗率は実施例3の電気抵抗率よりも小さくなったため、熱電性能の無次元性能指数ZTの最大値は実施例3のZT=1.0よりも大きく、ZT=1.04〜1.05に達した。
【0076】
実施例8のn型Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1Co
3.75Fe
0.25Sb
12熱電変換材料中のFeを部分的にOs、Ir、Pdによって置換した結果、実施例16〜実施例18のn型熱電変換材料の熱伝導率は実施例8の熱伝導率よりも小さくなったため、熱電性能の無次元性能指数ZTの最大値は実施例8のZT=1.1よりも大きく、ZT=1.13〜1.15に達した。さらに、SbをTe、Seによって部分置換した結果、実施例19〜実施例20のn型熱電変換材料の電気抵抗率は実施例8の電気抵抗率よりも小さくなったため、熱電性能の無次元性能指数ZTの最大値は実施例8のZT=1.1よりも大きく、ZT=1.14〜1.15に達した。
【0077】
これらの結果は、元素Feまたは元素Coの少なくとも一部を元素Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種の元素で置換することにより、熱伝導率κをさらに低下させることができ、無次元性能指数ZTの値をさらに大きくすることができることを裏付けた。さらに、元素P、Asまたは元素Sbの少なくとも一部を元素SeおよびTeからなる群から選択される少なくとも一種の元素で置換することにより、出力因子Pの値を大きくすることができ、無次元性能指数ZTの値をさらに大きくすることができることを裏付けた。
【0078】
〔熱電変換モジュール〕
以下、実施例によって本発明の熱電変換モジュールを具体的に説明する。
【0079】
(実施例21)
p型熱電変換材料La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Fe
3Co
1Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約13.5×10
−6(/K))およびn型熱電変換材料Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1Fe
0.25Co
3.75Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約10.5×10
−6(/K))を共に、5mm×5mm×7mmの角柱状にダイヤモンドカッターで切削加工した。角柱状のp/n素子をそれぞれ18個使用し、40mm角の面積に18ペアのp/n素子を並べ、20℃〜600℃における熱膨張係数が12.2×10
−6(/K)であるNi
3Ti(Ni79重量%−Ti21重量%)を接合部材及び電極材料とし、溶射処理によってp/n素子の両端を電気的に直列に連結するように18ペア、40mm角の熱電変換モジュールを作製した。
【0080】
以上の方法によって作製した熱電変換モジュールについて、ヒートサイクル試験を行った。具体的にはアルゴン雰囲気中において、高温側にはブロックヒーターを使用し、低温側にはファンとヒートシンクによる空冷をしてヒートサイクル試験を行った。高温側電極部の温度を200℃から30分で昇温し600℃で2時間保持した後、30分で200℃まで降温するように制御して、この1サイクルを計100サイクルになるまで行った。その結果、サイクル毎に測定した熱電変換モジュールの内部抵抗の増加は認められず、非常に良好な接合がされていることが判明した。
【0081】
ヒートサイクル試験後、高温端600℃、700℃/低温端50℃の条件で熱電変換モジュールの発電特性を測定した結果、それぞれの最大電気出力は16W、21Wであり、出力密度は1.0W/cm
2、1.3W/cm
2であった。
【0082】
以上の結果は、本発明が提供した熱電変換材料および熱電変換モジュールの作製技術を用いて、作製した熱電変換モジュールが耐久性良く、優れた発電特性を有することを示した。
【0083】
(実施例22)
p型熱電変換材料La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Fe
2.8Co
1.2Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約14.0×10
−6(/K))およびn型熱電変換材料Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.1Fe
0.25Co
3.75Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約10.0×10
−6(/K))を共に、5mm×5mm×7mmの角柱状にダイヤモンドカッターで切削加工した。角柱状のp/n素子をそれぞれ32個使用し、50mm角の面積に32ペアのp/n素子を並べ、20℃〜600℃における熱膨張係数が13.0×10
−6(/K)であるNi95重量%−Ti5重量%をp型熱電変換材料の接合部材とし、20℃〜600℃における熱膨張係数が10.4×10
−6(/K)であるTi
3(Al, Sn)(Ti80重量%−Al15重量%−Sn5重量%)をn型熱電材料の接合部材の合金層1とし、さらに20℃〜600℃における熱膨張係数が12.0×10
−6(/K)であるCo85重量%−Ti15重量%をn型熱電材料の接合部材の合金層2としn型熱電材料の接合部材の合金層1の上に接合させ、SUS403を電極材料とし、溶射処理によってp/n素子の両端を電気的に直列に連結するように32ペア、50mm角の熱電変換モジュールを作製した。
【0084】
以上の方法によって作製した熱電変換モジュールについて、ヒートサイクル試験を行った。具体的にはアルゴン雰囲気中において、高温側にはブロックヒーターを使用し、低温側にはファンとヒートシンクによる空冷をしてヒートサイクル試験を行った。高温側電極部の温度を200℃から30分で昇温し600℃で2時間保持した後、30分で200℃まで降温するように制御して、この1サイクルを計100サイクルになるまで行った。その結果、サイクル毎に測定した熱電変換モジュールの内部抵抗の増加は認められず、非常に良好な接合がされていることが判明した。
【0085】
ヒートサイクル試験後、高温端600℃、700℃/低温端50℃の条件で熱電変換モジュールの発電特性を測定した結果、それぞれの最大電気出力は25W、33Wであり、出力密度は1.0W/cm
2、1.3W/cm
2であった。
【0086】
以上の結果は、本発明が提供した熱電変換材料および熱電変換モジュールの作製技術を用いて、作製した熱電変換モジュールが耐久性良く、優れた発電特性を有することを示した。
【0087】
(実施例23)
p型熱電変換材料La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Fe
3Co
1Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約13.5×10
−6(/K))およびn型熱電変換材料Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.1Fe
0.25Co
3.75Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約10.0×10
−6(/K))を共に、5mm×5mm×7mmの角柱状にダイヤモンドカッターで切削加工した。角柱状のp/n素子をそれぞれ32個使用し、50mm角の面積に32ペアのp/n素子を並べ、20℃〜600℃における熱膨張係数が12.8×10
−6(/K)であるCo95重量%−Ti5重量%をp型熱電変換材料の接合部材の合金層とし、20℃〜600℃における熱膨張係数が10.4×10
−6(/K)であるTi
3(Al,Sn)(Ti80重量%−Al15重量%−Sn5重量%)をn型熱電材料の接合部材の合金層1とし、さらに20℃〜600℃における熱膨張係数が12.0×10
−6(/K)であるCo85重量%−Ti15重量%をn型熱電材料の接合部材の合金層2としn型熱電材料の接合部材の合金層1の上に接合させ、SUS403を電極材料とし、溶射処理によってp/n素子の両端を電気的に直列に連結するように32ペア、50mm角の熱電変換モジュールを作製した。
【0088】
以上の方法によって作製した熱電変換モジュールについて、ヒートサイクル試験を行った。具体的にはアルゴン雰囲気中において、高温側にはブロックヒーターを使用し、低温側にはファンとヒートシンクによる空冷をしてヒートサイクル試験を行った。高温側電極部の温度を200℃から30分で昇温し600℃で2時間保持した後、30分で200℃まで降温するように制御して、この1サイクルを計100サイクルになるまで行った。その結果、サイクル毎に測定した熱電変換モジュールの内部抵抗の増加は認められず、非常に良好な接合がされていることが判明した。
【0089】
ヒートサイクル試験後、高温端600℃、700℃/低温端50℃の条件で熱電変換モジュールの発電特性を測定した結果、それぞれの最大電気出力は25W、33Wであり、出力密度は1.0W/cm
2、1.3W/cm
2であった。
【0090】
以上の結果は、本発明が提供した熱電変換材料および熱電変換モジュールの作製技術を用いて、作製した熱電変換モジュールが耐久性良く、優れた発電特性を有することを示した。
【0091】
(実施例24)
p型熱電変換材料La
0.7Ba
0.01Ga
0.1Ti
0.1Fe
3Co
1Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約13.5×10
−6(/K))およびn型熱電変換材料Yb
0.3Ca
0.1Al
0.1Ga
0.1In
0.1Fe
0.25Co
3.75Sb
12(20℃〜600℃における熱膨張係数が約10.0×10
−6(/K))を共に、5mm×5mm×7mmの角柱状にダイヤモンドカッターで切削加工した。角柱状のp/n素子をそれぞれ32個使用し、50mm角の面積に32ペアのp/n素子を並べ、20℃〜600℃における熱膨張係数が12.5×10
−6(/K)であるFe95重量%−Ti5重量%をp型熱電変換材料の接合部材の合金層とし、20℃〜600℃における熱膨張係数が10.4×10
−6(/K)であるTi
3(Al,Sn)(Ti80重量%−Al15重量%−Sn5重量%)をn型熱電材料の接合部材の合金層1とし、さらに20℃〜600℃における熱膨張係数が12.0×10
−6(/K)であるCo85重量%−Ti15重量%をn型熱電材料の接合部材の合金層2としn型熱電材料の接合部材の合金層1の上に接合させ、SUS403を電極材料とし、溶射処理によってp/n素子の両端を電気的に直列に連結するように32ペア、50mm角の熱電変換モジュールを作製した。
【0092】
以上の方法によって作製した熱電変換モジュールについて、ヒートサイクル試験を行った。具体的にはアルゴン雰囲気中において、高温側にはブロックヒーターを使用し、低温側にはファンとヒートシンクによる空冷をしてヒートサイクル試験を行った。高温側電極部の温度を200℃から30分で昇温し600℃で2時間保持した後、30分で200℃まで降温するように制御して、この1サイクルを計100サイクルになるまで行った。その結果、サイクル毎に測定した熱電変換モジュールの内部抵抗の増加は認められず、非常に良好な接合がされていることが判明した。
【0093】
ヒートサイクル試験後、高温端600℃、700℃/低温端50℃の条件で熱電変換モジュールの発電特性を測定した結果、それぞれの最大電気出力は25W、33Wであり、出力密度は1.0W/cm
2、1.3W/cm
2であった。
【0094】
以上の結果は、本発明が提供した熱電変換材料および熱電変換モジュールの作製技術を用いて、作製した熱電変換モジュールが耐久性良く、優れた発電特性を有することを示した。
【0095】
(比較例3)
実施例22の熱電変換モジュール作製プロセスにおいて、接合部材だけをTiに変え、実施例22と同じ条件でモジュール作製したが、電極材料はp/n熱電変換材料と接合ができず、モジュール化ができなかった。
【0096】
(比較例4)
実施例23の熱電変換モジュール作製プロセスにおいて、接合部材だけをTiに変え、実施例23と同じ条件でモジュール作製したが、電極材料はp/n熱電変換材料から剥がれ、モジュール化ができなかった。
【0097】
比較例3と比較例4により、特許文献3(特開2003−309294)が開示したTi層が本発明の熱電変換材料に適用しないことを裏付けられた。
以下、態様の例を付記する。
1.一般式RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)で表される構造を有し、
Rは、希土類元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第4族元素および第13族元素からなる群から選択される三種以上の元素からなり、
Tは、FeおよびCoから選択される少なくとも一種であり、
Mは、Ru、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Xは、P、As、Sb、Biからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Nは、SeおよびTeから選択される少なくとも一種であることを特徴とするR−T−M−X−N系熱電変換材料。
2.前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmが、0より大きいことを特徴とする1に記載の熱電変換材料。
3.前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmが、0であることを特徴とする1に記載の熱電変換材料。
4.前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるnが、0より大きいことを特徴とする1に記載の熱電変換材料。
5.前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるnが、0であることを特徴とする1に記載の熱電変換材料。
6.前記RrTt−mMmXx−nNn(0<r≦1、3≦t−m≦5、0≦m≦0.5、10≦x≦15、0≦n≦2)におけるmおよびnがともに、0であることを特徴とする1に記載の熱電変換材料。
7.1乃至6いずれかに記載された熱電変換材料のうち少なくとも一種と、電極と、を備えた熱電変換モジュールであって、
前記熱電変換材料と前記電極との間に、接合部材が設けられおり、
前記接合部材は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される少なくとも一種の合金からなる合金層を有する接合層であることを特徴とする熱電変換モジュール。
8.前記合金層が、
Tiを50重量%以上100重量%未満、
Al、Ga、In、またはSnの少なくとも一種を0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする7に記載の熱電変換モジュール。
9.前記合金層が、
Niを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする7に記載の熱電変換モジュール。
10.前記合金層が、
Coを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする7に記載の熱電変換モジュール。
11.前記合金層が、
Feを50重量%以上100重量%未満、
Tiを、0重量%を超え、50重量%以下の合金を含むことを特徴とする7に記載の熱電変換モジュール。
12.前記熱電変換材料と、前記熱電変換材料に最隣接する前記接合部材の前記合金層との、20℃〜600℃における熱膨張係数の差が、前記熱電変換材料の熱膨張係数の値に対して、0%以上20%以下であることを特徴とする7乃至11いずれかに記載の熱電変換モジュール。
13.前記合金層は、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10−6(/K)以上15×10−6(/K)以下であることを特徴とする7乃至12いずれかに記載の熱電変換モジュール。
14.前記電極が、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、および鉄合金からなる群より選択される合金を含むことを特徴とする7乃至13いずれかに記載の熱電変換モジュール。
15.前記電極は、20℃〜600℃における熱膨張係数が8×10−6(/K)以上15×10−6(/K)以下の範囲にある金属または合金であることを特徴とする7乃至14いずれかに記載の熱電変換モジュール。
16.前記電極は、前記合金層と同じ組成の合金からなることを特徴とする7乃至14いずれかに記載の熱電変換モジュール。
【0098】
この出願は、2008年1月23日に出願された日本出願特願2008−12213及び、2008年3月13日に出願された日本出願特願2008−64358を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。