特許第5749457号(P5749457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749457
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】CMP後洗浄のための配合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   H01L21/304 622Q
   H01L21/304 647A
   H01L21/304 647B
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-154473(P2010-154473)
(22)【出願日】2010年7月7日
(65)【公開番号】特開2011-40722(P2011-40722A)
(43)【公開日】2011年2月24日
【審査請求日】2010年9月29日
【審判番号】不服2014-19961(P2014-19961/J1)
【審判請求日】2014年10月3日
(31)【優先権主張番号】61/223,526
(32)【優先日】2009年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/797,903
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ドニヤネシュ チャンドラカント タンボリ
(72)【発明者】
【氏名】マドゥカル バスカラ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】キース ランドルフ ファブレガス
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 久保 克彦
【審判官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−182221(JP,A)
【文献】 特開2009−99945(JP,A)
【文献】 特開2005−307187(JP,A)
【文献】 特表2002−520812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄される表面と水系配合物とを接触させることを含む、半導体製造プロセスにおける残渣を除去するための洗浄方法であって、
前記水系配合物が、
(a)アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー;
(b)4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド;
(c)シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタン酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、アラニン、シスチンからなる群から選択される、有機酸;
(d)アセチレン性ジオール界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリ(アルキレンオキシド)界面活性剤、フルオロケミカル界面活性剤、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、直鎖アルキルベンゼンスルホナート(LAS)、第二級アルキルベンゼンスルホナート、脂肪族アルコールスルファート(FAS)、第二級アルカンスルホナート(SAS)、及びいくつかの場合に脂肪族アルコールエーテルスルファート(FAES)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、界面活性剤;
(e)分散剤;
(f)有機溶媒;
(g)消泡剤;
(h)水;並びに
(i)キレート剤
の成分からなり、ただし前記(e)〜(g)は含まなくてもよく、かつ前記(b)第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドが水酸化コリンの場合には、前記水系配合物はアセチレン性界面活性剤を含まない、
洗浄方法。
【請求項2】
前記半導体製造プロセスが、CMP後洗浄、フォトレジスト灰分除去、フォトレジスト除去、後工程のパッケージング、プリプローブウェハー洗浄、ダイシング、及び研磨、並びに光起電性基板の洗浄からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記表面が、誘電性基板上に銅配線を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、1ppb〜10wt%の濃度で存在する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記配合物のpHが1.5〜4の範囲である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記配合物のpHが9〜13の範囲である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドが、16未満の炭素原子を有する、請求項1の方法。
【請求項8】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(NHEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、エタノールジグリシナート、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、メチルジホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、エチリデン−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリジン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビスメチレンホスホン酸、ドデシルアミノビスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、1,2−プロパンジアミンテトラメチレンホスホン酸、マロン酸、コハク酸、ジメルカプトコハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、ポリカルボン酸、トリカルバリル酸、プロパン−1,1,2,3−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロメリット酸、オキシカルボン酸、グリコール酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、ジグリコール酸、サリチル酸、没食子酸、ポリフェノール、カテコール、ピロガロール、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、複素環式化合物、8−オキシキノリン、ジケトン、α−ジピリジルアセチルアセトン、これらの塩及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項9】
前記第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドが、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項10】
(a)アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー;
(b)4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド;
(c)シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタン酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、アラニン、シスチンからなる群から選択される、有機酸;
(d)アセチレン性ジオール界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリ(アルキレンオキシド)界面活性剤、フルオロケミカル界面活性剤、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、直鎖アルキルベンゼンスルホナート(LAS)、第二級アルキルベンゼンスルホナート、脂肪族アルコールスルファート(FAS)、第二級アルカンスルホナート(SAS)、及びいくつかの場合に脂肪族アルコールエーテルスルファート(FAES)、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、界面活性剤;
(e)分散剤;
(f)有機溶媒;
(g)消泡剤;
(h)水;並びに
(i)キレート剤
の成分からなり、ただし前記(e)〜(g)は含まなくてもよく、かつ前記(b)第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドが水酸化コリンの場合には、アセチレン性界面活性剤を含まない、水系洗浄配合物。
【請求項11】
前記ポリマーが、1ppb〜10wt%の濃度で存在する、請求項10の配合物。
【請求項12】
前記4超の炭素原子を有する第四級アンモニウムヒドロキシドが、分子構造中に16未満の炭素原子を有する、請求項10の配合物。
【請求項13】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(NHEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、エタノールジグリシナート、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、メチルジホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、エチリデン−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリジン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビスメチレンホスホン酸、ドデシルアミノビスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及び1,2−プロパンジアミンテトラメチレンホスホン酸、マロン酸、コハク酸、ジメルカプトコハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、ポリカルボン酸、トリカルバリル酸、プロパン−1,1,2,3−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロメリット酸、オキシカルボン酸、グリコール酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、ジグリコール酸、サリチル酸、没食子酸、ポリフェノール、カテコール、ピロガロール、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、複素環式化合物、8−オキシキノリン、ジケトン、α−ジピリジルアセチルアセトン、これらの塩及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項11の配合物。
【請求項14】
(a)シュウ酸;
(b)第二級アルカンスルホン酸;
(c)アセチレン系界面活性剤;
(d)水酸化コリンではない、4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド;
(e)アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー;及び
(f)水
からなるCMP後洗浄配合物。
【請求項15】
1〜6wt%のシュウ酸、0.1〜2wt%の第二級アルカンスルホナート、0.05〜1.5wt%のアセチレン系界面活性剤、0.1〜3wt%のアクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー;1〜7の範囲内にpHを調整するための4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド、残部の水からなる、請求項14の配合物。
【請求項16】
使用時に1:0〜1:10000の範囲内で水を用いて希釈される、請求項14の配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体デバイスの製造に関わる工程において、有機物/無機物の残渣を除去するために様々な工程で洗浄を必要とする。半導体製造プロセスにおいて望まれる、残渣の除去を改良するべき洗浄としては、CMP(化学的機械的平坦化)後洗浄、フォトレジスト灰分除去、フォトレジスト除去、後工程のパッケージングにおける様々な用途(例えばプリプローブ(pre−probe)ウェハー洗浄、ダイシング、研磨等)が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
銅配線のCMP後洗浄において、改良された洗浄に関して特別な必要性が存在している。半導体ウェハーは、銅配線を有し、この銅配線はウェハー上の能動素子を互いに接続して、機能性チップを形成する。銅配線は、まず誘電体に溝を形成することにより形成される。典型的には、薄い金属性のバリアを、誘電体層上に堆積して、誘電体への銅の拡散を防止する。これに、溝への銅の堆積が続く。銅の堆積後に、ウェハーを化学的機械的平坦化(CMP)と呼ばれるプロセスを用いて研磨する。このプロセスは、過剰な銅の堆積物の除去をもたらし、そして後のフォトリソグラフィー工程のために表面を平坦化する。CMP工程後に、ウェハー表面は、多数の欠陥を有し、それが表面から洗浄されないと、これは結果として最終製品として不良品のチップをもたらすであろう。CMPプロセス後の典型的な欠陥は、無機粒子、有機残渣、化学的残渣、ウェハー表面とCMPスラリーとの相互作用に起因するウェハー表面上の反応生成物、及び表面上の高レベルの望まない金属である。研磨ステップ後に、最も一般的にはブラシスクラブプロセス(brush scrubbing process)を用いて、ウェハーを洗浄する。このプロセスの間で、洗浄化学物質がウェハー上に提供されて、ウェハーを洗浄する。また、後にウェハーを、脱イオン(DI)水で洗浄し、その後乾燥プロセスを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−181494号公報
【特許文献2】米国特許第6,440,856号公報
【特許文献3】米国特許第7,497,966号公報
【特許文献4】米国特許第7,427,362号公報
【特許文献5】米国特許第7,163,644号公報
【特許文献6】国際出願番号PCT/US2007/061588号
【特許文献7】米国特許第7,396,806号公報
【特許文献8】米国特許第6,730,644号公報
【特許文献9】米国特許第7,084,097号公報
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0129078号公報
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0067164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全ての従来技術は、本発明が、本発明の特定のポリマー及び塩基を用いることで示した残渣の除去能力についての改良を予期できなかった。本発明における配合物は、上述のCMP研磨プロセスにより残される残渣の除去について、非常に効果的であることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、洗浄される表面と水系配合物とを接触させることを含む、半導体製造プロセスにおける残渣を除去するための洗浄方法であって、その水系配合物が、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートのコポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー、界面活性剤、並びに4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド、及び界面活性剤が非アセチレン性界面活性剤の場合の水酸化コリンからなる群から選択される第四級アンモニウムヒドロキシドを含有する方法である。
【0006】
また、本発明は、
(a)アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートコポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー;
(b)4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド、及びアセチレン性界面活性剤の不在の場合の水酸化コリンからなる群から選択される第四級アンモニウムヒドロキシド
を含む水系配合物であって、CMP後洗浄、フォトレジスト灰分除去、フォトレジスト除去、後工程のパッケージング、プリプローブウェハー洗浄、ダイシング、研磨、及び光起電性基板の洗浄からなる群から選択されるプロセスの後に、半導体基板を洗浄することができる配合物である。
【0007】
好ましい実施態様において、本発明は、下記の成分を含むCMP後洗浄配合物である:
(a)シュウ酸;
(b)第二級アルカンスルホン酸界面活性剤;
(c)アセチレン系界面活性剤;
(d)1.5〜4の範囲のpHを与えるための、4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシド;
(e)アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー又はこれらの混合物;及び
(f)水。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、下記の成分を含むCMP後洗浄配合物である:
(a)エチレンジアミン四酢酸(EDTA);
(b)第二級アルカンスルホン酸界面活性剤;
(c)第二級アルコールエトキシレート界面活性剤;
(d)7〜12のpHを与えるための、4超の炭素原子を有する第四級アンモニウムヒドロキシド;
(e)アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー又はこれらの混合物;及び
(f)水。
【0009】
さらなる別の実施態様において、本発明は、下記の成分を含むCMP後洗浄配合物である:
(a)エチレンジアミン四酢酸;
(b)第二級アルカンスルホン酸界面活性剤;
(c)非アセチレン系界面活性剤;
(d)水酸化コリン;
(e)アクリルアミド−メチル−プロパンスルホナートポリマー、アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー;及び
(f)水。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、洗浄配合物中で、最小のサイズの塩基と連携した、スルホン酸基及びアクリル酸基を有するコポリマーを含むポリマーの使用に関する。より詳しくは、これらのコポリマーは、モノマーの一つとしての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸モノマーと、他のモノマーとしてのアクリル酸とを重合することにより形成される。これらのタイプのポリマーは、度々AA−AMPSポリマー(アクリル酸−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コポリマー)と呼ばれる。アクリル酸を、メタクリル酸、マレイン酸、スチレン、イタコン酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等を含む他のモノマーにより代用してもよい。適切な塩基を有するCMP後配合物へのポリマーの添加は、洗浄性能に大きな改良をもたらす。洗浄の改良の機構は、未だ検討中である。一つのあり得る機構は、表面での物理的な吸収である可能性があり、これは除去された粒子及び他の残渣の再堆積を防ぐであろう。他の一つのあり得る機構は、残渣(有機物)への強い親和性であり、それにより洗浄プロセスの間にリフトオフへの駆動力を増加することがある。
【0011】
好ましいポリマーは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アクリル酸コポリマーである。このポリマーは、Dequest P9030(CAS: 40623−75−4)の商用名の下で入手可能であり、Thermphos USA Corp.(アニストン、アラバマ州)により提供される(AA−AMPS)。そして、これは、洗浄性能において特に効果的であることが分かっている。これらのポリマーは、典型的には塩(Na又はK)として入手可能であるが、エレクトロニクス産業のような重大な用途での使用に関して、これらのポリマーは、適切な技術(例えばイオン交換)を用いて精製されて、金属イオンが除去され、そして金属イオンは非金属イオン(例えばH)で置換される。
【0012】
これらのタイプのポリマー又はこれらの混合物を、0.01〜10wt%の濃度で洗浄配合物に添加することができる。好ましい濃度範囲は、0.1〜5wt%である。この配合物を、使用時に溶媒(例えば水)の添加を通じて、1〜10000倍に希釈することができる。あるいは、この配合物を、使用時の希釈なしで直接使用するために、希釈された形態で供給しても良い。
【0013】
そのようなポリマーを含む化学物質を、表面から残渣の除去を必要とする様々な洗浄用途で使用することができる。その残渣は、無機物、又は有機物の性質であってよい。これらのポリマーを含む配合物が効果的となるであろうプロセスの例としては、CMP後洗浄、フォトレジスト灰分除去、フォトレジスト除去、及び後工程のパッケージングにおける様々な用途(例えばプリプローブウェハー洗浄、ダイシング、研磨等)、並びに光起電用途のためのウェハーの洗浄も挙げられる。塩基は、pHを増加させ、その洗浄溶液のpHは、0.25〜13の範囲となることができる。
【0014】
本発明の重要な態様は、上記ポリマーと塩基との組み合わせであり、その塩基は、特定の分子サイズを有し、且つ配合物の他の成分と適合性を有する。この塩基は、pHを所望の水準に調整する。本発明は、4超の炭素原子を有する第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドを上記のポリマーとの組み合わせで使用する場合に、予期しない改良を示す。4超の炭素原子を有する第四級アンモニウム塩基の例としては、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、及びジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。本発明の目的に関して、第四級アルキルアンモニウムヒドロキシドという用語を、アンモニウムヒドロキシドに結合した全ての基が、アルキル又は水素のいずれかである、ということを意味するとみなす。これは、アルコール及び他の非アルキル基又は水素基を除外する。好ましくは、塩基は、pHの範囲を調整するのに十分な量で添加される。
【0015】
非アセチレン性アルコール界面活性剤を使用する限り、水酸化コリンの形で塩基を使用することも可能である。水酸化コリンは、本発明の配合物において、アセチレン性ジオール界面活性剤と適合しないことが分かっている。この非適合性は、下記の実施例6で評価される。水酸化コリンを、アセチレン性ジオール界面活性剤の不在の下で使用すると、水酸化コリンは許容可能となる。
【0016】
CMP後洗浄配合物に関して、洗浄性能を支援する追加の成分が存在してもよい。一般的なタイプの添加剤を、以下に挙げる。
【0017】
有機酸又はこれらの混合物:有機酸は、幅広い範囲の酸から選択することができ、限定されないが、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタン酸、アスコルビン酸、蟻酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、アラニン、シスチン等を挙げることができる。これらの酸の塩も使用することができる。酸/塩の混合体も同様に使用することができる。有機酸は、微量金属の除去を改良し、有機物残渣を除去し、pHを調整し、又は金属のコロージョンを減少するために機能する。酸性pHでの好ましい有機酸は、シュウ酸である。アルカリ性pHでの好ましい有機酸は、エチレンジアミン四酢酸である。この洗浄化学物質は、1ppm〜30wt%の酸/塩基を含むことができる。好ましい酸濃度は、10ppm〜5wt%の範囲である。
【0018】
界面活性剤:界面活性剤は、洗浄化学物質中で用いられて、洗浄される表面の濡れ性を改良し、且つ表面上に再堆積させることなく表面から残渣を除去するのを支援する。界面活性剤は、表面上のウォーターマークを減少することもできる。これは、洗浄の後の乾燥段階の間に形成される欠陥である。アニオン性/カチオン性/非イオン性/両性イオン性又はこれらの混合物のあらゆるタイプの界面活性剤を使用することができる。この界面活性剤の選択は、濡れ特性、起泡性、洗浄性、すすぎ性等を含む、様々な基準に依存する場合がある。界面活性剤の組み合わせを用いることができ、この場合には、一つの界面活性剤は、比較的溶解しない疎水性の界面活性剤分子を可溶化するために用いられる。
【0019】
これらの実施態様において、界面活性剤濃度は、1ppb〜10000ppm、好ましくは1ppm〜5000ppmの範囲となることができる。界面活性剤の例としては、シリコーン界面活性剤、ポリ(アルキレンオキシド)界面活性剤、及びフルオロケミカル界面活性剤が挙げられる。処理組成物中での使用に関して適切な非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート(例えばTRITON(商標)X−114、X−102、X−45、X−15)、及びアルコールエトキシレート(例えばBRIJ(商標)56(C1633(OCHCH10OH)(ICI)、BRIJ(商標)58(C1633(OCHCH20OH)(ICI))が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホナート(LAS)、第二級アルキルベンゼンスルホナート、脂肪族アルコールスルファート(FAS)、第二級アルカンスルホナート(SAS)、及びいくつかの場合に脂肪族アルコールエーテルスルファート(FAES)も挙げることができる。さらに典型的な界面活性剤としては、アセチレン性ジオール型の界面活性剤、アルコール(第一級及び第二級)エトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミド(glucamide)、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、又は参照文献(McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents、North American Edition for the Year 2000、Manufacturers Confectioners Publishing Co.により出版、グレンロック、ニュージャージー州)で提供される他の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1ppm〜10wt%の濃度で用いられてもよい。
【0020】
任意のキレート剤:キレート剤は、金属イオンを互いに、比較的に選択的である場合があるので、複数のキレート剤又はそれらの塩を、本明細書に記載した組成物中で用いることができる。これらのキレート剤は、基板表面上の金属イオン汚染物に結合することができ、そしてそれらをこの組成物中に溶解することができると考えられている。さらに、ある種の実施態様において、キレート剤は、これらの金属イオンをこの組成物中に保持し、そしてイオンが基板表面上に再堆積するのを防ぐことができるべきである。使用することができる適切なキレート剤の例としては、限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(NHEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチルクレントリアミン五酢酸(DPTA)、エタノールジグリシナート、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、メチルジホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、エチリデン−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリジン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビスメチレンホスホン酸、ドデシルアミノビスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及び1,2−プロパンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はアンモニウム塩、有機アミン塩、マロン酸、コハク酸、ジメルカプトコハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、ポリカルボン酸(例えばトリカルバリル酸)、プロパン−1,1,2,3−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロメリット酸、オキシカルボン酸(例えばグリコール酸)、β−ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、ジグリコール酸、サリチル酸、没食子酸、ポリフェノール(例えばカテコール)、ピロガロール、リン酸(例えばピロリン酸、ポリリン酸)、複素環式化合物(例えば8−オキシキノリン)、並びにジケトン(例えばα−ジピリジルアセチルアセトン)が挙げられる。
【0021】
任意の分散剤及びポリマー。
【0022】
任意の有機溶媒。
【0023】
任意の消泡剤。
【実施例】
【0024】
実施例1:
表1の配合物を調製した。
【0025】
【表1】
【0026】
これらを、異なる塩基を用いて作成した配合物中でのAA−AMPSDequest P9030)ポリマーの効果を示すために配合した。これらの配合物を、洗浄試験のために脱イオン水を用いて1:50の比で希釈した。
【0027】
ブランケットの銅のウェハーを、IPEC472CMPツールで、2工程プロセスを用いて研磨した。その2工程プロセスは、(1)Cu3900CMPスラリー(DuPont Air Products Nanomaterials,LLC、テンペ、アリゾナ州)を用いた、研磨機のプラテン1上での1分の研磨、及び(2)DP6545−MO5バリアスラリー(DuPont Air Products Nanomaterials,LLC、テンペ、アリゾナ州)を用いた、研磨機のプラテン2上での1分の研磨、である。ウェハーを、Ontrak DSS200ウェハースクラバーツールで洗浄した。この検討において、ウェハーを、第一のブラシボックス(brush box)において、20秒の化学薬品の提供、及び30秒の脱イオン水のすすぎを行った。第二のブラシボックスにおいて、ウェハーを追加の5秒の化学薬品の提供、及び45秒の脱イオン水のすすぎを行った。
【0028】
AA−AMPS配合物A〜Fは、その構造中に4超の炭素原子を有する第四級アンモニウムヒドロキシドを用いて配合されている。これらは、AA−AMPSポリマーの添加で、欠陥性について非常に大きな改良を示す。
【0029】
他の塩基、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びアンモニウムヒドロキシドを用いると、AA−AMPSポリマーの添加を用いた欠陥性の改良は、より小さくなり、且つ同時に、AA−AMPSの添加を用いてもその欠陥性は、比較的高くなる。
【0030】
水酸化カリウムを含む配合物は、低い残渣の結果を与えるが、水酸化カリウムは、残留カリウムイオンの誘電特性への有害な影響の可能性のために、半導体製造プロセスにおいては望まれない。
【0031】
実施例2:
表2の配合物を、異なるタイプの界面活性剤でのAA−AMPS含有配合物を評価するために作った。これらの配合物を、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドの塩基を用いて作って、pH2.5を得た。
【0032】
【表2】
【0033】
これらの配合物を、洗浄試験のために1:50の比で脱イオン水を用いて希釈した。ブランケットの銅のウェハーを、IPEC472CMP研磨ツールで、2工程プロセスで研磨した。その2工程プロセスは、(1)Cu3900CMP研磨スラリーを用いた研磨機の第一のプラテン上での1分の研磨、及び(2)CMP6545CMP研磨バリアスラリーを用いた研磨機の第二のプラテン上での1分の研磨である。ウェハーを、Ontrak DSS200ウェハースクラバーで洗浄した。この検討において、ウェハーを、第一のブラシボックス(brush box)において、20秒の化学薬品の提供、及び30秒の脱イオン水のすすぎを行った。第二のブラシボックスにおいて、ウェハーを追加の5秒の化学薬品の提供、及び45秒の脱イオン水のすすぎを行った。このウェハーを、Orbot Duo736ウェハー検査ツールを用いて検査した。ウェハー当たり100個の欠陥をランダムに精査した。50枚の欠陥画像中に発見された残渣欠陥の数を、ウェハー上で発見された合計の欠陥数に正規化し、表2に示した。
【0034】
その結果は、幅広い範囲の界面活性剤で、界面活性剤を使用していない場合も同様に、優れた低い欠陥性が達成可能であることを示している。
【0035】
実施例3
表3の配合物を、洗浄性能にpHの影響を与えるために作った。pH調整は、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを用いて行った。
【0036】
【表3】
【0037】
銅ウェハーの研磨、洗浄、及び解析に関して、その方法は、実施例2と同じだった。結果は、幅広いpHの範囲に渡って、非常に低い欠陥性を示した。
【0038】
実施例4
表4の配合物を異なる酸を用いて作った。テトラエチルアンモニウムヒドロキシドを、pH調整に使用した。クエン酸を、ヒドロキシカルボン酸の例として選択し、且つエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を、アミノカルボン酸の例として選択した。
【0039】
【表4】
【0040】
銅ウェハーの研磨、洗浄、及び解析に関して、その方法は、実施例2と同じだった。表4の結果は、様々な有機酸に関して、非常に低い欠陥性が可能であることを示している。
【0041】
実施例5
次の配合物(C〜E)を、pH調整剤としてテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを用いて調製した。これらの配合物を、洗浄試験のために1:25の比で脱イオン水を用いて希釈した。ブランケットの銅のウェハーを、IPEC472研磨ツールで、2工程プロセスで研磨した。その2工程プロセスは、(1)Cu3900CMP研磨スラリーを用いた研磨機の第一のプラテン上での1分の研磨、及び(2)DP6545−MO5CMP研磨バリアスラリーを用いた研磨機の第二のプラテン上での1分の研磨である。ウェハーを、Ontrak DSS200ウェハースクラバーで洗浄した。この検討において、ウェハーを、第一のブラシボックス(brush box)において、20秒の化学薬品の提供、及び30秒の脱イオン水のすすぎを行った。第二のブラシボックスにおいて、ウェハーを追加の5秒の化学薬品の提供、及び45秒の脱イオン水のすすぎを行った。このウェハーを、Orbot Duo736ウェハー検査ツールを用いて検査した。ウェハー当たり100個の欠陥をランダムに精査した。100枚の欠陥画像中に発見された残渣欠陥の数を、ウェハー上で発見された合計の欠陥数に正規化し、表5に示した。
【0042】
【表5】
【0043】
AA−AMPSDequest P9030)の濃度の増加が、結果として改良された残渣の除去をもたらすことは、非常に明らかである。
【0044】
実施例6
水酸化コリンは、AA−AMPSDequest P9030)を含有するCMP後配合物を配合するための塩基として、特別なケースを提示する。AA−AMPS又は類似のアクリル系/スルホン系ポリマーの組み合わせて用いられる場合に効果的な塩基であるが、水酸化コリンは、アセチレン性ジオール界面活性剤(例えばDynol 604)と適合しないことが分かっている。アセチレン性ジオール界面活性剤を以下に明記する配合物中に添加した場合、その溶液は、沈殿を示して濁った。そして、その濁りは持続し、透明にはならなかった。反応及び沈殿物形成に対応するこの不安定性及び濁りは、商用の配合物及び在庫の有効期間の考慮に関して許容できない。以下の表6に結果を示す。
【0045】
【表6】