特許第5749476号(P5749476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749476
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】空気電池用外装ケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20150625BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M2/02 K
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-262734(P2010-262734)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2012-113993(P2012-113993A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅規
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−505355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0051620(US,A1)
【文献】 特表2013−506950(JP,A)
【文献】 特開2006−019246(JP,A)
【文献】 特開2003−007357(JP,A)
【文献】 特開2004−288572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側樹脂フィルム層と、内側樹脂フィルム層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む外装材を、成形部と開口孔形成用刃部とを有した成形ダイスを用いて成形することによって、該成形ダイスの1ショットで前記外装材をセラミック製隔膜と負極を収容し得る立体形状に成形すると共に開口孔の形成を行って立体成形体を得る成形工程と、
下側シール盤の上面に設けられた収容凹部にセラミック製隔膜を載置すると共に、前記立体成形体を前記下側シール盤の上面に載置して、該立体成形体の開口孔の周縁部と前記収容凹部上のセラミック製隔膜の周縁部とが重なり合うように配置し、この状態で上側シール盤と下側シール盤とで挟圧することによって、前記立体成形体の開口孔の周縁部と前記セラミック製隔膜の周縁部とをヒートシールして外装ケースを得るヒートシール工程と、を含むことを特徴とする空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項2】
前記内側樹脂フィルムが、酸変性ポリオレフィンフィルムである請求項1に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項3】
前記上下一対のシール盤によるヒートシールにおいて、上側シール盤を下降させて前記下側シール盤の上にある立体成形体に接触する際のシール開始圧力が0MPaを超えて4MPa以下であり、前記立体成形体と前記セラミック製隔膜とをヒートシールする時のシール圧力が2MPa〜8MPaである請求項1または2に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項4】
前記セラミック製隔膜を前記下側シール盤の上面の収容凹部に載置した状態時において、前記セラミック製隔膜の上面と前記下側シール盤の上面とが面一である、又は前記セラミック製隔膜の上面は前記下側シール盤の上面よりも0mmを超えて0.3mm以下低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項5】
前記下側シール盤として、前記立体成形体との接触面に位置決め用テーパー面が形成されたものを用い、該下側シール盤の位置決め用テーパー面の最上位置に前記立体成形体の成形傾斜面の最上位置を一致させた態様で、前記立体成形体を前記下側シール盤の上面に載置する請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項6】
前記空気電池用外装ケースが、リチウム−空気電池用外装ケースである請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の空気電池用外装ケースの製造方法に用いられる成形ダイスであって、
外装材を立体形状に成形するための成形部と、
前記成形部より内方位置に設けられた開口孔形成用刃部と、
前記成形部より外方位置に設けられたトリミング用刃部と、を備えることを特徴とする空気電池用外装ケース製造用成形ダイス。
【請求項8】
請求項1に記載の空気電池用外装ケースの製造方法に用いられるヒートシール装置であって、
上側シール盤と、
前記上側シール盤の下方位置に配置された下側シール盤とを備え、
前記下側シール盤の上面に収容凹部が形成されていることを特徴とする空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【請求項9】
前記収容凹部は、平面視矩形状である請求項8に記載の空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【請求項10】
前記下側シール盤の上面の周縁部に位置決め用テーパー面が形成されている請求項8または9に記載の空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いエネルギー密度が得られるリチウム−空気電池などの空気電池に用いられる外装ケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の増加や、原油価格の激しい変動等を背景にして、自動車等のエネルギー源をガソリンから電気エネルギーに転換する研究開発が活発に行われている。電気自動車の実用化は急速に進んでおり、電池の高性能化、低コスト化が期待されている。現在最も普及している充電可能な電池は、リチウムイオン電池であるが、このリチウムイオン電池は、電池容量が小さいことから、現在急速に量産化が進んでいる電気自動車に対しては長距離走行が困難であり、そのため大量の電池を搭載することが必要であり、このためにリチウムイオン電池では車体価格が大きく上昇するという問題があった。
【0003】
このような電池容量不足を解消するための次世代電池としてリチウム−空気電池が注目されている。従来のリチウム−空気電池では、正極の空気側に固体の反応生成物(Li2O)が蓄積して空気極のカーボン細孔を目詰まりさせる結果、放電が止まる恐れがあり、また空気中の水分が金属リチウムと反応すると水素ガスが発生する恐れがあるし、更に空気中の窒素が金属リチウムと反応して放電を妨害する可能性がある、等の様々な問題があった。
【0004】
そこで、これらの諸問題を解決できるリチウム−空気電池として、負極と正極の間にリチウムイオンのみを通過させるセラミック製隔膜を配置した構成のリチウム−空気電池が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
上記リチウム−空気電池では、負極の金属リチウム等を外装ケース内に収容している。この外装ケースは、アルミニウム箔の両面に樹脂フィルムが積層されてなる外装材を容器形状に立体成形し、該立体成形体の中央の天面にセラミック製隔膜を取り付けるための開口孔を設け、該立体成形体の開口孔の内周縁部にセラミック製隔膜を接着することで構成されている。内部の負極と、正極となる外部空気との間で、前記セラミック製隔膜を介してリチウムイオンのみが通過するものとなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−505355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記リチウム−空気電池の単位重量あたりのエネルギーをより高くするには、容器状立体成形体の天面に開口孔を可能な限り大きく形成する(開口面積を大きくする)ことが重要である。
【0008】
また、立体成形体の開口孔の内周縁部に接着されるセラミック製隔膜の有効面積を最大限大きく確保するためには、開口孔の内周縁部とセラミック製隔膜の周縁部との接着幅(ヒートシール幅)を可能な限り小さく設計することが重要である。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、セラミック製隔膜を取り付けるための開口孔を可能な限り大きく形成できると共に、立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とのヒートシール幅を可能な限り小さくすることができる空気電池用外装ケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究した結果、
a)セラミック製隔膜を取り付けるための開口孔を可能な限り大きく形成するためには、立体成形体の平面視での外形形状に対して同心(同一重心)の開口孔を精度高く形成するようにすれば良いこと
b)立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とのヒートシール幅を可能な限り小さくするには、立体成形体の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜を精度高く同心(同一重心)で接着(ヒートシール)すれば良いこと
を見出すに至り、本発明を完成するに至った。即ち、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]外側樹脂フィルム層と、内側樹脂フィルム層と、これら両層間に配設された金属箔層とを含む外装材を、成形部と開口孔形成用刃部とを有した成形ダイスを用いて成形することによって、該成形ダイスの1ショットで前記外装材を空気電池本体部を収容し得る立体形状に成形すると共に開口孔の形成を行って立体成形体を得る成形工程と、
下側シール盤の上面に設けられた収容凹部にセラミック製隔膜を載置すると共に、前記立体成形体を前記下側シール盤の上面に載置して、該立体成形体の開口孔の周縁部と前記収容凹部上のセラミック製隔膜の周縁部とが重なり合うように配置し、この状態で上側シール盤と下側シール盤とで挟圧することによって、前記立体成形体の開口孔の周縁部と前記セラミック製隔膜の周縁部とをヒートシールして外装ケースを得るヒートシール工程と、を含むことを特徴とする空気電池用外装ケースの製造方法。
【0012】
[2]前記内側樹脂フィルムが、酸変性ポリオレフィンフィルムである前項1に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【0013】
[3]前記上下一対のシール盤によるヒートシールにおいて、上側シール盤を下降させて前記下側シール盤の上にある立体成形体に接触する際のシール開始圧力が0MPaを超えて4MPa以下であり、前記立体成形体と前記セラミック製隔膜とをヒートシールする時のシール圧力が2MPa〜8MPaである前項1または2に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【0014】
[4]前記セラミック製隔膜を前記下側シール盤の上面の収容凹部に載置した状態時において、前記セラミック製隔膜の上面と前記下側シール盤の上面とが面一である、又は前記セラミック製隔膜の上面は前記下側シール盤の上面よりも0mmを超えて0.3mm以下低いことを特徴とする前項1〜3のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【0015】
[5]前記下側シール盤として、前記立体成形体との接触面に位置決め用テーパー面が形成されたものを用い、該下側シール盤の位置決め用テーパー面の最上位置に前記立体成形体の成形傾斜面の最上位置を一致させた態様で、前記立体成形体を前記下側シール盤の上面に載置する前項1〜4のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【0016】
[6]前記空気電池用外装ケースが、リチウム−空気電池用外装ケースである前項1〜5のいずれか1項に記載の空気電池用外装ケースの製造方法。
【0017】
[7]外装材を立体形状に成形するための成形部と、
前記成形部より内方位置に設けられた開口孔形成用刃部と、
前記成形部より外方位置に設けられたトリミング用刃部と、を備えることを特徴とする空気電池用外装ケース製造用成形ダイス。
【0018】
[8]上側シール盤と、
前記上側シール盤の下方位置に配置された下側シール盤とを備え、
前記下側シール盤の上面に収容凹部が形成されていることを特徴とする空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【0019】
[9]前記収容凹部は、平面視矩形状である前項8に記載の空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【0020】
[10]前記下側シール盤の上面の周縁部に位置決め用テーパー面が形成されている前項8または9に記載の空気電池用外装ケース製造用ヒートシール装置。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、外装材を、成形部と開口孔形成用刃部とを有した成形ダイスを用いて1ショットで成形するから、立体成形体の平面視での外形形状に対して同心(同一重心)の開口孔を精度高く形成することができ、これによりセラミック製隔膜を取り付けるための開口孔を可能な限り大きく形成することができる。従って、本製造方法で得られた外装ケースを用いて空気電池を構成すれば、単位重量あたりのエネルギーの大きい空気電池を提供できる。また、成形ダイスの1ショットで外装材を立体形状に成形できると共に開口孔の形成も同時にできるので、生産性に優れている。
【0022】
更に、下側シール盤の上面に設けられた収容凹部にセラミック製隔膜を載置すると共に、立体成形体を下側シール盤の上面に載置して、該立体成形体の開口孔の周縁部と収容凹部上のセラミック製隔膜の周縁部とが重なり合うように配置し、この状態で上側シール盤と下側シール盤とで挟圧するから、立体成形体の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜を精度高く同心(同一重心)でヒートシールでき、これにより立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とのヒートシール幅を可能な限り小さくできる。従って、本製造方法で得られた外装ケースは、セラミック製隔膜の有効面積が最大限大きく確保されるので、該外装ケースを用いて空気電池を構成すれば、単位重量あたりのエネルギーのより大きい空気電池を提供できる。
【0023】
[2]の発明では、内側樹脂フィルムが、酸変性ポリオレフィンフィルムであるから、ヒートシールによる接着性能をさらに向上させることができる。
【0024】
[3]の発明では、上下一対のシール盤によるヒートシールにおいて、上側シール盤を下降させて下側シール盤の上にある立体成形体に接触する際のシール開始圧力が0MPaを超えて4MPa以下であり、立体成形体とセラミック製隔膜とをヒートシールする時のシール圧力が2MPa〜8MPaであるから、セラミック製隔膜に割れを生じさせることなく、立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とを十分な接着力で接着することができる。
【0025】
[4]の発明では、セラミック製隔膜を下側シール盤の上面の収容凹部に載置した状態時において、セラミック製隔膜の上面と下側シール盤の上面とが面一である、又はセラミック製隔膜の上面は下側シール盤の上面よりも0mmを超えて0.3mm以下低いように設定するから、セラミック製隔膜に割れを生じさせることなく、立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とを十分な接着力で接着することができる。
【0026】
[5]の発明では、下側シール盤の位置決め用テーパー面の最上位置に立体成形体の成形傾斜面の最上位置を一致させた態様で、立体成形体を下側シール盤の上面に載置してヒートシールを行うから、立体成形体の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜をさらに精度高く同心(同一重心)でヒートシールすることができる。
【0027】
[6]の発明では、セラミック製隔膜を取り付けるための開口孔が可能な限り大きく形成されると共に、セラミック製隔膜の有効面積が最大限大きく確保されたリチウム−空気電池用外装ケースを製造できる。
【0028】
[7]の発明では、1つの成形ダイスに、成形部、開口孔形成用刃部及びトリミング用刃部が設けられているから、外装材の立体成形体の平面視での外形形状に対して同心(同一重心)の開口孔を精度高く形成することができる。
【0029】
[8]の発明では、下側シール盤の上面に収容凹部が形成されているから、該収容凹部にセラミック製隔膜を載置してヒートシールすることにより、外装材の立体成形体の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜を精度高く同心(同一重心)でヒートシールでき、これにより立体成形体の開口孔の周縁部とセラミック製隔膜の周縁部とのヒートシール幅を可能な限り小さくできる。
【0030】
[9]の発明では、収容凹部は平面視矩形状であるから、空気電池用外装ケースにおけるセラミック製隔膜の有効面積を最大限大きく確保できる利点がある。
【0031】
[10]の発明では、下側シール盤の上面の周縁部に位置決め用テーパー面が形成されているから、該位置決め用テーパー面の最上位置に立体成形体の成形傾斜面の最上位置を一致させた態様でヒートシールを行うことにより、外装材の立体成形体の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜をさらに精度高く同心(同一重心)でヒートシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の製造方法で用いる外装材を示す断面図である。
図2】本発明の製造方法の成形工程の前半を工程順次に従って示す断面図であり、(A)は成形ダイスと成形パンチを離間させた状態の成形準備状態、(B)は成形ダイスを下降させて成形している状態、をそれぞれ示す。
図3】本発明の製造方法の成形工程の後半を工程順次に従って示す断面図であり、(A)はさらに成形ダイスを下降させてトリミングしている状態、(B)はさらに成形ダイスを下降させて開口孔を形成せしめた状態、をそれぞれ示す。
図4】本発明の製造方法の成形工程直後の状態、即ち1ショットを終えて成形ダイスを成形パンチから離間させた成形終了状態を示す。
図5】本発明の製造方法のヒートシール工程の前半を工程順次に従って示す断面図であり、(A)は上下一対のシール盤を離間させた状態のヒートシール準備状態、(B)は立体成形体及びセラミック製隔膜を下側シール盤にセットした状態、をそれぞれ示す。
図6】本発明の製造方法のヒートシール工程の後半を工程順次に従って示す断面図であり、(A)は上下一対のシール盤で挟圧してヒートシールしている状態、(B)はヒートシールを終了して上下一対のシール盤を離間させた終了状態、をそれぞれ示す。
図7】本発明の製造方法で得られた外装ケースを示す斜視図である。
図8】本発明の製造方法で得られた外装ケースを用いて構成されたリチウム−空気電池の一実施形態を示す概略断面図である。
図9】本発明の製造方法で得られた外装ケースを用いて構成されたリチウム−空気電池の他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る空気電池用外装ケースの製造方法で用いる外装材8について説明する。前記外装材8は、外側樹脂フィルム層3と、内側樹脂フィルム層5と、これら両層間に配設された金属箔層4とを含む構成である(図1参照)。前記金属箔層4と内側樹脂フィルム層5との間に中間フィルム層が設けられた構成を採用してもよい。
【0034】
前記外側樹脂フィルム層3としては、耐熱性に優れた樹脂フィルムが用いられ、中でも、延伸ポリエステルフィルム、延伸ナイロンフィルムが好適に用いられる。前記ポリエステル(樹脂)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。前記外側樹脂フィルム層3の厚さは、6〜50μmが一般的であり、特に12〜30μmであるのが好ましい。
【0035】
前記金属箔層4としては、水蒸気等のガスの侵入を防止できると共に柔軟性のある金属箔が用いられ、具体的には、例えばアルミニウム箔(特に軟質アルミニウム箔)等が挙げられる。前記金属箔層4の厚さは、10〜150μmが一般的であり、特に15〜80μmであるのが好ましい。
【0036】
前記内側樹脂フィルム層5としては、熱接着性に優れた樹脂フィルムが用いられ、中でも、酸変性ポリオレフィン(酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレン等)が好適に用いられる。前記内側樹脂フィルム層5の厚さは、10〜100μmが一般的であり、特に20〜50μmであるのが好ましい。
【0037】
[成形工程]
次に、本発明に係る製造方法の成形工程について説明する。成形工程では、図2(A)に示すような成形装置を使用する。この成形装置は、上型のプレート15の下面に固定された成形ダイス10と、下型の上面に配置された外側切り刃22と、成形パンチ20と、しわ押さえ部23と、を備えている。
【0038】
前記成形ダイス10は、図2(A)に示すように、成形部11と、該成形部11より内方位置に設けられた開口孔形成用刃部12と、前記成形部11より外方位置に設けられたトリミング用刃部13と、を備えている。前記成形部11にて外装材8を立体形状に成形する。
【0039】
前記成形パンチ20と前記しわ押さえ部23は、前記成形ダイス10の下方への押し込み動作にあわせて下方移動できるように構成されている。
【0040】
前記しわ押さえ部23は、下方移動して成形パンチ20に当接した後は、該成形パンチ20と共に一体となって更に下方移動できるように構成されている。なお、前記しわ押さえ部23及び前記成形パンチ20は、それぞれ図示しないばね機構により、図2(A)の高さ位置まで戻るように構成されている。前記下型には、内側切り刃21も設けられている(図2(A)参照)。
【0041】
しかして、図2(A)に示すように下型の上に前記外装材8を載置する。この時、外装材8の内側樹脂フィルム層5が下方を向くようにして載置する。次に、上型(プレート15)を下降させることによって図2(B)に示すようにしわ押さえ部23を下方に押し込んで、成形ダイス10の成形部11と成形パンチ20の上面との間で外装材8を挟圧して外装材8を立体形状に成形する。
【0042】
続いて、図3(A)に示すように、プレート15をさらに下降移動させることによって、しわ押さえ部23及び成形パンチ20を一体に下方に押し込んで、成形ダイス10のトリミング用刃部13と、外側切り刃22とを噛み合わせて外装材8の外周を切断して外装材8の外形形状及び大きさを調整するトリミングを行う。
【0043】
続いて、図3(B)に示すように、上型(プレート15)をさらに下降移動させることによって、しわ押さえ部23及び成形パンチ20を一体にさらに下方に押し込んで、成形ダイス10の開口孔形成用刃部12と、下型の内側切り刃21とを噛み合わせて外装材8の中央部を切断して平面視矩形状の開口孔2を形成し、空気電池本体部を収容し得る立体形状に成形された立体成形体7を得る。図2(A)から、図2(B)、図3(A)を経て、図3(B)までの一連の成形ダイス10の下降移動により成形の1ショットが完了する。
【0044】
この後、上型(プレート15)を上昇移動させると、図4に示すように、立体形状に成形されると共に平面視矩形状の開口孔2が形成された立体成形体7が得られる。
【0045】
前記成形工程では、成形部11と開口孔形成用刃部12とを有した成形ダイス10を用いて成形するから、立体成形体7の平面視での外形形状に対して同心(同一重心)の開口孔2を精度高く形成することができ、これによりセラミック製隔膜9を取り付けるための開口孔2を可能な限り大きく形成することができる。
【0046】
なお、本明細書において、前記「同心」の語は、立体成形体7の平面視での外形形状の重心と、開口孔2の平面視形状の重心とが一致することを意味するものであり、例えば立体成形体7の平面視での外形形状が矩形状であり、開口孔2の平面視形状が矩形状である場合には、立体成形体7の外形の矩形形状の2本の対角線の交点(重心)と、開口孔2の矩形形状の2本の対角線の交点(重心)とが一致することを意味する。
【0047】
前記成形工程で用いる成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば張り出し成形、深絞り成形等が挙げられる。
【0048】
前記立体成形体7(外装ケース1)の立体成形部の側面の立ち上がり角度(α)は、隔壁9の収納のし易さ及び収納位置の位置決めの一定性を満足するために、120°〜150°の範囲に設定されるのが好ましい(図6(B)参照)。また、このような角度範囲を達成するための成形ダイス10の成形部11のテーパーの角度(β)は、成形後における外装材8のスプリングバック性(形状の戻り性)を考慮して上記設計角度より5°〜35°小さい角度に設計するのが好ましい。例えば、立体成形体7(外装ケース1)の立体成形部の側面の立ち上がり角度(α)を135°にする場合には、成形ダイス10の成形部11のテーパーの角度(β)は100°〜130°に設計するのが好ましい(図2(A)参照)。
【0049】
[ヒートシール工程]
次のヒートシール工程について説明する。ヒートシール工程では、図5(A)に示すようなヒートシール装置を使用する。このヒートシール装置は、上側シール盤31と、該上側シール盤31の下方位置に配置された下側シール盤32と、を備えている。
【0050】
前記下側シール盤32の上面には平面視矩形状の収容凹部33が設けられている。前記収容凹部33は、平面視においてセラミック製隔膜9と略同一大きさで略同一形状に形成されている。また、前記下側シール盤32の上面の周縁部には位置決め用テーパー面34が形成されている(図5(A)参照)。
【0051】
しかして、図5(B)に示すように、下側シール盤32の上面の収容凹部33にセラミック製隔膜9を載置した後、さらに下側シール盤32の上面に前記立体成形体7を載置する。この時、図5(B)に示すように、下側シール盤32の位置決め用テーパー面34の最上位置34aに、立体成形体7の成形傾斜面7bの最上位置7cを一致させた態様で、収容凹部33上のセラミック製隔膜9の周縁部(外周縁部)9aに、立体成形体7の開口孔2の周縁部(内周縁部)7aが重なり合うように配置する。
【0052】
次いで、図6(A)に示すように、上側シール盤31を下降移動させて上側シール盤31と下側シール盤32とで挟圧する。この挟圧により、立体成形体7の開口孔2の周縁部7aとセラミック製隔膜9の周縁部9aとをヒートシールすることができる。図6(B)に示すように、上側シール盤31を下側シール盤32から離間させると、立体成形体7の開口孔2にセラミック製隔膜9が接着されてなる外装ケース1(図7参照)を得ることができる。
【0053】
前記ヒートシール工程では、下側シール盤32の位置決め用テーパー面34の最上位置34aに立体成形体7の成形傾斜面7bの最上位置7cを一致させた態様で、立体成形体7を下側シール盤32の上面に載置してヒートシールを行うから、立体成形体7の平面視での外形形状に対してセラミック製隔膜9を精度高く同心(同一重心)でヒートシールすることができる。
【0054】
前記ヒートシール工程において、ヒートシール幅は0.5mm〜3mmに設定されるのが好ましく、中でも1mm〜2mmに設定されるのがより好ましい。
【0055】
前記セラミック(セラミックス)製隔膜9は、該隔膜9が隔てている内部の負極51と正極となる外部空気との間で、リチウムイオンのみを通過させるものである。前記セラミック製隔膜9の厚さは100μm〜200μmであるのが好ましい。前記セラミック製隔膜9としては、特に限定されるものではないが、例えばガラスセラミック板等が挙げられる。
【0056】
前記ヒートシール工程において、上側シール盤31を下降させて下側シール盤32の上にある立体成形体7に接触する際の(接触する瞬間の)圧力(シール開始圧力)は0MPaを超えて4MPa以下であるのが好ましい。4MPa以下であることでセラミック製隔膜9が破損することを防止できる。また、その後の立体成形体7とセラミック製隔膜9とをヒートシールする時のシール圧力は2MPa〜8MPaであるのが好ましい。2MPa以上であることでシール強度を十分に得ることができると共に、8MPa以下であることでヒートシール中にセラミック製隔膜9が破損することを防止できる。なお、上記ヒートシール装置では、「シール開始圧力」と「シール圧力」は、それぞれ独立して可変に設定できるように構成されている。
【0057】
また、ヒートシール温度は、上側シール盤31、下側シール盤32ともに加熱すると短いシール時間でより安定したシール性を得ることができ、立体成形体7において耐熱性の高い外側樹脂フィルム層3の側を高温に設定し、内側樹脂フィルム層5の側を低温に設定するのが好ましい。例えば、外側樹脂フィルム層3の側を180℃〜220℃、内側樹脂フィルム層5の側を70℃〜100℃に加熱するのが好ましい。
【0058】
また、ヒートシール時間は、セラミック製隔膜9自体がヒートシール性のある材料ではないので、短時間に設定するのは接着力確保の観点から好ましくない。即ち、ヒートシール時間は、10秒〜3分に設定するのが好ましい。
【0059】
上記のようにして得られた外装ケース1(図7参照)を用いて構成されたリチウム−空気電池50の一実施形態を図8に示す。この空気電池50は、外装ケース1内に金属リチウム負極51が収容されると共に、該金属リチウム負極51に導電体52を介して接続された負極端子53が外部に突出する態様で、外装ケース1の外周縁部と、他の平面状の外装材8Xの外周縁部とがヒートシール接合された構成である。
【0060】
上記外装ケース1(図7参照)を用いて構成されるリチウム−空気電池50としては、図9に示すように、中に収容空間が形成されるように2つの外装ケース1(図7参照)を対向状態に配置して互いの外周縁部でヒートシール接合された構成を採用してもよい。即ち、上方側に配置された一方の外装ケース1内に金属リチウム負極51が収容されると共に、該金属リチウム負極51に導電体52を介して負極端子53が接続されると共に、下方側に配置された他方の外装ケース1内に金属リチウム負極51が収容されると共に、該金属リチウム負極51が導電体52を介して前記負極端子53に接続され、この負極端子53が外部に突出する態様で、一方の外装ケース1の外周縁部と、他方の外装ケース1の外周縁部とがヒートシール接合された構成(サンドイッチ型)を採用することもできる(図9参照)。
【0061】
図8、9に示すリチウム−空気電池50は、金属リチウムを負極活物質とし、空気中の酸素を正極活物質とし、充放電可能な電池である。このようにリチウム−空気電池50は、空気中の酸素を正極活物質とするものであり、正極の反応物質の質量を理論上は0にできることから、電池のエネルギー密度を飛躍的に向上できる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1>
厚さ25μmのナイロンフィルム層3/厚さ40μmのアルミニウム箔層4/厚さ35μmの酸変性ポリプロピレン層5の積層構成から外装材8を準備した。
【0064】
前記外装材8を、成形部11と開口孔形成用刃部12とを有した成形ダイス10を用いて成形することによって、該成形ダイス10の1ショットで前記外装材8を空気電池本体部を収容し得る立体形状に成形すると共に開口孔2の形成を行って立体成形体7を得た(成形工程;図2〜4参照)。
【0065】
次に、下側シール盤32の上面に設けられた深さ0.16mmで大きさが25.5mm×25.5mmの収容凹部33に、厚さ0.15mmで大きさが25.4mm×25.4mmのセラミック製隔膜9を載置すると共に、前記立体成形体7を下側シール盤32の上面に載置する。この時、図5(B)に示すように、下側シール盤32の位置決め用テーパー面34の最上位置34aに、立体成形体7の成形傾斜面7bの最上位置7cを一致させた態様で、収容凹部33上のセラミック製隔膜9の外周縁部9aに立体成形体7の開口孔2の内周縁部7aが重なり合うように配置する。次いでこの状態で図6(A)に示すように上側シール盤31と下側シール盤32とで挟圧して、立体成形体7の開口孔2の内周縁部7aとセラミック製隔膜9の外周縁部9aとをヒートシールすることによって、図6(B)及び図7に示す外装ケース1を得た(ヒートシール工程)。
【0066】
なお、前記ヒートシール工程において、シール開始圧力を1MPaに設定すると共に、ヒートシール圧力を4MPaに設定し、ヒートシール時間を1分に設定し、またヒートシール温度は、ナイロン側を200℃、酸変性ポリプロピレン側を85℃に設定した。
【0067】
得られた外装ケース1は、外形が100mm×100mmの矩形状であり、成形高さ(高低差)が1.5mm、天面が27mm×27mmの大きさの矩形状、天面に設けられた開口孔2が22mm×22mmの大きさの矩形状である。
【0068】
得られた外装ケース1を用いて図8に示すリチウム−空気電池50を構成した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法で得られた外装ケースは、リチウム−空気電池等の空気電池の電池本体部を収容するのに用いられる。
【符号の説明】
【0070】
1…空気電池用外装ケース
2…開口孔
3…外側樹脂フィルム層
4…金属箔層
5…内側樹脂フィルム層
7…立体成形体
7a…周縁部
7b…成形傾斜面
7c…最上位置
8…外装材
9…セラミック製隔膜
9a…周縁部
10…成形ダイス
11…成形部
12…開口孔形成用刃部
13…トリミング用刃部
31…上側シール盤
32…下側シール盤
33…収容凹部
34…位置決め用テーパー面
34a…最上位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9