特許第5749495号(P5749495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5749495-半導体ナノ粒子キャッピング剤 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749495
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子キャッピング剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20150625BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08K3/00
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-547252(P2010-547252)
(86)(22)【出願日】2009年2月24日
(65)【公表番号】特表2011-513508(P2011-513508A)
(43)【公表日】2011年4月28日
(86)【国際出願番号】GB2009000510
(87)【国際公開番号】WO2009106810
(87)【国際公開日】20090903
【審査請求日】2012年1月10日
(31)【優先権主張番号】61/031,218
(32)【優先日】2008年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509295262
【氏名又は名称】ナノコ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(74)【代理人】
【識別番号】100128831
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100156030
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 孝臣
(72)【発明者】
【氏名】ナイジャル・ピケット
(72)【発明者】
【氏名】マーク・クリストファー・マッケアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ダニエルズ
(72)【発明者】
【氏名】シボーン・カミンズ
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−509159(JP,A)
【文献】 米国特許第02769838(US,A)
【文献】 特表2005−519143(JP,A)
【文献】 特開2004−300253(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/001848(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08G 65/00−65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、
少なくとも1つの量子ドットナノ粒子と、

【化1】
[式中、mは8から45である]
を有する配位子と、
を具える調製物。
【請求項2】
前記配位子は、量子ドットナノ粒子のコアに近接して配置される請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記配位子は、量子ドットナノ粒子のシェルに近接して配置される請求項1に記載の調製物。
【請求項4】

【化2】
[式中mは8から45の整数]
の化合物を形成する方法であって、
XはH、CH、及び―CHCOHのうちの1つであり、
Yはp―トルエンスルホネート、カルボキシル、―CHCOH、―PhCOH、―SiPhBu、フェニル、―CHPh、アミノ、ジチオカルバマト、ホスホン酸、ホスフィン酸(phosphinc acid)、ビニル、アセチレン、アリール、及びヘテロアリールのうちの1つであり、
ポリ(エチレングリコール)を含む第1の出発物質を提供するステップと、
前記第1の出発物質を、量子ドットナノ粒子の表面をキレート化するための官能基を含む第2の出発物質と反応させるステップと、
少なくとも1つの量子ドットナノ粒子を前記化合物でキャッピングするステップと、
を含む方法。
【請求項5】
前記第1の出発物質は、末端ヒドロキシル基を含み、前記第2の出発物質は脱離基を含み、前記第1及び第2の出発物質を反応させるステップは、前記脱離基を分離させるステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】

【化3】
[式中mは8から45の整数]
の化合物で少なくとも1つの量子ドットナノ粒子をキャッピングすることを含んでおり、
XはH、CH、及び―CHCOHの中の1つであり、
Yはp―トルエンスルホネート、カルボキシル、―CHCOH、―PhCOH、―SiPhBu、フェニル、―CHPh、アミノ、ジチオカルバマト、ホスホン酸、ホスフィン酸(phosphinc acid)、ビニル、アセチレン、アリール、及びヘテロアリールのうちの1つである、
キャッピングされた量子ドットナノ粒子を作成する方法。
【請求項7】

【化4】
[式中mは8から45の整数]
の化合物でキャッピングされており、
XはH、CH、及び―CHCOHの中の1つであり、
Yはp―トルエンスルホネート、カルボキシル、―CHCOH、―PhCOH、―SiPhBu、フェニル、―CHPh、アミノ、ジチオカルバマト、ホスホン酸、ホスフィン酸(phosphinc acid)、ビニル、アセチレン、アリール、及びヘテロアリールのうちの1つである、
量子ドットナノ粒子。
【請求項8】

【化5】
[式中、mは8から45の整数]
を有する配位子で各々キャッピングされ、光に対して実質的に透明な物質内に配置される複数の量子ドットナノ粒子を含む表示装置。
【請求項9】
前記複数の量子ドットナノ粒子を、前記量子ドットナノ粒子が可視光を発することができるように励起するための手段を更に含む請求項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記複数の量子ドットナノ粒子はそれぞれ、
第1の半導体材料を含むコアと、
前記第1の半導体材料とは異なる第2の半導体材料を含むシェルと、
を具える請求項8又は9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ナノ粒子キャッピング配位子、その製造及び官能性半導体ナノ粒子の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ粒子の大きさは、物質の電子的特性を決定し、バンドギャップエネルギーは、量子閉じ込め効果の結果として、半導体ナノ粒子の大きさに反比例する。加えて、ナノ粒子の表面積対容量の比が大きいと、ナノ粒子の物理的及び化学的特性に重大な影響を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
単一の半導体材料を含む単一コアのナノ粒子は、通常、比較的低い量子効率を有する。この低い量子効率は、ナノ粒子の表面において欠陥及びダングリングボンドで生じる非放射電子孔再結合に起因する。
【0004】
コア―シェルナノ粒子は、一般的に、コアの表面にエピタキシャルに成長する第2の半導体材料のシェルを有する単一の半導体コア材料を含む。シェル材料は通常、コア半導体材料と比較して、より広いバンドギャップ及び同様の格子寸法を有する。シェルを加える目的は、コアの表面から欠陥及びダングリングボンドを除去し、それによってコア内に、そして、非放射型再結合の中心として機能するかもしれない表面状態から離れて電荷キャリアを閉じ込めることである。
【0005】
それでも、コア、コア―シェル及びコア―マルチシェルナノ粒子の表面は、反応性の高いダングリングボンドを有するかもしれない。これらは、粒子の凝集を抑制し、周囲の化学環境から粒子を保護し、(少なくともコアナノ粒子の場合)電子的に安定化させる有機配位子分子で表面原子をキャッピングすることによって不動態化することができる。キャッピング配位子化合物は、ナノ粒子のコア成長及び/又はシェリングにおいて用いられる溶媒でもよい。あるいは、キャッピング配位子は、不活性溶媒において溶解し、それからナノ粒子のコア成長及び/又はシェリングに用いられてもよい。いずれの方法でも、前記配位子化合物は、孤立電子対をナノ粒子の表面金属原子に提供することによって、ナノ粒子の表面をキャッピングする。
【0006】
ナノ粒子は一般的に脂肪親和性配位子化合物の存在下で合成され、その結果、無極の媒体に溶解するナノ粒子になる。この溶解性を減少させるか又は除去するために、前記配位子化合物を、より大きな極性の、異なる配位子化合物と交換してもよいが、ナノ粒子の量子収量は、結果として減少する。
【0007】
結果として生じる半導体ナノ粒子は、種々の応用の範囲において用いられてもよく、その応用において、ナノ粒子は光励起、電気的励起、又は他の形の励起によって外部から励起され、電子孔再結合及びそれに続く、所定の波長の光の形(例えば可視光)での光子の発光に至る。しかしながら、このような応用における表面官能化されたナノ粒子の使用は、現在のところ、表面官能化において量子収量が失われるため制限されている。
【0008】
本発明の目的は、表面官能化された半導体ナノ粒子を作成するための現行手法に伴う上記の問題の1つ以上を取り除くか又は緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は半導体ナノ粒子のためのキャッピング配位子及び該キャッピング配位子の前駆体の製造に関する。ここで開示されるキャッピング配位子は好ましくはナノ粒子の合成において、またその合成の間利用され、その結果、高い量子収量及び極性のナノ粒子になる。結果として生じる半導体ナノ粒子は種々の広範な応用において用いられてもよい。それは例えば、半導体ナノ粒子が装置又は透明材料に組み込まれるディスプレー応用、極性の溶媒(例えば水及び水性溶媒)への組込みである。結果として生じるナノ粒子は、インク、ポリマー又はガラスに含まれるか、あるいは、細胞、生体分子、金属、分子などに取り付けられてもよい。したがって、本発明は、表面官能化されたナノ粒子をこのような応用において用いることを以前妨げていた半導体ナノ粒子の表面官能化の従来方法が有する問題を克服する。
【0010】
一態様において、本発明の実施形態は、量子ドットナノ粒子の製造及びキャッピングにおける、次式の化合物の製造及び使用を特徴とし、
式中、mは、0とおよそ4500の間、 又はより好ましくは、0とおよそ450の間、又は、0とおよそ17の間である。特定の実施形態において、mは、およそ8、およそ13、およそ17又はおよそ45である。これらの化合物は、量子ドットナノ粒子のコア成長及び/又はシェリングのための配位子化合物(すなわち、キャッピング剤)として用いるのに適している。
【0011】
本発明の一態様は、式
を有する配位子を提供し、式中、mはおよそ8からおよそ45である。
【0012】
好ましい実施形態において、前記配位子は、ナノ粒子のコアに近接して配置されてもよく、前記コアは好ましくは少なくとも1つの半導体材料を含む。
【0013】
別の好ましい実施形態では、前記配位子は、ナノ粒子のシェルに近接して配置されてもよく、前記シェルは少なくとも1つの半導体材料を選択的に含む。
【0014】
前記配位子は、溶媒の中に配置されてもよく、その場合は、前記溶媒が少なくとも1つのナノ粒子前駆体材料を更に含むことが好ましい。
【0015】
他の態様において、本発明の実施形態は、式
の化合物を合成する方法を特徴とし、式中、mは、上に定義した通りであり、XはH、―CH、又は―CHCOHを含むか又は基本的にそれから成り、Yはp―トルエンスルホネート、カルボキシル(例えば―CHCOH又は―PhCOH)、―SiPhBu、フェニル(例えば―CHPh)、チオール、アミノ、ジチオカルバマト、ホスホン酸、ホスフィン酸(phosphinc acid)、ビニル、アセチレン、アリール、ヘテロアリールなどを含むか又は基本的にそれから成る。
【0016】
本発明の別の態様は、式
の化合物を形成する方法であって、ポリ(エチレングリコール)を含む第1の出発物質を提供するステップと、
前記第1の出発物質を、ナノ粒子の表面をキレート化するための官能基を含む第2の出発物質と反応させるステップ
とを含む方法を提供する。
【0017】
好ましくは、前記第1の出発物質は、末端ヒドロキシル基を含み、前記第2の出発物質は脱離基を含み、前記第1及び第2の出発物質を反応させる前記ステップは、前記脱離基を分離させることを含む。
【0018】
前記方法が、少なくとも1つのナノ粒子を前記化合物でキャッピングすることを更に含むことが好ましい。従って、本発明の更なる態様は、上述した方法を実行することと、それから、結果として生じる、上で定義した式
の化合物で少なくとも1つのナノ粒子をキャッピングすることとを含む、キャッピングされたナノ粒子を製造する方法に関する。さらに、更なる態様は、上で定義した式
の化合物によってキャッピングされたナノ粒子を提供する。
【0019】
他の態様において、式
を有する配位子で各々キャッピングされ、光に対して実質的に透明な物質内に配置される複数のナノ粒子を含む表示装置が、更に提供される。
【0020】
好ましい実施形態において、前記表示装置は、前記複数のナノ粒子を、前記ナノ粒子が可視光を発するように励起するための手段を更に含む。さらに、好ましくは、前記複数のナノ粒子はそれぞれ、
第1の半導体材料を含むコアと、
前記第1の半導体材料とは異なる第2の半導体材料を含むシェル
とを具える。
【0021】
上で定義した方法は、好ましくは、適切に官能化された式X―Wの分子に、式
を有するポリ(エチレングリコール)出発物質のヒドロキシル官能価を結合するステップを含み、式中、mは、上で定義した通りであり、Zは、H又は―CHを含むか又は基本的にそれから成る。Xは脱離基(例えばハロゲン)、p―トルエンスルホネート、メシル(CH―S(O)―O―)又は求核試薬(例えばOH)を含むか又は基本的にそれから成り、そしてWはナノ粒子の表面にキレート化するのに適している官能基(例えばカルボキシル又はチオ基)を含むか又は基本的にそれから成る。
【0022】
Zは予め官能化して頭部基を含むことによって、X―Wと、
との反応の結果製造される前記配位子でキャッピングされたナノ粒子に所望の溶解性を与えてもよく、又は、Zは反応後変更されて所望の頭部基を組み込んでもよく、該頭部基は、例えばp―トルエンスルホネート、カルボキシル(例えば―CHCOH又は―PhCOH)、―SiPhBu、フェニル(例えば―CHPh)、チオール、アミノ、ジチオカルバマト、ホスホン酸、ホスフィン酸(phosphinc acid)、ビニル、アセチレン、アリール、ヘテロアリール、などであるがこれに限定されない。
【0023】
好ましい実施形態において、前記配位子は式
を有し、式中、Xは、―CHを含むか又は基本的にそれから成り、mはポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(〜350)出発物質及び配位子化合物の両方においておよそ8である。Yは、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(およそ350の分子量を有する)出発物質においてHを含むか又は基本的にそれから成り、そしてYは、配位子化合物において―CHCOHを含むか又は基本的にそれから成る。
【0024】
更に好ましい態様において、上で定義したキャッピング配位子を組み込む半導体量子ドットナノ粒子及びナノ粒子表面にこのような配位子を結合する標準的な合成方法を用いたその製造方法が提供される。
【0025】
本発明に係る、上で定義したキャッピング配位子でキャッピングされたナノ粒子に含まれる半導体材料は周期表の2から16族のうち任意の1つ以上の族からイオンを組み込んでもよく、それは、二元、三元及び四元材料、すなわちそれぞれ2、3又は4種の異なるイオンを組み込む材料を含む。例えば、限定的ではないがCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AlP、AlS、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge及びそれらの組み合わせのようなコア半導体材料を、ナノ粒子は組み込んでもよい。ナノ粒子は、好ましくは約20nm未満、より好ましくは約15nm未満、そして最も好ましくは約2から5nmの範囲の平均粒径のコアを有する。
【0026】
上述のように、望ましくなく低い量子効率に至る、ナノ粒子表面で欠陥及びダングリングボンドで生じる非放射電子孔再結合に関連した問題を少なくとも部分的に対処するために、ナノ粒子コアは、コアとは異なる物質(例えば半導体材料)の1以上の層(本明細書中では「シェル」とも呼ぶ)によって少なくとも部分的にコーティングされてもよい。従って、本発明による配位子を用いてキャッピングされたナノ粒子は、1以上のシェル層を組み込んでもよい。前記又は各シェルに含まれる物質は周期表の2から16族のうち任意の1つ以上の族からイオンを組み込んでもよい。ナノ粒子が2つ以上のシェルを具える場合、各シェルは、好ましくは異なる物質で形成される。例示的なコア/シェル材料において、コアは上で特定される材料のうちの1つで形成され、シェルは前記コア材料と比べて、より大きなバンドギャップエネルギー及び同様の格子寸法の半導体材料からなる。シェル材料の例としては、ZnS、MgS、MgSe、MgTe及びGaNが挙げられるがこれらに限定されない。コア内の、そして、表面状態から離れた電荷キャリアの閉じ込めによって、より優れた安定性及びより高い量子収量の量子ドットが提供される。格子構造が厳密に一致しない半導体ナノ粒子の隣接した層において2つの材料が提供される場合、2つの材料の層の間に傾斜層を導入することによって前記2つの材料の接合面で存在する格子歪みを緩和することが適切でもよいことは、理解されるだろう。前記傾斜層は一般的に、2つの隣接した層の各々におけるイオンの全てではなくてもほとんどを含むが、これらのイオンの割合はコアとシェルで異なる。前記傾斜層のうちコアに隣接した領域においては、前記コア材料のイオンのうち少なくとも1つが大部分を占め、前記傾斜層のうちシェルに隣接した領域においては、前記シェル材料のイオンのうち少なくとも1つが大部分を占める。
【0027】
量子ドットナノ粒子は、本発明の配位子を用いてキャッピングされてよいが、その平均粒径は、発光波長を変更するために変更してもよい。エネルギー準位、そしてそれゆえ、量子ドット蛍光発光の周波数は、量子ドットが作成される物質及び量子ドットの大きさによって制御することができる。通常、同じ物質でできた量子ドットは、量子ドットが大きいほど、より鮮烈な赤の発光を有する。量子ドットは、約1から15nm、より好ましくは約1から10nmの直径を有することが好ましい。量子ドットは、好ましくは約400から900nm、より好ましくは約400から700nmの波長を有する光を発する。
【0028】
一般的に、コア、コア/シェル又はコア/マルチシェルナノ粒子を製造するために用いられるコア及び/又はシェリング手順の結果として、ナノ粒子は、表面結合配位子(例えばミリスチン酸、ヘキサデシルアミン及び/又はトリオクチルホスフィンオキシド)によって少なくとも部分的にコーティングされる。このような配位子は、一般的に、前記コア及び/又はシェリング手順が中で行われた溶媒から派生する。この種の配位子は、無極の媒体のナノ粒子の安定性を高めることができ、電子的に安定化させることができ、そして/又は望ましくないナノ粒子凝集を無効にすることができる一方、すでに述べたように、このような配位子は通常、より極性の媒体(例えば水性溶媒)において安定してナノ粒子が分散又は溶解するのを妨げる。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、水溶性(aqueous compatible)で、安定しており、小さくて、量子収量の高い量子ドットを提供する。脂肪親和性表面結合配位子が前記コア及び/又はシェリング手順の結果として量子ドットの表面に配位される場合(例として、ヘキサデシルアミン、トリオクチルホスフィンオキシド、ミリスチン酸が挙げられる)、このような配位子は、当業者に知られている標準的な方法を用いて、本発明に係る配位子と完全に又は部分的に交換されてもよい。又は、本発明の配位子は既存の脂肪親和性表面結合配位子と、ここでも標準的な方法を用いて相互キレート化(interchelate)してもよい。
【0030】
単に例として、次の非限定的な図及び実施例を参照して、以下、本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、量子ドットナノ粒子の概略図を示す。
【実施例】
【0032】
ガラス容器を、終夜オーブンにおいて乾燥させた(120℃)。ジクロロメタン(「DCM」)及びトリエチルアミン(「TEA」)を、還流で少なくとも1時間加熱した後、水素化カルシウムから蒸留した。テトラヒドロフランを、還流で少なくとも1時間加熱した後、Na/ベンゾフェノン蒸留した。ポリ(エチレングリコール)を高真空下で120℃で1時間加熱した。他の全ての試剤は、商用の供給元から受け取ったまま用いた。すべての反応混合物は、磁気的に撹拌し、二窒素気体の雰囲気下で実行した。
【0033】
ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテルp―トルエンスルホナートの合成
図式1:ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテルp―トルエンスルホナートの合成
DCM(80mL)内のTsCl(27.792g、143.00mmol)の溶液を、ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル(50.000g、143.00mmol)の氷で冷却した溶液、トリエチルアミン(40.30mL、290.0mmol)及びDCM(75mL)内のDMAP(0.177g、1.4mmol)に2時間にわたって滴加し、そして結果として生じる混合物を室温に暖めながら終夜撹拌した。反応混合物を、蒸留水(2×200mL)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2×100mL)、飽和クエン酸溶液(2×100mL)によって洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮させ、黄色の油状物を生じた。この油状物をヘキサン(3×200mL)において溶解させ、反応していないTsClは濾過によって反応混合物から分離した。濾液を減圧下で濃縮させ、淡黄色の油状物としてポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテルp―トルエンスルホナートが得られた。
【0034】
モノメチルエーテルポリ(オキシエチレングリコール)350フタルイミドの合成
図式2:モノメチルエーテルポリ(オキシエチレングリコール)350フタルイミドの合成
カリウムフタルイミド(2.679g、14.48mmol)を、DMF(45mL)/水(6mL)内のポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテルp―トルエンスルホナート(5.000g、9.65mmol)の溶液に加え、それから終夜撹拌した(80℃)。
【0035】
反応混合物を室温に冷却させ、DCM(100mL)中に溶解させた、そして、蒸留水(6×500mL)、飽和塩水(6×500mL)(DMFを除去)、蒸留水(500mL)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮させた。結果として生じる油状物は、最小容量のDCMにおいて溶解させ、濾過し、それから減圧下で濃縮させ、モノメチルエーテルポリ(オキシエチレングリコール)350フタルイミドを得た。
【0036】
モノメチルエーテルポリ(オキシエチレングリコール)350フタルイミド化合物のフタルイミド基は、他の基(例えばアミノ基、塩基によって処理されるとき、例えば―NH)に都合良く変換されて、結果として生じる配位子にナノ粒子の表面に結合する能力及び/又は配位子が結合しているナノ粒子の溶解性を変更する能力を与えることができる末端官能基の例である。
【0037】
ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル酢酸の合成
テトラヒドロフラン(500mL)内のブロモ酢酸(162.83g、1.1719モル)の溶液を、撹拌して冷却した(0℃)テトラヒドロフラン(500mL)内の水素化ナトリウム(93.744g、2.3436モル)の懸濁液に滴加した。あらかじめ乾燥させた(120℃、高真空、1時間)ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテルを、テトラヒドロフラン(150mL)において溶解させ、反応混合物に滴加した。反応混合物を室温に暖めながら終夜撹拌した。
【0038】
反応混合物を氷の上に注ぎ、酸性化させ(pH=1)、それから減圧下で濃縮させ、黄色の油状物において懸濁される白色固体を得た。前記油状物をCHCl(2.5L)において溶解し、前記白色固体は濾過によって分離した。濾液は、飽和NaHCO(5×50mL)によって洗浄し、それから減圧下で濃縮して、黄色の油状物を得た。前記油状物を、水(2L)において溶解させ、ジエチルエーテル(5×50mL)によって洗浄した。水相(およそ3のpH)を、1MのHCl(aq)によっておよそ1のpHに酸性化させて、ジエチルエーテル(50mL)によって洗浄した。水相を減圧下で濃縮し、無色の油状物(298.78g)を得た。
【0039】
量子ドットのキャッピング
本発明の実施形態に適合する代表的な量子ドット材料は、CdSe、GaAs、InAs、InP、CuInS、CuInSe及びCuIn1―xGaSeを含む。ナノ粒子合成は、例えば、米国特許第6,379,635号及び同時係属の米国特許出願第11/579,050号及び11/588,880号に説明される技術を用いて実行してもよい。ナノ粒子は、任意の従来の技術(例えば、XRD、UV/Vis/近赤外分光測定法、SEM、TEM、EDAX、光ルミネセンス分光測定法、元素分析)によって特徴づけられてもよい。
【0040】
量子ドット(QD)は、当業者に知られている多数の適した方法の1つを用いて、上述した配位子(例えばポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル酢酸)でキャッピングすることができ、前記方法は、配位子交換及び/又は配位子相互キレート(interchelation)方法論を選択的に含んでもよい。
図1