特許第5749539号(P5749539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749539
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】鉄道車両用座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20150625BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20150625BHJP
   A47C 3/18 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   B60N2/14
   B60N2/22
   A47C3/18 B
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-74447(P2011-74447)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-206638(P2012-206638A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】原 孝
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−40334(JP,A)
【文献】 特開平6−92169(JP,A)
【文献】 特開2005−329103(JP,A)
【文献】 特開2005−324564(JP,A)
【文献】 米国特許第01644632(US,A)
【文献】 特開2008−087687(JP,A)
【文献】 特開昭63−130443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B60N 2/14
A47C 3/18
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブル上に、座席部品が組み付けられる鉄道車両用座席であって、
前記ターンテーブルは、機械加工により被係合凹部あるいは被係合凸部が形成された矩形板状の上側テーブルと、前記上側テーブルを回転可能に支持する下側テーブルとを有し、
前記座席部品は、シートクッションとシートバックとが乗客別に独立して一体に形成されリクライニング機構が内蔵されているシートアッセンブリで、前記シートクッションの下部フレームに、前記被係合凹部あるいは被係合凸部に係脱可能に係合する係合凸部あるいは係合凹部を有し、
前記シートアッセンブリの係合凸部あるいは係合凹部と前記上側テーブルの被係合凹部あるいは被係合凸部との係合により前記シートアッセンブリが前記上側テーブルに位置決めされて締結具を用いて直接に固定されていることを特徴とする鉄道車両用座席。
【請求項2】
前記上側テーブルは、プレス加工によって形成され剛性を高めるビードを有する請求項1記載の鉄道車両用座席。
【請求項3】
前記上側テーブルは、剛性を高める型鋼などからなり締結具を用いて固定されている補強材を有する請求項1記載の鉄道車両用座席。
【請求項4】
前記座席部品は、前記シートバックの背面側に形成される収納凹部内に取り出し可能に収納される後席乗客用のテーブルを有し、前記後席乗客用のテーブルは前記シートバックに取り付けられている請求項1〜3のいずれか1つに記載の鉄道車両用座席。
【請求項5】
前記上側テーブルの上側に、前記座席部品に隣接して肘掛けが位置決めされて締結具を用いて直接に固定されている請求項1〜3のいずれか1つに鉄道車両用座席。
【請求項6】
前記シートバックは、側部に座席間肘掛けが取り付けられている請求項1〜3のいずれか1つに鉄道車両用座席。
【請求項7】
左右の座席部品の間に位置するコンソールボックスが、前記上側テーブルの上側に締結具を用いて直接に固定されている請求項1〜3のいずれか1つに鉄道車両用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用座席は、床部から上方に向かって、各部品を順に組み付けるようになっている。この各部品は、ユニット化できない構造であるか、ユニット化しても安定して定置できない構造となっている。
【0003】
そこで、各種の構造の座席が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載のものでは、押出型材のモノスパンで構成されている断面三角形をなす横梁を、真下を向く下面部の中央に旋回可能に支持する軸受けが設けられ、前記横梁に座部フレームや肘掛けフレームを取り付けるようになっている。また、特許文献2に記載のものは、脚台の上面部中央における回転機構の回転板に腰掛けの台枠の底面側に一体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−329103号公報(段落0033,0034および図1
【特許文献2】特開2008−87687号公報(段落0021および図4図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生産性を向上できるユニット化ができず、1つの作業スペースで部品を集結して組み付け、1脚の座席シートとすることができないのが現状である。
【0007】
発明者は、ターンテーブルの回転板(上側テーブル)を機械加工により精度よく形成すれば、座席部品をシートクッションとシートバックとが乗客別に独立して一体に形成されたシートアッセンブリとして、回転板(上側テーブル)に,ボルト、ナットなどの締結具を用いて直接的に固定できることに着想し、本発明をなしたものである。
【0008】
本発明は、座席部品をユニットとして、ターンテーブルの上側テーブルに締結具を用いて直接に固定でき、組み付けが容易である鉄道車両用座席を適用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ターンテーブル上に、座席部品が組み付けられる鉄道車両用座席であって、前記ターンテーブルは、機械加工により被係合凹部あるいは被係合凸部が形成された矩形板状の上側テーブルと、前記上側テーブルを回転可能に支持する下側テーブルとを有し、前記座席部品は、シートクッションとシートバックとが乗客別に独立して一体に形成されリクライニング機構が内蔵されているシートアッセンブリで、前記シートクッションの下部フレームに、前記被係合凹部あるいは被係合凸部に係脱可能に係合する係合凸部あるいは係合凹部を有し、前記シートアッセンブリの係合凸部あるいは係合凹部と前記上側テーブルの被係合凹部あるいは被係合凸部との係合により前記シートアッセンブリが前記上側テーブルに位置決めされて締結具を用いて直接に固定されていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、ターンテーブルの、矩形板状の上側テーブルを、被係合凹部あるいは被係合凸部を含めて機械加工により精度よく形成し、その上側テーブルに、ユニット化した座席部品(シートクッションの下部フレームに、前記被係合凹部あるいは被係合凸部に係脱可能に係合する係合凸部あるいは係合凹部を有するもの)を取り付けるようにしているので、ターンテーブルの上側テーブルに前記座席部品を精度よく位置決めし、締結具を用いて直接に固定でき、組み付けが容易となる。

また、ユニット化される座席部品はユニット化されているので、それにリクライニング機構を簡単に組み込むことができる。
【0011】
この場合には、請求項2に記載のように、前記上側テーブルは、プレス加工によって形成され剛性を高めるビードを有する構成としてもよいし、請求項3に記載のように、前記上側テーブルは、剛性を高める型鋼などからなり締結具を用いて固定されている補強材を有する構成としてもよい。
【0012】
このようにすれば、座席部品の取付精度を損なうことなく、また、溶接構造を採用することなく、上側テーブルの剛性を、必要に応じて高めることができる。
【0015】
請求項に記載のように、前記座席部品は、前記シートバックの背面側に形成される収納凹部内に取り出し可能に収納される後席乗客用のテーブルを有し、前記後席乗客用のテーブルは前記シートバックに取り付けられている構成とすることも可能である。
【0016】
このようにすれば、ユニット化される座席部品はユニット化されているので、それに後席乗客用のテーブルを取り出し可能に簡単に組み込むことができる。
【0017】
請求項に記載のように、前記上側テーブルの上側に、前記座席部品に隣接して肘掛けが位置決めされて締結具を用いて直接に固定されている構成とすることができる。
【0018】
このようにすれば、肘掛けも、座席部品と同様に、ターンテーブルの上側テーブルに位置決めして締結具を用いて直接に固定することができ、容易な組み付けを実現する上で有利である。
【0019】
請求項に記載のように、前記シートバックは、側部に座席間肘掛けが取り付けられていることが望ましい。
【0020】
このようにすれば、座席間肘掛けを別に取り付けるよりも、より組み付けが容易となる。
【0021】
請求項に記載のように、左右の座席部品の間に位置するコンソールボックスが、前記上側テーブルの上側に締結具を用いて直接に固定されている構成とすることも可能である。
【0022】
このようにすれば、コンソールボックスを設ける場合に、前記コンソールボックスを同様に精度よく組み立てることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記のように、ターンテーブルの上側テーブルを機械加工により精度よく形成し、その上側テーブルに、ユニット化した座席部品を取り付けるようにしているので、ターンテーブルの上側テーブルに前記座席部品を位置決めして締結具を用いて直接に固定することができ、組み付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る鉄道車両用座席の一実施の形態を示す斜視図である。
図2】座席部品を背面側から見た斜視図である。
図3】他の実施の形態を示す図1と同様の図である。
図4】別の実施の形態を示す図1と同様の図である。
図5】さらに別の実施の形態を示す図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0026】
図1は本発明に係る鉄道車両用座席の一実施の形態を示す斜視図である。
【0027】
本発明に係る鉄道車両用座席1は、図1に示すように、ターンテーブル11上に、左右の座席部品12L,12Rが組み付けられるものである。
【0028】
ターンテーブル11は、マシニングセンタなどを用い精度よく機械加工された矩形板状の上側テーブル13と、この上側テーブル13を、図示しない回転機構を介して回転可能に支持する下側テーブル14とを有する。
【0029】
各座席部品12L,12Rは、それぞれシートクッション12La,12Ra(座部)とシートバック12Lb,12Rb(背ずり)とが乗客別に独立して一体に形成されたシートアッセンブリとされている。また、いわゆる周知のリクライニング機構を内蔵しており、シートクッション12La,12Raに対するシートバック12Lb,12Rbの傾斜角度を調整できるようになっている。ここで、シートクッション12La,12Raとシートバック12Lb,12Rbとが乗客別に独立して一体に形成されたシートアッセンブリとしているので、リクライニング機構を内蔵させるのも容易である。
【0030】
この各座席部品12L,12R(シートアッセンブリ)は、シートクッション12La,12Raの下部フレーム18が複数の係合凸部18aを有する。一方、上側テーブル13には係合凸部18aに係脱可能に係合する複数の被係合穴13a(被係合凹部)が機械加工により精度よく形成されている。そして係合凸部18aと被係合穴13aとの係合関係により座席部品12L,12Rと上側テーブル13との位置決めがなされ、ボルト、ナットなどの締結具を用いて両者が固定される。
【0031】
また、上側テーブル13には、座席部品12L,12Rの外側に隣接して肘掛け15L,15Rが位置決めされて締結具を用いて直接に固定されるようになっている。つまり、肘掛け15L,15Rの下部フレームに形成されている係合凸部(図示せず)が、係脱可能に係合する被係合穴13bが上側テーブル13に形成さ、それらの係合により位置決めがなされ、ボルト、ナットなどの締結具を用いて両者が固定される。
【0032】
一方、座席間肘掛け16は、座席部品12Rのシートバック12Rbの側部に取り付けられ、シートアッセンブリの一部とされている。なお、座席間肘掛け16は、非使用時には、シートバック12Rb,12Lbに跨って形成される収納凹部12Aに収納可能となっている。
【0033】
また、図2に示すように、シートバック12Rの背面側には、収納凹部12Rcが形成され、この収納凹部12Rc内に後席乗客用のテーブル17が取り出し可能に設けられている。図2は、テーブルを取り出した使用状態を示している。なお、テーブル17が収納されているのは、シートバック12Lも同様である。
【0034】
これにより、図1に座席部品12Rや肘掛け15Rについてのみ示すように、座席部品12R、肘掛け15R側の係合凸部と上側テーブル13の被係合穴13a,13bとの係合関係によりシートアッセンブリ12Rや肘掛け15Rが上側テーブル13上の所定位置に精度よく位置決めされ、図示しない締結具(ボルト、ナットなど)を用いて直接に締結することで固定される。
【0035】
このように、座席部品12L,12Rを位置決めして取り付けることで、座席部品12L,12Rにアッセンブリ化されているリクライニング機構(図示せず)、座席間肘掛け16、テーブル17なども一緒に組み付けることができ、組み付けが簡単になる。この組み付けは、組立現場で、定盤上上で安定した作業姿勢で組み立てることができるので、短時間での組立が可能となり、生産性を向上することができる。
【0036】
また、必要に応じて、バックシェル、マガジンラック、コンソールボックス、テーブルユニット、肘当てなどを設ける場合には、ターンテーブル11の上側テーブル13に、締結具を用いて、個々に精度よく固定することが可能である。
【0037】
また、左右の座席部品12L,12Rをターンテーブル11(上側テーブル13)に締結具により固定しているだけであるので、車両内に搬入する際に、それらを組み付けたものが車両出入口や通路より大きくても、例えば各座席部品12L,12R、ターンテーブル11などのユニット単位に分解して、車両内に簡単に搬入することが可能となる。これは、適宜必要な大きさに分解できるようにある程度の数の部品を1つのグループとしてユニット化しているからである。よって、通常全体として搬入することができない大きさであっても、ユニット単位で分解して搬入することが可能となり、ユニット単位の分解であるから、車両内での組立も簡単に行うことができる。
【0038】
一方、メンテナンス時においても、搬入時と同様に分解できるので、ユニット単位で搬出することができ、車両外部でのメンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0039】
とくに、ユニット単位で互換性を有する構成とすることで、メンテナンスの場合には短時間でユニット交換でき、車両内での作業時間の短縮化も図れる。また、車両から取り外したユニットは、後日、別の作業場所で修理するようにすることもできるので、修理の作業性も向上する。
【0040】
本発明は、前述した実施の形態に限定されず、次のように変更して実施することも可能である。
【0041】
(i)前記実施の形態では、各座席部品12L,12R(シートアッセンブリ)は、シートクッション12La,12Raの下部フレーム18に係合凸部18aを有する一方、上側テーブル13には係合凸部18aに係脱可能に係合する被係合穴13a(被係合凹部)を設けているが、逆に、シートクッション12La,12Raの下部フレーム18に係合凹部を、上側テーブル13に前記係合凹部に係脱可能に係合する被係合凸部を設けるようにしてもよいし、係合凸部と被係合凹部(あるいは被係合穴)との係合に限らず、位置決めをすることができれば、係合部と被係合部との形状は特に制限されない。
【0042】
(ii)前記実施の形態では、上側テーブル13は、マシニングセンタなどを用いて矩形状の平板を機械加工して形成しているが、本発明はそれに制限されるものでなく、上側テーブルに、プレス加工によって、上方に突出するビードを形成し、単なる平坦な矩形板の平板の場合よりも剛性を高めることもできる。また、図3に示すように、上側テーブル13Aを、剛性を高めるために型鋼などからなる補強材21,22が締結具を用いて固定されている構造とし、位置決めするための、(上側テーブル13Aの)被係合凹部である被係合穴21a,21aが補強材21に設けられている構成とすることも可能である。
【0043】
(iii)図4に示すように、シートクッションの下部に空所を設け、その空所内に各種機器を設ける構成とすることも可能である。この場合も、機械加工により精度よく形成した上側テーブルを利用して、座席の場合と同様に精度よく位置決めして、締結具を用いて直接に固定することができる。なお、左右の肘掛け15L,15Rを取り外すことで、空所内を見ることができ、メンテナンスなどにおいて有利である。
【0044】
(iv)左右の座席部品12L,12Rの間に、図5に示すように、折り畳み式のテーブルユニットなどが内蔵された、いわゆるコンソールボックス31を設けることも可能である。この場合も、コンソールボックス31は、上側テーブル13に対し同様に位置決めして締結具を用いて直接に固定されている。このコンソールボックスを設ける場合も、左右の肘掛け15L,15Rを、座席部品12L,12Rとは別体とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄道車両用座席
11 ターンテーブル
12L,12R 座席部品
12La,12Ra シートクッション
12Lb,12Rb シートバック
13,13A 上側テーブル
13a,13b 被係合穴(被係合凹部)
14 下側テーブル
15L,15R 肘掛け
16 座席間肘掛け
18 下部フレーム
18a 係合凸部
21,22 補強材
31 コンソールボックス
図1
図2
図3
図4
図5