【実施例】
【0222】
本発明のさらなる態様および詳細は以下の実施例から明らかであろう。実施例は、本発明の制限よりもむしろ例示を意図する。実施例1は、C57BL/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例2は、VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例3は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例4は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFの急性毒性をヒトrADAMTS13の同時投与を使用して弱毒化することができることを示す。実施例5は、マウスADAMTS13がrVWFと反応しないことを示す。実施例6は、C57Bl/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例7は、VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例8は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例9は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrADAMTS13のヒトrVWFとの同時投与を記載する。
【0223】
実施例1:
C57BL/6Jマウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、C57BL/6Jマウスにおける単回静脈内注射(臨床適用経路)後の組換えVWF(rVWF)のみまたは組換え第VIII因子(rFVIII)(アドベイト(登録商標)、Baxter)との組み合わせの急性毒性プロフィールを決定することであった。本研究を行って、試験薬剤の投与後に血栓事象(特に、微小血管)が起こり得るかどうかを決定した。本研究のためにC57BL/6J系統マウスを選択した。何故なら、このマウスは、並行急性毒性研究で使用されるVWF欠損マウスおよびADAMTS13欠損マウスに対する遺伝的背景系統であるからである(実施例2および3を参照のこと)。
【0224】
単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した組換えVWFを、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。
【0225】
組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、投与した最も高い用量/体積(すなわち、それぞれ31.7mL/kg、49.3mL/kg、および49.3mL/kg)にしたがって投与した。
【0226】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンを、以下の表1に記載のように行った。
【0227】
【表1】
【0228】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。1日目(研究パート1)または14日目(研究パート2)の心穿刺によって、麻酔下で(ケタミンおよびキシラジン)マウスから血液サンプルを採取した。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、およびクレアチニンキナーゼ(CK)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0229】
主要評価項目は死亡であった。活性レベルおよび健康状態を注射から最初の6時間後に詳細にモニタリングし、その後14日目まで毒性を示す徴候について毎日チェックした。全ての動物を0日目および1日目(短期パート)ならびに1日目、7(8)日目、および14日目(長期パート)に秤量して身体全体の健康状態を得た。
【0230】
統計的評価のための二次評価項目は、体重推移(0日目の体重に対する比率として)ならびに血液学的変数および血清学的変数の変化であった。血液学的変数および血清学的変数の変化を、記述統計学を使用して分析した。分析した変数は、ヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKであった。
【0231】
本研究の条件下で、4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたは3077、1538、769、385、および192IU/kg体重の用量のrFVIIIとの組み合わせの静脈内投与は、いかなる自発的死亡とも関連しなかった。体重の用量関連変化は明確ではなかった。ヘマート(登録商標)Pとの組み合わせにより、統計的に有意な相違は明らかとならなかった。
【0232】
マウスにおいて毒性を示す臨床症状は、高用量群(rFVIIIを含むか含まない4000または2000RCoU/kg体重のrVWFで処置した群)で認められた。血小板減少症は、1日目に2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWF単独またはrFVIIIとの組み合わせで明らかとなり、14日後に回復した。他の変数は、生物学的に関連する変化を示さなかった。選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、血小板数の減少は、2000RCoU/kgおよびそれを超える用量のrVWFを単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した1日後に認められた。血中乳酸デヒドロゲナーゼ濃度の増加は、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFで処置した群で1日後に認められた。全ての変数は、14日後に正常レベルに戻った。
【0233】
組織病理学的変化により、500RCoU/kg体重以上の用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与後の低悪性度「虚血性心疾患」の病像が明らかとなった。これらの変化は、冠血管微小血栓、心筋壊死、心筋変性/修復(最小から中程度の重症度の全て)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなっていた。これらの変化のほとんどは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物において、発生率(および部分的には重症度も)のわずかな用量依存性の増加を示した。これらは、rVWFが500RCoU/kgおよびそれを超える用量で単独またはrFVIIIと組み合わせて投与されたC57BL/6Jマウスで血栓形成の可能性があることを示した。
【0234】
1日目に計画された検死を受けた動物では、低酸素症に高度に感受性を示す血栓塞栓性変化が心臓で記録された。冠血管微小血栓による血管閉塞によって心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こす。
【0235】
14日目に計画された検死を受けた動物では、主に変性および/または修復性の変化が心臓で記録された(炎症、線維症、石灰化、ヘモシデリン沈着)。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。
【0236】
ヘマート(登録商標)P処置(ここではポジティブコントロールとして使用)の有毒作用は証明できなかった。このヘマート(登録商標)Pを使用した有毒作用の欠如は、超高分子量形態を含まないVWF多量体の異なる組み合わせに起因する可能性が最も高く、ヘマート(登録商標)P中に存在するVWFサブユニットがADAMTS13によって切断されるからである。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、最終組成物中に種々の夾雑血漿タンパク質およびクエン酸塩を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0237】
ヒトrVWFがマウスADAMTS13に耐性を示すので、マウスは、ヒトrVWFサブユニットを十分に切断することができず、マウスADAMTS13によってrVWFの超高分子量多量体を減少させることができない。さらに、ウェスタンブロット分析によってC57BL/6J正常マウスが循環血中に超高分子量多量体を含むVWFを有することが見出された。これは、ADAMTS13活性がこれらのマウスで減少するからである。したがって、ヒトrVWFの投与によって超生理学的な循環レベルのVWFが得られ、特に、超巨大VWF多量体の存在下で実質的に増加する。従って、認められた微小血栓症の症状を、誇張された薬理学的効果と解釈することができる。
【0238】
C57BL/6JマウスにおけるrVWFの「無有害作用量(NOAEL)」は250RCoU/kg体重であった。したがって、250RCoU/kg体重よりも高い濃度でrVWFを投与する場合、C57BL/6JマウスをTTPモデルとして使用することができる。
【0239】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、正常C57BL/6JマウスはADAMTS13欠損マウスよりrVWFに対して明確に感受性が低いが、VWF欠損マウスよりrVWFに対してわずかに感受性が高い(実施例2および3を参照のこと)。
【0240】
実施例2:
VWF欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、VWF欠損マウスにおける単回静脈内注射(臨床適用経路)後のrVWFのみまたはrFVIII(アドベイト(登録商標)、Baxter)との組み合わせの急性毒性を決定することであった。本研究のためにVWF欠損マウス(Baxter)を選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0241】
単独またはrFVIII(アドベイト(登録商標))と組み合わせて投与した1ロットのrVWFを、血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験したか、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077 111/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、投与した最も高い用量/体積にしたがって投与した。
【0242】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表2を参照のこと。
【0243】
【表2】
【0244】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、およびクレアチニンキナーゼ(CK)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0245】
上記条件下で、4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたは3077、1538、769、385、および192IU/kg体重の用量のrFVIIIとの組み合わせの静脈内投与は、いかなる自発的死亡とも関連しなかった。
【0246】
体重推移は、それぞれ500または4000RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたはrVWF+rFVIIIのいずれかでの処置による影響を受けなかった。ヘマート(登録商標)Pで処置した動物と対応する用量のrVWF+rFVIIIで処置した動物との間に平均体重推移(0〜1日目および0〜14日目)の統計的に有意な相違は認められなかった。
【0247】
高用量群(rFVIIIを含むか含まない4000RCoU/kg体重のrVWFで処置した群)の動物で臨床症状が認められた。血小板減少症は、1日目にrFVIIIを含むか含まない2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFで明らかとなり、14日後に回復した。他の変数は、生物学的に関連する変化を示さなかった。
【0248】
組織病理学的変化により、1000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与後の低悪性度「虚血性心疾患」の病像が明らかとなった。ヘマート(登録商標)Pの有毒作用は証明することができなかった。本明細書中の実施例1で考察されるように、ヒトrVWFはマウスADAMTS13に耐性を示すので、マウスはマウスADAMTS13によってrVWFサブユニットを十分に切断することができず、rVWFの超高分子量多量体を減少させることができない。従って、認められた微小血栓症の症状を、誇張された薬理学的効果と解釈することができる。
【0249】
VWF欠損マウスにおけるrVWFのNOAELは500RCoU/kg体重であった。したがって、500RCoU/kg体重よりも高い濃度でrVWFをマウスに投与する場合、VWF欠損マウスをVWF欠損患者のTTPモデルとして使用することができる。
【0250】
さらに、この研究は、コントロールマウス(C57BL/6J)が250RCoU/kg体重のNOAELでrVWFにより高い感受性を示したので、内因性マウスVWFの存在(実施例1中のマウスで明らかなように)が毒性に影響を及ぼしたことを示す。
【0251】
実施例3:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、ADAMTS13欠損マウス(Baxter)における単回静脈内注射(臨床適用経路)後のrVWFのみまたはrFVIII(アドベイト(登録商標),Baxter)との組み合わせの急性毒性を決定することであった。ADAMTS13は、VWFを切断して高分子量多量体を減少させるプロテアーゼである。したがって、ADAMTS13ノックアウトマウスは、そのADAMTS13の欠失のためにrVWFサブユニットをTyr1605−MET1606で切断できない。したがって、これらのマウスは超巨大VWF多量体を分解することができず、複数の器官で微小血管血栓症が起こる。したがって、これらのマウスは、その対応コントロールよりも遥かに低用量でrVWFの悪影響に感受性を示すはずである。本研究のためにADAMTS13欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFのADAMTS13切断プロテアーゼを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0252】
単独またはアドベイト(登録商標)との組み合わせのいずれかで投与した組換えVWFを、血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験したか、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、4000RCoU/kg体重のVWF(+3322IU/kg体重のFVIII)および2000RCoU/kg体重のVWF(+1664IU/kg体重のFVIII)で試験した(表3)。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、所与の最も高い用量体積にしたがって投与した。例えば、rVWFのみの対応緩衝液を、体積31.7mL/kg(最も高いrVWFの用量体積にしたがって)で投与し、49.3mL/kgの混合緩衝液(最も高い体積のrVWF+rFVIIIの組み合わせ投与にしたがって)を投与し、51.1mL/kgの等張生理食塩水(最も高い体積のヘマート(登録商標)Pにしたがって)を投与した。
【0253】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表3を参照のこと。
【0254】
【表3】
【0255】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)の群からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0256】
全組織サンプルのスライドを、試験化合物処置した高用量群、基準化合物処置群、コントロール群中のあらゆる動物から検死で回収し、全ての巨視的所見の組織サンプルを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、病理学者によって光学顕微鏡で観察した。同一のプロセスを、全ての他の試験化合物処置群中のあらゆる動物のいくつかの器官(心臓、脳、眼、腎臓、副腎、および肺)由来の組織サンプルに適用した。
【0257】
本研究において4000RCoU/kgの用量レベルのヘマート(登録商標)Pで処置した群で最も高い死亡が認められ、80%(10匹中8匹)が投与直後に死亡した。これは、クエン酸ナトリウム過負荷の明白な徴候を示す(281mg/kgクエン酸塩を、51.1mL/kgの投与体積で注射した)。マウスにおける静脈内適用後のクエン酸ナトリウムのLD
50は231mg/kgであるので(Sax’s Dangerous Properties of Industrial Materials,8
th edition,1992)、ヘマート(登録商標)Pの用量を2000RCoU/kgのVWFに変更した。この用量レベルでのヘマート(登録商標)Pではさらなる死亡は認められなかった。
【0258】
4000RCoU/kgのrVWFのみを投与された動物の40%(20匹中8匹)が死亡したのに対して、2000RCoU/kgを投与された動物の死亡は20%(20匹中4匹)に減少した。より低い用量群ではさらなる死亡は認められなかった。3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFを投与された動物25%(20匹中5匹)が死亡した。より低い用量の群では、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgを投与された群でさえ、さらなる死亡は認められなかった。4000RCoU/kg用量群の注射体積で141mg/kgクエン酸ナトリウムが存在していたので、このこともこれらの群におけるいくつかの突然死の理由であり得る。高用量群における症例の遅延および2000RCoU/kg用量群における突然死についてのこの死亡原因を排除することができる。
【0259】
傾向について統計的に特別に行った検定により、rVWF用量が増加するにつれて死亡率が増加することが証明された(両側p値<0.0001)。
【0260】
2000RCoU/kgのVWF+1664IU/kgのFVIIIの用量でのヘマート(登録商標)Pの投与では死亡(20匹中0匹)は認められず、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIでは死亡(20匹中0匹)は認められなかった。
【0261】
臨床所見により、広範な異常が明らかとなった。短期症状はクエン酸ナトリウムの注射量にも明らかに原因した。何故なら、クエン酸ナトリウム毒性に典型的な症状(例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)が緩衝液群動物の20%(20匹中4匹)で記録されたからであった。
【0262】
しかし、投与された用量の症状の発生率と重症度との間に明確な相関関係が存在した。動物の85%(20匹中17匹)が4000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けたのに対して、動物の45%(20匹中9匹)は2000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けた。
【0263】
3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgを投与した動物の75%(20匹中15匹)で臨床的異常が認められたのに対して、1538IU/kgのrFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgのrVWFの投与後に35%(20匹中7匹)が影響を受けた。rVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した他のいかなる群も臨床的異常は記録されなかった。
【0264】
4000RCoU/kgの用量レベルでヘマート(登録商標)Pで処置した群で認められた症状(90%、10匹中9匹)は、クエン酸塩過負荷(281mg/kg)に明らかに原因し、それにより即死した。2000RCoU/kgヘマート(登録商標)Pで処置した群中の全ての影響を受けた動物(40%、20匹中8匹)はまた、クエン酸ナトリウム毒性を示す短期異常のみを示した(140.5mg/kg;例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)。さらなる長期症状は記録されなかった。
【0265】
0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、1000RCoU/kgのrVWF+769IU/kgのrFVIIIと推定された。従って、用量500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIを、0日目から1日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は存在しなかった。したがって、調査された最も高い用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kg)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0266】
単独投与したrVWFについての0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、2000RCoU/kgと推定された。従って、用量1000RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は、最低の調査用量のrVWF(250RCoU/kg)と推定された。従って、調査したrVWF用量の間の用量は、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量として見なすことができない。体重の増加(緩衝液群について2.3%対4.8%)が生理食塩水(1.8%)およびヘマート(登録商標)P(1.5%)よりも高く、且つ250RCoU/kgのrVWF+rFVIII(2.7%)で処置した群に類似するので、この推定された相違は予測不可能と見なすことができる。0日目から1日目までの平均体重推移は、2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIIIの用量で投与したヘマート(登録商標)Pで0.6%であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIで−7.4%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。0日目から14日目までに統計的に有意な相違は見出されなかった。
【0267】
生存動物における選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与の1日後に血小板数の減少が認められた。さらに、2000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量での単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後にヘマトクリットが低下した。
【0268】
コントロール群と比較した場合、乳酸デヒドロゲナーゼは、2000RCoU/kgのrVWFでの処置およびより高い用量での単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与後の1日目に増加した。
【0269】
ヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)における2000RCoU/kgのVWFの適用後1日目に、血小板数の低下のみが認められた。測定された変数は、全ての罹患群で観察14日後に正常に戻った。
【0270】
組織病理学的試験によって以下の多数の罹患器官が明らかとなった:心臓(冠血管微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性/修復)、脳(微小血栓、膠細胞病巣)、眼(微小血栓)、腎臓(微小血栓、皮質壊死)、副腎(微小血栓、出血)、および肺(微小血栓の発生率または平均重症度の増加)。これらの病理組織学的変化を、播種性血管内凝固異常症(DIC)としてまとめることができる。高用量(≧2000RCoUのrVWF)では、動物は、ヒトと類似の程度に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病像に類似する。低用量(500〜1000RCoU)では、主に心臓が低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する病理組織学的変化を示す影響を受けた。組換え産物を投与した試験化合物処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与した基準化合物処置動物で記録されなかった。ここに、コントロール動物に類似する発生率で低悪性度肺微小血栓のみが記録された。
【0271】
計画された1日目に屠殺された(または投与直後に自発的に死亡した)試験化合物処置動物中で1つまたは複数の器官の血栓塞栓性変化が記録された。低酸素症に対して高い感受性を示す心臓は、最も重篤に影響をうけた器官であった。冠血管微小血栓による血管閉塞により、心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こした。
【0272】
計画された14日目に屠殺された(または投与後いくらか遅れて自発的に死亡した)試験化合物処置動物の心臓において主な変性および/または修復性の変化(炎症、線維症、ヘモシデリン沈着、石灰化)が記録された。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した群の自発的に死亡した1匹で記録された腎臓皮質壊死を、同一の方法で解釈することができる。ここに、微小血栓による腎臓血管の血管閉塞により、腎梗塞を生じた。
【0273】
生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pでも処置したコントロール動物のいくつかの器官(肺、腎臓、脳)で器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された。
【0274】
1つまたは複数の器官中に有害な微小血栓症からなる病理学的変化が記録された。これらの変化は、VWF切断プロテアーゼを欠くこの動物モデル(ADAMTS13欠損マウス)における500RCoU/kgのrVWFおよびそれを超える用量を単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した試験化合物rVWFの血栓形成の可能性を示していた。低用量群(rVWFのみおよびrVWFとの組み合わせ)で有害な組織病理学的変化は記録されなかったので、250RCoU/kgでNOAELを確立することができる。
【0275】
rVWFを切断できないので、ADAMTS13ノックアウトマウスはrVWFでの処置に非常に高い感受性を示した。実際に、ADAMTS13ノックアウトマウスは、本研究で試験したマウス系統のうちで最も高い感受性を示す。結果を、内因性マウスADAMTS13の非存在下および超巨大VWF多量体を有する内因性マウスVWFの存在下の両方に原因する高用量でのrVWFの誇張された薬理学的影響と解釈することができる。ADAMTS13ノックアウトマウスにおけるrVWFのNOAELは250RCoU/kg体重であった。したがって、マウスに250RCoU/kg体重を超える濃度のrVWFの用量を投与する場合、ADAMTS13欠損マウスをADAMTS13欠損患者のためのTTPモデルとして使用することができる。
【0276】
内因性マウスVWFの存在下でのADAMTS13の不在(ADAMTS13ノックアウト)は、死亡および毒性に最も重篤な影響を及ぼし、複数の器官で微小血管血栓症を引き起こす。
【0277】
実施例4:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)の急性毒性を、ADAMTS13の同時投与を使用して減弱することができる
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウス(Baxter)において組換えADAMTS13の同時投与(すなわち、置換)によってrVWFの急性毒性を減弱することができるかどうかを評価することであった。
【0278】
実施例3に示すように、ヒトrVWFで処置したマウスと比較して、ポジティブコントロールとして使用したヘマート(登録商標)Pで処置したADAMTS13欠損マウスに実質的な影響は存在しなかった。この相違は、ヘマート(登録商標)P中に存在するVWFサブユニットがADAMTS13によって切断されるので、ヘマート(登録商標)P中に超高分子量形態が存在しないという異なる化合物におけるVWF多量体組成の相違に起因していた。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、種々の夾雑血漿タンパク質ならびにクエン酸塩およびADAMTS13を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0279】
本研究では、ヒトrVWF(BAXTER)を2000RCoU/kgの投薬量で投与し、ヒトrADAMTS13(CHO細胞由来、クローン938、BAXTER)を19.4μg/kgの投薬量で投与した(ヒト血漿由来調製物、ヘマート(登録商標)P中で分析された比に従う)。化合物を、適用直前にシリンジ中で予め混合して注射するか(群A、マウス10匹)、rADAMTS13の第1の注射およびその直後のrVWF注射として連続的に注射した(群B、マウス10匹)。
【0280】
1日目の終了まで注射後の毒性を示す徴候について動物を観察した。上記の前の研究にあるように、麻酔下で血液サンプルを採取し、組織学的分析のために組織を調製し、検死を行った。
【0281】
治療レジメンに無関係にいかなる動物においても死亡および臨床毒性の徴候は認められなかった。これは、rVWF毒性の軽減におけるADAMTS13の役割を明確に証明していた。
【0282】
分析データを比較して、予め混合した化合物の投与と対照的に、rADAMTS13およびrVWFの連続投与の1日後に血小板数の低下が測定された。試験化合物が関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。試験化合物処置動物群AおよびBにおいて冠血管微小血栓(最小から軽度の悪性度)、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなる心臓の組織病理学的変化が記録された。
【0283】
さらに、群Bの単回試験化合物処置動物においてわずかな悪性度の線維症が記録された。慢性徴候によって明確に特徴づけられるこの所見は、既存であり、したがって、投与1日後に屠殺された動物で記録されるので、試験化合物に関連しないと見なされた。
【0284】
rADAMTS13およびrVWFの連続投与後に2群(A対B)を比較し、且つ血小板数の減少を考慮すると、組織病理学的変化の重症度または発生率の明白な相違は記録されなかった。しかし、実施例3に示した研究(rADAMTS13同時投与を使用しない)と対照的に、本研究での検死において、死亡および試験化合物に関連する巨視的所見は記録されなかった。心筋壊死の発生率および重症度は両研究で類似していた(実施例3および4)。しかし、rADAMTS13同時投与を使用した場合、冠血管微小血栓症および冠血管周囲炎はそれほど顕著ではなかった。さらに、rADAMTS13同時投与を使用した場合、処置に関連する影響は心臓についてのみ記録されたのに対して、ADAMTS13同時投与を使用しない研究では(実施例3)、脳、腎臓、および肺で微小血栓も記録された。
【0285】
切断酵素ADAMTS13との同時投与後のrVWFの凝固促進活性の減少は、この動物モデルにおけるrVWFの薬理学的影響のADAMTS13の重要性を反映し、実施例3におけるヘマート(登録商標)Pの認められた毒性の欠如も一部説明される。
【0286】
実施例5:
マウスADAMTS13はrVWFと反応しない
ADAMTS13は、VWFを切断して高分子量多量体を減少させるプロテアーゼである。in vitro試験およびex vivoで証明されるように、マウスADAMTS13はヒト組換えVWFと反応しない。
【0287】
マウスはADAMTS13活性が減少しているので、マウス血漿は超巨大VWF多量体を含む。rVWFの投与により、超生理学的レベルおよび誇張された薬理学的影響が得られるであろう。
【0288】
ヒトrVWFは、マウスADAMTS13のタンパク質分解活性に耐性を示す。データにより、種々の種(マウスが含まれる)の血漿へのヒトrVWFの曝露および残存VWF活性の測定または多量体組成物の視覚化のいずれかによってin vitroでこれが証明された。データにより、マウスへのrVWFの注入後にex vivoでのマウスADAMTS13に対するヒトVWFの耐性も証明された。注入後の種々の時点で得られた血漿サンプルは、Tyr
1605−Met
1606(C末端176kDおよびN末端140kD)でのADAMTS13の切断作用に由来する任意のVWFフラグメントを示さなかった。これは、in vivoでのマウスADAMTS13に対するrVWFの耐性と一致していた。対照的に、ウサギへのrVWFの投与により、モノクローナル抗体を使用した免疫ブロット上のフラグメントの出現を使用してVWFサブユニットの切断パターンが予想された。
図1を参照のこと。
【0289】
rVWFがADAMTS13特異的タンパク質分解に全くさらされないので、rVWFはインタクトなVWFサブユニットからなる。血漿由来VWFは、VWFのA2ドメイン中のTyr1605−MET1606で切断されるサブユニットからなる。rVWFはマウスにおいてより低い分子量のVWF多量体にプロセシングされず、誇張された薬理学的影響および潜在的な血栓形成性多量体が得られる。
【0290】
実施例6〜9の実験の概説
TTPの動物モデルを、種々の条件へのマウスの曝露およびTTPの症状および毒性の観察によって確立した。データセットを、野生型(C57BL/6J)マウス、VWF欠損マウス、およびADAMTS13ノックアウトマウスから収集した。マウスを、rVWFのみ(5回投与のうちの1回)、rFVIII(アドベイト)と組み合わせたrVWF(5回のうちの各1回)、ヘマート(登録商標)P(ヒト血清から単離したVWFおよびFVIIIの市販の調製物)、または対応緩衝液の単回注射を使用して処置した。マウスを注射の1日後および14日後に観察し、その後、検死分析を行った。
【0291】
より具体的には、研究条件は以下であった。rVWFを5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW))にて単独で試験し、これら5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、所与の最も高い用量体積にしたがって投与した。
【0292】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを適用1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、およびクレアチニンキナーゼ(CK)の分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0293】
1.材料
以下の材料を実験のために使用した。
【0294】
凍結乾燥したヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)(630.85IUのVWF:RCo/バイアル(実質値))を、5ml注射用蒸留水(WFI)中に再構成した。再構成の際、rVWFは126IUのVWF:RCo/mlで存在していた。VWF緩衝液は、増量剤、表面活性剤、安定剤、およびアミノ酸と共にhepes/クエン酸緩衝液からなっていた。
【0295】
アドベイトrAHF−PFM(抗血友病因子(組換え)血漿無アルブミン法;FVIII)は、876IU/バイアルで存在していた。WFI中での再構成の際、溶液は、適切な塩、増量剤、表面活性剤、安定剤、アミノ酸、および抗酸化剤と共にTris緩衝液からなっていた。溶液を2〜8℃で保存した。
【0296】
rVWFとアドベイトとの混合物は、1.3部のrVWF:RCo(IU)対1部rFVIII(IU)の比であった。
【0297】
ビヒクルコントロールは、rVWFのクエン酸緩衝液および組み合わせ緩衝液からなり、組み合わせ緩衝液はrVWF緩衝液とアドベイト緩衝液との混合物であった。組み合わせ緩衝液を、高用量のrVWFとアドベイトとの組み合わせ群のために混合されるように、同一の体積比のrVWFおよびアドベイト緩衝液の混合によって調製した。等張生理食塩水を、ネガティブコントロールとして使用した(0.9%NaCl)。
【0298】
ヘマート(登録商標)P(ヒト血漿由来の抗血友病因子−フォン・ビルブラント因子複合体)をアクティブコントロールとして使用した。組成物は、1143.4IUのVWF:RCo/バイアル、770IUのFVIII/バイアル(ZLB Behring GmbH,Germanyから入手される)であった。WFI中での再構成の際、組成物は以下であった:114.34IUのVWF:RCo/mL、77IUのFVIII/mLを含むNaCl、クエン酸ナトリウム、ヒトアルブミン、およびグリシンの緩衝液。
【0299】
2.手順
a.動物の処置
マウスを、MacrolonIIケージに収容した。動物を、20.8±0.44℃および21.6±0.36℃の温度(平均±SEM)(目標範囲:20〜24℃)、52.8±3.51%および53.5±2.77%の相対湿度(平均±SEM)(目標範囲:45〜65%)にて、ルーム3/1−83(18回換気/時間)および1:1の明暗比(12時間明期:12時間暗期;人工照明)で維持した。
【0300】
マウスを、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)/群の28群(1日研究パートについてはA〜JおよびU〜X、14日研究パートについてはK〜TおよびY〜BB)に割り当てた。各群に、以下の処置のうちの1つを受けさせた。
−5つの用量レベルでの組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみ
−5つの用量レベルでのrVWFとアドベイトとの組み合わせ(RCoU:IUFVIII(比1.3:1))
−ヘマート(登録商標)P
−rVWFのみの対応する処方緩衝液
−高用量のrVWFとアドベイトとの組み合わせと同一の体積比のrVWFおよびアドベイトの組み合わせ処方緩衝液
−等張生理食塩水
主要評価項目は死亡であった。活性レベルおよび健康状態を注射から最初の6時間後に詳細にモニタリングし、その後14日目まで毒性を示す徴候について毎日チェックした。全ての動物を0日目および1日目(短期パート)ならびに1日目、7(8)日目、および14日目(長期パート)に秤量して身体全体の健康状態を得た。
【0301】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表4を参照のこと。
【0302】
【表4】
【0303】
b.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた(
図2〜4、13〜15、24〜26を参照のこと)。
【0304】
箱ひげ図を以下のようにデザインする。ボックスの下縁は25パーセンタイル(または第1四分位点)を示し、ボックスの上縁は75パーセンタイル(または第3四分位点)を示し、ボックスの上縁および下縁内のラインは中央値を示した。パルスは平均を示した。ボックスの下縁から上縁までの距離は四分位範囲(IQR)を示した。75パーセンタイルを超えるひげを、75パーセンタイルより上の、1.5
*IQR以下である値のうちの最も大きなデータ値まで引いた。それより大きな任意のデータ値をマークした。25パーセンタイル未満のひげを、25パーセンタイルより下の、1.5
*IQR以下である値のうちの最も小さなデータ値まで引いた。それより小さな任意のデータ値をマークした。
【0305】
平均および対応する両側95%ブートストラップ−t信頼区間(Efron B and Tibshirani RJ,An Introduction to the Bootstrap,Chapman and Hall / CRC,Boca Raton,London,N.Y.,Washington D.C.,page 160−167(1993))を、項目および用量によって分類された研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)の間の体重の変化について示した。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについての0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)、0日目から7日目までの変化(LTADS)、および0日目から14日目までの変化(LTADS)について行った。ブートストラップ−t信頼区間を、性別およびデータセットによって層別した100,000回のブートストラップ反復に基づいて計算した。
【0306】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価した。
【0307】
体重推移を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した両側並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)によって特定された対比のために比較した。
【0308】
対応緩衝液を使用した2つの用量群の比較のための多重性の調整を、ホルムの方法(1979)を使用して同時に適用した(Holm S.,Scandinavian Journal of Statistics,6:65−70(1979))。非調整および多重性調整した両側p値を示した。異なる項目の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0309】
ヘマート(登録商標)Pと対応する用量のrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価した。両側p値を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定[SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる]によって計算した。2つの異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0310】
最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、Tamhaneらによって提案された逓減様式で試験する対比を使用して評価した(Biometrics,52:21−37(1996))。この分析は探索的分析であったので、線形および逆ヘルマート対比を、最低のMDDが得られる対比を報告した推定について考慮した。
【0311】
このようにして決定された最小検出用量は、無毒性量(NOAEL)より高い用量レベルの1つである。rVWF+rFVIIIおよびrVWFの最小検出用量を、0日目から1日目までの体重の変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの体重の変化(LTADS)について個別に評価した。
【0312】
線形対比のための両側p値を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)を使用して計算した。異なる項目の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0313】
c.血液の採取、調製、ならびに血液学および血清化学の変数の測定
血液サンプルを、1日目(研究パート1)または14日目(研究パート2)の麻酔下(ケタミン+キシラジンi.m.)の心穿刺によって採取した。およそ300μLの血液を、血液学的調査用のEDTA管に採取し、およそ300μLの血液を血清調製物のために調製し、サンプルカップに充填し、分析のために研究所に室温で送った。以下の変数を、Haematologiesystem ADVIA120およびSerumchemieanalysegeraet Konelab 20iを使用して調査した。
【0314】
血液学的調査は、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球、総白血球数、白血球数の差、血液形態学の異常、血小板数、平均赤血球ヘモグロブリン、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロブリン濃度を含んでいた。血液化学調査は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびクレアチニンキナーゼ(CK)を含んでいた。
【0315】
変数であるヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKのみを、統計分析のためにさらに考慮した。
【0316】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数(ヘマトクリット、血小板数、LDH、CK)を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの図のために組み合わせた。
【0317】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、項目および用量によって分類した平均および変動係数(CV)を使用してまとめた。これらの統計を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについて得た。
【0318】
d.検死および組織学
1日目(研究パート1)および14日目(研究パート2)のすべての生存動物において検死を行った。すべての巨視的に変化した組織および以下の組織を、さらなる組織病理学的実験のために採取した。
副腎
脳(延髄を含む)
心臓
腎臓
肝臓
肺(灌流、気管なし)
脾臓
眼 。
【0319】
全ての器官および組織を、4%緩衝化ホルムアルデヒド中で固定し(眼については修正デビッドソン液中で固定)、組織学的調製のための温度で組織学研究所に送った。
【0320】
試験項目処置高用量群、基準項目処置群、コントロール群中のあらゆる動物由来の検死で採取した全組織サンプルおよび全ての巨視的所見の組織サンプルのスライドを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、病理学者によって光学顕微鏡で観察した。同一のプロセスを、全ての他の試験項目処置群中のあらゆる動物の心臓由来の組織サンプルに適用した。
【0321】
病理学者によって組織病理学的試験の間の微視的所見を記録した。個別の病状報告では、可能な限り、分布、重症度、および形態学的特徴にしたがって組織学的変化を記載した。重症度スコアを、以下の「コードおよび記号の説明」に示すように割り当てた。
【0322】
微視的所見を記録し、これらのデータ由来の発生率の表を作成した。
e.統計学的方法およびデータセット
最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、逓減様式で試験した対比の使用によってrVWF+rFVIIIおよびrVWFについて評価した。異なる用量のrVWF+rFVIIIおよびrVWFも、対応緩衝液と比較した。
【0323】
さらに、2000RCoU/kgのVWF+1347IU/kgのFVIIIの用量のヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIの用量のrVWF+rFVIIIと比較した。
【0324】
全ての統計的計算を、Linux用のSASバージョン8.2を使用して行った(SAS Institute Inc.(2000). SAS OnlineDoco,Version 8,February 2000,Cary,NC,USA: SAS Institute Inc.;SAS Institute Inc.(2001). SAS/STAT(登録商標)Software: Changes and Enhancements,Release 8.2,Cary,NC,USA: SAS Institute Inc.)。統計的有意性レベルを5%に設定した。相違なしの帰無仮説を、その両側対立仮説に対して試験した。
【0325】
短期分析データセット(STADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究1日目に屠殺された動物からなっていた。長期分析データセット(LTADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究14日目に屠殺された動物からなっていた。
【0326】
統計的評価のための主要評価項目は死亡であった。統計的評価のための二次評価項目は、体重推移(0日目の体重に対するΔ%として)ならびに血液学的変数および血清学的変数の変化であった。血液学的変数および血清学的変数の変化を、記述統計学を使用して分析した。分析した変数は、ヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKであった。
【0327】
実施例6:
C57BL/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにC57BL/6Jマウスを選択した。何故なら、この系統は、並行研究で使用されるVWF欠損マウスおよびADAMTS13欠損マウスに対する遺伝的背景系統であるからである。一般に、マウスは急性毒性研究で広く使用されており、規制当局によってこの目的に適切であると認識されている。
【0328】
2.本研究で使用したプロトコール
調査したいかなる項目を使用しても死亡は認められなかった。したがって、死亡の統計的分析を行わなかった。体重測定の前に死亡した動物に最も低い順位を与える順位づけによって体重推移の比較を計画した(Lachin JM,Controlled Clinical Trials,20(5)408−422(1999))。死亡は認められなかったので、体重推移の比較を相対変化において行い(0日目の体重のΔ%)、対応する順位において行わなかった。
【0329】
6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0330】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに変動の平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0331】
3.臨床的異常
毒性を示す臨床的異常は、4000RCoU/kgのrVWFの投与後に75%(20匹中15匹、群JおよびT)の動物で認められ、4000RCoU/kgのrVWFおよび3077IU/kgのrFVIIIの組み合わせ投与後に85%(20匹中17匹、群BおよびL)の動物で認められた。
【0332】
短期症状は、組み合わせ緩衝液(総体積49.3mL/kg)で処置した動物の20%(20匹中4匹、群AおよびK)でも認められた。全ての他の処置群は、観察期間中に正常であった。
【0333】
群あたりの動物の臨床的異常のまとめを、表5に示す。
【0334】
【表5-1】
【0335】
【表5-2】
【0336】
4.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた(
図2〜4)。体重推移の比較も表6に示す。
【0337】
【表6-1】
【0338】
【表6-2】
【0339】
【表6-3】
【0340】
【表6-4】
【0341】
4000+3077(−2.9%の平均Δ%)および2000+1538(−1.6%の平均Δ%)の用量を使用した場合、対応緩衝液(1.0%の平均Δ%)よりも統計的に有意に(5%レベルに調整した多重性で)0日目から1日目までの体重減少が大きかった。また、250+192(−1.9%の平均Δ%)の用量を使用した場合、対応緩衝液よりも統計的に有意に体重推移の減少が大きかった(多重性を調整した両側p値=0.0033)。
【0342】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0343】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、両側p値が依然として5%未満であった場合に調査した最低の用量の対比で中止した。したがって、最小検出用量は、250U/kgのVWF:RCo+192IU/kgのFVIIIであった。
【0344】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.8476であり、これは5%を超えており、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0345】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWFと対応緩衝液との間の0日目から1日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。対応緩衝液(0.5%の平均Δ%)を使用した最高用量(−1.9%の平均Δ%)のrVWFと最低用量(−2.2の平均Δ%)のrVWFとの間の比較により、非調整両側p値が5%未満であったのに対して、多重性調整した両側p値は5%を超えていた。したがって、これらの有意な結果は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0346】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、0日目から14日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)において異なる用量のrVWFと対応緩衝液との間の統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0347】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化についての最小検出用量の推定を、最高用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWFを使用した0日目から1日目までの体重の変化または0日目から14日目までの変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0348】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用して−1.1%(95%CI:−2.3%〜1.8%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用して−1.6%(95%CI:−2.6%〜−0.6%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.6931)。
【0349】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用して4.7%(95%CI:−1.1%〜7.7%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用して7.7%(95%CI:5.4%〜14.4%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2289)。
【0350】
5.血液学的変数および血清学的変数
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数(ヘマトクリット、血小板数、LDH、CK)を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの図のために組み合わせた。
【0351】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、項目および用量によって分類した平均および変動係数(CV)を使用してまとめた。これらの統計を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについて得た。
【0352】
箱ひげ図として示したヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKの比較を、
図5〜12および表7〜10に示す。
【0353】
【表7-1】
【0354】
【表7-2】
【0355】
【表8-1】
【0356】
【表8-2】
【0357】
【表9-1】
【0358】
【表9-2】
【0359】
【表10-1】
【0360】
【表10-2】
【0361】
6.検死
試験項目が関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。しかし、種々の偶発的な変化が見出され、記録された。
【0362】
7.組織病理学
短期研究(1日間)では、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処置した500RCoU/kg、1000RCoU/kg、および2000RCoU/kg、ならびに高用量群の試験項目処置動物の心臓で認められた。さらに、微小血栓(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kgおよび高用量群の試験項目処置動物およびrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量の動物で記録された。両方の変化は、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物で発生率(および重症度も一部)の明確な用量依存性の増加を示した。
【0363】
さらに、冠血管周囲炎のわずかな増加は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の動物ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量群の動物で記録された。
【0364】
脳では、クエン酸緩衝液処置コントロール動物で単一の微小血栓(最小の悪性度)が記録された。この所見は、短期研究パート(1日間)のいかなる試験項目処置動物または長期研究パート(14日間)のいかなる動物においても記録されなかった。したがって、この器官をより低い用量群で調査しなかった。
【0365】
肺では、試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、生理食塩水、またはクエン酸緩衝液で処置したコントロール動物で低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された(発生率:≦2/10;平均重症度:≦1.0)。しかし、試験項目処置動物とコントロールとの間に相違は記録されなかった。したがって、この器官をより低い用量群で調査しなかった。
【0366】
長期研究パート(14日間)では、心筋変性/修復(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみで処置された1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量群の試験項目処置動物ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した500RCoU/kg、1000RCoU/kg、2000RCoU/kg、および高用量群の動物の心臓で記録された。この変化は、発生率(および重症度も一部)のわずかな用量依存性の増加を示し、炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、ヘモシデリン沈着を伴い、時折心筋石灰化も伴った。
【0367】
肺では、試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、生理食塩水、クエン酸緩衝液、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物で低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された(発生率:≦1/10;平均重症度:≦1.0)。しかし、試験項目処置動物とコントロールとの間に相違は記録されなかった。したがって、この器官をより低用量群および中用量群で調査しなかった。
【0368】
注射部位で、単一の試験項目処置動物(低用量群)で尾血管の中等度の悪性度の血栓症が記録され、検死にて記録された尾の遠位末端の黒色の変色が得られた。この所見が本研究のいかなる他の動物においても記録されなかったので、その発生率および形態学的外観は試験項目に関連しなかった。これは、静脈内適用の技術手順によって生じたと見なされた。
【0369】
8.考察
上記のように、rVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)P、血漿由来VWF−FVIII調製物を、2000RCoU/kg(+1347IU/kgのFVIII)で試験した。緩衝液のみおよび等張生理食塩水をコントロールとして含めた。
【0370】
6時間までの臨床観察中に、4000RCoU/kgのrVWFのみ(20匹中15匹)およびrFVIIIとの組み合わせ(20匹中17匹)で処置した高用量群ならびに組み合わせ緩衝液で処置した群(20匹中4匹)で毒性を示す症状が認められた。緩衝液群で認められるように、対応する体積の49.3mL/kg中のクエン酸ナトリウムの投与用量が143mg/kgであったので、短期症状はクエン酸ナトリウム毒性(例えば、呼吸困難、痙攣、短期間の行動抑制)を示した。類似の症状は32匹の高用量群の罹患動物中2匹でも認められ、これもクエン酸ナトリウム毒性の影響を示していた。対照的に、4000RCoU/kgのrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した群の32匹の動物中30匹が、投与後6時間までに長期症状(例えば、行動抑制、運動失調、立毛)を示した。いかなる他の群で症状が認められなかったので、これらの症状は、高用量の直接有毒作用を明らかに示していた。
【0371】
rVWFを使用した0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)は認められなかった。したがって、調査した最高用量のrVWF(4000RCoU/kg)を、無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができる。
【0372】
rVWF+rFVIIIを使用した0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)を、調査したrVWF+rFVIIIの最低用量(250RCoU/kg+192IU/kgのrFVIII)と推定した。したがって、rVWF+rFVIIIを使用して調査した用量の間では、0日目から1日目までの体重推移に関してNOAEL用量と見なすことができなかった。500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIの次のより高い用量レベルで体重が増加し、250RCoU/kgのrVWFのみで処置した群と直接比較して体重減少が中程度である(−1.9%対−2.2%)ので、この推定された影響を偶然によって起こったと見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量が認められなかったので、調査した最高用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kgのrFVIII)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0373】
0日目から1日目までの平均体重推移(0日目からの体重のΔ%として)は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合−1.1%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合−1.6%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.6931)。0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合4.7%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合7.7%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2289)。
【0374】
選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、血小板数の減少は、2000RCoU/kgおよびそれを超える用量のrVWFを単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した1日後に認められた。ヘマート(登録商標)Pの投与後に変化は認められなかった。
【0375】
250RCoU/kgおよび500RCoU/kgのrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与1日後および14日後にクレアチニンキナーゼが増加した。これらの変数の増加がより低い用量群のみで認められたので、用量依存性を排除することができる。さらに、最低用量での組織病理学的相関関係は認められなかった。
【0376】
2000RCoU/kg体重の用量のrVWFまたはより高い用量のrFVIIIとの組み合わせで処置した群で1日後の乳酸デヒドロゲナーゼの増加が認められた。
【0377】
rVWFが関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。
【0378】
500RCoUのrVWF以上の用量(単独またはrFVIIIとの組み合わせ)で処置した試験項目処置動物の心臓で組織病理学的変化が記録された。これらの変化は、冠血管微小血栓、心筋壊死、心筋変性/修復(最小から中程度の重症度の全て)、および冠血管周囲炎のわずかな増加からなっていた。これらの変化のほとんどは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物において、発生率(および部分的には重症度も)のわずかな用量依存性の増加を示した。この病理組織学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する。組換え産物を投与された試験項目処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与された基準項目処置動物で記録されなかった。
【0379】
1日目に計画された検死で屠殺された試験項目処置動物では、低酸素症に高度に感受性を示す血栓塞栓性変化(thrombembolic change)が心臓で記録された。冠血管微小血栓による血管閉塞によって心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こす。
【0380】
14日目に計画された検死で屠殺された試験項目処置動物では、主に変性および/または修復性の変化が心臓で記録された(炎症、線維症、石灰化、ヘモシデリン沈着)。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。
【0381】
さらに、試験項目処置動物ならびに生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pで処置したコントロール動物の肺(および脳の一部)の器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。さらに、この研究の1つの試験項目処置動物で尾血管の血栓症が記録された。これらの「バックグラウンドの変化」は、技術的手順(偽i.v.処置、心臓内採血)に原因すると見なされ、したがって、試験項目に関連しなかった。
【0382】
まとめると、4000RCoU/kg体重のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群で6時間までに毒性を示す臨床症状が認められた。2000RCoU/kg体重のrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後に急性血小板減少症が誘導された。病理学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似していた。病理学的変化は、500RCoU/kgおよびそれを超える用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせを投与したC57BL/6Jマウスにおける試験項目(rVWF)の血栓形成性を示した。
【0383】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、正常C57BL/6JマウスはADAMTS13欠損マウスよりも感受性が低いが(実施例8)、VWF欠損マウスよりもわずかに感受性が高い(実施例7)。
【0384】
ここでポジティブコントロールとして使用したヘマート(登録商標)Pで処置したC57BL/6Jマウスにおいて実質的所見は認められなかった。ヘマート(登録商標)PはVWF多量体の組成が異なり、内因性ヒトADAMTS13による切断のために超高分子量形態を欠く。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、種々の夾雑血漿タンパク質およびクエン酸塩を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0385】
全ての結果を考慮して、C57BL/6Jマウスの全NOAELを250RCoU/kgに設定することができる。
【0386】
実施例7:VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにVWF欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFを欠く患者の容態を模倣するからである。マウスは急性毒性研究で広く使用されており、一般に、規制当局によってこの目的に適切であると認識されている。
【0387】
2.本研究で使用したプロトコール
調査したいかなる項目を使用しても死亡は認められなかった。したがって、死亡の統計的分析を行わなかった。体重測定の前に死亡した動物に最も低い順位を与える順位づけによって体重推移の比較を計画した。死亡は認められなかったので、体重推移の比較を相対変化において行い(0日目の体重のΔ%)、対応する順位において行わなかった。
【0388】
4つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIII(ゼロ用量として対応緩衝液を含む)を使用した研究を計画していたが、最終的に6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0389】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに変動の平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0390】
3.臨床的異常
本研究で死亡は認められなかった。
【0391】
毒性の臨床徴候は、4000RCoU/kgのrVWFのみの投与後の20匹中3匹(15%)の動物(群H、R)、3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFの投与後の20匹中4匹(20%)の動物(アドベイト、群C、M)、31.7mL/kgのrVWFの対応する処方物緩衝液の投与後の20匹中4匹(20%)の動物(群G、Q)、および49.3mL/kgの処方物緩衝液の組み合わせの投与後の20匹中4匹(20%)の動物(群D、N)で認められた。
【0392】
記録された症状は、治療レジメンと無関係な注射後の短期間行動抑制(2分間まで続く)であった。
【0393】
4.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた。体重分析を、表11および
図13〜15に示す。
【0394】
【表11-1】
【0395】
【表11-2】
【0396】
【表11-3】
【0397】
【表11-4】
【0398】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から1日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。対応緩衝液(−2.6%の平均Δ%)を使用した最低用量のrVWF+rFVIII(0.5%の平均Δ%)の比較について1つの非調整両側p値が0.0299であったのに対して、多重性を調整した両側p値は0.1496であった。したがって、最低用量のrVWF+rFVIIIよりも緩衝液を使用した体重推移のこの有意により大きな減少は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0399】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0400】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.1195であり、これは5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0401】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.3031であり、これは5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0402】
対応緩衝液(−0.5%の平均Δ%)よりも2000(−2.6%の平均Δ%)のrVWF用量を使用した0日目から1日目までの体重で、統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)より大きな減少が認められた。2つの非調整両側p値が5%未満であったのに対して、多重性を調整した両側p値は5%を超えていた。したがって、緩衝液(−0.5%の平均Δ%)と比較した用量1000(−2.1%の平均Δ%)および用量250(0.9%の平均Δ%)のこれらの有意な相違は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0403】
対応緩衝液(6.2%の平均Δ%)よりも用量1000(1.3%の平均Δ%)のrVWFを使用した0日目から14日目までの体重の増加が小さいという統計的傾向(多重性を調整した両側p値0.0693)があった。対応緩衝液(6.2%の平均Δ%)との最高用量のrVWF(1.8%の平均Δ%)の比較についての1つの非調整両側p値は0.0279であったのに対して、多重性を調整した両側p値は0.1117であった。したがって、対応緩衝液よりも最高用量のrVWFを使用した場合のこの有意に小さな体重推移は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0404】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、5%を超える第1の両側p値であった500U/kgの対比で中止した(両側p値=0.0741)。したがって、最小検出用量は1000U/kgのrVWFであった。
【0405】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、5%を超える第1の両側p値であった500U/kgの対比で中止した(両側p値=0.7267)。したがって、最小検出用量は1000U/kgのrVWFであった。
【0406】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に−1.7%(95%CI:−2.5%〜−0.7%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に−1.8%(95%CI:−6.1%〜0.8%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.9499)。
【0407】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に2.8%(95%CI:−2.1%〜5.8%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に6.5%(95%CI:2.2%〜10.4%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.1855)。
【0408】
5.血液学的変数および血清学的変数
選択した変数であるヘマトクリット、血小板数、CK、およびLDHの比較を、以下の
図16〜23および表12〜15に示す。
【0409】
【表12-1】
【0410】
【表12-2】
【0411】
【表13-1】
【0412】
【表13-2】
【0413】
【表14-1】
【0414】
【表14-2】
【0415】
【表15-1】
【0416】
【表15-2】
【0417】
6.検死
rVWFが関連する可能性を示す検死の所見(その発生率、分布、または形態学的外観)は存在しなかった。
【0418】
7.組織病理学
短期研究(1日間)では、心筋壊死(最小から軽度の悪性度)は、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処置した1000RCoU/kgおよびより高い用量群の試験項目処置動物で記録された。この変化は、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物でわずかな用量の関連を示した。単一の微小血栓(軽度の悪性度)は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群の単一の動物で記録された。さらに、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処理された高用量群のrVWF処置動物で冠血管周囲炎の発生率のわずかな増加が記録された。
【0419】
長期研究(14日間)では、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した2000RCoU/kgおよびより高い用量群のいくつかの試験項目処置動物で最小の心筋変性/修復が記録された。この変化は非常に低悪性度の変化であり、最小の炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、一部ヘモシデリン沈着を伴っていた。さらに、ヘマート(登録商標)Pで処置した単一の動物において最小の心筋変性/修復も記録された。
【0420】
この研究において種々の他の変化も見出された。これらは一般に静脈内適用を使用して起こる。肺内の微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、これらの所見のうちの1つであった。さらに、1日目の単一の動物で中等度の悪性度の心筋変性/修復が記録された(rFVIIIと組み合わせた1000RCoU/kg)。これらの変化の発生率、分布、および形態学的外観は、rVWFに関連しなかった。
【0421】
8.考察
上記で説明するように、rVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを2000RCoU/kg体重+1347IU/kg体重FVIIIで試験した。rVWFのみの対応緩衝液を、31.7mL/kg(最高の用量体積にしたがって)の体積で投与し、混合緩衝液を49.3mL/kgの体積で投与し、等張生理食塩水を49.3mL/kgの体積で投与した。
【0422】
短期症状(主に数分間続く行動抑制)は、高用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせおよび対応する体積の緩衝液(クエン酸ナトリウム毒性を示す)の投与後に認められた。発生率および重症度は全ての罹患群で類似していた。
【0423】
0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)は、1000RCoU/kgのrVWFと推定された。したがって、用量500RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移および0日目から14日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)と見なすことができる。
【0424】
0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化についてのrVWF+rFVIIIの最小検出用量は認められなかった。したがって、調査した最高用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kgのVWF+3077IU/kgのrFVIII)を、0日目から1日目までの体重推移および0日目から14日目までの体重推移のNOAEL用量と見なすことができる。
【0425】
0日目から1日目までの平均体重推移(0日目の体重に対するΔ%として)は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合−1.7%であり、調査した対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に−1.8%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.9499)。0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に2.8%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に6.5%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.1855)。
【0426】
選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、緩衝液処置したコントロールと比較した血小板数の低下は、4000RCoU/kgのrVWF(−23%)の投与および2000RCoU/kgのrVWF(−15%)の単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与(それぞれ、−48%および−21%)の1日後に認められた。ヘマート(登録商標)Pの投与後に変化は認められなかった。
【0427】
1000RCoU/kgのrVWFのみの投与1日後にコントロール群と比較して、クレアチニンキナーゼが増加した。500および1000RCoU/kgのrVWFのみおよびrFVIIIとの組み合わせで処置した群における観察14日後に、レベルの増加が測定された。rFVIIIと組み合わせた500RCoU/kgのrVWFで処置した群において、観察14日後に乳酸デヒドロゲナーゼの増加が認められた。これらの変数の増加がより低い用量群においてのみ認められたので、用量依存性を排除することができ、試験項目が関連する可能性は極めて低い。
【0428】
1000RCoUのrVWFまたはより高い用量(単独またはrFVIIIとの組み合わせ)でのrVWF処置動物の心臓において組織病理学的変化が記録された。冠血管微小血栓、心筋壊死(最小から軽度の悪性度の両方)、および冠血管周囲炎のわずかな増加が適用1日後に認められた(初期の影響)。心筋変性/修復(最小の悪性度)が14日後に認められ、遅延影響と評価することができる。これらの変化のいくつかは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物でわずかな用量依存性を示した。この病理組織学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する。組換え産物を投与された試験項目処置動物と対照的に、これらの所見のほとんどは、市販のヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与された基準項目処置動物で記録されなかった。しかし、最小の心筋変性/修復は、ヘマート(登録商標)Pで処置された1匹の動物でも記録された(14日目)。この所見の基準項目との関連は不明である。
【0429】
さらに、rVWF処置動物および生理食塩水処置コントロール動物の肺の器官破壊を伴わない最小から軽度の重症度の非常に低い発生率の微小血栓が記録された。これらの微小血栓は、全てがフィブリン凝縮の徴候を示さない初期段階に存在し、1日目に屠殺された動物で記録されなかった。したがって、この変化は、試験項目に関連すると見なされなかった。このバックグラウンド変化は自発的素因に原因し得、技術的手順(例えば、心臓内採血)によってさらに増強され得る。
【0430】
マウスADAMTS13は、ヒト組換えVWFと反応しない。したがって、本研究中の血液学的所見および病理組織学的所見(血栓形成性および播種性血管内凝固異常症の症状(血小板減少症、微小血栓症)が含まれる)が非切断組換えVWFに原因すると想定することができる。しかし、この動物モデルが内因性VWFを持たないので、他のマウス系統よりも感受性が低かった。VWF欠損マウスにおけるrVWFのNOAELは500RCoU/kg体重であった。
【0431】
3つの異なるマウス系統を比較して、結果は以下を示した。C57BL/6Jマウスは、VWF欠損マウスと比較して症状の重症度および組織病理学的所見が増加したので、内因性マウスrVWFの存在は毒性に影響を及ぼす。内因性マウスVWFの存在下でのADAMTS13の不在は、死亡および毒性に最も重篤な影響を及ぼす。
【0432】
実施例8:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにADAMTS13欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFのADAMTS13プロテアーゼを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0433】
2.本研究で使用したプロトコール
正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TREND)を使用して、漸増用量のrVWF(rFVIIIを使用するか使用しない)を使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行った。
【0434】
6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、体重推移の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0435】
用量4000RCoU/kgでのヘマート(登録商標)PのrVWF+rFVIIIとの比較を計画していたが、この用量はヘマート(登録商標)P(クエン酸毒性)を用いて実現不可能であることが証明されており、用量2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pを含めた。したがって、用量2000RCoU/kg+1538IU/kgのrVWF+rFVIIIを、用量2000RCoU/kgのVWFのヘマート(登録商標)Pと比較した。
【0436】
たった2匹の動物由来のデータしか利用可能でなかったので、用量4000RCoU/kgでのヘマート(登録商標)P由来の体重データを、項目の比較のために使用した体重推移の順位の計算および実験的変数から排除した。
【0437】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0438】
3.死亡分析
項目および用量あたりの観察期間および対応する両側95%信頼区間の間に死亡した動物の比率を計算した。両側95%信頼区間を、ウィルソンスコア法によって計算した(Altmanら、Brit.Med.J.Books,2nd ed.,JW Arrowsmith Ltd.,Bristol,p 46〜48(2000))。これらの分析を、STADS、LTADS、ならびにSTADSおよびLTADSの併合について個別に行った。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別におよび雄および雌の動物の組み合わせについても行った。
【0439】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の死亡の相違を、両側フィッシャー正確検定(SASプロシージャPROC MULTTESTによる)によって雄動物および雌動物の組み合わせについて評価した。この分析を、STADSおよびLTADSの併合について行った。対応緩衝液を使用した5つの用量群の比較のための多重性の調整を、ホルムの方法を使用して同時に適用した。非調整および多重性調整した両側p値を計算した。異なる項目を調査するために、多重性を調整しなかった。
【0440】
正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TRENDによる)を使用して、漸増用量のrVWF(rFVIIIを使用するか使用しない)を使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行った。この分析を、STADSおよびLTADSの併合および雄および雌の組み合わせについて行った。
【0441】
4000RCoU/kgのrVWFの投与後、40%の動物が処置の直後または4日目までに死亡した(20匹中8匹、群EおよびO)。2000RCoU/kgのrVWFの投与後、20%の動物が処置の直後または9日目までに死亡した(20匹中4匹、群BおよびL)。25%の死亡が4000RCoU/kgのrVWF+3077IU/kgのrFVIIIの投与の直後または処置の1日目までに記録された(20匹中5匹、群AおよびK)。群IおよびS(2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIII)、いかなる他のより低い用量群やネガティブコントロール群において死亡は認められなかった。
【0442】
4000RCoU/kgのVWFのヘマート(登録商標)Pで処置した群(群T)の80%(10匹中8匹)の動物が投与直後に死亡した。より低い用量レベルの2000RCoU/kgのVWFで処置した群(群JおよびU)で動物は死亡しなかった。
【0443】
死亡のまとめを以下の表16に示す。
【0444】
【表16-1】
【0445】
【表16-2】
【0446】
【表16-3】
【0447】
2000RCoU/kgの用量のrVWFで20%(20匹中4匹)が死亡し、4000RCoU/kgの用量のrVWFで40%(20匹中8匹)が死亡した。残りの調査用量では死亡は認められなかった。
【0448】
rVWF+rFVIIIを使用して、調査した最高用量で25%(20匹中5匹)が死亡した。残りの調査用量では死亡は認められなかった。
【0449】
4000RCoU/kgのヘマート(登録商標)P(+3322IU/kgのFVIII)の用量で80%(10匹中8匹)が死亡した。2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)の用量で死亡は認められなかった(20匹中0匹)。
【0450】
最高用量のrVWF+rFVIIIを使用して25%(20匹中5匹)が死亡した。残りの用量または対応緩衝液を使用して死亡は認められなかった(20匹中0匹)。
【0451】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の死亡に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0452】
最高用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の認められた25%の死亡の相違は、多重性を調整した5%レベルで統計的に有意ではなかった。しかし、非調整両側p値は0.0471であった。この生データの両側p値を、5つの異なる用量群の対応緩衝液との同時比較のために調整しなかった。したがって、有意な結果は、5つの異なる用量と緩衝液との間に相違がないという全帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こり得る。
【0453】
最高用量のrVWFと対応緩衝液との間の認められた40%の死亡の相違は統計的に有意であった(多重性を調整した両側p値=0.0164)。
【0454】
rVWFの緩衝液と2000、1000、500、および250RCoU/kgの用量との間の死亡に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0455】
コクラン・アーミテージ傾向性検定は、rVWF+rFVIIIおよびrVWFのみを使用した死亡における用量傾向仮説を支持する。両方の両側p値は1%未満であり、用量が増加するにつれて死亡率が増加することと証明していた。
【0456】
2000RCoU/kg(+1664 1U/kgのFVIII)の用量のヘマート(登録商標)P(20匹中0匹)または2000RCoU/kg+1538IU/kgのrFVIIIの用量のrVWF+rFVIII(20匹中0匹)で死亡は認められなかった(両側p値=1.0000)。
【0457】
4.臨床的異常
毒性を示す臨床的異常は、4000RCoU/kgのrVWFで処置した動物の85%(群EおよびOにおいて20匹中17匹)および4000RCoU/kgのrVWF+3077IU/kgのrFVIIIで処置した動物の75%(群AおよびKにおいて20匹中15匹)で認められた。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した動物の45%(群BおよびLにおいて20匹中9匹)および2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIで処置した動物の35%(群IおよびSにおいて20匹中7匹)で症状が認められた。毒性を示す症状は、4000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pで処置した動物の90%(群Tにおいて10匹中9匹)および2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pで処置した動物の40%(群JおよびUにおいて20匹中8匹)で認められた。
【0458】
臨床症状は、組み合わせ緩衝液で処置した動物の20%(群CおよびMにおいて20匹中4匹)でも認められた。
【0459】
全ての他の処置群は臨床的に正常であった。以下の表17にまとめを示す。
【0460】
【表17-1】
【0461】
【表17-2】
【0462】
【表17-3】
【0463】
5.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた。体重分析を、表18および
図24〜26に示す。
【0464】
【表18-1】
【0465】
【表18-2】
【0466】
【表18-3】
【0467】
【表18-4】
【0468】
最高用量(−5.7%の平均Δ%)および2番目に高い用量(−7.4%の平均Δ%)を使用した0日目から1日目までの体重の減少は、対応緩衝液(−1.1%の平均Δ%)よりも統計的に有意であった(5%レベルに調整した多重性で)。
【0469】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0470】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、第1の両側p値が5%を超えた500RCoU/kg+385IU/kgの対比で中止した(両側p値=0.1069)。したがって、最小検出用量は、1000RCoU/kg+769IU/kgのrFVIIIであった。
【0471】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.2276であり、これは5%を超えており、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0472】
対応緩衝液(−0.7%の平均Δ%)よりも最高用量(−2.7%の平均Δ%)および2番目に高い用量(−6.5%の平均Δ%)を使用した0日目から1日目までの体重で統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)大きな減少が認められた。
【0473】
多重性調整した全ての両側p値が5%未満であったので、対応緩衝液よりも調査した全ての用量を使用した0日目から14日目までの体重で統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)大きな相違が認められた。
【0474】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、第1の両側p値が5%を超えた1000RCoU/kgの対比で中止した(両側p値=0.6932)。したがって、最小検出用量は2000RCoU/kgであった。
【0475】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、両側p値が依然として5%を超えている場合に調査した最低の用量の対比で中止した。したがって、最小検出用量は250RCoU/kgであった。
【0476】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)P(2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIII)を使用して0.6%(95%CI:−0.3%〜2.7%)であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIを使用して−7.4%(95%CI:−9.4%〜−4.6%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。
【0477】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)P(2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIII)を使用して1.5%(95%CI:−1.3%〜3.5%)であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIを使用して3.6%(95%CI:2.0%〜5.8%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2079)。
【0478】
6.血液学的変数および血清学的変数
ヘマトクリット、血小板数、およびLDHの比較を、表19〜21および
図27〜32に示す。
【0479】
1000RCoU/kgのrVWFおよび緩衝液で処置した群における14日目のヘマトクリットおよび血小板数についてのデータは、サンプルの破損のために喪失している。
【0480】
【表19-1】
【0481】
【表19-2】
【0482】
【表20-1】
【0483】
【表20-2】
【0484】
【表21-1】
【0485】
【表21-2】
【0486】
7.検死
検死の所見は、rVWFの自発的に死亡した動物との関連を示した。
【0487】
8.組織病理学
短期間研究のために、心筋壊死(最小から中等度の悪性度、限局的または多巣性)は、500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせで処置したrVWF処置群で記録された。微小血栓(最小から中等度の悪性度)は、1000RCoU/kgおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせでのrVWF処置動物で記録された。これらの変化の両方は、重症度および/または発生率のわずかな用量依存性増加を示した。
【0488】
さらに、冠血管周囲炎の発生率の増加は、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせを使用した試験項目処置動物で記録された。
【0489】
膠細胞病巣(最小の悪性度)と組み合わせた微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群の脳で記録された。rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の動物およびrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kg用量群の動物で発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。
【0490】
変性病変を伴わない最小の発生率および悪性度の微小血栓は、異なる群の単一のrVWF処置動物および等張生理食塩水で処置した1つのコントロール動物で記録された。
【0491】
微小血栓(最小の悪性度)は、自発的に死亡した高用量群の1つのrVWF処置動物の眼で記録された。この所見は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物で認められなかった。
【0492】
微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、高用量群のrVWF処置動物(自発的に死亡した)および500RCoU/kg用量群のrVWF処置動物(共にrVWFのみで処置)ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび高用量群の動物の腎臓で記録された。
【0493】
試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、等張生理食塩水、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物の肺で低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された(発生率:≦4/10;平均重症度:≦1.5)。全ての微小血栓は初期段階に存在し、フィブリン凝縮の徴候を示さず、壊死または梗塞を伴わなかった。
【0494】
さらに、rVWFのみで処置した高用量群の試験項目処置動物で平均重症度の増加が最小の微小血栓が記録された。この増加は、共に中等度の重症度の肺微小血栓(悪性度3)を有していたこの群の2匹の動物に原因していた。明確な用量関連は記録できなかった。
【0495】
長期間研究のために、心筋変性/修復(最小から顕著な悪性度)は、500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせで処置した試験項目処置動物の心臓で記録された。この変化は、重症度および/または発生率の用量依存性の増加を示し、炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、しばしばヘモシデリン沈着を伴い、時折心筋石灰化も伴った。
【0496】
さらに、微小血栓および心筋壊死は、特に自発的に死亡した動物で低発生率で記録された。
【0497】
膠細胞病巣(最小の悪性度)と組み合わせた微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群および2000RCoU/kgのrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した群の脳で記録された。
【0498】
さらに、2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した動物で発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。変性病変を伴わない最小の発生率および悪性度の微小血栓は、異なる群の単一の試験項目処置動物および組み合わせ緩衝液で処置した1つのコントロール動物で記録された。
【0499】
微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量にて単独で処置した群の試験項目処置動物ならびにrFVIIIと組み合わせた500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で処置した群の動物の腎臓で記録された。この所見は、組み合わせ緩衝液で処置した1つのコントロール動物にて最小の悪性度でも記録された。
【0500】
rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群中の1つの試験項目処置動物(自発的に死亡した)において、微小血栓(軽度の悪性度)は皮質壊死(中等度の悪性度)を伴っていた。
【0501】
微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群の1つの試験項目処置動物(自発的に死亡した)の副腎皮質で記録された。この所見は、rFVIIIと組み合わせたrVWFで処置した動物で認められなかった。
【0502】
さらに、軽度から中等度の出血は、rVWFのみで処置した高用量群の3匹の試験項目処置動物(自発的に死亡した)で記録された。この所見は、rFVIIIと組み合わせたrVWFで処置した動物で認められなかった。
【0503】
低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、試験項目処置動物ならびにヘマート(登録商標)P、等張生理食塩水、クエン酸緩衝液、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物の肺で記録された(発生率:≦3/10;平均重症度:≦1.5)。全ての微小血栓(下記の1つを除く)は初期段階に存在し、フィブリン凝縮の徴候を示さず、壊死や梗塞を伴わなかった。
【0504】
さらに、平均重症度がわずかに増加した微小血栓は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の試験項目処置動物で記録された。この増加は、本研究でヒアリン肺血栓のみを有していたこの群の単一の動物に原因していた。この血栓症により、検死にて記録された肺の巨視的に視覚可能なブルーレッドの変色が得られた(“Table of Macroscopic Findings” in the pathology reportを参照のこと)。明確な用量関連は記録できなかった。
【0505】
さらに、発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群の試験項目処置動物で記録された。明確な用量関連は記録できなかった。
【0506】
9.考察
上記で説明するように、rVWFを、以下の5つの用量レベル(4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、4000RCoU/kg体重(+3322IU/kg体重のFVIII)および2000RCoU/kg体重(+1664IU/kg体重のFVIII)で試験した。
【0507】
rVWFのみの対応緩衝液を、31.7mL/kg(最も高いrVWFの用量体積にしたがって)の体積で投与し、混合緩衝液を49.3mL/kgの体積で投与し、等張生理食塩水を51.1mL/kgの体積で投与した。
【0508】
本研究において4000RCoU/kgの用量レベルのヘマート(登録商標)Pで処置した群で最も高い死亡が認められ、80%(10匹中8匹)が投与直後に死亡した。これは、クエン酸ナトリウム過負荷の明白な徴候を示す(281mg/kgクエン酸塩を、51.1mL/kgの投与体積で注射した)。マウスにおける静脈内適用後のクエン酸ナトリウムのLD50は231mg/kgであるので(Sax’s Dangerous Properties of Industrial Materials,1992)、ヘマート(登録商標)Pの用量を2000RCoU/kgのVWFに変更した。この用量レベルでのヘマート(登録商標)Pではさらなる死亡は認められなかった。
【0509】
4000RCoU/kgのrVWFのみを投与された動物の40%(20匹中8匹)が死亡したのに対して、2000RCoU/kgを投与した動物の死亡は20%(20匹中4匹)に減少した。より低い用量群ではさらなる死亡は認められなかった。3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFを投与された動物の25%(20匹中5匹)が死亡した。より低い用量の群では、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgを投与された群でさえ、さらなる死亡は認められなかった。4000RCoU/kg用量群の注射体積で141mg/kgクエン酸ナトリウムが存在していたので、このこともこれらの群におけるいくつかの突然死の理由であり得る。高用量群における症例の遅延および2000RCoU/kg用量群における突然死についてのこの死亡原因を排除することができる。
【0510】
傾向について統計的に特別に行った検定により、rVWF用量が増加するにつれて死亡率が増加することが証明された(両側p値<0.0001)。
【0511】
2000RCoU/kgのVWF+1664IU/kgのFVIIIの用量でのヘマート(登録商標)Pの投与では死亡(20匹中0匹)は認められず、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIでは死亡(20匹中0匹)は認められなかった。
【0512】
臨床所見により、広範な異常が明らかとなった。短期症状はクエン酸ナトリウムの注射量にも明らかに原因した。何故なら、クエン酸ナトリウム毒性に典型的な症状(例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)が緩衝液群の動物の20%(20匹中4匹)で記録されたからであった。
【0513】
しかし、投与された用量の症状の発生率と重症度との間に明確な相関関係が存在した。動物の85%(20匹中17匹)が4000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けたのに対して、動物の45%(20匹中9匹)は2000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けた。
【0514】
3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgを投与した動物の75%(20匹中15匹)で臨床的異常が認められたのに対して、1538IU/kgのrFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgのrVWFの投与後に35%(20匹中7匹)が影響を受けた。rVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した他のいかなる群も臨床的異常は記録されなかった。
【0515】
4000RCoU/kgの用量レベルでヘマート(登録商標)Pで処置した群で認められた症状(90%、10匹中9匹)は、クエン酸塩過負荷(281mg/kg)に明らかに原因し、それにより即死した。2000RCoU/kgヘマート(登録商標)Pで処置した群中の全ての影響を受けた動物(40%、20匹中8匹)はまた、クエン酸ナトリウム毒性を示す短期異常のみを示した(140.5mg/kg;例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)。さらなる長期症状は記録されなかった。
【0516】
0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、1000RCoU/kgのrVWF+769IU/kgのrFVIIIと推定された。従って、用量500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIを、0日目から1日目までの体重推移に関する「無毒性量」(NOAEL)用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は存在しなかった。したがって、調査された最も高い用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kg)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0517】
単独投与したrVWFについての0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、2000RCoU/kgと推定された。従って、用量1000RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができない。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は、最低の調査用量のrVWF(250RCoU/kg)と推定された。従って、調査したrVWF用量の間の用量は、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量として見なすことができない。体重の増加(緩衝液群について2.3%対4.8%)が生理食塩水(1.8%)およびヘマート(登録商標)P(1.5%)よりも高く、且つ250RCoU/kgのrVWF+rFVIII(2.7%)で処置した群に類似するので、この推定された相違は予測不可能と見なすことができる。0日目から1日目までの平均体重推移は、2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIIIの用量で投与したヘマート(登録商標)Pで0.6%であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIで−7.4%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。0日目から14日目までに統計的に有意な相違は見出されなかった。
【0518】
生存動物における選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与の1日後に血小板数の減少が認められた。さらに、2000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量での単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後にヘマトクリットが低下した。
【0519】
コントロール群と比較した場合、乳酸デヒドロゲナーゼは、2000RCoU/kgのrVWFでの処置およびより高い用量での単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与後の1日目に増加した。
【0520】
ヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)における2000RCoU/kgのVWFの適用後1日目に、血小板数の低下のみが認められた。測定された変数は、全ての罹患群で観察14日後に正常に戻った。
【0521】
組織病理学的試験によって以下の多数の罹患器官が明らかとなった:心臓(冠血管微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性/修復)、脳(微小血栓、膠細胞病巣)、眼(微小血栓)、腎臓(微小血栓、皮質壊死)、副腎(微小血栓、出血)、および肺(微小血栓の発生率または平均重症度の増加)。これらの病理組織学的変化を、播種性血管内凝固異常症(DIC)としてまとめることができる。高用量(≧2000RCoUのrVWF)では、動物は、ある程度ヒトの血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病像に類似する。低用量(500〜1000RCoU)では、主に心臓が低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する病理組織学的変化を示す影響を受けた。組換え産物を投与した試験項目処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与した基準項目処置動物で記録されなかった。ここに、コントロール動物に類似する発生率で低悪性度肺微小血栓のみが記録された。
【0522】
計画された1日目に屠殺された(または投与直後に自発的に死亡した)試験項目処置動物中で1つまたは複数の器官の血栓塞栓性変化が記録された。低酸素症に対して高い感受性を示す心臓は、最も重篤に影響をうけた器官であった。冠血管微小血栓による血管閉塞により、心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こした。
【0523】
計画された14日目に屠殺された(または投与後いくらか遅れて自発的に死亡した)試験項目処置動物の心臓において主な変性および/または修復性の変化(炎症、線維症、ヘモシデリン沈着、石灰化)が記録された。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した群の自発的に死亡した1匹で記録された腎臓皮質壊死を、同一の方法で解釈することができる。ここに、微小血栓による腎臓血管の血管閉塞により、腎梗塞を生じた。
【0524】
生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pでも処置したコントロール動物のいくつかの器官(肺、腎臓、脳)で器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された。
【0525】
1つまたは複数の器官中に有害な微小血栓症からなる病理学的変化が記録された。これらの変化は、VWF切断プロテアーゼを欠くこの動物モデル(ADAMTS13欠損マウス)における500RCoU/kgのrVWFおよびそれを超える用量を単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した試験項目rVWFの血栓形成の可能性を示していた。低用量群(rVWFのみおよびrVWFとの組み合わせ)で有害な組織病理学的変化は記録されなかったので、250RCoU/kgでNOAELを確立することができる。
【0526】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、ADAMTS13欠損マウスは、試験したマウス系統のうちで最も高い感受性を示す。ADAMTS13欠損マウスと対照的に、VWF欠損マウスおよびC57BL/6Jマウスの両方において、最高用量のrVWFを用いた場合でさえ、死亡は認められなかった。ADAMTS13ノックアウトマウスにおけるrVWFのNOAELは250RCoU/kg体重であった。
【0527】
実施例9:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えADAMTS13のヒトrVWFとの同時投与
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウスにおいて組換えヒトADAMTS13(rADAMTS13)とのrVWFの同時投与の影響を評価することであった。ヒト血漿由来調製物であるヘマート(登録商標)Pで見出された比率にしたがって、rVWFを2000RCoU/kgで投与し、rADAMTS13を19.4μg/kgで投与した。2000RCoUのrVWFを選択した。何故なら、この用量でADAMTS13欠損マウスの20%が死亡したからであった(研究番号PV1940601)。rVWFおよびrADAMTS13を、適用直前にシリンジで予め混合して注射するか(群A)、rADAMTS13およびその直後のrVWFの注射として連続的に注射した(群B)。
【0528】
ヘマート(登録商標)Pは超巨大VWF多量体を欠くだけでなく、ADAMTS13も含む。実施例8で証明するように、ADAMTS13欠損マウスは、ヘマート(登録商標)Pでの処置後に血栓形成性の徴候を示さなかった。
【0529】
1.ADAMTS13およびrVWFの同時投与プロトコール
2000RCoU/kgのrVWF(15.9mL/kgと等価)および19.4μg/kgのrADAMTS13(5mL/kgと等価)の用量を使用した。両項目を、処置群Aでの尾静脈注射の直前にシリンジ中で混合した。処置群BにおいてrADAMTS13を注射し、その直後にrVWFを注射した。
【0530】
上記実施例のプロトコールと同様に、動物を、1日目の終了まで注射後の毒性を示す徴候について観察した。血液サンプルを、血液学的変数(ヘマトクリット、血小板数)および血清学的変数(LDH、CK)の分析のために投与1日後の麻酔下(ケタミン+キシラジン i.m.)での心穿刺によって採取した。
【0531】
検死を行い、選択した器官(肺[灌流、気管なし]、心臓、腎臓、副腎、肝臓、脳[延髄なし]、脾臓、眼)を、標準的なヘマトキシリン(hemotoxylin)−エオシン染色手順後の組織病理学的評価のために4%ホルムアルデヒド溶液中で保存した。
【0532】
あらゆる動物から検死で回収した全ての組織サンプル(および全巨視的所見の組織サンプル)のスライドを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡によって試験した。
【0533】
2.結果
死亡および毒性を示す臨床徴候はいかなる動物においても記録されなかった。
【0534】
血液学的変数および血清学的変数の臨床的データおよび分析データを以下にまとめる。
【0535】
【表22】
【0536】
3.考察
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウスにおいて組換えADAMTS13との同時投与によってrVWFの急性毒性を減弱することができるかどうかを評価することであった。
【0537】
rVWFの毒性は、実施例8におけるADAMTS13欠損マウスで明らかに認められた。実施例8はまた、ヘマート(登録商標)PがADAMTS13欠損マウス(ポジティブコントロール)に有意な影響を及ぼさなかったことを証明した。
【0538】
本研究では、死亡および毒性の徴候は認められなかった。これは、ADAMTS13による切断がrVWF毒性を防止することができることを証明していた。
【0539】
分析データを比較して、予め混合した項目の投与と対照的に、rADAMTS13およびrVWFの連続投与の1日後に血小板数の低下が測定された。検死の所見は存在しなかった。試験項目処置動物群AおよびBにおいて冠血管微小血栓(最小から軽度の悪性度)、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなる心臓の組織病理学的変化が記録された。
【0540】
さらに、軽度の悪性度の線維症が群Bの単一の試験項目処置動物で記録された。投与1日後に屠殺された動物で記録されたので、この線維症は既存の慢性容態のようであった。したがって、この線維症は、試験項目と無関係であると見なされた。
【0541】
2群(A対B)を比較して、組織病理学的変化の重症度または発生率に明白な相違は記録されなかった。rADAMTS13同時投与を用いない前の研究と対照的に、死亡または巨視的所見は本研究における検死で記録されなかった。心筋壊死の発生率および重症度は両研究で類似していた。しかし、冠血管微小血栓症および冠血管周囲炎は、ADAMTS13処置マウスであまり明らかでなかった。さらに、ADAMTS13を投与されたマウスは心臓のみに微小血栓を示した一方で、前の研究ではマウスの心臓、脳、腎臓、および肺に微小血栓が記録された。
【0542】
本研究の結果は、ADAMTS13による切断によってrVWF毒性を防止することができることを証明している。
【0543】
本発明の実施のための特定の様式を含むことが見出されたか提案された特定の実施形態に関して本発明を記載している。記載の本発明の種々の修正形態および変形形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は特定の実施形態と併せて記載されているが、特許請求の範囲に記載の本発明がかかる特定の実施形態に過度に制限されるべきでないと理解すべきである。実際、関連分野の当業者に明白な記載の発明実施の様式の種々の修正形態が以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。