特許第5749649号(P5749649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5749649血栓性血小板減少性紫斑病のモデルおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749649
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】血栓性血小板減少性紫斑病のモデルおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20150625BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALI20150625BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20150625BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20150625BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   A01K67/027
   C12Q1/32
   C12Q1/48 Z
   A61P7/04
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
【請求項の数】10
【全頁数】134
(21)【出願番号】特願2011-533425(P2011-533425)
(86)(22)【出願日】2009年10月27日
(65)【公表番号】特表2012-506707(P2012-506707A)
(43)【公表日】2012年3月22日
(86)【国際出願番号】US2009062228
(87)【国際公開番号】WO2010062604
(87)【国際公開日】20100603
【審査請求日】2012年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/108,781
(32)【優先日】2008年10月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/156,768
(32)【優先日】2009年3月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare SA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ, ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ムーヒトシュ, エヴァ−マリア
(72)【発明者】
【氏名】タレセク, ペーター
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/133955(WO,A1)
【文献】 CHAUHAN A K,THE COMBINED ROLES OF ADAMTS13 AND VWF IN MURINE MODELS OF TTP, ENDOTOXEMIA, AND THROMBOSIS,BLOOD,2007年12月14日,V111 N7,P3452-3457
【文献】 NIIYA MASAMI,PHENOTYPIC CORRECTION OF ADAMTS13-DEFICIENT MICE BY EARLY INTRA-AMNIOTIC GENE TRANSFER OF LENTIVIRAL VECTOR ENCODING ADAMTS13 GENES,BLOOD,2007年11月16日,V110 N11PT1,P66A
【文献】 CHAUHAN AK,SYSTEMIC ANTITHROMBOTIC EFFECTS OF ADAMTS13,THE JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE,2006年 3月13日,V203 N3,P767-776
【文献】 NIIYA M,CORRECTION OF ADAMTS13 DEFICIENCY BY IN UTERO GENE TRANSFER OF LENTIVIRAL VECTOR ENCODING ADAMTS13 GENES,MOL. THER.,2009年 1月,V17 N1,P34-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/027
A61P 7/04
C12Q 1/32
C12Q 1/48
G01N 33/15
G01N 33/50
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固障害の処置における治療薬剤の有効性を試験するための非ヒト動物モデルであって、前記動物モデルは、(i)1つまたは複数の血餅を含み、(ii)組換えフォン・ビルブラント因子(VWF)を含み、そして、(iii)組換えVWFポリペプチドを分解する能力を持たず、前記障害が1つまたは複数の血餅の存在によって特徴づけられ、ここで、該動物モデルにおける該1つまたは複数の血餅が、血栓形成性用量の組換えVWFの該動物モデルへの投与によって生じる、動物モデル。
【請求項2】
前記障害が血栓性血小板減少性紫斑病である、請求項1に記載のモデル。
【請求項3】
前記組換えフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドがヒトのものである、請求項1に記載のモデル。
【請求項4】
前記モデルがマウスである、請求項1に記載のモデル。
【請求項5】
前記マウスはトロンボスポンジン1型ドメイン13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS13)ポリペプチドが欠損している、請求項4に記載のモデル。
【請求項6】
前記マウスはフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドが欠損している、請求項4に記載のモデル。
【請求項7】
前記マウスはC57BL/6J系統のマウスである、請求項4に記載のモデル。
【請求項8】
前記用量が250RCoU/kg体重を超える量である、請求項1〜5または7のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項9】
前記用量が500RCoU/kg体重を超える量である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモデル。
【請求項10】
組換え第VIII因子(rFVIII)がさらに前記動物モデルに投与される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年10月27日に出願された米国仮特許出願番号61/108,781、および2009年3月2日に出願された米国仮特許出願番号61/156,768の利益を主張し、上記米国仮特許出願の各々は、その全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)マウスモデルの開発に関する。より具体的には、本発明は、TTPマウスモデルの開発のためのTTP様症状を誘導するための種々のマウス系統におけるフォン・ビルブラント因子(VWF)の超高分子量多量体の使用に関する。本発明はまた、かかる動物疾患モデルの作製方法およびTTP処置で有効な生物学的に活性な化合物を同定するためのスクリーニング方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血栓性血小板減少性紫斑病(「TTP」またはモスコウィッツ病)は、体内の微小血管中に広範な微視的血餅を形成させる重篤且つ稀な血液凝固系の障害である。TTPのほとんどの症例は、酵素ADAMTS13(トロンボスポンジン1型ドメイン13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(a disintegrin and metalloprotease with thrombospondin type 1 domains 13))の欠損または阻害から発症する。ADAMTS13は、フォン・ビルブラント因子(VWF)の巨大な多量体の切断を担うタンパク質分解酵素であり、VWF切断プロテアーゼとしても公知である。したがって、ADAMTS13の生物学的機能、VWFの超高分子量多量体の存在、およびTTPまたはTTP様臨床症状の発生数は関連する。TTPはまた、癌、化学療法、HIV感染、ホルモン代償療法、およびエストロゲン、ならびに多数の一般に使用される薬物療法(チクロピジン、クロピドグレル、およびシクロスポリンAが含まれる)に関連し得る。
【0004】
低レベルのADAMTS13によって血中の凝固物質(血小板)が集塊をなす。血小板が集塊をなすにつれて、血流中で利用可能な血小板が減少する。この集塊(すなわち、凝集)により、皮下出血が起こり、紫斑と呼ばれる紫色の斑点が生じ得る。これはまた、赤血球が微視的血小板凝集塊を通過する際に血小板が剪断応力に供されるにつれて、赤血球が崩壊し得る(溶血し得る)。したがって、赤血球は未熟なまま破壊される。血流の減少および細胞傷害により、末端器官障害を起こす。現在の治療は、ADAMTS13に対する循環抗体を減少させ、血中ADAMTS13レベルを補充するための支持およびプラスマフェレシスに基づく。
【0005】
TTPおよび血友病のような障害の処置のために生物製剤を使用する場合、タンパク質治療に対する抗体の開発は問題であり続けている。これらの抗体は、しばしば、タンパク質治療薬の活性を阻害し、それにより、処置の有効性を軽減するか、治療レベルを維持するために薬物の用量を増加させる必要がある。これらの血液障害はしばしば生涯の容態であるので、治療血液凝固因子に特異的な抗体の出現は、特に、処置を受ける患者にとって困難であり、これらの患者を処置する医師において難題である。
【0006】
リード化合物の薬物有効性および至適化の評価で前臨床モデルが果たす役割は、製薬会社において不可欠な役割である。ヒト疾患の頑強で信頼できる動物モデルなしでは、より良好な分子のデザインは困難な作業となる。この目的のために、トランスジェニックおよびノックアウトのマウスモデルおよびラットモデルは非常に有望であるが、医薬品産業で依然として未活用である。かかるモデルの使用が制限されているのは、その一部が、多数の現存のトランスジェニックおよびノックアウトモデルが前臨床スクリーニングモデルの本質、妥当性、信頼性、および有用性を示すことができないことによる可能性が高い。
【0007】
TTPおよび治療の潜在性をより深く理解することを目指して、障害の動物モデルが探求されている。TTPモデルを再作製するための初期の試みは、例えば、毒因子ボトロセチンまたは2−ブトキシエタノール(BE)を使用した化学的誘導に依存していた。ボトロセチンはVWFの結合および多量体化によって作用し、血小板凝集を起こす。この因子で処置した動物は、一過性の血小板減少症を示すが、全ての症状がTTPに関連するわけではなかった(非特許文献1;非特許文献2)。同様に、BE処置動物はTTPの一定の症状(溶血および血栓症が含まれる)を生じる(非特許文献3)。しかし、このモデルはTTPの全ての顕著な症状を示すことができない。後者の試みには、ADAMTS13欠損マウスの作製が含まれていた。しかし、ほとんどの遺伝的背景では、この表現型は最小であり、ADAMTS13欠損はTTPを引き起こすのに十分ではないことを示す(非特許文献4;非特許文献5)。
【0008】
現在、TTP処置のための試験治療に妥当な動物モデルは利用可能ではない。治療は限定的であり、この治療には、血漿の処置、血漿交換、および脾臓摘出などの手順が含まれる。したがって、ヒト患者に関する研究を行うことなくin vivoで種々のTTP治療の効果を研究するためのかかるモデルの開発および方法の開発が当該分野で必要である。さらに、患者への外因性治療タンパク質の投与によってin vivoでタンパク質活性を阻害する抗原特異的抗体が産生されるかどうかを決定することが当該分野で依然として必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sandersら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.(2005)15:793−800
【非特許文献2】Brinkhousら、Mayo Clin.Proc.(1991)66:733−42
【非特許文献3】Ezovら、Cardiovasc.Toxicol.(2002)2:181−93
【非特許文献4】Bannoら、Blood(2006)107:3161−66
【非特許文献5】Deschら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.(2007)27:1901−08
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
本発明は、超高分子量および高分子量の多量体を含む組換えヒトVWF(血小板減少症および微小血栓症に関連する)をマウスに投与してTTPの臨床症状を誘導する種々の動物モデルの提供によって血液凝固障害(blood clotting disorder)の処置に関する当該分野における1つまたは複数の要求に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、本発明は、正常マウス、VWF欠損マウス、およびADAMTS13ノックアウトマウスを含む。したがって、本発明は、TTPを処置するための薬物のin vivo有効性を試験するために使用することができる種々の動物モデルを提供する。本発明は、精製されたか組換えのADAMTS13を含む調製物など(これに制限されない)の化合物と共に目的の薬剤を投与することによって併用療法を使用することを意図する。
【0012】
1つの実施形態では、本発明は、血液凝固障害処置における治療薬の有効性の試験のための動物モデルを含む。かかる動物モデルは、一般に、組換えVWFポリペプチドを分解できない。かかる凝固障害は、一般に、前述の動物モデル中の1つまたは複数の血餅の存在によって特徴づけられる。1つの態様では、障害は血栓性血小板減少性紫斑病である。別の態様では、組換えVWFポリペプチドはヒトである。さらなる態様では、モデルはマウスである。さらなる態様では、マウスは、ADAMTS13ポリペプチドが欠損している。さらに別の態様では、マウスは、VWFポリペプチドが欠損している。さらに別の態様では、マウスモデルはC57BL/6J系統である。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、死亡を引き起こすのに有効な量で組換えフォン・ビルブラント因子を投与した哺乳動物における血液凝固を薬剤が減少させる能力の試験方法を含む。かかる方法は、一般に、試験薬剤の存在下および非存在下での動物モデルの死亡率を比較する工程を含み、試験薬剤の存在下での死亡の減少が試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す。1つの態様では、動物モデルはADAMTS13ポリペプチドが欠損している。種々の態様では、組換えVWFの量は、1000RCoU/kg超、2000RCoU/kg超、または4000RCoU/kg超である。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、病状(pathology)を引き起こすのに有効な量で組換えVWFポリペプチドを投与した哺乳動物における血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法を含む。かかる方法は、一般に、試験薬剤の存在下および非存在下での動物モデルの病状を比較する工程を含み、試験薬剤の存在下での病状の発生率または重症度の減少が試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す。種々の態様では、本発明の方法は、ある範囲の投薬量にわたって試験薬剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、組換えVWFポリペプチドはヒトである。種々の態様では、組換えVWFポリペプチドの量は、250RCoU/kg超、500RCoU/kg超、1000RCoU/kg超、2000RCoU/kg超、または4000RCoU/kg超である。種々の態様では、動物モデルは、ADAMTS13ポリペプチドまたはVWFポリペプチドが欠損している。いくつかの態様では、動物モデルはマウスである。さらなる態様では、マウスはC57BL/6J系統のマウスである。
【0015】
種々の態様では、病状は、臨床的病状、組織学的病状、または行動的病状である。かかる臨床的病状は、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、クレアチニンキナーゼレベル、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球数、総白血球数、白血球百分比、血液形態学異常、血小板数、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロブリン濃度、または尿中血球レベルの1つまたは複数の変化によって明白であり得る。他の態様では、病状は組織学的病状である。かかる組織学的病状は、1つまたは複数の以下の症状発現(微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎(coronary perivasculitis)の増加、心筋変性、心筋梗塞、心筋修復、膠細胞病巣、皮質壊死、出血、微小血栓の発生率または平均重症度の増加、播種性血管内凝固異常症(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、虚血性心疾患、血栓塞栓性変化、反応性冠血管周囲炎、炎症、線維症、壊死、ヘモシデリン沈着、石灰化、腎梗塞、または体重減少が含まれるが、これらに限定されない)によって明白であり得る。かかる行動的病状は、1つまたは複数の以下の症状発現(行動抑制(behavioral depression)、腹臥位、側臥位(side body position)、異常な体位、呼吸困難、運動失調、不動、痙攣(convulsion)、筋痙攣(cramp)、または立毛が含まれるが、これらに限定されない)によって明白であり得る。
【0016】
本発明は、超高分子量および高分子量の多量体を含む組換えヒトVWF(rVWF)がマウスにおいてTTPの臨床症状を誘導することができるという所見に基づく。rVWFの投与によってマウスにおいて血小板減少症および微小血栓症が引き起こされることが認められた。本明細書中に記載のマウスモデルを使用して、TTPの予防治療および改善治療をデザインすることができる。
【0017】
本発明は、哺乳動物においてTTPの症状を誘導する方法であって、組換えヒトVWF(rVWF)を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、投与により、哺乳動物における少なくとも1つのTTPの症状をもたらす、方法を提供する。いくつかの実施形態では、rVWFはADAMTS13によって有意に切断されない。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、げっ歯類、および非ヒト霊長類からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、TTPの症状は、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、血中クレアチニンレベルの増加、微小血栓の増加、および血中乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加からなる群より選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、哺乳動物はマウスまたは他のげっ歯類であり、正常な内因性VWFレベルを有する。いくつかの実施形態では、マウスまたは他のげっ歯類は、欠損レベルの内因性VWFを有する(例えば、VWFノックアウトマウス)。いくつかの実施形態では、マウスまたは他のげっ歯類は欠損レベルの内因性ADAMTS13を有する(例えば、ADAMTS13ノックアウトマウス)。いくつかの実施形態では、マウスまたは他のげっ歯類は内因性ADAMTS13および内因性VWFの両方が欠損している。いくつかの実施形態では、マウスまたは他のげっ歯類はヒト化されている。いくつかの実施形態では、マウスまたは他のげっ歯類は免疫不全である。
【0019】
いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物に急性応答を生じさせるためにrVWFを1回投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを、少なくとも約1000RCoU/kg哺乳動物体重の用量で投与する。いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも約1500RCoU/kg(例えば、2000、2500、3000、4000、または5000RCoU/kg哺乳動物体重)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、哺乳動物に低レベルの応答を生じさせるために、rVWFを、1回を超えて、例えば、慢性的に投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを、定期的に、例えば、約24、48、または72時間に1回、または1週間に1回投与する。いくつかの実施形態では、定期的投与を、少なくとも1週間、1ヶ月、または2または3ヶ月にわたって継続する。かかる実施形態では、rVWFを、一般に、急性モデルよりも低い用量(例えば、少なくとも約250RCoU/kg体重)で投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを、約300、400、500、600、700、800、または1000RCoU/kg哺乳動物体重で投与する。
【0021】
いくつかの実施形態では、組換え第VIII因子(rFVIII)を、哺乳動物にさらに投与する。いくつかの実施形態では、rFVIIIを、同時に(例えば、単一組成物中でrVWFと共に)投与する。いくつかの実施形態では、rVWFおよびrFVIIIを個別に(例えば、連続的に)投与する。いくつかの実施形態では、rVWFおよびrFVIIIを、正常血漿で見出される用量比に類似の用量比で投与する。いくつかの実施形態では、rFVIIIを、少なくとも約500IU/kg哺乳動物体重(例えば、少なくとも750、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、または5000IU/kg体重)の用量で投与する。
【0022】
いくつかの実施形態では、rVWFを静脈内投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを、注射(例えば、皮下、腹腔内、および筋肉内など)を介して投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを吸入によって投与する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、TTPの哺乳動物モデルであって、前記モデルがrVWFを含む組成物を注射した哺乳動物を含み、rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、投与によって哺乳動物におけるTTPの少なくとも1つの症状をもたらす、哺乳動物モデルを提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、げっ歯類、または非ヒト霊長類からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、TTPの症状は、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、血中クレアチニンレベルの増加、微小血栓の増加、および血中乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明は、トランスジェニック哺乳動物を含むTTPの哺乳動物モデルであって、トランスジェニック哺乳動物がrVWFをコードするポリヌクレオチドを含む導入遺伝子から組換えヒトフォン・ビルブラント因子(rVWF)を発現し、rVWFが高分子量多量体を形成し、注射により少なくとも1つのTTPの症状が形成される、哺乳動物モデルを提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、げっ歯類、または非ヒト霊長類からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、TTPの症状は、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、血中クレアチニンレベルの増加、微小血栓の増加、および血中乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加からなる群より選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、哺乳動物モデルは、急性TTPモデルである。いくつかの実施形態では、rVWFを1回だけ投与する。かかる実施形態では、rVWFを、少なくとも1000RCoU/kg哺乳動物体重の用量で注射する。いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも1500RCoU/kg(例えば、2000、2500、3000、4000、または5000RCoU/kg哺乳動物体重)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、哺乳動物モデルは慢性TTPモデルである。いくつかの実施形態では、rVWFを1回を超えて投与する。例えば、rVWFを、定期的に(例えば、24、48、または72時間毎、または1週間毎)投与することができる。いくつかの実施形態では、rVWFを、例えば、少なくとも250RCoU/kg体重の用量で投与する。いくつかの実施形態では、rVWFを、300、400、500、600、700、800、または1000RCoU/kg哺乳動物体重で投与する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明は、TTPの症状に及ぼす試験組成物の影響を評価する方法であって、(a)rVWFを含む組成物を哺乳動物に投与する工程であって、rVWFが高分子量多量体を形成し、投与により、少なくとも1つのTTPの症状を形成する、工程、(b)試験組成物を哺乳動物に投与する工程、および(c)少なくとも1つのTTPの症状に及ぼす試験組成物の影響を決定する工程を含む、方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、げっ歯類、または非ヒト霊長類からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、TTPの症状は、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、血中クレアチニンレベルの増加、微小血栓の増加、および血中乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加からなる群より選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、試験組成物の影響を、TTPの急性哺乳動物モデルで評価する。いくつかの実施形態では、試験組成物の影響を、TTPの慢性哺乳動物モデルで評価する。
【0030】
いくつかの実施形態では、試験組成物およびrVWFを含む組成物を同時に投与する。いくつかの実施形態では、例えば、少なくとも1つのTTPの症状の防止、発症の遅延、または重症度の軽減のために、試験組成物を、rVWFを含む組成物の前に投与する。
【0031】
いくつかの実施形態では、試験組成物を、rVWF組成物投与の少なくとも1時間後に投与する。いくつかの実施形態では、試験組成物を、rVWF組成物投与の少なくとも3時間後(例えば、rVWF組成物投与の少なくとも5、6、8、12、18、24、または48時間後)に投与する。いくつかの実施形態では、試験組成物を、rVWF組成物投与の少なくとも1または2週間後に投与する。
【0032】
いくつかの実施形態では、試験組成物の影響を、試験組成物を投与していないコントロール哺乳動物および/またはrVWFを含む組成物を投与していないコントロール哺乳動物との比較によって評価する。いくつかの実施形態では、試験組成物の影響を、rVWFを含む組成物の投与前の同一哺乳動物の比較によって評価する。
【0033】
いくつかの実施形態では、試験組成物は組換えプロテアーゼ(例えば、組換えADAMTS13)である。他の実施形態では、試験組成物は、血漿由来生成物(例えば、新鮮凍結血漿または血漿の精製画分)である。他の実施形態では、試験組成物は、非タンパク質性治療薬である。いくつかの実施形態では、非タンパク質性治療薬は小分子治療薬である。いくつかのこれらの実施形態では、小分子は、糖質コルチコイドであり、他の実施形態では、抗血小板薬物(例えば、アスピリン、ジピリダモール)であり、他の実施形態では、アゾチプリン、シクロホスファミド、またはプロスタサイクリンなどである。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、本発明の精神および範囲での種々の変更形態および修正形態がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体例は、本発明の特定の実施形態を示す一方で、例示のみを目的として示すと理解すべきである。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
血液凝固障害の処置における治療薬剤の有効性を試験するための動物モデルであって、前記動物モデルが組換えフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドを分解する能力を持たず、前記障害が前記動物モデルにおける1つまたは複数の血餅の存在によって特徴づけられる、動物モデル。
(項目2)
前記障害が血栓性血小板減少性紫斑病である、項目1に記載のモデル。
(項目3)
前記組換えフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドがヒトのものである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記モデルがマウスである、項目1に記載のモデル。
(項目5)
前記マウスはトロンボスポンジン1型ドメイン13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS13)ポリペプチドが欠損している、項目4に記載のモデル。
(項目6)
前記マウスはフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドが欠損している、項目4に記載のモデル。
(項目7)
前記マウスはC57BL/6J系統のマウスである、項目4に記載のモデル。
(項目8)
死亡を引き起こすのに有効な量で組換えフォン・ビルブラント因子を投与した哺乳動物における血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法であって、試験薬剤の存在下および非存在下での動物モデルの死亡率を比較する工程を含み、前記試験薬剤の存在下での死亡の減少は前記試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す、方法。
(項目9)
前記動物モデルがトロンボスポンジン1型ドメイン13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS13)ポリペプチドを欠損する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が1000RCoU/kgを超える、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が2000RCoU/kgを超える、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が4000RCoU/kgを超える、項目11に記載の方法。
(項目13)
病状を引き起こすのに有効な量で組換えフォン・ビルブラント因子を投与した哺乳動物における血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法であって、試験薬剤の存在下および非存在下での動物モデルの病状を比較する工程を含み、前記試験薬剤の存在下での病状の発生率または重症度の減少は前記試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す、方法。
(項目14)
ある範囲の投薬量にわたって前記試験薬剤を投与する工程をさらに含む、項目8または13に記載の方法。
(項目15)
前記組換えフォン・ビルブラント因子(VWF)ポリペプチドがヒトのものである、項目8または13に記載の方法。
(項目16)
前記動物モデルがトロンボスポンジン1型ドメイン13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(ADAMTS13)ポリペプチドを欠損する、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が250RCoU/kgを超える、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が500RCoU/kgを超える、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が1000RCoU/kgを超える、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が2000RCoU/kgを超える、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が4000RCoU/kgを超える、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記動物モデルがフォン・ビルブラント因子ポリペプチドを欠損する、項目13に記載の方法。
(項目23)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が500RCoU/kgを超える、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が1000RCoU/kgを超える、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が2000RCoU/kgを超える、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が4000RCoU/kgを超える、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記動物モデルがC57BL/6J系統のマウスである、項目13に記載の方法。
(項目28)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が250RCoU/kgを超える、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が500RCoU/kgを超える、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が1000RCoU/kgを超える、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が2000RCoU/kgを超える、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記組換えフォン・ビルブラント因子の量が4000RCoU/kgを超える、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記動物モデルがマウスである、項目8から26のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記マウスがC57BL/6J系統のマウスである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記病状が臨床的病状である、項目13に記載の方法。
(項目36)
前記臨床的病状が、乳酸デヒドロゲナーゼレベル、クレアチニンキナーゼレベル、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球数、総白血球数、白血球百分比、血液形態学異常、血小板数、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロブリン濃度、または尿中血球レベルの変化である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記病状が組織学的病状である、項目13に記載の方法。
(項目38)
前記組織学的病状が、微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性、心筋梗塞、心筋修復、膠細胞病巣、皮質壊死、出血、微小血栓の発生率または平均重症度の増加、播種性血管内凝固異常症(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、虚血性心疾患、血栓塞栓性変化、反応性冠血管周囲炎、炎症、線維症、壊死、ヘモシデリン沈着、石灰化、腎梗塞、または体重減少である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記病状が行動的病状である、項目13に記載の方法。
(項目40)
前記行動的病状が、行動抑制、腹臥位、側臥位、異常な体位、呼吸困難、運動失調、不動、痙攣、筋痙攣、または立毛である、項目39に記載の方法。
(項目41)
マウスにおいて血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の症状を誘導する方法であって、前記方法は、組換えヒトフォン・ビルブラント因子(rVWF)を含む組成物を前記マウスに投与する工程を含み、前記rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、前記投与により、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加、および微小血栓の増加からなる群より選択される前記マウスにおける少なくとも1つのTTPの症状をもたらす、方法。
(項目42)
前記マウスが正常レベルの内因性フォン・ビルブラント因子(VWF)を有する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFを有する、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記マウスが欠損レベルの内因性ADAMTS13を有する、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFおよび内因性ADAMTS13の両方を有する、項目41に記載の方法。
(項目46)
前記マウスに組換え第VIII因子を投与する工程をさらに含む、項目41に記載の方法。
(項目47)
前記rVWFを少なくとも1000RCoU/kg体重の用量で投与する、項目41に記載の方法。
(項目48)
前記rVWFを少なくとも2000RCoU/kg体重の用量で投与する、項目41に記載の方法。
(項目49)
前記rVWFを少なくとも4000RCoU/kg体重の用量で投与する、項目41に記載の方法。
(項目50)
前記rVWFを静脈内投与する、項目41に記載の方法。
(項目51)
前記rVWFを1回を超えて投与する、項目41に記載の方法。
(項目52)
前記rVWFを定期的に投与する、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記rVWFを250RCoU/kg体重と1000RCoU/kg体重との間の用量で投与する、項目50に記載の方法。
(項目54)
組換えヒトフォン・ビルブラント因子(rVWF)を含む組成物を注射したマウスを含む、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のマウスモデルであって、前記rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、前記注射により、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加、および微小血栓の増加からなる群より選択される少なくとも1つのTTPの症状をもたらす、マウスモデル。
(項目55)
前記マウスが正常レベルの内因性フォン・ビルブラント因子(VWF)を有する、項目54に記載のマウスモデル。
(項目56)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFを有する、項目54に記載のマウスモデル。
(項目57)
前記マウスが欠損レベルの内因性ADAMTS13を有する、項目54に記載のマウスモデル。
(項目58)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFおよび内因性ADAMTS13の両方を有する、項目54に記載のマウスモデル。
(項目59)
トランスジェニックマウスを含む血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)のマウスモデルであって、前記トランスジェニックマウスがrVWFをコードするポリヌクレオチドを含む導入遺伝子から組換えヒトフォン・ビルブラント因子(rVWF)を発現し、前記rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、前記発現により、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加、および微小血栓の増加からなる群より選択される少なくとも1つのTTPの症状をもたらす、マウスモデル。
(項目60)
前記マウスが正常レベルの内因性フォン・ビルブラント因子(VWF)を有する、項目59に記載のマウスモデル。
(項目61)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFを有する、項目59に記載のマウスモデル。
(項目62)
前記マウスが欠損レベルの内因性ADAMTS13を有する、項目59に記載のマウスモデル。
(項目63)
前記マウスが欠損レベルの内因性VWFおよび内因性ADAMTS13の両方を有する、項目59に記載のマウスモデル。
(項目64)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の症状に及ぼす試験組成物の影響を評価するための方法であって、前記方法は:
(a)組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)を含む組成物をマウスに投与する工程であって、前記rVWF組成物が高分子量多量体を形成し、前記投与により、血小板レベルの減少、貧血、組織病理学的影響、血中クレアチニンキナーゼレベルの増加、乳酸デヒドロゲナーゼレベルの増加、および微小血栓の増加からなる群より選択される少なくとも1つのTTPの症状を形成する、工程、
(b)前記試験組成物を前記マウスに投与する工程、および
(c)前記TTPの症状に及ぼす前記試験組成物の影響を決定する工程
を含む、方法。
(項目65)
前記試験組成物および前記rVWF組成物を同時に投与する、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記試験組成物を前記rVWF組成物の前に投与する、項目64に記載の方法。
(項目67)
前記試験組成物を前記rVWF組成物の後に投与する、項目64に記載の方法。
(項目68)
前記試験組成物を1回を超えて投与する、項目64に記載の方法。


【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、各環境におけるVWF形態のサイズを示す種々の供給源由来のVWFのゲル電気泳動である。レーン1は正常ヒト血漿であり、レーン2はC57BL/6Jマウス血漿であり、レーン5および6はまたC57BL/6Jマウスに由来し、レーン3および4はADAMTS13欠損マウスに由来する。
図2図2は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図3図3は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図4図4は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図5図5は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図6図6は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図7図7は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図8図8は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図9図9は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図10図10は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図11図11は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図12図12は、C57BL/6Jマウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図13図13は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図14図14は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図15図15は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図16図16は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図17図17は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図18図18は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図19図19は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図20図20は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図21図21は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図22図22は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図23図23は、VWF欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、クレアチニンキナーゼ(CK)、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図24図24は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図25図25は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図26図26は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたる体重の変化を示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図27図27は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図28図28は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図29図29は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図30図30は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図31図31は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
図32図32は、ADAMTS13欠損マウスについての研究期間にわたるヘマトクリット、血小板数、およびラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)のデータを示す。分析の詳細を、実施例により詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、超高分子量および高分子量の多量体を含む組換えヒトVWF(「rVWF」という)が、マウスに投与した場合にTTPの臨床症状を誘導することができ、且つ血小板減少症および微小血栓症に関連するという所見に基づいたTTPのモデルを提供する。これらの影響は、正常マウス、VWF欠損マウスで認められ、最も顕著にはヒトADAMTS13も欠くADAMTS13欠損マウスで認められた。コントロール実験では、データは、超高分子量多量体を欠くヒトVWFは、ヒト血漿から精製することができる場合、TTP様症状を誘導できなかったことを証明した。データは、rVWFの適用によって誘導されたTTP様症状を有するマウスのADAMTS13処置が別の方法でrVWFによって誘導されたTTP様症状の発生数を防止することも証明した。したがって、本発明は、TTP処置において種々の薬剤のin vivo有効性を試験するために使用することができるモデルを提供する。提供した方法は、当該分野で必要とされるTTP処置における新規の治療の有効性の改善された試験方法に取り組んでいる。
【0037】
したがって、体内の血管中の血餅の存在によって特徴づけられる血液凝固障害の処置における治療薬の有効性を試験するための動物モデルを提供する。
【0038】
1つの態様では、種々の量の薬剤と組み合わせて死亡させるのに有効な量の組換えVWFを動物モデルに投与する工程、薬剤に曝露されていないモデルと比較した死亡の減少についてモデルを試験する工程、およびモデルの死亡を減少させる能力について薬剤を選択する工程を含む、哺乳動物において血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法を提供する。より簡潔に述べれば、試験薬剤の存在下および非存在下で動物モデルの死亡率を比較する工程を含み、試験薬剤の存在下での死亡の減少が試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す、死亡を引き起こすのに有効な量で組換えVWFを投与した哺乳動物における血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法を提供する。
【0039】
種々の量の薬剤と組み合わせて動物モデルに病状を生じさせるのに有効な量の組換えVWFを動物モデルに投与する工程、薬剤に曝露されていないモデルと比較した病状の改善についてモデルを試験する工程、およびモデルの病状を改善する能力について薬剤を選択する工程を含む、哺乳動物において血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法も提供する。ここに再度およびより簡潔に述べれば、試験薬剤の存在下および非存在下で動物モデルの病状を比較する工程を含み、試験薬剤の存在下での病状の発生率または重症度の減少が試験薬剤が血液凝固を減少させる能力を有することを示す、病状を引き起こすのに有効な量で組換えフォン・ビルブラント因子を投与した哺乳動物における血液凝固を減少させる能力について薬剤を試験する方法を提供する。
【0040】
種々の実施形態では、組換えVWFを、少なくとも約10RCoU/kg体重、少なくとも約20RCoU/kg体重、少なくとも約30RCoU/kg体重、少なくとも約40RCoU/kg体重、少なくとも約50RCoU/kg体重、少なくとも約60RCoU/kg体重、少なくとも約70RCoU/kg体重、少なくとも約80RCoU/kg体重、少なくとも約90RCoU/kg体重、少なくとも約100RCoU/kg体重、少なくとも約150RCoU/kg体重、少なくとも約200RCoU/kg体重、少なくとも約250RCoU/kg体重、少なくとも約300RCoU/kg体重、少なくとも約350RCoU/kg体重、少なくとも約400RCoU/kg体重、少なくとも約450RCoU/kg体重、少なくとも約500RCoU/kg体重、少なくとも約550RCoU/kg体重、少なくとも約600RCoU/kg体重、少なくとも約650RCoU/kg体重、少なくとも約700RCoU/kg体重、少なくとも約750RCoU/kg体重、少なくとも約800RCoU/kg体重、少なくとも約850RCoU/kg体重、少なくとも約900RCoU/kg体重、少なくとも約950RCoU/kg体重、少なくとも約1000RCoU/kg体重、少なくとも約1200RCoU/kg体重、少なくとも約1400RCoU/kg体重、少なくとも約1600RCoU/kg体重、少なくとも約1800RCoU/kg体重、少なくとも約2000RCoU/kg体重、少なくとも約2500RCoU/kg体重、少なくとも約3000RCoU/kg体重、少なくとも約3500RCoU/kg体重、少なくとも約4000RCoU/kg体重、少なくとも約4500RCoU/kg体重、少なくとも約5000RCoU/kg体重、少なくとも約6000RCoU/kg体重、少なくとも約7000RCoU/kg体重、少なくとも約8000RCoU/kg体重、少なくとも約9000RCoU/kg体重、少なくとも約10000RCoU/kg体重、少なくとも約20000RCoU/kg体重、少なくとも約50000RCoU/kg体重、および少なくとも約100000RCoU/kg体重、ならびに100000RCoU/kg体重超までの用量で動物モデルに投与する。
【0041】
提供した方法の一定の態様では、組換えFVIIIを、任意選択的に、少なくとも約10IU/kg体重、少なくとも約20IU/kg体重、少なくとも約30IU/kg体重、少なくとも約40IU/kg体重、少なくとも約50IU/kg体重、少なくとも約60IU/kg体重、少なくとも約70IU/kg体重、少なくとも約80IU/kg体重、少なくとも約90IU/kg体重、少なくとも約100IU/kg体重、少なくとも約150IU/kg体重、少なくとも約200IU/kg体重、少なくとも約250IU/kg体重、少なくとも約300IU/kg体重、少なくとも約350IU/kg体重、少なくとも約400IU/kg体重、少なくとも約450IU/kg体重、少なくとも約500IU/kg体重、少なくとも約550IU/kg体重、少なくとも約600IU/kg体重、少なくとも約650IU/kg体重、少なくとも約700IU/kg体重、少なくとも約750IU/kg体重、少なくとも約800IU/kg体重、少なくとも約850IU/kg体重、少なくとも約900IU/kg体重、少なくとも約950IU/kg体重、少なくとも約1000IU/kg体重、少なくとも約1200IU/kg体重、少なくとも約1400IU/kg体重、少なくとも約1600IU/kg体重、少なくとも約1800IU/kg体重、少なくとも約2000IU/kg体重、少なくとも約2500IU/kg体重、少なくとも約3000IU/kg体重、少なくとも約3500IU/kg体重、少なくとも約4000IU/kg体重、少なくとも約4500IU/kg体重、少なくとも約5000IU/kg体重、少なくとも約6000IU/kg体重、少なくとも約7000IU/kg体重、少なくとも約8000IU/kg体重、少なくとも約9000IU/kg体重、少なくとも約10000IU/kg体重、少なくとも約20000IU/kg体重、少なくとも約50000IU/kg体重、および少なくとも約100000IU/kg体重、ならびに100000IU/kg体重超までの用量で動物モデルに投与する。
【0042】
提供した方法では、試験薬剤を、任意の用量(種々の用量が含まれる)で動物モデルに投与する。投薬量は、体重、薬剤の活性、投与経路、動物レシピエントの容態、および当業者に公知の種々の要因に基づき得る。
【0043】
定義
他で定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。以下の参考文献から、当業者は本明細書中で使用した多数の用語の一般的な定義を得られる: Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger,et al.(eds.),Springer Verlag(1991);およびHale and Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0044】
本明細書全体にわたり、以下の略語を使用する。
【0045】
【化1】
【0046】
本明細書中および添付の特許請求の範囲中で使用する場合、文脈上でそうでないと明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれることをここに記載する。
【0047】
本明細書中で使用する場合、以下の用語は、特に指定されない限り、これらの用語に帰する意味を有する。
【0048】
用語「遺伝子」は、1つまたは複数のポリペプチド、タンパク質、または酵素の全部または一部を含む特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列をいい、イントロンおよび調節DNA配列(例えば、遺伝子が発現される条件に影響を及ぼすプロモーターまたはエンハンサー配列、5’非翻訳領域、または3’非翻訳領域など)を含んでも含まなくてもよい。構造遺伝子ではないいくつかの遺伝子は、DNAからRNAに転写され得るが、アミノ酸配列に翻訳されない。他の遺伝子は、構造遺伝子の制御因子またはDNA転写の制御因子として機能することができる。
【0049】
「核酸」は、一本鎖形態または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをいう。本用語は、基準核酸に類似の結合特性を有し、且つ基準ヌクレオチドに類似の様式で代謝される合成か、天然に存在するか、天然に存在しない公知のヌクレオチドアナログまたは修飾された骨格残基または結合を含む核酸を含む。かかるアナログの例には、ホスホロチオアート、ホスホルアミダート、メチルホスホン酸、キラル−メチルホスホン酸、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
特に指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)および相補配列ならびに明確に示された配列を暗黙的に含む。具体的には、縮重コドン置換を、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置を混合塩基および/またはデオキシイノシン残基と置換した配列の作成によって行うことができる(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。本用語核酸を、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に使用する。
【0051】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」を、ペプチド結合を介して連結したアミノ酸残基のポリマーをいうために本明細書中で交換可能に使用する。本用語を、1つまたは複数のアミノ酸残基が天然に存在する対応アミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。用語「タンパク質」は、典型的には、巨大ポリペプチドをいう。用語「ペプチド」は、典型的には、短いポリペプチドをいう。合成ポリペプチドを、例えば、自動化ポリペプチド合成機を使用して合成することができる。
【0052】
「保存的に修飾されたバリアント」を、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾したバリアントは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいうか、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一の核酸は任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、コドンによってアラニンが特定されるあらゆる位置で、コードされたポリペプチドを変化させることなくコドンを記載の任意の対応コドンに変化させることができる。かかる核酸変動は「サイレント変動」であり、これは保存的に修飾された変動の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書中のあらゆる核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能なサイレント変動を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンのみのコドンであるAUGおよび通常はトリプトファンのみのコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を生成することができると認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変動が記載の各配列中に暗黙的に存在する。
【0053】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはわずかな比率のアミノ酸が変化しているか、付加されているか、欠失している核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列に対する個別の置換物、欠失物、または付加物が、この変化によってあるアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸に置換される「保存的に修飾されたバリアント」であると認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を示す保存的置換表は当該分野で周知である。かかる保存的に修飾されたバリアントは、本発明の多形バリアント、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられ、排除されない。
【0054】
以下の8つの群は、それぞれ、相互に保存的に置換されるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照のこと)。
【0055】
例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、用語「組換え」は、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが異種の核酸またはタンパク質の導入または未変性の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されていることを示すか、細胞がこのようにして修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、未変性(非組換え)形態の細胞内で見出されない遺伝子を発現するか、別なふうに異常に発現されるか、過小発現されるか、全く発現されない未変性遺伝子を発現する。
【0056】
核酸部分に関して使用する場合、用語「異種」は、核酸が本来は相互に同一の関係で見出されない2個以上のサブシーケンスを含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には、組換え的に産生され、新規の機能的核酸が作製されるように配置された無関係の遺伝子(例えば、一方の起源由来のプロモーターおよび他方の起源由来のコード領域)由来の2個以上の配列を有する。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が本来は相互に同一の関係で見出されない2個以上のサブシーケンスを含む(例えば、融合タンパク質)ことを示す。
【0057】
「プロモーター」を、核酸の転写を指示する一連の核酸調節配列のアレイと定義する。本明細書中で使用する場合、プロモーターは、転写開始部位付近に必要な核酸配列、(ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなど)を含む。プロモーターはまた、任意選択的に、転写開始部位から数千塩基対程度に存在することができる遠位エンハンサーエレメントまたはリプレッサーエレメントを含む。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件および発生条件で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境的調節下または発生的調節下で活性なプロモーターである。用語「作動可能に連結された」は、発現調節配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指示する、核酸発現調節配列(プロモーターまたは一連の転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的連結をいう。
【0058】
「発現ベクター」は、宿主細胞中で特定の核酸を転写させる一連の特定の核酸エレメントを使用して組換え的または合成的に生成された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸フラグメントの一部であり得る。典型的には、発現ベクターは、プロモーターに作動可能に連結された転写されるべき核酸を含む。
【0059】
2個以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一の」または「同一」率は、以下の配列比較アルゴリズムまたは手作業のアラインメントおよび目視のうちの1つを使用して測定した比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大に一致するように比較およびアラインメントした場合に同一である同一のまたは特定の比率のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2個以上の配列またはサブシーケンスをいう。「実質的な同一性」は、特定の配列にわたって少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一の配列をいう。同一性は、一般に、少なくとも約50〜100アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたって存在する。
【0060】
用語「内因性」は、宿主生物中で天然に発現されるか、細胞、組織、または生物内から生じるポリペプチド、ポリヌクレオチド、または他の化合物をいう。「外因性」は、細胞、組織、または生物外から生じるポリペプチド、ポリヌクレオチド、または他の化合物をいう。
【0061】
用語「薬剤」または「化合物」は、本発明の動物モデルにおける血液凝固または他の生物学的パラメーターに影響を及ぼし得る任意の分子(例えば、タンパク質または医薬品)を説明している。
【0062】
用語「NOAEL」または「無有害作用量」は、適切なコントロールと比較した場合に曝露集団で任意の有害作用の頻度または重症度が生物学的または統計的に有意に増加しない(例えば、形態学、機能的能力、成長、発達、または寿命の変化)、実験または観察によって見出された生物の曝露レベルを示す。毒物学では、NOAELは、具体的には、より高い用量または濃度で有害作用を生じる曝露された試験生物で見出されるかかる有害作用が見出されない物質(すなわち、化学物質)または作用因子(例えば、照射)の最も高い試験用量または濃度である。このレベルを、用量反応関係の確立過程(ほとんどのリスク評価方法における基本的工程)で使用することができる。
【0063】
本明細書中で使用する場合、TTPまたはモスコウィッツ病は、微小血管症性溶血性貧血および関連する症状をいう。TTPの症状には、以下が含まれる:神経学的症状(行動変化、精神状態の変化、卒中、頭痛);腎不全;発熱;血小板減少症(低血小板数);紫斑;紫斑病;貧血;および黄疸。TTPは、異常に高レベルの血小板凝集および凝血によって特徴づけられ、それにより、赤血球が剪断される。さらなる症状を本明細書中に記載する。
【0064】
TTPは、一般に、ADAMTS13の欠損によって生じる。この症候群を、大きく2つのカテゴリー(後天性および家族性)に分類することができる。前者では、TTPの症状は、ADAMTS13に対する自己抗体によって生じる。家族性TTPは、一般に、ADAMTS13遺伝子の変異(例えば、ナンセンス、フレームシフト、またはミスセンス)によって生じる(例えば、Deschら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.27:1901−08,2007を参照のこと)。
【0065】
本明細書中で使用する場合、「組織病理学的影響」には、一般に、微視的または巨視的に組織構造で認められる影響が含まれる。TTPの組織病理学的影響には、微小血栓症(具体的には、心臓および他の器官における)、心筋壊死、心筋変性、および冠血管周囲炎の増加が含まれる。さらなるTTPの組織病理学的影響を、実施例の節に記載する。
【0066】
同様に、用語「病状」は、異常な生理学的容態をいう。本明細書中で使用する場合、病状は、臨床的容態、組織学的容態、または行動的容態であり得、想定される正常状態からの逸脱をいう。病状が「臨床的病状」である場合、容態は体液(血液および尿などであるが、これらに限定されない)の異常を反映する。化学、微生物学、血液学、または分子病理学を使用して臨床的病状を観察することができる。病状が「組織学的病状」である場合、病状を、器官、組織、または全身(剖検または検死)の肉眼的検査、顕微鏡検査、または分子検査(体重相違の測定が含まれる)を使用して観察することができる。病状が「行動的病状」である場合、病状を、動物の外観および行動の変化のモニタリングによって観察することができる。
【0067】
フォン・ビルブラント因子(すなわち、VWF)は、第VIII因子(FVIII)に結合して凝血を補助する巨大な多量体糖タンパク質である。トロンビンはVWFからFVIIIを放出し、それにより、FVIIIを迅速に分解する。通常の条件下では、VWF単量体は分泌前に小胞体およびゴルジ中で多量体にアセンブリする。VWFの多量体は非常に巨大であり得(20,000kD超)、それぞれ250kDの80を超える単量体サブユニットからなる。ADAMTS13(トロンボスポンジン1型モチーフ13を有するディスインテグリン様およびメタロプロテアーゼ)は、Y1605とM1606との間でVWFを切断し、それにより、他のプロテアーゼによる分解を引き起こす。
【0068】
本明細書中で使用する場合、ヒト組換えVWF(すなわち、「rVWF」)は、高分子量多量体を形成する組換えVWFをいう。血漿由来VWFと異なり、rVWFは内因性ADAMTS13に曝露されておらず、したがって、Y1605−M1606で切断されていない。別に記載しない限り、「rVWF」は、ヒト配列およびその実質的に同一のバリアントをいう。
【0069】
「第VIII因子」(FVIII)は、循環血液中でVWFに会合する血液凝固因子をいう。この会合により、FVIIIの分解が防止される。トロンビンによる活性化の際、FVIIIは解離し、凝固カスケードに入る。
【0070】
「ADAMTS13」(トロンボスポンジン1型モチーフ番号13を有するディスインテグリン様およびメタロプロテアーゼ)は、血中でVWFを切断し、その活性(例えば、血小板と内皮下層との間の接着結合として)を低下するメタロプロテアーゼをいう。TTPにおけるADAMTS13の役割の概説については、Levyら、Blood 106:11−17,2005を参照のこと。
【0071】
本明細書中で使用する場合、「コントロール」は、実薬コントロール、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール、またはビヒクルコントロールをいうことができる。当業者に理解されるように、コントロールを使用して、実験結果の妥当性を確立し、試験される容態を比較する。例えば、ネガティブコントロールは、一般に、未処置(すなわち、「正常」)状態を示すサンプルをいう。ネガティブコントロールには、例えば、不活性成分で処置されたサンプルも含まれ得る。非限定的な例示的コントロール組を実施例に示す。
【0072】
本明細書中で使用する場合、TTPの「急性」モデルまたは「急性」応答は、哺乳動物がTTPの重篤な症状(器官障害が含まれる)を経験することを示す。いくつかの例では、哺乳動物は完全に回復することができない。かかる急性モデルは、重症TTPのヒト患者(例えば、ADAMTS13の遺伝的欠損を有する患者)で認められる容態を示し得る。本発明のいくつかの実施形態では、TTPの急性モデルを、例えば、単回ボーラスでの高用量のrVWFの投与によって作製する。
【0073】
本明細書中で使用する場合、TTPの「慢性」モデルまたは「慢性」応答は、哺乳動物がTTPの長期にわたるあまり重症でない症状を経験することを示す。かかる慢性モデルは、あまり重症でない症状を経験しているTTPのいくつかのヒト患者(重篤なADAMTS13欠損を持たない患者など)で見出される容態を示し得る。本発明のいくつかの実施形態では、TTPの慢性モデルを、例えば、長期間にわたる複数の投与での低用量のrVWFの投与によって作製する。
【0074】
TTPの症状をいう場合、用語「重症度の軽減」は、症状の発症が遅延するか、重症度が軽減するか、動物に対するダメージが低下することを意味する。一般に、症状の重症度を、例えば、活性な予防的または治療的組成物を投与されていないコントロールと比較する。その場合、組成物は、コントロールレベルの症状と比較して症状が10%、25%、30%、50%、80%、または100%軽減する(すなわち、本質的に消失する)場合にTTPの症状の重症度が軽減するということができる。
【0075】
血液凝固因子および血液酵素
上記のように、提供した方法は、任意選択的に、第VIII因子の使用を含む。第VIII因子(FVIII)は、哺乳動物の肝臓中で産生される分子量約260kDaの血漿糖タンパク質である。これは、血液凝固を生じる凝固反応のカスケードの重要な構成要素である。そのうちで、本カスケードは、第IXa因子がFVIIIと併せて第X因子を活性化形態である第Xa因子に変換する工程である。FVIIIはこの工程で補因子として作用し、第IXa因子の活性にカルシウムイオンおよびリン脂質を必要とする。最も一般的な2つの出血性障害は、機能的FVIIIの欠損(血友病A、全症例の約80%)または機能的第IXa因子の欠損(血友病Bまたはクリスマス因子疾患)によって生じる。
【0076】
最近まで、血友病Aの標準的処置には、ヒトドナー血漿由来のFVIII濃縮調製物の頻繁な注入を含んでいた。この代償療法は一般に有効であるが、かかる処置はウイルス伝染病(肝炎およびAIDSなど)リスクを患者に与える。モノクローナル抗体を使用した免疫精製による血漿由来のFVIIIのさらなる精製および有機溶媒または加熱のいずれかを使用した処置によるウイルスの不活化によってこのリスクが軽減されているにもかかわらず、かかる調製物は、処置費用が非常に増加し、且つリスクがなくなるわけではない。これらの理由のために、患者は、予防的というよりもむしろ偶発的に処置されている。さらなるやっかいな問題は、約15%の患者が血漿由来FVIIIに対する阻害抗体を生じることである。
【0077】
血友病Aの処置における重要な進歩は、ヒトFVIIIの完全な2,351アミノ酸配列をコードするcDNAクローンの単離(Wood et al,Nature,312:330(1984)および1988年7月12日に付与された米国特許第4,757,006号を参照のこと)ならびにヒトFVIII遺伝子のDNA配列およびその組換え的産生方法の提供であった。しかし、組換えFVIIIを投与された患者は、依然として疾患の処置を妨害するFVIII特異的抗体を作製し得る。血友病A処置のための第VIII因子製品には、アドベイト(登録商標)(抗血友病因子(組換え)、無血漿/アルブミン法、rAHF−PFM、Baxter)、組換え抗血友病因子(バイオクレート(商標)、ゲナルク(登録商標)、ヘリキサートFS(登録商標)、コエート(登録商標)、コージネイトFS(登録商標)、リコンビナート(登録商標)):モノクラート−P(登録商標)、第VIII因子:Cの精製調製物、抗血友病因子/フォン・ビルブラント因子複合体(ヒト)ヒューメート−P(登録商標)およびアルファナート(登録商標)、抗血友病因子/フォン・ビルブラント因子複合体(ヒト);およびヒエートC(登録商標)、精製ブタ第VIII因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
したがって、提供した方法は、ポジティブコントロールとしてのヘマート(登録商標)P(ZLB Behring GmbH,Marburg,Germany)の使用を含む。本発明の実施例で使用したヘマート(登録商標)Pは、有効成分であるVWFおよびFVIIIを含み(114.34IU VWF:RCo/mL、77IU FVIII/mL)、スクリーニングした血液ドナー由来の血漿からの抽出によって製造する。しかし、ヘマート(登録商標)Pの他の形態および濃縮物も本方法での使用が意図される。
【0079】
提供した方法はまた、種々の態様では、VWFの使用を含む。VWFは、分子質量が約260kDaの単量体との接着性の複合糖タンパク質である。VWFは、450kDa〜20,000kDaの分子質量範囲の二量体およびオリゴマーの両方としてヒト血漿中に循環している。前駆体ポリペプチドであるプレプロVWFは内皮細胞および巨核球中で合成され、22アミノ酸残基シグナルペプチド、741残基プロペプチド、および2050残基ポリペプチドからなる。シグナルペプチドのin vivo除去後、2つのプロVWF単位がジスルフィド結合を介して連結して二量体(成熟VWF多量体の基本単位)を形成する。2000万ダルトンまで分子量が増加するVWFのさらなるポリマーは、連結によってVWF二量体から形成される。特に高分子量VWF多量体が凝血で本質的に重要であると推定される。
【0080】
VWF症候群は、VWFの過小産生または過剰産生のいずれかの場合に臨床的に発症する。VWFの過剰産生によって血栓症(血管の内側での血餅または血栓の形成、血流の妨害)が増加する一方で、高分子形態のVWFレベルの減少または喪失によって血小板凝集および創傷閉鎖の阻害に起因する出血の増加および出血時間の増加が起こる。
【0081】
VWFは機能的FVIIIの不可欠な成分であるので、VWF欠損によって血友病表現型Aも生じ得る。これらの例では、第VIII因子の半減期は、凝血カスケードにおけるその機能が損われる範囲まで減少する。フォン・ビルブラント病(VWD)またはVWF症候群を罹患している患者は、頻繁にFVIII欠損を示す。これらの患者では、FVIII活性の減少はX染色体遺伝子の欠損の結果ではなく、血漿中のVWFの定量的および定性的変化の間接的結果である。血友病AとVWDとの区別を、通常、VWF抗原の測定またはリストセチン補因子活性の決定によって行うことができる。リストセチン補因子活性を、患者の血漿へのリストセチンおよび血小板基質の添加によって測定する。リストセチンは、VWFの血小板糖タンパク質Ib受容体への結合を増強し、それにより凝集する。光透過の変化によって測定した場合、患者のVWFは、リストセチンによって誘導される血小板凝集を支持するであろう。したがって、これは、患者のVWFの機能的活性のIn vitro測定であり、最も感度の高いVWD診断アッセイである。VWF抗原含有量およびリストセチン補因子活性の両方はほとんどのVWD患者で低下するのに対して、血友病A患者では正常である。VWF症候群処置のためのVWF製品には、ヒューメート−P(登録商標);ならびにイムナート(登録商標)、イノブランド(登録商標)、および8Y(登録商標)(処置が血漿由来のFVIII/VWF濃縮物を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
ヒトrVWFは、マウス血漿中に存在するマウスADAMTS13のタンパク質分解活性に耐性を示す。この所見は、種々の種(マウスが含まれる)の血漿へのヒトrVWFの曝露および残存VWF活性の測定または多量体組成物の可視化のいずれかによってin vitroで証明されている。マウスADAMTS13に対するヒトVWFの耐性も、マウスへのrVWFの注入後にex vivoで証明された。注入後の種々の時点で得られた血漿サンプルは、Tyr1605−MET1606(C末端176kDaおよびN末端140kDa)での切断後にADAMTS13の作用に由来するいかなるVWFフラグメントも示さず、これは、in vivoでのマウスADAMTS13に対するrVWFの耐性と一致していた。対照的に、ウサギへのrVWFの投与により、モノクローナル抗体を使用した免疫ブロット上のフラグメントの出現を使用してVWFサブユニットの切断パターンが予想された。
【0083】
rVWFがADAMTS13特異的タンパク質分解に全くさらされないので、組換えVWFはインタクトなVWFサブユニットからなる。血漿由来VWFは、VWFのA2ドメイン中のTyr1605−MET1606で切断されるサブユニットからなる。正常なC57BL/6Jマウスは、インタクトなサブユニットを有するヒトrVWFを切断できないマウスADAMTS13を有する。したがって、C57BL/6JマウスへのrVWFの投与により、超巨大VWF多量体が得られ、rVWFの代謝障害が起こる。
【0084】
ADAMTS13(トロンボスポンジン1型モチーフメンバー13を有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)(VWF切断プロテアーゼ(VWFCP)としても公知)は、VWFを切断する亜鉛含有メタロプロテアーゼ酵素である。ADAMTS13は血中に分泌され、巨大なVWF多量体を分解し、その活性を減少させる。ADAMTS13は、複数の機能的ドメインおよび構造ドメインからなるメタロプロテアーゼであり、これらのドメインはADAMTS13のVWFへの認識および結合に関与し得る。ULVWF多量体は内皮細胞から分泌されるので、ULVWF多量体はADAMTS13によって切断される。
【0085】
先天性TTP患者または後天性TTP患者がADAMTS13を重篤に欠損することが見出されている。先天性ADAMTS13欠損は、ADAMTS13遺伝子の変異に原因する。家族性形態の患者は、重症プロテアーゼ欠損症を罹患している。家族性TTPにおけるADAMTS13遺伝子の変異により、ADAMTS13活性が不活性となるか減少する。後天性欠損症は、ADAMTS13活性を阻害する自己抗体の産生と共に生じる。後天性TTPは、自己免疫疾患、悪性疾患、幹細胞移植、妊娠(具体的には、第三期)、一定の薬物(チクロピジン、マイトマイシン、クロピドグレル、およびシクロスポリンが含まれる)、または感染の特発性二次性合併症である。
【0086】
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および他の血液凝固障害
本発明は、血液凝固障害(血栓形成傾向)(血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および他の血栓性微小血管症が含まれるが、これらに限定されない)を軽減する能力について薬剤を試験するための動物モデルおよび方法を提供する。TTPは生命を脅かす多系統障害であり、16歳の少女が貧血、点状出血、および顕微鏡的血尿を有することが認められた1924年のMoschcowitzによって最初に記載された。少女は多臓器不全によって死亡し、剖検で播種性微小血管血栓が蔓延していた。これらの血栓は、依然として病理学的診断の特徴である。
【0087】
TTP症候群は、その形成が凝固系活性と無関係の微小血管症性溶血および血小板凝集/ヒアリン血栓によって特徴づけられる。血小板微小血栓が支配し、これらは全身の微小循環(すなわち、細動脈、毛細血管)で形成され、血管の部分的閉塞を引き起こす。器官虚血、血小板減少症、および赤血球断片化(すなわち、分裂赤血球)が起こる。血栓は、増殖性内皮細胞で覆われることにより血管の管腔を部分的に閉塞する。腎臓、脳、心臓、膵臓、脾臓、および副腎の内皮は、TTPに対して特に脆弱である。肝臓、肺、胃腸管、胆嚢、骨格筋、網膜、下垂体、卵巣、子宮、および精巣もより低い程度に影響を受ける。炎症性変化は起こらない。
【0088】
1982年に、Moakeらは、4人の再発性TTP患者の血漿中に超巨大フォン・ビルブラント因子(ULVWF)多量体を発見した(Moake,Semin.Hematol.34:83−89,1997;Moake,Semin.Hematol.41:4−14,2004)。これらの多量体は、内皮細胞で認められたものと同一のサイズであった。正常個体の血漿のVWFは遥かに小さい。Moakeは、TTP患者の血漿中では巨大VWFをその正常サイズに減少させる酵素が欠損していると示唆した。この巨大VWFは血栓形成を媒介する血小板と共に接着する能力がより高いことにも注目していた。
【0089】
撹拌内皮細胞は血流中のULVWF多量体の主な供給源であり、この細胞は血流中で特定の表面血小板受容体に結合する。ULVWF多量体は、内皮下層への血小板接着によって絡み合う。TTPの病理発生は、微小脈管構造中の血小板凝集に起因する。ULVWFの接着が増加し、この多量体を正常化するタンパク質分解酵素機能が欠損する。微小循環中の流動物および血小板血栓の剪断応力(sheer stress)により、ULVWFのタンパク質分解が増強されない。どのようにして血栓形成を惹起する血小板に起因する微小血管症において接着性結合が剪断応力に対抗し、そして血小板活性に寄与するかについては、依然として解決されていない。
【0090】
血漿交換は、1991年からTTPのファーストライン治療である。先天性欠損では血漿注入によってADAMTS13遺伝子の欠損および変異を置換することができる。後天性欠損では、プラスマフェレシスによってADAMTS13のインヒビターを除去することができる。しかし、血漿交換は、血漿注入より有効な処置である。
【0091】
TTPにおいてADAMTS13多量体は豊富であり、フィブリノゲン/フィブリンは最少であるのに対して、播種性血管内凝固(DIC)においてフィブリノゲンは豊富である。ULVWF(すなわち、ADAMTS13多量体)は、TTPが再発する可能性が最も高い患者の血漿中に見出されるマーカーである。
【0092】
この生命を脅かす容態は、初期に認識され、且つ初期に医学的介入が開始された場合に前向きな結果を得ることができる。したがって、本発明は、TTP処置における新規の治療の開発で使用すべき動物モデルを提供する。
【0093】
TTPマウスモデルのデザイン
内因性循環ADAMTS13によるタンパク質分解に全く曝露されていないので、組換えVWFはインタクトなVWFサブユニットからなる。血漿由来VWFは、VWFのA2ドメイン中のTyr1605−MET1606でADAMTS13によって切断されるサブユニットからなる。したがって、血漿由来VWF調製物(ヘマート(登録商標)Pなど)は、本発明のための有用なコントロールである。
【0094】
超高分子量多量体は、特異的環境下(例えば、DDAVP(DDAVPは軽症血友病Aおよびフォン・ビルブラント病の治療薬である)での内皮細胞の刺激の際)で生理学的である。内皮細胞の刺激の際、保存されたVWFは、超巨大VWF形態でワイベル・パラート小体から循環血中に放出される。これらの超巨大VWF多量体は、ヒトADAMTS13によるVWFのタンパク質分解の増加に伴って2時間以内に消滅する。DDAVP投与後の血漿VWF濃度は、約24時間にわたってベースラインに戻る。
【0095】
マウスADAMTS13は、rVWFの超高分子量多量体を減少させるほど十分にヒトrVWFを切断しない。何故なら、このヒト因子はマウスADAMTS13に耐性を示すからである。さらに、正常マウスは循環血中にVWFの超高分子量多量体を有する。何故なら、マウスADAMTS13は内因性マウスVWFについてさえ活性が低いからである。
【0096】
ADAMTS13欠損マウスでは、ADAMTS13が存在しないので、内因性マウスVWFは超高分子量多量体からなる。したがって、直接または導入遺伝子の発現によるヒトrVWFの投与により、超生理学的循環レベルのVWFが得られ、超巨大VWF多量体が実質的に増加する。
【0097】
組換えタンパク質発現
本発明で使用すべき組換えVWFには、ヒト形態のVWFならびにその多形バリアントおよび対立遺伝子バリアント(例えば、Genpept受入番号P04275.1の配列と実質的に同一のポリペプチド)が含まれる。同様に、組換え第VIII因子には、ヒト形態の凝固因子(種々のイソ型バリアント、対立遺伝子バリアント、および多形バリアントが含まれる)が含まれる。一般に、第VIII因子は、Genpept受入番号P00451.1の配列と実質的に同一の配列を有するであろう。ヒトFVIIIはまた、市販されている。組換えADAMTS13には、ヒト形態のプロテアーゼならびにその多形バリアントおよび対立遺伝子バリアント(例えば、Genpept受入番号Q3SYG5の配列と実質的に同一のポリペプチド)が含まれる。
【0098】
rVWF、rFVIII、またはrADAMTS13ポリペプチドおよび複合体を発現および獲得するために使用することができる組換え技術は当該分野で日常的作業である。本発明での一般的使用方法を開示した基本的テキストには、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989);Kriegler,Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual(1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、eds.,1994)が含まれる。
【0099】
一般に、目的のタンパク質(例えば、VWF、FVIII、およびADAMTS13)をコードする核酸配列を、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーからクローン化するか、オリゴヌクレオチドプライマーを使用した増幅技術を使用して単離する。例えば、コード配列を、核酸プローブとのハイブリッド形成によってヒト核酸(ゲノムまたはcDNA)ライブラリーから単離することができる。プライマーを使用した増幅技術を使用して、cDNAまたはRNAから目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を増幅および単離することができる(例えば、Dieffenfach & Dveksler,PCR Primer:A Laboratory Manual(1995)を参照のこと)。
【0100】
当業者は、任意の特定のポリペプチド配列が本発明のポリペプチドの活性や使用に影響を及ぼすことなく多形変動または対立遺伝子変動を含むことができると認識するであろう。
【0101】
目的のタンパク質(例えば、VWF、FVIII、ADAMTS13)を高レベルで発現させるために、典型的には、転写を指示するための強力プロモーターを含む発現ベクターにこの因子をコードする配列をサブクローン化する。かかる技術は当該分野で周知であり、一般に、例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)およびSambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd Ed.,(1989)に記載されている。
【0102】
任意の細胞種中にタンパク質を発現させることができる。適切な細菌プロモーターは当該分野で周知であり、例えば、SambrookらおよびAusubelらに記載されている。タンパク質発現のための細菌発現系は、例えば、大腸菌、Bacillus sp.およびSalmonellaで利用可能である(Palvaら、Gene 22:229−235,1983);Mosbachら、Nature 302:543−545,1983)。かかる発現系のためのキットは市販されている。
【0103】
他の微生物(酵母(例えば、Saccharomyces)など)も発現のために使用することができる。酵母は、必要に応じて発現調節配列(プロモーター(3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素が含まれる)、複製起点、および終止配列など)を有する適切なベクターの宿主を有する。
【0104】
哺乳動物細胞培養物を使用して、組換えポリペプチドを発現および産生することもできる(Winnacker,“From Genes to Clones”,VCH Publishers,New York(1987)を参照のこと)。哺乳動物細胞には、HEK−293細胞、HUVEC、EA.hy926、CMK細胞、CHO細胞株、種々のCOS細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株などが含まれる。これらの細胞のための発現ベクターは、発現調節配列(複製起点、プロモーター、エンハンサー(Queenら、Immunol.Rev.89:49−68,1986)、および必要なプロセシング情報部位(リボゾーム結合部位など)、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列など)を含むことができる。発現調節配列には、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、およびサイトメガロウイルスなど由来のプロモーターが含まれる。選択マーカー(neo発現カセットなど)も発現ベクター中に含めることができる。
【0105】
次いで、目的のタンパク質(例えば、VWF、FVIII、またはADAMTS13)を、一般的な方法を使用して他の夾雑するタンパク質および物質から単離することができる。タンパク質精製技術には、例えば、溶解度を利用した方法(塩沈殿および溶媒沈殿など)、分子量の相違を利用した方法(透析、限外濾過、ゲル濾過、およびSDS−ポリアクリルアミド ゲル電気泳動など)、電荷の相違を利用した方法(イオン交換カラムクロマトグラフィなど)、特異的相互作用を利用した方法(アフィニティクロマトグラフィなど)、疎水性の相違を利用した方法(逆相高速液体クロマトグラフィなど)、および等電点の相違を利用した方法(等電点電気泳動など)が含まれる。参照用の情報資源には、Scopes,Protein Purification:Principles and Practice,Springer Press,3d edition(1994)およびAbelsonら、Methods in Enzymology,Volume 182:Guide to Protein Purification,Academic Press(1990)が含まれる。
【0106】
rVWF組成物の投与
本発明のrVWF組成物を、異なる経路(静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経粘膜、または吸入剤が含まれる)によって投与することができる。
【0107】
組成物を、一般に、当該分野で一般的なように静脈内注射する(例えば、尾静脈を介する)。注射のために、組成物を、無菌の生理学的に適合可能な緩衝液または溶液(生理食塩水、ハンクス液、またはリンゲル液など)中で処方する。さらに、化合物を固体形態で処方し、使用直前に再溶解または再懸濁することができる。凍結乾燥形態も生成することができる。
【0108】
経粘膜投与のために、透過すべきバリアに適切な浸透剤を処方物中に使用する。かかる浸透剤は当該分野で一般的に公知であり、例えば、経粘膜投与のための胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。さらに、界面活性剤を使用して、透過を容易にすることができる。経粘膜投与は、噴霧、ポンプ、アトマイザー、またはネブライザーを介した投与であり得る。
【0109】
動物におけるrVWFのトランスジェニック発現
いくつかの実施形態では、本発明は、TTPのモデルとして組換えVWFを発現する非ヒト動物を提供する。トランスジェニック動物を、TTPの症状を防止または軽減するのに有用な生物学的に活性な薬剤の開発のために使用することができる。1つの態様では、本件のトランスジェニック動物は、VWFが高分子量多量体を形成する、動物のゲノムに安定に組込まれたVWFをコードするヌクレオチド配列を保有する。典型的には、VWF導入遺伝子は、外因性供給源に由来する(すなわち、導入遺伝子を発現する動物と異なる動物に由来する)。いくつかの実施形態では、VWFは組換えヒトVWFである。
【0110】
「トランスジェニック動物」は、1つまたは複数の細胞が一般的なトランスジェニック技術を使用して導入した異種核酸を含む任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、他のげっ歯類、ブタ、または霊長類)をいう。意図的な遺伝子操作を目的とする細胞前駆体への導入(微量注入など)または組換えウイルスとの感染によって核酸を細胞に直接または間接的に導入する。用語遺伝子操作には古典的な交雑育種やin vitro受精が含まれず、むしろ、組換えDNA分子の導入をいう。この分子を染色体内に組込むことができるか、この分子は染色体外複製DNAであり得る。
【0111】
本発明は、全てのその細胞中に所望の導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物およびいくつかであるが全てではない細胞中に導入遺伝子を保有する動物(すなわち、モザイク動物)を意図する。導入遺伝子を、単一のコピーとして組込むか、またはコンカテマー(例えば、ヘッド−ヘッドタンデムまたはヘッド−テールタンデム)中に組込むことができる。導入遺伝子を、特定の組織型または細胞型(例えば、内皮細胞、巨核球、内皮下細胞)中に選択的に導入するか選択的に活性化することもできる。かかる細胞型特異的活性化に必要な調節配列は、当業者に明らかであろう。
【0112】
導入遺伝子を、遺伝子ターゲティングを使用して内因性対応物の染色体部位内に組込むことができる。簡潔に述べれば、かかる技術を利用すべきである場合、内因性対応物に類似するいくつかのヌクレオチド配列を含むベクターを、染色体配列を使用した相同組換えによって内因性遺伝子のヌクレオチド配列に組込んで、その機能を破壊する目的のためにデザインする。
【0113】
胚顕微鏡操作のためのテクノロジーの進化により、現在、哺乳動物受精卵巣に異種DNAを導入することも可能である。例えば、全能性間細胞または多能性幹細胞を、微量注入、リン酸カルシウム媒介性沈殿、リポソーム融合、レトロウイルス感染、または他の手段によって形質転換することができる。次いで、形質転換した細胞を胚に導入し、次いで、この胚はトランスジェニック動物に成長するであろう。いくつかの実施形態では、導入遺伝子を発現するトランスジェニック動物を感染胚から産生することができるように、発生中の胚にVWF導入遺伝子を含むウイルスベクターを感染させる。いくつかの実施形態では、好ましくは単細胞期にVWF導入遺伝子を胚の前核または細胞質に注射し、胚を成熟トランスジェニック動物に成長させる。これらおよび他の異型のトランスジェニック動物の生成方法は、当該分野で十分に確立されている(例えば、米国特許第5,175,385号および同第5,175,384号を参照のこと)。
【0114】
トランスジェニック動物には、「ノックアウト」および「ノックイン」が含まれる。「ノックアウト」は、典型的には、標的遺伝子発現が有意でないか検出不可能なように標的遺伝子の機能が低下するトランスジェニック配列の導入を介した標的遺伝子の変化を有する。「ノックイン」は、例えば、標的遺伝子のさらなるコピーの導入または標的遺伝子の内因性コピーの発現が増強される調節配列の動作可能な挿入によって標的遺伝子の発現が増大する宿主細胞ゲノムの変化を有するトランスジェニック動物である。ノックインまたはノックアウトトランスジェニック動物は、標的遺伝子に関してヘテロ接合性またはホモ接合性であり得る。ノックアウトおよびノックインの両方は、「バイジェニック」(すなわち、少なくとも2つの変化した遺伝子を有する)であり得る。例えば、バイジェニック動物には、rVWFノックインおよびADAMTS13ノックアウトが含まれ得る。
【0115】
トランスジェニックマウスを、当業者に公知の方法論を使用して誘導することができる(例えば、Hoganら、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual,1988;Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach,Robertson,ed.,1987;およびCapecchiら、Science 244:1288,1989を参照のこと)。
【0116】
本発明の動物
本発明は、直接またはトランスジェニック発現のいずれかを介した組換えVWFの投与によって確立することができるTTPの動物モデルを含む。げっ歯類は安価であり、迅速に繁殖し、非常に小さな施設中に多数を収容することができるので、マウスを一般に使用する。他のげっ歯類(ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットなど)を本発明にしたがって使用することもできる。多数の複製動物を使用して実験を組み立てることができる。
【0117】
本発明で使用することができるマウスには、一般的な実験系統(C57BL/6J、Balb−c、およびFVB系統など)が含まれる。かかるマウスを、Jackson Labs,Bar Harbor,MEから容易に利用可能である。
【0118】
免疫不全のマウスおよび他のげっ歯類を、本発明で使用することができる。これらのマウスまたはげっ歯類は機能的免疫系を欠き、例えば、SCID、RAG1または2ノックアウト、およびヌードマウスが含まれる。かかるマウスまたはげっ歯類は、例えば、マウスまたはげっ歯類への外因性物質の導入の炎症性または免疫の影響の除外に有用であり得る。また、かかるマウスを商業的供給元から容易に利用可能である。
【0119】
さらに、ヒト化げっ歯類(ヒト化したマウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットなど)を使用することができる。ヒト化げっ歯類(マウスなど)は、動物中に最初に移植して成長する機能的ヒト遺伝子、細胞、組織、および/または器官を保有する。ヒト化げっ歯類(マウスなど)を、しばしば、本質的にヒトである免疫系を有するように生成する。かかるマウスは、例えば、治療物質に対するヒトの応答の決定に有用である。例えば、骨髄/肝臓/胸腺(すなわち、「BLT」マウス)では、非肥満性糖尿病(NOD)/SCIDマウス(内因性T細胞およびB細胞を欠く)に、SCID−hub系の場合のように胎児の胸腺および肝臓または硬鱗を外科的に移植する。次いで、マウスを亜致死的に照射し、胎児肝臓から得た自己CD34+幹細胞を移植する。次いで、これらの細胞をマウス骨髄中に固定する。したがって、マウスは骨髄移植を受け、そのヒト胸腺および肝臓移植片に対して自己のヒト幹細胞を投与される。この方法で準備したげっ歯類(マウスなど)は、特徴的な範囲の末梢血中のヒト細胞(成熟Tリンパ球およびBリンパ球、単球、マクロファージ、および樹状細胞が含まれる)を示す。等しく重要には、これらは、ヒト細胞を有する器官および組織(肝臓、肺、および胃腸管が含まれる)の広範な浸潤を示す。ヒト化げっ歯類(マウスなど)は当該分野で公知であり、市販されている(例えば、Gonzales and Cheung(Aug.5,2008)J.Pharmacol.Exp.Ther.;Itoら(2008)Current Topics in Microbiology and Immunology,Springer−Verlag,Berlin and Heidelberg,p.53−76;Schmidtら(2008)PLoS ONE 3:e3192を参照のこと)。
【0120】
上記で説明するように、かかるげっ歯類を、導入遺伝子を発現するか、内因性遺伝子が破壊されるように遺伝的に変化させることができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、ADAMTS13欠損マウス、または他のげっ歯類(例えば、ADAMTS13ノックアウトマウス)を使用する。いくつかの実施形態では、内因性VWFを欠くマウスまたは他のげっ歯類(VWFノックアウト)を使用する。二重ノックアウト(ADAMTS13−/−およびVWF−/−)を使用することができる。
【0121】
ADAMTS13ノックアウトマウスは、遺伝子ターゲティングを使用して最初に作製された(Bannoら、Blood 107:3161−66,2006;Deschら、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.27:1901−08,2007)。このマウスは広範に特徴づけられており、公的に利用可能である(例えば、Miyataら、Curr.Opin.Hematol.14:277−83,2007;Chauhanら、Blood 111:3452−57,2008;Chauhanら、J.Exp.Med.205:2065−74,2008を参照のこと)。ADAMTS13欠損マウスは生存可能且つ受精可能であるが、血栓症に感受性を示す。しかし、自発性血小板減少症、溶血性貧血、および微小血管血栓症が一般に認められない。これらの症状のいくつかを、例えば、ノックアウトマウスへのFeClまたは志賀毒素の投与によって誘導することができる(Chauhanら、Blood 111:3452−57,2008)。
【0122】
VWFノックアウトマウスも当該分野で公知であり、市販されている(例えば、Pergolizziら、Blood 108:862−69,2006を参照のこと)。VWFノックアウトマウスは生存可能且つ受精可能であり、いかなる巨視的な身体または行動の異常も示さない。しかし、このマウスは、長期の出血時間および時折認められる突発性出血によって特徴づけられる止血の欠損症を示す。このノックアウトはまた、血管損傷後の血栓形成を欠き、FVIIIレベルが減少する。
【0123】
試験薬剤または試験化合物
本発明の動物モデルで試験すべき薬剤または化合物(または「組成物」)は、任意の小化合物または高分子(タンパク質、糖、核酸、または脂質など)であり得る。典型的には、試験化合物は、小化学分子およびペプチドであろう。ほとんどの場合、水溶液または有機(例えば、DMSOベース)溶液中に溶解することができる化合物を使用するが、本質的に任意の化合物を本発明のこの態様での試験化合物として使用することができる。
【0124】
例示的な試験薬剤または試験化合物(または「組成物」)には、VWFの高分子量複合体(ADAMTS13が含まれる)、活性を保持するADAMTS13バリアント、および種ホモログをターゲティングするプロテアーゼが含まれる。かかるポリペプチド組成物を、目的のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドベクターを使用して(例えば、アデノウイルスベクター中で)デザインすることができる。試験組成物には、VWFの凝集を妨害するペプチド、抗体フラグメント、および小分子も含まれる。さらなる組成物には、VWFポリペプチドおよびポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA、siRNAなど)の発現を妨害する化合物が含まれる。他の例は、TTPを処置するために使用することができる小分子(糖質コルチコイド、抗血小板薬物(例えば、アスピリン、ジピリダモール)、アゾチプリン、シクロホスファミド、またはプロスタサイクリンなど)である。
【0125】
アンチセンスに関して、siRNAまたはリボザイムオリゴヌクレオチド、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドを使用することができる。ホスホジエステル結合および複素環または糖の修飾により、効率が増大し得る。ホスホロチオアートを使用して、ホスホジエステル結合を修飾する。N3’−P5’ホスホルアミダート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化し、RNAへの結合を増大させると説明されている。ペプチド核酸(PNA)結合はリボースおよびホスホジエステル骨格の完全な置換であり、ヌクレアーゼに対して安定であり、RNAに対する結合親和性を増加させ、RNアーゼHによって切断されない。その基本構造もアンチセンス成分として至適化可能な修飾を行うことができる。複素環の修飾に関して、一定の複素環修飾により、RNアーゼH活性を妨害することなくアンチセンス効果を増加させることが証明されている。かかる修飾の例は、C−5チアゾール修飾である。最後に、糖の修飾も考慮することができる。2’−O−プロピルおよび2’−メトキシエトキシリボース修飾により、細胞培養物中およびin vivoでのヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドが安定化される。
【0126】
典型的には(例えば、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上でのマイクロタイター形態において)並行して行われる自動化アッセイ工程を使用して巨大な化学ライブラリーがスクリーニングされるように、例えば、VWFポリペプチドまたはポリヌクレオチドへの試験化合物の結合についての有効性アッセイをデザインすることができる。化合物の多数の供給者(Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、およびFluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)などが含まれる)が存在することが認識されるであろう。
【0127】
いくつかの実施形態では、多数の試験化合物を含むコンビナトリアル化学またはペプチドライブラリーを準備する工程を含む高処理スクリーニング法を使用する。次いで、かかる「コンビナトリアル化学ライブラリー」を1つまたは複数のアッセイでスクリーニングして、所望の特徴的活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。この例では、かかる化合物を、VWFの発現または凝集を減少させる能力についてスクリーニングする。
【0128】
本発明の方法は、試験薬剤を含む組成物を使用する。本明細書中に記載の試験薬剤(ポリペプチド、そのフラグメントおよびアナログまたはバリアントが含まれる)を含む組成物を試験被験体に投与するために、試験薬剤を、1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物中で処方する。句「薬学的または薬理学的に許容可能な」は、下記の当該分野で周知の経路を使用して投与した場合にアレルギーや他の有害反応を生じない分子および組成物をいう。「薬学的に許容可能なキャリア」には、任意および全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗生物質および抗真菌剤、ならびに等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0129】
さらに、試験薬剤である化合物は、一定の例では、水または一般的な有機溶媒と溶媒を形成する。かかる溶媒も意図する。
【0130】
組成物を、例えば、経口、局所、経皮、非経口、吸入噴霧、膣、直腸、または頭蓋内注射(これらに限定されない)で投与する。本明細書中で使用する場合、用語非経口には、皮下注射、静脈内、筋肉内、槽内注射、または注入技術が含まれる。静脈内、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内注射および/または特定の部位への外科的移植による投与も意図される。一定の態様では、組成物は本質的に発熱物質およびレシピエントに有害であり得る他の夾雑物を含まない。
【0131】
薬学的組成物の処方物は、選択される投与経路に応じて変化する(例えば、溶液、乳濁液)。投与すべき組成物を含む適切な組成物を、生理学的に許容可能なビヒクルまたはキャリア中で調製することができる。溶液または乳濁液のために、適切なキャリアには、例えば(限定されない)、水性またはアルコール性/水溶液、乳濁液、または懸濁液(生理食塩水および緩衝化媒体が含まれる)が含まれる。非経口ビヒクルには、例えば(限定されない)、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、例えば(限定されない)、種々の添加物、防腐剤、流動物、栄養素、または電解質補充薬が含まれる。
【0132】
有効成分として試験薬剤を含む本発明の方法で有用な組成物(薬学的組成物が含まれる)は、一定の態様では、投与経路に応じて薬学的に許容可能なキャリアまたは添加物を含む。かかるキャリアまたは添加物の例には、水、薬学的に許容可能な有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、および薬学的に許容可能な表面活性剤などが含まれるが、これらに限定されない。使用される添加物は、必要に応じて、本発明の投薬形態に依存して上記またはその組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【0133】
種々の水性キャリア(例えば、水、緩衝液、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、または水性懸濁液)は、一定の態様では、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤との混合物中に活性化合物を含む。かかる賦形剤は、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴム)であり、分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチル−エネオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物(ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなど)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およちヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレアート)であり得る。水性懸濁液はまた、1つまたは複数の防腐剤(例えば、エチルベンゾアート、n−プロピルベンゾアート、またはp−ヒドロキシベンゾアート)を含むことができる。
【0134】
組成物を、種々の実施形態では、保存し、使用前に適切なキャリア中で再構成するために凍結乾燥する。この技術は、従来の免疫グロブリンを使用して有効であることが示されている。任意の適切な凍結乾燥および再構成技術を使用する。当業者は、凍結乾燥および再構成により、種々の程度の抗体活性が喪失し、喪失を補うために使用レベルを調整する必要があり得ると認識するであろう。
【0135】
水の添加による水性懸濁液の調製に適切な分散性の粉末および顆粒により、活性化合物を含む分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つまたは複数の防腐剤との混合物が得られる。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、上記で既に例示されている。
【0136】
これらの処方物中の試験薬剤の濃度は、例えば、約0.5重量%未満、通常は約1重量%または少なくとも約1重量%から15または20重量%程度まで広範に変化し、選択される特定の投与様式に従って、主に流動物の体積、粘度などに基づいて選択されるであろう。したがって、例えば、非経口注射用の典型的な薬学的組成物を、1ml滅菌緩衝液および50mgの試験薬剤を含むように作製する。静脈内注入用の典型的な組成物を、250mlの滅菌リンゲル液および150mgの血液凝固因子を含むように作製する。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知または自明であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)により詳細に記載されている。二重特異性抗体の有効投薬量は、0.01mg〜1000mg/kg体重/投与の範囲内である。
【0137】
薬学的組成物は、一定の態様では、滅菌注射用水溶液、油性懸濁液、分散物、または滅菌注射液または分散物の即時調製のための滅菌粉末の形態である。懸濁液を、公知の技術に従って上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して処方する。滅菌注射用調製物には、例えば、1,3−ブタンジオール溶液としての非毒性の非経口で許容可能な希釈剤または溶媒の滅菌注射用溶液または懸濁液が含まれる。キャリアは、一定の態様では、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、植物油、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液を含む溶媒または分散媒である。さらに、無菌固定油を、溶媒または懸濁化剤として慣習的に使用する。この目的のために、任意のブランドの固定油(合成モノジグリセリドまたはジグリセリドが含まれる)を使用する。さらに、脂肪酸(オレイン酸など)を、注射液の調製で使用する。
【0138】
全ての場合において、形態は滅菌形態でなければならず、注射による投与を使用する場合に注射容易性を示す範囲の流動物でなければならない。適切な流動性を、例えば、コーティング(レシチンまたは当該分野で周知の他のコーティングなど)の使用、分散物の場合の必要な粒径の維持、および表面活性剤の使用によって維持する。製造および保存条件下で安定でなければならず、微生物(細菌および真菌など)の夾雑作用に対して保存されなければならない。種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチロメサールなど)によって微生物作用を防止する。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含めることが望ましいであろう。注射用組成物の吸収を、組成物中での吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によって延長する。
【0139】
投与に有用な組成物を、例えば(限定されない)、その有効性を高めるための取り込み促進剤または吸収促進剤を使用して処方する。かかる促進剤には、例えば、サリチラート、グリココラート/リノラート、グリコラート、アプロチニン、バシトラシン、SDS、およびカプラートなどが含まれる。例えば、Fix(J.Pharm.Sci.,85:1282−1285,1996)およびOliyaiら(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,32:521−544,1993)を参照のこと。
【0140】
さらに、本発明の方法での使用が意図される組成物の親水性および疎水性はバランスがよく、それにより、in vitroおよび特にin vivoでの使用の両方のための有用性が増大する一方で、かかるバランスを欠く他の組成物は有用性が実質的により低い。具体的には、本発明での使用が意図される組成物は、体内での吸収および生物学的利用が可能である水媒体中の適切な溶解度を有する一方で、化合物が細胞膜を横切って推定作用部位に到達可能な脂質中の溶解度も有する。
【0141】
生理学的に許容可能な組成物
本発明は、TTPの防止および改善についての組成物の十分に調節された試験を行う機会が得られる第1の妥当なTTPの動物モデルを提供する。したがって、例えば、rVWF、FVIIIを含む生理学的に(または薬学的に)許容可能な組成物またはTTPの防止または改善のための組成物が本発明に含まれる。
【0142】
いくつかの実施形態では、経口、腹腔内、経皮、皮下、静脈内、または筋肉内注射、吸入、局所、病巣内、注入;リポソーム媒介送達;局所、直腸、気管支内、鼻腔、経粘膜、腸、または他の一般的な手段による投与のための生理学的に許容可能な組成物を処方することができる。生理学的に許容可能な組成物を、投与方法/様式に応じて種々の単位投薬形態で投与することができる。適切な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、ロゼンジ、坐剤、パッチ、鼻内噴霧、注射剤、植込み型徐放性処方物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
そのようなものとして、別の態様では、本発明は、有効量の試験組成物および許容可能なキャリアおよび/または賦形剤を含む生理学的に許容可能な組成物を提供する。生理学的に(または薬学的に)許容可能なキャリアには、生理学的に適合し、好ましくはポリペプチドまたはペプチド模倣物の活性を妨害しないかそうでなければ阻害しない任意の溶媒、分散媒、またはコーティングが含まれる。キャリアは、一般に、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、腹腔内投与、経皮投与、局所投与、または皮下投与に適切である。
【0144】
生理学的に許容可能なキャリアは、例えば、組成物を安定化させるか、試験薬剤の吸収を増加または減少させるように作用する1つまたは複数の生理学的に許容可能な化合物を含むことができる。生理学的に許容可能な化合物には、例えば、炭水化物(グルコース、スクロース、またはデキストランなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸またはグルタチオンなど)、キレート剤、低分子量タンパク質、活性薬剤のクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物、賦形剤、または他の安定剤および/または緩衝液が含まれ得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能なキャリアは生理学的食塩水である。他の生理学的に許容可能なキャリアおよびその処方物は周知であり、一般に、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(18th Ed.,ed.Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990)に記載されている。種々の薬学的に許容可能な賦形剤は当該分野で周知であり、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients(4th ed.,Ed.Roweら、Pharmaceutical Press,Washington,D.C.)中に見出すことができる。また、薬学的組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、カプセル、錠剤、または他の適切な形態として処方することができる。活性成分を、標的作用部位に到達する前の環境による不活化から活性成分を保護するための材料でコーティングすることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、植込み型デバイス(例えば、動脈ステントおよび静脈内ステント(溶出ステントが含まれる)、およびカテーテル)を使用して、生理学的に許容可能な組成物を送達させる。例えば、生理学的に許容可能な組成物を含む水溶液を、ステントおよびカテーテルによって直接投与する。適切なステントは、例えば、米国特許第6,827,735号;同第6,827,735号;同第6,827,732号;同第6,824,561号;同第6,821,549号;同第6,821,296号;同第6,821,291号;同第6,818,247号;同第6,818,016号;同第6,818,014号;同第6,818,013号;同第6,814,749号;同第6,811,566号;同第6,805,709号;同第6,805,707号;同第6,805,705号;同第6,805,704号;同第6,802,859号;同第6,802,857号;同第6,802,856号;および同第49 6,802,849号に記載されている。適切なカテーテルは、例えば、米国特許第6,829,497号;同第6,827,798号;同第6,827,730号;同第6,827,703号;同第6,824,554号;同第6,824,553号;同第6,824,551号;同第6,824,532号;および同第6,819,951号に記載されている。
【0147】
血清半減期を、徐放ポリペプチド「パッケージング」系の使用によって高レベルに維持することができる。かかる徐放システムは当業者に周知である。1つの好ましい実施形態では、タンパク質およびポリペプチド用のProLease生分解性ミクロスフィア送達系を使用する(Tracy,Biotechnol.Prog.,14:108(1998);Johnsonら、Nature Med.,2:795(1996);Herbertら、Pharmaceut.Res.,15:357(1998))。この系は、ポリマーマトリックス中にポリペプチドを含む生分解性ポリマーのミクロスフィアから構成される乾燥粉末の使用を含み、これを他の薬剤を含むか含まない乾燥処方物として配合することができる。
【0148】
オリゴヌクレオチド(例えば、タンパク質をコードするかタンパク質阻害性)を、直接トランスフェクションまたは発現ベクターを介したトランスフェクションおよび発現によって送達させることができる。適切な発現ベクターには、宿主細胞中で発現させるための適切な調節配列(プロモーターが含まれる)を使用してオリゴヌクレオチドがクローン化される哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクターが含まれる。適切なプロモーターは、構成的プロモーターまたは開発仕様のプロモーターであり得る。トランスフェクション送達を、当該分野で公知のリポソームトランスフェクション試薬(例えば、Xtremeトランスフェクション試薬,Roche,Alameda,CA;リポフェクタミン処方物,Invitrogen,Carlsbad,CA)によって行うことができる。カチオン性リポソーム、レトロウイルスベクターによって媒介される送達、および直接送達が有効である。別の可能な送達様式は、標的細胞のための細胞表面マーカーに対する抗体を使用したターゲティングである。
【0149】
トランスフェクションのために、1つまたは複数の核酸分子(ベクター中またはベクターなしで)を含む組成物は、動物への投与のための送達ビヒクル(リポソームが含まれる)、キャリア、ならびに希釈剤およびその塩を含むことができ、そして/または薬学的許容可能な処方物中に存在することができる。核酸分子の送達方法は、例えば、Gilmoreら、Curr.Drug Delivery(2006)3:147−5およびPatilら、AAPS Journal(2005)7:E61−E77(それぞれ、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。siRNA分子の送達は、いくつかの米国特許公開公報(例えば、米国特許出願公開第2006/0019912号;同第2006/0014289号;同第2005/0239687号;同第2005/0222064号;および同第2004/0204377号(それぞれの開示が本明細書中で参考として援用される)が含まれる)にも記載されている。核酸分子を、当業者に公知の種々の方法(リポソーム中のカプセル化、イオン導入法、エレクトロポレーション、または他のビヒクルへの組込み(生分解性ポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリン(例えば、Gonzalezら、1999,Bioconjugate Chem.,10:1068−1074;Wangら、国際PCT公開番号WO03/47518号、およびWO03/46185号を参照のこと)、ポリ乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)およびPLCAミクロスフィア(例えば、米国特許第6,447,796号および米国特許出願公開第2002/130430号を参照のこと)、生分解性ナノカプセル、および生体接着性ミクロスフィア、またはタンパク質性ベクター(O’Hare and Normand,国際PCT公開番号WO00/53722号)が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない)によって細胞に投与することができる。別の実施形態では、本発明の核酸分子を、ポリエチレンイミンおよびその誘導体(ポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−GAL)またはポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−トリ−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−トリGAL)誘導体など)を使用して処方するか複合体化することもできる。
【0150】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド配列を、ウイルス発現ベクターを介して細胞に送達させる。かかる分子の細胞への送達に適切なウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、およびレトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターが含まれる)が含まれる。例えば、siRNAオリゴヌクレオチドの送達および発現のために開発したウイルスベクターは、例えば、GeneDetect,Bradenton,FL;Ambion,Austin,TX;Invitrogen,Carlsbad,CA;Open BioSystems,Huntsville,AL;およびImgenex,San Diego,CAから市販されている。
【0151】
TTPの症状に及ぼす試験組成物の影響を決定する方法
本発明は、TTPの防止および改善についての組成物の十分に調節された試験を行う機会が得られる第1のTTPの動物モデルを提供する。以下の開示は、本発明の動物モデルで適用することができるいくつかの所見およびアッセイを記載する。
【0152】
本発明の動物モデルで観察することができるTTPの症状には、行動症状(錯乱、立毛、行動抑制、および運動失調など)が含まれる。TTPの血液学的症状および血清化学的症状には、血小板数の減少、ヘマトクリットの減少、ならびにクレアチニンキナーゼ、クレアチニン、および乳酸デヒドロゲナーゼの増加が含まれる。用語「増加する」および「減少する」を、非TTPコントロール(例えば、正常条件下の動物)と比較して決定する。観察することができる組織病理学的症状には、種々の器官および組織、特に心臓の微小血栓または壊死が含まれる。さらなる微視的および巨視的なTTPの症状を、実施例の節に記載する。
【0153】
溶血量を、血漿中ヘモグロビンレベルの測定によって決定することができる。正常を超えるレベルは、RBC溶解(TTPなどに関連する)を示す。したがって、マウスまたは他のげっ歯類(本発明のモデル)で認められた血漿ヘモグロビンと比較した血漿ヘモグロビンの減少は、試験化合物がTTPを有効に改善することを示す。
【0154】
血漿ヘモグロビンレベルを、例えば、穏やかな遠心分離による血球成分の分離後に視覚的に測定することができる。伝統的な方法には、例えば、Crosby and Furth(1956)Blood 11:380に記載のベンジジン技術も含まれる。血漿ヘモグロビンを、Kruszynaら(1977)Clin.Chem.23:2156−59に記載の方法を使用して、げっ歯類(細胞成分の分離がヒトよりも困難であり得る場合)で特異的に測定することもできる。簡潔に述べれば、フェリシアン化物を血液の血漿部分に添加し、540nmで吸光度を測定する。次いで、シアン化物を溶液に添加し、A540を再測定する。次いで、A2からA1を差し引いて遊離ヘモグロビン量を決定する。さらなる方法が当該分野で公知である。
【0155】
ヘマトクリットは赤血球(RBC)が占める血液量の比率の測定値であり、総血液量に対する比率として示す。これを、例えば、体積が表示された管における血液の穏やかな遠心分離によって比較的簡単に測定することができる。最下(最も重い)層はRBCで構成され、より小さな白血球層が続き、上部に無細胞血漿成分が存在する。自動化ヘマトクリット分析器は市販されており、しばしば、より正確な読み取りが行われる。マウスにおけるヘマトクリットは、一般に、約38〜45の範囲である。正常より低いヘマトクリットは、RBC溶解を示し、これはTTPに関連する。
【0156】
血小板数を、一般的な実験技術(血球計での計数など)を使用して計数することができる。あるいは、電子血液分析器を使用することができる。2つのタイプの電子計数装置(電圧パルス計数システムおよび電気光学的計数システム)が存在する。両システムでは、採取された血液を希釈し、電子カウンターに血液を通過させることによって計数する。この装置を、血小板の適切なサイズ範囲内の粒子のみを計数するように設定する。サイズ範囲の上および下のレベルは、サイズ排除限度と呼ばれる。サイズ排除限度を超えるかそれ未満のいかなる細胞または物質も計数されないであろう。正常範囲は、一般に、150,000〜450,000/□l血液である。高血小板数は、通常、血小板容態に関連する一方で、TTPは、一般に、低血小板数によって特徴づけられる。
【0157】
クレアチニンレベルを、一般に、腎臓機能を決定するために検出する。正常範囲は、通常、約50μmol/リットル血液と120μmol/リットル血液との間であるが、一般に、TTPで上昇する。腎臓が高度に血管化された器官であるので、かなりの数のTTP患者が腎不全を経験する。クレアチニンキナーゼ(CK)は、心臓、骨格筋、および脳で主に見出される酵素である。CKは主に細胞内に存在するので、正常を超えるCKレベルはTTPなどに関連する組織および細胞の損傷を示す。血中クレアチニンキナーゼは、一般に、約15〜180単位/リットル血液で存在する。クレアチニンレベルおよびCKレベルの両方を、典型的には、自動化血液分析装置を使用して測定する。
【0158】
ラクトースデヒドロゲナーゼレベルは溶血の別の指標であり、一般に、TTP患者で非常に高い。LDHレベルの上昇および溶血は、高ビリルビン血症(血中胆汁)および低ハプトグロブリンレベルにも関連する。LDHを、例えば、J.Clin Lab.Invest.33:291−306(1974)に記載の間接的な酵素分光学的方法を使用して測定することができる。LDHは、NADHの付随的産生を伴うpH8.8〜9.8でのラクタート−ピルバート反応を触媒する。次いで、NADHを340nmで分光光度的に測定し、LDHを比例的に計算する。LDHレベルは、通常、約100〜250U/リットル血液の範囲である。
【0159】
可能なさらなる症状には、発熱、腎不全、黄疸の徴候(帯黄色の眼または皮膚)、および貧血の徴候(低ヘモグロビンレベルなど)、および暗色尿が含まれる。発作が起こり得、心臓不整脈または心不全が同様に起こり得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、試験組成物により、TTP動物モデルで認められた少なくとも1つのTTP症状の重症度が軽減するか、症状の発生が遅延する。いくつかの実施形態では、TTP症状の重症度は、少なくとも5%(例えば、10%、20%、30%、またはそれを超えて)軽減する。いくつかの実施形態では、試験組成物は、症状を消失させるであろう(すなわち、適切なコントロールと比較して症状の重症度が統計的に重要でない程度に軽減するであろう)。
【0161】
一般に、特定の試験組成物の研究は、例えば、投与のために使用される緩衝液のバックグラウンドの影響を排除するための適切なコントロールを含む。適切なコントロールの例を、実施例の節に記載する。例えば、試験組成物研究は、試験組成物を使用した条件と試験組成物緩衝液のみを使用した条件との比較を含み得る。これらの条件を、本明細書中に記載の任意の動物モデルに対して試験することができる。
【0162】
動物モデル
一般に、本発明の動物には、ヒト以外の任意の種が含まれる。哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、スナネズミ、モルモット、およびブタなどの種が含まれ、方法が開発されている場合、他の哺乳動物(ウシおよび非ヒト霊長類が含まれる)が含まれる)がとくに興味深い。1つの態様では、動物はマウスである。さらなる態様では、マウスはC57BL/6J系統マウスである。
【0163】
なおさらなる態様では、本発明の動物は、少なくとも1つの外来遺伝子がゲノムに挿入されているかゲノムがノックアウトされている遺伝子操作された動物である。かかるトランスジェニック動物により、細胞レベルでの調節プロセスを、他の試験系では達成不可能な系統的および特異的様式で試験し、影響を調査するが可能である。記載のトランスジェニック動物型は、試験治療薬剤投与のin vivoでの影響の分析に有用である。1つの態様では、本発明のトランスジェニック動物には、VWF欠損動物が含まれる。別の態様では、本発明のトランスジェニック動物には、ADAMTS13欠損動物が含まれる。
【0164】
トランスジェニック動物はまた、推定寛容性宿主免疫系の状況での抗自己抗体の発生に及ぼす試験薬剤の影響の評価のためのモデルとして役立つ。かかる理解は、血液凝固障害(TTPおよびVWDなどが含まれるが、これらに限定されない)の処置のための薬剤のデザインおよび試験に不可欠である。
【0165】
本明細書中の導入遺伝子は、天然の調節(発現調節)配列に隣接するか、異種配列(プロモーター、配列内リボゾーム進入部位(IRES)および他のリボゾーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、ならびに5’および3’非コード領域などが含まれる)に会合したヒト血液凝固因子または他のタンパク質のコード配列(例えば、cDNA、合成コード配列、またはゲノムDNA)を含む。コード配列を、一定の態様では、当該分野で公知の多数の手段によって修飾する。かかる修飾の非限定的な例には、メチル化、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドのアナログとの「キャップ」置換、およびヌクレオチド間修飾(例えば、非荷電性結合(例えば、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホロアミダート、カルバマートなど)および荷電結合(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなど)での修飾など)が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えば(制限されない)、1つまたは複数のさらなる共有結合部分(例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、鉄、酸化金属など)、およびアルキル化剤など)を含む。ポリヌクレオチドを、一定の態様では、メチルホスホトリエステルもしくはエチルホスホトリエステル結合またはアルキルホスホルアミダート結合の形成によって誘導する。さらに、本明細書中のポリヌクレオチドを、さらに、一定の態様では、検出可能なシグナルを得ることができる標識を使用して直接または間接的に修飾する。例示的標識には、放射性同位体、蛍光分子、およびビオチンなどが含まれる。
【0166】
遺伝子発現を、当該分野で周知の種々の手段によって調節する。導入遺伝子の発現は、公知の手段、典型的には、所与の条件(例えば、所与の化合物または特定の物質の存在)または環境条件(組織型または温度など)の変化に応答するプロモーターの選択によって二者択一的に構成的であるか、誘導的または抑制的に調節される。用語「誘導性発現」は、定義した条件下で遺伝子発現を起こさせる任意の手段に及び、手段および条件を、宿主生物の利便性および妥当性に基づいて選択する。
【0167】
形質転換を、生物、生物の細胞の特徴、およびその生物学に応じて種々の公知の技術によって行う。安定な形質転換は、細胞および細胞核へのDNAの侵入を含む。単一の細胞から再生することができる生物(いくつかの哺乳動物が含まれる)のために、例えば、in vitro培養で形質転換し、その後に形質転換体を選択し、形質転換体を再生することができる。DNAまたはRNAの細胞への導入のためにしばしば使用される方法には、微量注入、微粒子銃、DNAまたはRNAのカチオン性脂質、リポソーム、または他のキャリア材料との複合体の形成、エレクトロポレーション、および形質転換したDNAまたはRNAのウイルスベクターへの組込みが含まれる。他の技術は当該分野で公知である。細胞核へのDNA導入は細胞過程によって起こり、一定の態様では、適切なベクターの選択、細胞内トランスポザーゼまたはリコンビナーゼによって作用する組込み部位配列を含めることによって補助される(例えば、Craig,Ann.Rev.Genet.1988,22:77;Cox.In Genetic Recombination(R.Kucherlapati and G.R.Smith,eds.)1988,American Society for Microbiology,Washington,D.C.,pages 429−493;Hoess.In Nucleic Acid and Molecular Biology(F.Eckstein and D.M.J.Lilley eds.)Vol.4,1990,Springer−Verlag,Berlin,pages 99−109を参照のこと)。
【0168】
上記に示すように、1つの態様では、本発明の動物モデルはマウスである。種々の胚性幹(ES)細胞が由来するマウス系統の遺伝的背景は当該分野で公知であり、マウス系統C57BL/6Jまたは129を起源とする以下のES細胞が含まれる:R1細胞は亜系統129/Svと129/Sv−CPとの間の交配由来のマウス胚盤胞を起源とする(Nagyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8424−8,1993);GS1細胞は129/Sv/Evに由来する。D3細胞(Doetschmanら、Nature 330:576−8,1987)およびJ1細胞は129/Svまたは129/terSvを起源とする。ESマウスも得られるTT2細胞はF1交配系統(C57BL/6×CBA)を起源としていた(Yagiら、Anal.Biochem.14:70−6,1993)。特定の態様では、本発明は、C57BL/6JマウスおよびC57BL/6Jマウス由来のノックアウトマウスを含む。
【0169】
本発明で目的のタンパク質を発現させるために使用される発現ベクターおよび核酸は、種々の実施形態では、組織特異的プロモーターを含む。かかるプロモーターは当該分野で公知であり、肝臓特異的プロモーター(例えば、アルブミン;Miyatakeら、J.Virol.1:5124−32,1997;α−フェトプロテイン)、筋肉特異的プロモーター(例えば、ミオシン軽鎖1(Shiら、Hum.Gene Ther.8:403−10,1997,α−アクチン)、膵臓特異的プロモーター(例えば、インスリンまたはグルカゴンプロモーター)、神経特異的プロモーター(例えば、チロシンヒドロキシラーゼプロモーターまたはニューロン特異的エノラーゼプロモーター)、内皮細胞特異的プロモーター(例えば、フォン・ビルブラント因子;Ozakiら、Hum.Gene Ther.7:1483−90,1996)、および平滑筋細胞特異的プロモーター(例えば、22a;Kimら、J.Clin.Invest.100:1006−14,1997)が含まれるが、これらに限定されない。他の組織特異的プロモーターには、癌治療の開発でも使用されるプロモーター(チロシナーゼ特異的プロモーター(Diazら、J.Virol.72:789−95,1998)、ヒトアロマターゼシトクロムp450(p450arom)由来の脂肪組織プロモーター(米国特許第5,446,143号;Mahendrooら、J.Biol.Chem.268:19463 19470,1993;およびSimpsonら、Clin.Chem.39:317 324,1993を参照のこと)が含まれる)が含まれる。本発明の方法で有用なベクターおよび他の核酸分子はまた、導入遺伝子の一過性発現を制限する配列を含むことができる。例えば、導入遺伝子を、例えば、プロモーター中にcAMP応答エレメントエンハンサーを含め、トランスフェクトされたか感染された細胞をcAMP調整薬で処置することによって薬物誘導性プロモーターにより調節することができる(Suzukiら、Hum.Gene Ther.7:1883−93,1996)。あるいは、リプレッサーエレメントにより、薬物の存在下での転写を防止する(Huら、Cancer Res.57:3339−43,1997)。erg遺伝子プロモーターと併せた電離放射線(照射療法)の使用によって発現の空間的調節も行われている(Sungら、Cancer Res.55:5561−5,1995)。
【0170】
目的のタンパク質をコードする組換え核酸構築物を、例えば、増幅用の任意の適切なプラスミド、バクテリオファージ、またはウイルスベクターに挿入し、当該分野で公知の方法(Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)に記載の方法など)を使用して増殖させる。1つの実施形態では、真核細胞(脊椎動物細胞など)に適合する発現ベクターを使用する。真核細胞発現ベクターは当該分野で周知であり、商業的供給元から利用可能である。意図する発現ベクターは、原核生物配列(細菌中のベクターの増殖を容易にするため)およびブタ細胞中で機能的な1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。典型的には、かかるベクターにより、所望の組換えDNA分子の挿入に都合の良い制限部位が得られる。pcDNAI、pSV2、pSVK、pMSG、pSVL、pPVV−1/PML2d、およびpTDT1(ATCC番号31255)由来のベクターは、非ヒト細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかを細菌プラスミド(pBR322など)由来の配列を使用して修飾して、原核細胞および真核細胞の両方での複製および薬物耐性選択を容易にする。あるいは、ウイルスの誘導体(ウシ乳頭腫ウイルス(BPV−1)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)など)を、ブタ細胞中でのタンパク質の発現のために使用することができる。プラスミドの調製および宿主細胞の形質転換で使用される種々の方法は当該分野で周知である。本発明で有用な他の適切な発現系および一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989)を参照のこと。
【0171】
トランスジェニック動物、特にマウスまたはラットの作製技術は周知である(Gordon,International Rev.Cytol.115:171−229,1989)。導入遺伝子の種々の導入アプローチ(核酸の細胞への微量注入、レトロウイルスベクター法、および胚性幹(ES)細胞への遺伝子移入が含まれる)を利用可能である。遺伝子を、一定の態様では、妨害してトランスジェニックノックアウト動物を生成する。
【0172】
ノックアウト動物の任意の生成方法が本発明で意図される。いくつかの実施形態では、内因性対立遺伝子と変異VWF遺伝子または適切な配列との間での相同組換えによってVWF遺伝子を破壊して内因性対立遺伝子またはその一部を欠失させ、動物の胚性幹細胞前駆体に導入した。次いで、胚性幹細胞前駆体を発生させ、機能的に破壊されたVWF遺伝子を有する動物を得る。動物は機能的に破壊された1つのVWF遺伝子対立遺伝子を有することができるか(すなわち、動物はヌル変異のヘテロ接合性であり得る)、別の態様では、動物は機能的に破壊された両方のVWF遺伝子対立遺伝子を有する(すなわち、動物は変異のホモ接合性であり得る)。本発明の1つの実施形態では、両VWF遺伝子の対立遺伝子の機能的破壊により、動物細胞中のVWF遺伝子産物の発現が非変異動物と比較して実質的または完全に存在しない動物が生成される。別の実施形態では、変化した(すなわち、変異)VWF遺伝子産物が動物細胞中に産生されるように、VWF遺伝子対立遺伝子を破壊する。かかる動物は、VWFが欠損し得るか、VWFを全く欠き得る。1つの態様では、機能的破壊されたVWF遺伝子を有する本発明の非ヒト動物はマウスである。
【0173】
さらなる実施形態では、本発明は、破壊されたADAMTS13遺伝子を有する動物の使用を含む。1つの態様では、機能的に破壊されたADAMTS13遺伝子を有する非ヒト動物はマウスである。ADAMTS13欠損マウスを本発明で使用する。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFのADAMTS13切断プロテアーゼを欠く患者における条件を模倣しているからである。さらに、これらのマウスは急性毒性研究で広く使用されており、規制当局によってかかる毒性研究に適切であると一般に認識されているので、これらのマウスを本発明で使用する。さらなる態様では、本発明のADAMTS13欠損マウスおよびVWF欠損マウスは、C57BL/6J系統に由来する。なおさらなる態様では、C57BL/6Jマウスをさらなるコントロールとして使用し、且つ本発明のモデルとして使用する。
【0174】
受精卵母細胞をトランスジェニックの生成のために使用する場合、所望の外来DNAまたは導入遺伝子を卵母細胞に組込む。適切なレトロウイルスベクターなどを介したいくつかの方法または微量注入によって導入遺伝子を卵母細胞に組込む。米国特許第4,736,866号に記載され、B.Hoganらentitled “Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,U.S.A.(1986)によって提供されるように、トランスジェニックマウスを、妊娠マウスから単離した胚盤胞へのDNAの微量注入によって当該分野で日常的に生成する。例えば、Haren et al,Annu.Rev.Microbiol.53:245−281,1999;Reznikoffら、Biochem.Biophys.Res.Commun.266(3):729−734,1999;Ivics et al,Methods Cell Bid.,60:99−131,1999;Hallら、FEMS Microbiol.Rev.21:157−178 1997も参照のこと。米国特許第6,492,575号は、ES細胞の形質転換および四倍体(tetrapliod)胚盤胞への形質転換した細胞の注入によるトランスジェニックマウスの作製方法を記載している。ヘテロ接合性同胞の交配により、所望の遺伝子を保有するホモ接合性動物を得ることができる。
【0175】
さらに、Capecchiらは、導入遺伝子を胚性、胎児、または成体の多能性幹細胞に組込むことができる方法を記載している(Science 244:1288−1292,1991)。この方法では、胚性幹細胞を、in vitroで培養した胚盤胞から単離する。これらの胚性幹細胞を、分化することなく多数の細胞世代にわたって培養物中で安定性を保持することができる。次いで、導入遺伝子を、エレクトロポレーションまたは他の形質転換方法によって胚性幹細胞に組込む。導入遺伝子を保有する幹細胞を選択し、胚盤胞の内細胞塊に注射する。次いで、胚盤胞を擬妊娠雌に移植する。胚盤胞の内細胞塊の全ての細胞が導入遺伝子を保有するわけではないので、動物は導入遺伝子に関してキメラである。キメラ動物の交雑により、導入遺伝子を保有する動物を産生可能である。この過程の概説は、Capecchi,Trends in Genetics 1989,5:70−76によって示されている。
【0176】
導入遺伝子の送達を、1つの態様では、レトロウイルス送達系によって行う(例えば、Eglitisら、Adv.Exp.Med Biol.241:19,1988を参照のこと)。1つの実施形態では、レトロウイルス構築物は、ウイルスの構造遺伝子が単一の遺伝子に置換され、次いで、ウイルス長末端反復(LTR)中に含まれる調節エレメントの調節下で転写される構築物である。種々の単一遺伝子ベクター骨格(モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)が含まれる)が使用されている。内部プロモーターの調節下で異なる遺伝子(選択マーカー遺伝子および第2の目的の遺伝子など)を複数挿入することが可能なレトロウイルスベクターは、この骨格型に由来し得る(例えば、Gilboa,Adv.Exp.Med Biol.241:29,1988を参照のこと)。
【0177】
タンパク質産物の発現のためのベクター構築のエレメントは当業者に公知である。「強力」プロモーター(Changら、Int.J.Cell Cloning 7:264,1989に概説のSV40プロモーターまたはLTRプロモーターなど)を使用して転写を調節する場合に、レトロウイルスベクターからの効率の良い発現が認められる。これらのプロモーターは構成的であり、一般に、組織特異的発現は不可能である。他の適切なプロモーターを本明細書中で考察する。
【0178】
パッケージング細胞株の使用により、産生された組換えビリオンの効率および感染性が増加する(Miller,1990,Human Gene Therapy 1:5を参照のこと)。マウスレトロウイルスベクターは、マウス胚(例えば、Wagnerら、1985,EMBO J.4:663;Griedleyら、Trends Genet.3:162,1987を参照のこと)および造血幹細胞(hematopoietic stem cell)(例えば、Lemischkaら、Cell 45:917−927,1986;Dickら、Trends Genet. 2:165−170,1986を参照のこと)への遺伝子の効率の良い導入に有用であった。
【0179】
以前に可能なウイルス力価より遥かに高いウイルス力価を達成可能なさらなるレトロウイルステクノロジーは、同種指向性パッケージング細胞株と両種指向性パッケージング細胞株との間の連続的導入による増幅(いわゆる「ピンポン」法)を含む(例えば、Kozakら、J.Virol.64:3500−3508,1990;Bodineら、Prog.Clin.Biol.Res.319:589−600,1989を参照のこと)。さらに、ウイルス力価の増加技術により、効率的な形質導入を達成するために、ウイルス産生細胞株との直接的インキュベーションよりもむしろウイルス含有上清を使用することが可能である(例えば、Bodineら、Prog.Clin.Biol.Res.319:589−600,1989を参照のこと)。細胞DNAの複製には宿主ゲノムへのレトロウイルスベクターの組込みが必要であるので、例えば、標的細胞の誘導によって活発に循環する幹細胞をターゲティングする頻度を増加させるか、成長因子でのin vitroでの処置によって分裂させるか(例えば、Lemischkaら、Cell 45:917−927,1986;Bodineら、Proc.Natl.Acad.Sci.86:8897−8901,1989を参照のこと)、レシピエントを5−フルオロウラシルに曝露する(例えば、Moriら、Japan.J.Clin.Oncol.14 Suppl.1:457−463,1984を参照のこと)ことが望ましいかもしれない。
【0180】
一定の実施形態では、本発明は、本発明のノックアウト動物(例えば、マウス)を第2の動物(例えば、第2のマウス)と交配させる工程を含む、トランスジェニック動物の生成方法を提供する。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明は、a)動物を化合物に曝露する工程、およびb)化合物に対する動物の応答を決定する工程を含む、化合物(薬剤)のスクリーニング方法を提供する。一定の実施形態では、化合物に曝露していないコントロール動物と比較した応答の変化は、化合物に対する応答を示す。他の実施形態では、動物(動物の細胞、組織、または器官)を、野生型動物と比較することなく直接試験する。
【0182】
いくつかの実施形態では、動物の化合物に対する応答の決定において、動物由来の血液および尿を試験する。他の実施形態では、動物由来の器官または組織を試験する。かかる器官および組織には、眼、眼組織、網膜、網膜組織、腎臓、腎臓組織、膵臓、膵臓組織、前立腺、前立腺組織、膀胱、膀胱組織、心臓、心臓組織、脳、脳組織、副腎、副腎組織、肝臓、肝臓組織、肺、肺組織、脾臓、脾臓組織、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例えば、これらの器官または組織中で血液凝固を軽減または防止する化合物を、TTP処置で潜在的に有益であると見なすことができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、試験される化合物は、候補抗凝固剤またはADAMTS13の発現または活性を増加させる薬剤である。いかなる機構にも制限されないが、本発明の動物モデルは血液凝固の感受性が増加していると考えられる。そのようなものとして、本発明の動物モデルにより、候補化合物の抗凝固能力を容易に評価することが可能である。
【0184】
上記のように、用語「薬剤」および「化合物」を、本発明の動物モデルにおいて血液凝固に影響を及ぼす能力を有する任意の分子(例えば、タンパク質または医薬品)を説明するために交換可能に使用する。1つの態様では、薬剤は、動物モデルにおいて血液凝固を軽減させる。別の態様では、薬剤により、動物モデルの死亡が軽減される。さらなる態様では、薬剤により、動物モデルの病状が改善される。一般に、複数のアッセイ混合物を、異なる薬剤濃度で並行して実験を行って種々の濃度に対する応答の相違を得る。典型的には、これらの濃度の1つは、ネガティブコントロール(すなわち、濃度0または検出レベル未満)として役立つ。
【0185】
候補薬剤(化合物)は、多数の化学クラスを含み、広範な種々の供給源(合成化合物または天然化合物のライブラリーが含まれる)から得られる。例えば、広範な種々の有機化合物および生体分子の無作為および定方向の合成のための多数の手段(無作為に選択されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現が含まれる)が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーを利用可能であり、これらは容易に産生される。さらに、天然または合成的に産生されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に修飾し、これを使用してコンビナトリアルライブラリーを産生することができる。公知の薬学的作用因子を定方向または無作為な化学修飾(アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など)に供して構造アナログを生成することができる。スクリーニングは、公知の薬理学的に活性な化合物およびその化学的アナログを対象とすることができる。
【0186】
動物の臨床的評価
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、特徴的な臨床検査の所見を持たない診療診断の結果である。従来、以下の5組の徴候および症状(すなわち、病状)がTTPに関連していた:血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、神経学的異常、腎不全、および発熱。本発明は、これらおよび他の臨床的、行動的、および組織学的に関連する病状を軽減する薬剤についてこれらの病状をモニタリングすることを含む。
【0187】
TTP診断を示唆するための現在の診療診断基準には、血小板減少症、分裂赤血球増加症、および血清LDHレベルの有意な上昇が含まれる。in vivoでのADAMTS13によるULVWF多量体の切断に必要な全ての分子相互作用における異常を検出できるin vitro試験が存在しないことにより制限を受ける。したがって、本発明は、動物モデルの血液、尿、および身体の種々の器官の病理学的試験を含む。種々の時点で動物の検死を行い、組織病理学的試験のために組織(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼が含まれるが、これらに限定されない)を採取する。
【0188】
血液学的調査は、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球、総白血球数、白血球百分比、血液形態学の異常、血小板数、平均赤血球ヘモグロブリン、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロブリン濃度の分析を含む。
【0189】
動物モデルに及ぼす種々の薬剤の影響の試験における主要評価項目は死亡であるが、本発明は、処置後の動物の活性レベルおよび健康状態のモニタリングを含む。動物の体重が全体的な健康状態を示すので、種々の時点(例えば、0、1、7、および14日目など)で動物の体重も測定する。測定点を数週間および数ヵ月などに延長することができるように、長期研究も本発明で意図する。
【0190】
本発明は、TTPの診断でしばしば使用される臨床検査の使用を含む。かかる試験には、血液検査が含まれる。血液および/または尿を麻酔下(必要に応じて)で採取し、以下の試験が含まれるが、これらに限定されない:(1)全血球計算値(CBC)−血小板減少症および貧血に注目する。血小板減少症は、破壊赤血球の出現およびLDHの上昇の数日前に証明され得る。(2)末梢血塗抹標本−破壊赤血球(すなわち、分裂赤血球)は溶血と一致する。血液塗抹標本上の分裂赤血球はこの疾患の形態学的特徴であるが、TTPの他の血栓性微小血管症との区別に必要な分裂赤血球数に関するガイドラインは存在しない。(3)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル−ほとんどが溶血に起因するよりもむしろ虚血性組織または壊死組織の細胞由来のLDHの結果として非常に上昇する。(4)間接ビリルビンレベル−上昇。(5)網状赤血球数−上昇。(6)プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)−正常。(6)DICパネル(例えば、フィブリノゲン、D−ダイマー)−結果は、通常、正常である。D−ダイマーレベルの上昇は、最も特異的なDICパラメーターであり、架橋フィブリンの繊維素溶解を反映する。(7)クレアチニンレベル−軽度に上昇する(46%)。(8)尿検査−蛋白尿および顕微鏡的血尿。
【0191】
統計的な方法、計算、および比較
本発明は、当業者に公知の任意の統計的な方法、計算、および比較の使用を含む。以下の実施例で考察されるいくつかの統計的な方法、計算、および比較を本明細書中に記載する。しかし、当業者が当業者に公知の任意の許容可能な方法を使用することができるので、これらは決して排除または制限を意味しない。1つの態様では、例えば、本発明は、体重推移(body mass development)における最小検出用量(MDD)のモニタリングを含む。MDDは、対応緩衝液から変化する最小用量と定義する。本発明の実施例では、逓減様式で試験した対比の使用によってrVWF+rFVIIIおよびrVWFについてのMDDを評価した。異なる用量のrVWF+rFVIIIおよびrVWFも、死亡および体重推移について対応緩衝液と比較した。さらに、2000RCoU/kgのVWF+1664IU/kgのFVIIIの用量でのヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIの用量のrVWF+rFVIIIと比較した。この比較を、死亡および体重推移について行った。
【0192】
下記の実施例で考察される全ての統計的計算を、例えば、Linux用のSASバージョン8.2を使用して行った。統計的有意性レベルを5%に設定した。相違なしの帰無仮説を、その両側対立仮説に対して試験した。短期分析データセット(STADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究1日目に屠殺された動物からなっていた。長期分析データセット(LTADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究14日目に屠殺された動物からなっていた。
【0193】
本発明の一定の態様では、動物モデルにおける試験薬剤の有効性の評価において任意の評価項目を考慮する。1つの態様では、統計的評価のための主要評価項目は死亡である。さらなる態様では、統計的評価のための二次評価項目は、体重推移(0日目の体重に対する比率として)ならびに血液学的変数および血清学的変数の変化であった。血液学的変数および血清学的変数の変化を、記述統計学を使用して分析する。正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TRENDによる)を使用して、漸増用量のrVWF+rFVIIIおよびrVWFのみを使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行う。
【0194】
本発明の1つの態様では、異なる用量のrVWFのみまたは異なる用量のrFVIIIとの組み合わせを使用して研究を行う。かかる研究では、体重推移の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価する。本発明の方法で使用した種々の試薬の毒性に基づいて研究を修正する。例えば、最初の実験では用量4000RCoU/kgでのヘマート(登録商標)PのrVWF+rFVIIIとの比較を計画していたが、この用量はヘマート(登録商標)P(クエン酸毒性)を用いて実現不可能であることが証明されており、用量2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pを含めた。したがって、用量2000RCoU/kg+1538IU/kgのrVWF+rFVIIIを、用量2000RCoU/kgのVWFのヘマート(登録商標)Pと比較した(実施例を参照のこと)。
【0195】
1つの態様では、化合物および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに変動の平均および変動係数を使用してまとめる。変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるので、これを行う。
【0196】
死亡分析
本発明は、死亡分析を含む。当該分野で公知の任意の統計学的方法の本発明での使用が意図される。本発明には、以下の統計学的方法が含まれるが、これらに限定されない。化合物および用量あたりの観察期間および対応する両側95%信頼区間の間に死亡する動物の比率を計算することができる。両側95%信頼区間を、ウィルソンスコア法によって計算することができる(Altmanら、Statistics with Confidence.Brit.Med.J.Books,2nd ed.,JW Arrowsmith Ltd.,Bristol,pages 46−48,2000)。これらの分析を、STADS、LTADS、ならびにSTADSおよびLTADSの併合について個別に行うことができる。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別に行うこともでき、且つ雄および雌の動物の組み合わせについて行うこともできる。
【0197】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の死亡の相違を、両側フィッシャー正確検定(SASプロシージャPROC MULTTESTによる)によって雄動物および雌動物の組み合わせについて評価することができる。この分析を、STADSおよびLTADSの併合について行うことができる。対応緩衝液を使用した5つの用量群の比較のための多重性の調整を、ホルムの方法を使用して同時に適用することができる(Scandinavian J.Stat.6:65−70,1979)。非調整および多重性調整した両側p値を示す。異なる化合物を調査するために、多重性を調整しない。
【0198】
正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TRENDによる)を使用して、漸増用量のrVWF+rFVIIIおよびrVWFのみを使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行う。これらの分析を、STADSおよびLTADSの併合ならびに雄および雌の組み合わせについて行うことができる。
【0199】
体重推移の分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対する比率として)との間の体重の変化は別の評価点であり、一定の態様では、化合物および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化する。雄動物および雌動物を、一定の態様では、これらの箱ひげ図のために組み合わせる。2匹の動物由来のデータしか利用できなかったので、用量4000RCoU/kgで投与したヘマート(登録商標)Pの処置群を、実施例中の箱ひげ図に含めなかった。
【0200】
ボックスの下縁は25パーセンタイル(または第1四分位点)を示し、ボックスの上縁は75パーセンタイル(または第3四分位点)を示し、ボックスの上縁および下縁内のラインは中央値を示した。パルスは平均を示した。ボックスの下縁から上縁までの距離は四分位範囲(IQR)を示した。75パーセンタイルを超えるひげを、75パーセンタイル+1.5IQR以下である値のうちの最も大きなデータ値まで引いた。それより大きな任意のデータ値をマークした。25パーセンタイル未満のひげを、25パーセンタイル−1.5IQR以下である値のうちの最も小さなデータ値まで引いた。それより小さな任意のデータ値をマークした。
【0201】
平均および対応する両側95%ブートストラップ−t信頼区間(Efronら、“An Introduction to the Bootstrap.” Chapman and Hall/CRC,Boca Raton,London,N.Y.,Washington D.C.,1993)を、化合物および用量によって分類された研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するA%として)との間の体重の変化について示した。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについての0日目から1日目までの変化(STADS)、0日目から7日目までの変化(LTADS)、および0日目から14日目までの変化(LTADS)について行った。ブートストラップ−t信頼区間を、性別によって層別した10,000回のブートストラップ反復に基づいて計算した。3匹を超える動物サンプルサイズについての平均の両側95%ブートストラップ−t信頼区間を示した。
【0202】
体重推移の平均についての箱ひげ図、平均、および対応する両側95%信頼区間を十分に注意して解釈すべきである。何故なら、これらには計画した屠殺日以前に死亡した動物を組込んでいなかったからである。両側p値の計算のために、屠殺計画日前に死亡する動物に最も低い順位を与える(Lachin,Controlled Clinical Trials 20:408−422,1999)。したがって、両側p値は、体重推移の平均および対応する両側95%信頼区間よりも化合物間の体重推移における影響の評価に適切である。
【0203】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、例えば、0日目から1日目までの変化(STADS)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価する。
【0204】
体重推移を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した両側並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)によって特定された対比のために比較する。
【0205】
対応緩衝液を使用した5つの用量群の比較のための多重性の調整を、例えば、ホルムの方法を使用して同時に適用した(Scandinavian J.Stat.6:65−70,1979)。本明細書中の実施例では、非調整および多重性調整した両側p値を示した。異なる化合物の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しない。
【0206】
ヘマート(登録商標)Pと対応する用量のrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、例えば、0日目から1日目までの変化(STADS)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価する。両側p値を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)によって計算する。2つの異なる研究日の調査のために、多重性を調整しない。
【0207】
最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、1つの態様では、Tamhane at al.によって提案された逓減様式で試験する対比を使用して評価する(Biometrics 52:21−37,1996;procedure SD2)。この分析は探索的分析であるので、線形および逆ヘルマート対比を、最低のMDDが得られる対比を報告した推定について考慮する。
【0208】
このようにして決定された最小検出用量は、無毒性量(NOAEL)より高い用量レベルの1つである。例えば、rVWF+rFVIIIおよびrVWFの最小検出用量を、0日目から1日目までの体重の変化(STADS)および0日目から14日目までの体重の変化(LTADS)について個別に評価する。
【0209】
線形対比のための両側p値を、例えば、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)を使用して計算する。異なる化合物の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しない。
【0210】
例えば、研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、化合物および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化する。雄動物および雌動物を、これらの図のために任意選択的に組み合わせる。2匹の動物由来のデータしか利用できないので、用量4000RCoU/kgで投与したヘマート(登録商標)Pの処置群を、箱ひげ図に含めなかった。
【0211】
例えば、研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、化合物および用量によって分類した平均および変動係数(CV)を使用してまとめる。これらの統計を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについて示す。
【0212】
体重推移を、例えば、研究日あたりの全ての調査化合物にわたって順位付けする。計画した屠殺日前に死亡する動物に最も低い順位を与えた。調査した対比について体重推移の順位を使用する。平均および対応する信頼区間の計算や箱ひげ図の作成のために、欠測値を置換しない。
【0213】
計画した屠殺日以前の動物の血液学的変数および血清学的変数のために欠測値を置換しない。
【0214】
種々の病状の試験
本発明は、想定された正常状態からの逸脱をいう種々の病状のモニタリングおよび/または測定を含む。かかる病状には、臨床的病状、行動病状、および組織学的病状が含まれるが、これらに限定されない。
【0215】
病状が「臨床的病状」である場合、病状は体液(血液および尿などであるが、これらに限定されない)の異常を反映する。例えば、化学、微生物学、血液学、または分子病理学を使用して臨床的病状を観察する。例えば、血液学的調査を使用して、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球、総白血球数、白血球百分比、血液形態学の異常、血小板数、平均赤血球ヘモグロブリン、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロブリン濃度の異常を検出する。血液化学調査を使用して、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルおよび/またはクレアチニンキナーゼ(CK)レベルの異常を検出する。銅色尿、血尿、および他の尿異常について尿を試験する。
【0216】
病状が「行動的病状」である場合、1つの態様では、動物の外観および行動の変化のモニタリングによって病状を観察する。例えば、行動病状には、行動抑制、体位の変化(腹臥位または側臥位など)、呼吸困難、運動失調、不動、痙攣、呼吸困難、筋痙攣、および立毛が含まれるが、これらに限定されない。
【0217】
病状が「組織学的病状」である場合、1つの態様では、器官、組織、または全身(剖検または検死)の巨視的試験、微視的試験、または分子試験(体重相違の測定が含まれる)を使用して病状を観察する。
【0218】
組織の組織学的調製を行う。全組織サンプルのスライドを、試験化合物処置した高用量群、基準化合物処置群、コントロール群中のあらゆる動物から検死で回収し、全ての巨視的所見の組織サンプルを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、病理学者によって光学顕微鏡で観察する。同一のプロセスを、全ての他の試験化合物処置群中のあらゆる動物のいくつかの器官(心臓、脳、眼、腎臓、副腎、および肺)由来の組織サンプルに適用する。
【0219】
病理学者によって組織病理学的試験の間の微視的所見を記録する。スライドを評価し、可能な限り、分布、重症度、および形態学的特徴にしたがって組織学的変化を記載する。かかる組織学的病状には、微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性/修復、膠細胞病巣、皮質壊死、出血、微小血栓の発生率または平均重症度の増加、播種性血管内凝固異常症(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、虚血性心疾患、血栓塞栓性変化、壊死、反応性冠血管周囲炎、炎症、線維症、ヘモシデリン沈着、石灰化、腎梗塞、および体重減少が含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
本明細書中に引用したそれぞれの刊行物、特許出願、特許、および他のリファレンスは、本開示と矛盾しない範囲で、その全体が参考として援用される。
【0221】
本明細書中に記載の実施例および実施形態が例示のみを目的として、これらを考慮して、種々の修正形態または変更形態が当業者に示唆され、これらが本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれると理解される。本明細書中に引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0222】
本発明のさらなる態様および詳細は以下の実施例から明らかであろう。実施例は、本発明の制限よりもむしろ例示を意図する。実施例1は、C57BL/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例2は、VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例3は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの急性毒性を記載する。実施例4は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFの急性毒性をヒトrADAMTS13の同時投与を使用して弱毒化することができることを示す。実施例5は、マウスADAMTS13がrVWFと反応しないことを示す。実施例6は、C57Bl/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例7は、VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例8は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用を記載する。実施例9は、ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrADAMTS13のヒトrVWFとの同時投与を記載する。
【0223】
実施例1:
C57BL/6Jマウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、C57BL/6Jマウスにおける単回静脈内注射(臨床適用経路)後の組換えVWF(rVWF)のみまたは組換え第VIII因子(rFVIII)(アドベイト(登録商標)、Baxter)との組み合わせの急性毒性プロフィールを決定することであった。本研究を行って、試験薬剤の投与後に血栓事象(特に、微小血管)が起こり得るかどうかを決定した。本研究のためにC57BL/6J系統マウスを選択した。何故なら、このマウスは、並行急性毒性研究で使用されるVWF欠損マウスおよびADAMTS13欠損マウスに対する遺伝的背景系統であるからである(実施例2および3を参照のこと)。
【0224】
単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した組換えVWFを、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。
【0225】
組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、投与した最も高い用量/体積(すなわち、それぞれ31.7mL/kg、49.3mL/kg、および49.3mL/kg)にしたがって投与した。
【0226】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンを、以下の表1に記載のように行った。
【0227】
【表1】
【0228】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。1日目(研究パート1)または14日目(研究パート2)の心穿刺によって、麻酔下で(ケタミンおよびキシラジン)マウスから血液サンプルを採取した。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、およびクレアチニンキナーゼ(CK)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0229】
主要評価項目は死亡であった。活性レベルおよび健康状態を注射から最初の6時間後に詳細にモニタリングし、その後14日目まで毒性を示す徴候について毎日チェックした。全ての動物を0日目および1日目(短期パート)ならびに1日目、7(8)日目、および14日目(長期パート)に秤量して身体全体の健康状態を得た。
【0230】
統計的評価のための二次評価項目は、体重推移(0日目の体重に対する比率として)ならびに血液学的変数および血清学的変数の変化であった。血液学的変数および血清学的変数の変化を、記述統計学を使用して分析した。分析した変数は、ヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKであった。
【0231】
本研究の条件下で、4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたは3077、1538、769、385、および192IU/kg体重の用量のrFVIIIとの組み合わせの静脈内投与は、いかなる自発的死亡とも関連しなかった。体重の用量関連変化は明確ではなかった。ヘマート(登録商標)Pとの組み合わせにより、統計的に有意な相違は明らかとならなかった。
【0232】
マウスにおいて毒性を示す臨床症状は、高用量群(rFVIIIを含むか含まない4000または2000RCoU/kg体重のrVWFで処置した群)で認められた。血小板減少症は、1日目に2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWF単独またはrFVIIIとの組み合わせで明らかとなり、14日後に回復した。他の変数は、生物学的に関連する変化を示さなかった。選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、血小板数の減少は、2000RCoU/kgおよびそれを超える用量のrVWFを単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した1日後に認められた。血中乳酸デヒドロゲナーゼ濃度の増加は、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFで処置した群で1日後に認められた。全ての変数は、14日後に正常レベルに戻った。
【0233】
組織病理学的変化により、500RCoU/kg体重以上の用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与後の低悪性度「虚血性心疾患」の病像が明らかとなった。これらの変化は、冠血管微小血栓、心筋壊死、心筋変性/修復(最小から中程度の重症度の全て)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなっていた。これらの変化のほとんどは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物において、発生率(および部分的には重症度も)のわずかな用量依存性の増加を示した。これらは、rVWFが500RCoU/kgおよびそれを超える用量で単独またはrFVIIIと組み合わせて投与されたC57BL/6Jマウスで血栓形成の可能性があることを示した。
【0234】
1日目に計画された検死を受けた動物では、低酸素症に高度に感受性を示す血栓塞栓性変化が心臓で記録された。冠血管微小血栓による血管閉塞によって心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こす。
【0235】
14日目に計画された検死を受けた動物では、主に変性および/または修復性の変化が心臓で記録された(炎症、線維症、石灰化、ヘモシデリン沈着)。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。
【0236】
ヘマート(登録商標)P処置(ここではポジティブコントロールとして使用)の有毒作用は証明できなかった。このヘマート(登録商標)Pを使用した有毒作用の欠如は、超高分子量形態を含まないVWF多量体の異なる組み合わせに起因する可能性が最も高く、ヘマート(登録商標)P中に存在するVWFサブユニットがADAMTS13によって切断されるからである。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、最終組成物中に種々の夾雑血漿タンパク質およびクエン酸塩を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0237】
ヒトrVWFがマウスADAMTS13に耐性を示すので、マウスは、ヒトrVWFサブユニットを十分に切断することができず、マウスADAMTS13によってrVWFの超高分子量多量体を減少させることができない。さらに、ウェスタンブロット分析によってC57BL/6J正常マウスが循環血中に超高分子量多量体を含むVWFを有することが見出された。これは、ADAMTS13活性がこれらのマウスで減少するからである。したがって、ヒトrVWFの投与によって超生理学的な循環レベルのVWFが得られ、特に、超巨大VWF多量体の存在下で実質的に増加する。従って、認められた微小血栓症の症状を、誇張された薬理学的効果と解釈することができる。
【0238】
C57BL/6JマウスにおけるrVWFの「無有害作用量(NOAEL)」は250RCoU/kg体重であった。したがって、250RCoU/kg体重よりも高い濃度でrVWFを投与する場合、C57BL/6JマウスをTTPモデルとして使用することができる。
【0239】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、正常C57BL/6JマウスはADAMTS13欠損マウスよりrVWFに対して明確に感受性が低いが、VWF欠損マウスよりrVWFに対してわずかに感受性が高い(実施例2および3を参照のこと)。
【0240】
実施例2:
VWF欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、VWF欠損マウスにおける単回静脈内注射(臨床適用経路)後のrVWFのみまたはrFVIII(アドベイト(登録商標)、Baxter)との組み合わせの急性毒性を決定することであった。本研究のためにVWF欠損マウス(Baxter)を選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0241】
単独またはrFVIII(アドベイト(登録商標))と組み合わせて投与した1ロットのrVWFを、血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験したか、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077 111/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、投与した最も高い用量/体積にしたがって投与した。
【0242】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表2を参照のこと。
【0243】
【表2】
【0244】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、およびクレアチニンキナーゼ(CK)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0245】
上記条件下で、4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたは3077、1538、769、385、および192IU/kg体重の用量のrFVIIIとの組み合わせの静脈内投与は、いかなる自発的死亡とも関連しなかった。
【0246】
体重推移は、それぞれ500または4000RCoU/kg体重の用量のrVWFのみまたはrVWF+rFVIIIのいずれかでの処置による影響を受けなかった。ヘマート(登録商標)Pで処置した動物と対応する用量のrVWF+rFVIIIで処置した動物との間に平均体重推移(0〜1日目および0〜14日目)の統計的に有意な相違は認められなかった。
【0247】
高用量群(rFVIIIを含むか含まない4000RCoU/kg体重のrVWFで処置した群)の動物で臨床症状が認められた。血小板減少症は、1日目にrFVIIIを含むか含まない2000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFで明らかとなり、14日後に回復した。他の変数は、生物学的に関連する変化を示さなかった。
【0248】
組織病理学的変化により、1000RCoU/kg体重以上の用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与後の低悪性度「虚血性心疾患」の病像が明らかとなった。ヘマート(登録商標)Pの有毒作用は証明することができなかった。本明細書中の実施例1で考察されるように、ヒトrVWFはマウスADAMTS13に耐性を示すので、マウスはマウスADAMTS13によってrVWFサブユニットを十分に切断することができず、rVWFの超高分子量多量体を減少させることができない。従って、認められた微小血栓症の症状を、誇張された薬理学的効果と解釈することができる。
【0249】
VWF欠損マウスにおけるrVWFのNOAELは500RCoU/kg体重であった。したがって、500RCoU/kg体重よりも高い濃度でrVWFをマウスに投与する場合、VWF欠損マウスをVWF欠損患者のTTPモデルとして使用することができる。
【0250】
さらに、この研究は、コントロールマウス(C57BL/6J)が250RCoU/kg体重のNOAELでrVWFにより高い感受性を示したので、内因性マウスVWFの存在(実施例1中のマウスで明らかなように)が毒性に影響を及ぼしたことを示す。
【0251】
実施例3:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみまたはヒト組換え第VIII因子(rFVIII)との組み合わせの急性毒性
研究の目的は、ADAMTS13欠損マウス(Baxter)における単回静脈内注射(臨床適用経路)後のrVWFのみまたはrFVIII(アドベイト(登録商標),Baxter)との組み合わせの急性毒性を決定することであった。ADAMTS13は、VWFを切断して高分子量多量体を減少させるプロテアーゼである。したがって、ADAMTS13ノックアウトマウスは、そのADAMTS13の欠失のためにrVWFサブユニットをTyr1605−MET1606で切断できない。したがって、これらのマウスは超巨大VWF多量体を分解することができず、複数の器官で微小血管血栓症が起こる。したがって、これらのマウスは、その対応コントロールよりも遥かに低用量でrVWFの悪影響に感受性を示すはずである。本研究のためにADAMTS13欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFのADAMTS13切断プロテアーゼを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0252】
単独またはアドベイト(登録商標)との組み合わせのいずれかで投与した組換えVWFを、血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)、対応する緩衝液(ビヒクルコントロール)、および等張生理食塩水(ネガティブコントロール)と比較した。組換えVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験したか、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、4000RCoU/kg体重のVWF(+3322IU/kg体重のFVIII)および2000RCoU/kg体重のVWF(+1664IU/kg体重のFVIII)で試験した(表3)。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、所与の最も高い用量体積にしたがって投与した。例えば、rVWFのみの対応緩衝液を、体積31.7mL/kg(最も高いrVWFの用量体積にしたがって)で投与し、49.3mL/kgの混合緩衝液(最も高い体積のrVWF+rFVIIIの組み合わせ投与にしたがって)を投与し、51.1mL/kgの等張生理食塩水(最も高い体積のヘマート(登録商標)Pにしたがって)を投与した。
【0253】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表3を参照のこと。
【0254】
【表3】
【0255】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)の群からなっていた。短期パートを処置1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0256】
全組織サンプルのスライドを、試験化合物処置した高用量群、基準化合物処置群、コントロール群中のあらゆる動物から検死で回収し、全ての巨視的所見の組織サンプルを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、病理学者によって光学顕微鏡で観察した。同一のプロセスを、全ての他の試験化合物処置群中のあらゆる動物のいくつかの器官(心臓、脳、眼、腎臓、副腎、および肺)由来の組織サンプルに適用した。
【0257】
本研究において4000RCoU/kgの用量レベルのヘマート(登録商標)Pで処置した群で最も高い死亡が認められ、80%(10匹中8匹)が投与直後に死亡した。これは、クエン酸ナトリウム過負荷の明白な徴候を示す(281mg/kgクエン酸塩を、51.1mL/kgの投与体積で注射した)。マウスにおける静脈内適用後のクエン酸ナトリウムのLD50は231mg/kgであるので(Sax’s Dangerous Properties of Industrial Materials,8th edition,1992)、ヘマート(登録商標)Pの用量を2000RCoU/kgのVWFに変更した。この用量レベルでのヘマート(登録商標)Pではさらなる死亡は認められなかった。
【0258】
4000RCoU/kgのrVWFのみを投与された動物の40%(20匹中8匹)が死亡したのに対して、2000RCoU/kgを投与された動物の死亡は20%(20匹中4匹)に減少した。より低い用量群ではさらなる死亡は認められなかった。3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFを投与された動物25%(20匹中5匹)が死亡した。より低い用量の群では、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgを投与された群でさえ、さらなる死亡は認められなかった。4000RCoU/kg用量群の注射体積で141mg/kgクエン酸ナトリウムが存在していたので、このこともこれらの群におけるいくつかの突然死の理由であり得る。高用量群における症例の遅延および2000RCoU/kg用量群における突然死についてのこの死亡原因を排除することができる。
【0259】
傾向について統計的に特別に行った検定により、rVWF用量が増加するにつれて死亡率が増加することが証明された(両側p値<0.0001)。
【0260】
2000RCoU/kgのVWF+1664IU/kgのFVIIIの用量でのヘマート(登録商標)Pの投与では死亡(20匹中0匹)は認められず、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIでは死亡(20匹中0匹)は認められなかった。
【0261】
臨床所見により、広範な異常が明らかとなった。短期症状はクエン酸ナトリウムの注射量にも明らかに原因した。何故なら、クエン酸ナトリウム毒性に典型的な症状(例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)が緩衝液群動物の20%(20匹中4匹)で記録されたからであった。
【0262】
しかし、投与された用量の症状の発生率と重症度との間に明確な相関関係が存在した。動物の85%(20匹中17匹)が4000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けたのに対して、動物の45%(20匹中9匹)は2000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けた。
【0263】
3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgを投与した動物の75%(20匹中15匹)で臨床的異常が認められたのに対して、1538IU/kgのrFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgのrVWFの投与後に35%(20匹中7匹)が影響を受けた。rVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した他のいかなる群も臨床的異常は記録されなかった。
【0264】
4000RCoU/kgの用量レベルでヘマート(登録商標)Pで処置した群で認められた症状(90%、10匹中9匹)は、クエン酸塩過負荷(281mg/kg)に明らかに原因し、それにより即死した。2000RCoU/kgヘマート(登録商標)Pで処置した群中の全ての影響を受けた動物(40%、20匹中8匹)はまた、クエン酸ナトリウム毒性を示す短期異常のみを示した(140.5mg/kg;例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)。さらなる長期症状は記録されなかった。
【0265】
0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、1000RCoU/kgのrVWF+769IU/kgのrFVIIIと推定された。従って、用量500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIを、0日目から1日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は存在しなかった。したがって、調査された最も高い用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kg)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0266】
単独投与したrVWFについての0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、2000RCoU/kgと推定された。従って、用量1000RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は、最低の調査用量のrVWF(250RCoU/kg)と推定された。従って、調査したrVWF用量の間の用量は、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量として見なすことができない。体重の増加(緩衝液群について2.3%対4.8%)が生理食塩水(1.8%)およびヘマート(登録商標)P(1.5%)よりも高く、且つ250RCoU/kgのrVWF+rFVIII(2.7%)で処置した群に類似するので、この推定された相違は予測不可能と見なすことができる。0日目から1日目までの平均体重推移は、2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIIIの用量で投与したヘマート(登録商標)Pで0.6%であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIで−7.4%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。0日目から14日目までに統計的に有意な相違は見出されなかった。
【0267】
生存動物における選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与の1日後に血小板数の減少が認められた。さらに、2000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量での単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後にヘマトクリットが低下した。
【0268】
コントロール群と比較した場合、乳酸デヒドロゲナーゼは、2000RCoU/kgのrVWFでの処置およびより高い用量での単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与後の1日目に増加した。
【0269】
ヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)における2000RCoU/kgのVWFの適用後1日目に、血小板数の低下のみが認められた。測定された変数は、全ての罹患群で観察14日後に正常に戻った。
【0270】
組織病理学的試験によって以下の多数の罹患器官が明らかとなった:心臓(冠血管微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性/修復)、脳(微小血栓、膠細胞病巣)、眼(微小血栓)、腎臓(微小血栓、皮質壊死)、副腎(微小血栓、出血)、および肺(微小血栓の発生率または平均重症度の増加)。これらの病理組織学的変化を、播種性血管内凝固異常症(DIC)としてまとめることができる。高用量(≧2000RCoUのrVWF)では、動物は、ヒトと類似の程度に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病像に類似する。低用量(500〜1000RCoU)では、主に心臓が低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する病理組織学的変化を示す影響を受けた。組換え産物を投与した試験化合物処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与した基準化合物処置動物で記録されなかった。ここに、コントロール動物に類似する発生率で低悪性度肺微小血栓のみが記録された。
【0271】
計画された1日目に屠殺された(または投与直後に自発的に死亡した)試験化合物処置動物中で1つまたは複数の器官の血栓塞栓性変化が記録された。低酸素症に対して高い感受性を示す心臓は、最も重篤に影響をうけた器官であった。冠血管微小血栓による血管閉塞により、心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こした。
【0272】
計画された14日目に屠殺された(または投与後いくらか遅れて自発的に死亡した)試験化合物処置動物の心臓において主な変性および/または修復性の変化(炎症、線維症、ヘモシデリン沈着、石灰化)が記録された。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した群の自発的に死亡した1匹で記録された腎臓皮質壊死を、同一の方法で解釈することができる。ここに、微小血栓による腎臓血管の血管閉塞により、腎梗塞を生じた。
【0273】
生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pでも処置したコントロール動物のいくつかの器官(肺、腎臓、脳)で器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された。
【0274】
1つまたは複数の器官中に有害な微小血栓症からなる病理学的変化が記録された。これらの変化は、VWF切断プロテアーゼを欠くこの動物モデル(ADAMTS13欠損マウス)における500RCoU/kgのrVWFおよびそれを超える用量を単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した試験化合物rVWFの血栓形成の可能性を示していた。低用量群(rVWFのみおよびrVWFとの組み合わせ)で有害な組織病理学的変化は記録されなかったので、250RCoU/kgでNOAELを確立することができる。
【0275】
rVWFを切断できないので、ADAMTS13ノックアウトマウスはrVWFでの処置に非常に高い感受性を示した。実際に、ADAMTS13ノックアウトマウスは、本研究で試験したマウス系統のうちで最も高い感受性を示す。結果を、内因性マウスADAMTS13の非存在下および超巨大VWF多量体を有する内因性マウスVWFの存在下の両方に原因する高用量でのrVWFの誇張された薬理学的影響と解釈することができる。ADAMTS13ノックアウトマウスにおけるrVWFのNOAELは250RCoU/kg体重であった。したがって、マウスに250RCoU/kg体重を超える濃度のrVWFの用量を投与する場合、ADAMTS13欠損マウスをADAMTS13欠損患者のためのTTPモデルとして使用することができる。
【0276】
内因性マウスVWFの存在下でのADAMTS13の不在(ADAMTS13ノックアウト)は、死亡および毒性に最も重篤な影響を及ぼし、複数の器官で微小血管血栓症を引き起こす。
【0277】
実施例4:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)の急性毒性を、ADAMTS13の同時投与を使用して減弱することができる
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウス(Baxter)において組換えADAMTS13の同時投与(すなわち、置換)によってrVWFの急性毒性を減弱することができるかどうかを評価することであった。
【0278】
実施例3に示すように、ヒトrVWFで処置したマウスと比較して、ポジティブコントロールとして使用したヘマート(登録商標)Pで処置したADAMTS13欠損マウスに実質的な影響は存在しなかった。この相違は、ヘマート(登録商標)P中に存在するVWFサブユニットがADAMTS13によって切断されるので、ヘマート(登録商標)P中に超高分子量形態が存在しないという異なる化合物におけるVWF多量体組成の相違に起因していた。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、種々の夾雑血漿タンパク質ならびにクエン酸塩およびADAMTS13を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0279】
本研究では、ヒトrVWF(BAXTER)を2000RCoU/kgの投薬量で投与し、ヒトrADAMTS13(CHO細胞由来、クローン938、BAXTER)を19.4μg/kgの投薬量で投与した(ヒト血漿由来調製物、ヘマート(登録商標)P中で分析された比に従う)。化合物を、適用直前にシリンジ中で予め混合して注射するか(群A、マウス10匹)、rADAMTS13の第1の注射およびその直後のrVWF注射として連続的に注射した(群B、マウス10匹)。
【0280】
1日目の終了まで注射後の毒性を示す徴候について動物を観察した。上記の前の研究にあるように、麻酔下で血液サンプルを採取し、組織学的分析のために組織を調製し、検死を行った。
【0281】
治療レジメンに無関係にいかなる動物においても死亡および臨床毒性の徴候は認められなかった。これは、rVWF毒性の軽減におけるADAMTS13の役割を明確に証明していた。
【0282】
分析データを比較して、予め混合した化合物の投与と対照的に、rADAMTS13およびrVWFの連続投与の1日後に血小板数の低下が測定された。試験化合物が関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。試験化合物処置動物群AおよびBにおいて冠血管微小血栓(最小から軽度の悪性度)、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなる心臓の組織病理学的変化が記録された。
【0283】
さらに、群Bの単回試験化合物処置動物においてわずかな悪性度の線維症が記録された。慢性徴候によって明確に特徴づけられるこの所見は、既存であり、したがって、投与1日後に屠殺された動物で記録されるので、試験化合物に関連しないと見なされた。
【0284】
rADAMTS13およびrVWFの連続投与後に2群(A対B)を比較し、且つ血小板数の減少を考慮すると、組織病理学的変化の重症度または発生率の明白な相違は記録されなかった。しかし、実施例3に示した研究(rADAMTS13同時投与を使用しない)と対照的に、本研究での検死において、死亡および試験化合物に関連する巨視的所見は記録されなかった。心筋壊死の発生率および重症度は両研究で類似していた(実施例3および4)。しかし、rADAMTS13同時投与を使用した場合、冠血管微小血栓症および冠血管周囲炎はそれほど顕著ではなかった。さらに、rADAMTS13同時投与を使用した場合、処置に関連する影響は心臓についてのみ記録されたのに対して、ADAMTS13同時投与を使用しない研究では(実施例3)、脳、腎臓、および肺で微小血栓も記録された。
【0285】
切断酵素ADAMTS13との同時投与後のrVWFの凝固促進活性の減少は、この動物モデルにおけるrVWFの薬理学的影響のADAMTS13の重要性を反映し、実施例3におけるヘマート(登録商標)Pの認められた毒性の欠如も一部説明される。
【0286】
実施例5:
マウスADAMTS13はrVWFと反応しない
ADAMTS13は、VWFを切断して高分子量多量体を減少させるプロテアーゼである。in vitro試験およびex vivoで証明されるように、マウスADAMTS13はヒト組換えVWFと反応しない。
【0287】
マウスはADAMTS13活性が減少しているので、マウス血漿は超巨大VWF多量体を含む。rVWFの投与により、超生理学的レベルおよび誇張された薬理学的影響が得られるであろう。
【0288】
ヒトrVWFは、マウスADAMTS13のタンパク質分解活性に耐性を示す。データにより、種々の種(マウスが含まれる)の血漿へのヒトrVWFの曝露および残存VWF活性の測定または多量体組成物の視覚化のいずれかによってin vitroでこれが証明された。データにより、マウスへのrVWFの注入後にex vivoでのマウスADAMTS13に対するヒトVWFの耐性も証明された。注入後の種々の時点で得られた血漿サンプルは、Tyr1605−Met1606(C末端176kDおよびN末端140kD)でのADAMTS13の切断作用に由来する任意のVWFフラグメントを示さなかった。これは、in vivoでのマウスADAMTS13に対するrVWFの耐性と一致していた。対照的に、ウサギへのrVWFの投与により、モノクローナル抗体を使用した免疫ブロット上のフラグメントの出現を使用してVWFサブユニットの切断パターンが予想された。図1を参照のこと。
【0289】
rVWFがADAMTS13特異的タンパク質分解に全くさらされないので、rVWFはインタクトなVWFサブユニットからなる。血漿由来VWFは、VWFのA2ドメイン中のTyr1605−MET1606で切断されるサブユニットからなる。rVWFはマウスにおいてより低い分子量のVWF多量体にプロセシングされず、誇張された薬理学的影響および潜在的な血栓形成性多量体が得られる。
【0290】
実施例6〜9の実験の概説
TTPの動物モデルを、種々の条件へのマウスの曝露およびTTPの症状および毒性の観察によって確立した。データセットを、野生型(C57BL/6J)マウス、VWF欠損マウス、およびADAMTS13ノックアウトマウスから収集した。マウスを、rVWFのみ(5回投与のうちの1回)、rFVIII(アドベイト)と組み合わせたrVWF(5回のうちの各1回)、ヘマート(登録商標)P(ヒト血清から単離したVWFおよびFVIIIの市販の調製物)、または対応緩衝液の単回注射を使用して処置した。マウスを注射の1日後および14日後に観察し、その後、検死分析を行った。
【0291】
より具体的には、研究条件は以下であった。rVWFを5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW))にて単独で試験し、これら5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kg体重(+1347IU/kg体重のFVIII)で試験した。rVWFのみの対応緩衝液、緩衝液混合物、および等張生理食塩水を、所与の最も高い用量体積にしたがって投与した。
【0292】
可能性がある即時影響および遅延影響を評価するために、研究を短期パートおよび長期パートに分けた。各パートは、14群(それぞれ、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を含む)からなっていた。短期パートを適用1日後に終了させ、長期パートを14日間の観察後に終了させた。全ての生存動物を各研究パートの終了時に秤量し、血液サンプルを、ヘマトクリット、血小板数、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、およびクレアチニンキナーゼ(CK)の分析のために採取した。検死を行い、選択した器官(副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、および眼)を保存し、組織病理学的に評価した。
【0293】
1.材料
以下の材料を実験のために使用した。
【0294】
凍結乾燥したヒト組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)(630.85IUのVWF:RCo/バイアル(実質値))を、5ml注射用蒸留水(WFI)中に再構成した。再構成の際、rVWFは126IUのVWF:RCo/mlで存在していた。VWF緩衝液は、増量剤、表面活性剤、安定剤、およびアミノ酸と共にhepes/クエン酸緩衝液からなっていた。
【0295】
アドベイトrAHF−PFM(抗血友病因子(組換え)血漿無アルブミン法;FVIII)は、876IU/バイアルで存在していた。WFI中での再構成の際、溶液は、適切な塩、増量剤、表面活性剤、安定剤、アミノ酸、および抗酸化剤と共にTris緩衝液からなっていた。溶液を2〜8℃で保存した。
【0296】
rVWFとアドベイトとの混合物は、1.3部のrVWF:RCo(IU)対1部rFVIII(IU)の比であった。
【0297】
ビヒクルコントロールは、rVWFのクエン酸緩衝液および組み合わせ緩衝液からなり、組み合わせ緩衝液はrVWF緩衝液とアドベイト緩衝液との混合物であった。組み合わせ緩衝液を、高用量のrVWFとアドベイトとの組み合わせ群のために混合されるように、同一の体積比のrVWFおよびアドベイト緩衝液の混合によって調製した。等張生理食塩水を、ネガティブコントロールとして使用した(0.9%NaCl)。
【0298】
ヘマート(登録商標)P(ヒト血漿由来の抗血友病因子−フォン・ビルブラント因子複合体)をアクティブコントロールとして使用した。組成物は、1143.4IUのVWF:RCo/バイアル、770IUのFVIII/バイアル(ZLB Behring GmbH,Germanyから入手される)であった。WFI中での再構成の際、組成物は以下であった:114.34IUのVWF:RCo/mL、77IUのFVIII/mLを含むNaCl、クエン酸ナトリウム、ヒトアルブミン、およびグリシンの緩衝液。
【0299】
2.手順
a.動物の処置
マウスを、MacrolonIIケージに収容した。動物を、20.8±0.44℃および21.6±0.36℃の温度(平均±SEM)(目標範囲:20〜24℃)、52.8±3.51%および53.5±2.77%の相対湿度(平均±SEM)(目標範囲:45〜65%)にて、ルーム3/1−83(18回換気/時間)および1:1の明暗比(12時間明期:12時間暗期;人工照明)で維持した。
【0300】
マウスを、10匹の動物(雄5匹および雌5匹)/群の28群(1日研究パートについてはA〜JおよびU〜X、14日研究パートについてはK〜TおよびY〜BB)に割り当てた。各群に、以下の処置のうちの1つを受けさせた。
−5つの用量レベルでの組換えフォン・ビルブラント因子(rVWF)のみ
−5つの用量レベルでのrVWFとアドベイトとの組み合わせ(RCoU:IUFVIII(比1.3:1))
−ヘマート(登録商標)P
−rVWFのみの対応する処方緩衝液
−高用量のrVWFとアドベイトとの組み合わせと同一の体積比のrVWFおよびアドベイトの組み合わせ処方緩衝液
−等張生理食塩水
主要評価項目は死亡であった。活性レベルおよび健康状態を注射から最初の6時間後に詳細にモニタリングし、その後14日目まで毒性を示す徴候について毎日チェックした。全ての動物を0日目および1日目(短期パート)ならびに1日目、7(8)日目、および14日目(長期パート)に秤量して身体全体の健康状態を得た。
【0301】
各動物に、流速2mL/分を目標にして尾静脈を介した単回静脈内注射を行った。群の割り当ておよび治療レジメンについては、以下の表4を参照のこと。
【0302】
【表4】
【0303】
b.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた(図2〜4、13〜15、24〜26を参照のこと)。
【0304】
箱ひげ図を以下のようにデザインする。ボックスの下縁は25パーセンタイル(または第1四分位点)を示し、ボックスの上縁は75パーセンタイル(または第3四分位点)を示し、ボックスの上縁および下縁内のラインは中央値を示した。パルスは平均を示した。ボックスの下縁から上縁までの距離は四分位範囲(IQR)を示した。75パーセンタイルを超えるひげを、75パーセンタイルより上の、1.5IQR以下である値のうちの最も大きなデータ値まで引いた。それより大きな任意のデータ値をマークした。25パーセンタイル未満のひげを、25パーセンタイルより下の、1.5IQR以下である値のうちの最も小さなデータ値まで引いた。それより小さな任意のデータ値をマークした。
【0305】
平均および対応する両側95%ブートストラップ−t信頼区間(Efron B and Tibshirani RJ,An Introduction to the Bootstrap,Chapman and Hall / CRC,Boca Raton,London,N.Y.,Washington D.C.,page 160−167(1993))を、項目および用量によって分類された研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)の間の体重の変化について示した。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについての0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)、0日目から7日目までの変化(LTADS)、および0日目から14日目までの変化(LTADS)について行った。ブートストラップ−t信頼区間を、性別およびデータセットによって層別した100,000回のブートストラップ反復に基づいて計算した。
【0306】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価した。
【0307】
体重推移を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した両側並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)によって特定された対比のために比較した。
【0308】
対応緩衝液を使用した2つの用量群の比較のための多重性の調整を、ホルムの方法(1979)を使用して同時に適用した(Holm S.,Scandinavian Journal of Statistics,6:65−70(1979))。非調整および多重性調整した両側p値を示した。異なる項目の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0309】
ヘマート(登録商標)Pと対応する用量のrVWF+rFVIIIとの間の体重推移の相違を、0日目から1日目までの変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの変化(LTADS)について個別に評価した。両側p値を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定[SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる]によって計算した。2つの異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0310】
最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、Tamhaneらによって提案された逓減様式で試験する対比を使用して評価した(Biometrics,52:21−37(1996))。この分析は探索的分析であったので、線形および逆ヘルマート対比を、最低のMDDが得られる対比を報告した推定について考慮した。
【0311】
このようにして決定された最小検出用量は、無毒性量(NOAEL)より高い用量レベルの1つである。rVWF+rFVIIIおよびrVWFの最小検出用量を、0日目から1日目までの体重の変化(STADSおよびLTADSの併合)および0日目から14日目までの体重の変化(LTADS)について個別に評価した。
【0312】
線形対比のための両側p値を、1,000,000回の並べ替えの反復を用いて性別によって層別した並べ替え検定(SASプロシージャPROC MULTTEST、オプション=PERMUTATION、ステートメント=TEST MEANによる)を使用して計算した。異なる項目の調査または異なる研究日の調査のために、多重性を調整しなかった。
【0313】
c.血液の採取、調製、ならびに血液学および血清化学の変数の測定
血液サンプルを、1日目(研究パート1)または14日目(研究パート2)の麻酔下(ケタミン+キシラジンi.m.)の心穿刺によって採取した。およそ300μLの血液を、血液学的調査用のEDTA管に採取し、およそ300μLの血液を血清調製物のために調製し、サンプルカップに充填し、分析のために研究所に室温で送った。以下の変数を、Haematologiesystem ADVIA120およびSerumchemieanalysegeraet Konelab 20iを使用して調査した。
【0314】
血液学的調査は、ヘマトクリット、ヘモグロブリン濃度、赤血球数、網状赤血球、総白血球数、白血球数の差、血液形態学の異常、血小板数、平均赤血球ヘモグロブリン、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロブリン濃度を含んでいた。血液化学調査は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびクレアチニンキナーゼ(CK)を含んでいた。
【0315】
変数であるヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKのみを、統計分析のためにさらに考慮した。
【0316】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数(ヘマトクリット、血小板数、LDH、CK)を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの図のために組み合わせた。
【0317】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、項目および用量によって分類した平均および変動係数(CV)を使用してまとめた。これらの統計を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについて得た。
【0318】
d.検死および組織学
1日目(研究パート1)および14日目(研究パート2)のすべての生存動物において検死を行った。すべての巨視的に変化した組織および以下の組織を、さらなる組織病理学的実験のために採取した。
副腎
脳(延髄を含む)
心臓
腎臓
肝臓
肺(灌流、気管なし)
脾臓
眼 。
【0319】
全ての器官および組織を、4%緩衝化ホルムアルデヒド中で固定し(眼については修正デビッドソン液中で固定)、組織学的調製のための温度で組織学研究所に送った。
【0320】
試験項目処置高用量群、基準項目処置群、コントロール群中のあらゆる動物由来の検死で採取した全組織サンプルおよび全ての巨視的所見の組織サンプルのスライドを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、病理学者によって光学顕微鏡で観察した。同一のプロセスを、全ての他の試験項目処置群中のあらゆる動物の心臓由来の組織サンプルに適用した。
【0321】
病理学者によって組織病理学的試験の間の微視的所見を記録した。個別の病状報告では、可能な限り、分布、重症度、および形態学的特徴にしたがって組織学的変化を記載した。重症度スコアを、以下の「コードおよび記号の説明」に示すように割り当てた。
【0322】
微視的所見を記録し、これらのデータ由来の発生率の表を作成した。
e.統計学的方法およびデータセット
最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、逓減様式で試験した対比の使用によってrVWF+rFVIIIおよびrVWFについて評価した。異なる用量のrVWF+rFVIIIおよびrVWFも、対応緩衝液と比較した。
【0323】
さらに、2000RCoU/kgのVWF+1347IU/kgのFVIIIの用量のヘマート(登録商標)Pを、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIの用量のrVWF+rFVIIIと比較した。
【0324】
全ての統計的計算を、Linux用のSASバージョン8.2を使用して行った(SAS Institute Inc.(2000). SAS OnlineDoco,Version 8,February 2000,Cary,NC,USA: SAS Institute Inc.;SAS Institute Inc.(2001). SAS/STAT(登録商標)Software: Changes and Enhancements,Release 8.2,Cary,NC,USA: SAS Institute Inc.)。統計的有意性レベルを5%に設定した。相違なしの帰無仮説を、その両側対立仮説に対して試験した。
【0325】
短期分析データセット(STADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究1日目に屠殺された動物からなっていた。長期分析データセット(LTADS)は、研究0日目に処置を受け、且つ研究14日目に屠殺された動物からなっていた。
【0326】
統計的評価のための主要評価項目は死亡であった。統計的評価のための二次評価項目は、体重推移(0日目の体重に対するΔ%として)ならびに血液学的変数および血清学的変数の変化であった。血液学的変数および血清学的変数の変化を、記述統計学を使用して分析した。分析した変数は、ヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKであった。
【0327】
実施例6:
C57BL/6JマウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにC57BL/6Jマウスを選択した。何故なら、この系統は、並行研究で使用されるVWF欠損マウスおよびADAMTS13欠損マウスに対する遺伝的背景系統であるからである。一般に、マウスは急性毒性研究で広く使用されており、規制当局によってこの目的に適切であると認識されている。
【0328】
2.本研究で使用したプロトコール
調査したいかなる項目を使用しても死亡は認められなかった。したがって、死亡の統計的分析を行わなかった。体重測定の前に死亡した動物に最も低い順位を与える順位づけによって体重推移の比較を計画した(Lachin JM,Controlled Clinical Trials,20(5)408−422(1999))。死亡は認められなかったので、体重推移の比較を相対変化において行い(0日目の体重のΔ%)、対応する順位において行わなかった。
【0329】
6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0330】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに変動の平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0331】
3.臨床的異常
毒性を示す臨床的異常は、4000RCoU/kgのrVWFの投与後に75%(20匹中15匹、群JおよびT)の動物で認められ、4000RCoU/kgのrVWFおよび3077IU/kgのrFVIIIの組み合わせ投与後に85%(20匹中17匹、群BおよびL)の動物で認められた。
【0332】
短期症状は、組み合わせ緩衝液(総体積49.3mL/kg)で処置した動物の20%(20匹中4匹、群AおよびK)でも認められた。全ての他の処置群は、観察期間中に正常であった。
【0333】
群あたりの動物の臨床的異常のまとめを、表5に示す。
【0334】
【表5-1】
【0335】
【表5-2】
【0336】
4.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた(図2〜4)。体重推移の比較も表6に示す。
【0337】
【表6-1】
【0338】
【表6-2】
【0339】
【表6-3】
【0340】
【表6-4】
【0341】
4000+3077(−2.9%の平均Δ%)および2000+1538(−1.6%の平均Δ%)の用量を使用した場合、対応緩衝液(1.0%の平均Δ%)よりも統計的に有意に(5%レベルに調整した多重性で)0日目から1日目までの体重減少が大きかった。また、250+192(−1.9%の平均Δ%)の用量を使用した場合、対応緩衝液よりも統計的に有意に体重推移の減少が大きかった(多重性を調整した両側p値=0.0033)。
【0342】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0343】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、両側p値が依然として5%未満であった場合に調査した最低の用量の対比で中止した。したがって、最小検出用量は、250U/kgのVWF:RCo+192IU/kgのFVIIIであった。
【0344】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.8476であり、これは5%を超えており、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0345】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWFと対応緩衝液との間の0日目から1日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。対応緩衝液(0.5%の平均Δ%)を使用した最高用量(−1.9%の平均Δ%)のrVWFと最低用量(−2.2の平均Δ%)のrVWFとの間の比較により、非調整両側p値が5%未満であったのに対して、多重性調整した両側p値は5%を超えていた。したがって、これらの有意な結果は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0346】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、0日目から14日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)において異なる用量のrVWFと対応緩衝液との間の統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0347】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化についての最小検出用量の推定を、最高用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWFを使用した0日目から1日目までの体重の変化または0日目から14日目までの変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0348】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用して−1.1%(95%CI:−2.3%〜1.8%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用して−1.6%(95%CI:−2.6%〜−0.6%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.6931)。
【0349】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用して4.7%(95%CI:−1.1%〜7.7%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用して7.7%(95%CI:5.4%〜14.4%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2289)。
【0350】
5.血液学的変数および血清学的変数
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数(ヘマトクリット、血小板数、LDH、CK)を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの図のために組み合わせた。
【0351】
研究1日目および研究14日目の血液学的変数および血清学的変数を、項目および用量によって分類した平均および変動係数(CV)を使用してまとめた。これらの統計を、雄動物および雌動物について個別にならびに雄動物および雌動物の組み合わせについて得た。
【0352】
箱ひげ図として示したヘマトクリット、血小板数、LDH、およびCKの比較を、図5〜12および表7〜10に示す。
【0353】
【表7-1】
【0354】
【表7-2】
【0355】
【表8-1】
【0356】
【表8-2】
【0357】
【表9-1】
【0358】
【表9-2】
【0359】
【表10-1】
【0360】
【表10-2】
【0361】
6.検死
試験項目が関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。しかし、種々の偶発的な変化が見出され、記録された。
【0362】
7.組織病理学
短期研究(1日間)では、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処置した500RCoU/kg、1000RCoU/kg、および2000RCoU/kg、ならびに高用量群の試験項目処置動物の心臓で認められた。さらに、微小血栓(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kgおよび高用量群の試験項目処置動物およびrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量の動物で記録された。両方の変化は、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物で発生率(および重症度も一部)の明確な用量依存性の増加を示した。
【0363】
さらに、冠血管周囲炎のわずかな増加は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の動物ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量群の動物で記録された。
【0364】
脳では、クエン酸緩衝液処置コントロール動物で単一の微小血栓(最小の悪性度)が記録された。この所見は、短期研究パート(1日間)のいかなる試験項目処置動物または長期研究パート(14日間)のいかなる動物においても記録されなかった。したがって、この器官をより低い用量群で調査しなかった。
【0365】
肺では、試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、生理食塩水、またはクエン酸緩衝液で処置したコントロール動物で低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された(発生率:≦2/10;平均重症度:≦1.0)。しかし、試験項目処置動物とコントロールとの間に相違は記録されなかった。したがって、この器官をより低い用量群で調査しなかった。
【0366】
長期研究パート(14日間)では、心筋変性/修復(最小から中等度の悪性度)は、rVWFのみで処置された1000RCoU/kgおよび2000RCoU/kgおよび高用量群の試験項目処置動物ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した500RCoU/kg、1000RCoU/kg、2000RCoU/kg、および高用量群の動物の心臓で記録された。この変化は、発生率(および重症度も一部)のわずかな用量依存性の増加を示し、炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、ヘモシデリン沈着を伴い、時折心筋石灰化も伴った。
【0367】
肺では、試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、生理食塩水、クエン酸緩衝液、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物で低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された(発生率:≦1/10;平均重症度:≦1.0)。しかし、試験項目処置動物とコントロールとの間に相違は記録されなかった。したがって、この器官をより低用量群および中用量群で調査しなかった。
【0368】
注射部位で、単一の試験項目処置動物(低用量群)で尾血管の中等度の悪性度の血栓症が記録され、検死にて記録された尾の遠位末端の黒色の変色が得られた。この所見が本研究のいかなる他の動物においても記録されなかったので、その発生率および形態学的外観は試験項目に関連しなかった。これは、静脈内適用の技術手順によって生じたと見なされた。
【0369】
8.考察
上記のように、rVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250リストセチン補因子(RCo)U/kg体重(BW)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)P、血漿由来VWF−FVIII調製物を、2000RCoU/kg(+1347IU/kgのFVIII)で試験した。緩衝液のみおよび等張生理食塩水をコントロールとして含めた。
【0370】
6時間までの臨床観察中に、4000RCoU/kgのrVWFのみ(20匹中15匹)およびrFVIIIとの組み合わせ(20匹中17匹)で処置した高用量群ならびに組み合わせ緩衝液で処置した群(20匹中4匹)で毒性を示す症状が認められた。緩衝液群で認められるように、対応する体積の49.3mL/kg中のクエン酸ナトリウムの投与用量が143mg/kgであったので、短期症状はクエン酸ナトリウム毒性(例えば、呼吸困難、痙攣、短期間の行動抑制)を示した。類似の症状は32匹の高用量群の罹患動物中2匹でも認められ、これもクエン酸ナトリウム毒性の影響を示していた。対照的に、4000RCoU/kgのrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した群の32匹の動物中30匹が、投与後6時間までに長期症状(例えば、行動抑制、運動失調、立毛)を示した。いかなる他の群で症状が認められなかったので、これらの症状は、高用量の直接有毒作用を明らかに示していた。
【0371】
rVWFを使用した0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)は認められなかった。したがって、調査した最高用量のrVWF(4000RCoU/kg)を、無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができる。
【0372】
rVWF+rFVIIIを使用した0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)を、調査したrVWF+rFVIIIの最低用量(250RCoU/kg+192IU/kgのrFVIII)と推定した。したがって、rVWF+rFVIIIを使用して調査した用量の間では、0日目から1日目までの体重推移に関してNOAEL用量と見なすことができなかった。500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIの次のより高い用量レベルで体重が増加し、250RCoU/kgのrVWFのみで処置した群と直接比較して体重減少が中程度である(−1.9%対−2.2%)ので、この推定された影響を偶然によって起こったと見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量が認められなかったので、調査した最高用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kgのrFVIII)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0373】
0日目から1日目までの平均体重推移(0日目からの体重のΔ%として)は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合−1.1%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合−1.6%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.6931)。0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合4.7%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合7.7%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2289)。
【0374】
選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、血小板数の減少は、2000RCoU/kgおよびそれを超える用量のrVWFを単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した1日後に認められた。ヘマート(登録商標)Pの投与後に変化は認められなかった。
【0375】
250RCoU/kgおよび500RCoU/kgのrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせの投与1日後および14日後にクレアチニンキナーゼが増加した。これらの変数の増加がより低い用量群のみで認められたので、用量依存性を排除することができる。さらに、最低用量での組織病理学的相関関係は認められなかった。
【0376】
2000RCoU/kg体重の用量のrVWFまたはより高い用量のrFVIIIとの組み合わせで処置した群で1日後の乳酸デヒドロゲナーゼの増加が認められた。
【0377】
rVWFが関連する可能性を示す検死の所見は存在しなかった。
【0378】
500RCoUのrVWF以上の用量(単独またはrFVIIIとの組み合わせ)で処置した試験項目処置動物の心臓で組織病理学的変化が記録された。これらの変化は、冠血管微小血栓、心筋壊死、心筋変性/修復(最小から中程度の重症度の全て)、および冠血管周囲炎のわずかな増加からなっていた。これらの変化のほとんどは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物において、発生率(および部分的には重症度も)のわずかな用量依存性の増加を示した。この病理組織学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する。組換え産物を投与された試験項目処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与された基準項目処置動物で記録されなかった。
【0379】
1日目に計画された検死で屠殺された試験項目処置動物では、低酸素症に高度に感受性を示す血栓塞栓性変化(thrombembolic change)が心臓で記録された。冠血管微小血栓による血管閉塞によって心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こす。
【0380】
14日目に計画された検死で屠殺された試験項目処置動物では、主に変性および/または修復性の変化が心臓で記録された(炎症、線維症、石灰化、ヘモシデリン沈着)。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。
【0381】
さらに、試験項目処置動物ならびに生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pで処置したコントロール動物の肺(および脳の一部)の器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。さらに、この研究の1つの試験項目処置動物で尾血管の血栓症が記録された。これらの「バックグラウンドの変化」は、技術的手順(偽i.v.処置、心臓内採血)に原因すると見なされ、したがって、試験項目に関連しなかった。
【0382】
まとめると、4000RCoU/kg体重のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群で6時間までに毒性を示す臨床症状が認められた。2000RCoU/kg体重のrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後に急性血小板減少症が誘導された。病理学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似していた。病理学的変化は、500RCoU/kgおよびそれを超える用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせを投与したC57BL/6Jマウスにおける試験項目(rVWF)の血栓形成性を示した。
【0383】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、正常C57BL/6JマウスはADAMTS13欠損マウスよりも感受性が低いが(実施例8)、VWF欠損マウスよりもわずかに感受性が高い(実施例7)。
【0384】
ここでポジティブコントロールとして使用したヘマート(登録商標)Pで処置したC57BL/6Jマウスにおいて実質的所見は認められなかった。ヘマート(登録商標)PはVWF多量体の組成が異なり、内因性ヒトADAMTS13による切断のために超高分子量形態を欠く。さらに、ヘマート(登録商標)Pは、種々の夾雑血漿タンパク質およびクエン酸塩を含み、これも結果に影響を及ぼし得る。
【0385】
全ての結果を考慮して、C57BL/6Jマウスの全NOAELを250RCoU/kgに設定することができる。
【0386】
実施例7:VWF欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにVWF欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFを欠く患者の容態を模倣するからである。マウスは急性毒性研究で広く使用されており、一般に、規制当局によってこの目的に適切であると認識されている。
【0387】
2.本研究で使用したプロトコール
調査したいかなる項目を使用しても死亡は認められなかった。したがって、死亡の統計的分析を行わなかった。体重測定の前に死亡した動物に最も低い順位を与える順位づけによって体重推移の比較を計画した。死亡は認められなかったので、体重推移の比較を相対変化において行い(0日目の体重のΔ%)、対応する順位において行わなかった。
【0388】
4つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIII(ゼロ用量として対応緩衝液を含む)を使用した研究を計画していたが、最終的に6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0389】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに変動の平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0390】
3.臨床的異常
本研究で死亡は認められなかった。
【0391】
毒性の臨床徴候は、4000RCoU/kgのrVWFのみの投与後の20匹中3匹(15%)の動物(群H、R)、3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFの投与後の20匹中4匹(20%)の動物(アドベイト、群C、M)、31.7mL/kgのrVWFの対応する処方物緩衝液の投与後の20匹中4匹(20%)の動物(群G、Q)、および49.3mL/kgの処方物緩衝液の組み合わせの投与後の20匹中4匹(20%)の動物(群D、N)で認められた。
【0392】
記録された症状は、治療レジメンと無関係な注射後の短期間行動抑制(2分間まで続く)であった。
【0393】
4.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた。体重分析を、表11および図13〜15に示す。
【0394】
【表11-1】
【0395】
【表11-2】
【0396】
【表11-3】
【0397】
【表11-4】
【0398】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から1日目までの体重推移(0日目からのΔ%として)に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。対応緩衝液(−2.6%の平均Δ%)を使用した最低用量のrVWF+rFVIII(0.5%の平均Δ%)の比較について1つの非調整両側p値が0.0299であったのに対して、多重性を調整した両側p値は0.1496であった。したがって、最低用量のrVWF+rFVIIIよりも緩衝液を使用した体重推移のこの有意により大きな減少は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0399】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0400】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.1195であり、これは5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0401】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.3031であり、これは5%を超え、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0402】
対応緩衝液(−0.5%の平均Δ%)よりも2000(−2.6%の平均Δ%)のrVWF用量を使用した0日目から1日目までの体重で、統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)より大きな減少が認められた。2つの非調整両側p値が5%未満であったのに対して、多重性を調整した両側p値は5%を超えていた。したがって、緩衝液(−0.5%の平均Δ%)と比較した用量1000(−2.1%の平均Δ%)および用量250(0.9%の平均Δ%)のこれらの有意な相違は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0403】
対応緩衝液(6.2%の平均Δ%)よりも用量1000(1.3%の平均Δ%)のrVWFを使用した0日目から14日目までの体重の増加が小さいという統計的傾向(多重性を調整した両側p値0.0693)があった。対応緩衝液(6.2%の平均Δ%)との最高用量のrVWF(1.8%の平均Δ%)の比較についての1つの非調整両側p値は0.0279であったのに対して、多重性を調整した両側p値は0.1117であった。したがって、対応緩衝液よりも最高用量のrVWFを使用した場合のこの有意に小さな体重推移は、帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こったようである。
【0404】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、5%を超える第1の両側p値であった500U/kgの対比で中止した(両側p値=0.0741)。したがって、最小検出用量は1000U/kgのrVWFであった。
【0405】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、5%を超える第1の両側p値であった500U/kgの対比で中止した(両側p値=0.7267)。したがって、最小検出用量は1000U/kgのrVWFであった。
【0406】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に−1.7%(95%CI:−2.5%〜−0.7%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に−1.8%(95%CI:−6.1%〜0.8%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.9499)。
【0407】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に2.8%(95%CI:−2.1%〜5.8%)であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に6.5%(95%CI:2.2%〜10.4%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.1855)。
【0408】
5.血液学的変数および血清学的変数
選択した変数であるヘマトクリット、血小板数、CK、およびLDHの比較を、以下の図16〜23および表12〜15に示す。
【0409】
【表12-1】
【0410】
【表12-2】
【0411】
【表13-1】
【0412】
【表13-2】
【0413】
【表14-1】
【0414】
【表14-2】
【0415】
【表15-1】
【0416】
【表15-2】
【0417】
6.検死
rVWFが関連する可能性を示す検死の所見(その発生率、分布、または形態学的外観)は存在しなかった。
【0418】
7.組織病理学
短期研究(1日間)では、心筋壊死(最小から軽度の悪性度)は、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処置した1000RCoU/kgおよびより高い用量群の試験項目処置動物で記録された。この変化は、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物でわずかな用量の関連を示した。単一の微小血栓(軽度の悪性度)は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群の単一の動物で記録された。さらに、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせのいずれかで処理された高用量群のrVWF処置動物で冠血管周囲炎の発生率のわずかな増加が記録された。
【0419】
長期研究(14日間)では、rVWFのみまたはrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した2000RCoU/kgおよびより高い用量群のいくつかの試験項目処置動物で最小の心筋変性/修復が記録された。この変化は非常に低悪性度の変化であり、最小の炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、一部ヘモシデリン沈着を伴っていた。さらに、ヘマート(登録商標)Pで処置した単一の動物において最小の心筋変性/修復も記録された。
【0420】
この研究において種々の他の変化も見出された。これらは一般に静脈内適用を使用して起こる。肺内の微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、これらの所見のうちの1つであった。さらに、1日目の単一の動物で中等度の悪性度の心筋変性/修復が記録された(rFVIIIと組み合わせた1000RCoU/kg)。これらの変化の発生率、分布、および形態学的外観は、rVWFに関連しなかった。
【0421】
8.考察
上記で説明するように、rVWFを、以下の5つの用量レベル:4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを2000RCoU/kg体重+1347IU/kg体重FVIIIで試験した。rVWFのみの対応緩衝液を、31.7mL/kg(最高の用量体積にしたがって)の体積で投与し、混合緩衝液を49.3mL/kgの体積で投与し、等張生理食塩水を49.3mL/kgの体積で投与した。
【0422】
短期症状(主に数分間続く行動抑制)は、高用量のrVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせおよび対応する体積の緩衝液(クエン酸ナトリウム毒性を示す)の投与後に認められた。発生率および重症度は全ての罹患群で類似していた。
【0423】
0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)は、1000RCoU/kgのrVWFと推定された。したがって、用量500RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移および0日目から14日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)と見なすことができる。
【0424】
0日目から1日目までの体重の変化および0日目から14日目までの変化についてのrVWF+rFVIIIの最小検出用量は認められなかった。したがって、調査した最高用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kgのVWF+3077IU/kgのrFVIII)を、0日目から1日目までの体重推移および0日目から14日目までの体重推移のNOAEL用量と見なすことができる。
【0425】
0日目から1日目までの平均体重推移(0日目の体重に対するΔ%として)は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合−1.7%であり、調査した対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に−1.8%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.9499)。0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)Pを使用した場合に2.8%であり、対応する用量のrVWF+rFVIIIを使用した場合に6.5%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.1855)。
【0426】
選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、緩衝液処置したコントロールと比較した血小板数の低下は、4000RCoU/kgのrVWF(−23%)の投与および2000RCoU/kgのrVWF(−15%)の単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与(それぞれ、−48%および−21%)の1日後に認められた。ヘマート(登録商標)Pの投与後に変化は認められなかった。
【0427】
1000RCoU/kgのrVWFのみの投与1日後にコントロール群と比較して、クレアチニンキナーゼが増加した。500および1000RCoU/kgのrVWFのみおよびrFVIIIとの組み合わせで処置した群における観察14日後に、レベルの増加が測定された。rFVIIIと組み合わせた500RCoU/kgのrVWFで処置した群において、観察14日後に乳酸デヒドロゲナーゼの増加が認められた。これらの変数の増加がより低い用量群においてのみ認められたので、用量依存性を排除することができ、試験項目が関連する可能性は極めて低い。
【0428】
1000RCoUのrVWFまたはより高い用量(単独またはrFVIIIとの組み合わせ)でのrVWF処置動物の心臓において組織病理学的変化が記録された。冠血管微小血栓、心筋壊死(最小から軽度の悪性度の両方)、および冠血管周囲炎のわずかな増加が適用1日後に認められた(初期の影響)。心筋変性/修復(最小の悪性度)が14日後に認められ、遅延影響と評価することができる。これらの変化のいくつかは、特にrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物でわずかな用量依存性を示した。この病理組織学的変化は、低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する。組換え産物を投与された試験項目処置動物と対照的に、これらの所見のほとんどは、市販のヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与された基準項目処置動物で記録されなかった。しかし、最小の心筋変性/修復は、ヘマート(登録商標)Pで処置された1匹の動物でも記録された(14日目)。この所見の基準項目との関連は不明である。
【0429】
さらに、rVWF処置動物および生理食塩水処置コントロール動物の肺の器官破壊を伴わない最小から軽度の重症度の非常に低い発生率の微小血栓が記録された。これらの微小血栓は、全てがフィブリン凝縮の徴候を示さない初期段階に存在し、1日目に屠殺された動物で記録されなかった。したがって、この変化は、試験項目に関連すると見なされなかった。このバックグラウンド変化は自発的素因に原因し得、技術的手順(例えば、心臓内採血)によってさらに増強され得る。
【0430】
マウスADAMTS13は、ヒト組換えVWFと反応しない。したがって、本研究中の血液学的所見および病理組織学的所見(血栓形成性および播種性血管内凝固異常症の症状(血小板減少症、微小血栓症)が含まれる)が非切断組換えVWFに原因すると想定することができる。しかし、この動物モデルが内因性VWFを持たないので、他のマウス系統よりも感受性が低かった。VWF欠損マウスにおけるrVWFのNOAELは500RCoU/kg体重であった。
【0431】
3つの異なるマウス系統を比較して、結果は以下を示した。C57BL/6Jマウスは、VWF欠損マウスと比較して症状の重症度および組織病理学的所見が増加したので、内因性マウスrVWFの存在は毒性に影響を及ぼす。内因性マウスVWFの存在下でのADAMTS13の不在は、死亡および毒性に最も重篤な影響を及ぼす。
【0432】
実施例8:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒトrVWFのみまたはヒトrFVIIIとの組み合わせの静脈内適用
1.マウス
本研究のためにADAMTS13欠損マウスを選択した。何故なら、このトランスジェニック系統はVWFのADAMTS13プロテアーゼを欠く患者の容態を模倣するからである。
【0433】
2.本研究で使用したプロトコール
正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TREND)を使用して、漸増用量のrVWF(rFVIIIを使用するか使用しない)を使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行った。
【0434】
6つの異なる用量のrVWFおよびrVWF+rFVIIIを調査した。このために、体重推移の最小検出用量(MDD)(対応緩衝液から変化する最小用量として定義される)を、対比を使用して逓減様式で評価した。
【0435】
用量4000RCoU/kgでのヘマート(登録商標)PのrVWF+rFVIIIとの比較を計画していたが、この用量はヘマート(登録商標)P(クエン酸毒性)を用いて実現不可能であることが証明されており、用量2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pを含めた。したがって、用量2000RCoU/kg+1538IU/kgのrVWF+rFVIIIを、用量2000RCoU/kgのVWFのヘマート(登録商標)Pと比較した。
【0436】
たった2匹の動物由来のデータしか利用可能でなかったので、用量4000RCoU/kgでのヘマート(登録商標)P由来の体重データを、項目の比較のために使用した体重推移の順位の計算および実験的変数から排除した。
【0437】
項目および研究日数によって分類した血液学的変数および血清学的変数を、中央値および範囲の代わりに平均および変動係数を使用してまとめた。何故なら、変動係数は規模と無関係であり、且つ実験的変数における用量の変動性の相違を評価することが可能であるからである。
【0438】
3.死亡分析
項目および用量あたりの観察期間および対応する両側95%信頼区間の間に死亡した動物の比率を計算した。両側95%信頼区間を、ウィルソンスコア法によって計算した(Altmanら、Brit.Med.J.Books,2nd ed.,JW Arrowsmith Ltd.,Bristol,p 46〜48(2000))。これらの分析を、STADS、LTADS、ならびにSTADSおよびLTADSの併合について個別に行った。これらの分析を、雄動物および雌動物について個別におよび雄および雌の動物の組み合わせについても行った。
【0439】
対応緩衝液を使用した異なる用量のrVWFとrVWF+rFVIIIとの間の死亡の相違を、両側フィッシャー正確検定(SASプロシージャPROC MULTTESTによる)によって雄動物および雌動物の組み合わせについて評価した。この分析を、STADSおよびLTADSの併合について行った。対応緩衝液を使用した5つの用量群の比較のための多重性の調整を、ホルムの方法を使用して同時に適用した。非調整および多重性調整した両側p値を計算した。異なる項目を調査するために、多重性を調整しなかった。
【0440】
正確検定としてのコクラン・アーミテージ傾向性検定(SASプロシージャPROC FREQ、ステートメント=EXACT TRENDによる)を使用して、漸増用量のrVWF(rFVIIIを使用するか使用しない)を使用して両側対立仮説に対して死亡傾向なしの帰無仮説を試験するためにさらなる分析を行った。この分析を、STADSおよびLTADSの併合および雄および雌の組み合わせについて行った。
【0441】
4000RCoU/kgのrVWFの投与後、40%の動物が処置の直後または4日目までに死亡した(20匹中8匹、群EおよびO)。2000RCoU/kgのrVWFの投与後、20%の動物が処置の直後または9日目までに死亡した(20匹中4匹、群BおよびL)。25%の死亡が4000RCoU/kgのrVWF+3077IU/kgのrFVIIIの投与の直後または処置の1日目までに記録された(20匹中5匹、群AおよびK)。群IおよびS(2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIII)、いかなる他のより低い用量群やネガティブコントロール群において死亡は認められなかった。
【0442】
4000RCoU/kgのVWFのヘマート(登録商標)Pで処置した群(群T)の80%(10匹中8匹)の動物が投与直後に死亡した。より低い用量レベルの2000RCoU/kgのVWFで処置した群(群JおよびU)で動物は死亡しなかった。
【0443】
死亡のまとめを以下の表16に示す。
【0444】
【表16-1】
【0445】
【表16-2】
【0446】
【表16-3】
【0447】
2000RCoU/kgの用量のrVWFで20%(20匹中4匹)が死亡し、4000RCoU/kgの用量のrVWFで40%(20匹中8匹)が死亡した。残りの調査用量では死亡は認められなかった。
【0448】
rVWF+rFVIIIを使用して、調査した最高用量で25%(20匹中5匹)が死亡した。残りの調査用量では死亡は認められなかった。
【0449】
4000RCoU/kgのヘマート(登録商標)P(+3322IU/kgのFVIII)の用量で80%(10匹中8匹)が死亡した。2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)の用量で死亡は認められなかった(20匹中0匹)。
【0450】
最高用量のrVWF+rFVIIIを使用して25%(20匹中5匹)が死亡した。残りの用量または対応緩衝液を使用して死亡は認められなかった(20匹中0匹)。
【0451】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の死亡に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0452】
最高用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の認められた25%の死亡の相違は、多重性を調整した5%レベルで統計的に有意ではなかった。しかし、非調整両側p値は0.0471であった。この生データの両側p値を、5つの異なる用量群の対応緩衝液との同時比較のために調整しなかった。したがって、有意な結果は、5つの異なる用量と緩衝液との間に相違がないという全帰無仮説が真である場合に5%を超える確率で偶然によって起こり得る。
【0453】
最高用量のrVWFと対応緩衝液との間の認められた40%の死亡の相違は統計的に有意であった(多重性を調整した両側p値=0.0164)。
【0454】
rVWFの緩衝液と2000、1000、500、および250RCoU/kgの用量との間の死亡に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0455】
コクラン・アーミテージ傾向性検定は、rVWF+rFVIIIおよびrVWFのみを使用した死亡における用量傾向仮説を支持する。両方の両側p値は1%未満であり、用量が増加するにつれて死亡率が増加することと証明していた。
【0456】
2000RCoU/kg(+1664 1U/kgのFVIII)の用量のヘマート(登録商標)P(20匹中0匹)または2000RCoU/kg+1538IU/kgのrFVIIIの用量のrVWF+rFVIII(20匹中0匹)で死亡は認められなかった(両側p値=1.0000)。
【0457】
4.臨床的異常
毒性を示す臨床的異常は、4000RCoU/kgのrVWFで処置した動物の85%(群EおよびOにおいて20匹中17匹)および4000RCoU/kgのrVWF+3077IU/kgのrFVIIIで処置した動物の75%(群AおよびKにおいて20匹中15匹)で認められた。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した動物の45%(群BおよびLにおいて20匹中9匹)および2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIで処置した動物の35%(群IおよびSにおいて20匹中7匹)で症状が認められた。毒性を示す症状は、4000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pで処置した動物の90%(群Tにおいて10匹中9匹)および2000RCoU/kgのヘマート(登録商標)Pで処置した動物の40%(群JおよびUにおいて20匹中8匹)で認められた。
【0458】
臨床症状は、組み合わせ緩衝液で処置した動物の20%(群CおよびMにおいて20匹中4匹)でも認められた。
【0459】
全ての他の処置群は臨床的に正常であった。以下の表17にまとめを示す。
【0460】
【表17-1】
【0461】
【表17-2】
【0462】
【表17-3】
【0463】
5.体重分析
研究0日目と研究1、7、および14日目(0日目の体重に対するΔ%として)との間の体重の変化を、項目および用量によって分類した箱ひげ図を使用して視覚化した。雄動物および雌動物を、これらの箱ひげ図のために組み合わせた。体重分析を、表18および図24〜26に示す。
【0464】
【表18-1】
【0465】
【表18-2】
【0466】
【表18-3】
【0467】
【表18-4】
【0468】
最高用量(−5.7%の平均Δ%)および2番目に高い用量(−7.4%の平均Δ%)を使用した0日目から1日目までの体重の減少は、対応緩衝液(−1.1%の平均Δ%)よりも統計的に有意であった(5%レベルに調整した多重性で)。
【0469】
多重性を調整した全ての両側p値が5%を超えていたので、異なる用量のrVWF+rFVIIIと対応緩衝液との間の0日目から14日目までの体重推移に統計的に有意な相違(5%レベルに調整した多重性で)は認められなかった。
【0470】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、第1の両側p値が5%を超えた500RCoU/kg+385IU/kgの対比で中止した(両側p値=0.1069)。したがって、最小検出用量は、1000RCoU/kg+769IU/kgのrFVIIIであった。
【0471】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、最高の用量の対比で中止した。最高用量の両側p値は0.2276であり、これは5%を超えており、さらなる対比を調査しなかった。rVWF+rFVIIIを使用した0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量は認められず、調査した最高用量をNOAEL用量と見なすことができる。
【0472】
対応緩衝液(−0.7%の平均Δ%)よりも最高用量(−2.7%の平均Δ%)および2番目に高い用量(−6.5%の平均Δ%)を使用した0日目から1日目までの体重で統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)大きな減少が認められた。
【0473】
多重性調整した全ての両側p値が5%未満であったので、対応緩衝液よりも調査した全ての用量を使用した0日目から14日目までの体重で統計的に有意な(5%レベルに調整した多重性で)大きな相違が認められた。
【0474】
逓減様式での0日目から1日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、第1の両側p値が5%を超えた1000RCoU/kgの対比で中止した(両側p値=0.6932)。したがって、最小検出用量は2000RCoU/kgであった。
【0475】
逓減様式での0日目から14日目までの体重の変化についての最小検出用量の推定を、両側p値が依然として5%を超えている場合に調査した最低の用量の対比で中止した。したがって、最小検出用量は250RCoU/kgであった。
【0476】
0日目から1日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)P(2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIII)を使用して0.6%(95%CI:−0.3%〜2.7%)であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIを使用して−7.4%(95%CI:−9.4%〜−4.6%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。
【0477】
0日目から14日目までの平均体重推移は、ヘマート(登録商標)P(2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIII)を使用して1.5%(95%CI:−1.3%〜3.5%)であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIを使用して3.6%(95%CI:2.0%〜5.8%)であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意でなかった(両側p値=0.2079)。
【0478】
6.血液学的変数および血清学的変数
ヘマトクリット、血小板数、およびLDHの比較を、表19〜21および図27〜32に示す。
【0479】
1000RCoU/kgのrVWFおよび緩衝液で処置した群における14日目のヘマトクリットおよび血小板数についてのデータは、サンプルの破損のために喪失している。
【0480】
【表19-1】
【0481】
【表19-2】
【0482】
【表20-1】
【0483】
【表20-2】
【0484】
【表21-1】
【0485】
【表21-2】
【0486】
7.検死
検死の所見は、rVWFの自発的に死亡した動物との関連を示した。
【0487】
8.組織病理学
短期間研究のために、心筋壊死(最小から中等度の悪性度、限局的または多巣性)は、500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせで処置したrVWF処置群で記録された。微小血栓(最小から中等度の悪性度)は、1000RCoU/kgおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせでのrVWF処置動物で記録された。これらの変化の両方は、重症度および/または発生率のわずかな用量依存性増加を示した。
【0488】
さらに、冠血管周囲炎の発生率の増加は、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせを使用した試験項目処置動物で記録された。
【0489】
膠細胞病巣(最小の悪性度)と組み合わせた微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群の脳で記録された。rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の動物およびrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kg用量群の動物で発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。
【0490】
変性病変を伴わない最小の発生率および悪性度の微小血栓は、異なる群の単一のrVWF処置動物および等張生理食塩水で処置した1つのコントロール動物で記録された。
【0491】
微小血栓(最小の悪性度)は、自発的に死亡した高用量群の1つのrVWF処置動物の眼で記録された。この所見は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した動物で認められなかった。
【0492】
微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、高用量群のrVWF処置動物(自発的に死亡した)および500RCoU/kg用量群のrVWF処置動物(共にrVWFのみで処置)ならびにrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した1000RCoU/kgおよび高用量群の動物の腎臓で記録された。
【0493】
試験項目処置動物およびヘマート(登録商標)P、等張生理食塩水、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物の肺で低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された(発生率:≦4/10;平均重症度:≦1.5)。全ての微小血栓は初期段階に存在し、フィブリン凝縮の徴候を示さず、壊死または梗塞を伴わなかった。
【0494】
さらに、rVWFのみで処置した高用量群の試験項目処置動物で平均重症度の増加が最小の微小血栓が記録された。この増加は、共に中等度の重症度の肺微小血栓(悪性度3)を有していたこの群の2匹の動物に原因していた。明確な用量関連は記録できなかった。
【0495】
長期間研究のために、心筋変性/修復(最小から顕著な悪性度)は、500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で単独またはrFVIIIとの組み合わせで処置した試験項目処置動物の心臓で記録された。この変化は、重症度および/または発生率の用量依存性の増加を示し、炎症(主に単球)および線維症によって特徴づけられ、しばしばヘモシデリン沈着を伴い、時折心筋石灰化も伴った。
【0496】
さらに、微小血栓および心筋壊死は、特に自発的に死亡した動物で低発生率で記録された。
【0497】
膠細胞病巣(最小の悪性度)と組み合わせた微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群および2000RCoU/kgのrVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した群の脳で記録された。
【0498】
さらに、2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した動物で発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)が記録された。変性病変を伴わない最小の発生率および悪性度の微小血栓は、異なる群の単一の試験項目処置動物および組み合わせ緩衝液で処置した1つのコントロール動物で記録された。
【0499】
微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量にて単独で処置した群の試験項目処置動物ならびにrFVIIIと組み合わせた500RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量で処置した群の動物の腎臓で記録された。この所見は、組み合わせ緩衝液で処置した1つのコントロール動物にて最小の悪性度でも記録された。
【0500】
rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群中の1つの試験項目処置動物(自発的に死亡した)において、微小血栓(軽度の悪性度)は皮質壊死(中等度の悪性度)を伴っていた。
【0501】
微小血栓(最小の悪性度)は、rVWFのみで処置した高用量群の1つの試験項目処置動物(自発的に死亡した)の副腎皮質で記録された。この所見は、rFVIIIと組み合わせたrVWFで処置した動物で認められなかった。
【0502】
さらに、軽度から中等度の出血は、rVWFのみで処置した高用量群の3匹の試験項目処置動物(自発的に死亡した)で記録された。この所見は、rFVIIIと組み合わせたrVWFで処置した動物で認められなかった。
【0503】
低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)は、試験項目処置動物ならびにヘマート(登録商標)P、等張生理食塩水、クエン酸緩衝液、または組み合わせ緩衝液で処置したコントロール動物の肺で記録された(発生率:≦3/10;平均重症度:≦1.5)。全ての微小血栓(下記の1つを除く)は初期段階に存在し、フィブリン凝縮の徴候を示さず、壊死や梗塞を伴わなかった。
【0504】
さらに、平均重症度がわずかに増加した微小血栓は、rVWFのみで処置した2000RCoU/kg用量群の試験項目処置動物で記録された。この増加は、本研究でヒアリン肺血栓のみを有していたこの群の単一の動物に原因していた。この血栓症により、検死にて記録された肺の巨視的に視覚可能なブルーレッドの変色が得られた(“Table of Macroscopic Findings” in the pathology reportを参照のこと)。明確な用量関連は記録できなかった。
【0505】
さらに、発生率がわずかに増加した微小血栓(全て最小の悪性度)は、rVWFとrFVIIIとの組み合わせで処置した高用量群の試験項目処置動物で記録された。明確な用量関連は記録できなかった。
【0506】
9.考察
上記で説明するように、rVWFを、以下の5つの用量レベル(4000、2000、1000、500、および250RCoU/kg体重)にて単独で試験し、この5つの用量でのrFVIIIとの組み合わせも試験した。組み合わせ投与では、rVWFの用量は単回投与における用量と同一であり、rFVIIIの用量は、降順に3077、1538、769、385、および192IU/kgのrFVIIIであった(すなわち、例えば、4000RCoU/kg体重のrVWFを3077IU/kgのrFVIIIと同時投与し、2000RCoU/kg体重のrVWFを1538IU/kgのrFVIIIと同時投与した)。ヘマート(登録商標)Pを、4000RCoU/kg体重(+3322IU/kg体重のFVIII)および2000RCoU/kg体重(+1664IU/kg体重のFVIII)で試験した。
【0507】
rVWFのみの対応緩衝液を、31.7mL/kg(最も高いrVWFの用量体積にしたがって)の体積で投与し、混合緩衝液を49.3mL/kgの体積で投与し、等張生理食塩水を51.1mL/kgの体積で投与した。
【0508】
本研究において4000RCoU/kgの用量レベルのヘマート(登録商標)Pで処置した群で最も高い死亡が認められ、80%(10匹中8匹)が投与直後に死亡した。これは、クエン酸ナトリウム過負荷の明白な徴候を示す(281mg/kgクエン酸塩を、51.1mL/kgの投与体積で注射した)。マウスにおける静脈内適用後のクエン酸ナトリウムのLD50は231mg/kgであるので(Sax’s Dangerous Properties of Industrial Materials,1992)、ヘマート(登録商標)Pの用量を2000RCoU/kgのVWFに変更した。この用量レベルでのヘマート(登録商標)Pではさらなる死亡は認められなかった。
【0509】
4000RCoU/kgのrVWFのみを投与された動物の40%(20匹中8匹)が死亡したのに対して、2000RCoU/kgを投与した動物の死亡は20%(20匹中4匹)に減少した。より低い用量群ではさらなる死亡は認められなかった。3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgのrVWFを投与された動物の25%(20匹中5匹)が死亡した。より低い用量の群では、rFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgを投与された群でさえ、さらなる死亡は認められなかった。4000RCoU/kg用量群の注射体積で141mg/kgクエン酸ナトリウムが存在していたので、このこともこれらの群におけるいくつかの突然死の理由であり得る。高用量群における症例の遅延および2000RCoU/kg用量群における突然死についてのこの死亡原因を排除することができる。
【0510】
傾向について統計的に特別に行った検定により、rVWF用量が増加するにつれて死亡率が増加することが証明された(両側p値<0.0001)。
【0511】
2000RCoU/kgのVWF+1664IU/kgのFVIIIの用量でのヘマート(登録商標)Pの投与では死亡(20匹中0匹)は認められず、2000RCoU/kgのrVWF+1538IU/kgのrFVIIIでは死亡(20匹中0匹)は認められなかった。
【0512】
臨床所見により、広範な異常が明らかとなった。短期症状はクエン酸ナトリウムの注射量にも明らかに原因した。何故なら、クエン酸ナトリウム毒性に典型的な症状(例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)が緩衝液群の動物の20%(20匹中4匹)で記録されたからであった。
【0513】
しかし、投与された用量の症状の発生率と重症度との間に明確な相関関係が存在した。動物の85%(20匹中17匹)が4000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けたのに対して、動物の45%(20匹中9匹)は2000RCoU/kgのrVWFの投与後に影響を受けた。
【0514】
3077IU/kgのrFVIIIと組み合わせた4000RCoU/kgを投与した動物の75%(20匹中15匹)で臨床的異常が認められたのに対して、1538IU/kgのrFVIIIと組み合わせた2000RCoU/kgのrVWFの投与後に35%(20匹中7匹)が影響を受けた。rVWFのみまたはrFVIIIとの組み合わせで処置した他のいかなる群も臨床的異常は記録されなかった。
【0515】
4000RCoU/kgの用量レベルでヘマート(登録商標)Pで処置した群で認められた症状(90%、10匹中9匹)は、クエン酸塩過負荷(281mg/kg)に明らかに原因し、それにより即死した。2000RCoU/kgヘマート(登録商標)Pで処置した群中の全ての影響を受けた動物(40%、20匹中8匹)はまた、クエン酸ナトリウム毒性を示す短期異常のみを示した(140.5mg/kg;例えば、短期の行動抑制、痙攣、呼吸困難)。さらなる長期症状は記録されなかった。
【0516】
0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、1000RCoU/kgのrVWF+769IU/kgのrFVIIIと推定された。従って、用量500RCoU/kgのrVWF+385IU/kgのrFVIIIを、0日目から1日目までの体重推移に関する「無毒性量」(NOAEL)用量と見なすことができる。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は存在しなかった。したがって、調査された最も高い用量のrVWF+rFVIII(4000RCoU/kg+3077IU/kg)を、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量と見なすことができる。
【0517】
単独投与したrVWFについての0日目から1日目までの体重の変化の最小検出用量(MDD)は、2000RCoU/kgと推定された。従って、用量1000RCoU/kgを、0日目から1日目までの体重推移に関する無毒性量(NOAEL)用量と見なすことができない。0日目から14日目までの体重の変化の最小検出用量は、最低の調査用量のrVWF(250RCoU/kg)と推定された。従って、調査したrVWF用量の間の用量は、0日目から14日目までの体重推移に関するNOAEL用量として見なすことができない。体重の増加(緩衝液群について2.3%対4.8%)が生理食塩水(1.8%)およびヘマート(登録商標)P(1.5%)よりも高く、且つ250RCoU/kgのrVWF+rFVIII(2.7%)で処置した群に類似するので、この推定された相違は予測不可能と見なすことができる。0日目から1日目までの平均体重推移は、2000RCoU/kg+1664IU/kgのFVIIIの用量で投与したヘマート(登録商標)Pで0.6%であり、対応する投与用量のrVWF+rFVIIIで−7.4%であった。この相違は、5%レベルで統計的に有意であった(両側p値<0.0001)。0日目から14日目までに統計的に有意な相違は見出されなかった。
【0518】
生存動物における選択された血液学的変数および血清化学変数のデータの比較により、1000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量の単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与の1日後に血小板数の減少が認められた。さらに、2000RCoU/kgのrVWFおよびより高い用量での単独またはrFVIIIとの組み合わせの投与後にヘマトクリットが低下した。
【0519】
コントロール群と比較した場合、乳酸デヒドロゲナーゼは、2000RCoU/kgのrVWFでの処置およびより高い用量での単独投与またはrFVIIIとの組み合わせの投与後の1日目に増加した。
【0520】
ヘマート(登録商標)P(+1664IU/kgのFVIII)における2000RCoU/kgのVWFの適用後1日目に、血小板数の低下のみが認められた。測定された変数は、全ての罹患群で観察14日後に正常に戻った。
【0521】
組織病理学的試験によって以下の多数の罹患器官が明らかとなった:心臓(冠血管微小血栓、心筋壊死、冠血管周囲炎の増加、心筋変性/修復)、脳(微小血栓、膠細胞病巣)、眼(微小血栓)、腎臓(微小血栓、皮質壊死)、副腎(微小血栓、出血)、および肺(微小血栓の発生率または平均重症度の増加)。これらの病理組織学的変化を、播種性血管内凝固異常症(DIC)としてまとめることができる。高用量(≧2000RCoUのrVWF)では、動物は、ある程度ヒトの血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病像に類似する。低用量(500〜1000RCoU)では、主に心臓が低悪性度「虚血性心疾患」の病像に類似する病理組織学的変化を示す影響を受けた。組換え産物を投与した試験項目処置動物と対照的に、かかる所見は、ヒト血漿由来VWF−FVIII調製物(ヘマート(登録商標)P)を投与した基準項目処置動物で記録されなかった。ここに、コントロール動物に類似する発生率で低悪性度肺微小血栓のみが記録された。
【0522】
計画された1日目に屠殺された(または投与直後に自発的に死亡した)試験項目処置動物中で1つまたは複数の器官の血栓塞栓性変化が記録された。低酸素症に対して高い感受性を示す心臓は、最も重篤に影響をうけた器官であった。冠血管微小血栓による血管閉塞により、心臓への血流が減少し、虚血性心筋壊死(酸素欠乏に続発する細胞餓死)および反応性冠血管周囲炎(初期の影響)を引き起こした。
【0523】
計画された14日目に屠殺された(または投与後いくらか遅れて自発的に死亡した)試験項目処置動物の心臓において主な変性および/または修復性の変化(炎症、線維症、ヘモシデリン沈着、石灰化)が記録された。これらの心筋梗塞様変化は、微小血栓による以前の血管閉塞の結果と見なされた(遅延影響)。2000RCoU/kgのrVWFのみで処置した群の自発的に死亡した1匹で記録された腎臓皮質壊死を、同一の方法で解釈することができる。ここに、微小血栓による腎臓血管の血管閉塞により、腎梗塞を生じた。
【0524】
生理食塩水、緩衝液、およびヘマート(登録商標)Pでも処置したコントロール動物のいくつかの器官(肺、腎臓、脳)で器官破壊を伴わない低発生率の微小血栓(最小から軽度の悪性度)が記録された。
【0525】
1つまたは複数の器官中に有害な微小血栓症からなる病理学的変化が記録された。これらの変化は、VWF切断プロテアーゼを欠くこの動物モデル(ADAMTS13欠損マウス)における500RCoU/kgのrVWFおよびそれを超える用量を単独またはrFVIIIと組み合わせて投与した試験項目rVWFの血栓形成の可能性を示していた。低用量群(rVWFのみおよびrVWFとの組み合わせ)で有害な組織病理学的変化は記録されなかったので、250RCoU/kgでNOAELを確立することができる。
【0526】
rVWFの毒物学的プロフィールの系統特異的相違に関して、ADAMTS13欠損マウスは、試験したマウス系統のうちで最も高い感受性を示す。ADAMTS13欠損マウスと対照的に、VWF欠損マウスおよびC57BL/6Jマウスの両方において、最高用量のrVWFを用いた場合でさえ、死亡は認められなかった。ADAMTS13ノックアウトマウスにおけるrVWFのNOAELは250RCoU/kg体重であった。
【0527】
実施例9:
ADAMTS13欠損マウスにおけるヒト組換えADAMTS13のヒトrVWFとの同時投与
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウスにおいて組換えヒトADAMTS13(rADAMTS13)とのrVWFの同時投与の影響を評価することであった。ヒト血漿由来調製物であるヘマート(登録商標)Pで見出された比率にしたがって、rVWFを2000RCoU/kgで投与し、rADAMTS13を19.4μg/kgで投与した。2000RCoUのrVWFを選択した。何故なら、この用量でADAMTS13欠損マウスの20%が死亡したからであった(研究番号PV1940601)。rVWFおよびrADAMTS13を、適用直前にシリンジで予め混合して注射するか(群A)、rADAMTS13およびその直後のrVWFの注射として連続的に注射した(群B)。
【0528】
ヘマート(登録商標)Pは超巨大VWF多量体を欠くだけでなく、ADAMTS13も含む。実施例8で証明するように、ADAMTS13欠損マウスは、ヘマート(登録商標)Pでの処置後に血栓形成性の徴候を示さなかった。
【0529】
1.ADAMTS13およびrVWFの同時投与プロトコール
2000RCoU/kgのrVWF(15.9mL/kgと等価)および19.4μg/kgのrADAMTS13(5mL/kgと等価)の用量を使用した。両項目を、処置群Aでの尾静脈注射の直前にシリンジ中で混合した。処置群BにおいてrADAMTS13を注射し、その直後にrVWFを注射した。
【0530】
上記実施例のプロトコールと同様に、動物を、1日目の終了まで注射後の毒性を示す徴候について観察した。血液サンプルを、血液学的変数(ヘマトクリット、血小板数)および血清学的変数(LDH、CK)の分析のために投与1日後の麻酔下(ケタミン+キシラジン i.m.)での心穿刺によって採取した。
【0531】
検死を行い、選択した器官(肺[灌流、気管なし]、心臓、腎臓、副腎、肝臓、脳[延髄なし]、脾臓、眼)を、標準的なヘマトキシリン(hemotoxylin)−エオシン染色手順後の組織病理学的評価のために4%ホルムアルデヒド溶液中で保存した。
【0532】
あらゆる動物から検死で回収した全ての組織サンプル(および全巨視的所見の組織サンプル)のスライドを処理し、パラフィン包埋し、規定厚さ2〜4μmに切断し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡によって試験した。
【0533】
2.結果
死亡および毒性を示す臨床徴候はいかなる動物においても記録されなかった。
【0534】
血液学的変数および血清学的変数の臨床的データおよび分析データを以下にまとめる。
【0535】
【表22】
【0536】
3.考察
本研究の目的は、ADAMTS13欠損マウスにおいて組換えADAMTS13との同時投与によってrVWFの急性毒性を減弱することができるかどうかを評価することであった。
【0537】
rVWFの毒性は、実施例8におけるADAMTS13欠損マウスで明らかに認められた。実施例8はまた、ヘマート(登録商標)PがADAMTS13欠損マウス(ポジティブコントロール)に有意な影響を及ぼさなかったことを証明した。
【0538】
本研究では、死亡および毒性の徴候は認められなかった。これは、ADAMTS13による切断がrVWF毒性を防止することができることを証明していた。
【0539】
分析データを比較して、予め混合した項目の投与と対照的に、rADAMTS13およびrVWFの連続投与の1日後に血小板数の低下が測定された。検死の所見は存在しなかった。試験項目処置動物群AおよびBにおいて冠血管微小血栓(最小から軽度の悪性度)、心筋壊死(最小から中等度の悪性度)、およびわずかな冠血管周囲炎の増加からなる心臓の組織病理学的変化が記録された。
【0540】
さらに、軽度の悪性度の線維症が群Bの単一の試験項目処置動物で記録された。投与1日後に屠殺された動物で記録されたので、この線維症は既存の慢性容態のようであった。したがって、この線維症は、試験項目と無関係であると見なされた。
【0541】
2群(A対B)を比較して、組織病理学的変化の重症度または発生率に明白な相違は記録されなかった。rADAMTS13同時投与を用いない前の研究と対照的に、死亡または巨視的所見は本研究における検死で記録されなかった。心筋壊死の発生率および重症度は両研究で類似していた。しかし、冠血管微小血栓症および冠血管周囲炎は、ADAMTS13処置マウスであまり明らかでなかった。さらに、ADAMTS13を投与されたマウスは心臓のみに微小血栓を示した一方で、前の研究ではマウスの心臓、脳、腎臓、および肺に微小血栓が記録された。
【0542】
本研究の結果は、ADAMTS13による切断によってrVWF毒性を防止することができることを証明している。
【0543】
本発明の実施のための特定の様式を含むことが見出されたか提案された特定の実施形態に関して本発明を記載している。記載の本発明の種々の修正形態および変形形態は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は特定の実施形態と併せて記載されているが、特許請求の範囲に記載の本発明がかかる特定の実施形態に過度に制限されるべきでないと理解すべきである。実際、関連分野の当業者に明白な記載の発明実施の様式の種々の修正形態が以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
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