特許第5749666号(P5749666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749666
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】除染装置および除染方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   G21F9/28 522C
   G21F9/28 501B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-11175(P2012-11175)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-148548(P2013-148548A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100156524
【弁理士】
【氏名又は名称】猪野木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】大内 智
【審査官】 関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−014796(JP,A)
【文献】 特開2001−235594(JP,A)
【文献】 特開昭55−058499(JP,A)
【文献】 特開昭53−083000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉内の圧力容器の内面に除染液を噴出して除染する除染装置であって、
前記圧力容器内における除染時の前記除染液の収容容積を減少させるように、前記圧力容器内に設けた除染液減容用の構造物と、
前記除染液を前記圧力容器の内面に向けて噴出するように前記除染液減容用の構造物に設けた除染液噴射装置と、
加圧された除染液を前記洗浄液噴射装置に供給する配管と、
除染後の除染液を排出するように前記圧力容器の底部に設けたドレン配管と、
前記配管と前記ドレン配管との間に配設された除染処理手段とを備え
前記除染液減容用の構造物は、前記除染液を直接加熱する電気ヒーターが設けられたことを特徴とする除染装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除染装置において、
前記除染液噴射装置は、
前記除染液減容用の構造物に設けられ、加圧された前記除染液を取り込む環状の管体と、
前記管体に周方向に間隔を持って設けた散液ノズルとを備えたことを特徴とする除染装置。
【請求項3】
請求項2に記載の除染装置において、
前記散液ノズルを備えた管体は、前記除染液減容用の構造物のフランジ部に取り付けたことを特徴とする除染装置。
【請求項4】
請求項3に記載の除染装置において、
前記除染液減容用の構造物におけるフランジ部は、前記原子炉圧力容器の上鏡を固定する本設ボルトが挿入されるボルト挿入孔を設けたことを特徴とする除染装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の除染装置において、
前記除染液減容用の構造物は、更に、放射線線量測定機器が設けられることを特徴とする除染装置。
【請求項6】
原子炉内の圧力容器の内面を除染する除染方法であって、
前記圧力容器内に、請求項1ないしのいずれか1項記載の除染装置を設置し、
加熱された除染液を前記除染液噴射装置に供給し、前記除染液噴射装置から前記圧力容器内面に噴射させ、前記圧力容器内の除染後の除染液を前記ドレン配管を介して前記圧力容器から排出・回収し、回収後の除染液を調整し、調整後の除染液を前記除染液噴射装置に再度供給することを特徴とする除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉内の圧力容器内面および炉内構造物を除染するための除染装置および除染方法に係わり、更に詳しくは、薬品使用量および除染時間を減少させて、効率的に除染することができる除染装置および除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにおいて、圧力容器に供給される冷却材は、原子炉冷却材再循環系配管(以下、「PLR配管」という)を介し、原子炉冷却材再循環ポンプ(以下、「PLRポンプ」という)により循環させている。そして、圧力容器内の冷却材を循環させて、燃料の核分裂によって発生した熱を吸収させて蒸気とし、湿分を分離・乾燥させた後にタービンへ送り、発電に供せられている。
【0003】
原子力発電所では、技術の進歩に伴って開発される予防保全技術を既存の原子炉に適用することによって、信頼性の向上を図っている。例えば予防保全の一環として、圧力容器内での冷却材の流れを整えるシュラウドを取り替える工事が行われる場合がある。また、高経年化した原子力発電所に対しては廃炉作業が行われる。
【0004】
ここで、圧力容器の内面には酸化皮膜が付着しており、酸化皮膜中に放射性物質が含まれている。そのため、圧力容器内のシュラウド取り替え作業あるいは廃炉作業に先立って、圧力容器内面の酸化皮膜を除去して放射性物質を除去することが作業時の被ばく低減に有効である。その方法として、配管内表面に付着している酸化皮膜を化学薬品により溶解させる化学除染方法が行われている。
【0005】
この化学除染に関する技術としては、以下に示すような技術が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載されたものは、原子炉圧力容器内の除染液水位を調整し、除染効果を向上させるために、原子炉格納容器内の空間に、水を内包した耐薬品性のゴムあるいは合成樹脂等からなる袋容器を挿入して除染液の低減を図るとともに、袋容器に給水ラインと排水ラインを設け、袋容器内の水の量を調整するものである。
【0007】
また、特許文献2,3には化学的に除染するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−235594号公報
【特許文献2】特開平7−253496号公報
【特許文献3】特開2009−109253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1では、圧力容器を除染する際に水を内包した袋容器を挿入することで、準備する薬品量を減少させ、かつ化学分解時間の短縮を図ることはできるものの、圧力容器内において除染液の流れを発生させることが難しく、除染ムラが発生する可能性があるという問題がある。また、除染液を加熱するためにシェル型の電気ヒーターを使用する必要があるが、この電気ヒーターはボイラー関係法令を遵守する必要があり、その取扱いや点検、手入れに非常に手間がかかるという課題がある。
【0010】
また、特許文献2,3では、除染効率が良いとはいえないとの問題や、装置の大型化が必要との問題がある。
【0011】
本発明は、原子炉内の圧力容器内面および炉内構造物の除染に関し、除染剤の使用量を減らしつつも、洗浄ムラが生じることがなく、高効率かつ短時間で除染を行うことができる除染装置と除染方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の発明は、原子炉内の圧力容器の内面に除染液を噴出して除染する除染装置であって、前記圧力容器内における除染時の前記除染液の収容容積を減少させるように、前記圧力容器内に設けた除染液減容用の構造物と、前記除染液を前記圧力容器の内面に向けて噴出するように前記除染液減容用の構造物に設けた除染液噴射装置と、加圧された除染液を前記洗浄液噴射装置に供給する配管と、除染後の除染液を排出するように前記圧力容器の底部に設けたドレン配管と、前記配管と前記ドレン配管との間に配設された除染処理手段とを備え、前記除染液減容用の構造物は、前記除染液を直接加熱する電気ヒーターが設けられた。
【0013】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記除染液噴射装置は、前記除染液減容用の構造物に設けられ、加圧された前記除染液を取り込む環状の管体と、前記管体に周方向に間隔を持って設けた散液ノズルとを備えた。
【0014】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記散液ノズルを備えた管体は、前記除染液減容用の構造物のフランジ部に取り付けた。
【0015】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記除染液減容用の構造物におけるフランジ部は、前記原子炉圧力容器の上鏡を固定する本設ボルトが挿入されるボルト挿入孔を設けた。
【0017】
また、第の発明は、第1ないし第の発明において、前記除染液減容用の構造物は、更に、放射線線量測定機器が設けられる。
【0018】
また、第の発明は、原子炉内の圧力容器の内面を除染する除染方法であって、前記圧力容器内に、第1ないし第のいずれかの発明の除染装置を設置し、加熱された除染液を前記除染液噴射装置に供給し、前記除染液噴射装置から前記圧力容器内面に噴射させ、前記圧力容器内の除染後の除染液を前記ドレン配管を介して前記圧力容器から排出・回収し、回収後の除染液を調整し、調整後の除染液を前記除染液噴射装置に再度供給する。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によれば、除染剤の使用量を減らしつつも、洗浄ムラが生じることがなく、高効率かつ短時間で除染を行うことができる除染装置と除染方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の除染装置の一実施の形態を示す構成図である。
図2】本発明の除染装置を構成する除染液減容用の構造物の断面図である。
図3】本発明の除染方法における処理ステップを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の除染装置および除染方法の実施の形態を図面を用いて説明する。
まず、本発明の除染装置の一実施の形態を図1乃至図3を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の除染装置の一実施の形態を示す構成図で、図1において、除染すべき対象は、原子炉の圧力容器20である。この圧力容器20内の除染作業に際して、除染前に圧力容器20の上鏡を開放し、シュラウド,蒸気乾燥器,セパレータ及び燃料集合体等の圧力容器内の様々な機器を系外に予め取り出しておき、その後、圧力容器20に除染液減容用の構造物60を設置する。この除染液減容用の構造物60の詳細について、図1および図2を用いて説明する。
【0023】
図2は、本発明の除染装置を構成する除染液減容用の構造物60の縦断面図を示すもので、図2において、除染液減容用の構造物60は、圧力容器20内の除染液の減容機能をさらに高めるためのもので、有底円筒状の金属(例えばSUS)製の本体60aと、この本体60aの上部に設けられ、圧力容器20のフランジ20a上に当接するフランジ60bを備えている。フランジ60bには、後述する圧力容器20側の本設ボルト63が挿入されるボルト挿入孔60cが設けられている。
【0024】
また除染液減容用の構造物60の本体60aは、その大きさが排除できる除染液量に比例するため、なるべく大きく、圧力容器20よりやや小さいサイズであることが、除染液の使用量削減の観点から望ましい。しかし、あまりに大きいと原子炉建屋へ搬入する際の制約もあるため、いくつかに分割して搬入して建屋内で結合するために、上下方向に2分割している。
【0025】
除染液減容用の構造物60のフランジ60bの下面側には、除染液噴射装置61が設けられている。除染液噴射装置61は、加圧された除染液を取り込む環状の管体61aと、管体61aの外周側で周方向に間隔を持ち、圧力容器20の内面側に向かって設けた複数の散液ノズル61bとからなっている。散液ノズル61bを備えた管体61aは、U字ボルト60dとナット60eとによってフランジ60bの下面側に位置するように固定されている。
【0026】
さらに、除染液減容用の構造物60の本体60a内には、投げ込み式の電気ヒーター62が設けられている。ここで、投げ込み式電気ヒーターとは、例えば、ビーカー・バケツ・タンク・浴槽・ドラム缶などに入った水・水溶液を簡単に直接加熱できる熱効率の良いヒーターのことであり、開口部から水溶液中に投げ入れるだけですむので、試験・試作・実験にも便利である。
これにより、圧力容器20内の除染液・純水を直接加熱することが可能となり、熱効率に非常に優れ、省エネであるとともに、除染液・純水の温度管理も非常に容易である。更に、シェル型の電気ヒーターのようにボイラー関係法令を遵守した取扱いや点検、手入れを行う必要がなくなり、安価で扱いが非常に容易であるとの利点を有する。
【0027】
また、除染液減容用の構造物60の本体60aの内面には、放射線線量測定機器64が設けられている。これにより、圧力容器20内部の放射線量を直接測定することが可能となり、化学除染作業の進捗をリアルタイムで詳細に把握することが可能となる。
この放射線線量測定機器64としては、電離箱、比例計数管、GM計数管、シンチレーション検出器、或いは半導体検出器など、一般的な放射線線量測定機器を採用することができる。例えばシンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl(Ce)、LaBr(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等があり、半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等がある。
【0028】
次に、図1に戻り説明すると、除染作業にあたって、まず前述した除染液減容用の構造物60は、架設機械によって圧力容器20の上部から吊降ろされて、除染液減容用の構造物60におけるフランジ60bのボルト挿入孔60cを本設ボルト63に挿入してナット63a等により圧力容器20に固定される。
【0029】
除染液減容用の構造物の管体61aには、配管30が連結されている。圧力容器20の底下部には、圧力容器底部ドレン配管(金属管またはホース)21が連結されている。このドレン配管21と配管30との間には、圧力容器20に除染液を供給するA循環ポンプ(第1循環ポンプ)4、圧力容器20から除染液を戻すB循環ポンプ5(第2循環ポンプ)、溶解した酸化物を除去するカチオン樹脂塔8、除染液を浄化する混床樹脂塔7、還元除染液を分解する除染剤分解装置9、除染液を冷却する冷却器6、除染剤を投入し、酸化または還元除染液を作製する薬品注入タンク1等からなる除染処理手段100が配設されている。
【0030】
配管21には、上流側より、弁V5、B循環ポンプ5、弁V7、弁V10、弁V13、弁V16、A循環ポンプ4、および弁V1、弁V3が取り付けられている。
また、薬品注入タンク1の上方には除染剤を投入する薬品投入口3が設けられている。
【0031】
更に、弁V4を備えた配管(金属管またはホース)31が、圧力容器20をバイパスするように配管30に接続される。
冷却器6は、弁V8と弁V9との間で配管34に設置され、弁V8、弁V9を備えた配管(金属管またはホース)34が、弁V7をバイパスするように配管30に接続される。
混床樹脂塔7は、弁V11と弁V12との間で配管35に設置され、弁V11、弁V12を備えた配管(金属管またはホース)35が、弁V10をバイパスするように配管30に接続される。
カチオン樹脂塔8は、弁V14と弁V15との間で配管36に設置され、弁V14、弁V15を備えた配管(金属管またはホース)36が、弁V13をバイパスするように配管30に接続される。
除染剤分解装置9は、弁V17と弁V18との間で配管33に設置され、弁V17、弁V18を備えた配管(金属管またはホース)33が、弁V16をバイパスするように配管30に接続される。
【0032】
除染液減容用の構造物60は、前述のように、A循環ポンプ4の吐出側に、配管30、弁V1、弁V3を介して接続された環状の管体61a及び散液ノズル61bを備え、かつドレン配管21、弁V5を通じてB循環ポンプ5の吸込み側に接続されている。そして圧力容器20の内側で散液ノズル61bにより除染液を散液し、この散液ノズル61bから散液された除染液は配管21から弁V5を経由して配管30へ戻る。
【0033】
A循環ポンプ4およびB循環ポンプ5を駆動することによって、圧力容器20内の液体が、取合弁V5、B循環ポンプ5、薬品注入タンク1、A循環ポンプ4および除染液減容用の構造物60の環状の管体61a,散液ノズル61bを経て圧力容器20に戻される。
【0034】
次に、上述のような除染液減容用の構造物60を備えた除染装置を用いた除染方法について、原子炉圧力容器の除染方法を例にとって図3を用いて以下説明する。
図3は、本発明の除染方法における処理ステップを示すフローチャート図である。
【0035】
まず、STEP1として、圧力容器20に、除染液減容用の構造物60を設置する。
このとき、配管30を除染液減容用の構造物60の環状の管体61aの接続部に接続する。また、除染液減容用の構造物60のボルト挿入孔60cを、圧力容器20の上部に設けられている本設ボルト63に挿入させ、この本設ボルト63を用いて除染液減容用の構造物60を圧力容器20に固定する。
【0036】
次に、STEP2として、除染ライン系統を構成するために、弁V1、弁V4、弁V6、弁V7、弁V10、弁V13、弁V16を「開」とし、その他の弁を「閉」とする。
【0037】
その後、STEP3として、A循環ポンプ4およびB循環ポンプ5を駆動することにより、薬品注入タンク内の純水を、配管30および圧力容器20のバイパス配管31で形成される循環路に循環させ、運転を開始する。その後、弁V3、弁V5を「開」、弁V4を「閉」として、薬品注入タンク1内の純水をA循環ポンプ4によって、除染液減容用の構造物60のフランジ60aに設けられた除染液噴射装置61の散液ノズル61bを介して圧力容器20に供給し、圧力容器20内の純水をB循環ポンプ5によって薬品注入タンク1に戻す循環運転を行う。
除染液噴射装置61がフランジ60aに設けられていることによって、散液ノズル61bが圧力容器20の上部に位置することになり、散液ノズル61bから噴出した除染液が圧力容器20の底部にあるドレン配管21に向けて流れ、圧力容器20の内面全面に除染液を行き渡らせることができ、除染ムラが生じることなく、圧力容器内面の効率的な除染が可能となる。
【0038】
そして、STEP4として圧力容器20内に純水を充満させる。この際に、除染液減容用の構造物60は本設ボルト63によって圧力容器20に固定されているため、除染液減容用の構造物60がその容積によって排除して受ける浮力が作用しても、除染液減容用の構造物60は安定して固定することができ、除染を安全かつ効率的に行うことができる。
【0039】
その後、STEP5として、除染液減容用の構造物60に設定されている電気ヒーター62の電源をONにして、所定の温度(例えば、〜90℃)まで純水を昇温する。
【0040】
純水が所定の温度に達したら、STEP6として、薬品投入口3から薬品注入タンク1内に酸化剤を投入し、配管30および圧力容器20の強制循環および自然対流によって均一な酸化除染液を作製する。この状態を数時間保持することによって圧力容器20内のクロム酸化物の溶解を行う。
【0041】
酸化除染(クロム酸化物の溶解)が終了したら、STEP7として、薬品投入口3から還元剤を投入し、酸化除染液を分解する。
【0042】
その後、STEP8として、弁V14、弁V15を「開」、弁V13を「閉」にし、配管36によりカチオン樹脂塔8に通水し、鉄イオン等をカチオン樹脂塔8内のカチオン樹脂に吸着させる準備をする。また、薬品投入口3から還元剤を配管32内に追加投入し、配管30および圧力容器20内の強制循環および自然対流によって均一な還元除染液を作る。この状態を保持することによって、圧力容器20内の鉄酸化物を溶解させ、クロム酸化物の溶解によって発生した金属イオンや還元除染液で溶解させた鉄イオンをカチオン樹脂塔8内のカチオン樹脂に吸着させて除去する。
【0043】
次に、STEP9では、弁V17、弁V18を「開」、弁V16を「閉」とし、配管30内の還元除染液を除染剤分解装置9に供給して、還元除染液を除染剤分解装置9で分解する。
【0044】
還元除染液の分解が終了したら、STEP10として、弁V13を「開」、弁V14、弁V15を「閉」としてカチオン樹脂塔8をバイパスし、弁V8、弁V9、弁V11、弁V12を「開」、弁V7、弁V10を「閉」として冷却器6および混床樹脂塔7に除染液を通水して浄化し、還元除染剤を除去する。
【0045】
前記のような除染運転を1サイクルとして、圧力容器20の汚染度合いに応じて2〜数サイクル程度STEP6〜10を繰り返し、圧力容器20内の線量レベルが十分に低下し、シュラウド交換や廃炉作業に支障がない水準になったら化学除染を終了する。
【0046】
このとき、構造物60に設けた放射線線量測定機器64で線量を測定し、その結果を基に除染の進行状況を確認し、繰り返すサイクル数を決定してもよい。これにより、状況に応じた適切な対応が可能となり、工期の短縮や不測の事態に対して柔軟に対応することが可能となる。
【0047】
本発明の除染装置および除染方法では、化学除染時に、圧力容器20内に、圧力容器20内部の水(除染液、純水)を減容する金属製の除染液減容用の構造物60を設置する。
これにより、圧力容器20内部の除染液の容量を減少させて、除染液減容用の構造物60の容積分だけ除染液を減容することで、使用する除染液の量を削減することができる。よって、比較的少ない除染液量で圧力容器20を除染することができ、準備する薬品の量を減らし、除染液の化学分解時間の短縮を図ることができる。そのうえ、金属製の構造物60に、種々の目的をもった機器、例えば圧力容器20の内壁に除染液を直接吹き付けるための除染液噴射装置61や、取扱いや点検、手入れの容易な電気ヒーター62、圧力容器20内部の放射線量を直接測定できる機器64を設置することが可能となり、除染効率向上、取扱い性の向上、除染状態をリアルタイムで把握する等の効果が得られる。
また、除染液噴射装置61を介して除染液を圧力容器20内壁へ吹き付けることにより、除染剤の使用量を減らしつつも、洗浄ムラが生じることがなく、高効率で圧力容器内面や諸炉内構造物の除染を行うことができる。
【0048】
(その他)
なお、上述した実施の形態においては、除染液減容用の構造物60は、有底円筒状である必要は必ずしもないが、取扱い上、中空の有底円筒状のほうが良い。
また、除染液噴射装置61は、管体61aと散液ノズル61bからなる構成に限定されず、除染液噴射装置61の取り付け位置も除染液減容用の構造物60のフランジ60aに限定されず、例えば、除染液減容用の構造物60の本体60aに固定してもよい。また、除染液噴射装置61の取り付け方法も、U字ボルト60dに限定されず、例えば溶接等によってもよい。また、除染液噴射装置61を構成する散液ノズル61bはこの例では平面視、管体61aの外周面に放射状に配置したが、管体61aの外周面のその接線方向に設けてもよい。この例によれば圧力容器20の内面に対する除染液の噴射面積が拡大し、その効率を高めることができる。
また化学除染では除染液を加熱する必要があるため、除染装置には加熱器は実質上必須であり、加熱器は、電気ヒーター62に限られず、例えばシェルヒーター等の加熱器を配管30の途中に設けてもよい。ここでシェル型ヒーターとは、シェルに大型の板フランジヒーターを差し込んだ液体加熱用のヒーターのことであり、直接加熱なので熱効率が良く、出口温度は、設計通りの温度を出すことができる、広範囲の用途をもつヒーターのことである。
更に、圧力容器20のバイパス配管31の通水後に圧力容器20に通水してバイパス配管31への通水を停止するとしているが、バイパス配管31に通水せずに、A循環ポンプ4およびB循環ポンプ5の運転開始から、圧力容器20に通水しても良い。
【0049】
本発明は沸騰水型原子炉にも加圧水型原子炉にも適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…薬品注入タンク、
3…薬品投入口、
4…A循環ポンプ、
5…B循環ポンプ、
6…冷却器、
7…混床樹脂塔、
8…カチオン樹脂塔、
9…除染剤分解装置、
20…圧力容器、
21…圧力容器底部ドレン配管、
30〜36…除染装置系統配管、
60…除染液減容用の構造物、
60a…本体、
60b…フランジ、
60c…ボルト挿入孔、
60d…U字ボルト、
60e…ナット、
61…除染液噴射装置、
61a…環状の管体、
61b…散液ノズル、
62…電気ヒーター、
63…本設ボルト、
63a…ナット、
64…放射線線量測定機器、
100…除染処理手段。
図1
図2
図3