【実施例1】
【0020】
図1は、画像コンテンツ表示システムの全体構成例を示す。
画像コンテンツ表示システムは主に、画像(静止画や動画を含む)や映像等のコンテンツ(以下単に画像という)から画像ファイルを作成して、その画像を印刷し表示する処理を行う画像処理装置1と、作成された画像ファイルの画像をスクリーン8に投影して表示するプロジェクタ装置181を備えて構成される。
画像処理装置1は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)やサーバのような情報処理装置であり、情報処理部(CPU)11、メモリ12、ハードディスクのような記憶部13、プリンタ14、入力器15、表示器16、及びプロジェクタ装置8への画像コンテンツを出力するプロジェクタ出力制御部171を有する。
【0021】
情報処理部11は本実施例に特徴的な処理を行う。即ち、アプリケーションプログラムを実行して、原画像を基にスクリーンを形成する背景画像のファイルを作成すると共に、投影すべき画像のファイル(単に画像ファイルという)を作成する。更に、背景画像をプリンタ14で印刷すると共に、作成された画像ファイルの画像をプロジェクタ装置18へ転送して、そこでスクリーン8に投影して表示する。このためにアプリケーションプログラムの実行によって実現される機能を、画像ファイル作成処理部1102、画像ファイル印刷処理部1103、画像ファイル表示処理部1104と言うことにする。
【0022】
画像ファイル作成処理部1102は主に、原画像から壁紙となる背景画像(処理過程ではステージ画像という)のファイルを作成する処理と、背景画像に対する投影画像の位置合わせのためのポジション画像のファイルを作成する処理と、プロジェクタ装置181からスクリーンに投影する画像ファイルの画像を作成する処理等の処理を行う。本実施例では、原画像そのものが背景画像を構成するものとする。(なお、これらの画像ファイルの作成処理の詳細については
図6のフローチャートを参照して後述する。)
画像ファイル印刷処理部1103は、
図2に示すような、背景画像(ステージ画像という)をプリンタ14で印刷するための処理を行う。その印刷物は壁紙として建物の壁に貼付され、スクリーン8を形成する。画像ファイル表示処理部1104は、指定された画像ファイルの画像を投影用の画像(単に投影画像という)としてプロジェクタ出力制御部171へ転送する。この特徴的な処理によって、壁紙で形成されたスクリーン8の背景画像上に、プロジェクタ装置181によって投影される投影画像が重畳して表示される。(なお、この表示処理の詳細についてはフローチャートを参照して後述する。)
メモリ12は、アプリケーションプログラム等のプログラムや実行処理中の種々のデータを一時的に格納する。記憶部13は例えばHDD(ハードディスクドライブ)であり、アプリケーションプログラム等のプログラムや、作成された画像ファイルや本実施例に特徴的な管理テーブル(後述する)を記憶する。
プリンタ14は、例えばインクジェット式のカラープリンタであり、作成された画像ファイルの一部、即ちスクリーンを形成する壁紙となる背景画像を印刷する。このプリンタは、インクジェットによって数メートル四方の用紙に印刷が可能である。
【0023】
入力器15は、キーボードやマウス、スキャナ等であり、画像処理装置1の起動や、画像コンテンツの作成、印刷及び表示の処理に際して作業者によって操作される。表示器16は、画像ファイルの作成及び表示の処理、更にステージ画像ファイルの画像をプリンタ14に出力する時に必要な画像ファイルの画像を表示し、またそのための操作の案内等を表示する。
【0024】
プロジェクタ出力制御部117は、画像ファイル表示処理部1103で処理された投影画像をプロジェクタ装置181へ転送する制御を行う。
プロジェクタ装置181は、通常使用されている光学的投影装置であり、数メートル四方のスクリーン8に投影画像を投影して表示する。スクリーン8は例えば建物や店の壁面に形成される投影用のスクリーンである。特徴的なこととして、プリンタ14で印刷された数メートル四方の壁紙が建物の壁に貼付されて形成されたスクリーン8に、プロジェクタ装置181から投影画像を投影する。これにより、スクリーン8としての壁紙の背景画像上に投影された投影画像が合成(重畳)して表示される。投影画像は画像ファイル表示処理部1104の制御によって変更することが可能であり、観賞者(通行人や店の来店者等)は、常時同じ状態の背景画像の壁紙と、その上に投影画像が合成された画像を楽しむことができる。
【0025】
図2は、背景画像と投影画像との合成の概要と示す。
図2において、(X)のステージ画像は、スクリーン8を形成する背景画像であり、ステージ画像ファイルの画像(単にステージ画像という)である。このステージ画像は、プリンタ14で印刷されて数メートル四方の画像の印刷物となり、建物等の壁に貼付されてスクリーン8を形成する。他の例として、プリンタ14から壁等のスクリーン8に直接インクジェット出力したもの、或いはプリンタ14で印刷された画像をスクリーン8に転写したものでもよい。更に他の例として、プリンタ14で印刷された画像と全く同一のものを、画家等によってスクリーンとなる壁面等に模写して施工したものでもよい。
【0026】
(Y)の投影画像は、プロジェクタ装置181からスクリーン8に対して投影される画像であり、この投影画像をシーン画像ということがある。シーン画像のファイルをシーンファイルということがある。投影画像は黒抜きとなっている背景画像以外の部分である。投影画像の作成は特徴的な処理ステップを有している。投影画像は複数レイヤーの画像の合成である。馬は3本ある中央の木の後ろ、リンゴは中央と右側の木の枝の中、家の手前には蜜蜂、標識には「GOOD」の文字等々、複数の画像の前後関係及び背景画像との前後関係を考慮してシーンファイルを作成することで、最終的に背景画像上に投影される投影画像は、背景画像又は他の投影画像に対して三次元的に見えるようになる。なお、これについては
図3以降を参照して詳述する。
【0027】
(Z)は、スクリーン8に形成される合成画像である。建物の壁等に施工された背景画像上に、プロジェクタ装置181から投影された投影画像が重畳して表示される。図示の例のように、表示された合成画像は、中央の木の後ろを馬が歩き、中央及び右側の木にはリンゴが生り、家の手前には蜜蜂が飛び、標識には「GOOD」と表示された合成画像となる。これらの画像はお互いに前後関係を保っているので、観賞者に立体的に見える。
【0028】
図3は、背景画像に対する投影画像の切り出し部分の関係を示す。
本実施例において、背景画像300に対して、投影画像はその一部分301が切り出される。即ち、表示器16の画面に背景画像を表示し、入力器15を操作して切り出し部分301を指定してその部分の画像を切り出す。切り出された一部分の画像はメモリ12に格納され、シーンファイルの作成の基となる。
プリンタ14で印刷される背景画像は画像全体であるが、背景画像から切り出された一部分(四角部分)301の画像に対して立体的に観賞できるように、それを基にシーンファイルが作成される。シーンファイルの画像(投影画像)は、プロジェクタ装置181により背景画像300上に投影される。
このように、背景画像全体ではなく、観賞者に立体的に見せる部分の画像を切り出して、その切り出された画像を基にシーンファイルを作成することは、その作成過程に使用されるメモリの容量を減らし、また画像ファイル作成処理部1102における画像処理時間を短縮する等の、負荷を軽減することができる。
【0029】
図4及び
図5は、ステージ画像及びシーン画像を構成する複数のレイヤーの画像を示す。
図4は各レイヤーの画像の重畳した状態を示し、
図5は複数のレイヤーのぞれぞれの画像を示す。
本実施例では、シーンファイルを作成するために、(イ)〜(ホ)の5つのレイヤーの画像を作成する。シーンファイルの作成過程で最背面には黒色のレイヤーを配置するので、最背面を入れると6つのレイヤーとなる。最背面の画像は、全ての背面に表示されるシーン画像のレイヤーである。
【0030】
図5を参照して、最背面以外の5つレイヤーの画像について説明する。
図示の例では、(イ)(ハ)(ホ)がシーンレイヤーを構成し、(ロ)と(ニ)がステージレイヤーを構成する。シーンレイヤー(イ)(ハ)(ホ)の画像(シーンレイヤー画像)は、雲や馬、蜜蜂等のように移動してその画像が変化するものであり、これらの画像を合成することでシーンファイルが作成される。
ステージレイヤー(ロ)(ニ)の画像(ステージレイヤー画像)は、一般的には家や木等の静止物であり、ステージ画像と同じ画像が含まれる。即ちステージレイヤー画像(ロ)(ニ)はステージ画像の一部を構成し、後述するように、背景画像と投影画像との位置合わせのために使用される。
【0031】
ここで、ステージレイヤーとして、(ロ)と(ニ)の2つのレイヤーに分けた理由は、これらのレイヤーの間に、(ハ)のシーンレイヤーの画像(馬の画像)を表示することで遠近感を持たせるためである。因みに、ステージレイヤー(ニ)の画像を作成しないで、この画像(ニ)をステージレイヤー(ロ)の画像に含めて1つのステージレイヤーの画像とすることも可能であるが、もしこのようにすると、シーンレイヤー(ハ)の馬の画像は、単に1つのステージレイヤー(ロ)の画像の上に表示されることになるので、遠近感は出せなくなる。
【0032】
一方、図示の例では、ステージレイヤーは、(ロ)と(ニ)の2つであるが、これに限らず、3つ以上とすることが可能である。例えば、ステージレイヤー(ロ)を更に分割して、家のみが表示されたレイヤー(ロ−1)、2本の木をそれぞれ別々に表示したレイヤー(ロ−2)(ロ−3)、更に後ろの山と大地を表示したレイヤー(ロ−4)の如く、構成することができる。この場合、それぞれのステージレイヤー(ロ−1)〜(ロ−4)の間に、シーンレイヤーを配置することが可能となる。例えば、シーンレイヤー(ホ)の画像を、蜜蜂の画像のレイヤーとリンゴの画像のレイヤーに分割して複数のシーンレイヤーを構成し、それら分割されたシーンレイヤーを各ステージレイヤー(ロ−1)〜(ロ−4)の間に挿入することが可能である。このようにすれば、最終的に背景画像と投影画像が合成された合成画像は一層立体的に見える。
【0033】
次に、
図7〜
図8を参照して、本実施例で使用される管理テーブルの構成について説明する。
図7は、レイヤー管理テーブルの構成を示す。
レイヤー管理テーブルは、画像ファイルを作成する過程で、ステージレイヤーやシーンレイヤー等の各レイヤーを管理するためのテーブルである。この管理テーブルは、画像コンテンツ識別名称と、レイヤー名、ステージレイヤー指定フラグ、シーンレイヤー指定フラグから構成される。なお、対応するレイヤーの画像は、記憶部13に記憶されている。
レイヤー名は、投影画像として切り出された画像について、分割されたレイヤーの数に応じて付与される。
図4の例の場合、レイヤー数は(イ)〜(ホ)の5つであり、レイヤー名(ロ)と(ニ)が、ステージレイヤーを構成するので、これらのステージレイヤーフラグは、「1」となっている。また、レイヤー名(イ)(ハ)(ホ)は、シーンレイヤーを構成するので、これらのフラグは、「1」となっている。
なお、レイヤーの数が増えた場合には、その数に応じて行数を増やして、レイヤー名やフラグ等を付与すればよい。
【0034】
図8は、コンテンツ管理テーブルの構成を示す。
コンテンツ管理テーブルは、ステージファイル、及び作成されたポジションファイル、シーンファイルを管理するためのテーブルである。コンテンツ管理テーブルは、画像コンテンツごとに、背景画像となるステージファイルを指定するステージファイル名、背景画像に対する投影画像の位置決めのためのポジションファイルを指定するポジションファイル名、及び投影画像となるシーンファイルを指定するシーンファイル名を登録する。
なお、対応するファイルの画像は、記憶部13に記憶されている。
【0035】
次に、
図6を参照して、ステージ画像ファイル及びシーン画像ファイルの作成処理動作について説明する。なお、
図9A〜
図9Cに示す、各レイヤーの画像の例も参照する。
この処理動作は、画像ファイル作成処理部1102の処理により実行される。
まず、作業者が入力器15を操作することにより、記憶部13に予め記憶された原画像が読み出され(S601)、その原画像は表示器16の画面に表示される。そして、作業者は入力器15を操作して、原画像からステージ画像(
図2(X))に対応する部分を切り出してステージ画像ファイルを作成する。なお、原画像全体をステージ画像としてもよい。作成されたステージ画像ファイルは、ステージ画像ファイル名「Pステージ」が付与されて、記憶部13に記憶される。また、ステージ画像ファイル名「Pステージ」はコンテンツ管理テーブルに登録される。
【0036】
次に、作業者は入力器15を操作して、ステージ画像のうち投影エリアとなる部分301を指定して、その部分の画像を切り出す。切り出された画像は一旦、記憶部13に記憶される(S602)。次に、作業者は入力器15を操作して、切り出された画像を基に複数のレイヤー(本例の場合5つのレイヤー)の画像を作成して、各レイヤーにレイヤー名(イ)〜(ホ)を付与する。各レイヤー名は、レイヤー管理テーブルのレイヤー名に登録される(S621)。また、5つの各レイヤーの画像は記憶部13に一旦記憶される(S602)。ここで、幾つのレイヤーを切り出すかは、ステージ画像中の静止している部分(静止部)と、動く部分(動部)、及び静止部を同じ画像面で表すか或いは異なる画像面で表すか、動部を同じ画像面で表すか或いは異なる画像面で表すか、を考慮して決める。本例の場合、蜜蜂や馬、雲などは動部として捉え(3つのレイヤー(イ)(ハ)(ホ))、一方、静止部を2つのレイヤーに分けて((ロ)と(ニ))、馬を(ロ)と(ニ)の間に表示して、立体的に見せることを狙っている。
【0037】
次に、作業者は入力器15を操作して、5つのレイヤーのうちからレイヤー(ロ)と(ニ)をステージレイヤーに指定して、レイヤー管理テーブルのステージレイヤーフラグに「1」書き込む(
S605,S622)。更に、
図9Aに示すように、ステージレイヤー(ロ)と(ニ)の画像をレンダリング処理(画素の集合の作成)して、ポジションファイルを作成する(
S606)。作成されたポジションファイルは記憶部13に記憶され
(S607)、またポジションファイルに付与されたポジションファイル名「Pポジション」はコンテンツ管理テーブルに登録される(
S608)。このポジションファイルの画像は、プロジェクタ装置181によって投影エリアに投影され、背景画像に対する投影画像の位置合わせのために使用される(
図11(P)参照して後述する)。
【0038】
次に、シーンファイルの作成に移る。
レイヤー管理テーブルのレイヤー(イ)(ハ)(ホ)をシーンレイヤーに指定し、それらのレイヤーに対応するシーンレイヤーフラグに「1」を書き込む(S608)。
図9Bに示すように、全てのレイヤーの画像を記憶部13から読み出して表示器16に表示し、最背面と同様にステージレイヤー(ロ)(ニ)の画像を黒く着色する(S609)。即ち、各ステージレイヤー(ロ)(ニ)の画像をその下のシーンレイヤーの画像のマスクとする。そして、
図9Cに示すように、黒に着色されたステージレイヤー(ロ)(ニ)とシーンレイヤー(イ)(ハ)(ホ)を、それらの上下関係の順番を保って重ね合わせてレンダリング処理して、シーンファイルを作成する(S610)。シーンファイルの画像は、ステージレイヤーの画像部分が黒抜きされ、シーンレイヤーの画像のみがカラーに着色された画像である。作成されたシーンファイルの画像は記憶部13に記憶される(S611)。また、このシーンファイルに付与されたシーンファイル名「Pシーン」をコンテンツ管理テーブルに登録する(S612)。
【0039】
このようにして、記憶部13には、作成されたステージファイル、ポジションファイル及びシーンファイルが記憶され、またコンテンツ管理テーブルには、これらファイルの名称が登録される。これにより、背景画像や投影画像、位置決めのためのポジション画像が用意された。
【0040】
次に、
図10を参照して、背景画像の印刷及び投影画像の投影動作について説明する。即ち、ステージファイルから背景画像を作成する処理(背景画像作成モード)、及びその後シーンファイルから投影画像を生成する処理(投影画像生成モード)の動作について説明する。
まず、背景画像作成モードにおいて、作業者は入力器15を操作して、コンテンツ管理テーブルのコンテンツ名及びステージ画像ファイル名を指定する(S101)。すると、記憶部13に記憶されたステージ画像が読み出されて、表示器16に表示される(S102)。
更に、入力器15を操作して印刷を指示すると、画像ファイル印刷処理部1103の処理に従い、ステージ画像ファイルの画像はプリンタ14へ転送して、そこでカラー印刷される(S103)。印刷された画像は壁紙となり、作業者によって建物の壁等に貼付されて、スクリーン8を形成する(
図11(X)参照)。
【0041】
次に、画像ファイル表示処理部1104による投影画像の生成モードの動作に移る。
まず、入力器15の操作により、コンテンツ管理テーブルのコンテンツ名及びポジションファイル名「Pポジション」が指定されると、記憶部13に記憶されたポジションファイルが読み出されて、その画像が表示器16に表示される(S121)。このポジションファイルの画像(ポジション画像という)は、プロジェクタ出力制御部171の制御の下、プロジェクタ装置181へ転送されて、スクリーン8に投影される(S122)。ポジション画像の投影エリアは、スクリーン8を形成する背景画像の内の、当初切り出されたステージ画像の部分301である。しかし、プロジェクタ装置8の傾きや投影方向等によって、ステージ画像の部分からずれている場合がある(
図11(Z´))。そこで、背景画像に対するポジション画像の投影位置、大きさ、傾き等を調整する(S123)。これは、作業者の操作によって、プロジェクタ装置8の投影位置や投影方向を動かして調整したり、ズーム調整によって投影するポジション画像の大きさを変えたり、更にはピント調整する等の操作により行われる。
【0042】
投影されるポジション画像とステージ画像との位置ずれ等が調整できたと、作業者が判断した場合、作業者が入力器15を操作して、コンテンツ管理テーブルのシーンファイル名「Pシーン」を指定すると、画像ファイル表示処理部1104は記憶部13からシーンファイルを読み出す(S124)。読みだされたシーンファイルはポジションファイルと入れ替えられて、シーン画像が表示器16に表示される(S125)。このシーン画像はプロジェクタ出力制御部171を介してプロジェクタ装置181へ転送される(S126)。プロジェクタ装置181は、背景画像に対して位置合わせが完了したステージ画像の部分に、シーン画像を投影する。
これにより、壁紙の背景画像にはステージ画像が、位置ずれなく重畳して投影され、両者の合成した画像(
図2(Z))が形成される。
【実施例2】
【0043】
この実施例は、実施例1を前提として、同じ場所に投影する投影画像となるシーンファイルを複数用意して、複数のシーンファイルを順次変更して(入れ替えて)、投影画像を変更する例である。
図12に示すように、時間帯が夜になった場合(例えばPM6時〜AM6時)、
図2の投影画像に対して、夜用の投影画像(Y)に切り替えて投影する例である。
【0044】
これを実現するために、情報処理部11はタイマ(ソフトウェアタイマ等)を備え、タイマが一定時刻を計時することにより又は一定時間間隔でシーンファイルを入れ替える。また実施例1に比べて、夜用のシーンファイルが追加され、さらに夜用のシーンファイルの作成のためにシーンレイヤーが増える。
【0045】
即ち、
図14のレイヤー管理テーブルに示すように、実施例1において、昼間のシーンファイルを作成した、シーンレイヤー(イ−1)(ハ−1)(ホ−1)に対して、夜用のシーンレイヤー(イ−2)(ハ−2)(ホ−2)が新たに用意され、コメント欄には変更条件を示す時間帯が記録される。夜用のシーンレイヤー(イ−2)は昼間の雲が星空に変わった画像、(ハ−2)は馬が居なくなった画像、(ホ−2)は蜜蜂が居なくなった画像、である。
【0046】
画像ファイル作成処理部1102は、これらのシーンレイヤー(イ−2)(ハ−2)(ホ−2)の画像をレンダリング処理して、
図12(Y)のようなシーンファイルの画像(投影画像)を作成する。作成されたシーンファイルは、記憶部13に記憶されると共に、
図15の画像コンテンツ管理テーブルに示すように、昼用のシーンファイル名「P1昼」に対して、夜用のシーンファイル名「P1夜」が付与されて登録される。
【0047】
次に、
図13を参照して、シーンファイルから投影画像を生成する処理動作について説明する。なお、背景画像の作成モード及びシーン画像の表示モードのうちの位置合わせのステップ(S123)までは、実施例1の
図10と同様であるので、説明を省略する。
投影画像の位置合わせが終了した後、画像ファイル表示処理部1104の処理の下、入力器15の操作により、コンテンツ管理テーブルのシーンファイル名「P1昼」が指定されると、画像ファイル表示処理部1104は記憶部13からシーンファイルを読み出す(S1301)。読みだされたシーンファイルはポジションファイルと入れ替えられる(S1302)。そして、タイマが昼(AM6〜PM6)か判定される(S1303)。判定の結果、昼の場合にはシーンファイル「P1昼」の画像が、プロジェクタ出力制御部171を介して、プロジェクタ装置181へ転送され(S1304)、プロジェクタ装置181は、背景画像に対して位置合わせが完了したステージ画像の部分に、シーン画像を投影する(S1305)。
【0048】
一方、タイマによる判定(S1303)の結果、夜の場合、シーンファイル「P1夜」の画像が記憶部13から読み出され、同様にして、プロジェクタ出力制御部171を介して、プロジェクタ装置181へ転送され(S1307)、背景画像に対して位置合わせが完了したステージ画像の部分に、シーン画像が投影される(S1305)。
以後、タイマの時間の経過と共に、シーンファイル「P1昼」とシーンファイル「P1夜」とが、記憶部13から交互に読み出されて、プロジェクタ装置181へ転送され、同様にして、背景画像上に投影される。
【0049】
実施例2はまた種々変形して実施し得る。
例えば、変更すべきシーンファイルを3つ以上(例えば4つのシーンファイル)用意しておき、午前8時から午後8時までの12時間に、一定時間間隔で(例えば4時間毎に)これらのシーンファイルを自動的に順次変更することが可能である。これにより例えば、午前8時に馬は餌を食べており、正午には木陰に寝そべり、午後4時には水を飲んでいるシーン、等々の画像を変更して表示することができる。
【0050】
また適用例として、例えば、スーパーやハンバーグチェーン店等のタイムサービスに適用することができる。即ち、店の壁には内装用又は広告宣伝用の壁紙(
図2のステージ画像に相当のもの)を貼付しておき、投影画像を構成する特定のシーンファイル(例えば特定のハンバーグと飲み物のセットの画像)を開店時から午後2時まで投影画像に含めて投影しておき、午後2時になったら別のタイムサービスに変更する旨の別のメニューのシーンファイルと自動的に入れ替えることができる。
【0051】
また、昼と夜で業態が異なるカフェバー等の壁紙とそれに画像を投影する場合に適用することができる。店の壁紙の画像は同じであるが、昼と夜で投影する一部の画像コンテンツを変更することで、店内の雰囲気を容易に変えることが可能である。
また他の適用例として、例えばイベント広場やアミューズメント施設への適用も可能である。例えば壁紙としてクリスマスツリーの画像を掲示しておき、ツリーの装飾物を夜間は点灯させるように、時刻の経過に応じてシーンファイルを適宜変更することで対応が可能である。
【実施例3】
【0052】
この実施例は、背景画像の複数の場所に対して複数のプロジェクタ装置よりそれぞれ投影画像を投影して、合成画像を形成する例である。
図16に、最終的に形成される画像1600と複数の投影エリアの関係を示す。合成画像1600には、2つの投影エリア1601,1602が設定される。投影エリア1601、1602に対して2台のプロジェクタ装置からそれぞれ独立的にシーン画像が投影される。投影エリア1601、1602は、シーンファイルやポジションファイルを作成するための画像切り出し部分となる。
【0053】
図17に示すように、背景画像1600´上を形成するステージ画像と、この背景画像1600´上に設定された投影エリア1601、1602(ポジション画像部分1601´、1602´)に投影される、シーン画像1701とシーン画像1702が作成される。ここで、投影エリア1601に対するシーン画像1701は実施例1と同様であるが、投影エリア1602に対するシーン画像1702は、池にアヒルがいる画像となる。
なお、シーン画像1701及び1702のファイルやそれらのポジションファイルの作成処理は実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
本実施例の場合、背景画像となる壁紙の作成は、共通のステージ画像(
図17(A))をプリンタ14で1回印刷するだけで済む。
【0054】
図18は画像コンテンツ表示システムの全体構成を示す。
この表示システムは、
図1の表示システムにおけるプロジェクタ出力制御部171及びプロジェクタ装置181に、更にプロジェクタ出力制御部172及びプロジェクタ装置182を追加して構成される。即ち、プロジェクタ装置181が投影エリア1601(P1ポジション)を投影し、プロジェクタ装置182が投影エリア1602(P2ポジション)を投影する。
【0055】
図19にコンテンツ管理テーブルの構成例を示す。
この例は、1つのステージ画像「Pステージ」に対して、2つの投影エリア1601,1602に対応して、「P1ポジション」と「P2ポジション」の2つのポジションファイルが用意される。この例は実施例2の発明も加味して、ポジションごとに昼用のシーンファイル「P1昼」「P2昼」と、夜用のシーンファイル「P1夜」「P2夜」がそれぞれ用意される。即ち、投影エリア1601と投影エリア1602の投影画像は、昼と夜でそれぞれ同じタイミング(12時間ごとに)で切り替えられることになる。
なお、実施例2の発明を加味しなければ、夜用のシーンファイル「P1夜」及び「P2夜」を不要とすればよい。
【0056】
次に、
図20を参照して、背景画像の作成処理及び投影画像の生成処理動作について説明する。
共通の背景画像1600´の作成処理(S101〜S103)は実施例1(
図10)における処理動作と同様である。
また、プロジェクタ装置181に対する、ポジションファイル「P1ポジション」の作成(S121−1)からシーン画像「P1昼」の投影エリア1601への投影動作(S127−1)も実施例1(
図10)における処理動作と同様である。
更に、プロジェクタ装置182に対する、ポジションファイル「P2ポジション」の作成(S121−2)からシーン画像「P2昼」の投影エリア1602への投影動作(S127−2)も、実施例1(
図10)における処理動作(或いはプロジェクタ装置181に対する処理動作)と同様である。
以上のように、実施例3によれば、スクリーンとして共通に印刷された背景画像上に、複数の投影画像をそれぞれ独立的に投影して、合成画像を表示することが可能となる。
【0057】
なお、実施例3も種々変形して実施し得る。
例えば、実施例2を併せて適用して、投影エリア1601のシーンの画像の変更と、投影エリア1602のシーンの画像の変更をそれぞれ別々のタイミングで行うこともできる。これは、
図19のコンテンツ管理テーブルの変更条件を適宜変えることで、実施例2に即して実施できる。
【0059】
更に他の例として、スクリーン8は平面である必要はない。例えば直角のコーナーを有する壁に、ステージ画像を印刷した壁紙を真ん中で折り曲げて直角のコーナーに貼付することで容易に実現できる。この場合、投影エリア601に投影するプロジェクタ装置181と、投影エリア1602に投影するプロジェクタ装置182はそれぞれ別々の方向から対象とする投影エリアへ画像等を投影することになる。
【0060】
更に他の例として、スクリーン8は立体形状の柱や、表裏を有する展示物や造形物に形成することも可能である。また、投影するプロジェクタ装置の数も2台に限らず、3台以上設置することができる。この場合、シーンファイルやポジションファイルの作成処理、及び画像表示処理等の機能もそれぞれの投影エリアの数に応じて増やす。例えば、一辺が数メートルの大きな四角の柱の各辺に、それぞれ投影エリア(4つの投影エリア)を設定するように、四角の柱を背景画像の壁紙で包囲し、更に四角の柱の各辺に対応してプロジェクタ装置(4台のプロジェクタ装置)を設置する。各投影エリアに対応するプロジェクタ装置からそれぞれ固有のシーン画像を投影することにより、四角の柱の周囲に投影画像を合成することが可能である。
【0061】
以上、本発明の実施例1〜3について説明したが、本発明は更にいろいろと変形し、応用して実施し得る。
上記実施例では、原画像を基に背景画像及び投影画像のファイルを作成するとした。即ち、原画像から投影画像を作成するための画像を切り出し、その切り出した画像を複数のレイヤーに分割して、ステージレイヤー及びシーンレイヤーを作成している。しかし、これに限らない。他の例によれば、ステージ画像及びポジション画像は第1の原画像を基に作成し、シーン画像は別の原画像(第2乃至第nの原画像)を基に、ステージ画像に設定された投影エリアに合うように作成することができる。この場合、作成者は、任意の複数の画像を寄せ集めて、それら画像の上下関係を考慮してシーンレイヤーを作成し、作成されたシーンレイヤーを重畳してシーン画像のファイルを作成することができる。
【0062】
更に、背景画像と投影画像のファイルの作成に関して、実施例1と上記例を折衷した例が可能である。即ち、実施例1のように原画像を基にしてステージレイヤー及びシーンレイヤー(第1種のシーンレイヤー)を作成し、更に他の原画像を基に第2種のシーンレイヤーを作成して、この第2種のシーンレイヤーと第1種のシーンレイヤーの上下関係を考慮して両者のシーンレイヤーを重畳させてシーン画像のファイルを作成することができる。例えば、
図4乃至
図5に示すように、シーンレイヤー(イ)〜(ホ)を作成した後に、更に他の原画像を用いて、シーンレイヤー(イ)の上に、鳥が飛んでいる画像のシーンレイヤー(ヘ)を追加し、更にシーンレイヤー(ホ)とステージレイヤー(ニ)の間に、蝶が飛んでいる画像のシーンレイヤー(ト)を追加して、これらの全てのシーンレイヤーを含んだシーン画像を作成することができる。
【0064】
また、上記実施例では、画像処理装置1は、例えばPCやサーバ等のコンピュータで実現されるとした。他の例として、画像処理装置1における画像ファイル作成処理と、作成された画像ファイルの印刷処理及び表示処理を別に行うことが可能である。例えば、画像ファイル作成処理及び印刷処理は、上記実施例と同様にPCやサーバ等のコンピュータで実現し、画像ファイルの表示処理はDVD装置を用いて実現することが可能である。この場合、DVD装置はプロジェクタ装置を接続するプロジェクタ出力制御部171を備えていることが前提である。作成されたステージ画像ファイル、ポジションファイル及び1又は複数のシーン画像ファイルを記憶した光ディスクをDVD装置にセットして表示操作することで、スクリーンに投影、表示することが可能である。
なお、背景画像を生成する印刷処理は、画像ファイルを作成したPC等で行う必要はなく、別のプリンタを用いて行うことも可能である。
【0065】
更に他の適用例として、画像処理装置1とプロジェクタ装置181は位置的に必ずしも近くに設置することを要しない。例えば、画像処理装置1とプロジェクタ装置181(上記変形例で言えばDVD装置)を、インタネット等のネットワークを介して接続した画像等表示システムとして実現することができる。この場合、画像処理装置1とプロジェクタ装置181(上記変形例で言えばDVD装置)は、画像ファイルを送受信する通信機能を有し、各装置はIPアドレス等を有することが必要である。
【0066】
また、1台の画像処理装置1に、ネットワークを介して複数のDVD装置やコンピュータを接続し、これらのDVD装置やコンピュータに接続されたプロジェクタ装置を用いて画像等をスクリーンに投影することも可能である。例えば、本店又はセンターに画像処理装置1を設置して、複数の支店の壁には同じ背景画像からなる壁紙を貼付しておき、本店の画像処理装置から支店のDVD装置やコンピュータに定期的にシーンファイルを配信して、複数の各プロジェクタ装置から同じ画像をスクリーンに投影することが可能である。
【0067】
更に他の例によれば、画像処理装置1から全ての支店のDVD装置等に同じシーンファイルを配信することを要しない。複数の支店ごとに別々のシーンファイルを配信するようにしてもよい。例えば、複数の支店のうちある支店のDVD装置等には画像処理装置1から風景Pに関する「Pシーン」のシーンファイル(
図8参照)を配信し、他の支店のDVD装置等には風景Qに関する「Qシーン」のシーンファイルを配するようにしてもよい。