(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、刈取部によって刈り取られた穀稈等をフィードチェーンに供給して脱穀処理する作業行う場合、作業者あるいは運転者は、フィードチェーンの回転速度を作業状態に適した回転速度に減速することが必要である。しかしながら、特許文献1に記載のコンバインでは、エンジンの動力がカウンタケースを経由して、フィードチェーンの他に、刈取部、選別部及び排藁処理部等にも伝達可能とされているため、フィードチェーンの回転速度だけを変速することができない。したがって、作業者あるいは運転者にとっては、フィードチェーンの回転速度を作業状態に適した回転速度に減速することが容易でない。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、作業者あるいは運転者にとって、フィードチェーンの回転速度を作業状態に適した回転速度に容易に減速することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、穀稈を搬送するフィードチェーンと、前記フィードチェーンに動力を伝達する駆動ユニットと、を備え、前記駆動ユニットは、動力が入力される入力軸と、動力を出力する出力軸と
、前記入力軸と前記出力軸との間で動力を変速する変速機構と、前記入力軸及び前記出力軸を回転自在に支持するとともに、前記変速機構を収容する駆動ケースと
、前記出力軸のうち前記駆動ケースから機体外側に突出する部分に設けられ、前記フィードチェーンが巻き付けられる駆動スプロケットと、前記入力軸のうち前記駆動ケースから前記機体外側に突出する部分に前記駆動スプロケットよりも機体内側に位置する状態で設けられ、動力伝達用の無端体が巻き付けられる入力回転体と、前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記駆動ケースに回転自在に支持される中継軸と、前記出力軸に設けられ、前記中継軸からの動力を前記出力軸を介して前記駆動スプロケットに伝達する状態と伝達しない状態とに切り替えるクラッチと、を備え
、前記変速機構は、前記入力軸の動力を前記中継軸に低速で伝達可能な低速ギヤ列と、前記入力軸の動力を前記中継軸に高速で伝達可能な高速ギヤ列と、前記中継軸の動力を前記出力軸に伝達可能な最終ギヤ列と、前記入力軸において前記低速ギヤ列と前記高速ギヤ列との間に設けられ、前記入力軸の動力を前記低速ギヤ列を介して前記中継軸に伝達する状態と前記入力軸の動力を前記高速ギヤ列を介して前記中継軸に伝達する状態とに切り替える切替え機構と、を備え、前記最終ギヤ列は、前記低速ギヤ列と前記高速ギヤ列との間において、前記低速ギヤ列及び前記高速ギヤ列のうちの前記駆動スプロケットとは反対側に位置する側に片寄った状態で配置され、前記クラッチは、前記駆動ケースのうち前記駆動スプロケット側の部分と前記最終ギヤ列との間に配置されている、ことにある。
【0007】
本特徴構成によると、フィードチェーン専用の駆動ユニットによって、フィードチェーンの回転速度だけが変速される。したがって、扱胴や選別部を適切な作動速度に維持して、脱穀性能及び選別性能を維持しながら、フィードチェーンの回転速度を作業状態に適した回転速度に容易に減速することができる。
また、入力軸から出力軸への動力が、クラッチによって必要に応じて伝達又は遮断されるため、駆動ユニットの利便性を向上させることができる。
また、入力軸と出力軸との間に中継軸が設けられることにより、駆動ユニットにおける軸間距離(入力軸と中間軸との軸間距離、中間軸と出力軸との軸間距離)が短くなる。したがって、各ギヤ列を構成するギヤの小型化が可能になるため、駆動ユニットをコンパクトに構成することができる。
また、最終ギヤ列が低速ギヤ列と高速ギヤ列との間に収まるため、駆動ユニットをコンパクトに構成することができる。
また、駆動ユニットがフィードチェーンから機体外側に突出しないため、駆動ユニットをコンパクトに配置することができる。
また、入力回転体が駆動スプロケットよりも機体外側に突出しないため、駆動ユニットをコンパクトに配置することができる。
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記中継軸のうち前記機体外側の端が、前記入力回転体よりも前記機体内側に位置している、ことにある。
【0008】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記駆動ユニットは、前記フィードチェーンの搬送始端側に配置されている、ことにある。
【0009】
本特徴構成によると、フィードチェーンの搬送始端側に、駆動ユニットが位置する。したがって、運転者あるいはフィードチェーンの搬送始端側付近に立って作業している作業者の近傍に、駆動ユニットが配置されているため、駆動ユニットを容易に取り扱うことができる。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記最終ギヤ列は、前記中継軸に設けられる最終駆動ギヤと、前記出力軸に設けられ、前記最終駆動ギヤと噛み合う最終従動ギヤと、を備える、ことにある。
【0015】
本特徴構成によると、最終駆動ギヤと最終従動ギヤとが直接的に噛み合うため、中継軸の動力を出力軸にロスなく伝達することができる。
【0016】
【0017】
【0018】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記最終従動ギヤは、前記出力軸に相対回転可能に設けられ、前記出力軸には、一体回転可能かつ摺動可能に伝達部材が設けられ、クラッチは、前記最終従動ギヤと前記伝達部材との間に設けられ、前記クラッチが動力伝達状態になることにより、前記最終従動ギヤに伝達された前記最終駆動ギヤの動力が、前記伝達部材を介して前記出力軸に伝達されるように構成されている、ことにある。
【0019】
本特徴構成によると、伝達部材による簡易な構成でクラッチが構成されるため、クラッチについて構造の簡素化を図ることができる。
【0020】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記駆動ユニットは、前記変速機構を変速操作する変速操作部を備える、ことにある。
【0021】
本特徴構成によると、変速操作部による変速操作に応じて、動力が変速機構で変速されるため、フィードチェーンの回転速度を作業状態に適した回転速度に容易に減速することができる。
【0022】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記変速操作部は、前記駆動ケースにおける前記フィードチェーンの搬送始端側に配置されている、ことにある。
【0023】
本特徴構成によると、フィードチェーンの搬送始端側に、変速操作部が位置する。したがって、運転者あるいはフィードチェーンの搬送始端側付近に立って作業している作業者の近傍に、駆動ユニットが配置されているため、変速操作部を容易に取り扱うことができる。
【0024】
本発明に係るコンバインの更なる特徴構成は、前記変速機構には、中立位置が備えられている、ことにある。
【0025】
本特徴構成によると、変速機構を中立位置にするだけで、出力軸への動力が遮断されるため、駆動ユニットの利便性を向上させることができる。例えば、変速機構を中立位置にすることにより、フィードチェーンを空転させて、容易にメンテナンスをすることができる。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0032】
先ず、コンバインの全体構成について、
図1により説明する。
【0033】
図1に示すように、コンバインにおいて、機体の下部には、機体を走行させるクローラ式の走行部1が備えられている。そして、機体の前部には、穀稈を刈り取って搬送する刈取部2が備えられている。刈取部2は、機体左右方向の揺動軸Pを支点にして上下方向に揺動可能に構成されている。また、機体の左側部には、穀稈を脱穀する脱穀部3が備えられている。脱穀部3の左側部には、穀稈を搬送するフィードチェーン4が備えられている。そして、脱穀部3の下側には、脱穀処理物を選別する選別部5が備えられている。そして、脱穀部3の後側には、排藁等の脱穀処理物を機外へ排出する排藁処理部6が備えられている。排藁処理部6には、排藁を搬送する排藁チェーン7及び穂先チェーン8が備えられている。そして、排藁処理部6には、排藁を切断するカッタ9及びカッタ10が備えられている。そして、排藁処理部6には、排藁を拡散させる拡散装置11が備えられている。また、機体の右側部には、選別後の穀粒を貯留するグレンタンク12が備えられている。グレンタンク12の前方には、オペレータが搭乗する運転部13が備えられている。運転部13には、オペレータが着座する運転席14が備えられている。運転部13の下方には、動力源となるエンジン15が備えられている。
【0034】
次に、脱穀部3及び選別部5について、
図2により説明する。
【0035】
図2に示すように、脱穀部3は、穀稈を搬送するフィードチェーン4と、穀稈を脱穀する扱胴16と、脱穀処理物を漏下選別する受網17と、脱穀処理物から穀粒を分離させる分離ドラム18と、塵埃を機外に排出する排塵ファン19と、を備えている。
【0036】
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置20と、主唐箕21と、副唐箕22と、二番唐箕23と、一番回収部24と、二番回収部25と、を備えている。
【0037】
揺動選別装置20は、受網17から漏下した脱穀処理物を後方に移送しながら選別する。揺動選別装置20は、シーブケース26と、グレンパン27と、チャフシーブ28と、ストローラック29と、グレンシーブ30と、を備えている。
【0038】
シーブケース26は、偏心カム式の揺動機構31によって前後揺動するように構成されている。シーブケース26の上部側には、前方から順にグレンパン27、チャフシーブ28及びストローラック29が設けられているとともに、シーブケース26の下部側には、グレンシーブ30が設けられている。
【0039】
グレンパン27は、シーブケース26とともに前後揺動することで、受網17からの脱穀処理物を比重差選別し、比重の小さい藁屑等の塵埃と比重の大きい穀粒とに上下に層分けしながら、後方のチャフシーブ28に移送するように構成されている。
【0040】
チャフシーブ28は、機体前後方向に所定間隔をあけて整列された複数のチャフリップ板28aを備えている。チャフシーブ28は、シーブケース26とともに前後揺動することで、受網17及びグレンパン27からの脱穀処理物を篩い選別し、穀粒等をチャフリップ板28aの間から漏下させながら、チャフリップ板28aの間から漏下しなかった脱穀処理物を後方のストローラック29に移送するように構成されている。
【0041】
ストローラック29は、機体左右方向に所定間隔をあけて整列された複数のラック板29aを備えている。ストローラック29は、シーブケース26とともに前後揺動することで、穀粒等をラック板29aの間から漏下させながら、ラック板29aの間から漏下しなかった藁屑等を後端部から落下させるように構成されている。
【0042】
グレンシーブ30は、シーブケース26とともに前後揺動することで、チャフシーブ28からの穀粒等を篩い選別し、単粒化穀粒を一番物として漏下させながら、漏下しなかった枝梗付き穀粒等を二番物として藁屑等とともに後端部から落下させるように構成されている。
【0043】
主唐箕21は、脱穀処理物を選別するための選別風を揺動選別装置20の下部に供給する。副唐箕21は、脱穀処理物を選別するための選別風を揺動選別装置20の上部に供給する。二番唐箕23は、脱穀処理物を選別するための選別風を揺動選別装置20の後部に供給する。
【0044】
一番回収部24は、揺動選別装置20の前部側から漏下して選別風を受けながら落下する単粒化穀粒を一番物として回収する。一番回収部24は、一番物の穀粒を横方向(右方向)に搬送する一番スクリュ32と、一番物の穀粒を一番スクリュ32から受け継いで縦方向(上方向)に搬送する一番縦スクリュ33と、を備えている。一番回収部24は、一番物の穀粒を一番スクリュ32によって右方向に搬送し、一番スクリュ32から受け継いだ一番物の穀粒を一番縦スクリュ33によって上方向に搬送してグレンタンク12に貯留させるように構成されている。
【0045】
二番回収部25は、揺動選別装置20の後部側から漏下して選別風を受けながら落下する枝梗付き穀粒等を二番物として回収する。二番回収部25は、二番物の穀粒を横方向(右方向)に搬送する二番スクリュ34と、二番物の穀粒を二番スクリュ34から受け継いで縦方向(上方向)に搬送する二番縦スクリュ35と、を備えている。二番回収部25は、二番物の穀粒を二番スクリュウ34によって右方向に搬送し、二番スクリュウ34から受け継いだ二番物の穀粒を二番縦スクリュ35によって上方向に搬送して揺動選別装置20に還元するように構成されている。
【0046】
次に、コンバインにおける動力伝達経路について、
図3により説明する。
【0047】
図3に示すように、エンジン15の出力軸15aの動力は、ベルト伝達機構36によって、カウンタ軸37に伝達される。カウンタ軸37の動力は、ベルト伝達機構38によって、駆動ユニット39の入力軸40に伝達される。
【0048】
ベルト伝達機構38は、カウンタ軸37の動力を入力軸40に伝達する。ベルト伝達機構38は、入力軸40に設けられた「入力回転体」としての入力プーリ41と、カウンタ軸37に設けられたカウンタプーリ42と、入力プーリ41及びカウンタプーリ42に巻き付けられた動力伝達用の「無端体」としてのベルト43と、を備えている。なお、詳細については後述するが、駆動ユニット39の出力軸44の動力は、駆動スプロケット45によって、フィードチェーン4に伝達される。
【0049】
また、カウンタ軸37の動力は、ベベルギヤ伝達機構46によって、伝達軸47に伝達される。伝達軸47の動力は、ベルト伝達機構48によって、扱胴16の回転軸16a及び伝達軸49に伝達される。伝達軸49の動力は、ベルト伝達機構50によって、伝達軸51に伝達される。伝達軸51の動力は、ベベルギヤ伝達機構52によって、伝達軸53に伝達される。伝達軸53の動力は、チェーン伝達機構54によって、排藁チェーン7及び穂先チェーン8の回転軸55に伝達される。
【0050】
さらに、カウンタ軸37の動力は、ギヤ伝達機構56によって、伝達軸57に伝達される。伝達軸57の動力は、ベルト伝達機構58によって、主唐箕21の回転軸21a及び副唐箕22の回転軸22aに伝達される。また、伝達軸57の動力は、ベルト伝達機構59によって、一番スクリュ32の回転軸32aに伝達される。一番スクリュ32の回転軸32aの動力は、ベベルギヤ伝達機構60によって、一番縦スクリュ33の回転軸33aに伝達される。また、一番スクリュ32の回転軸32aの動力は、ベルト伝達機構61によって、分離ドラム18の回転軸18a、二番スクリュ34の回転軸34a、二番唐箕23の回転軸23a、伝達軸62及び伝達軸63に伝達される。
【0051】
また、二番スクリュ34の回転軸34aの動力は、チェーン伝達機構64によって、伝達軸65に伝達される。伝達軸65の動力は、ベベルギヤ伝達機構66によって、二番縦スクリュ35の回転軸35aに伝達される。
【0052】
また、伝達軸62の動力は、ベルト伝達機構67によって、揺動機構31の揺動軸31aに伝達される。
【0053】
また、伝達軸63の動力は、ギヤ伝達機構68によって、排塵ファン19の回転軸19aに伝達される。さらに、伝達軸63の動力は、ベルト伝達機構69によって、カッタ9の回転軸9aに伝達される。カッタ9の回転軸9aの動力は、チェーン伝達機構70によって、伝達軸71に伝達される。伝達軸71の動力は、ギヤ伝達機構72によって、カッタ10の回転軸10aに伝達される。また、カッタ9の回転軸9aの動力は、ベルト伝達機構73によって、拡散装置11の回転軸11aに伝達される。
【0054】
次に、フィードチェーン4及び駆動ユニット39について、
図4及び
図5により説明する。
【0055】
図4に示すように、フィードチェーン4は、駆動スプロケット45、搬送始端側(前端側)に配置された前従動スプロケット74、搬送終端側(後端側)に配置された後従動スプロケット75(
図2参照)、及びテンションローラ76に巻き付けられている。なお、以下の説明では、
図2に示すように、フィードチェーン4の搬送経路のうち、前従動スプロケット74と後従動スプロケット75とを結ぶ直線L1よりも下側となる搬送経路のことを、「下側搬送経路」として説明する。
【0056】
図4に示すように、フィードチェーン4の下側搬送経路には、フィードチェーン4を案内するガイドレール77が設けられている。ガイドレール77は、フィードチェーン4の搬送方向において搬送始端側(前端側)に配置されている。ガイドレール77は、フィードチェーン4の下側からフィードチェーン4の外周部に接触している。
【0057】
テンションローラ76は、フィードチェーン4に緊張力を付与する。テンションローラ76は、駆動スプロケット45の下方に配置されている。テンションローラ76は、フィードチェーン4の下側搬送経路に対して、フィードチェーン4の上側からフィードチェーン4の内周部に接触している。テンションローラ76は、テンションアーム78の一端部に回転自在に支持されている。
【0058】
テンションアーム78は、一端部にテンションローラ76を回転自在に支持する。テンションアーム78の他端部は、出力軸44に揺動可能に支持されている。テンションアーム78は、図示しないバネによって、反時計回り方向に揺動するように付勢されている。
【0059】
図4及び
図5に示すように、駆動ユニット39は、フィードチェーン4に動力を伝達する。駆動ユニット39には、エンジン15の動力がカウンタ軸37を介して伝達される。駆動ユニット39は、フィードチェーン4の搬送始端側(前端側)に配置されている。駆動ユニット39は、入力軸40と、出力軸44と、駆動スプロケット45と、変速機構79と、駆動ケース80と、クラッチ81と、中継軸82と、変速操作部83と、を備えている。
【0060】
ここで、側面視において、入力軸40と、出力軸44と、カウンタ軸37とを結ぶ線L
2は、三角形状に構成されている。カウンタ軸37は、出力軸44及び入力軸40の下方に配置されている。カウンタ軸37の動力を入力軸40に伝達するベルト伝達機構38は、上下方向に延びるように構成されている。また、出力軸44は、カウンタ軸37の後方に配置されているとともに、入力軸40の後方に配置されている。
【0061】
図5に示すように、入力軸40は、エンジン15からカウンタ軸37を経由してきた動力が入力される。入力軸40は、駆動ケース80に左軸受84及び右軸受85を介して回転自在に支持されている。入力軸40の左端側は、駆動ケース80の左側面から左方に突出している。入力軸40の左端側には、入力プーリ41が設けられている。入力プーリ41には、ベルト43が巻き付けられている。入力プーリ41は、駆動スプロケット45よりも機体内側(駆動スプロケット45の右方)に配置されている。
【0062】
出力軸44は、入力軸40から入力された動力をフィードチェーン4に出力する。出力軸44は、駆動ケース80に左軸受86及び右軸受87を介して回転自在に支持されている。出力軸44の左端側は、駆動ケース80の左側面から左方に突出している。出力軸44の左端側には、駆動スプロケット45が設けられている。また、出力軸44には、一体回転可能かつ摺動可能に「伝達部材」としての伝達軸88が設けられている。伝達軸88は、出力軸44の外側にスプライン嵌合される中空状の部材である。
【0063】
駆動スプロケット45は、出力軸44の左端側に設けられている。駆動スプロケット45には、フィードチェーン4が巻き付けられている。駆動スプロケット45は、フィードチェーン4の下側搬送経路に対して、フィードチェーン4の下側からフィードチェーン4の外周部に接触している。(
図4参照)
【0064】
駆動ケース80は、入力軸40、出力軸44及び中継軸82を回転自在に支持するとともに、変速機構79を収容する。駆動ケース80は、フィードチェーン4よりも機体内側(フィードチェーン4の右方)に配置されている。駆動ケース80は、機体左右方向に二分割された半割りケースが合わせられて構成されている。駆動ケース80の左側面には、出力軸44の左軸受86を収容する軸受ケース89が、ボルト90で固定されている。軸受ケース89と伝達軸88との間には、ブレーキ装置91が設けられている。
【0065】
中継軸82は、入力軸40と出力軸44との間に設けられている。中継軸82は、駆動ケース80に左軸受92及び右軸受93を介して回転自在に支持されている。
【0066】
変速機構79は、入力軸40と出力軸44との間で動力を変速する。変速機構79には、低速位置L、高速位置H及び中立位置Nが備えられている。変速機構79は、入力軸40の動力を中継軸82に低速で伝達する低速ギヤ列94と、入力軸40の動力を中継軸82に高速で伝達する高速ギヤ列95と、中継軸82の動力を出力軸44に伝達する最終ギヤ列96と、を備えている。低速ギヤ列94と高速ギヤ列95とは、最終ギヤ列96を挟んで機体左右方向に振り分けて配置されている。つまり、最終ギヤ列96を挟んで、左側に高速ギヤ列95が配置されているとともに、右側に低速ギヤ列94が配置されている。
【0067】
低速ギヤ列94は、入力軸40に設けられる低速駆動ギヤ97と、中継軸82に設けられ、低速駆動ギヤ97と噛み合う低速従動ギヤ98と、を備えている。低速駆動ギヤ97は、入力軸40に相対回転可能に設けられている。低速従動ギヤ98は、中継軸82に一体回転可能に設けられている。
【0068】
高速ギヤ列95は、入力軸40に設けられる高速駆動ギヤ99と、中継軸82に設けられ、高速駆動ギヤ99と噛み合う高速従動ギヤ100と、を備えている。高速駆動ギヤ99は、入力軸40に相対回転可能に設けられている。高速従動ギヤ100は、中継軸82に一体回転可能に設けられている。
【0069】
最終ギヤ列96は、中継軸82の動力を減速して出力軸44に伝達する。最終ギヤ列96は、中継軸82に設けられる最終駆動ギヤ101と、出力軸44に設けられ、最終駆動ギヤ101と噛み合う最終従動ギヤ102と、を備えている。最終駆動ギヤ101は、中継軸82に一体回転可能に設けられている。最終駆動ギヤ101は、中継軸82における低速ギヤ列94(低速従動ギヤ98)と高速ギヤ列95(高速従動ギヤ100)との間に配置されている。最終従動ギヤ102は、出力軸44に相対回転可能に設けられている。
【0070】
変速操作部83は、変速機構79を変速操作する。つまり、変速操作部83は、変速機構79を低速位置L、高速位置H及び中立位置Nのうちのいずれかに切り替えるように変速操作する。変速操作部83は、駆動ケース80におけるフィードチェーンの搬送始端側(駆動ケース80の前端側)に配置されている。変速操作部83は、入力軸40に一体回転可能かつ摺動可能に設けられ、低速駆動ギヤ97及び高速駆動ギヤ99と嵌合可能なシフタ103と、駆動ケース80に支持されるフォーク軸104と、フォーク軸104に摺動可能に設けられ、シフタ103に連結されるシフタフォーク105と、シフタフォーク105を摺動操作する操作具106と、フォーク軸104の軸方向における所定の位置(低速位置L、高速位置H及び中立位置N)にシフタフォーク105を位置決め可能な位置決め機構107と、を備えている。
【0071】
操作具106は、平面視において駆動ケース80から機体内側(右方)に突出するように設けられている。操作具106は、機体前後方向の揺動軸106aを介して、駆動ケース80の前壁に揺動自在に支持されている。揺動軸106aにおける駆動ケース80内の端部には、シフタフォーク105に連結される連結部106bが設けられている。
【0072】
位置決め機構107は、フォーク軸104に形成された係合溝列108と、係合溝列108と係合可能な係合ボール109と、係合ボール109を係合溝列108に係合させるように付勢するバネ110と、を備えている。係合溝列108は、低速係合溝108aと、中立係合溝108bと、高速係合溝108cと、を備えている。
【0073】
クラッチ81は、入力軸40と出力軸44との間で動力を伝達又は遮断する。クラッチ81は、最終従動ギヤ102と伝達軸88との間に設けられている。なお、詳細については後述するが、クラッチ81が動力伝達状態になることにより、最終従動ギヤ102に伝達された最終駆動ギヤ101の動力が、伝達軸88を介して出力軸44に伝達される。クラッチ81は、本実施形態では、噛み合いクラッチによって構成されている。クラッチ81は、最終従動ギヤ102の左側面に形成された爪部102aと、伝達軸88の右端面に形成され、最終従動ギヤ102の爪部102aと噛合可能な爪部88aと、を備えている。
【0074】
このような構成により、伝達軸88が最終従動ギヤ102側(右方)に摺動して、伝達軸88の爪部88aと最終従動ギヤ102の爪部102aとが噛み合うと、クラッチ81が動力伝達状態になる。そして、クラッチ81が動力伝達状態になることにより、最終従動ギヤ102に伝達された最終駆動ギヤ101の動力が、伝達軸88を介して出力軸44に伝達される。
【0075】
一方、伝達軸88が最終従動ギヤ102とは反対側(左方)に摺動して、伝達軸88の爪部88aと最終従動ギヤ102の爪部102aとの噛み合いが解除されると、クラッチ81が動力遮断状態になる。そして、クラッチ81が動力遮断状態になることにより、最終従動ギヤ102に伝達された最終駆動ギヤ101の動力が、伝達軸88を介して出力軸44に伝達されない。また、刈取部2が上昇する(刈取部2が揺動軸Pを支点にして上方向に揺動する)と、つまり、刈取部2への動力が遮断されて刈取部2が停止すると、クラッチ81が動力遮断状態となってブレーキ装置91が作動する。
【0076】
次に、駆動ユニット39における動力伝達経路について、
図5により説明する。
【0077】
図5に示すように、変速機構79について、操作具106でシフタフォーク105がフォーク軸104の軸方向に摺動操作されて、係合ボール109と低速係合溝108aとが係合すると、変速機構79は、低速位置Lに切り替わる。そして、係合ボール109と高速係合溝108cとが係合すると、変速機構79は、高速位置Hに切り替わる。そして、係合ボール109と中立係合溝108bとが係合すると、変速機構79は、中立位置Nに切り替わる。
【0078】
先ず、変速機構79が低速位置Lに切り替えられた場合は、シフタ103が低速駆動ギヤ97側(右方)に摺動して低速駆動ギヤ97と嵌合する。これにより、低速駆動ギヤ97が入力軸40と一体回転可能となる。こうして、低速ギヤ列94が動力伝達状態になる。なお、変速機構79が低速位置Lに切り替えられた場合は、シフタ103が高速駆動ギヤ99と嵌合しない。このため、高速駆動ギヤ99が空転(入力軸40に対して相対回転)する。この結果、高速ギヤ列95が動力遮断状態になる。
【0079】
これにより、入力軸40の動力が、低速駆動ギヤ97、低速従動ギヤ98、中継軸82、最終駆動ギヤ101を経由して、最終従動ギヤ102に伝達される。そして、クラッチ81が動力伝達状態になっていれば、最終従動ギヤ102に伝達された最終駆動ギヤ101の動力が、伝達軸88を介して出力軸44に伝達される。こうして、入力軸40の動力が低速ギヤ列94によって、出力軸44に低速で伝達されることにより、フィードチェーン4が低速で回転する。
【0080】
続いて、変速機構79が高速位置Hに切り替えられた場合は、シフタ103が高速駆動ギヤ99側(左方)に摺動して高速駆動ギヤ99と嵌合する。これにより、高速駆動ギヤ99が入力軸40と一体回転可能となる。こうして、高速ギヤ列95が動力伝達状態になる。なお、変速機構79が高速位置Hに切り替えられた場合は、シフタ103が低速駆動ギヤ97と嵌合しない。このため、低速駆動ギヤ97が空転(入力軸40に対して相対回転)する。この結果、低速ギヤ列94が動力遮断状態になる。
【0081】
これにより、入力軸40の動力が、高速駆動ギヤ99、高速従動ギヤ100、中継軸82、最終駆動ギヤ101を経由して、最終従動ギヤ102に伝達される。そして、クラッチ81が動力伝達状態になっていれば、最終従動ギヤ102に伝達された最終駆動ギヤ101の動力が、伝達軸88を介して出力軸44に伝達される。こうして、入力軸40の動力が高速ギヤ列95によって、出力軸44に低速で伝達されることにより、フィードチェーン4が高速で回転する。
【0082】
最後に、変速機構79が中立位置Nに切り替えられた場合は、シフタ103が低速駆動ギヤ97及び高速駆動ギヤ99のいずれとも嵌合しない。このため、低速駆動ギヤ97及び高速駆動ギヤ99が空転(入力軸40に対して相対回転)する。この結果、低速ギヤ列94及び高速ギヤ列95が動力遮断状態になる。したがって、入力軸40の動力が伝達軸88及び出力軸44に伝達されないため、フィードチェーン4が回転しない。
【0083】
以上のような構成により、フィードチェーン4は、フィードチェーン4専用の駆動ユニット39によって、フィードチェーン4の回転速度だけが変速される。したがって、本発明のコンバインにおいては、扱胴16や選別部5を適切な作動速度に維持して、脱穀性能及び選別性能を維持しながら、フィードチェーン4の回転速度を作業状態に適した回転速度に容易に減速することができる。特に、手刈りした穀稈等を作業者がフィードチェーンに供給して枕扱ぎを行う場合には、扱胴16や選別部5を適切な作動速度に維持して、脱穀性能及び選別性能を維持しながら、フィードチェーン4の回転速度を枕扱ぎ状態に適した回転速度に容易に減速することができるために、有効である。
【0084】
また、本発明のコンバインにおいては、フィードチェーン4が駆動スプロケット45に巻き付く方向に弛むため、フィードチェーン4が弛んだ場合における駆動スプロケット45へのフィードチェーン4の巻き付き具合の低下を抑制することができる。
【0085】
以下、本発明に係る別実施形態について説明する。
【0086】
本実施形態では、ガイドレール77は、フィードチェーン4の搬送方向において搬送始端側(前端側)に配置されているが、ガイドレール77の位置は、これに限定されない。例えば、ガイドレール77は、フィードチェーン4の搬送方向において搬送終端側(後端側)に配置されていてもよい。また、ガイドレール77は、フィードチェーン4の搬送方向において搬送中途部(前後中途部)に配置されていてもよい。また、ガイドレール77を設けない構成でもよい。